タイトル: | 公表特許公報(A)_キメラスパイダーシルクおよびその使用 |
出願番号: | 2013530432 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 15/09,C07K 14/435,C07K 19/00,A01K 67/033,D01C 3/00,A61L 17/00,A61L 15/44,A61L 27/00 |
フレーザー,マルコム ジェイムズ ルイス,ランディー ジャーヴィス,ドン トンプソン,キンバリー ハル,ジョセフ ミャオ,ユンゲン トゥール,フロランス ソン,ボンヒ キム,ヨンス JP 2014502140 公表特許公報(A) 20140130 2013530432 20110928 キメラスパイダーシルクおよびその使用 ザ ユニバーシティー オブ ノートルダム 513073407 THE UNIVERSITY OF NOTRE DAME 特許業務法人北青山インターナショナル 110001302 フレーザー,マルコム ジェイムズ ルイス,ランディー ジャーヴィス,ドン トンプソン,キンバリー ハル,ジョセフ ミャオ,ユンゲン トゥール,フロランス ソン,ボンヒ キム,ヨンス US 61/387,332 20100928 C12N 15/09 20060101AFI20131227BHJP C07K 14/435 20060101ALI20131227BHJP C07K 19/00 20060101ALI20131227BHJP A01K 67/033 20060101ALI20131227BHJP D01C 3/00 20060101ALI20131227BHJP A61L 17/00 20060101ALI20131227BHJP A61L 15/44 20060101ALI20131227BHJP A61L 27/00 20060101ALI20131227BHJP JPC12N15/00 AC07K14/435C07K19/00A01K67/033 501D01C3/00 AA61L17/00A61L15/03A61L27/00 GA61L27/00 V AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN US2011053760 20110928 WO2012050919 20120419 83 20130520 4B024 4C081 4H045 4B024AA10 4B024AA20 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA02 4B024DA20 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA06 4B024FA10 4B024GA11 4C081AA01 4C081AB02 4C081AB18 4C081AC02 4C081BB07 4C081BB08 4C081CD111 4C081CE02 4C081DA04 4C081DB01 4H045AA10 4H045BA09 4H045BA41 4H045CA51 4H045EA60 4H045FA74 本研究は国立画像生物医学・生物工学研究所(National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering)、国立衛生研究所(National Institutes of Health)(DLJ)からの助成金R21 EB007247により支援されたものであるため、米国政府は、本出願の技術に権利を有しうる。University of Notre Dame Office of Research(MJF)との間の共同研究協定、およびKraig BioCraft Laboratories,Inc.(MJF)との研究協定が締結されている。 本発明は、改善した強度および柔軟性の特性を備えたキメラスパイダーシルク繊維を提供するので、シルク繊維の分野に関する。さらに、本発明は、特定のスパイダーシルク遺伝子配列(スパイダーシルク強度および/またはスパイダーシルク柔軟性および/または弾性のモチーフ配列)を有する、遺伝子操作によるトランスジェニックカイコを使用して、改善されたシルク繊維(具体的には、カイコ/スパイダーシルクのキメラ繊維)を製造するための方法を提供するので、キメラシルク繊維の製造方法の分野に関する。本発明はまた、スパイダーシルクの柔軟性および/または弾性のモチーフならびにスパイダーシルク強度のモチーフに特異的なスパイダーシルク遺伝子配列を含むキメラカイコ配列を含むように遺伝子操作されたトランスジェニックカイコ、ならびに特別に設計されたpiggyBacベクターを使用してこれらのトランスジェニックカイコを作製するための方法が記載されるので、トランスジェニック生物に関する。記載のトランスジェニックカイコを使用する、キメラシルク繊維についての商業生産方法も提供される。 シルク繊維は、多種多様の重要な外科手術用の縫合糸として長い間使用されてきた。より微細な繊維が、眼、神経、および美容外科の手術用の縫合糸として必要とされる。シルク繊維はまた、人工靭帯、人工腱、熱傷患者における皮膚移植用の弾性包帯、および支持体となり、一部の症例では、骨、歯周囲、および結合組織の再生中に一時的に機能しうるスキャフォールドのための材料として極めて有望である。外科的修復を必要とする前十字靭帯(ACL)および他の関節損傷の発生が高齢者層において増加するため、靭帯および腱の材料としてのシルク繊維の開発はますます重要になると予想される。縫合糸として現在使用される繊維は、少数のものが天然のカイコシルクに由来するが、大部分は化学工業により合成ポリマーとして製造される。この手法の大きな制限は、直径、強度、および弾性などの物理的性質の幅が狭いシルク繊維しか提供できないということである。 細菌(Lewis,et al.1996)、酵母(Fahnestock and Bedzyk,1997)、バキュロウィルス感染昆虫細胞(Huemmerich,et al.2004)、哺乳類細胞(Lazaris,et al.2002)、およびトランスジェニック植物(Scheller,et al.2001)を含む多種多様な組換え系が、種々のシルクタンパク質の産生に使用されている。しかしながら、これらの系はいずれも、天然には、シルクを紡ぐようには設計されておらず、したがって、いずれも、有用なシルク繊維を信頼性高く産生することはない。シルク繊維が商業的見地から有用であると見なされるためには、繊維は、適度な張力(強度)および柔軟性および/または弾性の特性を有し、所望の商業用途での繊維の創製に適していなければならない。したがって、この目的のために使用できる系に対する必要性は依然として存在する。 スパイダーシルクタンパク質はいくつかの異種タンパク質産生系で産生されている。それぞれの場合において、産生されるタンパク質量は、実際的な商業レベルをはるかに下回っている。トランスジェニック植物および動物の発現系は、スケールアップすることができるが、これらの系でも、費用効率を高めるため、組換えタンパク質産生レベルを実質的に増加させなければならないであろう。一層困難な問題は、これまでの製造努力が繊維ではなくタンパク質の産生にあったことである。したがって、ポストプロダクション法を使用して、タンパク質は繊維に紡がなければならない。これらの産生および紡糸の問題のため、商業的興味を引くほど長いスパイダーシルク繊維、すなわち「有用な」繊維を製造することができる組換えタンパク質産生系の例は依然として存在しない。 繊維を製造するための以前に報告された試みでは、クモのニワオニグモ(A.diadematus)由来のMaSpl、MaSp2、および関連シルクタンパク質をコードする遺伝子を発現するために哺乳類細胞系が使用された(Lazaris,et al.2002)。この研究では、60Kdのスパイダーシルクタンパク質ADF−3の産生が得られ、このタンパク質は精製され、ポストプロダクション紡糸方法を用いて繊維を製造するために使用された。しかしながら、この系では有用な繊維が一貫して製造されることはない。さらに、この手法は、タンパク質の可溶化、紡糸が成功する条件の開発、有用な性質を有する繊維を得るためのポストスピンドロー(post−spin draw)の実施が必要となるため、問題がある。 当技術分野には、生産に使用するために必要とされる要件である張力および柔軟性の特性を有するシルク繊維の製造を一貫して提供するための商業的方法が依然として存在しない。 本発明は、当技術分野における上記および他の問題点を克服するものである。具体的には、シルク繊維を紡ぐために天然に備わっているように、タンパク質精製、可溶化、および人為的なポストプロダクションの紡糸に関連した問題を回避する、商業規模に適合可能なトランスジェニックカイコ産生系を提供する。 一般的および全体的な意味において、本発明は、優れた張力および柔軟性の特性を有する商業的に有用なキメラシルク繊維の異種シルクタンパク質産生用のプラットフォームとしてトランスジェニックカイコを使用して、キメラスパイダーシルク繊維を製造するための生物工学的手法を提供する。キメラシルク繊維は、特定範囲の所望の物理的性質または所望の生物医学的用途のために最適化された所定の性質を有する繊維を提供するようにカスタムデザインすることができる。スパイダー/カイコシルクタンパク質およびキメラスパイダーシルク繊維: 一態様では、本発明は、1つまたは複数のスパイダーシルク柔軟性および/または弾性モチーフ/ドメイン配列および/または1つまたは複数のスパイダーシルク強度ドメイン配列を含む配列によりコードされる組換えキメラスパイダーシルク/カイコシルクタンパク質を提供する。一部の実施形態では、キメラスパイダー/カイコシルクタンパク質は、スパイダー2、スパイダー4、スパイダー6、またはスパイダー8のキメラスパイダー/カイコシルクタンパク質をコードするとしても記載される。 さらに、本発明は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質から調製されるキメラスパイダーシルク繊維のために提供される。特定の実施形態では、キメラスパイダーシルク繊維は、天然カイコシルク繊維と比較して、より大きな張力強度を有するとして、また一部の実施形態では、天然カイコ繊維と比較して最大2倍の張力強度を有するとして記載される。トランスジェニックカイコ: 別の態様では、本発明は、トランスジェニック生物、特に組換え昆虫およびトランスジェニック動物を提供する。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)などのトランスジェニックカイコである。特定の実施形態では、トランスジェニックカイコを提供するために形質転換されることになる宿主カイコは、天然シルク繊維を産生する能力を欠損する変異体カイコである。一部の実施形態では、カイコ変異体はpnd−wlである。 一部の実施形態では、変異体カイコ(B.mori)はpiggyBac系を使用して形質転換されることになるが、piggyBacベクターは、B.moriのfhcタンパク質のN末端断片およびC末端断片により挟まれた合成スパイダーシルクタンパク質配列を含有する発現カセットを使用して調製される。一般に、カイコの形質転換は、piggyBacベクターとpiggyBacトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドとの混合物を、カイコの卵に微量注入することにより前胚盤葉胚に導入することを含む。卵殻に穴をあけるために調整された、エッペンドルフのロボット注射針マニピュレーターを使用して、それを通してガラス毛細管が挿入され、DNA溶液がカイコの卵に注入される微小挿入孔を作製する。次いで、注入された卵を成熟させて、幼虫に孵化させる。幼虫は成熟カイコに成熟して、カイコの定型的生活環に従って繭を紡ぐことが可能になる。 これらのトランスジェニック昆虫を互いと、または非トランスジェニック昆虫/カイコと交雑育種することも、本発明の一部として提供される。スパイダーシルク遺伝子発現カセット: 別の態様では、本明細書で開示される、いくつかの特定のスパイダーシルク柔軟性および/もしくは弾性モチーフ配列ならびに/またはスパイダーシルク強度モチーフ配列の1つまたは複数に対応する1つまたは複数のスパイダーシルクタンパク質配列モチーフを含む、キメラカイコ/スパイダーシルク発現カセットが提供される。別の態様では、キメラスパイダーシルク/カイコタンパク質および繊維を産生するための方法が提供される。図5に示されるように、NTDとスパイダーシルク配列との間にインフレームで挿入されたEGFPがあるまたはない4つの異なる合成スパイダーシルクタンパク質をコードする少なくとも(8)種の異なるバージョンの発現カセットが提供される。これらの配列は、本明細書では、「スパイダー2」、「スパイダー4」、「スパイダー6」、および「スパイダー8」として識別される。トランスジェニックカイコ: さらに別の態様では、トランスジェニックカイコおよびトランスジェニックカイコを作製するための方法が提供される。一部の実施形態では、トランスジェニックカイコを作製する方法は、カイコ配列、1つまたは複数のスパイダーシルク強度モチーフ配列ならびに1つまたは複数のスパイダーシルク柔軟性および/または弾性モチーフ配列をコードするキメラスパイダーシルク配列を含む配列を有する発現カセットを調製すること、前記カセット配列をpiggyBacベクター(piggyBacベクターpBac[3xP3−DsRedaf]など)にサブクローニングすること(図6を参照のこと、親プラスミドについては図10〜11を参照のこと、親プラスミドからサブクローニングされたプラスミドについては図12A〜12Eを参照のこと)、piggyBacベクターとpiggyBacトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドとの混合物を、前胚盤葉のカイコの卵に(例えば、カイコの卵に微量注入することにより)導入すること、通常の育成条件(約28℃および湿度70%)の下で幼虫孵化まで、注入されたカイコ胚を維持すること、およびトランスジェニックカイコを得ることを含む。 これらのトランスジェニックカイコは、さらに交配してFl世代胚を生成させた後、S−Red眼マーカーの発現に基づいて、推定上の形質転換体を同定することができる。次いで、この方法により同定された推定上の雄性および雌性形質転換体を交配して、ホモ接合型の血統を作製し、さらに詳細な遺伝子分析を行う。具体的には、カイコの形質転換は、piggyBacベクターとヘルパープラスミドDNAの混合物を、透明な表皮のカイコ変異体であるpnd−wlのカイコ卵に注入することを含む。カイコ変異体であるpnd−wlについては、Tamura,et al.2000に記載されており、この文献は、その全体が具体的に本明細書に組み込まれる。この変異体には、蛍光遺伝子を使用するスクリーニングを極めて容易にするメラニン沈着欠乏症がある。いったん赤目の推定上のFl形質転換体が同定されると、ホモ接合型の血統がシルク腺タンパク質のウエスタンブロッティングを使用して確認され、繭シルクが採取された。キメラスパイダーシルク/カイコシルク繊維を製造する方法: さらに別の態様では、本発明は、トランスジェニックカイコにおいてキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を製造する商業生産方法を提供する。一実施形態では、この方法は、本明細書に記載のトランスジェニックカイコを作製すること、およびトランスジェニックカイコが成長し、繭を形成することを可能にする条件下でそれらを飼育すること、繭を採取すること、ならびに繭からキメラスパイダーシルク繊維を得ることを含む。シルク繭からシルク繊維をほぐす、かつ/またはそうでなければ採取する標準的手法を使用することができる。製品およびそれらを使用する方法: さらに別の態様では、本発明のキメラスパイダーシルク繊維から作られる種々の製品が提供される。例えば、組換えキメラスパイダー/カイコ繊維は、アイテムの中でも、医療縫合材料、創傷被覆および組織/関節置換および再建の材料および装置、薬物送達パッチおよび/または他の送達アイテム、保護服(防弾チョッキおよび他の用品)、レクリエーション用品(テント、パラシュート、キャンプ用具等)で使用することができる。 別の態様では、種々の医療手技において組換えキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を使用する方法が提供される。例えば、この繊維は、組換え繊維を用いて作製された組織工学的生体適合性構築物におけるスキャフォールドとして成長または再生において組織修復を促進するために、または繊維に組み込まれたタンパク質または治療剤を送達するために使用することができる。 他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用することができるが、以下では好ましい方法および材料を記載する。本明細書に記載の刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、参照により組み込まれる。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみを目的とし、限定することを意図するものではない。矛盾がある場合は、本明細書が、定義を含めて、統制するものとする。 本発明の他の目的及び利点は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態を読むことにより当業者には明らかになるであろう。図面では、参照数字等が要素等を指定するために使用されている。図1は、多岐にわたるコガネグモ類または派生コガネグモ類に由来する2つの大瓶状シルクタンパク質のアミノ酸配列を示す(Gatesy,et al.2001)。比較すると、特に上記の配列モチーフ内に、高レベルの配列保存が示され、この配列保存は、これらの種が互いから分岐して以来、1億2500万年にわたって維持されてきた。種々のコガネグモ種における大瓶状シルクタンパク質のコンセンサス反復アミノ酸配列(−)は他の配列と比較されたときにアミノ酸が存在しないことを示す。クモは次のとおりである:Nep.cは、ジョロウグモ(Nephila clavipes);Lat.gは、ハイイロゴケグモ(Lactrodectus geometricus);Arg.tは、シマニワオニグモ(Argiope trifasciata)。図2は、コガネグモ由来の小瓶状シルクタンパク質のコンセンサスアミノ酸配列を示す。最初の大瓶状シルクタンパク質配列が公表された直後に、ジョロウグモ(N.clavipes)由来の小瓶状シルク(Mi)タンパク質転写物を表わすcDNAが単離されて、配列決定された(Colgin and Lewis,1998)。この図に示されるMiSp配列には、MaSpタンパク質に対して、類似の配列および著しく異なる配列がある。MiSpにはGGXおよび短いpolyAla配列が含まれるが、MaSp中のより長いpolyAlaモチーフは、(GA)n反復に置き換えられている。コンセンサス反復は類似の構成を有するが、GGXおよびGAの数はかなり異なる。図3は、鞭毛状シルクタンパク質cDNAコンセンサス配列を示す。これらのシルクタンパク質cDNAは、ジョロウグモ(N.clavipes)の鞭毛状腺由来の捕獲用らせん状シルクタンパク質をコードする(図3;Hayashi and Lewis,2000)。これらのcDNAは、5’非翻訳領域および分泌シグナルペプチド、5個アミノ酸モチーフの数多くの反復、ならびにC末端をコードする配列を含有していた。ノーザンブロッティング分析は、ほぼ500Kdのタンパク質をコードする、大きさが約15kbのmRNAを示した。遺伝子配列から予測されるアミノ酸配列は、スパイダーシルクの弾性の物理的基礎の説明に役立つ、タンパク質構造のモデルを示唆し、これは、MaSp2の性質とも一致する(本明細書でさらに説明される)。図4は、βらせんのコンピュータモデルを示す。これは、各ペンタマー配列にタイプIIβターンがある構造から出発して、エネルギー最小化された(GPGGQGPGGY)2配列のモデルである。図5は、構築された基本的なカイコガ(Bombyx mori)シルクフィブロイン重鎖発現カセットに関するいくつかのバリエーションを示す。この設計には、フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現するように設計された構築物のアセンブリが含まれており、合成スパイダーシルクタンパク質配列が、B.mori fhcタンパク質のN末端およびC末端の断片により挟まれている。各発現カセット内の機能的に関連する遺伝エレメントには、左から右にかけて次のものが含まれる:B.mori fhc遺伝子に由来する主要プロモーター、上流エンハンサーエレメント(UEE)、基本プロモーター、およびN末端ドメイン(NTD)、その後に、NTDの上流に位置する翻訳開始部位とインフレームで位置する種々の合成スパイダーシルクタンパク質配列、その後に、翻訳終結部位およびRNAポリアデニル化部位を含むfhcのC末端ドメイン(CTD)。図6は、これらのカセットをpiggyBacにサブクローニングするための図を示す。図示された発現カセットの8つの異なるバージョンのそれぞれを、AscIおよびFseIを使用して、親プラスミドから切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]の対応する部位にサブクローニングした。このpiggyBacベクターのマップを示す。図7は、トランスジェニックカイコシルクのウエスタンブロットを示す。これらのシルクについて、スパイダーシルクに特異的な抗体を使用して、カイコシルク腺タンパク質含有物およびトランスジェニックカイコ繭からのシルク繊維の両方のウエスタンブロッティングにより、スパイダーシルクキメラタンパク質の存在を分析した。両方の場合において、トランスジェニックカイコはキメラタンパク質を産生することが確認され、微分抽出試験から、これらのタンパク質はトランスジェニックシルク繊維の不可欠な成分であることがわかった。さらに、蛍光実体顕微鏡を使用する、シルク腺またはシルク繊維の直接検査により、キメラ緑色蛍光タンパク質融合物のそれぞれの発現がシルク腺および繊維の両方において明らかになった。ほとんどの場合において、繊維中の蛍光タンパク質の量は、通常の照明下で、繭を緑色により視覚化するのに十分高いものであった。図8は、大きさが17,388bpである親プラスミドpSL−スパイダー#4を示す。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#4カセットであるスパイダーシルク(A4S8)×42を保持する。図9は、親プラスミドpSL−スパイダー#4+GFPを示す。GFPは緑色蛍光タンパク質である。このベクターの大きさは、18,102bpである。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#4に加えて、マーカータンパク質のGFP、カセットのスパイダーシルク(A4S8)×42を保持する。図10は、親プラスミドpSL−スパイダー#6を示す。この親プラスミドの大きさは、12,516bpである。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#6カセットのスパイダーシルク(A2S8)×l4)×42を保持する。図11は、親プラスミドpSL−スパイダー#6+GFPを示す。GFPは緑色蛍光タンパク質である。この親プラスミドの大きさは、13,230bpである。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#6に加えて、マーカータンパク質のGFP、カセットのスパイダーシルク(A4S8)×l4を保持する。図12Aは、piggyBacプラスミドであって、大きさが10,458bpであるpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX16構築物を示す。図12Bは、piggyBacプラスミドであって、大きさが11,250bpであるpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24構築物を示す。図13は、pSL−スパイダー#4の配列を示す。図14は、pSL−スパイダー#4+GFPの配列を示す。図15は、pSL−スパイダー#6の配列を示す。図16は、pSL−スパイダー#6+GFPの配列を示す。図17Aは、piggyBacベクターの設計であって、A2S814合成スパイダーシルク遺伝子を示す。図17Bは、piggyBacベクターの設計であって、スパイダー6キメラカイコ/スパイダーシルク遺伝子を示す。図17Cは、piggyBacベクターの設計であって、スパイダーシルク6−GFPキメラカイコ/スパイダーシルク遺伝子を示す。図17Dは、piggyBacベクターの設計であって、piggyBacベクターを示す。図17Eは、以下のシンボルを示す。鞭毛状弾性モチーフ(A2;120bp);大瓶状スピドロイン−2;スパイダーモチーフ(S8;55bp)Fhc主要プロモーター(1,157bp)、Fhcエンハンサー(70bp);Fhc基本プロモーター、Hhc5’翻訳領域(エキソン1/イントロン/エキソン2;Fhc N末端コード領域=1,744bp);EGF(720bp);A2SB14 スパイダーシルク配列(2,462bp)、Fhc C末端コード領域(180bp)、Fhcポリアデニル化シグナル(300bp)。図18Aは、繭中のキメラカイコ/スパイダーシルク/EGFPタンパク質の発現を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図18Bは、シルク腺を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図18Cは、シルク腺を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図18Dは、スパイダー6−GFPカイコに由来するシルク繊維を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図19は、シルク繊維の連続抽出を示す。