タイトル: | 公表特許公報(A)_ヒトDNAを検出及び/又は定量するための方法 |
出願番号: | 2013529651 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
ヴェンデ アンディー ディパスカレ フランチェスカ ヴェルナー ザビーネ シュトラウス ザッシャー JP 2013540436 公表特許公報(A) 20131107 2013529651 20110922 ヒトDNAを検出及び/又は定量するための方法 キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 599072611 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 ヴェンデ アンディー ディパスカレ フランチェスカ ヴェルナー ザビーネ シュトラウス ザッシャー EP 10178914.7 20100923 C12N 15/09 20060101AFI20131011BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20131011BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA EP2011066500 20110922 WO2012038503 20120329 28 20130520 4B024 4B063 4B024AA11 4B024AA20 4B024CA01 4B024DA02 4B024HA14 4B063QA13 4B063QQ03 4B063QQ08 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR62 4B063QR72 4B063QR77 4B063QS34 4B063QX01 本発明は、分子生物学、診断の分野、より具体的には分析科学及び法医科学の分野に関する。本発明はさらに、核酸の増幅及び定量の分野、より具体的にはDNA定量の分野に関する。 法医学試料及びその他試料から回収したDNA量を決定することは、DNAタイピング・プロセス全体においてのみならず、その他様々な科学分野におけるDNA検出においても重要な工程である。例えば多重DNAタイピング・キットで最適な結果を得るには、0.5〜2ngと狭い範囲のDNAを投入がしばしば必要である。そのため、陽性結果が陽性結果であること、及び/又はDNAが含まれていないことによる陰性結果が陰性結果であることを確実にするためには、DNAの定量が絶対的に重要である。さらに、DNAを試験する法医学研究室のための品質基準としては、ヒト特異的DNAの定量が必要とされている。これは、ヒトDNA、並びに細菌及びその他外因性DNAを回収し得る単離技術によるものである。ヒト特異的DNAの定量を可能にする、多数の手段が開発されており、それらには、スタートブロット法(start-blot technique)、液体ベースのハイブリダイゼーション・アッセイ、及びリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が含まれる。現在では、リアルタイムPCRが、ダイナミックレンジが広いこと並びに自動化が容易なことから、主要な手法である。 最新のSTRキットの感度は非常に高くなっており、少量のDNAを用いても良好な結果を得ることができる。従って、濃度が低い試料であってもDNAの精密な定量を可能にする、方法、キット、及び核酸領域の要求がある。一定の定量及び検出キットが既に利用可能であるが、これらのキットには重大な欠点がある。このようなキットの1つにはクオンチフィラー・ヒト・キット(Quantifiler Human Kit)(アプライドバイオシステムズ)があり、その他キットとしてはクオンチフィラー・デュオ・キット(Quantifiler Duo Kit)(アプライドバイオシステムズ)やプレクサーHYリアルタイムPCR定量キット(Plexor HY Real-Time PCR Quantification Kit)(プロメガ)がある。クオンチフィラー・デュオ・キットとプレクサーHYキットは両方とも、ゲノム上の常染色体標的及び性染色体(Y染色体)標的をターゲットとしている。 これらキットには以下のような欠点がある。ラ・サール(LaSalle)ら[フォレンジック・サイエンス・インターナショナル:ジェネティクス(Forensic Science International: Genetics)「リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応によるDNA定量のための単コピー及び多コピー法の解析(Analysis of Single and Multi-copy Methods for DNA Quantification by Real-Time Polymerase Chain Reaction)」]によれば、クオンチフィラー・キットはプレクサーHYよりも定量の面では正確であるが、ダイナミックレンジが狭い。プレクサーHYは多コピー標的を増幅するためダイナミックレンジは広いが、精度が低い。精度が低い原因は多コピー標的に起因し得る。例えば標的コピー数が不安定なために、ゲノムの20コピー一式全てが増幅しない場合、常染色体標的及び性染色体(Y)標的との間の増幅の比率が変化し得る。