タイトル: | 公表特許公報(A)_ポリソルベートの測定方法 |
出願番号: | 2013555795 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 31/00 |
ヴェーバー,アルフレート エンゲルマイヤー,アンドレア アンデルレ,ハインツ シュヴァルツ,ハンス−ペーター JP 2014508297 公表特許公報(A) 20140403 2013555795 20120301 ポリソルベートの測定方法 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド 591013229 BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム 501453189 Baxter Healthcare SA 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 新井 栄一 100122389 田中 夏夫 100111741 菊田 尚子 100169971 藤井 愛 100125508 花井 秀俊 100180862 ヴェーバー,アルフレート エンゲルマイヤー,アンドレア アンデルレ,ハインツ シュヴァルツ,ハンス−ペーター US 61/449,535 20110304 G01N 31/00 20060101AFI20140307BHJP JPG01N31/00 Y AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN EP2012000898 20120301 WO2012119724 20120913 20 20131028 2G042 2G042AA01 2G042BD18 2G042DA01 2G042DA02 本発明は、タンパク質を含有するサンプルにおけるポリソルベートの測定方法に関する。本発明の方法は、サンプルをアルカリ加水分解により前処理した後に比色定量をおこなうことを含む。 ウイルスに対する安全性は、治療用タンパク質、特に血漿由来の薬物にとって基本的な要求である。近年、ウイルス感染のリスクをほとんど排除することにより、ウイルスに対する安全性が実質的に進歩してきた。治療に使用される血漿タンパク質の製造工程において、ウイルスを除去または不活性化するために設計された特定の工程が、開発され、検証され、導入された。VIII因子またはIX因子のような凝固因子、アンチトロンビン、抗トリプシンまたはC1阻害剤などの血漿プロテイナーゼ阻害剤、ならびにアルブミンおよび免疫グロブリンの製造方法は、安全性の要求を満たすために脂質エンベロープウイルスに対して有効な少なくとも1つの不活性化工程を含まなくてはならず、国家および国際規制機関はウイルスに対する安全性の維持およびさらなる改善を保証するために規制の包括的枠組みを定めている。例えば、欧州医薬品庁(European Medicines Agency)(EMA)の機関である専売医薬品の科学的委員会(the scientific Committee for Proprietary Medicinal Products)(CPMP)は、生物学的製剤のウイルス安全性を対象とするガイドラインを発行した。血漿由来の薬物によるウイルス感染のリスクを最小化するために、CPMPガイドラインは、出発材料としての血漿のレベルに対する他の予防的措置に加えて、2つの独立して作用するウイルス不活性化方法を製造工程に組み入れることを強く推奨している。 ウイルス不活性化のための界面活性剤の有用性およびクロマトグラフィーによるタンパク質精製法の利用可能性に関する知識により、血漿タンパク質の加工における界面活性剤によるウイルス不活性化の方法が示された。主な標的ウイルスであるHIV、HBV、およびHCVはすべて脂質エンベロープ化されている。したがって、効果的なウイルス不活性化戦略は、界面活性剤単独に対する、または確立した溶媒-界面活性剤(S/D)法に対するウイルスの感受性を合理的に利用するものである。これらのすべての方法の効果は、ウイルスの脂質エンベロープが特異的に破壊される一方で、リポタンパク質を除く治療用タンパク質の完全性に対する影響力が相対的に低い点にある。 非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80、Tween(商標)80)は最も一般的に使用されるポリソルベート系殺ウイルス界面活性剤である。ウイルス不活性化工程の後、製造方法は、タンパク質のクロマトグラフィーによる吸着などの、不活性化剤を除去するために有効な精製工程を含まなければならない。しかしながら、界面活性剤除去手順の有効性をモニターするため、ならびにウイルス不活性化中に界面活性剤濃度の特定されたおよび検証された限界が順守されているかをチェックするために、界面活性剤の定量は、変化する、時には高い濃度のタンパク質、例えば血漿タンパク質の存在下でおこなわなければならない。ポリソルベート80などのポリソルベートの化学組成および構造の多様性、これらの化合物の低い反応性、タンパク質/緩衝液マトリックス、ならびに存在し得る他の物理化学的に関連する界面活性剤(例えばさまざまな数のエチレンオキシド残基を有するTriton(商標)X-100のようなアルキルフェノールエーテルなど)により測定が困難になる。ウシ海綿状脳症(BSE)に伴うリスクに対する懸念のために、ウシ獣脂の代わりに植物脂肪から製造された植物由来型のポリソルベート80の導入がおこなわれてきた。それらの殺ウイルス有効性は等しいにも関わらず、これらのポリソルベートはおそらく異なる脂肪酸プロファイルを有し、分析に対する感受性が異なる可能性がある。 ポリソルベート80とデンプンとの間の複合体の形成および過剰な遊離のデンプンをヨウ素との反応により定量することに基づく初期の比色分析法は、アミノ酸、糖類、およびタンパク質を含有する組織培養媒体およびワクチンへの使用に適応されている。ポリオキシエチレン鎖とチオシアナトコバルト酸塩(thiocyanatocobaltate)との錯体形成およびクロロホルム中への錯体の抽出に基づく別の比色分析法は、当初は水溶液中のポリエチレングリコール脂肪酸エステルの濃度を定量するために開発された。それ以来、その使用は、抽出溶媒としてジエチルエーテル、塩化メチレンまたはクロロホルムを用いて、例えばp-イソオクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル(Triton(商標)X-100、Igepal(商標)CA-630、Nonidet(商標)P40、またはTergitol(商標)NP40の商品名でさまざまな製造者から入手可能)などの他のポリエトキシ化非イオン界面活性剤に拡大されてきた。 