本明細書に記載のように、pnd−wl(レーン3〜6)、スパイダー6(レーン8〜11)、またはスパイダー6−GFP(レーン13〜16)カイコから産生された繭はデガミングして、連続抽出プロトコールに付した。各抽出ステップで可溶化されたタンパク質は、SDSPAGEおよび(19A)クーマシーブルー染色または(19B)スパイダーシルクタンパク質−特異抗血清による免疫ブロッティングによって分析した。M:分子量マーカー。+:大腸菌(E.coli)で発現され精製されたA2S814スパイダーシルクタンパク質。レーン3、8、および13:生理食塩水抽出物。レーン4、9、および14:SDS抽出物。レーン5、10、および15:8M LiSCN/2%メルカプトエタノール抽出物。レーン6、11、および16:16M LiSCN/5%メルカプトエタノール抽出物。矢印はキメラスパイダーシルクタンパク質を示す。見かけの分子量は、大腸菌(E.coli)由来のA2S814については約75kDa、スパイダー6については約106kDa、スパイダー6−GFPについては約130kDaおよび約110kDaであった。図20は、トランスジェニックカイコ由来の複合繊維、親カイコ由来の天然繊維、および代表的な天然(牽引糸)スパイダーシルク繊維について観察された最良の機械的性能の比較を示す。繊維の靭性は、応力/歪み曲線下面積により定義される。練り天然および複合シルク繊維の機械的性質。天然カイコ(pnd−wl)および代表的なスパイダー(ジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸)シルク繊維について測定された最良の機械的性能を、トランスジェニックカイコにより産生された複合シルク繊維で得られたものと比較する。繊維はすべて、同じ条件下で試験した。最大靱性値は次のとおりである:天然カイコpnd−wl(43.9MJ/m3)と比較すると、スパイダー6系7(86.3MJ/m3);スパイダー6−GFP系1(98.2MJ/m3)、(スパイダー6−GFP系4(167.2MJ/m3);およびジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸(138.7MJ/m3)。これらのデータから、トランスジェニックカイコ由来の複合シルク繊維はすべて、非トランスジェニックカイコ由来の天然繊維よりも靱性が高いことがわかる。図21は、構築物pXLBacII−ECFP NTD CTD masplX16(10,458pb)の核酸配列を示す。図22は、構築物pXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24(11,250bp)の核酸配列を示す。 本発明で使用されるカイコ染色体に遺伝子を挿入する方法により、その遺伝子が染色体に安定に組み込まれ、発現され、かつ交配により同様に子孫に安定に受け継がれることが可能になる。カイコ卵への微量注入を使用する方法または遺伝子銃を使用する方法が使用できるが、使用される方法は、カイコ染色体への外来遺伝子の挿入のための標的遺伝子含有ベクターおよびトランスポゾン遺伝子(Nature Biotechnology 18,81−84,2000)を含有するヘルパープラスミドを同時にカイコ卵に微量注入することからなることが好ましい。 標的遺伝子は、微量注入されたカイコ卵から孵化し成長した組換えカイコの生殖細胞に挿入される。このようにして得られた組換えカイコの子孫は、その染色体中に標的遺伝子を安定に保持することができる。本発明で得られた組換えカイコの遺伝子は、通常のカイコと同じ方法で維持することができる。すなわち、通常条件下で卵を孵化させ、孵化した幼虫を人工飼料に集め、次いで、通常のカイコと同じ条件下でそれらを生育させることにより、第5齢のカイコまで生育させることができる。 本発明では得られた組換えカイコは、カイコの発育および成長を最大化するために、通常のカイコと同じ方法で生育させることができ、通常条件下で生育させることにより外来タンパク質を産生することができる。 本発明で得られた遺伝子組換えカイコは、通常のカイコと同じように、蛹になり繭を産生することができる。雄と雌は蛹段階で識別され、蛾に変態した後に、雄と雌を交配し、その翌日に卵を収集する。卵は、通常のカイコ卵と同じ方法で保存することができる。本発明の遺伝子組換えカイコは、上記のように、繁殖を繰り返すことによりその後の世代に継続することができ、かつ大量に増加させることができる。 本明細書で使用されるプロモーターに関して特に限定はなく、任意の生物に由来するいかなるプロモーターもカイコ細胞内で効果的に作用するならば使用することができるが、カイコシルク腺中でタンパク質を特異的に誘導するように設計されたプロモーターが好ましい。カイコシルク腺タンパク質プロモーターの例としては、フィブロイン重鎖プロモーター、フィブロイン軽鎖プロモーター、p25プロモーター、およびセリシンプロモーターが挙げられる。 本発明では、「キメラスパイダーシルクタンパク質を発現するための遺伝子カセット」は、昆虫細胞に挿入される場合には、キメラタンパク質の合成に必要な1組のDNAを指す。キメラスパイダーシルクタンパク質を発現するこの遺伝子カセットは、キメラスパイダーシルクタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進するプロモーターを含有する。通常、遺伝子カセットは、さらにターミネーターおよびポリA付加領域を含有し、好ましくは、プロモーター、外来タンパク質構造遺伝子、ターミネーター、およびポリA付加領域を含有する。さらに、遺伝子カセットは、プロモーターと外来タンパク質構造遺伝子との間に連結された分泌シグナル遺伝子を含有してもよい。任意の遺伝子配列を、ポリA付加配列と外来タンパク質構造遺伝子との間に連結してもよい。さらに、人工的に設計および合成された遺伝子配列も連結することができる。 さらに、「キメラスパイダーシルク/カイコ遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」は、両側に1対のpiggyBacトランスポゾンの逆方向反復配列を有し、piggyBacトランスポゾンの作用を介して昆虫細胞染色体に挿入される1組のDNAからなる、キメラスパイダーシルク/カイコ遺伝子を発現するための遺伝子カセットを指す。 本発明におけるベクターは、環状または線状のDNA構造を有するものを指す。大腸菌(E.coli)において複製することができ、かつ環状DNA構造を有するベクターが特に好ましい。このベクターには、形質転換体の選択を容易にする目的で、抗生物質耐性遺伝子またはクラゲ緑色蛍光タンパク質遺伝子などのマーカー遺伝子も組み込むことができる。 本発明で使用される昆虫細胞に関して特に限定はないが、それらは、好ましくは鱗翅類細胞、より好ましくはカイコガ(Bombyx mori)細胞、さらに一層好ましくはカイコシルク腺細胞またはカイコガ(Bombyx mori)卵に含まれる細胞である。シルク腺細胞の場合には、フィブロインタンパク質が活性に合成され、かつその細胞の取り扱いが容易であるので、第5齢カイコ幼虫の後部シルク腺細胞が好ましい。 昆虫細胞によるキメラスパイダーシルクタンパク質の発現のための遺伝子カセットを組み込むために使用される方法に関して特に限定はない。遺伝子銃を使用する方法および微量注入を使用する方法は、培養昆虫細胞への組み込みのために使用することができ、カイコシルク腺細胞に組み込む場合には、例えば、遺伝子銃を使用して、第5齢カイコ幼虫の体から取り出された後部シルク腺組織に遺伝子を容易に組み込むことができる。 遺伝子銃を使用する後部シルク腺への遺伝子組み込みは、例えば、粒子銃(Bio−Rad、モデル番号PDS−1000/He)を1,100〜1,800psiのヘリウムガス圧で使用するなどして、外来タンパク質を発現するための遺伝子カセットを含有するベクターでコーティングされた金粒子を寒天プレート上に固定された後部シルク腺に打ち込むことにより実行することができる。 カイコガ(Bombyx mori)の卵に含まれる細胞に遺伝子を組み込む場合は、微量注入を使用する方法が好ましい。ここで、卵に微量注入する場合、卵の細胞に直接微量注入することは必要でなく、それどころか、卵に単純に微量注入することにより遺伝子を組み込むことができる。 その染色体に本発明の「キメラスパイダーシルクタンパク質を発現するための遺伝子カセット」を含有する組換えカイコは、「キメラスパイダーシルク遺伝子を挿入するためのカセット」を有するベクターを、カイコガ(Bombyx mori)の卵に微量注入することにより得ることができる。例えば、第一世代(Gl)カイコは、Tamaraらの方法(Nature Biotechnology 18,81−84,2000)に従って、「キメラスパイダーシルク遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」を有するベクターとpiggyBacトランスポサーゼ遺伝子がカイコアクチンプロモーターの制御下に配置されたプラスミドとを、カイコガ(Bombyx mori)卵に同時に微量注入し、その後、孵化した幼虫を生育して、その結果得られた同じ群内の成虫(G0)と交配することにより得られる。組換えカイコは、このGl世代の中で1〜2%の頻度で通常出現する。 組換えカイコの選択は、Gl世代カイコの組織からDNAを単離した後、外来タンパク質遺伝子配列に基づいて設計されたプライマーを使用して、PCRにより行うことができる。あるいは、組換えカイコは、カイコ細胞で発現されうる、プロモーターの下流に連結された、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を、「遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」にあらかじめ挿入し、次いで、第1齢段階のGl世代カイコの中から紫外線下で緑色蛍光を発光する個体を選択することにより容易に選択することができる。 さらに、その染色体中に「外来タンパク質を発現するための遺伝子カセット」を含有する組換えカイコを得る目的で、カイコガ(Bombyx mori)卵に、「遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」を有するベクターを微量注入する場合も、組換えカイコは、上記と同じ方法で、piggyBacトランスポサーゼタンパク質を同時に微量注入することにより得ることができる。 piggyBacトランスポゾンは、両末端上の13塩基対の逆方向配列と約2.1kの塩基対の内部にあるORFとを有するDNAの転移因子を指す。本発明で使用されるpiggyBacトランスポゾンに関して特に限定はないが、使用可能なものの例としては、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞株TN−368、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPV(AcNPV)、およびガレリア・メロネア(Galleria mellonea)NPV(GmMNPV)に由来するものが挙げられる。好ましくは、遺伝子およびDNA転移活性を有するpiggyBacトランスポゾンは、プラスミドpHA3PIGおよびイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞株TN−368(Nature Biotechnology 18,81−84,2000)に由来するpiggyBacの一部を有するpPIGA3GFPを使用して調製することができる。piggyBacに由来するDNA配列の構造は、TTAA配列を含有する1対の逆方向末端配列を有することが必要とされ、それらのDNA配列の間に挿入されたサイトカイン遺伝子などの外来遺伝子を有する。トランスポゾンに由来するDNA配列を使用してカイコ染色体に外来遺伝子を挿入するためにトランスポサーゼを使用することがより好ましい。例えば、遺伝子がカイコ染色体に挿入される頻度は、カイコ細胞内で転写および翻訳されたトランスポサーゼが2対の逆方向末端配列を認識し、それらの間の遺伝子断片を切り取って、カイコ染色体にそれを転移できるように、piggyBacトランスポサーゼを発現することができるDNAを同時に挿入することによりかなり改善することができる。 本発明は、以下の説明によりさらに一層完全に認識することができる。生物医学領域におけるキメラシルクタンパク質: キメラスパイダーシルク繊維は、極めて細い繊維を必要とする眼科手術、神経修復、および形成外科などの手技の一部に広く用いられている材料の一部として提供される。さらなる使用としては、骨、靭帯、および腱の再生のためのスキャフォールド材料ならびに薬物送達のための材料が挙げられる。 本発明の方法により製造される組換えスパイダーシルク繊維は、血管創傷治癒装置、止血包帯、パッチ、および接着剤を含む創傷閉鎖システム、縫合糸、薬物送達などの種々の医療用途、ならびに例えば、スキャフォールド材料、靭帯人工器官などの組織工学用途、ならびに人体への長期的または生物分解性移植のための製品に使用することができる。好ましい組織工学的スキャフォールドは、本明細書に記載の組換えスパイダーシルク/カイコ繊維を用いて作製された繊維の不織ネットワークである。 さらに、本発明の組換えキメラシルク繊維は、これらに限定されないが、脊椎ディスク、頭蓋組織、硬膜、神経組織、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、心筋、骨格筋、腱、靭帯、および胸部組織を含む、これらのユニークなスキャフォールドから恩恵を受けうる、器官の修復、置換または再生の戦略に使用することができる。 本発明の別の実施形態では、組換えスパイダーシルク繊維材料は治療剤を含有することができる。これらの材料を形成するために、治療剤は、材料形成に先立って繊維の中に組み込んでもよく、形成後に材料に負荷してもよい。本発明の組換えキメラシルク繊維と併せて使用することができる異なる治療剤の種類は莫大である。一般に、本発明の医薬組成物を介して投与することができる治療剤としては、限定はされないが、抗生物質および抗ウイルス剤などの抗感染剤;化学療法剤(すなわち制癌剤);抗拒絶剤;鎮痛剤および鎮痛配合剤;抗炎症剤;ステロイドなどのホルモン剤;増殖因子(骨形態形成タンパク質(すなわちBMP1〜7)、骨形態形成様タンパク質(すなわちGFD−5、GFD−7、およびGFD−8)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(すなわちFGF1〜9)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様増殖因子(IGF−IおよびIGF−II)、形質転換増殖因子(すなわちTGF−βI〜III)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF);および他の天然由来または遺伝子改変のタンパク質、多糖、糖タンパク質、またはリポタンパク質が挙げられる。これらの増殖因子は、R.G.Landes Companyが出版したThe Cellular and Molecular Basis of Bone Formation and Repair by Vicki Rosen and R.Scott Thiesに記載されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。 生理活性物質を含有するスパイダーシルク/カイコ繊維は、1つまたは複数の治療剤をこの材料を作製するために使用される繊維と混合することにより製剤化することができる。あるいは、治療剤は、好ましくは医薬として許容される担体を用いて繊維上にコーティングすることができる。繊維を溶解しない任意の医薬担体を使用することができる。治療剤は、液体、微粉固体、または他のいかなる適切な物理的形態として存在してもよい。 治療剤の量は、使用される特定の薬物および治療されている病状に依存することになる。典型的には、薬物量は、材料重量の約0.001パーセント〜約70パーセント、より典型的には約0.001パーセント〜約50パーセント、最も典型的には約0.001パーセント〜約20パーセントを占める。体液または組織と接触すると、例えば、薬物は放出されることになる。 組換えスパイダーシルク/カイコ繊維で作製された組織工学スキャフォールドは、作製後にさらに改変することができる。例えば、スキャフォールドは、所望の細胞集団のための受容体または化学誘引物質として機能する生理活性物質でコーティングすることができる。このコーティングは、吸収または化学結合を介して施すことができる。 本発明による使用に適した添加物は、生物学的または医薬的に活性な化合物を含む。生物学的に活性な化合物の例としては、細胞接着に影響を及ぼすことが知られている「RGD」インテグリン結合配列のバリエーションを含有するペプチドなどの細胞接着メディエーター、生物学的に活性なリガンド、および特定の種類の細胞または組織の内殖を促進または排除する物質が挙げられる。そのような物質としては、例えば、骨形態形成タンパク質(BMP)などの骨形成誘導物質、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インシュリン様増殖因子(IGF−IおよびII)、TGF−、YIGSRペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロン酸(HA)、インテグリン、セレクチン、およびカドヘリンが挙げられる。 スキャフォールドは、再建手術を含む、組織工学的および組織先導的再生用途に向けた用品に形成される。スキャフォールドの構造は、細胞内殖を可能にし、細胞の前播種の必要性を除去する。スキャフォールドはまた、成型して、外部支持器官を形成する細胞のインビトロ培養の支持体のための外部スキャフォールド材料を形成することができる。 スキャフォールドは、体内の細胞外マトリックス(ECM)を模倣するように機能する。スキャフォールドは、インビトロ培養およびその後の移植期間中の、単離細胞ための物理的支持体および接着基質の両方として役立つ。移植された細胞集団が増殖して、細胞が正常に機能するにつれて、細胞はそれ自体のECM支持体を分泌し始める。 軟骨および骨のような構造組織の再建では、組織形状が機能するのに不可欠であり、種々の厚さおよび形状の用品にスキャフォールドを成形する必要がある。3次元構造に所望されるいかなる凹部、開口部、または精密部分も、はさみ、メス、レーザービーム、または他の切断器具でマトリックスの一部を除去することにより作製することができる。スキャフォールドの用途としては、神経、筋骨格、軟骨、腱、肝臓、膵臓、眼、外皮、動静脈、泌尿器、または任意の他の組織形成固体または中空器官などの組織の再生が挙げられる。 スキャフォールドはまた、3次元の組織または器官を形成させるために、分離細胞、例えば軟骨細胞または肝細胞のためのマトリックスとして移植で使用することができる。任意のタイプの細胞を、培養および可能な移植のためのスキャフォールドに加えることができ、これらの細胞には、筋肉および骨格系の細胞、例えば軟骨細胞、線維芽細胞、筋細胞、および骨細胞、実質細胞、例えば肝細胞、膵細胞(膵島細胞を含む)、腸起源の細胞、および他の細胞、例えば神経細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、多能性細胞、および幹細胞、ならびにそれらの組合せが含まれ、これらは、ドナー由来、樹立された株化細胞由来、または遺伝子操作の前もしくは後のものであってもよい。組織の断片も使用することができ、同じ構造の中にいくつかの異なる細胞タイプを用意することができる。 細胞は、適切なドナーまたはその細胞が移植されることになる患者から入手して、標準的手法を使用して分離し、スキャフォールドの上および中に播種する。インビトロでの培養を、場合によっては移植前に実行してもよい。あるいは、スキャフォールドを移植して血管新生させ、次いで、細胞をスキャフォールドに注入する。インビトロでの細胞培養および組織スキャフォールドの移植のための方法および試薬は、当業者には公知である。 本意図の組換えスパイダーシルク/カイコ繊維は、放射線滅菌(すなわちガンマ線)、化学滅菌(エチレンオキシド)、または他の適切な手段等の従来の滅菌方法を使用して滅菌することができる。好ましくは、滅菌工程は52〜55℃の間の温度で8時間以下の時間エチレンオキシドを用いてなされる。滅菌後、生体材料は、輸送ならびに病院および他の医療施設での使用のために、適切な滅菌耐湿性パッケージの中に詰められる。 本発明のキメラシルク繊維はまた、運動用衣類および防弾チョッキの製造/製作など、種々の形態の運動用および防護用衣服の製造において要請を受ける可能性がある。本明細書で開示のキメラスパイダーシルク繊維はまた、改善されたエアバッグの製作など、自動車産業で使用することができる。開示のキメラシルク繊維を使用するエアバッグは、クモの巣の餌食になる、飛んでいる昆虫のエネルギーをクモの巣が吸収するときよりも、自動車事故でのより大きな衝撃エネルギーに備える。定義 本明細書で使用される場合、生体適合性は、シルク繊維またはそれから作製される材料が、無毒で、突然変異性がなく、最小から中程度の炎症反応を誘発することを意味する。本発明で使用される好ましい生体適合性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、アルギネート、キトサン、キチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、デキストラン、およびポリ酸無水物が挙げられる。本発明によると、2つ以上の生体適合性ポリマーを水溶液に加えることができる。 本明細書で使用される場合、柔軟性および/または弾性モチーフおよび/またはドメイン配列は、シルク繊維などの材料に弾性および/または柔軟性の特性を付与することに関連するスパイダーシルクをコードする遺伝子またはタンパク質の断片の同定可能な遺伝子配列として定義される。例として、柔軟性および/または弾性モチーフおよび/またはドメインはGPGGAである。 本明細書で使用される場合、強度モチーフは、シルク繊維の張力強度を増加および/または向上させるなど、材料に強度特性を付与することに関連するスパイダーシルクをコードする遺伝子またはタンパク質の断片の同定可能な遺伝子配列として定義される。例として、これらのスパイダー強度モチーフの一部は、GGPSGPGS(A)8(Aはポリアデニン配列である)である。 本発明は、本発明の代表例となるように意図する、以下の実施例によりさらに特徴づけられるであろう。実施例1−材料および方法 本実施例は、トランスジェニックカイコの作製に使用する材料および方法/手法、使用する遺伝子構築物の作製に使用する基本手順、ならびにトランスジェニックスパイダーシルク繊維の張力強度の評価に使用する参照表を説明するために提供する。 1.使用する遺伝子配列。使用する遺伝子は、本明細書に提示の図13〜16に示す。保存的置換を有する、例えば実質的に同じキメラスパイダーシルクタンパク質特性を有する、これらの配列のより短いおよび/またはより長いバージョンを使用することが可能であると考えられるので、これらのバリエーションは本発明の一部として構想される。 2.キメラシルクタンパク質およびこれらのキメラスパイダーシルクタンパク質を用いて得られる繊維は、張力強度のために評価される。表1に、キメラスパイダーシルク繊維の評価に対する一般的な基準を示す。本発明のキメラスパイダーシルク繊維は、天然スパイダーシルクに類似の張力および他の機械的強度特性を有することが見出された。実施例2−個々の形質転換されたカイコシルクの張力強度特性の分析 トランスジェニックカイコシルクについて、スパイダーシルク特異抗体を使用して、カイコシルク腺タンパク質含有物およびトランスジェニックカイコ繭からのシルク繊維の両方のウエスタンブロッティングによりスパイダーシルクキメラタンパク質の存在を分析した。両方の場合に、トランスジェニックカイコがキメラタンパク質を産生すると確認され、微分抽出試験から、これらのタンパク質がそれらの繭のトランスジェニックシルク繊維の不可欠な成分であることがわかった。さらに、蛍光実体顕微鏡を使用する、シルク腺またはシルク繊維の直接検査により、キメラ緑色蛍光タンパク質融合物のそれぞれの発現がシルク腺および繊維の両方において明らかになった。ほとんどの場合において、繊維中の蛍光タンパク質の量は、通常の照明下で、繭を緑色により視覚化するのに十分高いものであった。 表2に、個々のトランスジェニックカイコから産生されたトランスジェニックシルクの分析を示す。これらの分析から、スパイダー4またはスパイダー6構築物を用いて形質転換されたトランスジェニック系は、形質転換されていないカイコからのシルク繊維と比較すると強度が改善したキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を産生することが明確にわかる。これらの繊維が、ある場合には天然シルクのほぼ2倍の強度があることは意義がある。カイコ/スパイダーシルクキメラ繊維の強度における2倍の改善は、カイコシルクをスパイダーシルクと同様の強度および柔軟性にするのに必要と考えられる改善にほぼ近い。したがって、これらの結果から、カイコを遺伝子操作して、スパイダーシルクの特定の強度および/または柔軟性ドメインをコードするpiggyBacベクターを使用してBombyx/スパイダーシルクキメラタンパク質を構築することにより、天然スパイダーシルクと有利に競争することができるキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を産生させることができることが判明する。実施例3−トランスジェニックカイコにおけるキメラスパイダーシルク/カイコタンパク質発現のためのカイコキメラ遺伝子発現カセットおよびpiggyBacベクター 本実施例は、種類が莫大なカイコキメラスパイダーシルク遺伝子発現カセットを用意する際の本発明の有用性および範囲を実証するために提供する。本実施例はまた、カイコの形質転換が成功することが示されたpiggyBacベクターの完成、および生産において商業的に有用な長さの繊維の製造に適している、商業的に有用なキメラスパイダーシルクタンパク質の製造の成功を実証する。発現カセット。 