プレクサーHYキットのダイナミックレンジはその他キットのものより僅かに良い[ラ・サール(LaSalle)ら、フォレンジック・サイエンス・インターナショナル:ジェネティクス(Forensic Science International: Genetics)「リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応によるDNA定量のための単コピー及び多コピー法の解析(Analysis of Single and Multi-copy Methods for DNA Quantification by Real-Time Polymerase Chain Reaction)」]。ラ・サールらは、これら2種類のキット間の有意差を統計比較で示した。 法医学において重要な別の指標は、解析されるDNAの分解度である。クオンチフィラーヒト及びプレクサーHYのアンプリコン・サイズは62〜133塩基対(bp)で変化するため、これらのキットを分解したDNAに用いた場合、大きな有意差が予想される。 本発明は、前記に特定した課題を解決し、以下に概要を示す解決手段を提供する。 一の態様において、本発明は、試料においてゲノムの1以上の核酸を定量及び/又は検出するための方法であって、a.核酸が増幅され、かつ増幅される遺伝子座はゲノム中の多コピー遺伝子座であり、b.多コピー遺伝子座は少なくとも2つの異なる染色体上にコピーを有し、c.並びに、増副産物が検出及び/又は定量される方法に関する。 この新規方法の実質的な利点は、既存の方法に比べてその感度が高いこと、並びに検出する標的の安定性が高いことである。これまでに知られている他の標的は、反復要素は数において変化する傾向があるため、個人個人で変化し得る[パベリッツら、ヒトU2 snRNA遺伝子は分裂中期に、持続的な開かれた転写状態及びプロモーターの分解を示す。モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー、2008, p.3573-3588(Pavelitz et al., Human U2 snRNA Genes Exhibit a Persistently Open Transcriptional State and Promoter Disassembly at Metaphase, Molecular and Cellular Biology, 2008, p. 3573-3588);リアオら、ヒトU2 snRNA(RNU2遺伝子座)をコードするタンデム反復遺伝子の協調進化は、染色体間の均質化及び稀に起こる染色体間での遺伝子変換を伴う。エンボ・ジャーナル、第16巻、第3番、588-598頁、1997(Liao et al., Concerted evolution of the tandemly repeated genes encoding human U2 snRNA (the RNU2 locus) involves rapid intrachromosomal homogenization and rare interchromosomal gene conversion, The EMBO Journal, Vol. 16, No. 3, pp. 588-598, 1997);ヤシニスカら、ヒトトランスクリプトームを形成する復配列、フェブス・レターズ、567 (2004) 136-141(Jasinska et al., Repetitive sequences that shape the human transcriptome, FEBS Letters, 567 (2004) 136-141)]。 理想的には、遺伝子座は、短いタンデム反復、又は本質的に式(AwCxGyTz)2-1000(但し、w、x、y、及びzは0〜10で変化してもよく、かつ、単位中に存在するヌクレオチドの数を示す。)の要素ではない。単位は2〜1000回繰り返されていてもよい。別の反復要素には、テロメア中に通常含まれるサテライトDNAがある。さらに適さらない反復要素には、短鎖散在反復配列(short interspersed nuclear elements、SINE)及び長鎖散在反復配列(long interspersed nuclear elements、LINE)がある。 さらに、本発明は、ゲノムの核酸を検出及び/又は定量するための、ゲノム中の多コピー遺伝子座の使用であって、前記多コピー遺伝子座は反復要素では無く、かつ少なくとも二つの異なる染色体上にコピーを有する、使用に関する。 また、本発明は、ヒト核酸を検出及び/又は定量するためのキットであって、前記キットは、80塩基対の領域に渡り、配列番号1又は配列番号52に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列と、ストリンジェントな条件下で結合するプライマーを含む、キットに関する。 本明細書においては、以下の略語が用いられる。