しかしながら、この方法の生物学的製剤への応用は、強く妨害し、そのため、分析をおこなう前に除去しなければならないタンパク質の存在により制限される。タンパク質に関連するマトリックス効果を克服するために、冷エタノールにより沈殿させて遠心分離によりタンパク質を除去した後にチオシアナトコバルト(II)酸比色分析をおこなうこと、サイズ排除クロマトグラフィーとカラム後の比色誘導体化、ミセル凝集を防止するための臨界ミセル濃度よりも高いポリソルベート80の塩基濃度を用いるサイズ排除クロマトグラフィーおよび235 nmでのUV検出、イオン交換HPLCカラムによるタンパク質の捕捉を用いる非結合ポリソルベートのタンパク質除去クロマトグラフィー(protein-depletion chromatography)、固相抽出と脱脂質、比色誘導体化およびゲル浸透クロマトグラフィーによるチオシアナトコバルト(II)酸錯体の分離、酸加水分解と脂肪酸のHPLCまたはGC定量、または穏やかな鹸化と放出された脂肪酸のHPLC測定、薄層クロマトグラフィー、または液体抽出とHPLC分離および質量分析による検出などの分離技術が導入された。ポリソルベートの脂肪酸部分に依存する後者のアプローチは、分析物の変化する脂肪酸組成により妨げられる。別の最近のアプローチは、ポリソルベートミセル中に取り込まれた5-ドデカノイルアミノフルオレセインの蛍光偏光を測定する。しかしながら、これらの方法はいずれも非常に時間がかかり、限られたサンプル処理能力に悩まされ、または複雑な装置および各段階での別々の検証が必要となる。 したがって、比色分析法によるタンパク質を含有するサンプル中のポリソルベートの定量方法であって、タンパク質の妨害を速く簡単な方式で排除することができる前記方法を提供する強い必要性が存在する。このような方法により、例えばウイルス不活性化の間の、ならびに精製されたタンパク質の最終濃縮物における、実際の界面活性剤濃度の定量が可能になるであろう。 この必要性は、特許請求の範囲に特徴を述べる実施形態を提供することにより満たされる。 本発明は、アルカリ加水分解によるサンプルの前処理の後に比色定量をおこなうことに基づく、タンパク質を含有するサンプルにおけるポリソルベートの測定方法に関する。発明の詳細な説明 本発明は、(a) サンプルにアルカリ加水分解をおこなう工程;(b) アルカリ加水分解の後にサンプルを中和する工程;(c) 場合により中和されたサンプルから変性した沈殿物を除去する工程;(d) 場合により濾過されたサンプルにチオシアナト金属錯体の水性混合物を加えて、ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体を形成する工程;(e) 工程(d)において形成された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体を水非混和性有機溶媒中に抽出する工程;(f) 工程(e)において得られた抽出物の吸光度を測定して、工程(d)において形成された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体の量を定量する工程;および(g) 工程(f)において定量された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体の量からサンプル中に含有されるポリソルベートの量を計算する工程を含む、タンパク質を含有するサンプル中のポリソルベートの測定方法に関する。 本明細書において使用される場合、用語「ポリソルベート」は、任意のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)に関する。好ましいポリソルベートとしては、ポリソルベート20、40、60、および80が挙げられる。ポリソルベート80が特に好ましい。前記ポリソルベート80は、動物または植物起源であり得る。 本明細書において使用される場合、用語「タンパク質を含有するサンプル」は、少なくとも1種のタンパク質を含有する任意のサンプルに関する。サンプルは、例えば、組み替えタンパク質の製造方法に由来するものであってよく、ここで、サンプルは前記方法の任意の段階で取られたものであってよく、または前記方法の最終産物であってよい。さらに、サンプルは、例えば、血漿由来のタンパク質の製造方法に由来するものであってよく、ここで、サンプルは前記方法の任意の段階で取られたものであってよく、または前記方法の最終産物であってよい。好ましくは、サンプルは血漿由来のタンパク質の製造方法におけるウイルス不活性化の工程の後に取られたものである。したがって、サンプル中に含有されるタンパク質(1種または複数種)は1種以上の血漿タンパク質であり得る。さらに、タンパク質を含有するサンプルは、血漿であってよい。さらに、タンパク質を含有するサンプルは、ワクチンおよび/またはペプチドを含有するサンプルであってよい。 タンパク質を含有するサンプルは、さらにイソオクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル(Triton(商標)X-100)および/またはリン酸トリ-n-ブチル(TNBP)(例えば、血漿由来のタンパク質の製造方法におけるウイルス不活性化の工程において加えられたものであり得る)を含有してよい。 タンパク質のような大分子は、一連の疎水性および親水性アミノ酸により構築された、界面活性剤と似た性質を有する構造体を含有する可能性があり、それらも上記の定量アッセイを妨害する可能性がある。界面活性剤のタンパク質構造への結合も、錯体の形成を妨げて分析物の回収率を低下させることにより定量に影響を与え得る。したがって、比色定量の前に、この妨害を防止して偏りのない結果を提供するために、付随するタンパク質を破壊しなければならない。エタノールのような溶媒を用いるタンパク質の沈殿は、アッセイをおこなう前にタンパク質を除去するための1つの可能性である。しかしながら、複合タンパク質混合物は、有用な濃度のエタノールではほとんど沈殿しないアポリポタンパク質A1またはα1-酸糖タンパク質のようなタンパク質などの低分子量タンパク質をも含有し得るという事実を前提とすると、このサンプル調製工程の適用はかなり制限される。