以下に示す基本的な発現カセットに関していくつかのバリエーションを構築した。これらの構築物は、フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現するように設計された構築物のアセンブリを表しており、合成スパイダーシルクタンパク質配列が、B.mori fhcタンパク質のN末端およびC末端の断片により挟まれている。この点に関し、図5に示す基本的なカイコガ(Bombyx mori)シルクフィブロイン重鎖発現カセットに関するいくつかのバリエーションを構築した。この設計には、フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現するように設計された構築物のアセンブリが含まれており、合成スパイダーシルクタンパク質配列が、B.mori fhcタンパク質のN末端およびC末端の断片により挟まれている。各発現カセット内の機能的に関連する遺伝エレメントには、左から右にかけて次のものが含まれる:B.mori fhc遺伝子に由来する主要プロモーター、上流エンハンサーエレメント(UEE)、基本プロモーター、およびN末端ドメイン(NTD)、その後に、NTDの上流に位置する翻訳開始部位とインフレームで位置する種々の合成スパイダーシルクタンパク質配列(以下を参照)、その後に、翻訳終結部位およびRNAポリアデニル化部位を含むfhcのC末端ドメイン(CTD)。 8つの異なるバージョンの発現カセットが図5に図示されており、これらは、NTDとスパイダーシルクとの間にインフレームでのEGFPの挿入があるまたはない4つの異なる合成スパイダーシルク/カイコタンパク質をコードする。これらの配列を、「スパイダー2」、「スパイダー4」、「スパイダー6」、および「スパイダー8」と名付け、以下のように定義する。a)スパイダー2:(A4S8)24からなる7,104bp。A1は、推定上の鞭毛状シルク弾性モチーフ(GPGGA)の4コピーを示す;したがって、A4は、この同じ配列の16コピーを示す。S8は、推定上の牽引糸シルク強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8]を示し、「リンカー−ポリアラニン」配列としても記載される。GFP(緑色蛍光タンパク質)融合タンパク質のおよその大きさは161.9+50.4=212.3Kdである。b)スパイダー4:(A2S8)42からなる7,386bp。A2は、推定上の鞭毛状シルク弾性モチーフ(GPGGA)の8コピーを示す;S8は、上記のように、推定上の牽引糸シルク強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8]を示す。GFP融合タンパク質のおよその大きさは169.4+50.4=219.8Kdである。c)スパイダー6:(A2S8)14からなる2,462bp。上記のように、A2は弾性モチーフ(GPGGA)の8コピーを示し、S8は強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8]を示す。GFP融合タンパク質のおよその大きさは56.4+50.4=106.8Kdである。d)スパイダー8:(A2S8)28からなる4,924bp。上記のように、A2は弾性モチーフ(GPGGA)の8コピーを示し、S8は強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8]を示す。GFP融合タンパク質のおよその大きさは112.8+50.4=163.2Kdである。 NTDエキソンIおよびIIの大きさ(1625+15161);eGFP(27135);CTD(6470)=50,391Kd。実施例4−piggyBacへの発現カセットのサブクローニング 図5に図示した(そして実施例3に記載した)8つの異なるバージョンの発現カセットのそれぞれを、AscIおよびFseIを使用して親プラスミドから切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]の対応する部位にサブクローニングした。このpiggyBacベクターのマップを図6に示す。 EGFPを有するおよびEGFPを有さない、上記のすべてのpiggyBacベクターを、個々の成分に関してPCRにより試験すると、予測された大きさの生成物が示された。 EGFPに融合したスパイダーシルクタンパク質をコードするpiggyBacベクターのそれぞれは、B.moriシルク腺においてEGFP発現を誘導するそれらの能力をアッセイすることにより機能的に評価した。手短に言えば、シルク腺をカイコから取り出し、粒子銃を使用して、piggyBac DNA(または対照)でコーティングされたタングステン粒子をこの腺に打ち込んだ。次いで、打ち込まれた組織を、培養皿のグレース培地中で培養し、2日および3日後に、共同研究者の研究室で利用可能なEGFP蛍光のための装備がある実体顕微鏡を使用して、EGFP発現についてシルク腺を検査した。各ベクターはEGFP蛍光を誘導することが示された。 EGFP挿入があるおよび挿入がないスパイダー4および6をコードする4つのpiggyBacベクターのセットを使用して、トランスジェニックカイコを作製した。実施例5−トランスジェニックカイコの単離。 一般に、カイコの形質転換は、piggyBacベクターとpiggyBacトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドとの混合物を、カイコの卵に微量注入することにより前胚盤葉胚に導入することを含む。卵が産まれた後4時間の間は、胚盤葉形成は起こらない。したがって、胚の収集および注入は、比較的長時間にわたって室温で行うことができる。微量注入の技術的なハードルは、硬い障壁となる卵殻を突破する必要があることである。Tamuraおよび共同研究者は、鋭利なタングステン針を用いて卵殻を貫通し、次いで、得られた穴にガラス毛細管注射針を正確に挿入することによりカイコの微量注入手法を完成した。これは現在では比較的ルーチン的な手技になっており、卵殻に穴をあけ、タングステン針を除去し、ガラス毛細管を挿入し、そしてDNA溶液を注入するように調整されたエッペンドルフのロボット注射針マニピュレーターを用いて実行される。次いで、Krazy接着剤を小滴使用して卵を再密封し、幼虫に孵化するまで28℃および湿度70%の通常の生育条件下で維持した。次いで、生存する注入された昆虫は、交配してFl世代の胚を生成し、その後続いてDS−Red眼マーカーの発現に基づいて推定上の形質転換体を同定する。次いで、この方法により同定された推定上の雄性および雌性形質転換体を交配して、ホモ接合型の血統を作製し、さらに詳細な遺伝子分析を行う。 具体的には、本プロジェクトに関するカイコの形質転換は、piggyBacベクターとヘルパープラスミドDNAの混合物を、透明な表皮のカイコ変異体であるカイコガ(Bombyx mori)pnd−wlの卵に注入することを含む。この変異体カイコについては、Tamura,et al.2000に記載されており、この文献は、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる。この変異体には、蛍光遺伝子を使用するスクリーニングを極めて容易にするメラニン沈着欠乏症がある。いったん赤目の推定上のFl形質転換体を同定すると、ホモ接合型の血統を確立して、本物の形質転換体をシルク腺タンパク質のウエスタンブロッティングを使用して確認し、繭シルクを採取した。実施例6−トランスジェニックカイコによるキメラスパイダーシルク/カイコ産生の分析 トランスジェニックカイコシルクについて、スパイダーシルク特異抗体を使用して、カイコシルク腺タンパク質含有物およびトランスジェニックカイコ繭からのシルク繊維の両方のウエスタンブロッティングによりスパイダーシルクキメラタンパク質の存在を分析した。両方の場合において、トランスジェニックカイコはキメラタンパク質を産生することが確認され、微分抽出実験から、これらのタンパク質は、それらの繭のトランスジェニックシルク繊維の不可欠な成分であることがわかった。 さらに、蛍光実体顕微鏡を使用する、シルク腺またはシルク繊維の直接検査により、キメラ緑色蛍光タンパク質融合物のそれぞれの発現がシルク腺および繊維の両方において明らかになった(図7)。ほとんどの場合において、繊維中の蛍光タンパク質の量は、通常の照明下で、繭を緑色により視覚化するのに十分高いものであった。実施例7−piggyBacベクターの設計 piggyBacは、効率的にカイコを形質転換するために使用することができるので、本プロジェクトのために選択したベクターになった4,11,43。本プロジェクトで使用した特定のpiggyBacベクターは、いくつかの重要な特徴を備えた遺伝子を保有するように設計した。図17に強調表示されているように、これらには、外来スパイダーシルクタンパク質の発現を後部シルク腺でさせるであろうB.moriフィブロイン重鎖(fhc)プロモーター91,92、ならびに外来シルクタンパク質の発現レベルおよび繊維へのそのアセンブリを促進するであろうfhcエンハンサー93が含まれた。piggyBacベクターはまた、弾性(GPGGA)8および強度(リンカー−アラニン8)の両モチーフを有する比較的大きな合成スパイダーシルクタンパク質であるA2S814をコードした(図17A)。合成スパイダーシルクタンパク質配列は、カイコガ(Bombyx mori)fhcタンパク質のN末端およびC末端ドメインをコードする配列の内側に埋め込んだ(図17B〜17C)。このキメラカイコ/スパイダーシルクの設計は、外来タンパク質をB.moriシルク腺における新生内因性シルク繊維に組み込むように仕向けて、複合シルク繊維を産生するために使用されてきた91、92。 本研究で構築されたpiggyBacベクターの1つでは、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質が単独でコードされたが(図17B)、別のベクターでは、N末端高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)タグを有するこの同じタンパク質がコードされた(図17C)。本明細書で記載のように、後者の構築物は、形質転換した子孫により産生されるシルク繊維の分析を容易にし、さらに、シルク腺におけるキメラスパイダーシルクタンパク質の発現を検討ための予備的な生体外シルク腺打ち込みアッセイのために使用された。方法: いくつかの遺伝子断片を、カイコガ(Bombyx mori)株P50/Daizoのシルク腺から単離されたゲノムDNAと図17に示す遺伝子特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離した。これらの断片には、fhcの主要プロモーターおよび上流エンハンサーエレメント(MP−UEE)、異なる5’−および3’−フランキング制限部位を有する、2バージョンのfhcの基本プロモーター(BP)およびN末端ドメイン(NTD;エキソン1/イントロン1/エキソン2)、fhcのC末端ドメイン(CTD;3’コード配列およびポリAシグナル)、ならびにEGFPが含まれる。それぞれの場合において、増幅産物をゲル精製し、予測された大きさのDNA断片を切除して回収した。続いて、fhcのMP−UEE、fhcのCTD、およびEGFP断片をpSLfall80fa(pSL)(Y.Miao)にクローニングし、2つの異なるNTD断片をpCR4−TOPO(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、そして適切な増幅産物を含有する大腸菌(E.coli)形質転換体を制限酵素マッピングにより同定し、配列決定により確認した。 次いで、以下のように、これらの断片を使用して、本研究で使用するpiggyBacベクターを組み立てた。合成A2S814スパイダーシルク配列を、BamHIおよびBspEIを用いて、pBluescript SKII+プラスミド前駆体(F.Teule and R.V.Lewis)から切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL中間プラスミドにおいてCTD上流の対応する部位にサブクローニングした。このステップにより、pSL−スパイダー6−CTDと名付けたプラスミドを得た。次いで、Not1 BamHI断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドの1つから切除し、ゲル精製して回収し、そしてpSLスパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングして、pSL−NTD−スパイダー6−CTDを作製した。並行して、Not1/Xbal断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドから切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL−EGFP中間プラスミドにおいてEGFPアンプライマー上流の対応する部位にサブクローニングした。これにより、NTD−EGFP断片を含有するプラスミドが得られ、この断片をNotlおよびBamHIを用いて切除し、pSL−スパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングした。次いで、MP−UEE断片を上記のpSL中間プラスミドからSfiIおよびNot1を用いて切除し、ゲル精製して回収し、上記の2つの異なる中間pSLプラスミドにおいてNTD−スパイダー6−CTDおよびNTD−EGFP−スパイダー6−CTD配列の上流の対応する部位にサブクローニングした。最後に、完全に組み立てられたMP−UEE−NTD−A2S814−CTDまたはMP−UEE−NTD−EGFPA2S814−CTDカセットを、それぞれの最終的なpSLプラスミドからAscIおよびFseIを用いて切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]98の対応する部位にサブクローニングした。この最後のサブクローニングステップにより、EGFPマーカーの有無を示すためにスパイダー6およびスパイダー6−EGFPと名付けられた、2つの別々のpiggyBacベクターが得られた。下記に記載のように、これらのベクターは、生体外シルク腺打ち込みアッセイおよびカイコ遺伝子組換えのために使用した。結果: 生体外アッセイの結果は、GFPタグ付きキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質をコードするpiggyBacベクターが後部シルク腺領域で緑色蛍光を誘導することを示した。GFP特異抗体を用いる免疫ブロッティングアッセイはさらに、打ち込まれたシルク腺が、約116kDaの見かけの分子量(Mr)を有する免疫反応性タンパク質を含有することを実証した。予測(106kDa)よりわずかに大きいが、これらの結果は、本piggyBacベクターの基本設計の検証となり、これらの構築物を使用する、トランスジェニックカイコの単離を促した。実施例8−トランスジェニックカイコの単離 各piggyBacベクターを、piggyBacトランスポサーゼをコードするプラスミドと混合し、その混合物をカイコガ(Bombyx mori)pnd−wl43から単離した卵に独立に微量注入した。形質転換体におけるEGFPタグ付きキメラカイコ−スパイダーシルクタンパク質の検出を容易にする、透明な表皮表現型を生じるメラニン沈着欠乏症を有するので、このカイコ株を使用した。推定上のFl形質転換体は、各piggyBacベクター(図17D)に含まれる神経特異的3XP3プロモーター27の制御下にあるDS−Redの発現に起因する赤眼表現型により最初に同定した。方法に記載のように、これらの動物は、いくつかのホモ接合型トランスジェニックカイコの血統を樹立するために使用し、それらの形質転換に使用したpiggyBacベクターを表して、スパイダー6およびスパイダー6−GFPと名付けた。方法:生体外シルク腺打ち込みアッセイ 第5齢の3日目に入っている、生きているカイコガ(Bombyx mori)株pnd−wlカイコを、70%エタノールに数秒間液浸して滅菌し、0.7%w/vのNaCI中に置いた。次いで、シルク腺全体を各動物から無菌的に切り離し、抗生物質添加のグレース培地を含有するペトリ皿に移し、DNA打ち込み工程までそこに保持した。並行して、タングステンミクロ粒子(1.7μm M−25マイクロキャリヤー;Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を、以下のように、打ち込み用にDNAでコーティングした。ミクロ粒子を、製造業者の説明書に従って前処理し、3mg/50μlアリコートで50%グリセロール中に−20℃で保存した。各打ち込み実験の直前に、製造業者の説明書に従って、ミクロ粒子アリコート3mgを最大容量5μl中で適切なpiggyBac DNA5μgでコーティングした。ミクロ粒子アリコートの一部を、DNA陰性対照として使用するために蒸留水でコーティングした。各打ち込み実験を6回反復し、個々の打ち込みにはそれぞれ1対のインタクトシルク腺が含まれた。打ち込みの場合、グレース培地中での保持状態から1%w/vの滅菌寒天を含有する90mmペトリ皿上にこれらの腺を移し、ペトリ皿を、Bio−Rad Biolistic(登録商標)PDS−1000/He Particle Delivery Systemチャンバーの中に置いた。以前に記載されているように26、チャンバーを20〜22Hgに排気し、シルク腺に、1,100psiのヘリウム圧力を使用して、粒子源から標的組織まで6cmの距離で、前コーティングしたタングステンミクロ粒子を打ち込んだ。打ち込み後、シルク腺を、2×抗生物質添加のグレース培地を含有する新たなペトリ皿に置き、28℃でインキュベートした。スパイダー6−GFPのpiggyBacベクターにおけるEGFPマーカーの一過性発現を、打ち込み後48および72時間に蛍光顕微鏡で評価した。画像を、倍率4.2倍、位相1/120秒、緑色蛍光1/110秒(捕捉)でオリンパスFSX100顕微鏡を用いて取得した。さらに、下記に記載されるように、EGFPタグ付きおよびタグなしキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の一過性発現を、打ち込まれたシルク腺抽出物をEGFP−またはスパイダーシルク−特異抗血清を用いて免疫ブロッティングすることにより評価した。カイコの形質転換 pnd−wlガによる産卵1時間後に卵を集め、スライドガラス上に並べた。ベクターおよびヘルパープラスミドをそれぞれ、0.2μg/ulの最終濃度で注入緩衝液(0.1mMリン酸ナトリウム、5mM KC1、pH6.8)中に再懸濁し、1〜5nlを、World Precision Instruments PV820圧力調節器(米国)、Suruga Seiki M331マイクロマニピュレーター(日本)、およびNarishige HD−21ダブルピペットホルダー(日本)からなる注入システムを使用して、各前胚盤葉カイコ胚に注入した。穴をあけられた卵は、Helping Hand Super Glueゲル(The Faucet Queens,Inc.,USA)を用いて密封し、次いで、胚発生のために25℃および湿度70%の成長チャンバーの中に置いた。孵化後、幼虫を人工飼料(日本農産工業株式会社、日本)で飼育し、同じ系内の同胞を交配することによりその後の世代を得た。トランスジェニック子孫は、550〜700nmの間のフィルターを備えたオリンパスSXZ12顕微鏡(東京、日本)を使用して、DsRedの蛍光眼マーカーの存在により試験的に同定した。結果: 特別にEGFPを励起せずに白色光の下で目視検査を行っても、EGFPの発現は、スパイダー6−GFP形質転換体により産生される繭で観察された(図18A)。さらに、これらの動物に由来するシルク腺(図18B〜18C)および繭(図18D)を蛍光顕微鏡下で検査すると、EGFPの強い発現が観察された。繭は、EGFPシグナルと融合したシルク繊維を少なくとも一部含むように見えた。スパイダー6−GFPのシルク腺および繭におけるEGFPタグ付きキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現は、EGFPおよびスパイダーシルクタンパク質に対する特異抗血清を用いて、シルク腺および繭の抽出物を免疫ブロッティングすることにより確認した(図19)。スパイダー6のシルク腺および繭の抽出物に関しても同様の結果が、スパイダーシルクタンパク質特異抗血清を用いる免疫ブロッティングにより得られた(図19)。これらの結果は、我々が、EGFPタグ付きまたはタグなし形態のキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質をコードするトランスジェニックカイコの単離に成功したこと、およびこれらのタンパク質が、それらのトランスジェニック動物により産生されるシルク繊維に結合していることを示した。実施例9−複合シルク繊維の分析 連続タンパク質抽出法を使用して、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質とトランスジェニックカイコから産生される複合シルク繊維との関連を分析した。緩く結合したセリシン層を除去した後、方法に記載のように、この練りシルク繊維を、苛酷さを増していく一連の抽出に付した。方法:カイコ繭タンパク質の連続抽出 親カイコおよびトランスジェニックカイコから産生された繭を採取し、セリシン層を、0.05%(w/v)のNa2CO3中で、材料:溶媒比を1:50(w/v)にして、85℃にて15分間繭を穏やかに撹拌することにより除去した40。この練りシルクを、槽から取り出し、同じ材料:溶媒比で、熱水(50〜60℃)を用いて注意深く撹拌しながら2回洗浄した。次いで、練りシルク繊維を凍結乾燥して秤量し、セリシン層除去の効率を評価した。この練り繊維を使用して、確実に一定の撹拌を行う混合ホイール上での回転による連続タンパク質抽出プロトコールを、以下のように行った。練りシルク繊維30mgを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;137mM NaCl、2.7mM KC1、10mM Na2P04、1.8mM KH2P04)中で、4℃にて16時間処理した。この材料を遠心分離により不溶性分画と可溶性分画に分離し、上清を取り出し、PBS可溶性分画として−20℃に保存し、ペレットを次の抽出に付した。このペレットを2%(w/v)SDS1mlに再懸濁し、室温で16時間インキュベートした。再び、材料を遠心分離により不溶性画分と可溶性分画に分離し、上清を取り出し、SDS可溶性分画として−20℃に保存し、ペレットを次の抽出に付した。このペレットを、2%(v/v)β−メルカプトエタノールを含有する9M LiSCN1mlに再懸濁し、室温で16〜48時間インキュベートした。遠心分離後、上清を9M LiSCN/BME可溶性分画として−20℃に保存した。このステップで得られた最終ペレットを、5%(v/v)BMEを含有する16M LiSCN1mlに再懸濁し、室温で約1時間インキュベートした。これにより完全に溶解し、最終抽出物が得られ、この抽出物は、16M LiSCN可溶性分画として、免疫ブロッティングアッセイを実施するまで−20℃に保存した。シルクタンパク質の分析 生体外打ち込みアッセイに由来するシルク腺およびさらに未処置の親カイコおよびトランスジェニックカイコに由来するシルク腺を、1%(w/v)SDSおよび5M尿素を含有するリン酸ナトリウム緩衝液(30mM Na2P04、pH7.4)中で、氷上ホモジナイズし、次いで、4℃の微量遠心機で、13,500rpmにて5分間、澄明化した。上清をシルク腺抽出物として収集し、これらの抽出物および上記の連続繭抽出物を、10mM Tris−HCl/2%SDS/5%BME緩衝液で4倍に希釈し、約90μgの総タンパク質を含有する試料をSDS−PAGE負荷緩衝液と1:1で混合し、95℃で5分間煮沸し、4〜20%グラジエントゲル(Pierce Protein Products;Rockford,IL)上に負荷した。分離後、製造業者の説明書に従い、Bio−Rad転写セルを使用して、タンパク質をゲルからPVDF膜(Immobilon(商標);Millipore,Billerica,MA)に転写した。ジョロウグモ(Nephila clavipes)の鞭毛状シルク様A2ペプチドに対して産生された、スパイダーシルクタンパク質特異ポリクローナルウサギ抗血清(GenScript Corporation,Piscataway,NJ)または商用EGFP特異マウスモノクローナル抗体(Living Colors(登録商標)GFP,Clontech Laboratories,Mountain View,CA)を一次抗体として使用して、免疫検出を実施した。二次抗体はそれぞれ、ヤギ抗ウサギIgG−HRP(Promega Corporation,Madison,WI)またはヤギ抗マウスIgG H+L HRPコンジュゲート(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)とした。抗体はすべて、標準ブロッキング緩衝液(l×PBST/0.05%脱脂粉乳)中で、1:10,000希釈で使用し、抗体抗原反応を、商用キット(ECL(商標)Western Blotting Detection Reagents;GE healthcare)を使用して化学発光により可視化した。結果: この手順の各ステップの後に、可溶性分画と不溶性分画を遠心分離により分離し、可溶性分画は免疫ブロッティングのために保存し、不溶性分画は次の抽出のために使用した。最終抽出溶媒は残存するシルク繊維を完全に溶解した。免疫ブロッティングの対照から、スパイダーシルクタンパク質特異抗血清は、pnd−wlシルク繊維中のいずれのタンパク質も認識しないが(図19B、レーン3〜6)、大腸菌(E.coli)で産生されたキメラカイコ/A2S814スパイダーシルクタンパク質を認識する(図19B、レーン2)ことが確認された。生理食塩水(図19B、レーン8および13)、SDS(図19B、レーン9および14)、および8M LiSCN/2%β−メルカプトエタノール(図19B、レーン10および15)を使用して、トランスジェニック動物由来の練り繭を連続抽出しても、いかなる検出可能な免疫反応性のタンパク質も放出されなかった。