生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_細胞培養用の乾燥粒状培地
出願番号:2013543557
年次:2013
IPC分類:C12N 5/07


特許情報キャッシュ

レイナー−ブランデス、 マイケル ハワード チャオ、 シャオジャン (デイヴィッド) JP 2013545484 公表特許公報(A) 20131226 2013543557 20111118 細胞培養用の乾燥粒状培地 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 591032596 Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 宮崎 昭夫 100123788 石橋 政幸 100106138 緒方 雅昭 100127454 レイナー−ブランデス、 マイケル ハワード チャオ、 シャオジャン (デイヴィッド) US 61/423,700 20101216 C12N 5/07 20100101AFI20131129BHJP JPC12N5/00 202 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN EP2011005830 20111118 WO2012079679 20120621 17 20130617 4B065 4B065AA90X 4B065BB02 4B065BB12 4B065BB14 4B065BB20 本発明は、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥粒状培地に関し、特に、哺乳動物及び/又は昆虫及び/又は植物細胞の成長をサポートする細胞培養用の乾燥粒状培地製剤に関する。本発明はさらに、これらの細胞培養用の乾燥粒状培地の製造及びそれらの使用に関する。(発明の背景) 細胞培養培地は、人工環境において細胞の成長を補助及び維持する。成長を補助しようとする生物の種類に応じて、細胞培養培地は、10種を超える、場合によっては、100種を超える異なる成分(component)を含み得る。 哺乳動物、昆虫又は植物細胞の増殖に必要な培養培地は一般に、細菌及び酵母の成長を補助するのに十分な最少培地よりはるかに複雑である。 細胞培養の初期の研究は、例えば、血漿、血清、胚抽出物、他の不明確な生物学的抽出物又はペプトン等の明確でない構成成分からなる培地を利用していた。したがって、化学的に明確な培地の開発によって、大きな進歩が遂げられた。化学的に明確な培地は多くの場合、アミノ酸、ビタミン、金属イオン、抗酸化剤、キレート化剤、成長因子、緩衝剤、ホルモン、塩化物及び当業者に知られているさらに多くの物質を含むが、これらのみに限定されるものではない。 一部の細胞培養培地は、無菌水性液体として提供されている。液体細胞培養培地の不利点は、保存寿命が短く、輸送及び貯蔵が困難なことである。結果として、多くの細胞培養培地は現在、微粉砕された乾燥粉末混合物として提供されている。これらは、水及び/又は水溶液中に溶解させる目的で製造され、更に、溶解された状態で、多くの場合他の補充添加物(サプリメント)と共に用いて、細胞成長及び/又は同一生物細胞からのバイオ医薬製剤の生産のための基本的な栄養主成分を生物細胞に供給できるように設計されている。 微細に粉砕された粉末の取扱いには著しい不利点がある。例えば、それらは、取り扱うには非常に粉塵が多く、大量の取り扱いではより粉塵が多く、個々の原料の一部が健康に危険である場合には、特に、材料を取り扱う労働者の健康問題をもたらす可能性がある。個々の構成成分に直接的な毒性がないとしても、呼吸できる空気自体の高い粉塵レベルによって労働者に健康問題がもたらされる可能性があり、この問題のため、多くの国で空気中の粉塵量は厳密に規制されている。さらに、有機物質の粉塵、とりわけ微粉塵は、量が過剰であり且つ警戒的措置が不十分でスパークによる発火を防げない場合には、容易に爆発を起こし得る。 さらに、不利な輸送条件下、例えば、長時間輸送条件下においては、乾燥粉末培地中に含まれる1種又は複数のより軽い個々の構成成分が表面に移動するか、又は1種又は複数のより重い構成成分が一次包装の底面に移動する可能性がある。この局所的な高濃度化の結果として、塊状材料の物理的中心における特定の個々の構成成分(複数可)の枯渇によって、培地の製品品質が多くの点で悪くなる可能性がある。