それに代えて、本発明は、アルカリ加水分解、特に高温でのアルカリ加水分解に依存するサンプル前処理を採用する。後にさらに例示する通りの条件下で、タンパク質は、もはやアッセイに対して妨害的影響を及ぼすことができない程度にまで破壊されるであろう。適用される加水分解は、タンパク質のアミノ酸への完全な分解をもたらさないが、それは驚くべきことに、偽陽性反応ならびに界面活性剤の結合を排除するのに十分な程度に苛酷である。 好ましくは、本発明の方法の工程(a)、すなわちサンプルにアルカリ加水分解をおこなうことは、サンプルを特定の時間に渡って高温でアルカリ試薬により処理することを含む。好ましくは、アルカリ試薬は、NaOH、KOH、LiOH、Ba(OH)2、Sr(OH)2、Ca(OH)2、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、および同種および異種の置換基により置換された水酸化第四級アルキルアンモニウムおよび水酸化第四級シクロアルキルアンモニウムからなる群より選択される。より好ましくは、アルカリ試薬は、NaOH、好ましくは3 N以上のNaOH、より好ましくは約10 N NaOHである。高温は、好ましくは、100℃以下かつ約80℃以上、より好ましくは約90℃以上、最も好ましくは約95℃以上である。特に好ましい実施形態において、アルカリ加水分解は約95℃〜約100℃でおこなう。アルカリ加水分解の継続時間は、好ましくは、約15分以上、より好ましくは約30分以上、最も好ましくは約45分以上である。さらに、アルカリ処理の継続時間は、好ましくは120分以下、より好ましくは90分以下である。特に好ましい実施形態において、アルカリ処理の継続時間は、約45〜約90分、より好ましくは約45分〜75分、より好ましくは約50分〜70分、最も好ましくは60分である。 本発明の方法の工程(b)、すなわち、アルカリ加水分解の後のサンプルの中和は、好ましくはサンプルを酸、例えば酢酸により約7〜約8のpHに中和することを含む。この文脈において使用することができるさらなる酸としては、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、アルカン-およびシクロアルカンモノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸が挙げられる。 好ましくは、本発明の方法の工程(c)、すなわち、中和されたサンプルからの変性した沈殿物の除去は、濾過または遠心分離によりおこなうことができ、実際に実施する場合には該工程はタンパク質溶液に依存するので、サンプルの遠心分離またはポリオキシエチレンソルビタンと結合しないフィルターによるサンプルの濾過を含む。好ましい実施形態において、フィルターは親水性フィルター、例えば酢酸セルロース製のフィルターである。フィルターの孔径は、沈殿が十分に保留される限り特に制限されず、例えば0.22μmであってよい。 工程(d)において添加されるチオシアナト金属錯体は、好ましくは、Co(NO3)2・6H2OとNH4SCNとの水性混合物であり、形成されるソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体は、ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナトコバルト(II)酸錯体である。 好ましくは本発明の方法の工程(d)において濾過されたサンプルに加えられるCo(NO3)2・6H2OとNH4SCNとの水性混合物は、好ましくは、約1%(w/v)〜約4%(w/v)、好ましくは約1.5%(w/v)〜約4%(w/v)、より好ましくは約2%(w/v)〜約4%(w/v)、最も好ましくは3%(w/v)のCo(NO3)2・6H2Oおよび約10%(w/v)〜約30%(w/v)、好ましくは15%(w/v)〜約25%(w/v)、より好ましくは約20%(w/v)のNH4SCNを蒸留水中に含有する。 好ましくは、本発明の方法の工程(e)においてソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体の抽出のために使用される水非混和性有機溶媒は、クロロホルム、塩化メチレン、o-ジクロロベンゼン、ブロモホルム、およびトリクロロエチレンからなる群より選択され、塩化メチレンが特に好ましい。 さらに、本発明の方法の工程(e)において得られた抽出物の吸光度は、工程(f)において、好ましくは、約300 nm〜約340 nmの範囲、より好ましくは約310 nmおよび約330 nmの範囲、最も好ましくは約324 nmで測定される。1つ以上の特定の波長でサンプルの吸光度を測定する方法は当業者に公知であり、例えば標準的なUV/VIS分光光度計の使用が含まれる。 さらに、本発明の方法の工程(g)を実施する方法、すなわち工程(f)において定量された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体の量からサンプル中に含有されるポリソルベートの量を計算する方法は当業者に公知である。 好ましい実施形態において、本発明の方法はさらに、工程(a)の後、工程(b)の前に、アルカリ加水分解後のサンプルを、好ましくは室温に冷却する工程を含む。さらに、本発明の方法は、工程(b)の後、工程(c)の前に、生成することが予想される変性した沈殿物を完全に形成させるために、サンプルを15分以上、好ましくは30分以上に渡って室温に保持する工程を含み得る。 サンプル容器の表面、例えばプラスチック表面へのポリソルベートの非特異的吸着に起因する分析物の損失を回避するために、本発明の方法は、アルカリ加水分解の前にサンプルをタンパク質溶液、例えばアルブミン溶液と混合する工程を含むことができる。このような吸着は、タンパク質含有量が低いサンプル、例えば1 mg/ml未満のタンパク質含有量を有するサンプルにおいて特に起こり得る。 さらに、本発明の方法は、吸光度測定の較正のために既知の濃度のポリソルベートおよび1種以上のタンパク質を有するサンプルを用いて標準曲線を確立する工程を含み得る。それぞれの標準曲線を確立する方法は当業者に公知である。100℃で15〜120分の加水分解時間の後の比色ポリソルベート測定の結果を示す図である。データ点は2つの独立した加水分解混合物の平均であり、該加水分解混合物は60分間以上アルカリ加水分解をおこなった場合の差異が4%未満であった。アッセイの精度および直線性を決定するための、100 ppmのポリソルベート80を含有する対照サンプルの21回の定量の結果を示す図である。