しかしながら、残留シルク繊維を16M LiSCN/5%β−メルカプトエタノールによりその後抽出すると、残留スパイダー6から分子量約106kDaの免疫反応性タンパク質(図19、レーン11)、そして残留スパイダー6−GFP繊維から分子量約130および約110kDaの免疫反応性タンパク質(図19、レーン16)が放出された。これらのタンパク質はすべて、予測されたもの(スパイダー6およびスパイダー6−GFPについてそれぞれ、78kDaおよび106kDa)より大きかった。これらの差異についての可能な説明としては、高度に反復性のスパイダーシルク配列による転写/翻訳の「スタッタリング(stuttering)」、SDS−PAGE上でのタンパク質産物の異常な泳動、および/またはキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の翻訳後修飾が挙げられる。免疫ブロッティングの陽性対照である、大腸菌(E.coli)で産生されたキメラカイコ/A2S814スパイダーシルクタンパク質もまた、分子量が予測されたもの(60kDa)よりも大きかった(約75kDa)。両トランスジェニックカイコ系の練り繭に由来する16M LiSCN/5%β−メルカプトエタノール抽出物はまた、分子量が約40〜約75kDaの免疫反応性スメアを含んでおり、これはキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の分解および/または翻訳の早期終結をおそらく反映している。導入遺伝子産物の大きさまたはその出現の理由にもかかわらず、連続抽出結果により、ここに記載のように提供されたトランスジェニックカイコは、複合シルク繊維に極めて安定に組み込まれたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を発現することが明確に実証された。実施例10−複合シルク繊維の機械的性質 トランスジェニックカイコにより産生された複合シルク繊維の練り天然および複合シルク繊維の機械的性質をここに記載する。 試験のための複合シルク繊維の調製方法および試験の実施方法を以下の方法に示す。方法: 機械的性質の試験に使用する練りカイコシルク繊維は、初期長(L0)が19mmであった。単繊維試験は、MTS 標準50Nセルおよび特注品の10g荷重セル(Transducer Techniques,Temecula CA)の両方が装着されたSynergie 100システム(MTS Systems Corporation,Eden Prairie MN)を使用して、周囲条件(20〜22℃および湿度19〜22%)で実施した。機械的性質データ(荷重および伸長)は、歪み速度5mm/分および周波数250MHzで、TestWorks(登録商標)4.05ソフトウェア(MTS Systems Corporation,Eden Prairie,MN)を用いて両方の荷重セルで記録し、これにより応力値および歪み値を計算した。各繊維について収集したデータセットから応力/歪み曲線を、MATLAB(バージョン7.1)を使用してプロットし、靭性(または切断エネルギー)、ヤング率(初期剛性)、最大応力、および最大伸張(=最大%歪み)を決定した。結果: これらの結果から、EGFPタグ付きまたはタグなしのいずれかのキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する練り複合繊維は、pnd−wlカイコ由来の天然繊維よりも顕著に大きな伸長性および幾分改善した強度および剛性を有することが実証された(表3および図20)。表3:親カイコおよびトランスジェニックカイコにより産生された12〜15シルク繊維の機械的性質を、正確に調整した温度、湿度、および試験速度の条件下で測定し、その平均値および標準偏差を表に示す。同じ条件下で並行して決定されたスパイダー(ジョロウグモ(Nephila clavipes)牽引糸シルク繊維の平均の機械的性質を比較のために含む。 したがって、これらの複合繊維は天然カイコシルク繊維よりも靱性が高い。トランスジェニック動物により産生された複合シルクの機械的性質は、親株により産生された天然繊維のものより変動しやすかった。さらに、2つの異なるスパイダー6−GFP系により産生された複合繊維は同様の伸長性を示したが、張力強度は異なっていた。個々のトランスジェニック系内の複合シルク繊維の機械的性質について観察された変動および系間の変動は、複合繊維における不均一性を表わしている可能性があり、この不均一性は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質比および/または繊維に沿ったこれらのタンパク質の局在化の差による可能性がある。図18Dにおいて、複合繊維に不均一性がある証拠を見ることができる。トランスジェニックカイコ由来の複合繊維、親カイコ由来の天然繊維、および代表的な牽引糸スパイダーシルク繊維について観察された最良の機械的性能の比較を図20に示す。この結果から、複合繊維はすべて、pnd−wlカイコ由来の天然シルク繊維よりも靱性が高いことがわかる。また、トランスジェニックスパイダー6−GFP系4カイコ由来の複合繊維は、同じ条件下で試験された天然スパイダー牽引糸シルク繊維よりもさらに靱性が高かった。これらの結果は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の組み込みにより、トランスジェニックカイコプラットフォームを使用して産生される複合シルク繊維の機械的性質が顕著に改善されうることを実証する。 天然カイコ(pnd−wl)およびスパイダー(ジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸)シルク繊維について測定された最良の機械的性能を、トランスジェニックカイコにより産生された複合シルク繊維で得られたものと比較する。繊維はすべて、同じ条件下で試験した。最大靱性値は次のとおりである:カイコpnd−wl(青線、43.9MJ/m3));スパイダー6系7(オレンジ線、86.3MJ/m3);スパイダー6−GFP系1(濃緑線、98.2MJ/m3)、(スパイダー6−GFP系4(淡緑線、167.2MJ/m3);およびジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸(赤線、138.7MJ/m3)。(表3を参照のこと)。実施例11−安定に組み込まれたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する複合繊維 スパイダーシルクには、多くの異なる用途に向けた生体材料として非常に多くの使用法がある。これまで、クモ飼育に対する深刻な障害が天然生産活動等を損なっていた。スパイダーシルク繊維産生にとって有効な生物工学的手法を開発する必要性が、本開示で提供されたプラットフォームで示される。組換えスパイダーシルクタンパク質の産生に使用するための他のプラットフォームが記載されてきたが、これらのタンパク質を有用な繊維に効率的に加工することは困難であった。単なるタンパク質ではなく繊維を製造する必要性のため、この特定の生物工学的用途に適任のプラットフォームとしてカイコが位置づけられる。 スパイダーシルクタンパク質を産生するために遺伝子操作されたトランスジェニックカイコは、カイコガ(Bombyx mori)セリシン(Serl)プロモーターの転写制御下にある、天然ジョロウグモ(Nephila clavipes)の大瓶状スピドロイン−1シルクタンパク質をコードするpiggyBacベクターを使用して単離された。スピドロイン配列はC末端fhcペプチドをコードする下流配列と融合された。このpiggyBac構築物を使用して単離されたトランスジェニックカイコは、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する繭を産生したが、このタンパク質は緩く結合したセリシン層でのみ見出された。これに対して、本開示のトランスジェニックカイコにより産生されたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質は、複合繊維の不可欠な成分であった。他の研究者により設計されたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の比較的緩い結合は、とりわけN末端カイコfhcドメインの欠如を反映している可能性がある。あるいは、piggyBacベクターにおけるSer1プロモーターの使用は、このプロモーターが中部シルク腺で転写活性であるため、適切な繊維アセンブリととりわけ調和しない可能性があるが、一方、fhc、フィブロイン軽鎖、およびヘキサメリンタンパク質の発現を制御するfhc、flc、およびfhxのプロモーターはそれぞれ、後部シルク腺において活性である。カイコシルクタンパク質の繊維へのアセンブリは、シルク遺伝子発現の厳格な空間的および時間的調節により部分的に制御される。したがって、本開示のベクターは、キメラタンパク質が新たにアセンブリされた複合シルク繊維に安定して組み込まれることを促進するために、天然シルクタンパク質と同じ場所および同じ時間にキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の蓄積を促すようにfhcプロモーターで巧妙に仕組まれている。他の研究者が、いくつかのトランスジェニックカイコにより産生された繭に由来する繊維の弾性および張力強度が少し増加することを記載している。しかしながら、セリシン層は機械的性質試験の前に除去されておらず、このデガミングステップは、商業シルク繊維生産のための繭の処理において不可欠である。したがって、繭が従来の様式で処理された場合、組換えスパイダーシルク/カイコタンパク質は除去され、得られるシルク繊維には、機械的性質の改善が期待されないであろう。 スパイダーシルクタンパク質を産生するトランスジェニックカイコは、ヘキサフルオロ溶媒に溶解するシルクタンパク質から繊維を再生することに焦点を当てた他の研究の比較的微量な構成要素として報告された。それにもかかわらず、この研究では、ジョロウグモ(Nephila clavipes)の大瓶状スピドロイン−1または鞭毛状シルクタンパク質に由来する極端に短い合成「シルク様」配列をコードするpiggyBacベクターを用いて生成された2つのトランスジェニックカイコが記載されていた。両方のシルク様ペプチドは、N末端およびC末端fhcドメインの内側に埋め込まれていた。機械的性質試験から、これらのトランスジェニック動物により産生されたシルク繊維は、幾分大きな張力強度(41〜73MPa)を有し、かつ弾性には変化がないことがわかった。これらの研究者はまた、それらの複合繊維の機械的性質において観察された比較的小さな変化は、組換えタンパク質の組み込みが低レベルであることを反映していると報告している。また、それらの構築物に使用された特定のスパイダーシルク様ペプチド配列および/またはそれらの大きさが小さいことによって、それらのトランスジェニックカイコにより産生された複合繊維の機械的性質の比較的小さな変化が少なくとも部分的に説明されうる可能性もある。 本トランスジェニックカイコおよび複合繊維は最初のものであり、それらの機械的性質を顕著に改善する、安定に組み込まれたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する複合シルク繊維を産生するトランスジェニックカイコ系が得られた。本トランスジェニックカイコ系により産生される複合スパイダーシルク/カイコ繊維は、天然牽引糸スパイダーシルク繊維よりも靱性が一層高かった。これは、他の要因の中でも、少なくとも部分的には、反復鞭毛状様(GPGGA)4弾性モチーフおよび大瓶状スピドロイン−2[リンカー−アラニン8]結晶モチーフをコードする、2.4kbpのA2S814合成スパイダーシルク配列の使用による可能性がある。この比較的大きな合成スパイダーシルクタンパク質は、大腸菌(E.coli)で産生された後、押出しにより繊維に紡ぐことができ、このタンパク質が繊維にアセンブルする天然の能力を保持していることが示される。しかしながら、このタンパク質は、シルク繊維に組み込まれるために、一斉に発現され、内因性のカイコfhc、flc、およびfhxタンパク質と相互作用しなければならないであろう。したがって、A2S814スパイダーシルク配列は、アセンブリ過程を指向して、N末端およびC末端fhcドメインの内側に埋め込まれた。fhcプロモーターが内因性カイコシルクタンパク質に空間的および時間的に接近してそれらの発現を駆動する能力と共に、これらの特徴は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質が複合シルク繊維のアセンブリに参加し、その機械的性質に顕著に寄与する能力を少なくとも部分的に説明することができる。実施例12−piggyBacベクター構築物およびpiggyBacベクターの構成要素のPCR増幅 いくつかの遺伝子断片を、カイコガ(Bombyx mori)株P50/Daizoのシルク腺から単離したゲノムDNAおよび表4に示す遺伝子特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により単離した。これらの断片には、fhcの主要プロモーターおよび上流エンハンサーエレメント(MP−UEE)、異なる5’−および3’−フランキング制限部位を有する、2バージョンのfhcの基本プロモーター(BP)およびN末端ドメイン(NTD;エキソン1/イントロン1/エキソン2)、fhcのC末端ドメイン(CTD;3’コード配列およびポリAシグナル)、ならびにEGFPが含まれる。それぞれの場合において、増幅産物をゲル精製し、予測された大きさのDNA断片を切除して回収した。続いて、fhcのMP−UEE、fhcのCTD、およびEGFP断片をpSLfall80faにクローニングし、2つの異なるNTD断片をpCR4−TOPO(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、そして適切な増幅産物を含有する大腸菌(E.coli)形質転換体を制限酵素マッピングにより同定し、配列決定により確認した。次いで、以下のように、これらの断片を使用して、この研究で使用するpiggyBacベクターを組み立てた。合成A2S814スパイダーシルク配列を、BamHIおよびBspELを用いて、pBluescript SKII+プラスミド前駆体から切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL中間プラスミドにおいてCTD上流の対応する部位にサブクローニングした。このステップにより、pSL−スパイダー6−CTDと名付けたプラスミドを得た。次いで、Not1/BamHI断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドの1つから切除し、ゲル精製して回収し、そしてpSL−スパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングして、pSL−NTD−スパイダー6−CTDを作製した。並行して、Not1/Xbal断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドから切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL−EGFP中間プラスミドにおいてEGFPアンプライマー上流の対応する部位にサブクローニングした。これにより、NTD−EGFP断片を含有するプラスミドが得られ、この断片をNotlおよびBamHIを用いて切除し、pSL−スパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングした。次いで、MP−UEE断片を上記のpSL中間プラスミドからSfi1およびNot1を用いて切除し、ゲル精製して回収し、上記の2つの異なる中間pSLプラスミドにおいてNTD−スパイダー6−CTDおよびNTD−EGFP−スパイダー6−CTD配列の上流の対応する部位にサブクローニングした。最後に、完全に組み立てられたMP−UEE−NTD−A2S814−CTDまたはMP−UEE−NTD−EGFPA2S814−CTDカセットを、それぞれの最終的なpSLプラスミドからASc1およびFse1を用いて切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]の対応する部位にサブクローニングした(Horn,et al.(2002),Insect Biochem.Mol.Biol.,32:1221−1235)。この最後のサブクローニングステップにより、EGFPマーカーの有無を示すためにスパイダー6およびスパイダー6−EGFPと名付けられた、2つの別々のpiggyBacベクターが得られた。以下の表に、使用されたpiggyBacベクターの重要な構成要素の一部を収戴する。実施例13−maspクローニング 本実施例は、プラスミド、具体的にはpXLBacII ECFPプラスミドの内部にNTD領域を含有する遺伝子構築物を提供することにより本発明の有用性を実証する。 pXLBacII ECFPプラスミドに加えてNTD領域を含有する潜在的に陽性のクローンは、PCRによるコロニースクリーニングにより示される。 pXLBacII−ECFP NTD CTD maspX16(10,458bp)(図12A)およびpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24(11,250 bp)(図12B)の遺伝子構築物maspを作製した。 当業者にとって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の修正および変更をなすことができることは明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価形態の範囲に入るならば、本発明の修正および変更を包含することが意図される。参考文献以下の参考文献は、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる。1. 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United States Patent 5,728,810 Lewis. カイコ配列、1つまたは複数のスパイダーシルク弾性モチーフ配列、1つまたは複数のスパイダーシルク強度モチーフ配列、またはその組合せを含むキメラ配列によりコードされることを特徴とする組換えスパイダーシルクタンパク質。 請求項1に記載の組換えシルクタンパク質において、前記スパイダーシルク弾性モチーフ配列が、MaSp様モチーフ配列またはMiSp様モチーフ配列であることを特徴とする組換えシルクタンパク質。 請求項2に記載の組換えスパイダーシルクタンパク質において、前記MaSp様モチーフが、MaSp1、MaSp2、またはそれらの組合せであることを特徴とする組換えスパイダーシルクタンパク質。 請求項1に記載の組換えスパイダーシルクタンパク質において、成長促進ペプチドをさらに含むことを特徴とする組換えスパイダーシルクタンパク質。 請求項1に記載の組換えシルクタンパク質を含むキメラスパイダーシルク/カイコ繊維であって、前記シルク繊維が天然カイコシルク繊維よりも大きな張力強度を有することを特徴とするキメラスパイダーシルク/カイコ繊維。 1つまたは複数のスパイダーシルク弾性モチーフ配列、1つまたは複数のスパイダーシルク強度モチーフ配列、またはそれらの組合せを含む配列を有する組換えキメラ遺伝子を有することを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項6に記載のトランスジェニックカイコにおいて、前記カイコが、天然カイコ繊維よりも2倍大きな張力強度を有するキメラスパイダーシルク/カイコ繊維の製造に適したキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を産生することができることを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項5に記載のトランスジェニックカイコにおいて、前記トランスジェニックカイコが、トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)カイコであることを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項6に記載のトランスジェニックカイコにおいて、8つのスパイダーシルク弾性モチーフ配列を含むことを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項8に記載のトランスジェニックカイコにおいて、前記スパイダーシルク弾性モチーフ配列が、MaSp様モチーフ配列またはMiSp様モチーフ配列であることを特徴とするトランスジェニックカイコ。 フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現することができるカイコガ(Bombyx mori)シルクフィブロイン重鎖発現カセットを含む遺伝子構築物であって、前記構築物が、スパイダーシルク弾性モチーフ配列、スパイダーシルク強度モチーフ配列、またはその両方をコードするスパイダーシルクタンパク質配列を含み、前記構築物が、カイコガ(Bombyx mori)fhcシルクタンパク質のN末端およびC末端断片により挟まれていることを特徴とする遺伝子構築物。 請求項11に記載の遺伝子構築物において、前記スパイダーシルクタンパク質配列が、4〜8コピーの推定上の鞭毛状シルク弾性モチーフ配列および1〜4コピーの推定上の牽引糸シルク強度モチーフ配列を含むことを特徴とする遺伝子構築物。 請求項11に記載の遺伝子構築物において、前記弾性モチーフ配列がGPGGAであり、かつ前記強度モチーフ配列がGGPSGPGS(A)8であることを特徴とする遺伝子構築物。 図5に定義されるような遺伝子構築物。 図12Aに定義されるようなpiggyBacベクター。 図12Bに定義されるようなpiggyBacベクター。 キメラスパイダーシルク複合繊維の生産のための製造方法であって、 a.)キメラスパイダーシルク強度モチーフ配列、スパイダーシルク柔軟性モチーフ配列、またはそれらの組合せをコードする遺伝子を有するpiggyBacベクター系を使用して、トランスジェニックカイコを作製すること; b.)前記トランスジェニックカイコに、前記カイコにとって天然の適切な生理学的条件下で繭を産生させること; c.)繭を収集してキメラスパイダーシルク繊維を抽出することを含むことを特徴とする製造方法。 請求項17に記載の方法において、前記トランスジェニックカイコが、トランスジェニックカイコガ(Bomby mori)カイコであることを特徴とする方法。 スパイダーシルク複合繊維へのアセンブリに適した、安定なキメラスパイダーシルクタンパク質を安定に発現することができるトランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)カイコを作製する方法であって、前記キメラスパイダーシルクタンパク質が、スパイダーシルク柔軟性モチーフ配列、スパイダーシルク強度モチーフ配列、またはそれらの組合せを含む配列によりコードされており、前記方法が、 a.)スパイダーシルク柔軟性モチーフ配列、スパイダーシルク強度モチーフ配列、またはそれらの組合せを有する組換え遺伝子カセットを含むpiggyBacベクターを、変異カイコガ(Bombyx mori)の卵に挿入して、注入されたカイコガ(Bombyx mori)卵を準備すること; b.)適切なインキュベーション条件下で前記卵を孵化させて幼虫を準備すること; c.)適切なインキュベーション条件下で前記幼虫を成熟させること;および c.)トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)カイコを選択することを含むことを特徴とする方法。 請求項19に記載の方法において、組換え遺伝子カセットが、トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)の選択のために緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むことを特徴とする方法。 請求項19に記載の方法において、前記piggyBacベクターが、pXLBacII−ECFP NTD CTD masplX16(10,458pb)またはpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24(11,250bp)であることを特徴とする方法。 安定に組み込まれたスパイダーシルクタンパク質を含む合成複合シルク繊維であって、前記合成複合シルク繊維が、天然カイコシルク繊維の張力強度と比較して、かつ天然スパイダーシルク繊維と比較して、より大きな張力強度を有することを特徴とする合成複合シルク繊維。 請求項22に記載の合成複合シルク繊維において、安定に組み込まれた治療用分子をさらに含むことを特徴とする合成複合シルク繊維。 スパイダーシルク弾性モチーフ配列および/またはスパイダーシルク強度モチーフ配列に特異的なスパイダーシルクドメインを有するキメラスパイダーシルクタンパク質をコードするキメラスパイダーシルクタンパク質遺伝子を有しかつ発現するように操作されたトランスジェニックカイコを開示する。さらに、天然カイコシルク繊維に比較して、改善した強度(張力)および弾性特性を有する改善されたカイコシルク繊維を提供する。本明細書に開示のトランスジェニックカイコを使用し、piggyBacをベースとしたベクター系およびヘルパープラスミドを使用する、キメラシルク繊維を調製するための改善方法も提供する。遺伝子発現カセットを準備し、それを使用して、配列(スパイダー2、スパイダー4、スパイダー6、スパイダー8)をコードするいくつかの合成スパイダーシルクを作製する。piggyBacベクター系を使用して、ヘルパープラスミドの存在下で変異体カイコを形質転換し、そのカイコにキメラスパイダーシルク遺伝子を組み込み、安定な形質転換体を提供する。