さらに、脱混合(de−mixing)は、個々の構成成分の物理的枯渇及び濃度偏在化よりもはるかに多くの影響を及ぼす。例えば、脱混合状態は、バッチ当たりの生物製剤分子の目標生産量に対して、又はより細かいことを言えば、まさに患者に至るまでの生物製剤品質にとって、培地の品質が極めて不可欠なものとなる生物製剤自体のオリゴ糖のパターニングに対して影響を及ぼす。 微粉砕された乾燥粉末培地を使用する別の側面は、水溶液中に微粉を溶解させて最終的な水性細胞培養培地を調製することが困難なことである。微粉砕粉末を湿潤させ、それを水性液体に溶解させることは非常に困難である。したがって、粉末培地の取扱い及びその使用は、かなり厄介である。 乾燥粉末培地は安定性、混合性及び溶解性が制限されるため、乾燥形式の培地は通常は、一部の重要な補充添加物、例えば、炭酸塩、加水分解物、成長因子及び他の微量元素を含めずに製造し、これらは、乾燥粉末培地から液体を調製する際に最終使用者が補充する。補充添加物の追加時の取扱い及びその補充は、コスト上昇を招くミスや作業が生じる可能性を増大させるであろう。 粉末状の細菌細胞培養培地は、粉末を小顆粒にプレスすることによって造粒できることが知られている。その結果、安全性、取扱い及び性能において有利な小粒子が得られる。この手順は、細菌細胞培養培地については容易に実現可能である。これは、これらの培地が、固有の粘着性により培地構成成分の接着を補助する化学的に十分に明確でないペプトン若しくはトリプトン又は同等なペプチド性構成成分を含むためである。 哺乳動物及び/又は昆虫及び/又は植物の細胞培養培地は一般に、ペプトンもその同等物(ペプトンと同様の性質を有する物質)も含まず、したがって、このように取り扱うのは、はるかに困難である。 Invitrogen Corporationによる米国特許第6,383,810B2号は、凝集した真核生物細胞培養培地粉末の製造方法を開示している。この方法は、乾燥粉末細胞胞培養培地を溶媒で湿潤させるステップと、次いで湿った培地を再乾燥させて乾燥凝集細胞培養培地を得るステップとを含む。 この手順の大きな不利点は、全培地構成成分を水と接触させる必要があること、及び後で水を除去するにはそれらを加熱する必要があることである。このため、培地の構成成分間での相当な副反応又は感受性構成成分の分解若しくは変性が起こり、培地の品質に予想できない結果がもたらされる可能性がある。米国特許第6,383,810号明細書 したがって、取扱いが容易で、分解及び/又は培地構成成分間の副反応を引き起こさずに製造できる、新しい形態の哺乳動物及び/又は昆虫及び/又は植物の細胞培養培地を見出す明らかな必要性が存在する。(発明の簡単な説明) 乾燥培地構成成分の混合された微細粉砕粉末をコンパクト化により圧縮、高密度化することによって、ペプトンを含まない場合においても、化学的に明確に規定された哺乳動物及び/又は昆虫及び/又は植物の細胞培養培地を乾燥粒状形態で製造できることが判明した。コンパクト化(compaction)は、ロールプレス中でのプレス凝集によって達成できる。このプロセスを助けるために添加剤を使用する必要はない。本発明による乾燥粒状細胞培養培地は、保存寿命が長く、取扱いが容易であり、非常に温和な条件下で製造でき、その結果、製造プロセス中に培地構成成分の湿潤又は加熱による副反応が起こらない。 したがって、本発明は、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の製造方法であって、a)培地構成成分の混合粉末の形態の細胞培養培地を用意するステップであって、混合粉末がペプトンもトリプトンも含まない、ステップと、b)前記混合粉末をロールプレス中で圧縮するステップとによる方法に関する。 好ましい一実施形態において、ステップa)において用意する細胞培養培地は、哺乳動物細胞培養培地である。 好ましい一実施形態において、ステップa)において用意する細胞培養培地は、1種又は複数のサッカライド(糖類)成分、1種又は複数のアミノ酸、1種又は複数のビタミン、1種又は複数の塩、1種又は複数の緩衝剤構成成分、1種又は複数の補因子(co-factor)及び1種又は複数の核酸成分を含む。 非常に好ましい一実施形態において、ステップb)は、b1)前記混合粉末をロールプレス中で圧縮するサブステップと、b2)サブステップb1)で得られた、0.2mm未満の粒度を有する圧縮された細胞培養培地の全ての部分を、培地構成成分の混合粉末の形態の細胞培養培地中に再導入して、ロールプレス中に充填するサブステップとによって実施する。 