平均値の2標準偏差の範囲を示す。サンプルの前処理をおこなった場合(B)またはおこなわなかった場合(A)の、それぞれウシおよび植物供給源に由来するポリソルベート80を添加したサンプルの較正プロットを示す図である。図3−1の続きである。サンプル前処理をおこなわなかった場合(A)のポリソルベート80およびTriton(商標)X-100の較正曲線、ならびにアルカリ加水分解の後(B)のポリソルベート80およびポリソルベート80とリン酸トリ-n-ブチル(TNBP)とTriton(商標)X-100との混合物の較正曲線を示す図である。図4−1の続きである。 本発明を以下の実施例においてさらに例証するが、それらに限定されることはない。材料: 使用したすべての化学物質は、他に記載しない限り分析グレードのものであった。NaOH、96%酢酸、硝酸コバルト六水和物(Co(NO3)2・6H2O)、塩化メチレン(Lichrosolv(商標))、Triton(商標)X-100、リン酸トリ-n-ブチル(TNBP)およびチオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)はMerck(ドイツ)より購入した。ウシ由来ならびに植物供給源由来の2つのロットのポリソルベート80(Tween(商標)80)はICI(米国)より購入した。1%(w/v)の含有量を有する界面活性剤の水溶液は、調製した後分析に使用した。 アッセイの正確さに対する数種の血漿タンパク質の影響を、血漿タンパク質分画中間体およびBaxter BioScience(ウィーン、オーストリア)製の濃縮物を用いて研究した。簡単に述べると、アルカリ加水分解によるサンプル前処理の適合性を研究するために、以下のヒト血漿タンパク質濃縮物:アルブミン、免疫グロブリン、アンチトロンビン、タンパク質C、発生的(developmental)活性化および非活性化プロトロンビン複合体濃縮物(aPCCおよびPCC)、高純度IX因子濃縮物、およびオロソムコイド(α1-酸糖タンパク質)を使用した。最後に、該方法は、Baxter(Baxter BioScience Diagnostics Division、ウィーン、オーストリア)により供給される凍結乾燥ヒト標準血漿を用いて、全血漿においても実施した。 アルカリ加水分解自体は、スクリューキャップ付き100×15 mmポリプロピレン管(Greiner、オーストリア)中でおこない、それに続く比色定量はスクリューキャップ付きガラス管中でおこなった。使用したフィルターは0.22μm MINISART(Sartorius、ドイツ)であった。比色定量は、スクリューキャップ付き1 cm Suprasil石英セル(Hellma、ドイツ)を用いて、LKB Ultrospec K4053分光光度計によりおこなった。加水分解を除くすべての工程中、室温(20〜25℃)を維持した。実施例1:アルカリ加水分解 400 mg/L = 400 ppm未満のポリソルベート含有量を有する標準または対照の1 mlのサンプルが入ったポリプロピレン管の中に、0.5 mlの10 M NaOHを加えた。溶液を沸騰水浴中に60±10分間保持した。室温に冷却した後、アルカリ加水分解物を0.5 mlの10 M酢酸を用いて、pH試験紙(Merck、ドイツ)でpHをチェックすることにより、約7〜8のpHに中和した。中和の後、サンプルを30分以上に渡って室温に保持した。タンパク質溶液に依存して沈殿が発生し、それをMinisart 0.22μmフィルターを用いて濾過により除去した後、比色定量法をおこなった。1 mg/mL未満のタンパク質含有量を有するサンプルは、手順中に起こり得るプラスチック表面への非特異的吸着に起因する分析物の損失を回避するために加水分解の前にアルブミン溶液と混合した。200 mg/mlの濃度を有する0.1 mlのヒトアルブミン溶液を1 mlの各サンプルに加えることが、ポリソルベート80の非特異的損失の防止に効果的であることが証明された。このサンプルの希釈はサンプルのポリソルベート濃度を計算する際に考慮に入れなければならない。実施例2:比色定量 比色定量は以下のようにしておこなった。簡単に述べると、本質的にタンパク質を含まない、1 mlの中和されたタンパク質加水分解物またはポリソルベート水溶液を、3 mlのチオシアナトコバルト酸試薬と混合した。この試薬は、蒸留水中に溶解した3 %(w/v)Co(NO3)2・6H2Oおよび20%(w/v)NH4SCNを含有し、毎日新しく調製された。次に、2 mlの塩化メチレンを加えた。激しく振盪した後、20〜25℃で少なくとも30分間、相を分離させた。最後に、塩化メチレン相を、スクリューキャップ付きキュベットに入れ、320 nmで、塩化メチレンブランクに対して分光光度法で測定した。実施例3:アッセイの較正 10〜400 ppmのポリソルベート80の範囲をカバーする標準希釈を分析することにより、アッセイを較正した。これらの標準溶液は、タンパク質溶液にポリソルベート水溶液を添加することにより調製した。本明細書に記載される加水分解条件はこれまでに試験したあらゆるタンパク質溶液の影響を実質的に破壊するので、全血漿を含む任意のタンパク質溶液が好適であるはずである。しかしながら、同様なもの同士を比較するという原則に従って、対象とされる溶液と可能な限り類似している血漿タンパク質溶液を選択した。そこで、10〜400 ppmのポリソルベート80の範囲をカバーする(濃度5、10、20、50、100、200および400 ppmを含む)標準曲線を、発生的PCCを用いて構築し、アッセイをおこなう場合ごとに二回ずつ分析した。実施例4:加水分解時間の最適化 適切な加水分解時間を確立するために、ポリソルベート80の比色定量を実質的に妨害することが既に知られているタンパク質マトリックスとして発生的aPCC(活性化プロトロンビン複合体濃縮物)を選択した。このマトリックスは本質的に界面活性剤を含有しないが、エタノールを用いる沈殿によるタンパク質除去の試みの後にこの溶液の分析をおこなうと、偽陽性反応が観察された。約25 mg/mlのタンパク質濃度を有するこのマトリックス(プロトロンビン、インター-α-トリプシン阻害剤、補体、およびビトロネクチンなどの広いスペクトルの異なる血漿タンパク質を含有する)に、100 ppmのポリソルベート80を添加した。アルカリ加水分解を、前記の通りに、サンプルを15〜120分間沸騰水浴中に保持して実施した。さらなる工程を上記の通りにおこなった。 