このようにして、これらのトランスジェニックカイコは、シルク繊維の商業生産に適した効率的なスパイダーシルク産生生物を提供する。 20130528A16330全文3関連出願の相互参照 本出願は、2011年9月28日に出願された国際出願第PCT/US2011/053760号明細書の継続出願であって、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、2010年9月28日に出願された米国仮特許出願第61/387,332号明細書に対する、米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものである。連邦政府支援の研究または開発に関するステートメント 本研究は国立画像生物医学・生物工学研究所(National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering)、国立衛生研究所(National Institutes of Health)(DLJ)からの助成金R21 EB007247により支援されたものであるため、米国政府は、本出願の技術に権利を有しうる。University of Notre Dame Office of Research(MJF)との間の共同研究協定、およびKraig BioCraft Laboratories,Inc.(MJF)との研究協定が締結されている。配列表の参照による組み込み 2013−03−21に作成、2013−03−21に修正された、ファイルサイズ180,265バイトのファイル「[127191_0011_US_ST25]」に含まれる配列表は、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれるものとする。国際出願第PCT/US2011/053760号明細書および米国仮特許出願第61/387,332号明細書の配列表もまた、もしあれば、それらの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれるものとする。 本発明は、改善した強度および柔軟性の特性を備えたキメラスパイダーシルク繊維を提供するので、シルク繊維の分野に関する。さらに、本発明は、特定のスパイダーシルク遺伝子配列(スパイダーシルク強度および/またはスパイダーシルク柔軟性および/または弾性のモチーフ配列)を有する、遺伝子操作によるトランスジェニックカイコを使用して、改善されたシルク繊維(具体的には、カイコ/スパイダーシルクのキメラ繊維)を製造するための方法を提供するので、キメラシルク繊維の製造方法の分野に関する。本発明はまた、スパイダーシルクの柔軟性および/または弾性のモチーフならびにスパイダーシルク強度のモチーフに特異的なスパイダーシルク遺伝子配列を含むキメラカイコ配列を含むように遺伝子操作されたトランスジェニックカイコ、ならびに特別に設計されたpiggyBacベクターを使用してこれらのトランスジェニックカイコを作製するための方法が記載されるので、トランスジェニック生物に関する。記載のトランスジェニックカイコを使用する、キメラシルク繊維についての商業生産方法も提供される。 シルク繊維は、多種多様の重要な外科手術用の縫合糸として長い間使用されてきた。より微細な繊維が、眼、神経、および美容外科の手術用の縫合糸として必要とされる。シルク繊維はまた、人工靭帯、人工腱、熱傷患者における皮膚移植用の弾性包帯、および支持体となり、一部の症例では、骨、歯周囲、および結合組織の再生中に一時的に機能しうるスキャフォールドのための材料として極めて有望である。外科的修復を必要とする前十字靭帯(ACL)および他の関節損傷の発生が高齢者層において増加するため、靭帯および腱の材料としてのシルク繊維の開発はますます重要になると予想される。縫合糸として現在使用される繊維は、少数のものが天然のカイコシルクに由来するが、大部分は化学工業により合成ポリマーとして製造される。この手法の大きな制限は、直径、強度、および弾性などの物理的性質の幅が狭いシルク繊維しか提供できないということである。 細菌(Lewis,et al.1996)、酵母(Fahnestock and Bedzyk,1997)、バキュロウィルス感染昆虫細胞(Huemmerich,et al.2004)、哺乳類細胞(Lazaris,et al.2002)、およびトランスジェニック植物(Scheller,et al.2001)を含む多種多様な組換え系が、種々のシルクタンパク質の産生に使用されている。しかしながら、これらの系はいずれも、天然には、シルクを紡ぐようには設計されておらず、したがって、いずれも、有用なシルク繊維を信頼性高く産生することはない。シルク繊維が商業的見地から有用であると見なされるためには、繊維は、適度な張力(強度)および柔軟性および/または弾性の特性を有し、所望の商業用途での繊維の創製に適していなければならない。したがって、この目的のために使用できる系に対する必要性は依然として存在する。 スパイダーシルクタンパク質はいくつかの異種タンパク質産生系で産生されている。それぞれの場合において、産生されるタンパク質量は、実際的な商業レベルをはるかに下回っている。トランスジェニック植物および動物の発現系は、スケールアップすることができるが、これらの系でも、費用効率を高めるため、組換えタンパク質産生レベルを実質的に増加させなければならないであろう。一層困難な問題は、これまでの製造努力が繊維ではなくタンパク質の産生にあったことである。したがって、ポストプロダクション法を使用して、タンパク質は繊維に紡がなければならない。これらの産生および紡糸の問題のため、商業的興味を引くほど長いスパイダーシルク繊維、すなわち「有用な」繊維を製造することができる組換えタンパク質産生系の例は依然として存在しない。 繊維を製造するための以前に報告された試みでは、クモのニワオニグモ(A.diadematus)由来のMaSpl、MaSp2、および関連シルクタンパク質をコードする遺伝子を発現するために哺乳類細胞系が使用された(Lazaris,et al.2002)。この研究では、60Kdのスパイダーシルクタンパク質ADF−3の産生が得られ、このタンパク質は精製され、ポストプロダクション紡糸方法を用いて繊維を製造するために使用された。しかしながら、この系では有用な繊維が一貫して製造されることはない。さらに、この手法は、タンパク質の可溶化、紡糸が成功する条件の開発、有用な性質を有する繊維を得るためのポストスピンドロー(post−spin draw)の実施が必要となるため、問題がある。 当技術分野には、生産に使用するために必要とされる要件である張力および柔軟性の特性を有するシルク繊維の製造を一貫して提供するための商業的方法が依然として存在しない。 本発明は、当技術分野における上記および他の問題点を克服するものである。具体的には、シルク繊維を紡ぐために天然に備わっているように、タンパク質精製、可溶化、および人為的なポストプロダクションの紡糸に関連した問題を回避する、商業規模に適合可能なトランスジェニックカイコ産生系を提供する。 一般的および全体的な意味において、本発明は、優れた張力および柔軟性の特性を有する商業的に有用なキメラシルク繊維の異種シルクタンパク質産生用のプラットフォームとしてトランスジェニックカイコを使用して、キメラスパイダーシルク繊維を製造するための生物工学的手法を提供する。キメラシルク繊維は、特定範囲の所望の物理的性質または所望の生物医学的用途のために最適化された所定の性質を有する繊維を提供するようにカスタムデザインすることができる。スパイダー/カイコシルクタンパク質およびキメラスパイダーシルク繊維: 一態様では、本発明は、1つまたは複数のスパイダーシルク柔軟性および/または弾性モチーフ/ドメイン配列および/または1つまたは複数のスパイダーシルク強度ドメイン配列を含む配列によりコードされる組換えキメラスパイダーシルク/カイコシルクタンパク質を提供する。一部の実施形態では、キメラスパイダー/カイコシルクタンパク質は、スパイダー2、スパイダー4、スパイダー6、またはスパイダー8のキメラスパイダー/カイコシルクタンパク質をコードするとしても記載される。 さらに、本発明は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質から調製されるキメラスパイダーシルク繊維のために提供される。特定の実施形態では、キメラスパイダーシルク繊維は、天然カイコシルク繊維と比較して、より大きな張力強度を有するとして、また一部の実施形態では、天然カイコ繊維と比較して最大2倍の張力強度を有するとして記載される。トランスジェニックカイコ: 別の態様では、本発明は、トランスジェニック生物、特に組換え昆虫およびトランスジェニック動物を提供する。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)などのトランスジェニックカイコである。特定の実施形態では、トランスジェニックカイコを提供するために形質転換されることになる宿主カイコは、天然シルク繊維を産生する能力を欠損する変異体カイコである。一部の実施形態では、カイコ変異体はpnd−wlである。 一部の実施形態では、変異体カイコ(B.mori)はpiggyBac系を使用して形質転換されることになるが、piggyBacベクターは、B.moriのfhcタンパク質のN末端断片およびC末端断片により挟まれた合成スパイダーシルクタンパク質配列を含有する発現カセットを使用して調製される。一般に、カイコの形質転換は、piggyBacベクターとpiggyBacトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドとの混合物を、カイコの卵に微量注入することにより前胚盤葉胚に導入することを含む。卵殻に穴をあけるために調整された、エッペンドルフのロボット注射針マニピュレーターを使用して、それを通してガラス毛細管が挿入され、DNA溶液がカイコの卵に注入される微小挿入孔を作製する。次いで、注入された卵を成熟させて、幼虫に孵化させる。幼虫は成熟カイコに成熟して、カイコの定型的生活環に従って繭を紡ぐことが可能になる。 これらのトランスジェニック昆虫を互いと、または非トランスジェニック昆虫/カイコと交雑育種することも、本発明の一部として提供される。スパイダーシルク遺伝子発現カセット: 別の態様では、本明細書で開示される、いくつかの特定のスパイダーシルク柔軟性および/もしくは弾性モチーフ配列ならびに/またはスパイダーシルク強度モチーフ配列の1つまたは複数に対応する1つまたは複数のスパイダーシルクタンパク質配列モチーフを含む、キメラカイコ/スパイダーシルク発現カセットが提供される。別の態様では、キメラスパイダーシルク/カイコタンパク質および繊維を産生するための方法が提供される。図5に示されるように、NTDとスパイダーシルク配列との間にインフレームで挿入されたEGFPがあるまたはない4つの異なる合成スパイダーシルクタンパク質をコードする少なくとも(8)種の異なるバージョンの発現カセットが提供される。これらの配列は、本明細書では、「スパイダー2」、「スパイダー4」、「スパイダー6」、および「スパイダー8」として識別される。トランスジェニックカイコ: さらに別の態様では、トランスジェニックカイコおよびトランスジェニックカイコを作製するための方法が提供される。一部の実施形態では、トランスジェニックカイコを作製する方法は、カイコ配列、1つまたは複数のスパイダーシルク強度モチーフ配列ならびに1つまたは複数のスパイダーシルク柔軟性および/または弾性モチーフ配列をコードするキメラスパイダーシルク配列を含む配列を有する発現カセットを調製すること、前記カセット配列をpiggyBacベクター(piggyBacベクターpBac[3xP3−DsRedaf]など)にサブクローニングすること(図6を参照のこと、親プラスミドについては図10〜11を参照のこと、親プラスミドからサブクローニングされたプラスミドについては図12A〜12Eを参照のこと)、piggyBacベクターとpiggyBacトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドとの混合物を、前胚盤葉のカイコの卵に(例えば、カイコの卵に微量注入することにより)導入すること、通常の育成条件(約28℃および湿度70%)の下で幼虫孵化まで、注入されたカイコ胚を維持すること、およびトランスジェニックカイコを得ることを含む。 これらのトランスジェニックカイコは、さらに交配してFl世代胚を生成させた後、S−Red眼マーカーの発現に基づいて、推定上の形質転換体を同定することができる。次いで、この方法により同定された推定上の雄性および雌性形質転換体を交配して、ホモ接合型の血統を作製し、さらに詳細な遺伝子分析を行う。具体的には、カイコの形質転換は、piggyBacベクターとヘルパープラスミドDNAの混合物を、透明な表皮のカイコ変異体であるpnd−wlのカイコ卵に注入することを含む。カイコ変異体であるpnd−wlについては、Tamura,et al.2000に記載されており、この文献は、その全体が具体的に本明細書に組み込まれる。この変異体には、蛍光遺伝子を使用するスクリーニングを極めて容易にするメラニン沈着欠乏症がある。いったん赤目の推定上のFl形質転換体が同定されると、ホモ接合型の血統がシルク腺タンパク質のウエスタンブロッティングを使用して確認され、繭シルクが採取された。キメラスパイダーシルク/カイコシルク繊維を製造する方法: さらに別の態様では、本発明は、トランスジェニックカイコにおいてキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を製造する商業生産方法を提供する。一実施形態では、この方法は、本明細書に記載のトランスジェニックカイコを作製すること、およびトランスジェニックカイコが成長し、繭を形成することを可能にする条件下でそれらを飼育すること、繭を採取すること、ならびに繭からキメラスパイダーシルク繊維を得ることを含む。シルク繭からシルク繊維をほぐす、かつ/またはそうでなければ採取する標準的手法を使用することができる。製品およびそれらを使用する方法: さらに別の態様では、本発明のキメラスパイダーシルク繊維から作られる種々の製品が提供される。例えば、組換えキメラスパイダー/カイコ繊維は、アイテムの中でも、医療縫合材料、創傷被覆および組織/関節置換および再建の材料および装置、薬物送達パッチおよび/または他の送達アイテム、保護服(防弾チョッキおよび他の用品)、レクリエーション用品(テント、パラシュート、キャンプ用具等)で使用することができる。 別の態様では、種々の医療手技において組換えキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を使用する方法が提供される。例えば、この繊維は、組換え繊維を用いて作製された組織工学的生体適合性構築物におけるスキャフォールドとして成長または再生において組織修復を促進するために、または繊維に組み込まれたタンパク質または治療剤を送達するために使用することができる。 他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用することができるが、以下では好ましい方法および材料を記載する。本明細書に記載の刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、参照により組み込まれる。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみを目的とし、限定することを意図するものではない。矛盾がある場合は、本明細書が、定義を含めて、統制するものとする。 本発明の他の目的及び利点は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態を読むことにより当業者には明らかになるであろう。図面では、参照数字等が要素等を指定するために使用されている。図1は、多岐にわたるコガネグモ類または派生コガネグモ類に由来する2つの大瓶状シルクタンパク質のアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号18〜23)を示す(Gatesy,et al.2001)。比較すると、特に上記の配列モチーフ内に、高レベルの配列保存が示され、この配列保存は、これらの種が互いから分岐して以来、1億2500万年にわたって維持されてきた。種々のコガネグモ種における大瓶状シルクタンパク質のコンセンサス反復アミノ酸配列(−)は他の配列と比較されたときにアミノ酸が存在しないことを示す。クモは次のとおりである:Nep.cは、ジョロウグモ(Nephila clavipes);Lat.gは、ハイイロゴケグモ(Lactrodectus geometricus);Arg.tは、シマニワオニグモ(Argiope trifasciata)。図2は、コガネグモに由来する小瓶状シルクタンパク質のコンセンサスアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号24〜26)を示す。最初の大瓶状シルクタンパク質配列が公表された直後に、ジョロウグモ(N.clavipes)由来の小瓶状シルク(Mi)タンパク質転写物を表わすcDNAが単離されて、配列決定された(Colgin and Lewis,1998)。この図に示されるMiSp配列には、MaSpタンパク質に対して、類似の配列および著しく異なる配列がある。MiSpにはGGXおよび短いpolyAla配列が含まれるが、MaSp中のより長いpolyAlaモチーフは、(GA)n反復に置き換えられている。コンセンサス反復は類似の構成を有するが、GGXおよびGAの数はかなり異なる。図3は、鞭毛状シルクタンパク質cDNAコンセンサス配列(出現順にそれぞれ配列番号27〜29)を示す。これらのシルクタンパク質cDNAは、ジョロウグモ(N.clavipes)の鞭毛状腺由来の捕獲用らせん状シルクタンパク質をコードする(図3;Hayashi and Lewis,2000)。これらのcDNAは、5’非翻訳領域および分泌シグナルペプチド、5個アミノ酸モチーフの数多くの反復、ならびにC末端をコードする配列を含有していた。ノーザンブロッティング分析は、ほぼ500Kdのタンパク質をコードする、大きさが約15kbのmRNAを示した。遺伝子配列から予測されるアミノ酸配列は、スパイダーシルクの弾性の物理的基礎の説明に役立つ、タンパク質構造のモデルを示唆し、これは、MaSp2の性質とも一致する(本明細書でさらに説明される)。図4は、βらせんのコンピュータモデルを示す。これは、各ペンタマー配列にタイプIIβターンがある構造から出発して、エネルギー最小化された(GPGGQGPGGY)(配列番号1)2配列のモデルである。図5は、構築された基本的なカイコガ(Bombyx mori)シルクフィブロイン重鎖発現カセットに関するいくつかのバリエーションを示す。この設計には、フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現するように設計された構築物のアセンブリが含まれており、合成スパイダーシルクタンパク質配列が、B.mori fhcタンパク質のN末端およびC末端の断片により挟まれている。各発現カセット内の機能的に関連する遺伝エレメントには、左から右にかけて次のものが含まれる:B.mori fhc遺伝子に由来する主要プロモーター、上流エンハンサーエレメント(UEE)、基本プロモーター、およびN末端ドメイン(NTD)、その後に、NTDの上流に位置する翻訳開始部位とインフレームで位置する種々の合成スパイダーシルクタンパク質配列、その後に、翻訳終結部位およびRNAポリアデニル化部位を含むfhcのC末端ドメイン(CTD)。図6は、これらのカセットをpiggyBacにサブクローニングするための図を示す。図示された発現カセットの8つの異なるバージョンのそれぞれを、AscIおよびFseIを使用して、親プラスミドから切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]の対応する部位にサブクローニングした。このpiggyBacベクターのマップを示す。図7は、トランスジェニックカイコシルクのウエスタンブロットを示す。これらのシルクについて、スパイダーシルクに特異的な抗体を使用して、カイコシルク腺タンパク質含有物およびトランスジェニックカイコ繭からのシルク繊維の両方のウエスタンブロッティングにより、スパイダーシルクキメラタンパク質の存在を分析した。両方の場合において、トランスジェニックカイコはキメラタンパク質を産生することが確認され、微分抽出試験から、これらのタンパク質はトランスジェニックシルク繊維の不可欠な成分であることがわかった。さらに、蛍光実体顕微鏡を使用する、シルク腺またはシルク繊維の直接検査により、キメラ緑色蛍光タンパク質融合物のそれぞれの発現がシルク腺および繊維の両方において明らかになった。ほとんどの場合において、繊維中の蛍光タンパク質の量は、通常の照明下で、繭を緑色により視覚化するのに十分高いものであった。図8は、大きさが17,388bpである親プラスミドpSL−スパイダー#4を示す。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#4カセットであるスパイダーシルク(A4S8)×42を保持する。図9は、親プラスミドpSL−スパイダー#4+GFPを示す。GFPは緑色蛍光タンパク質である。このベクターの大きさは、18,102bpである。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#4に加えて、マーカータンパク質のGFP、カセットのスパイダーシルク(A4S8)×42を保持する。図10は、親プラスミドpSL−スパイダー#6を示す。この親プラスミドの大きさは、12,516bpである。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#6カセットのスパイダーシルク(A2S8)×l4)×42を保持する。図11は、親プラスミドpSL−スパイダー#6+GFPを示す。GFPは緑色蛍光タンパク質である。この親プラスミドの大きさは、13,230bpである。この親プラスミドは、キメラスパイダーシルクタンパク質#6に加えて、マーカータンパク質のGFP、カセットのスパイダーシルク(A4S8)×l4を保持する。図12Aは、piggyBacプラスミドであって、大きさが10,458bpであるpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX16構築物を示す。図12Bは、piggyBacプラスミドであって、大きさが11,250bpであるpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24構築物を示す。図13は、pSL−スパイダー#4の配列を示す(配列番号30)。図14は、pSL−スパイダー#4+GFPの配列を示す(配列番号31)。図15は、pSL−スパイダー#6の配列を示す(配列番号32)。図16は、pSL−スパイダー#6+GFPの配列を示す(配列番号33)。図17Aは、piggyBacベクターの設計であって、A2S814合成スパイダーシルク遺伝子を示す。図17Bは、piggyBacベクターの設計であって、スパイダー6キメラカイコ/スパイダーシルク遺伝子を示す。図17Cは、piggyBacベクターの設計であって、スパイダーシルク6−GFPキメラカイコ/スパイダーシルク遺伝子を示す。図17Dは、piggyBacベクターの設計であって、piggyBacベクターを示す。図17Eは、以下のシンボルを示す。鞭毛状弾性モチーフ(A2;120bp);大瓶状スピドロイン−2;スパイダーモチーフ(S8;55bp)Fhc主要プロモーター(1,157bp)、Fhcエンハンサー(70bp);Fhc基本プロモーター、Hhc5’翻訳領域(エキソン1/イントロン/エキソン2;Fhc N末端コード領域=1,744bp);EGF(720bp);A2SB14 スパイダーシルク配列(2,462bp)、Fhc C末端コード領域(180bp)、Fhcポリアデニル化シグナル(300bp)。図18Aは、繭中のキメラカイコ/スパイダーシルク/EGFPタンパク質の発現を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図18Bは、シルク腺を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図18Cは、シルク腺を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図18Dは、スパイダー6−GFPカイコに由来するシルク繊維を示す。カイコシルク腺におけるキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現および局在化。方法に記載のように、シルク腺を切除し、スパイダー6またはスパイダー6−GFPのpiggyBacベクターを打ち込んで、蛍光顕微鏡下で検査した。図19は、シルク繊維の連続抽出を示す。本明細書に記載のように、pnd−wl(レーン3〜6)、スパイダー6(レーン8〜11)、またはスパイダー6−GFP(レーン13〜16)カイコから産生された繭はデガミングして、連続抽出プロトコールに付した。各抽出ステップで可溶化されたタンパク質は、SDSPAGEおよび(19A)クーマシーブルー染色または(19B)スパイダーシルクタンパク質−特異抗血清による免疫ブロッティングによって分析した。M:分子量マーカー。+:大腸菌(E.coli)で発現され精製されたA2S814スパイダーシルクタンパク質。レーン3、8、および13:生理食塩水抽出物。レーン4、9、および14:SDS抽出物。レーン5、10、および15:8M LiSCN/2%メルカプトエタノール抽出物。レーン6、11、および16:16M LiSCN/5%メルカプトエタノール抽出物。矢印はキメラスパイダーシルクタンパク質を示す。見かけの分子量は、大腸菌(E.coli)由来のA2S814については約75kDa、スパイダー6については約106kDa、スパイダー6−GFPについては約130kDaおよび約110kDaであった。