(1)HDA(ヘリカーゼ依存増幅;helicase dependent amplification)、(2)PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、(3)gDNA(ゲノムDNA)、(4)FAM(6−カルボキシフルオレセイン;6-carboxyfluorescein)、(5)SNP(一塩基多型)、(6)NTC(鋳型を含まない対照;no template control)、(7)BHQ(ブラックホール・クエンチャー;black hole quencher)、(8)qPCR(定量PCR)、(9)HEX(6−カルボキシ−4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロフルオレセイン;6-carboxy-4,7,2',4',5',7'-hexachlorofluorescein)。同定したゲノム領域の一部を示す。同定したゲノム領域の一部を示す。HDA反応のPAGE解析の結果。レーン1:O−レンジルーラー10bpDNAラダー(O-RangeRuler 10bp DNA Ladder)(Fermentas;フェルメンタス)、レーン2及び3:別々のプライマーを用いたHDA反応、レーン4:hT−For2及びhT−Rev2のプライマーを用いたが、gDNAを含まないHDA、レーン5:hT−For2及びhT−Rev2のプライマーを用い、かつ10,000cpのヒトgDNAを用いたHDA。図3は、リアルタイムHDA反応の結果を示す。破線:ヒトDNAを含まない対照反応、実線:10,000コピーのヒトgDNAを用いた反応。連続希釈(10ng〜10pgのヒトgDNA)のqPCRのデータを示す。多コピーアッセイ(四角)及び単コピーアッセイ(丸)のCt値を表す図。各反応当たり10pg〜10ngのgDNAを鋳型DNAとして加えた。配列の概略。配列番号2及び3は、配列番号1の最初の下線部を増幅するプライマーである。配列番号11及び12は、配列番号1の2番目の下線部を増幅するスコーピオン・プライマーである。配列の概略。配列番号2及び3は、配列番号1の最初の下線部を増幅するプライマーである。配列番号11及び12は、配列番号1の2番目の下線部を増幅するスコーピオン・プライマーである。配列の概略。配列番号2及び3は、配列番号1の最初の下線部を増幅するプライマーである。配列番号11及び12は、配列番号1の2番目の下線部を増幅するスコーピオン・プライマーである。配列の概略。配列番号2及び3は、配列番号1の最初の下線部を増幅するプライマーである。配列番号11及び12は、配列番号1の2番目の下線部を増幅するスコーピオン・プライマーである。図7は、プライマー対11及び12、プライマー対5及び6、並びにプライマー対8及び9で増幅される領域を示す。図7は、プライマー対11及び12、プライマー対5及び6、並びにプライマー対8及び9で増幅される領域を示す。図8は、ヒトの分解されたDNAの測定を示す。図9は、ヒトの分解されたDNAの測定結果を示す。図10は、変動するコピー数の測定結果を示す。図11Aは、変動するコピー数の測定結果を示す。図12は、変動するコピー数の測定結果を示す。本発明の詳細な説明 試料においてゲノムの1以上の核酸を定量及び/又は検出するための方法であって、a.核酸が増幅され、かつ増幅される遺伝子座はゲノム中の多コピー遺伝子座であり、b.多コピー遺伝子座は少なくとも2つの異なる染色体上にコピーを有し、c.並びに、増副産物が検出及び/又は定量される方法。 驚くべきことに、発明者らは、反復要素ではない多コピー遺伝子座は、核酸の検出及び/又は定量に用いると、その他遺伝子座よりも優れていることを発見した。反復要素は、コピー数において個人個人で変化し得ることは周知である。従って、本発明は、好ましくは、多コピー遺伝子座が反復要素ではない、本明細書に記載の方法に関する。 一般に、これらの核酸は、原核、真核等、任意の起源を有し得る。好ましくは、核酸は、哺乳類起源、より好ましくはヒト起源である。何故ならば、本発明の大きな利点の1つは、法医学分野における用途であるからである。 そのような配列の1つを配列番号1に、もう1つを配列番号52に示す。実際には、配列番号1は配列番号52の一部である。驚くべきことに、発明者らは、この配列、及び/又はこの配列と配列類似性を有する配列がヒトゲノム中に高頻度で見出され得ることを発見した。従って、理想的には、これらの配列に結合するプライマー及び/又はプローブが用いられる。 ゲノム全体に渡って分布している配列は、全てが正確に同一と云う訳では無い。選択したプライマーが、ほぼ同一の配列にもまた結合することが重要である。従って、遺伝子座は、理想的には、80塩基対の領域に渡り、配列番号1又は配列番号52の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%又はさらに95%若しくは98%の配列同一性を有する。 2つの配列の間のパーセント同一性の決定は、カーリン(Karlin)及びアルトシュル(Altschul)の数値計算用アルゴリズム[米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)(1993) 90: 5873-5877]を用いて達成される。このアルゴリズムは、アルトシュルらのBLASTN及びBLASTPプログラムの基礎となっている[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.)(1990) 215: 403-410]。BLASTヌクレオチド検索は、BLASTNプログラムを用い、スコア=100、ワード長=12で実施し、ヌクレオチド配列間のパーセント同一性を得る。