100℃で15〜120分の加水分解時間の後の比色ポリソルベート測定の結果を図1に示す。選択されたタンパク質マトリックスは、エタノールによるタンパク質沈殿後の定量において偽陽性反応を引き起こす成分を含有することが既に知られているが、非常に短い加水分解時間の後にさえ、偽陽性反応を示さなかった。100℃で15分間の加水分解の後、加えられた100 ppmのポリソルベート80は完全に回収することができず、添加された量の79%のみが見いだされた。この回収率のレベルは研究において見いだされた中で最も低いものであり、それに加えて、より長い加水分解の後に得られたすべての他の回収率と比較して高い標準偏差を示した。このように、短いアルカリ加水分解はアッセイに対するタンパク質の妨害を完全に排除するのには十分ではなく、低い回収率が観察され、おそらくタンパク質と界面活性剤との間の比較的緊密な会合が比色定量への界面活性剤の関与を妨げたのであろうことを示している。しかしながら、30分に渡っておこなわれたアルカリ加水分解は90%の回収率をもたらし、また、それぞれ45、60、90および120分の後に分析された次のサンプルはそれぞれ100%、99%、99%および97%の回収率を示し、各値は2.5%未満の変動係数を特徴とした。これらの知見に従って、以後のすべての実験には、60±10分間の加水分解時間を選択した。実施例5:異なる血漿タンパク質マトリクスにおけるアッセイの正確さ(accuracy) 方法の検証のための公式ガイドライン(Official guidelines for method validation)は、分析手順の正確さは真の値と実測値との間の一致の近さを表すと定義する。分析法の正確さを評価するためのいくつかのアプローチが存在する。血漿タンパク質の存在下でのポリソルベート80に対する認定された参照物質は存在しないので、ブランク標準試料に既知の濃度の分析物を添加するアプローチに従った。この関連するタンパク質溶液への添加のアプローチは、アッセイに対するタンパク質の影響が既に知られているために選択された。ポリソルベート80の定量に適用される方法が120℃で15時間加熱することを含む全アルカリ加水分解よりも強度が低い場合には、第一級、第二級および第三級構造の違いにより、アルカリ処理に対するタンパク質の抵抗性がかなり異なる可能性がある。 ここで使用されるアルカリ加水分解の条件が、非常に異なるタンパク質マトリックスにおけるポリソルベート80の正確な分析を可能にするのに十分であるかどうかを研究するために、アルブミン、免疫グロブリン、オロソムコイド、アンチトロンビン、タンパク質Cおよび凝固因子ならびに全血漿を含む血漿タンパク質溶液を、ポリソルベート80の回収率をチェックするために使用した。研究されたサンプルのタンパク質濃度は1〜50 mg/mLの範囲であった。表1は、10 ppm、50 ppm、100 ppmまたは200 ppmのポリソルベート80をブランクマトリックスに加えた添加実験の結果を示す。表1:異なる血漿タンパク質溶液におけるポリソルベート80(p80)の回収率*) -:未測定 研究したすべてのタンパク質溶液において、ポリソルベート80の添加量の90%〜106%の回収率が見いだされた。これらの結果から、試験したすべてのサンプルが、AOAC(アメリカ公認分析化学者協会(American Association of Official Analytical Chemists))により発行された分析物濃度の関数としての回収率データの基準を満たした。これらの規格によれば、100 ppmの分析物は90%〜107%回収されなければならないが、信頼できる結果を保証するために10 ppmの回収率の限界は80%〜110%である。発明者らの結果は、適用された加水分解条件が、少なくとも研究されたタンパク質濃度において、タンパク質の種類に関わらず、タンパク質の妨害的影響を排除のために好適であることを証明している。これは、非常に複雑で数百種の異なるタンパク質ならびに低分子量成分を含有することが知られている血漿マトリックスにおいてさえ示された。100 ppmならびに200 ppmのポリソルベート80の添加量は、6%未満の偏差で回収することができた。さらに、構造的に無関係のタンパク質を異なる濃度で試験したにも関わらず、ポリソルベートを添加された精製タンパク質はいずれも回収の成功を妨げなかった。このように、例えば、多様な薬物に結合することが知られている3を超える等電点を有する強い酸性のタンパク質である高度にグリコシル化されたタンパク質のオロソムコイド、ならびに脂肪酸に結合し得るアルブミンが、高濃度で使用された場合でさえ、定量を阻害しなかった。定量の限界である10 ppmのポリソルベート80の添加濃度でさえ、アッセイは、存在するタンパク質濃度と無関係に正確な結果を与えた。10および30 mgタンパク質/mLの濃度の発生的aPCCに10 ppmのポリソルベートを添加した結果、アッセイ中のタンパク質濃度に関わりなく、94%および100%の回収率が得られ、したがって、ここでも上に挙げたAOACの推奨を満たしていた。実施例6:アッセイの精度および直線性 分析方法の検証のための公式ガイドラインによれば、方法の精度は、一連のサンプルの複数回の定量の個々の試験結果が一致する程度であり、一方、分析手段の直線性は、サンプル中の分析物の濃度と直接比例する試験結果を得るその能力を表す。アッセイのこれらの本質的性能パラメーターを説明するために、発生的PCC中に100 ppmのポリソルベート80を有する対照サンプルを使用した。分析の結果を図2に示す。対照サンプルの21回の測定を用いて、サンプルの平均は、アッセイ間およびアッセイ内精度に関して、それぞれ4.0%および3.7%の相対標準偏差(sd)を有した。両方の偏差はAOACにより与えられた推奨(100 ppmの分析物の同日中または別の日の測定の精度について5.3%が推奨される)に適合している。21の測定のうち1回のみ標準偏差の2倍と定められる範囲に入らない値が得られたが、この値も平均±3 sdの範囲に含まれた。図表はまた、エラーバーにより示されるアッセイ内変動を示す。さらに、アッセイの精度を20 ppmの濃度で研究して、3.0%の値が得られた。不活性化プロセスの間に採取された150 gポリソルベート80/Lの高濃度を有するサンプルの分析をおこなって、2.9%(n = 6)の平均標準偏差を得た。これにより、この方法がウイルス不活性化法の間に起こる高濃度を測定するのにも適していることが確認された。 