図20は、トランスジェニックカイコ由来の複合繊維、親カイコ由来の天然繊維、および代表的な天然(牽引糸)スパイダーシルク繊維について観察された最良の機械的性能の比較を示す。繊維の靭性は、応力/歪み曲線下面積により定義される。練り天然および複合シルク繊維の機械的性質。天然カイコ(pnd−wl)および代表的なスパイダー(ジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸)シルク繊維について測定された最良の機械的性能を、トランスジェニックカイコにより産生された複合シルク繊維で得られたものと比較する。繊維はすべて、同じ条件下で試験した。最大靱性値は次のとおりである:天然カイコpnd−wl(43.9MJ/m3)と比較すると、スパイダー6系7(86.3MJ/m3);スパイダー6−GFP系1(98.2MJ/m3)、(スパイダー6−GFP系4(167.2MJ/m3);およびジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸(138.7MJ/m3)。これらのデータから、トランスジェニックカイコ由来の複合シルク繊維はすべて、非トランスジェニックカイコ由来の天然繊維よりも靱性が高いことがわかる。図21は、構築物pXLBacII−ECFP NTD CTD masplX16(10,458pb)の核酸配列を示す(配列番号34)。図22は、構築物pXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24(11,250bp)の核酸配列を示す(配列番号35)。 本発明で使用されるカイコ染色体に遺伝子を挿入する方法により、その遺伝子が染色体に安定に組み込まれ、発現され、かつ交配により同様に子孫に安定に受け継がれることが可能になる。カイコ卵への微量注入を使用する方法または遺伝子銃を使用する方法が使用できるが、使用される方法は、カイコ染色体への外来遺伝子の挿入のための標的遺伝子含有ベクターおよびトランスポゾン遺伝子(Nature Biotechnology 18,81−84,2000)を含有するヘルパープラスミドを同時にカイコ卵に微量注入することからなることが好ましい。 標的遺伝子は、微量注入されたカイコ卵から孵化し成長した組換えカイコの生殖細胞に挿入される。このようにして得られた組換えカイコの子孫は、その染色体中に標的遺伝子を安定に保持することができる。本発明で得られた組換えカイコの遺伝子は、通常のカイコと同じ方法で維持することができる。すなわち、通常条件下で卵を孵化させ、孵化した幼虫を人工飼料に集め、次いで、通常のカイコと同じ条件下でそれらを生育させることにより、第5齢のカイコまで生育させることができる。 本発明では得られた組換えカイコは、カイコの発育および成長を最大化するために、通常のカイコと同じ方法で生育させることができ、通常条件下で生育させることにより外来タンパク質を産生することができる。 本発明で得られた遺伝子組換えカイコは、通常のカイコと同じように、蛹になり繭を産生することができる。雄と雌は蛹段階で識別され、蛾に変態した後に、雄と雌を交配し、その翌日に卵を収集する。卵は、通常のカイコ卵と同じ方法で保存することができる。本発明の遺伝子組換えカイコは、上記のように、繁殖を繰り返すことによりその後の世代に継続することができ、かつ大量に増加させることができる。 本明細書で使用されるプロモーターに関して特に限定はなく、任意の生物に由来するいかなるプロモーターもカイコ細胞内で効果的に作用するならば使用することができるが、カイコシルク腺中でタンパク質を特異的に誘導するように設計されたプロモーターが好ましい。カイコシルク腺タンパク質プロモーターの例としては、フィブロイン重鎖プロモーター、フィブロイン軽鎖プロモーター、p25プロモーター、およびセリシンプロモーターが挙げられる。 本発明では、「キメラスパイダーシルクタンパク質を発現するための遺伝子カセット」は、昆虫細胞に挿入される場合には、キメラタンパク質の合成に必要な1組のDNAを指す。キメラスパイダーシルクタンパク質を発現するこの遺伝子カセットは、キメラスパイダーシルクタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進するプロモーターを含有する。通常、遺伝子カセットは、さらにターミネーターおよびポリA付加領域を含有し、好ましくは、プロモーター、外来タンパク質構造遺伝子、ターミネーター、およびポリA付加領域を含有する。さらに、遺伝子カセットは、プロモーターと外来タンパク質構造遺伝子との間に連結された分泌シグナル遺伝子を含有してもよい。任意の遺伝子配列を、ポリA付加配列と外来タンパク質構造遺伝子との間に連結してもよい。さらに、人工的に設計および合成された遺伝子配列も連結することができる。 さらに、「キメラスパイダーシルク/カイコ遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」は、両側に1対のpiggyBacトランスポゾンの逆方向反復配列を有し、piggyBacトランスポゾンの作用を介して昆虫細胞染色体に挿入される1組のDNAからなる、キメラスパイダーシルク/カイコ遺伝子を発現するための遺伝子カセットを指す。 本発明におけるベクターは、環状または線状のDNA構造を有するものを指す。大腸菌(E.coli)において複製することができ、かつ環状DNA構造を有するベクターが特に好ましい。このベクターには、形質転換体の選択を容易にする目的で、抗生物質耐性遺伝子またはクラゲ緑色蛍光タンパク質遺伝子などのマーカー遺伝子も組み込むことができる。 本発明で使用される昆虫細胞に関して特に限定はないが、それらは、好ましくは鱗翅類細胞、より好ましくはカイコガ(Bombyx mori)細胞、さらに一層好ましくはカイコシルク腺細胞またはカイコガ(Bombyx mori)卵に含まれる細胞である。シルク腺細胞の場合には、フィブロインタンパク質が活性に合成され、かつその細胞の取り扱いが容易であるので、第5齢カイコ幼虫の後部シルク腺細胞が好ましい。 昆虫細胞によるキメラスパイダーシルクタンパク質の発現のための遺伝子カセットを組み込むために使用される方法に関して特に限定はない。遺伝子銃を使用する方法および微量注入を使用する方法は、培養昆虫細胞への組み込みのために使用することができ、カイコシルク腺細胞に組み込む場合には、例えば、遺伝子銃を使用して、第5齢カイコ幼虫の体から取り出された後部シルク腺組織に遺伝子を容易に組み込むことができる。 遺伝子銃を使用する後部シルク腺への遺伝子組み込みは、例えば、粒子銃(Bio−Rad、モデル番号PDS−1000/He)を1,100〜1,800psiのヘリウムガス圧で使用するなどして、外来タンパク質を発現するための遺伝子カセットを含有するベクターでコーティングされた金粒子を寒天プレート上に固定された後部シルク腺に打ち込むことにより実行することができる。 カイコガ(Bombyx mori)の卵に含まれる細胞に遺伝子を組み込む場合は、微量注入を使用する方法が好ましい。ここで、卵に微量注入する場合、卵の細胞に直接微量注入することは必要でなく、それどころか、卵に単純に微量注入することにより遺伝子を組み込むことができる。 その染色体に本発明の「キメラスパイダーシルクタンパク質を発現するための遺伝子カセット」を含有する組換えカイコは、「キメラスパイダーシルク遺伝子を挿入するためのカセット」を有するベクターを、カイコガ(Bombyx mori)の卵に微量注入することにより得ることができる。例えば、第一世代(Gl)カイコは、Tamaraらの方法(Nature Biotechnology 18,81−84,2000)に従って、「キメラスパイダーシルク遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」を有するベクターとpiggyBacトランスポサーゼ遺伝子がカイコアクチンプロモーターの制御下に配置されたプラスミドとを、カイコガ(Bombyx mori)卵に同時に微量注入し、その後、孵化した幼虫を生育して、その結果得られた同じ群内の成虫(G0)と交配することにより得られる。組換えカイコは、このGl世代の中で1〜2%の頻度で通常出現する。 組換えカイコの選択は、Gl世代カイコの組織からDNAを単離した後、外来タンパク質遺伝子配列に基づいて設計されたプライマーを使用して、PCRにより行うことができる。あるいは、組換えカイコは、カイコ細胞で発現されうる、プロモーターの下流に連結された、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を、「遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」にあらかじめ挿入し、次いで、第1齢段階のGl世代カイコの中から紫外線下で緑色蛍光を発光する個体を選択することにより容易に選択することができる。 さらに、その染色体中に「外来タンパク質を発現するための遺伝子カセット」を含有する組換えカイコを得る目的で、カイコガ(Bombyx mori)卵に、「遺伝子を挿入するための遺伝子カセット」を有するベクターを微量注入する場合も、組換えカイコは、上記と同じ方法で、piggyBacトランスポサーゼタンパク質を同時に微量注入することにより得ることができる。 piggyBacトランスポゾンは、両末端上の13塩基対の逆方向配列と約2.1kの塩基対の内部にあるORFとを有するDNAの転移因子を指す。本発明で使用されるpiggyBacトランスポゾンに関して特に限定はないが、使用可能なものの例としては、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞株TN−368、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPV(AcNPV)、およびガレリア・メロネア(Galleria mellonea)NPV(GmMNPV)に由来するものが挙げられる。好ましくは、遺伝子およびDNA転移活性を有するpiggyBacトランスポゾンは、プラスミドpHA3PIGおよびイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞株TN−368(Nature Biotechnology 18,81−84,2000)に由来するpiggyBacの一部を有するpPIGA3GFPを使用して調製することができる。piggyBacに由来するDNA配列の構造は、TTAA配列を含有する1対の逆方向末端配列を有することが必要とされ、それらのDNA配列の間に挿入されたサイトカイン遺伝子などの外来遺伝子を有する。トランスポゾンに由来するDNA配列を使用してカイコ染色体に外来遺伝子を挿入するためにトランスポサーゼを使用することがより好ましい。例えば、遺伝子がカイコ染色体に挿入される頻度は、カイコ細胞内で転写および翻訳されたトランスポサーゼが2対の逆方向末端配列を認識し、それらの間の遺伝子断片を切り取って、カイコ染色体にそれを転移できるように、piggyBacトランスポサーゼを発現することができるDNAを同時に挿入することによりかなり改善することができる。 本発明は、以下の説明によりさらに一層完全に認識することができる。生物医学領域におけるキメラシルクタンパク質: キメラスパイダーシルク繊維は、極めて細い繊維を必要とする眼科手術、神経修復、および形成外科などの手技の一部に広く用いられている材料の一部として提供される。さらなる使用としては、骨、靭帯、および腱の再生のためのスキャフォールド材料ならびに薬物送達のための材料が挙げられる。 本発明の方法により製造される組換えスパイダーシルク繊維は、血管創傷治癒装置、止血包帯、パッチ、および接着剤を含む創傷閉鎖システム、縫合糸、薬物送達などの種々の医療用途、ならびに例えば、スキャフォールド材料、靭帯人工器官などの組織工学用途、ならびに人体への長期的または生物分解性移植のための製品に使用することができる。好ましい組織工学的スキャフォールドは、本明細書に記載の組換えスパイダーシルク/カイコ繊維を用いて作製された繊維の不織ネットワークである。 さらに、本発明の組換えキメラシルク繊維は、これらに限定されないが、脊椎ディスク、頭蓋組織、硬膜、神経組織、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、心筋、骨格筋、腱、靭帯、および胸部組織を含む、これらのユニークなスキャフォールドから恩恵を受けうる、器官の修復、置換または再生の戦略に使用することができる。 本発明の別の実施形態では、組換えスパイダーシルク繊維材料は治療剤を含有することができる。これらの材料を形成するために、治療剤は、材料形成に先立って繊維の中に組み込んでもよく、形成後に材料に負荷してもよい。本発明の組換えキメラシルク繊維と併せて使用することができる異なる治療剤の種類は莫大である。一般に、本発明の医薬組成物を介して投与することができる治療剤としては、限定はされないが、抗生物質および抗ウイルス剤などの抗感染剤;化学療法剤(すなわち制癌剤);抗拒絶剤;鎮痛剤および鎮痛配合剤;抗炎症剤;ステロイドなどのホルモン剤;増殖因子(骨形態形成タンパク質(すなわちBMP1〜7)、骨形態形成様タンパク質(すなわちGFD−5、GFD−7、およびGFD−8)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(すなわちFGF1〜9)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様増殖因子(IGF−IおよびIGF−II)、形質転換増殖因子(すなわちTGF−βI〜III)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF);および他の天然由来または遺伝子改変のタンパク質、多糖、糖タンパク質、またはリポタンパク質が挙げられる。これらの増殖因子は、R.G.Landes Companyが出版したThe Cellular and Molecular Basis of Bone Formation and Repair by Vicki Rosen and R.Scott Thiesに記載されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。 生理活性物質を含有するスパイダーシルク/カイコ繊維は、1つまたは複数の治療剤をこの材料を作製するために使用される繊維と混合することにより製剤化することができる。あるいは、治療剤は、好ましくは医薬として許容される担体を用いて繊維上にコーティングすることができる。繊維を溶解しない任意の医薬担体を使用することができる。治療剤は、液体、微粉固体、または他のいかなる適切な物理的形態として存在してもよい。 治療剤の量は、使用される特定の薬物および治療されている病状に依存することになる。典型的には、薬物量は、材料重量の約0.001パーセント〜約70パーセント、より典型的には約0.001パーセント〜約50パーセント、最も典型的には約0.001パーセント〜約20パーセントを占める。体液または組織と接触すると、例えば、薬物は放出されることになる。 組換えスパイダーシルク/カイコ繊維で作製された組織工学スキャフォールドは、作製後にさらに改変することができる。例えば、スキャフォールドは、所望の細胞集団のための受容体または化学誘引物質として機能する生理活性物質でコーティングすることができる。このコーティングは、吸収または化学結合を介して施すことができる。 本発明による使用に適した添加物は、生物学的または医薬的に活性な化合物を含む。生物学的に活性な化合物の例としては、細胞接着に影響を及ぼすことが知られている「RGD」インテグリン結合配列のバリエーションを含有するペプチドなどの細胞接着メディエーター、生物学的に活性なリガンド、および特定の種類の細胞または組織の内殖を促進または排除する物質が挙げられる。そのような物質としては、例えば、骨形態形成タンパク質(BMP)などの骨形成誘導物質、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インシュリン様増殖因子(IGF−IおよびII)、TGF−、YIGSRペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロン酸(HA)、インテグリン、セレクチン、およびカドヘリンが挙げられる。 スキャフォールドは、再建手術を含む、組織工学的および組織先導的再生用途に向けた用品に形成される。スキャフォールドの構造は、細胞内殖を可能にし、細胞の前播種の必要性を除去する。スキャフォールドはまた、成型して、外部支持器官を形成する細胞のインビトロ培養の支持体のための外部スキャフォールド材料を形成することができる。 スキャフォールドは、体内の細胞外マトリックス(ECM)を模倣するように機能する。スキャフォールドは、インビトロ培養およびその後の移植期間中の、単離細胞ための物理的支持体および接着基質の両方として役立つ。移植された細胞集団が増殖して、細胞が正常に機能するにつれて、細胞はそれ自体のECM支持体を分泌し始める。 軟骨および骨のような構造組織の再建では、組織形状が機能するのに不可欠であり、種々の厚さおよび形状の用品にスキャフォールドを成形する必要がある。3次元構造に所望されるいかなる凹部、開口部、または精密部分も、はさみ、メス、レーザービーム、または他の切断器具でマトリックスの一部を除去することにより作製することができる。スキャフォールドの用途としては、神経、筋骨格、軟骨、腱、肝臓、膵臓、眼、外皮、動静脈、泌尿器、または任意の他の組織形成固体または中空器官などの組織の再生が挙げられる。 スキャフォールドはまた、3次元の組織または器官を形成させるために、分離細胞、例えば軟骨細胞または肝細胞のためのマトリックスとして移植で使用することができる。任意のタイプの細胞を、培養および可能な移植のためのスキャフォールドに加えることができ、これらの細胞には、筋肉および骨格系の細胞、例えば軟骨細胞、線維芽細胞、筋細胞、および骨細胞、実質細胞、例えば肝細胞、膵細胞(膵島細胞を含む)、腸起源の細胞、および他の細胞、例えば神経細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、多能性細胞、および幹細胞、ならびにそれらの組合せが含まれ、これらは、ドナー由来、樹立された株化細胞由来、または遺伝子操作の前もしくは後のものであってもよい。組織の断片も使用することができ、同じ構造の中にいくつかの異なる細胞タイプを用意することができる。 細胞は、適切なドナーまたはその細胞が移植されることになる患者から入手して、標準的手法を使用して分離し、スキャフォールドの上および中に播種する。インビトロでの培養を、場合によっては移植前に実行してもよい。あるいは、スキャフォールドを移植して血管新生させ、次いで、細胞をスキャフォールドに注入する。インビトロでの細胞培養および組織スキャフォールドの移植のための方法および試薬は、当業者には公知である。 本意図の組換えスパイダーシルク/カイコ繊維は、放射線滅菌(すなわちガンマ線)、化学滅菌(エチレンオキシド)、または他の適切な手段等の従来の滅菌方法を使用して滅菌することができる。好ましくは、滅菌工程は52〜55℃の間の温度で8時間以下の時間エチレンオキシドを用いてなされる。滅菌後、生体材料は、輸送ならびに病院および他の医療施設での使用のために、適切な滅菌耐湿性パッケージの中に詰められる。 本発明のキメラシルク繊維はまた、運動用衣類および防弾チョッキの製造/製作など、種々の形態の運動用および防護用衣服の製造において要請を受ける可能性がある。本明細書で開示のキメラスパイダーシルク繊維はまた、改善されたエアバッグの製作など、自動車産業で使用することができる。開示のキメラシルク繊維を使用するエアバッグは、クモの巣の餌食になる、飛んでいる昆虫のエネルギーをクモの巣が吸収するときよりも、自動車事故でのより大きな衝撃エネルギーに備える。定義 本明細書で使用される場合、生体適合性は、シルク繊維またはそれから作製される材料が、無毒で、突然変異性がなく、最小から中程度の炎症反応を誘発することを意味する。本発明で使用される好ましい生体適合性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、アルギネート、キトサン、キチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、デキストラン、およびポリ酸無水物が挙げられる。本発明によると、2つ以上の生体適合性ポリマーを水溶液に加えることができる。 本明細書で使用される場合、柔軟性および/または弾性モチーフおよび/またはドメイン配列は、シルク繊維などの材料に弾性および/または柔軟性の特性を付与することに関連するスパイダーシルクをコードする遺伝子またはタンパク質の断片の同定可能な遺伝子配列として定義される。例として、柔軟性および/または弾性モチーフおよび/またはドメインはGPGGAである(配列番号2)。 本明細書で使用される場合、強度モチーフは、シルク繊維の張力強度を増加および/または向上させるなど、材料に強度特性を付与することに関連するスパイダーシルクをコードする遺伝子またはタンパク質の断片の同定可能な遺伝子配列として定義される。例として、これらのスパイダー強度モチーフの一部は、GGPSGPGS(A)8(Aはポリアラニン配列である)である(配列番号3)。 本発明は、本発明の代表例となるように意図する、以下の実施例によりさらに特徴づけられるであろう。実施例1−材料および方法 本実施例は、トランスジェニックカイコの作製に使用する材料および方法/手法、使用する遺伝子構築物の作製に使用する基本手順、ならびにトランスジェニックスパイダーシルク繊維の張力強度の評価に使用する参照表を説明するために提供する。 1.使用する遺伝子配列。使用する遺伝子は、本明細書に提示の図13〜16に示す。保存的置換を有する、例えば実質的に同じキメラスパイダーシルクタンパク質特性を有する、これらの配列のより短いおよび/またはより長いバージョンを使用することが可能であると考えられるので、これらのバリエーションは本発明の一部として構想される。 2.キメラシルクタンパク質およびこれらのキメラスパイダーシルクタンパク質を用いて得られる繊維は、張力強度のために評価される。表1に、キメラスパイダーシルク繊維の評価に対する一般的な基準を示す。本発明のキメラスパイダーシルク繊維は、天然スパイダーシルクに類似の張力および他の機械的強度特性を有することが見出された。実施例2−個々の形質転換されたカイコシルクの張力強度特性の分析 トランスジェニックカイコシルクについて、スパイダーシルク特異抗体を使用して、カイコシルク腺タンパク質含有物およびトランスジェニックカイコ繭からのシルク繊維の両方のウエスタンブロッティングによりスパイダーシルクキメラタンパク質の存在を分析した。両方の場合に、トランスジェニックカイコがキメラタンパク質を産生すると確認され、微分抽出試験から、これらのタンパク質がそれらの繭のトランスジェニックシルク繊維の不可欠な成分であることがわかった。さらに、蛍光実体顕微鏡を使用する、シルク腺またはシルク繊維の直接検査により、キメラ緑色蛍光タンパク質融合物のそれぞれの発現がシルク腺および繊維の両方において明らかになった。ほとんどの場合において、繊維中の蛍光タンパク質の量は、通常の照明下で、繭を緑色により視覚化するのに十分高いものであった。 表2に、個々のトランスジェニックカイコから産生されたトランスジェニックシルクの分析を示す。これらの分析から、スパイダー4またはスパイダー6構築物を用いて形質転換されたトランスジェニック系は、形質転換されていないカイコからのシルク繊維と比較すると強度が改善したキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を産生することが明確にわかる。これらの繊維が、ある場合には天然シルクのほぼ2倍の強度があることは意義がある。カイコ/スパイダーシルクキメラ繊維の強度における2倍の改善は、カイコシルクをスパイダーシルクと同様の強度および柔軟性にするのに必要と考えられる改善にほぼ近い。したがって、これらの結果から、カイコを遺伝子操作して、スパイダーシルクの特定の強度および/または柔軟性ドメインをコードするpiggyBacベクターを使用してBombyx/スパイダーシルクキメラタンパク質を構築することにより、天然スパイダーシルクと有利に競争することができるキメラスパイダーシルク/カイコ繊維を産生させることができることが判明する。実施例3−トランスジェニックカイコにおけるキメラスパイダーシルク/カイコタンパク質発現のためのカイコキメラ遺伝子発現カセットおよびpiggyBacベクター 本実施例は、種類が莫大なカイコキメラスパイダーシルク遺伝子発現カセットを用意する際の本発明の有用性および範囲を実証するために提供する。本実施例はまた、カイコの形質転換が成功することが示されたpiggyBacベクターの完成、および生産において商業的に有用な長さの繊維の製造に適している、商業的に有用なキメラスパイダーシルクタンパク質の製造の成功を実証する。発現カセット。 以下に示す基本的な発現カセットに関していくつかのバリエーションを構築した。これらの構築物は、フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現するように設計された構築物のアセンブリを表しており、合成スパイダーシルクタンパク質配列が、B.mori fhcタンパク質のN末端およびC末端の断片により挟まれている。この点に関し、図5に示す基本的なカイコガ(Bombyx mori)シルクフィブロイン重鎖発現カセットに関するいくつかのバリエーションを構築した。この設計には、フィブロイン重鎖(fhc)−スパイダーシルクキメラを発現するように設計された構築物のアセンブリが含まれており、合成スパイダーシルクタンパク質配列が、B.mori fhcタンパク質のN末端およびC末端の断片により挟まれている。各発現カセット内の機能的に関連する遺伝エレメントには、左から右にかけて次のものが含まれる:B.mori fhc遺伝子に由来する主要プロモーター、上流エンハンサーエレメント(UEE)、基本プロモーター、およびN末端ドメイン(NTD)、その後に、NTDの上流に位置する翻訳開始部位とインフレームで位置する種々の合成スパイダーシルクタンパク質配列(以下を参照)、その後に、翻訳終結部位およびRNAポリアデニル化部位を含むfhcのC末端ドメイン(CTD)。 