好ましい一実施形態において、ロールプレスのプレス能力は、30〜80kN/cm(ロール幅)の間である。 本発明はさらに、本発明による方法によって調製できる、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地を対象とする。好ましい一実施形態において、顆粒状細胞培養培地の粒子の80%を超える部分は、0.5mmを超えるサイズを有する。 非常に好ましい一実施形態において、顆粒状細胞培養培地の粒子の90%を超える部分は、0.5mmを超えるサイズを有する。 別の好ましい実施形態において、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地は、化学的に明確に規定される哺乳動物細胞培養培地である。 別の好ましい実施形態において、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地は、1種又は複数のサッカライド(糖類)成分、1種又は複数のアミノ酸、1種又は複数のビタミン、1種又は複数の塩、1種又は複数の緩衝剤構成成分、1種又は複数の補因子及び1種又は複数の核酸成分を含む。 本発明はさらに、本発明に従って細胞を培養するための、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の使用であって、a)ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地を溶媒に溶解させて、液体細胞培養培地を形成するステップと、b)前記液体細胞培養培地を、培養される前記細胞と接触させるステップとによる使用を対象とする。 好ましい一実施形態において、培養される前記細胞は哺乳動物細胞である。 好ましい一実施形態において、ステップa)における溶媒は、水である。 本発明の前記の単一の実施形態及び態様に加えて、本発明はまた、開示した実施形態又は態様の2つ以上のあらゆる組み合わせで、実現及び実施が可能である。 本発明によれば、取扱いが容易で、分解及び/又は培地構成成分間の副反応を引き起こさずに製造できる、新しい形態の哺乳動物及び/又は昆虫及び/又は植物の細胞培養培地を提供することができる。図1は、本発明に好適な乾燥圧縮装置の概略図を示す。 本発明による乾式造粒による顆粒化では、水も他の溶媒も加えずに加圧下で粉末を圧縮することによって、顆粒又は粒子が作製される。一般に、本発明に従って使用するロールプレスは、より大きい圧縮体又はフレークも発生する。こうして形成されるこれらの圧縮体は一般に、例えば振動ふるいによって、穏やかに崩壊させると、粒状粒子(凝集塊)を生じる。本発明によれば、粉末又は微細粉砕による粉末は、80%超が0.2mm未満の粒子サイズ(粒径:直径)を有する粒子の組成物である。好ましくは、粉末は、乾燥していて且つ自由流動性(free-flowing:フリーフロー性)を有している。「自由流動性を有する粉末」という表現は、粒子同士が互いに接着しない粉末(粉砕、マイクロペレット化又は同様な技術によって作製される)を意味する。約50°未満の安息角を示す粉末は全て、好適な流動性を一般に示すが、本明細書中で使用する乾燥していて且つ自由流動性を有するという用語はまた、粉末の肉眼的外観を指すものとし、粉末が、乾燥していて且つ自由流動性を有しているように見えることを意味する。 本発明による細胞培養培地は、インビトロでの細胞の成長を維持及び/又は補助する構成成分を含むものであれば、いずれの混合物でもよい。細胞培養培地は、インビトロでの細胞の成長を維持及び/又は補助するのに必要な全ての構成成分を含んでいてもよいし、さらなる構成成分が別途に添加されるように一部の構成成分のみを含んでいてもよい。本発明による細胞培養培地の例は、インビトロでの細胞の成長を維持及び/又は補助するのに必要な全ての構成成分を含む完全培地(full medium)、培地用の補充添加物、あるいは培養中に供給される材料(供給成分:feed)である。好ましい一実施形態において、細胞培養培地は完全培地である。 典型的には、本発明による細胞培養培地は、バイオリアクター中において細胞の成長を維持及び/又は補助するのに使用する。 哺乳動物細胞培養培地は、インビトロでの哺乳動物細胞の成長を維持及び/又は補助する構成成分の混合物である。哺乳動物細胞の例は、ヒト又は動物の細胞、好ましくはCHO細胞、COS細胞、I VERO細胞、BHK細胞、AK−1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞又はヒト細胞である。 