5〜400 ppmのポリソルベート80の範囲をカバーするアッセイの較正プロットは優れた直線性を示し、濃度と320 nmで測定された吸光度との間の平均相関係数r = 0.999(n = 21)が得られた。直線の傾きは、7.7%(n = 21)のアッセイ間変動を特徴とし、定量下限(LOQ)は、ICHの推奨に従って計算して10 ppm±0.4 ppmであることが見いだされた。実施例7:異なる起源のポリソルベートの比較 ポリソルベート80の起源が分析の成績に影響を与えるかどうかを評価するために、植物およびウシ供給源から得たバッチを比較した。両方の形態を、上記のタンパク質溶液の存在下で、同じアルカリ加水分解手順の後に分析した。さらに、タンパク質が存在しない状態で、サンプルの前処理なしでチオシアナトコバルト酸試薬による比色定量をおこない、それにより、タンパク質を除去するための仮のエタノール沈殿の後に存在する条件を模倣した。 ウイルス不活性化に最初に使用されたポリソルベート80調製物はウシ獣脂から製造されたものであった。ウシ海綿状脳症(BSE)の出現により、治療用タンパク質の製造においてウシ材料を避けて植物由来界面活性剤に変更することが不可欠となった。それ以来、ポリソルベート80は両方の形態で入手可能であり、植物由来のTween 80は既に生物医薬製造においてウイルス不活性化方法に使用されている。 この原料物質の植物脂肪(植物脂肪は構成する脂肪酸の組成において獣脂とは異なり、おそらくオレイン酸の豊富な画分が異なる脂肪酸プロファイルを示すと思われる)への変更の影響を評価するために、両方のポリソルベート調製物の反応性を、それ以外のサンプル前処理をおこなわないアッセイを用いて比較した。結果を図3Aに示し、両方の較正プロットを示す。得られたプロットはその傾きが異なる。植物由来のポリソルベートは等量の材料と比較して明白に高い反応を示し、0.0025の傾きが得られるのに対して、動物由来の界面活性剤の傾きは0.0023である。さらに、数ロットの両方のポリソルベートの分析により、この観察がバッチに関連するものではないことを確認することができた。これらの知見は、図3Bに示される、アルカリ加水分解の後に得られた両方の較正プロットが区別できないという結果によりさらに支持された。 較正プロットの傾きにより表されたアッセイの感度は、アルカリ加水分解をおこなわなかった場合と比較していくらか低い。アルカリ加水分解の後に0.0021の平均傾きが見いだされ、これは加水分解をおこなわなかった場合に得られた値よりも低い。これは、界面活性剤の加水分解されていない脂肪酸部分も錯体の形成に関与しているか、錯体の抽出性に影響を与えている可能性があることを示唆している。実施例8:Triton(商標)X-100に関するアッセイ感受性の評価 密接に関連する界面活性剤のイソオクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル(Triton(商標)X-100)ならびに溶媒のリン酸トリ-n-ブチル(TNBP)(どちらも確立されたウイルス不活性化のための溶媒-界面活性剤法に含まれる)に関するアッセイの選択性を研究した。Triton(商標)X-100およびポリソルベート80を含有する水溶液を、比色定量の選択性を評価するためにアルカリ加水分解をおこなわずに分析した。さらに、Triton(商標)X-100、ポリソルベート80およびTNBPを1:0.3:0.3%(w/v)の比で含有する三成分溶媒-界面活性剤不活性化混合物の反応を、アルカリ加水分解の後に、ポリソルベート80溶液と比較した。ここでも、およそ25 mg/mlのタンパク質濃度を有する発生的aPCCをタンパク質マトリックスとして使用した。最後に、アルカリ加水分解によるサンプル前処理の後のアッセイに対する非常に高濃度のTriton X-100の影響を、タンパク質の存在下および非存在下の両方で評価した。この実験のために、100、300、1000、2000、5000および10000 ppmのTriton(商標)X-100濃度を適用した。 非常に一般的に使用される溶媒-界面活性剤(SD)ウイルス不活性化混合物は、TNBPならびに2つの密接に関連する界面活性剤であるTriton(商標)X-100およびポリソルベート80の三成分処方からなる。したがって、アッセイがこれらの構造的に関連する界面活性剤を識別することができるかどうかに興味が持たれる。両方が比色定量に関与するポリエトキシ基を有するので、当然ながら、Triton(商標)X-100は、当初のアッセイによって同様に検出することができる。図4Aはサンプル前処理をおこなわないアッセイにおける両方の界面活性剤の反応を比較する。12〜200 ppmの範囲で測定された両方の界面活性剤の反応性は著しく異なった。Triton(商標)X-100は、濃度範囲全体に渡ってポリソルベート80の約70%の反応を示したのみであった。 これらの知見のため、および特に両方の界面活性剤が異なる反応因子を有するという事実のために、当初のアッセイは両方の界面活性剤が存在する場合に使用することができない。アルカリ加水分解によるサンプル前処理がアッセイに含まれる場合には、全体的に異なる効果が観察される。図4Bは、既に上に記載した1.0:0.3:0.3%(w/v)の比のTriton(商標)X 100、ポリソルベート80およびTNBPからなるSD混合物の、ポリソルベート80単独と比較した較正プロットを示す。関連するパラメーターである較正プロットの傾きおよび切片を比較して、本質的に差異を認めることはできない。表2に示される通り、傾き(どちらの場合も0.0023である)および切片(ポリソルベートが-0.005であり、SD混合物が-0.007である)のいずれも異ならない。表2:アルカリ加水分解をおこなった場合およびおこなわなかった場合のTriton(商標)X-100の反応性 これらの結果は、Triton(商標)X-100の濃度が3倍高いにも関わらず、密接に関連する界面活性剤であるTriton(商標)X-100による検出可能な影響を何ら受けることなく、アッセイをSD混合物中のポリソルベート80濃度を分析するために適用することができることを示している。驚くべきことに、アルカリ加水分解は比色定量の選択性を増大させることが可能である。Triton(商標)X-100の反応性が完全に破壊されたのか、あるいはある程度のみ破壊されたのかを明らかにするために、追加の実験をおこなった。表4に要約される通り、300μg/ml未満のTriton(商標)X-100を含有する溶液は測定可能な反応を示さなかったので、測定される値に影響を与えなかった。