8つの異なるバージョンの発現カセットが図5に図示されており、これらは、NTDとスパイダーシルクとの間にインフレームでのEGFPの挿入があるまたはない4つの異なる合成スパイダーシルク/カイコタンパク質をコードする。これらの配列を、「スパイダー2」、「スパイダー4」、「スパイダー6」、および「スパイダー8」と名付け、以下のように定義する。a)スパイダー2:(A4S8)24からなる7,104bp。A1は、推定上の鞭毛状シルク弾性モチーフ(GPGGA)(配列番号2)の4コピーを示す;したがって、A4は、この同じ配列の16コピーを示す。S8は、推定上の牽引糸シルク強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8](配列番号3)を示し、「リンカー−ポリアラニン」配列としても記載される。GFP(緑色蛍光タンパク質)融合タンパク質のおよその大きさは161.9+50.4=212.3Kdである。b)スパイダー4:(A2S8)42からなる7,386bp。A2は、推定上の鞭毛状シルク弾性モチーフ(GPGGA)(配列番号2)の8コピーを示す;S8は、上記のように、推定上の牽引糸シルク強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8](配列番号3)を示す。GFP融合タンパク質のおよその大きさは169.4+50.4=219.8Kdである。c)スパイダー6:(A2S8)14からなる2,462bp。上記のように、A2は弾性モチーフ(GPGGA)(配列番号2)の8コピーを示し、S8は強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8](配列番号3)を示す。GFP融合タンパク質のおよその大きさは56.4+50.4=106.8Kdである。d)スパイダー8:(A2S8)28からなる4,924bp。上記のように、A2は弾性モチーフ(GPGGA)(配列番号2)の8コピーを示し、S8は強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8](配列番号3)を示す。GFP融合タンパク質のおよその大きさは112.8+50.4=163.2Kdである。 NTDエキソンIおよびIIの大きさ(1625+15161);eGFP(27135);CTD(6470)=50,391Kd。実施例4−piggyBacへの発現カセットのサブクローニング 図5に図示した(そして実施例3に記載した)8つの異なるバージョンの発現カセットのそれぞれを、AscIおよびFseIを使用して親プラスミドから切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]の対応する部位にサブクローニングした。このpiggyBacベクターのマップを図6に示す。 EGFPを有するおよびEGFPを有さない、上記のすべてのpiggyBacベクターを、個々の成分に関してPCRにより試験すると、予測された大きさの生成物が示された。 EGFPに融合したスパイダーシルクタンパク質をコードするpiggyBacベクターのそれぞれは、B.moriシルク腺においてEGFP発現を誘導するそれらの能力をアッセイすることにより機能的に評価した。手短に言えば、シルク腺をカイコから取り出し、粒子銃を使用して、piggyBac DNA(または対照)でコーティングされたタングステン粒子をこの腺に打ち込んだ。次いで、打ち込まれた組織を、培養皿のグレース培地中で培養し、2日および3日後に、共同研究者の研究室で利用可能なEGFP蛍光のための装備がある実体顕微鏡を使用して、EGFP発現についてシルク腺を検査した。各ベクターはEGFP蛍光を誘導することが示された。 EGFP挿入があるおよび挿入がないスパイダー4および6をコードする4つのpiggyBacベクターのセットを使用して、トランスジェニックカイコを作製した。実施例5−トランスジェニックカイコの単離。 一般に、カイコの形質転換は、piggyBacベクターとpiggyBacトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドとの混合物を、カイコの卵に微量注入することにより前胚盤葉胚に導入することを含む。卵が産まれた後4時間の間は、胚盤葉形成は起こらない。したがって、胚の収集および注入は、比較的長時間にわたって室温で行うことができる。微量注入の技術的なハードルは、硬い障壁となる卵殻を突破する必要があることである。Tamuraおよび共同研究者は、鋭利なタングステン針を用いて卵殻を貫通し、次いで、得られた穴にガラス毛細管注射針を正確に挿入することによりカイコの微量注入手法を完成した。これは現在では比較的ルーチン的な手技になっており、卵殻に穴をあけ、タングステン針を除去し、ガラス毛細管を挿入し、そしてDNA溶液を注入するように調整されたエッペンドルフのロボット注射針マニピュレーターを用いて実行される。次いで、Krazy接着剤を小滴使用して卵を再密封し、幼虫に孵化するまで28℃および湿度70%の通常の生育条件下で維持した。次いで、生存する注入された昆虫は、交配してFl世代の胚を生成し、その後続いてDS−Red眼マーカーの発現に基づいて推定上の形質転換体を同定する。次いで、この方法により同定された推定上の雄性および雌性形質転換体を交配して、ホモ接合型の血統を作製し、さらに詳細な遺伝子分析を行う。 具体的には、本プロジェクトに関するカイコの形質転換は、piggyBacベクターとヘルパープラスミドDNAの混合物を、透明な表皮のカイコ変異体であるカイコガ(Bombyx mori)pnd−wlの卵に注入することを含む。この変異体カイコについては、Tamura,et al.2000に記載されており、この文献は、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる。この変異体には、蛍光遺伝子を使用するスクリーニングを極めて容易にするメラニン沈着欠乏症がある。いったん赤目の推定上のFl形質転換体を同定すると、ホモ接合型の血統を確立して、本物の形質転換体をシルク腺タンパク質のウエスタンブロッティングを使用して確認し、繭シルクを採取した。実施例6−トランスジェニックカイコによるキメラスパイダーシルク/カイコ産生の分析 トランスジェニックカイコシルクについて、スパイダーシルク特異抗体を使用して、カイコシルク腺タンパク質含有物およびトランスジェニックカイコ繭からのシルク繊維の両方のウエスタンブロッティングによりスパイダーシルクキメラタンパク質の存在を分析した。両方の場合において、トランスジェニックカイコはキメラタンパク質を産生することが確認され、微分抽出実験から、これらのタンパク質は、それらの繭のトランスジェニックシルク繊維の不可欠な成分であることがわかった。 さらに、蛍光実体顕微鏡を使用する、シルク腺またはシルク繊維の直接検査により、キメラ緑色蛍光タンパク質融合物のそれぞれの発現がシルク腺および繊維の両方において明らかになった(図7)。ほとんどの場合において、繊維中の蛍光タンパク質の量は、通常の照明下で、繭を緑色により視覚化するのに十分高いものであった。実施例7−piggyBacベクターの設計 piggyBacは、効率的にカイコを形質転換するために使用することができるので、本プロジェクトのために選択したベクターになった4,11,43。本プロジェクトで使用した特定のpiggyBacベクターは、いくつかの重要な特徴を備えた遺伝子を保有するように設計した。図17に強調表示されているように、これらには、外来スパイダーシルクタンパク質の発現を後部シルク腺でさせるであろうB.moriフィブロイン重鎖(fhc)プロモーター91,92、ならびに外来シルクタンパク質の発現レベルおよび繊維へのそのアセンブリを促進するであろうfhcエンハンサー93が含まれた。piggyBacベクターはまた、弾性(GPGGA)8(配列番号4)および強度(リンカー−アラニン8)の両モチーフを有する比較的大きな合成スパイダーシルクタンパク質であるA2S814をコードした(“アラニン8”配列番号5として記載)(図17A)。合成スパイダーシルクタンパク質配列は、カイコガ(Bombyx mori)fhcタンパク質のN末端およびC末端ドメインをコードする配列の内側に埋め込んだ(図17B〜17C)。このキメラカイコ/スパイダーシルクの設計は、外来タンパク質をB.moriシルク腺における新生内因性シルク繊維に組み込むように仕向けて、複合シルク繊維を産生するために使用されてきた91、92。 本研究で構築されたpiggyBacベクターの1つでは、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質が単独でコードされたが(図17B)、別のベクターでは、N末端高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)タグを有するこの同じタンパク質がコードされた(図17C)。本明細書で記載のように、後者の構築物は、形質転換した子孫により産生されるシルク繊維の分析を容易にし、さらに、シルク腺におけるキメラスパイダーシルクタンパク質の発現を検討ための予備的な生体外シルク腺打ち込みアッセイのために使用された。方法: いくつかの遺伝子断片を、カイコガ(Bombyx mori)株P50/Daizoのシルク腺から単離されたゲノムDNAと図17に示す遺伝子特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離した。これらの断片には、fhcの主要プロモーターおよび上流エンハンサーエレメント(MP−UEE)、異なる5’−および3’−フランキング制限部位を有する、2バージョンのfhcの基本プロモーター(BP)およびN末端ドメイン(NTD;エキソン1/イントロン1/エキソン2)、fhcのC末端ドメイン(CTD;3’コード配列およびポリAシグナル)、ならびにEGFPが含まれる。それぞれの場合において、増幅産物をゲル精製し、予測された大きさのDNA断片を切除して回収した。続いて、fhcのMP−UEE、fhcのCTD、およびEGFP断片をpSLfall80fa(pSL)(Y.Miao)にクローニングし、2つの異なるNTD断片をpCR4−TOPO(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、そして適切な増幅産物を含有する大腸菌(E.coli)形質転換体を制限酵素マッピングにより同定し、配列決定により確認した。 次いで、以下のように、これらの断片を使用して、本研究で使用するpiggyBacベクターを組み立てた。合成A2S814スパイダーシルク配列を、BamHIおよびBspEIを用いて、pBluescript SKII+プラスミド前駆体(F.Teule and R.V.Lewis)から切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL中間プラスミドにおいてCTD上流の対応する部位にサブクローニングした。このステップにより、pSL−スパイダー6−CTDと名付けたプラスミドを得た。次いで、Not1 BamHI断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドの1つから切除し、ゲル精製して回収し、そしてpSLスパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングして、pSL−NTD−スパイダー6−CTDを作製した。並行して、Not1/Xbal断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドから切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL−EGFP中間プラスミドにおいてEGFPアンプライマー上流の対応する部位にサブクローニングした。これにより、NTD−EGFP断片を含有するプラスミドが得られ、この断片をNotlおよびBamHIを用いて切除し、pSL−スパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングした。次いで、MP−UEE断片を上記のpSL中間プラスミドからSfiIおよびNot1を用いて切除し、ゲル精製して回収し、上記の2つの異なる中間pSLプラスミドにおいてNTD−スパイダー6−CTDおよびNTD−EGFP−スパイダー6−CTD配列の上流の対応する部位にサブクローニングした。最後に、完全に組み立てられたMP−UEE−NTD−A2S814−CTDまたはMP−UEE−NTD−EGFPA2S814−CTDカセットを、それぞれの最終的なpSLプラスミドからAscIおよびFseIを用いて切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]98の対応する部位にサブクローニングした。この最後のサブクローニングステップにより、EGFPマーカーの有無を示すためにスパイダー6およびスパイダー6−EGFPと名付けられた、2つの別々のpiggyBacベクターが得られた。下記に記載のように、これらのベクターは、生体外シルク腺打ち込みアッセイおよびカイコ遺伝子組換えのために使用した。結果: 生体外アッセイの結果は、GFPタグ付きキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質をコードするpiggyBacベクターが後部シルク腺領域で緑色蛍光を誘導することを示した。GFP特異抗体を用いる免疫ブロッティングアッセイはさらに、打ち込まれたシルク腺が、約116kDaの見かけの分子量(Mr)を有する免疫反応性タンパク質を含有することを実証した。予測(106kDa)よりわずかに大きいが、これらの結果は、本piggyBacベクターの基本設計の検証となり、これらの構築物を使用する、トランスジェニックカイコの単離を促した。実施例8−トランスジェニックカイコの単離 各piggyBacベクターを、piggyBacトランスポサーゼをコードするプラスミドと混合し、その混合物をカイコガ(Bombyx mori)pnd−wl43から単離した卵に独立に微量注入した。形質転換体におけるEGFPタグ付きキメラカイコ−スパイダーシルクタンパク質の検出を容易にする、透明な表皮表現型を生じるメラニン沈着欠乏症を有するので、このカイコ株を使用した。推定上のFl形質転換体は、各piggyBacベクター(図17D)に含まれる神経特異的3XP3プロモーター27の制御下にあるDS−Redの発現に起因する赤眼表現型により最初に同定した。方法に記載のように、これらの動物は、いくつかのホモ接合型トランスジェニックカイコの血統を樹立するために使用し、それらの形質転換に使用したpiggyBacベクターを表して、スパイダー6およびスパイダー6−GFPと名付けた。方法:生体外シルク腺打ち込みアッセイ 第5齢の3日目に入っている、生きているカイコガ(Bombyx mori)株pnd−wlカイコを、70%エタノールに数秒間液浸して滅菌し、0.7%w/vのNaCI中に置いた。次いで、シルク腺全体を各動物から無菌的に切り離し、抗生物質添加のグレース培地を含有するペトリ皿に移し、DNA打ち込み工程までそこに保持した。並行して、タングステンミクロ粒子(1.7μm M−25マイクロキャリヤー;Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を、以下のように、打ち込み用にDNAでコーティングした。ミクロ粒子を、製造業者の説明書に従って前処理し、3mg/50μlアリコートで50%グリセロール中に−20℃で保存した。各打ち込み実験の直前に、製造業者の説明書に従って、ミクロ粒子アリコート3mgを最大容量5μl中で適切なpiggyBac DNA5μgでコーティングした。ミクロ粒子アリコートの一部を、DNA陰性対照として使用するために蒸留水でコーティングした。各打ち込み実験を6回反復し、個々の打ち込みにはそれぞれ1対のインタクトシルク腺が含まれた。打ち込みの場合、グレース培地中での保持状態から1%w/vの滅菌寒天を含有する90mmペトリ皿上にこれらの腺を移し、ペトリ皿を、Bio−Rad Biolistic(登録商標)PDS−1000/He Particle Delivery Systemチャンバーの中に置いた。以前に記載されているように26、チャンバーを20〜22Hgに排気し、シルク腺に、1,100psiのヘリウム圧力を使用して、粒子源から標的組織まで6cmの距離で、前コーティングしたタングステンミクロ粒子を打ち込んだ。打ち込み後、シルク腺を、2×抗生物質添加のグレース培地を含有する新たなペトリ皿に置き、28℃でインキュベートした。スパイダー6−GFPのpiggyBacベクターにおけるEGFPマーカーの一過性発現を、打ち込み後48および72時間に蛍光顕微鏡で評価した。画像を、倍率4.2倍、位相1/120秒、緑色蛍光1/110秒(捕捉)でオリンパスFSX100顕微鏡を用いて取得した。さらに、下記に記載されるように、EGFPタグ付きおよびタグなしキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の一過性発現を、打ち込まれたシルク腺抽出物をEGFP−またはスパイダーシルク−特異抗血清を用いて免疫ブロッティングすることにより評価した。カイコの形質転換 pnd−wlガによる産卵1時間後に卵を集め、スライドガラス上に並べた。ベクターおよびヘルパープラスミドをそれぞれ、0.2μg/ulの最終濃度で注入緩衝液(0.1mMリン酸ナトリウム、5mM KC1、pH6.8)中に再懸濁し、1〜5nlを、World Precision Instruments PV820圧力調節器(米国)、Suruga Seiki M331マイクロマニピュレーター(日本)、およびNarishige HD−21ダブルピペットホルダー(日本)からなる注入システムを使用して、各前胚盤葉カイコ胚に注入した。穴をあけられた卵は、Helping Hand Super Glueゲル(The Faucet Queens,Inc.,USA)を用いて密封し、次いで、胚発生のために25℃および湿度70%の成長チャンバーの中に置いた。孵化後、幼虫を人工飼料(日本農産工業株式会社、日本)で飼育し、同じ系内の同胞を交配することによりその後の世代を得た。トランスジェニック子孫は、550〜700nmの間のフィルターを備えたオリンパスSXZ12顕微鏡(東京、日本)を使用して、DsRedの蛍光眼マーカーの存在により試験的に同定した。結果: 特別にEGFPを励起せずに白色光の下で目視検査を行っても、EGFPの発現は、スパイダー6−GFP形質転換体により産生される繭で観察された(図18A)。さらに、これらの動物に由来するシルク腺(図18B〜18C)および繭(図18D)を蛍光顕微鏡下で検査すると、EGFPの強い発現が観察された。繭は、EGFPシグナルと融合したシルク繊維を少なくとも一部含むように見えた。スパイダー6−GFPのシルク腺および繭におけるEGFPタグ付きキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の発現は、EGFPおよびスパイダーシルクタンパク質に対する特異抗血清を用いて、シルク腺および繭の抽出物を免疫ブロッティングすることにより確認した(図19)。スパイダー6のシルク腺および繭の抽出物に関しても同様の結果が、スパイダーシルクタンパク質特異抗血清を用いる免疫ブロッティングにより得られた(図19)。これらの結果は、我々が、EGFPタグ付きまたはタグなし形態のキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質をコードするトランスジェニックカイコの単離に成功したこと、およびこれらのタンパク質が、それらのトランスジェニック動物により産生されるシルク繊維に結合していることを示した。実施例9−複合シルク繊維の分析 連続タンパク質抽出法を使用して、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質とトランスジェニックカイコから産生される複合シルク繊維との関連を分析した。緩く結合したセリシン層を除去した後、方法に記載のように、この練りシルク繊維を、苛酷さを増していく一連の抽出に付した。方法:カイコ繭タンパク質の連続抽出 親カイコおよびトランスジェニックカイコから産生された繭を採取し、セリシン層を、0.05%(w/v)のNa2CO3中で、材料:溶媒比を1:50(w/v)にして、85℃にて15分間繭を穏やかに撹拌することにより除去した40。この練りシルクを、槽から取り出し、同じ材料:溶媒比で、熱水(50〜60℃)を用いて注意深く撹拌しながら2回洗浄した。次いで、練りシルク繊維を凍結乾燥して秤量し、セリシン層除去の効率を評価した。この練り繊維を使用して、確実に一定の撹拌を行う混合ホイール上での回転による連続タンパク質抽出プロトコールを、以下のように行った。練りシルク繊維30mgを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;137mM NaCl、2.7mM KC1、10mM Na2P04、1.8mM KH2P04)中で、4℃にて16時間処理した。この材料を遠心分離により不溶性分画と可溶性分画に分離し、上清を取り出し、PBS可溶性分画として−20℃に保存し、ペレットを次の抽出に付した。このペレットを2%(w/v)SDS1mlに再懸濁し、室温で16時間インキュベートした。再び、材料を遠心分離により不溶性画分と可溶性分画に分離し、上清を取り出し、SDS可溶性分画として−20℃に保存し、ペレットを次の抽出に付した。このペレットを、2%(v/v)β−メルカプトエタノールを含有する9M LiSCN1mlに再懸濁し、室温で16〜48時間インキュベートした。遠心分離後、上清を9M LiSCN/BME可溶性分画として−20℃に保存した。このステップで得られた最終ペレットを、5%(v/v)BMEを含有する16M LiSCN1mlに再懸濁し、室温で約1時間インキュベートした。これにより完全に溶解し、最終抽出物が得られ、この抽出物は、16M LiSCN可溶性分画として、免疫ブロッティングアッセイを実施するまで−20℃に保存した。シルクタンパク質の分析 生体外打ち込みアッセイに由来するシルク腺およびさらに未処置の親カイコおよびトランスジェニックカイコに由来するシルク腺を、1%(w/v)SDSおよび5M尿素を含有するリン酸ナトリウム緩衝液(30mM Na2P04、pH7.4)中で、氷上ホモジナイズし、次いで、4℃の微量遠心機で、13,500rpmにて5分間、澄明化した。上清をシルク腺抽出物として収集し、これらの抽出物および上記の連続繭抽出物を、10mM Tris−HCl/2%SDS/5%BME緩衝液で4倍に希釈し、約90μgの総タンパク質を含有する試料をSDS−PAGE負荷緩衝液と1:1で混合し、95℃で5分間煮沸し、4〜20%グラジエントゲル(Pierce Protein Products;Rockford,IL)上に負荷した。分離後、製造業者の説明書に従い、Bio−Rad転写セルを使用して、タンパク質をゲルからPVDF膜(Immobilon(商標);Millipore,Billerica,MA)に転写した。ジョロウグモ(Nephila clavipes)の鞭毛状シルク様A2ペプチドに対して産生された、スパイダーシルクタンパク質特異ポリクローナルウサギ抗血清(GenScript Corporation,Piscataway,NJ)または商用EGFP特異マウスモノクローナル抗体(Living Colors(登録商標)GFP,Clontech Laboratories,Mountain View,CA)を一次抗体として使用して、免疫検出を実施した。二次抗体はそれぞれ、ヤギ抗ウサギIgG−HRP(Promega Corporation,Madison,WI)またはヤギ抗マウスIgG H+L HRPコンジュゲート(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)とした。抗体はすべて、標準ブロッキング緩衝液(l×PBST/0.05%脱脂粉乳)中で、1:10,000希釈で使用し、抗体抗原反応を、商用キット(ECL(商標)Western Blotting Detection Reagents;GE healthcare)を使用して化学発光により可視化した。結果: この手順の各ステップの後に、可溶性分画と不溶性分画を遠心分離により分離し、可溶性分画は免疫ブロッティングのために保存し、不溶性分画は次の抽出のために使用した。最終抽出溶媒は残存するシルク繊維を完全に溶解した。免疫ブロッティングの対照から、スパイダーシルクタンパク質特異抗血清は、pnd−wlシルク繊維中のいずれのタンパク質も認識しないが(図19B、レーン3〜6)、大腸菌(E.coli)で産生されたキメラカイコ/A2S814スパイダーシルクタンパク質を認識する(図19B、レーン2)ことが確認された。生理食塩水(図19B、レーン8および13)、SDS(図19B、レーン9および14)、および8M LiSCN/2%β−メルカプトエタノール(図19B、レーン10および15)を使用して、トランスジェニック動物由来の練り繭を連続抽出しても、いかなる検出可能な免疫反応性のタンパク質も放出されなかった。しかしながら、残留シルク繊維を16M LiSCN/5%β−メルカプトエタノールによりその後抽出すると、残留スパイダー6から分子量約106kDaの免疫反応性タンパク質(図19、レーン11)、そして残留スパイダー6−GFP繊維から分子量約130および約110kDaの免疫反応性タンパク質(図19、レーン16)が放出された。これらのタンパク質はすべて、予測されたもの(スパイダー6およびスパイダー6−GFPについてそれぞれ、78kDaおよび106kDa)より大きかった。これらの差異についての可能な説明としては、高度に反復性のスパイダーシルク配列による転写/翻訳の「スタッタリング(stuttering)」、SDS−PAGE上でのタンパク質産物の異常な泳動、および/またはキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の翻訳後修飾が挙げられる。免疫ブロッティングの陽性対照である、大腸菌(E.coli)で産生されたキメラカイコ/A2S814スパイダーシルクタンパク質もまた、分子量が予測されたもの(60kDa)よりも大きかった(約75kDa)。