BLASTタンパク質検索は、BLASTPプログラムを用い、スコア=50、ワード長=3で実施し、アミノ酸配列間のパーセント同一性(%)を得る。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るためには、アルトシュルら[ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)(1997) 25: 3389-3402]に記載されている通り、ギャップ付きBLASTを利用する。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを用いる場合には、それぞれのプログラムのデフォルト・パラメータが用いられる。 本発明の一態様では、多コピーが増幅される。理想的には、様々な染色体上の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29コピーが増幅される。配列番号1、配列番号52又はそれらに非常に類似する配列が、ヒトゲノム中に最大29の頻度で存在する。このことは単に驚くべきものであると云うだけでなく、本発明の方法の能力を提供する。また、コピーは、様々な染色体、例えば第1、4、5、7、11、16番染色体に見出され得る。 増幅方法は非等温法又は等温法の何れかである。 非等温増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)[サイキ(Saiki)ら、(1985)サイエンス(Science)230:1350]、定量リアルタイムPCR(rtPCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)[ランデグレン(Landegren)ら、(1988)サイエンス(Science)241:1077-1080]の群から選択してもよい。好ましくはポリメラーゼ連鎖反応である。 等温増幅法は、ヘリカーゼ依存増幅(helicase-dependent amplification;HDA)[ビンチェント(Vincent)ら、(2004)エンボリポート(EMBO rep)5(8):795-800]、熱安定HDA(thermostable HAD;tHDA)[アン(An)ら、(2005)ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J Biol Chem)280(32):28952-28958]、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)[ウォーカー(Walker)ら、(1992)ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res)20(7):1691-6]、多置換増幅(multiple displacement amplification;MDA)[ディーン(Dean)ら、(2002)米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)99(8): 5261-5266]、ローリングサークル増幅(rolling-circle amplification;RCA)[リウ(Liu)ら、(1996)米国化学会誌(J Am Chem Soc)118:1587-1594]、制限酵素を使用したRCA(restriction aided RCA)[ワン(Wang)ら、(2004)ゲノム・リサーチ(Genome Res)14:2357-2366]、単一プライマー等温増幅(single primer isothermal amplification;SPIA)[ダフォーン(Dafforn)ら、(2004)バイオテクニークス(Biotechniques)37(5):854-7]、転写介在増幅(transcription mediated amplification;TMA)[ブオリネン(Vuorinen)ら、(1995)ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(J Clin Microbiol)33: 1856-1859]、ニッキング酵素増幅反応(nicking enzyme amplification reaction;NEAR)[メープルズ(Maples)ら、米国特許第2009017453号]、指数関数増幅反応(exponential amplification reaction;EXPAR)[バネス(VanNess)ら、(2003)米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)100(8):4504-4509]、ループ介在等温増幅(loop mediated isothermal amplification;LAMP)[ノトミ(Notomi)ら、(2000)ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res)28(12):e63]、リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(recombinase polymerase amplification;RPA)[パイペンバーグ(Piepenburg)ら、(2006)PLOSバイオロジー(PloS Biol)4(7):1115-1120]、核酸配列ベース増幅(nucleic acid sequence based amplification;NASBA)[キエヴィッツ(Kievits)ら、(1991)ジャーナル・オブ・ビロロジカル・メソッズ(J Virol Methods)35:273-286]、スマート増幅プロセス(smart-amplification process;SMAP)[ミタニら、(2007)ネイチャー・メソッズ(Nat Methods)4(3):257-62]の群から選択し得る。 