実験により示される通り、アルカリ加水分解はアッセイの選択性の実質的な増加をもたらし、30倍過剰のTriton(商標)X-100が、わずか10 ppmのポリソルベート80のシグナルにさえ測定可能な影響を示さなかった。ポリソルベート80の較正濃度範囲をはるかに超える1000〜10000 ppmのTriton(商標)X-100濃度でさえ、ほとんど99%のTriton(商標)X-100の反応性が比色定量の前におこなったアルカリ加水分解により除去されたことから、控えめに反応するのみであることが見いだされた。表3:アルカリ加水分解の後のTriton(商標)X-100の反応性結論 上記の異なる加水分解時間による実験の結果(実施例4を参照されたい)は、以前にエタノールによるタンパク質沈殿の適用によりポリソルベート濃度の明白な過大評価を起こすことが示された特定のタンパク質溶液の影響を減少させるのに、15分間の短さのアルカリ処理が既に十分であることを示した。電荷および大きさが異なる多くのタンパク質と共に、ポリソルベート80を、タンパク質マトリックスの実質的な影響なしで分析することができた(実施例5を参照されたい)。特に、50μgポリソルベート80/mLを、約50 mg/mlのタンパク質濃度のオロソムコイド(α1-酸糖タンパク質)中で99%の回収率で定量することができた。この非常に酸性度の高いタンパク質が何の影響もなく分析できたという事実は、アルカリ加水分解によるサンプル前処理の適合性を証明している。さらに、脂肪酸と結合することが周知のタンパク質であるアルブミン中のポリソルベート80を測定することにも困難はなかった。ポリソルベート80は分子あたり平均1個の脂肪酸残基を有するので、親油性部分のアルブミンへの結合が起こり得る。それにも関わらず、アルブミン中の回収率は、この点において何の懸念も生じさせなかった。 血漿中に存在する低分子量の生物学的化合物(例えば、アミノ酸、糖類、ペプチド、尿素、クレアチニン)による妨害もアルカリ加水分解により有利に回避することができる。例えば、全血漿は、エタノールにより沈殿しないいくつかのそれ以上特定されない成分を含有する。本発明の方法の適合性は、30 mg/mlのタンパク質含有量におよそ半分に希釈された血漿を用いてうまく証明された。このようにして、非常に異なるタンパク質溶液においてアルカリ加水分解の適合性を証明することができた。同時に、実施されたすべての回収実験の結果が、同業者に検証される(peer-verified)方法に関してAOACにより推奨される基準に適合し、見いだされた精度は、このシステムの品質制御プログラムの一部としての導入を可能にするものである。 BSEの発生により、血漿分画工業において使用されるすべての補助材料のチェックが注意深く行われるようになった。ポリソルベート80におけるオレイン酸の原料として、植物脂肪がウシ獣脂の代替となった。オレイン酸の濃縮のためのかなり粗い分画方法に関して合成に使用される異なる原料物質を比較すると、ウシまたは植物脂肪のいずれかから得られるポリソルベートの脂肪酸組成は少なくともわずかに異なることが明らかになる。最も一般的な植物脂肪は、多不飽和C18脂肪酸の含有量がウシ獣脂と比較して高いことを特徴とする。ポリソルベートであるTween(商標)20(ラウリン酸エステル)、Tween(商標)40(パルミチン酸エステル)およびTween(商標)80(オレイン酸エステル)が、チオシアナトコバルト酸塩に対して異なる錯体形成特性を有し、その結果、620 nmにおける水性錯体の吸光度がTween(商標)80においてTween(商標)20および40よりも低くなることが観察された。〜80%のオレイン酸を含有するTween(商標)80の脂肪酸プロファイルは最も均質であり、Tween(商標)20、40、および60(ステアリン酸エステル)のそれとは著しく異なるが、植物由来ポリソルベート80と動物由来ポリソルベート80との間の脂肪酸組成におけるわずかな相違が、サンプルの前処理をおこなわなかった場合に植物由来材料のより高い反応性として観察される測定された相違を最も適切に説明すると思われる。この説明は、両方の供給源のポリソルベート間の前記相違がアルカリ加水分解により完全に除去され得ると言う事実により、さらに支持される(実施例7を参照されたい)。このサンプル処理はタンパク質の分解をもたらすのみでなく、ポリソルベートの鹸化を引き起こして、界面活性剤から脂肪酸部分を開裂させ、その結果、脂肪酸部分が比色定量または形成される錯体の抽出性のいずれにも偏りを生じさせることが不可能になる。界面活性剤の脂肪酸部分のいかなる変動ももはや定量に影響を与えることはなく、方法の堅牢性が著しく増大し得る。両方のポリソルベート80変形型の間のこの予期されなかった相違が説明および排除されると、同様なもの同士を比較するという基本的原則はこの場合には重要性を失うと思われ、アッセイの較正は供給源に無関係にポリソルベート80を用いておこなうことができる。 組換えタンパク質のために開発され、それ以上解析されなかった比色法により得られた620 nmにおける30 ppmのポリソルベート80の定量下限に関する以前の知見とこれらの実験において決定された320 nmにおける10 ppmのポリソルベート80のLOQは、吸光度係数ε320 nmがε620 nmの約6倍高いので、よく一致している。さらに重要な発見は、アルカリ加水分解によるポリソルベートに対する選択性の有利な増大である。しばしばポリソルベートと組み合わせて適用されるイソオクチルフェノールポリオキシエチレンエーテルTriton(商標)X-100の比色反応は、両方のポリオキシエチレン化界面活性剤の定量(加水分解をおこなわないポリソルベートおよびTriton(商標)X-100の合計、および加水分解後のTriton(商標)X-100に対して残ったポリソルベート濃度の引き算により)が可能である限り、排除することができる(実施例8を参照されたい)。ポリオキシエチレンフェノールエーテル架橋は、木質リグニンにおけるβ-ヒドロキシアルキルフェノールエーテルと同じ方法で、おそらく最もアルカリ加水分解を受けやすいと思われるので、エーテル開裂の際に遊離の短いポリエチレングリコール(nav〜9)鎖が放出され、そのチオシアナトコバルト酸錯体はおそらく有機層に定量的に抽出されず、見たところでは最大で1.5%が抽出されるのみである。したがって、300μg/mlの濃度のtriton X-100でさえ、測定可能な妨害を示さない。 