両トランスジェニックカイコ系の練り繭に由来する16M LiSCN/5%β−メルカプトエタノール抽出物はまた、分子量が約40〜約75kDaの免疫反応性スメアを含んでおり、これはキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の分解および/または翻訳の早期終結をおそらく反映している。導入遺伝子産物の大きさまたはその出現の理由にもかかわらず、連続抽出結果により、ここに記載のように提供されたトランスジェニックカイコは、複合シルク繊維に極めて安定に組み込まれたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を発現することが明確に実証された。実施例10−複合シルク繊維の機械的性質 トランスジェニックカイコにより産生された複合シルク繊維の練り天然および複合シルク繊維の機械的性質をここに記載する。 試験のための複合シルク繊維の調製方法および試験の実施方法を以下の方法に示す。方法: 機械的性質の試験に使用する練りカイコシルク繊維は、初期長(L0)が19mmであった。単繊維試験は、MTS 標準50Nセルおよび特注品の10g荷重セル(Transducer Techniques,Temecula CA)の両方が装着されたSynergie 100システム(MTS Systems Corporation,Eden Prairie MN)を使用して、周囲条件(20〜22℃および湿度19〜22%)で実施した。機械的性質データ(荷重および伸長)は、歪み速度5mm/分および周波数250MHzで、TestWorks(登録商標)4.05ソフトウェア(MTS Systems Corporation,Eden Prairie,MN)を用いて両方の荷重セルで記録し、これにより応力値および歪み値を計算した。各繊維について収集したデータセットから応力/歪み曲線を、MATLAB(バージョン7.1)を使用してプロットし、靭性(または切断エネルギー)、ヤング率(初期剛性)、最大応力、および最大伸張(=最大%歪み)を決定した。結果: これらの結果から、EGFPタグ付きまたはタグなしのいずれかのキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する練り複合繊維は、pnd−wlカイコ由来の天然繊維よりも顕著に大きな伸長性および幾分改善した強度および剛性を有することが実証された(表3および図20)。表3:親カイコおよびトランスジェニックカイコにより産生された12〜15シルク繊維の機械的性質を、正確に調整した温度、湿度、および試験速度の条件下で測定し、その平均値および標準偏差を表に示す。同じ条件下で並行して決定されたスパイダー(ジョロウグモ(Nephila clavipes)牽引糸シルク繊維の平均の機械的性質を比較のために含む。 したがって、これらの複合繊維は天然カイコシルク繊維よりも靱性が高い。トランスジェニック動物により産生された複合シルクの機械的性質は、親株により産生された天然繊維のものより変動しやすかった。さらに、2つの異なるスパイダー6−GFP系により産生された複合繊維は同様の伸長性を示したが、張力強度は異なっていた。個々のトランスジェニック系内の複合シルク繊維の機械的性質について観察された変動および系間の変動は、複合繊維における不均一性を表わしている可能性があり、この不均一性は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質比および/または繊維に沿ったこれらのタンパク質の局在化の差による可能性がある。図18Dにおいて、複合繊維に不均一性がある証拠を見ることができる。トランスジェニックカイコ由来の複合繊維、親カイコ由来の天然繊維、および代表的な牽引糸スパイダーシルク繊維について観察された最良の機械的性能の比較を図20に示す。この結果から、複合繊維はすべて、pnd−wlカイコ由来の天然シルク繊維よりも靱性が高いことがわかる。また、トランスジェニックスパイダー6−GFP系4カイコ由来の複合繊維は、同じ条件下で試験された天然スパイダー牽引糸シルク繊維よりもさらに靱性が高かった。これらの結果は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の組み込みにより、トランスジェニックカイコプラットフォームを使用して産生される複合シルク繊維の機械的性質が顕著に改善されうることを実証する。 天然カイコ(pnd−wl)およびスパイダー(ジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸)シルク繊維について測定された最良の機械的性能を、トランスジェニックカイコにより産生された複合シルク繊維で得られたものと比較する。繊維はすべて、同じ条件下で試験した。最大靱性値は次のとおりである:カイコpnd−wl(青線、43.9MJ/m3));スパイダー6系7(オレンジ線、86.3MJ/m3);スパイダー6−GFP系1(濃緑線、98.2MJ/m3)、(スパイダー6−GFP系4(淡緑線、167.2MJ/m3);およびジョロウグモ(N.clavipes)牽引糸(赤線、138.7MJ/m3)。(表3を参照のこと)。実施例11−安定に組み込まれたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する複合繊維 スパイダーシルクには、多くの異なる用途に向けた生体材料として非常に多くの使用法がある。これまで、クモ飼育に対する深刻な障害が天然生産活動等を損なっていた。スパイダーシルク繊維産生にとって有効な生物工学的手法を開発する必要性が、本開示で提供されたプラットフォームで示される。組換えスパイダーシルクタンパク質の産生に使用するための他のプラットフォームが記載されてきたが、これらのタンパク質を有用な繊維に効率的に加工することは困難であった。単なるタンパク質ではなく繊維を製造する必要性のため、この特定の生物工学的用途に適任のプラットフォームとしてカイコが位置づけられる。 スパイダーシルクタンパク質を産生するために遺伝子操作されたトランスジェニックカイコは、カイコガ(Bombyx mori)セリシン(Serl)プロモーターの転写制御下にある、天然ジョロウグモ(Nephila clavipes)の大瓶状スピドロイン−1シルクタンパク質をコードするpiggyBacベクターを使用して単離された。スピドロイン配列はC末端fhcペプチドをコードする下流配列と融合された。このpiggyBac構築物を使用して単離されたトランスジェニックカイコは、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する繭を産生したが、このタンパク質は緩く結合したセリシン層でのみ見出された。これに対して、本開示のトランスジェニックカイコにより産生されたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質は、複合繊維の不可欠な成分であった。他の研究者により設計されたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の比較的緩い結合は、とりわけN末端カイコfhcドメインの欠如を反映している可能性がある。あるいは、piggyBacベクターにおけるSer1プロモーターの使用は、このプロモーターが中部シルク腺で転写活性であるため、適切な繊維アセンブリととりわけ調和しない可能性があるが、一方、fhc、フィブロイン軽鎖、およびヘキサメリンタンパク質の発現を制御するfhc、flc、およびfhxのプロモーターはそれぞれ、後部シルク腺において活性である。カイコシルクタンパク質の繊維へのアセンブリは、シルク遺伝子発現の厳格な空間的および時間的調節により部分的に制御される。したがって、本開示のベクターは、キメラタンパク質が新たにアセンブリされた複合シルク繊維に安定して組み込まれることを促進するために、天然シルクタンパク質と同じ場所および同じ時間にキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質の蓄積を促すようにfhcプロモーターで巧妙に仕組まれている。他の研究者が、いくつかのトランスジェニックカイコにより産生された繭に由来する繊維の弾性および張力強度が少し増加することを記載している。しかしながら、セリシン層は機械的性質試験の前に除去されておらず、このデガミングステップは、商業シルク繊維生産のための繭の処理において不可欠である。したがって、繭が従来の様式で処理された場合、組換えスパイダーシルク/カイコタンパク質は除去され、得られるシルク繊維には、機械的性質の改善が期待されないであろう。 スパイダーシルクタンパク質を産生するトランスジェニックカイコは、ヘキサフルオロ溶媒に溶解するシルクタンパク質から繊維を再生することに焦点を当てた他の研究の比較的微量な構成要素として報告された。それにもかかわらず、この研究では、ジョロウグモ(Nephila clavipes)の大瓶状スピドロイン−1または鞭毛状シルクタンパク質に由来する極端に短い合成「シルク様」配列をコードするpiggyBacベクターを用いて生成された2つのトランスジェニックカイコが記載されていた。両方のシルク様ペプチドは、N末端およびC末端fhcドメインの内側に埋め込まれていた。機械的性質試験から、これらのトランスジェニック動物により産生されたシルク繊維は、幾分大きな張力強度(41〜73MPa)を有し、かつ弾性には変化がないことがわかった。これらの研究者はまた、それらの複合繊維の機械的性質において観察された比較的小さな変化は、組換えタンパク質の組み込みが低レベルであることを反映していると報告している。また、それらの構築物に使用された特定のスパイダーシルク様ペプチド配列および/またはそれらの大きさが小さいことによって、それらのトランスジェニックカイコにより産生された複合繊維の機械的性質の比較的小さな変化が少なくとも部分的に説明されうる可能性もある。 本トランスジェニックカイコおよび複合繊維は最初のものであり、それらの機械的性質を顕著に改善する、安定に組み込まれたキメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質を含有する複合シルク繊維を産生するトランスジェニックカイコ系が得られた。本トランスジェニックカイコ系により産生される複合スパイダーシルク/カイコ繊維は、天然牽引糸スパイダーシルク繊維よりも靱性が一層高かった。これは、他の要因の中でも、少なくとも部分的には、反復鞭毛状様(GPGGA)4(配列番号6)弾性モチーフおよび大瓶状スピドロイン−2[リンカー−アラニン8]結晶モチーフをコードする、2.4kbpのA2S814合成スパイダーシルク配列の使用による可能性がある(“アラニン8”配列番号5として記載)。この比較的大きな合成スパイダーシルクタンパク質は、大腸菌(E.coli)で産生された後、押出しにより繊維に紡ぐことができ、このタンパク質が繊維にアセンブルする天然の能力を保持していることが示される。しかしながら、このタンパク質は、シルク繊維に組み込まれるために、一斉に発現され、内因性のカイコfhc、flc、およびfhxタンパク質と相互作用しなければならないであろう。したがって、A2S814スパイダーシルク配列は、アセンブリ過程を指向して、N末端およびC末端fhcドメインの内側に埋め込まれた。fhcプロモーターが内因性カイコシルクタンパク質に空間的および時間的に接近してそれらの発現を駆動する能力と共に、これらの特徴は、キメラカイコ/スパイダーシルクタンパク質が複合シルク繊維のアセンブリに参加し、その機械的性質に顕著に寄与する能力を少なくとも部分的に説明することができる。実施例12−piggyBacベクター構築物およびpiggyBacベクターの構成要素のPCR増幅 いくつかの遺伝子断片を、カイコガ(Bombyx mori)株P50/Daizoのシルク腺から単離したゲノムDNAおよび表4に示す遺伝子特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により単離した。これらの断片には、fhcの主要プロモーターおよび上流エンハンサーエレメント(MP−UEE)、異なる5’−および3’−フランキング制限部位を有する、2バージョンのfhcの基本プロモーター(BP)およびN末端ドメイン(NTD;エキソン1/イントロン1/エキソン2)、fhcのC末端ドメイン(CTD;3’コード配列およびポリAシグナル)、ならびにEGFPが含まれる。それぞれの場合において、増幅産物をゲル精製し、予測された大きさのDNA断片を切除して回収した。続いて、fhcのMP−UEE、fhcのCTD、およびEGFP断片をpSLfall80faにクローニングし、2つの異なるNTD断片をpCR4−TOPO(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングし、そして適切な増幅産物を含有する大腸菌(E.coli)形質転換体を制限酵素マッピングにより同定し、配列決定により確認した。次いで、以下のように、これらの断片を使用して、この研究で使用するpiggyBacベクターを組み立てた。合成A2S814スパイダーシルク配列を、BamHIおよびBspELを用いて、pBluescript SKII+プラスミド前駆体から切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL中間プラスミドにおいてCTD上流の対応する部位にサブクローニングした。このステップにより、pSL−スパイダー6−CTDと名付けたプラスミドを得た。次いで、Not1/BamHI断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドの1つから切除し、ゲル精製して回収し、そしてpSL−スパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングして、pSL−NTD−スパイダー6−CTDを作製した。並行して、Not1/Xbal断片を上記のpCR4−TOPO−NTD中間プラスミドから切除し、ゲル精製して回収し、上記のpSL−EGFP中間プラスミドにおいてEGFPアンプライマー上流の対応する部位にサブクローニングした。これにより、NTD−EGFP断片を含有するプラスミドが得られ、この断片をNotlおよびBamHIを用いて切除し、pSL−スパイダー6−CTDにおいてスパイダー6−CTD配列上流の対応する部位にサブクローニングした。次いで、MP−UEE断片を上記のpSL中間プラスミドからSfi1およびNot1を用いて切除し、ゲル精製して回収し、上記の2つの異なる中間pSLプラスミドにおいてNTD−スパイダー6−CTDおよびNTD−EGFP−スパイダー6−CTD配列の上流の対応する部位にサブクローニングした。最後に、完全に組み立てられたMP−UEE−NTD−A2S814−CTDまたはMP−UEE−NTD−EGFPA2S814−CTDカセットを、それぞれの最終的なpSLプラスミドからAsc1(ASc1)およびFse1を用いて切除し、pBAC[3xP3−DSRedaf]の対応する部位にサブクローニングした(Horn,et al.(2002),Insect Biochem.Mol.Biol.,32:1221−1235)。この最後のサブクローニングステップにより、EGFPマーカーの有無を示すためにスパイダー6およびスパイダー6−EGFPと名付けられた、2つの別々のpiggyBacベクターが得られた。以下の表に、使用されたpiggyBacベクターの重要な構成要素の一部を収戴する。表4は、出現順にそれぞれ配列番号7〜17を開示する。実施例13−maspクローニング 本実施例は、プラスミド、具体的にはpXLBacII ECFPプラスミドの内部にNTD領域を含有する遺伝子構築物を提供することにより本発明の有用性を実証する。 pXLBacII ECFPプラスミドに加えてNTD領域を含有する潜在的に陽性のクローンは、PCRによるコロニースクリーニングにより示される。 pXLBacII−ECFP NTD CTD maspX16(10,458bp)(図12A)およびpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24(11,250 bp)(図12B)の遺伝子構築物maspを作製した。 当業者にとって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の修正および変更をなすことができることは明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価形態の範囲に入るならば、本発明の修正および変更を包含することが意図される。参考文献以下の参考文献は、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる。1. 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United States Patent 5,728,810 Lewis.A16333全文3 カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのN末端断片、弾性モチーフおよびシルク強度モチーフからなる群から選択される1つまたは複数のスパイダーシルクモチーフ、およびカイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端断片を含むことを特徴とするキメラスパイダーシルクポリペプチド。 請求項1に記載のキメラスパイダーシルクポリペプチドにおいて、前記弾性モチーフが、1つまたは複数のMaSp様モチーフまたはMiSp様モチーフを含むことを特徴とするキメラスパイダーシルクポリペプチド。 請求項2に記載のキメラスパイダーシルクポリペプチドにおいて、前記1つまたは複数のMaSp様モチーフが、1つまたは複数のMaSplモチーフまたはMaSp2モチーフを含むことを特徴とするキメラスパイダーシルクポリペプチド。 請求項1に記載のキメラスパイダーシルクポリペプチドにおいて、成長促進ペプチドをさらに含むことを特徴とするキメラスパイダーシルクポリペプチド。 請求項1に記載のキメラスパイダーシルクポリペプチドを含む複合繊維であって、前記繊維が非キメラカイコシルク繊維よりも大きな張力強度があることを特徴とする複合繊維。 請求項11に記載の核酸を含むことを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項6に記載のトランスジェニックカイコにおいて、前記カイコが、非キメラカイコ繊維の少なくとも2倍の強度の張力強度を有するキメラ繊維の製造に適したキメラスパイダーシルクポリペプチドを産生することができることを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項6に記載のトランスジェニックカイコにおいて、前記カイコが、カイコガ(Bombyx mori)カイコであることを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項6に記載のトランスジェニックカイコにおいて、8つのスパイダーシルク弾性モチーフを含むことを特徴とするトランスジェニックカイコ。 請求項6に記載のトランスジェニックカイコにおいて、前記スパイダーシルク弾性モチーフ配列が、MaSp様モチーフまたはMiSp様モチーフであることを特徴とするトランスジェニックカイコ。 キメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸であって、カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドN末端断片、弾性モチーフおよび強度モチーフからなる群から選択される1つまたは複数のスパイダーシルクモチーフ、およびカイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端断片を含むことを特徴とする核酸。 請求項11に記載の核酸において、前記1つまたは複数のスパイダーシルクモチーフが、4〜8コピーの弾性モチーフおよび1〜4コピーの強度モチーフを含むことを特徴とする核酸。 請求項11に記載の核酸において、前記弾性モチーフがGPGGA(配列番号2)であり、かつ前記強度モチーフがGGPSGPGS(A)8(配列番号3)であることを特徴とする核酸。 請求項11に記載の核酸において、キメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする前記核酸が、B.moriフィブロイン重鎖(fhc)遺伝子の主要プロモーター、上流エンハンサーエレメント(UEE)、および基本プロモーターを含む核酸によりその5’末端で隣接されており、かつB.moriフィブロイン重鎖(fhc)の転写終結部位およびポリアデニル化部位を含む核酸によりその3’末端で隣接されていることを特徴とする核酸。 pXLBacII−ECFP NTD CTD maspX16と名付けられた、請求項30に記載のpiggyBacベクターにおいて、配列番号34で指定された配列を含むことを特徴とするpiggyBacベクター。 pXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24と名付けられた、請求項30に記載のpiggyBacベクターにおいて、配列番号35で指定された配列を含むことを特徴とするpiggyBacベクター。 キメラスパイダーシルク繊維を作製する方法であって、 a.カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのN末端断片、弾性モチーフおよび強度モチーフからなる群から選択される1つまたは複数のスパイダーシルクモチーフ、およびカイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端断片を含むキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸を含むpiggyBacベクターを使用してトランスジェニックカイコを作製すること; b.前記トランスジェニックカイコに、前記カイコにとって天然の適切な生理学的条件下で1つまたは複数のキメラスパイダーシルク繊維を含む繭を産生させること; c.前記繭から1つまたは複数のキメラスパイダーシルク繊維を収集し抽出することを含むことを特徴とする方法。 請求項17に記載の方法において、前記トランスジェニックカイコが、トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)カイコであることを特徴とする方法。 キメラスパイダーシルク繊維へのアセンブリに適した、キメラスパイダーシルクポリペプチドを安定に発現することができるトランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)カイコを作製する方法であって、前記方法が、 a.カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのN末端断片、弾性モチーフおよび強度モチーフからなる群から選択される1つまたは複数のスパイダーシルクモチーフ、およびカイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端断片を含むキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸を含むpiggyBacベクターを、変異カイコガ(Bombyx mori)の卵に挿入して、注入されたカイコガ(Bombyx mori)卵を準備すること; b.適切なインキュベーション条件下で前記卵を孵化させて幼虫を準備すること; c.適切なインキュベーション条件下で前記幼虫を成熟させること;および d.トランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)カイコを選択することを含むことを特徴とする方法。 請求項19に記載の方法において、核酸がトランスジェニックカイコガ(Bombyx mori)の選択を容易にするためにレポーターポリペプチドをコードする核酸をさらに含むことを特徴とする方法。 請求項19に記載の方法において、前記piggyBacベクターが、配列番号34で指定された配列を含むpXLBacII−ECFP NTD CTD masplX16と名付けられたベクターであるか、または配列番号35で指定された配列を含むpXLBacII−ECFP NTD CTD maspX24と名付けられたベクターであることを特徴とする方法。 請求項5に記載の複合繊維において、前記複合繊維が、非キメラカイコシルク繊維および非キメラスパイダーシルク繊維の張力強度よりも大きな張力強度を有することを特徴とする複合繊維。 請求項22に記載の複合繊維において、1つまたは複数の治療剤をさらに含むことを特徴とする複合繊維。 請求項23に記載の繊維において、前記治療剤の少なくとも1つが、抗感染剤、化学療法剤、抗拒絶剤、鎮痛剤、抗炎症剤、ホルモン剤、および増殖因子からなる群から選択されることを特徴とする繊維。 請求項23に記載の繊維において、前記治療剤の少なくとも1つが増殖因子であることを特徴とする繊維。 請求項11に記載のキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸において、前記弾性モチーフが1つまたは複数のMaSp様モチーフまたはMiSp様モチーフを含むことを特徴とする核酸。 請求項26に記載のキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸において、前記1つまたは複数のMaSp様モチーフが、1つまたは複数のMaSp1モチーフまたはMaSp2モチーフを含むことを特徴とする核酸。 請求項11に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。 請求項28に記載のベクターにおいて、前記ベクターがトランスポゾンを含むことを特徴とするベクター。 請求項29に記載のベクターにおいて、前記トランスポゾンがpiggyBacトランスポゾンであることを特徴とするベクター。