本発明による培地を用いて培養される細胞は、正常細胞、疾患細胞、形質転換細胞、変異細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞又は胚細胞であることができ、それらはいずれも、樹立細胞株又は形質転換細胞株であっても、又は天然供給源から入手してもよい。 ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養培地は、ペプトンもトリプトンも、タンパク質の部分加水分解によって生じる他のペプチドも含まない細胞培養培地である。 好ましい一実施形態において、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養培地は、タンパク質も、他の天然由来ポリマー(寒天など)も含まない。非常に好ましい一実施形態において、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養培地は、化学的に明確に規定される細胞培養培地である。 化学的に明確に規定される細胞培養培地は、化学的に不明確な物質を含まない細胞培養培地である。このことは、化学的に明確な培地中で使用されている全化学物質について、それらの化学組成及び構造が知られていることを意味する。化学的に明確な培地は、酵母、動物又は植物組織を含まず、フィーダー細胞、血清、抽出物若しくは消化物、又は化学的に十分に明確でないタンパク質を培地にもたらし得る他の構成成分を含まない。化学的に不明確な又は十分に明確でない化学構造とは、化学組成及び構造が知られていないか、又は莫大な実験的努力(アルブミン又はカゼインなどのタンパク質の化学組成及び構造の評価に匹敵する)によってのみ明確にできるであろう化学構造である。 一実施形態において、本発明による、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養培地は、1種又は複数のサッカライド成分、1種又は複数のアミノ酸、1種又は複数のビタミン、1種又は複数の塩、1種又は複数の緩衝剤構成成分、1種又は複数の補因子及び1種又は複数の核酸成分のみを含む。 粒子のサイズは、粒子の平均直径を意味する。粒径は、シリコーン油中でのレーザー光散乱によって決定する。 サッカライド成分の例は、全ての単糖又は二糖、例えば、グルコース、ガラクトース、リボース若しくはフルクトース(単糖の例)又はスクロース、ラクトース若しくはマルトース(二糖の例)である。 本発明によるアミノ酸の例は、タンパク質を構成する(proteinogenic)アミノ酸、特に必須アミノ酸、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン及びバリン、並びにタンパク質を構成しない(non-proteinogenic)アミノ酸、例えば、D−アミノ酸である。 ビタミンの例は、ビタミンA(レチノール、レチナール、種々のレチノイド及び4種のカルテノイド)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン、ナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸、folinic acid:フォリン酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキシコバラミン(hydroxycobalamin)、メチルコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール類、トコトリエノール類)及びビタミンK(フィロキノン、メナキノン類)である。ビタミン前駆体も含まれる。 塩の例は、炭酸水素、カルシウム、塩化物、マグネシウム、リン酸、カリウム及びナトリウムの各イオンなどの無機イオン、又はCo、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、Se、Si、Ni、Bi、V及びZnなどの微量元素を含む成分である。 緩衝剤の例は、CO2/HCO3、HEPES、PIPES、ACES、BES、TES、MOPS及びTRISである。 補因子の例は、チアミン誘導体、ビオチン、ビタミンC、NAD/NADP、コバラミン、フラビンモノヌクレオチド及び誘導体、グルタチオン、ヘムヌクレオチドホスフェート(phophate)及び誘導体である。 