本発明において「等温増幅反応」は、反応中に温度が有意に変化しないことを意味する。好ましい実施形態では、等温増幅反応の温度は、増幅が生じている主要な酵素反応工程の間、10℃より大きく、好ましくは5℃より大きく、さらに好ましくは2℃より大きくは逸脱しない。 核酸の等温増幅方法によって、増幅反応には異なる酵素が必要となる。核酸を増幅するための既知の等温法を前述したが、これらの方法では、等温条件下で核酸を増幅するための少なくとも1種の中温性酵素が、ヘリカーゼ、中温性ポリメラーゼ、鎖置換活性を有する中温性ポリメラーゼ、ニッキング酵素、組換えタンパク質、リガーゼ、グリコシラーゼ及び/又はヌクレアーゼからなる群から選択される。 「ヘリカーゼ」は当業者に知られている。これらは、核酸のホスホジエステル骨格に沿って方向性をもって移動するタンパク質であり、NTP又はdNTPの加水分解に由来するエネルギーによって、2本のアニールしている核酸鎖(例えばDNA、RNA、又はRNA/DNAハイブリッド)を分離する。定義されているヘリカーゼ・モチーフの存在に基づいて、ヘリカーゼ活性は与えられるタンパク質に起因するものであると考えることが可能である。当業者は、本発明の方法に用いるための、ヘリカーゼ活性を有する適切な酵素を選択することができる。好ましい実施形態においては、ヘリカーゼは、異なるファミリー由来のヘリカーゼ:スーパーファミリーIヘリカーゼ(例えばdda、pcrA、F−プラスミドtraIタンパク質ヘリカーゼ、uvrD)、スーパーファミリーIIヘリカーゼ(例えばrecQ、NS3−ヘリカーゼ)、スーパーファミリーIIIヘリカーゼ(例えばAAV repヘリカーゼ)、DnaB様スーパーファミリー由来のヘリカーゼ(例えばT7ファージ・ヘリカーゼ)又はRho様スーパーファミリー由来のヘリカーゼを含む群から選択される。 増幅法には、必要な酵素に加えて、緩衝液、dNTP又はNTPが含まれる。 本明細書において、「dNTP」という用語は、デオキシリボヌクレオシド三リン酸を指す。そのようなdNTPの非限定的な例としては、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、dUTPが挙げられる。これらはまた、標識された誘導体の形で存在してもよく、このような標識には例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識が含まれる。修飾されたヌクレオチド塩基を有するdNTPも包含され、ヌクレオチド塩基は例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7−メチルグアニン、イノシン、キサントイノシン(xanthinosine)、7−メチルグアノシン、5,6−ジヒドロウラシル、5−メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、5−メチルシチジンである。さらに、前述した分子のddNTPも本発明に包含される。 本明細書において、「NTP」という用語は、リボヌクレオシド三リン酸を指す。そのようなNTPの非限定的な例としては、ATP、GTP、CTP、TTP、UTPがあり、これらはまた標識された誘導体の形態で存在してもよく、例えば蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識が含まれる。 理想的には、核酸の検出にはヘリカーゼ依存増幅(HDA)が用いられる。また核酸の定量には、リアルタイムPCR(rtPCR)が用いられる。 理想的には、増副産物の大きさは、80bpから200bpである。増副産物はさらに長くてもよく、即ち、300bp、400bp又はさらに長くてもよい。 増幅に理想的に用いられるプライマーは、18個のヌクレオチドの領域に渡り配列番号2、3、5、6、8、9、10、11及び12と、5つのヌクレオチドを超えて異なることは無いヌクレオチド配列を有する。 オリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適した方法、例えばホスホトリエステル法及びホスホジエステル法、又はそれらを自動化した実施形態等によって調製し得る。そのような自動化した一実施形態では、出発材料としてジエチルホスホラミダイトが用いられ、ボーケイジ(Beaucage)ら、(1981)テトラヒドロンレターズ(Tetrahedron Letters)22:1859-1862によって記載される通り、合成してもよい。修飾した固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する一方法が、米国特許第4,458,006号に記載されている。