すべての結果を要約すると、サンプル前処理の導入により、血漿タンパク質の存在下およびさらにTriton(商標)X-100の存在下で、ポリソルベート80などのポリソルベートの定量のための非常に簡単で汎用性の高い方法を実施することが可能である。該方法は適切な正確さおよび精度で実施することができ、そのため、ウイルス活性化方法の間ならびに最終容器において、例えばポリソルベート80の濃度の定量が可能になる。さらに、アルカリ加水分解工程は、本来タンパク質溶液の性質とは無関係にタンパク質の存在下でのアッセイの実行を可能にするために設計されたものであったが、しばしば適用される界面活性剤であるTriton(商標)X-100による妨害に対するアッセイの選択性を増大させることが判明した。最後に、該方法は、ポリソルベートの脂肪酸部分(それが鹸化されると比色定量への寄与が不可能になる)の変更に対しても堅牢になった。(a) サンプルにアルカリ加水分解をおこなう工程;(b) アルカリ加水分解の後にサンプルを中和する工程;(c) 場合により中和されたサンプルから変性した沈殿物を除去する工程;(d) 場合により濾過されたサンプルにチオシアナト金属錯体の水性混合物を加えて、ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体を形成する工程;(e) 工程(d)において形成された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体を水非混和性有機溶媒中に抽出する工程;(f) 工程(e)において得られた抽出物の吸光度を測定して、工程(d)において形成された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体の量を定量する工程;および(g) 工程(f)において定量された前記ソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体の量からサンプル中に含有されるポリソルベートの量を計算する工程を含む、タンパク質を含有するサンプル中のポリソルベートの測定方法。 ポリソルベートがポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)である、請求項1に記載の方法。 ポリソルベート80が動物起源である、請求項2に記載の方法。 ポリソルベート80が植物起源である、請求項2に記載の方法。 工程(d)において加えられるチオシアナト金属錯体がCo(NO3)2・6H2OとNH4SCNとの水性混合物であり、形成されるソルビタンポリオキシエチレンチオシアナト金属錯体がソルビタンポリオキシエチレンチオシアナトコバルト(II)酸錯体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 前記水性混合物が、約3%(w/v)のCo(NO3)2・6H2Oおよび約20%(w/v)のNH4SCNを含有する、請求項5に記載の方法。 サンプルがさらにイソオクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル(Triton(商標)X-100)を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 サンプルがさらにリン酸トリ-n-ブチル(TNBP)を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 工程(a)におけるアルカリ加水分解が、NaOH、KOH、LiOH、Ba(OH)2、Sr(OH)2、Ca(OH)2、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、および同種または異種の置換基により置換された水酸化第四級アルキルアンモニウムおよび水酸化第四級シクロアルキルアンモニウムからなる群より選択されるアルカリ試薬による加水分解を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 工程(a)におけるアルカリ加水分解が、約80℃〜約100℃の範囲の温度で15分以上に渡っておこなわれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 工程(a)におけるアルカリ加水分解が、3 N以上のNaOHによる、約95℃〜約100℃の温度での45分以上に渡る加水分解を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。 工程(c)において使用されるフィルターがポリオキシエチレンソルビタンに結合しない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。 工程(e)において使用される水非混和性有機溶媒が、塩化メチレン、クロロホルム、o-ジクロロベンゼン、ブロモホルム、およびトリクロロエチレンからなる群より選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。 水非混和性有機溶媒が塩化メチレンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。 工程(e)において得られた抽出物の吸光度を、工程(f)において約324 nmで測定する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。 さらに、工程(a)の後、工程(b)の前に、(a2) アルカリ加水分解後のサンプルを冷却する工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。 さらに、工程(b)の後、工程(c)の前に、(b2) 変性した沈殿物を形成させるために、サンプルを30分以上に渡って室温に保持する工程を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。 本発明は、タンパク質を含有するサンプル中のポリソルベートの測定方法に関する。本発明の方法は、サンプルをアルカリ加水分解により前処理した後、分析物とチオシアネート試薬との金属錯体(該錯体は非混和性有機溶媒中に抽出される)に基づく比色定量をおこなうことを含む。アルカリ加水分解により、妨害するタンパク質の除去および分析物と類似する界面活性剤に対する選択性(例えばTween 80のTriton X-100に対する選択性)の増大がもたらされる。【選択図】 なし