本発明による核酸成分の例は、核酸塩基、例えば、シトシン、グアニン、アデニン、チミン又はウラシル;ヌクレオシド、例えば、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン及びチミジン;並びにヌクレオチド、例えば、アデノシン一リン酸又はアデノシン二リン酸又はアデノシン三リン酸である。 安定な細胞培養培地は、ある一定の時間にわたって貯蔵後に、同一配合物から新たに作成された培地の調製時と比較して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは同一の生物学的及び生化学的活性を示す培地である。 本発明は、ペプトンもトリプトンも類似の構成成分も含まない場合においても、培養用の培地を乾燥顆粒状形態で提供できるという発見に基づく。今日まで、ペプトン又はトリプトンを含む細胞培養培地しか乾式造粒できなかったので、これは非常に予想外であった。ペプトン又はトリプトンの接着性は乾燥顆粒状培地の製造に必須であると考えられていた。 特殊な圧縮手順がまた、ペプトンもトリプトンも含まない乾燥顆粒状培地の製造を可能にすることが判明した。 本発明による圧縮手順は、a)培地構成成分の混合粉末の形態の細胞培養培地を用意するステップと、b)前記混合粉末をロールプレス中で圧縮するステップとの2つの基本的ステップで実施する。 ステップa)において、培地構成成分の微細に粉砕された乾燥粉末を用意する。全構成成分を十分に混合することによって、粉末混合物の全ての部分がほとんど同一の組成を有するようにする。混合物は、組成物の均一性に関して、市販の乾燥粉末細胞培養培地と同一の品質を有するべきである。組成物の均一性が高いほど、得られる乾燥顆粒状培地の品質は、均質な細胞成長に関して良好である。微粉砕粉末を製造するのに好適な粉砕装置は、例えば、ボールミル、ピンミル、ジェットミル又は回転羽根シーブミル(rotating blade sieve mill)である。粉末の粒子サイズは典型的には500μm未満、好ましくは200μm未満である。 培地構成成分の混合粉末を用意するために、構成成分は、例えば、最初に混合し、次いで混合物として微粉砕してもよいし、構成成分は、別個に又はサブグループで粉砕し、その後、合わせて混合してもよい。 混合物の全構成成分が乾燥していることが好ましい。このことは、それらが水を含む場合には、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の非結合又は非配位結合水分子を除いて、結晶水のみを含むことを意味する。 1種又は複数の混合物構成成分が酸化感受性である場合には、混合及び粉砕は、不活性保護ガス下で実施し得る。 第2のステップであるステップb)において、粉末混合物をロールプレス中で圧縮する。ローラー圧縮機とも称するロールプレスは、当業者に知られている。一般に、ロールプレスは、互いに約0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmの短い距離で配置されている2つの逆回転ロールを含む。好適なロールプレスは一般に、幅が10〜50cmのロールを有し、10〜50cmのロール間ギャップ長を生じる。それでもなお、ロールのサイズ、したがって、ロール間ギャップ長は、ロールプレスのサイズに応じて異なり得る。好ましい一実施形態において、ギャップは10〜15cmの長さを有する。 混合された粉末材料を、逆回転ロール対間に引き入れ、ロール間のギャップ中で圧縮する。ロール間の距離及びそれらの表面構造は、得られる粒状粒子の最終的なサイズ及び構造に影響を及ぼす。 ロールの表面には好ましくは、リッフル(riffle)を設ける。リッフルは、粉末をロールに粘着させ且つ粉末をプレスの中に通すのに役立つ。 ロールプレスのプレス能力は、典型的には20〜150kN/cm(ロール幅)の間であり、これらのロールが一緒になって好ましくは30〜80kNの間、最も好ましくは40〜60kNの間の力でのプレスを行う。 細胞培養培地の構成成分が非常に感受性である場合には、圧縮手順は、不活性保護ガス雰囲気下で実施し得る。さらに、ロールプレスのロールは、一定温度を維持するために通常は冷却する。これは、多くの場合、一部の構成成分は熱感受性であるので、圧縮によって生じ得るわずかに上昇する温度にも耐えられない場合があるためである。 好ましい一実施形態において、ロールプレスから放出された、圧縮された細胞培養培地は、直接分粒する。