生物資源から単離(例えば制限エンドヌクレアーゼ消化)したプライマーを用いることも可能である。好ましいプライマーは、約6〜100塩基、より好ましくは約20〜50塩基、最も好ましくは約20〜40塩基の長さを有する。リアルタイムPCRを用いたDNAの定量 PCRの間、DNA量は理論的にはサイクル毎に倍加する。各サイクルの後、DNA量はそれ以前の2倍になる。 未知試料中のDNAの絶対量は、好ましくは外部標準を用いて決定される。通常、標準は未知試料と非常に類似するものであり、標準のプライマー結合部位は標的配列中の結合部位と同一であるべきである。これにより、標準と未知試料との両方において標的が同等の効率で増幅されることが確実となり、この事が定量には必須である。 リアルタイムPCRの手法を用いる場合には、リアルタイムPCRのサーマルサイクラーにおいて蛍光を検出及び測定し、産物の指数関数的増加に相応する幾何的増加を用いて、各反応におけるCt値(threshold cycle:閾値サイクル)を決定する。 未知試料及び各標準は別個のチューブ中で増幅させる。異なる希釈率の標準を用いて、標準曲線(標準の量の対数値に対するCt値/交点のプロット)を生成する。未知試料のCt値を標準曲線と比較することで、標的の初期量の計算が可能になる。定量する核酸の種類に適した標準を選択することが重要である。標準曲線を生成するためには、少なくとも5つの異なる量の標準を定量する必要があり、かつ、未知標的の量が標準曲線の範囲内に入らなければならない。従って、一実施形態では、前述の定量工程もまた実施される。 本発明はまた、ゲノムの核酸を検出及び/又は定量するための、ゲノム中の多コピー遺伝子座の使用であって、前記多コピー遺伝子座が、理想的には反復要素では無い、使用に関する。一実施形態では、前記多コピーの遺伝子座の使用は、本明細書に記載の方法により核酸を検出及び/又は定量するために、又はヒトDNAの分解状態の解析するために意図される。 法医科学者達は、しばしば、異なる起源に由来するケースワーク試料を取り扱う。これらの試料は、環境ストレスなどの異なる要因によって分解し得る。 本発明はまた、現状の最新方法よりも感度及び精度が高い、ヒトDNAの分解マーカーシステムに関する。 同じ反応容器中においてqPCRにより少なくとも2つ異なるゲノム領域を標的とすることによって、DNAの完全性を評価できることが、文献から知られている。これら2つの同時に増幅される標的の長さは異なっていなければならないが、分解していないDNAを用いた増幅効率は等しい必要がある。従って、DNAが分解していない場合には、より短いPCRシステムとより長いPCRシステムは両方とも同じ効率で増幅される。解析するDNAが損なわれている場合には、試料中に含まれるDNA断片の長さの平均は低下し、それによって増幅効率も低下する。統計的には、より長いシステムの鋳型DNAがより短いシステムの鋳型よりも損なわれているため、より長いPCRシステムの増幅効率の方がより短いシステムと比較して低くなる。試料において平均断片長が減少すると、両方のPCRシステム間での増幅効率のギャップが増加する。その結果、両PCRシステムの定量の比率から、解析するDNAの分解状態に関する情報が得られる。 一例を以下の図8に示す。「スコーピオン・プローブ及びプライマー分解」(配列番号53及び54)を利用して、ロータージーンQ(Rotor-gene Q)の赤色チャネルにおいてより長いPCRシステムを行い、363bpのPCR産物を得る。前記に概略したプライマー及びスコーピオンを利用して、同じ装置の緑色チャネルにおいてより短いPCRシステムを行い、146bpのPCR産物を得る。分解DNA試料と比較した非損傷DNA試料の定量(約500bp、300bp及び150bpの平均断片長)を示す。量両PCRシステムを用いた定量を図9に示す。両定量の比率は、解析するDNAの分解状態を表す可能な解決手段である。比率が高いほど、解析するDNAの分解度が高いことを示している。図9も参照のこと。 好ましくは、遺伝子座は、80塩基対の領域に渡り、配列番号1又は52に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。配列同一性は前記に概略した通り決定することができる。 本発明はまた、ヒト核酸を検出及び/又は定量するためのキットであって、前記キットは、50塩基対の領域に渡り、配列番号1又は52に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列と、ストリンジェントな条件下で結合するプライマーを含む、キットに関する。結合条件は当業者に公知であり、「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、N.Y., 6.3.1-6.3.6, 1991に見出すことが出来る。ストリンジェントな条件とは、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、45℃でのハイブリダイゼーション、並びにそれに次ぐ0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃での洗浄に等しいものであると定義することが出来る。好ましい実施形態においては、キットは、本明細書に記載の方法により核酸を検出及び/又は定量するための用途が意図される。 