これは、例えば、ふるいにかけることによって、例えば1つ又は複数の振動ふるいを用いて行い得る。ふるいの孔の直径は、収集される顆粒のサイズによって異なる。本発明によるプロセスの場合は、典型的な直径は0.5〜5mmの間、好ましくは約1〜3mmである。ロールプレス中での乾式造粒によってより大きい圧縮された粉体又はフレークが得られる場合には、特に好ましくは、シーブミル(sieve mill)を使用して、圧縮された粉体又はフレークを好適なサイズの顆粒に造粒する。1つの好適なシーブミルは、1〜3mmの間のふるい目(sieve size)を有する揺動(振動)シーブミルFC200型(Bepex、GmbH)である。 本発明のプロセスに好適なロールプレスは、例えば、Alexanderwerk、Sahut Coreur、Hosokawa又はFitzpatrick Companyから購入し得る。 既に説明したように、乾燥粒状細胞培養培地の粒子のサイズは、ロールプレスから出た圧縮された培地を処理する方法によって異なる。培地をロールプレスから直接収集する場合には、培地は一般により大きい圧縮された粉体又はフレークを含む。培地をふるいにかける場合には、粒子サイズはふるいのサイズによって決まる。しかし、包装のようなさらなる取扱いも、一般に平均粒度に影響を与える。これは、顆粒状細胞培養培地の一部の粒子が粉々になる可能性があるためである。 好ましい一実施形態においては、圧縮してふるいにかけた後、顆粒状細胞培養培地の粒子の80%超が0.5mmを超えるサイズを有する。 非常に好ましい一実施形態においては、顆粒状細胞培養培地の粒子の90%超が0.5mmを超えるサイズを有する。 ロールプレスから放出された圧縮された培地の、0.5mm未満、好ましくは0.2mm未満のサイズを有する画分を、ロールプレスへの供給材料中に連続的に再導入して、粉末混合物と再混合し且つ再プレスする場合には、本発明による顆粒状細胞培養培地の品質はさらに改善されることが判明した。これにより、最終的に得られる乾燥顆粒状細胞培養培地の粉末(powder)画分が減少し、生成物の均質性がさらに改善される。 図1は、1つの可能な製造装置アッセンブリーの概略図を示す。ロールプレスは、ロールR1及びロールR2として示されている。粉末混合物P1が、貯留部の溜めからロールプレスに供給される。ロールプレスから放出された圧縮された混合物が、ふるいSによって分粒される。生産物(Product)画分が、さらなる処理及び包装のために取り除かれ、0.2mm未満の粒度を有する粉末画分P2が、ロールプレスの供給材料中に連続的に再導入される。 本発明による乾式造粒は、混合物の粘着性を増大させる物質を添加せずに実施し得ることが判明した。 次いで、得られた乾燥顆粒状の細胞培養培地に対して、さらに加工を施してもよい。培地は包装及び/又は滅菌してもよい。好適な容器は当業者に知られている。例は、バッグ、ボックス、ボトル、カートン、真空パックなどである。包装は、滅菌前又は滅菌後に実施し得る。好ましいのは、適切な包装後のガンマ線照射である。 本発明による乾燥顆粒状の細胞培養培地は、また、タブレット(錠剤)又はより大きいフレークなどの他の圧縮培地形態の製造に好都合に使用し得る。このためには、本発明による乾燥顆粒状の細胞培養培地を、好適なプレス、例えば、打錠機(タブレットプレス)中においてさらなる圧縮に供する。顆粒状の培地は、他の構成成分を添加せずにそのまま使用してもよいし、タブレット化助剤などの他の構成成分と混合するか、又は例えば徐放性タブレットに特有の構成成分と混合するか、若しくは後でそれをコーティングしてもよい。他方で、乾燥顆粒状の細胞培養培地は、タブレットの迅速な溶解を補助する構成成分、例えば、炭酸水素ナトリウムと混合してもよい。 本発明の方法に従って乾式造粒又は圧縮される細胞培養培地は一般に、少なくとも1種又は複数のサッカライド成分、1種又は複数のアミノ酸、1種又は複数のビタミン若しくはビタミン前駆体、1種又は複数の塩、1種又は複数の緩衝剤構成成分、1種又は複数の補因子及び1種又は複数の核酸成分を含む。 培地はまた、脂肪酸及び/若しくは脂肪酸誘導体、並びに/又はプルロニック酸(pluronic acid)並びに/又は界面活性剤成分、例えば、化学的に調製された非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。好適な非イオン性界面活性剤の一例は、第1級ヒドロキシル基を末端基とする二官能価ブロックコポリマー界面活性剤、例えば、BASF(ドイツ)から商品名:pluronic(登録商標)として入手可能なものである。 