好ましくは、キットにおける少なくとも1つのプライマーは、18個のヌクレオチドの領域に渡り配列番号2、3、5、6、8、9、10、11及び12と、5つのヌクレオチドを超えて異なることは無いヌクレオチド配列を有する。 本発明の大きな利点は、性別、人種又は地域的背景とは無関係に機能し、DNAの定量及び/又は検出を可能にする、プライマー及びプローブを作出することができることにある。このことが、既存の技術に対して大きな利点を提供する。 ヒトDNAの増幅は、分子診断並びに法医学の様々な分野に関係している。法医学的方法では、DNAタイピングが、DNAの特定領域を増幅することによって実施される。これらは、しばしば、短いタンデム反復領域と呼ばれている。正しい結果を得るためには、特定の狭い濃度範囲にある鋳型DNAを適用することが不可欠である。反応に加えるDNAの量を正確に知ることが重要になる、その他分野には、HLAタイピングや一塩基多型(SNP)解析がある。HLAタイピングは、移植が拒絶されるか否かを解析するために実施される。SNP解析は、特定の人物の遺伝的背景を解析することを目的としてしばしば用いられ、例えば遺伝性疾患を評価したり、並びに特定の人物が特定種の癌に対する素因があるかどうかを解析することを目的としてしばしば用いられる。 さらに本方法と類似する既存のいくつかの方法では、増幅される遺伝子座の複数のコピーは、タンデムに繰り返されるモチーフで1つの染色体上に位置し、かつ、その集団には異なる変異型が存在するため、異なる結果が誘導される。この事は、証明されてはいないが、既存の試験の欠点を説明する1つの仕方であると思われる。前記でも概略した一般的な増幅方法がHDA法である。米国特許第7,662,594号の図6には、過剰量のDNAを用いた場合に得られる結果が示されている。このことから、幾つかの増幅方法においては、反応に加えるDNAの正確な量を知ることが必要であり、それが反応を成功させるために不可欠であることは明白である。本方法の利点は次のような事実に基づく。すなわち、特に異なる染色体に由来する多コピーであって、遺伝子座はX染色体又はY染色体の何れにも位置しない、多コピーから再現可能な増幅を提供するゲノム領域を、文献を検索することによって最初に同定したが、それが役立たないことが判明し、次にデータベースを検索することによって同定したがやはりあまり有用ではなかったと云う事実に基づくものである。一般的な転写因子IIHサブユニット2遺伝子(GTF2H2)から出発して、本発明者らは、この遺伝子の一部では無いさらなる配列を同定した。同定したDNA領域の大きさは、およそ2000bpであり、第11番染色体に位置している(69000bp〜71000bpの位置)。配列を、図6に配列番号1として示す。11番染色体で同定された配列と高い配列同一性を有する、さらなる数々の配列がゲノム全体に見出され得る。配列番号2hT-For1 (5'-AGTGGGTCTGGAGAGGCCGACTTG-3')配列番号3hT-Rev1 (5'-TCAGGCCCATG GGGCTCATTCCT-3') 前記に特定したプライマーは、ヒトゲノム全体に分布する29個の遺伝子座を増幅する増幅反応を達成する(図1を参照のこと)。さらなるオリゴヌクレオチドを、等温反応用にも、プライマー及びプローブとして合成した。本明細書で考案した多コピー標的と単コピー標的との間で定量PCRを比較するために、以下のプライマー及びプローブを作製した。hT-For1及びhT-Rev1及びプローブhT-Pro1 (5'-FAM-TTCTGGGCCCGGAGAGGCCGC-BHQ1-3') (配列番号4) 本発明の方法とcmyc遺伝子を用いた単コピー遺伝子の定量とを比較した。cmycとは対照的に、前述したオリゴヌクレオチドで増幅かつ探索できる27の遺伝子座が存在する。反応には以下の成分が含まれた。1×クオンチテクト・マルチプレックス・マスターミック (QuantiTect Multiplex Mastermix)(キアゲン)400nM hT-For1 bzw. cmyc-fwd400nM hT-Rev1 bzw. cmyc-rev200nM hT-Pro1 bzw. cmyc-probe(プローブ)0 bis 10,000コピーヒトゲノムDNA ロータージーン6000(キアゲン)を使用して、以下のPCRプロファイルにより、反応を行った:95℃で10分の後、95℃10秒及び60℃45秒からなる各サイクルを40サイクル実施。PCR効率は、両方のプライマーシステムで同じであった。hT−For1/Rev1−PCRの正規化プローブ蛍光は、cmyc−PCR反応のプローブ蛍光よりも、4.2±0.2サイクル早く所定の閾値に達した。これを鋳型濃度に逆算すると、hT−For1/Rev1−反応のDNA増幅の鋳型濃度はcmyc反応の鋳型濃度よりも18倍高いと計算された。この値は理論比の27:1に等しくはないが、非常に近い。 等温増幅も、HDA方法を用いて、多コピーの遺伝子座について実施した。等温増幅反応用に、多数の異なるフォワード・プライマー及びリバース・プライマーを作成した。最適な組み合わせは、hT−For2(5'-GCAGAAGGTGG GCCTGGAGAGTTTGAC-3';配列番号5)及びhT−Rev2(5'-CCTTTTTTGGCCCAGTTCCTGTCCAGC-3';配列番号6)であった。