本発明による乾燥顆粒状の培地は、当業界で知られている粉末培地又は液体培地と同じ目的で使用し得る。大量の顆粒状の培地を、粉末培地の場合に論じられる欠点を伴わずに容易に取り扱うこともできるので、これらは好ましくは生物製剤(biopharma production)の製造に使用し得る。 使用するためには、溶媒、好ましくは水(更に特定すると、蒸留水及び/若しくは脱イオン水又は精製水若しくは注射用水)又は水性緩衝液を乾燥顆粒状培地に添加し、培地が溶媒中に完全に溶解されるまで各成分を混合する。 溶媒はまた、生理食塩水、1.0〜10.0のpH範囲を示す可溶性酸又は塩基のイオン、安定剤、界面活性剤、保存剤及びアルコール又は他の極性有機溶媒を含み得る。 pH調整用の緩衝物質、ウシ胎仔血清、糖などのようなさらなる物質を、細胞培養培地と溶媒の混合物に添加することも可能である。次に、得られた液体細胞培養培地を、成長させる又は維持する細胞と接触させる。 本発明による乾燥顆粒状の培地は、取扱いが容易である。粉末培地と比較して、培地を取り扱う際に形成される粉塵の量は著しく低減される。 本発明による培地は、溶媒に容易に溶解させることができる。液体培地への再構成は迅速であり、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満である。 本発明による乾燥顆粒状の培地の組成は、輸送中に震動又は振動があっても、均質であり続ける。 さらに、湿潤粒状培地とは異なり、より温和な乾式造粒条件により、、例えば、ビタミン(例えば、ビタミンB1)、グルコース、チアミン、鉄塩、又はジスルフィド結合を含む成分等の熱感受性及び/若しくは酸化感受性の物質を含む場合においても、培地の直接的且つ容易な加工が可能となる。 本発明をさらに、以下の図及び例によって説明するが、これらに限定しない。前記で引用した及び下記で引用する全ての出願、特許及び出版物並びに2010年12月16日に出願された対応する米国仮特許出願第61/423,700号の開示全体を、参照によって本明細書中に組み入れる。(実施例) 以下の例は、本発明の実際の適用を表す。1.ダルベッコ変法イーグル培地の乾式圧縮 DMEMとしても知られるダルベッコ変法イーグル培地は、動物細胞を成長させるのに使用されることが多い培地である。DMEMの成分(mg/l)は、以下の通りである。無機塩CaCl2(無水) 200.00Fe(NO3)・9H2O 0.10KCl 400.00MgSO4(無水) 97.67NaCl 6400.00NaH2PO4・H2O 125.00他の成分D−グルコース 4500.00フェノールレッド 15.00ピルビン酸ナトリウム 110.00アミノ酸L−アルギニンHCl 84.00L−シスチン2HCl 63.00L−グルタミン 584.00グリシン 30.00L−ヒスチジンHClH2O 42.00L−イソロイシン 105.00L−ロイシン 105.00L−リシンHCl 146.00L−メチオニン 30.00L−フェニルアラニン 66.00L−セリン 42.00L−スレオニン 95.00L−トリプトファン 16.00L−チロシン2Na・2H2O 104.33L−バリン 94.00ビタミンD−パントテン酸カルシウム 4.00塩化コリン 4.00葉酸 4.00i−イノシトール 7.20ナイアシンアミド 4.00リボフラビン 0.40チアミンHCl 4.00 DMEM培地の全成分を混合し、ピンミル中で粉砕して、均質な乾燥粉末を得る。この粉末30kgを、以下の特性を有するロールプレスに供給する。− 凹形のプレーンロール(concave plane rolls)− ロール間距離 1.5mm− ロール間ギャップ長 10cm− プレス力 50kN 得られた材料は、より大きいサイズの粉体の圧縮物の割合が高い。得られた材料を、3mmのふるい目を有する揺動シーブミルFC200型(Bepex GmbH)中でふるいにかける。 0.2mm未満のサイズ(直径)を有する顆粒の画分を、ロールプレスに再導入する。顆粒の75%超が1〜3mmの間のサイズを有する乾燥顆粒状DMEM培地が得られる。 ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の製造方法であって、a)培地成分の混合粉末の形態の細胞培養培地を用意するステップであって、前記培地がペプトンもトリプトンも含まない、ステップと、b)前記混合粉末をロールプレス中で圧縮するステップとを含む方法。 ステップa)において用意する細胞培養培地が、哺乳動物細胞培養培地であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 ステップa)において用意する細胞培養培地が、1種又は複数のサッカライド成分、1種又は複数のアミノ酸、1種又は複数のビタミン、1種又は複数の塩、1種又は複数の緩衝剤構成成分、1種又は複数の補因子及び1種又は複数の核酸成分を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。 ステップb)が、b1)前記混合粉末をロールプレス中で圧縮するサブステップと、b2)サブステップb1)で得られた、0.5mm未満の粒子サイズを有する圧縮された細胞培養培地の全ての部分を、培地成分の混合粉末の形態の細胞培養培地中に再導入して、ロースプレス中に充填するサブステップとによって行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 ロールプレスのプレス能力が、30〜80kN/cm(ロール幅)の間であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 ロールプレスのロール間ギャップのサイズが、0.5〜3mmの間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。 ステップc)において、ステップb)から得られた材料をシーブミル中でさらに加工することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 請求項1から7のいずれか一項に記載の方法に従って調製可能な、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地。 細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の粒子の80%超が0.5mmを超えるサイズを有することを特徴とする、請求項8に記載の細胞培養用の乾燥顆粒状の培地。 細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の粒子の90%超が0.5mmを超えるサイズを有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の細胞培養用の乾燥顆粒状の培地。 ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地が、哺乳動物細胞培養培地であることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の細胞培養用の乾燥顆粒状の培地。 ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地が、1種又は複数のサッカライド成分、1種又は複数のアミノ酸、1種又は複数のビタミン、1種又は複数の塩、1種又は複数の緩衝剤構成成分、1種又は複数の補因子及び1種又は複数の核酸成分を含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の細胞培養用の乾燥顆粒状の培地。 細胞を培養するための、請求項8から12のいずれか一項に記載の、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の使用であって、a)ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地を溶媒に溶解させて、液体細胞培養培地を形成するステップと、b)前記液体細胞培養培地を、培養される前記細胞と接触させるステップとによる使用。 培養される前記細胞が哺乳動物細胞であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。 ステップa)における溶媒が水であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の使用。 本発明は、ペプトンもトリプトンも含まない細胞培養用の乾燥顆粒状の培地に関し、特に、哺乳動物及び/又は昆虫及び/又は植物細胞の成長を補助する細胞培養用の乾燥顆粒状の培地製剤に関する。本発明はさらに、これらの細胞培養用の乾燥顆粒状の培地の製造及びそれらの使用に関する。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る