反応産物の検出は、エンドポイント測定及びリアルタイム測定の両方で可能である。HDA反応には以下の成分が含まれた。20mM Tris/HCl pH 8.840mM NaCl10mM KCl400nM dNTPミックス3mM dATP4mM MgCl20.2×エバ・グリーン(EvaGreen)1.75μL イソアンプ・エンザイムミックス(IsoAmp Enzymmix)(バイオへリックス;Biohelix)100nM hT-For2100nM hT-Rev20〜10,000コピーヒトゲノムDNA この溶液を以下のプレミックスに分配した。プレミックスI:15μL容積 [hT-For2; hT-Rev2;エバ・グリーン(EvaGreen);ヒトゲノムDNA;H2O]プレミックスII:8μL容積 [Tris/HCl pH 8.8;NaCl;KCl;dNTPミックス;dATP;エンザイム・ミックス;H2O]スターティング・ソリューション(start sol.):2μL 50mM MgCl2 反応は以下の通りに行った。 プレミックスI(15μl)をPCRサイクラー中、95℃で2分間インキュベートした。その後反応液を4℃まで冷却し、ESEクアントチューブスキャナー(ESE Quant Tubescanner、キアゲン)を用いて65℃に再加熱した。1分後、予め温めたプレミックスIにプレミックスII(8μl)を加え、反応液を混合した。さらに1分後、HDA反応を開始させ、65℃で60分間インキュベートした。インキュベーションが終了した後、12%ポリアクリルアミドゲルを用いて結果物を解析し、このゲルを臭化エチジウムで染色した。図2に結果を示す。レーン4は約90bpの長さの非常に強いDNAのバンドを示している。これは、計算される88bpのアンプリコン長に非常によく一致する。レーン3に陰性対照を示す。陰性対照では長さ約90bpの増副産物は見られない。反応が、さらなる蛍光で標識したオリゴヌクレオチドプローブhT−Pro2(5'-FAM- GGAAGTTTTGGGCCTACATTGGCCGCCATG-BHQ1-3') (配列番号7)によって追跡しえることを示すさらなる実験を実施した。 図3は、前記に概略した反応と同様に実施したリアルタイムHDA反応を示す。唯一の違いは、60nMの標識プローブhT−Pro2を加え、かつプライマーの濃度が異なっていた(hT−For2が40nM、hT−Rev2が120nM)ことである。図3は、増幅の鋳型としてヒトゲノムDNAを用いたHDA反応もよく機能したことを示している。およそ25分後に、蛍光シグナルが高まった。これは、オリゴヌクレオチドプローブであるhT−Pro2が増幅された標的に結合した結果である。 定量的リアルタイムPCR実験として、さらなる実験を実施した。 以下のオリゴヌクレオチドを使用した。hT-For3 (5'-AAGGTGGGCCTGGAG AGTTT-3') (配列番号8)hT-Rev3 (5'-CCTTTTTTGGCCCAGTTCCTGT-3') (配列番号9)hT-Pro3 (5'-HEX-AAG TTTTGGGCCTACATTGGCCGC-BHQ1-3') (配列番号10) これらのプライマー及びプローブは、ヒトゲノム中の14遺伝子座にハイブリダイズし、それらを増幅する。 5人の男性及び5人の女性のEDTA−血液から、キアアンプマキシキット(QiaAmp Maxi Kit、キアゲン)を使用して単離したゲノムDNAを鋳型とした。 反応液には以下の成分を加えた。1×クオンチテクト・マルチプレックスROXマスターミックス (QuantiTect Multiplex ROX Mastermix)400nM hT−For3400nM hT−Rev3200nM hT−Pro3反応当たり10pg〜10ngのヒトgDNA PCRプロファイルは以下の通りである。最初に95℃で15分間インキュベートした後、95℃で1分及び60℃で1分からなる各サイクルを50サイクル実施。図4にPCR増幅の蛍光曲線を示す。 同じ実験内において、本発明による多コピーアッセイが、先行技術の単コピー方法に対して利点を有するか否かを解析した。HEXチャネルにおけるhT−For3/hT−Rev3/hT−プローブ3アッセイ(多コピー)の蛍光シグナルを、FAMチャネルにおけるcmycアッセイ(単コピー)のシグナルと比較した。結果を図5に示す。多コピーアッセイの蛍光シグナルは、単コピーcmycアッセイの蛍光シグナルよりも4.2±0.2サイクル早く閾値レベルと交差した。これは、多コピー標的の濃度が単コピー標的の濃度よりも18倍高いと計算される。従って、多コピー遺伝子座アッセイの理論上14個の異なる結合遺伝子座は、この実験によく反映された。 さらに、本発明並びに配列番号1及び52の配列は、試料におけるヒトDNAの分解の解析に使用してもよい。前記使用のを解析するために用いられ得る。当該用途の好ましいプローブ及びプライマーは、以下の通りである。 多コピー標的のその他の意外な用途には、コピー数多型(Copy Number Variation;CNV)解析の基準遺伝子としての用途である。 コピー数多型(CNV)、すなわちゲノム中でのDNAコピー数の変化が、近年、ヒトゲノムのおよそ10〜20%に影響を及ぼす、広く存在する現象であることが示されている。CNVの発生は、自閉症、自己免疫疾患、及び癌等の様々な疾患と関連している。 CNVを発見するために最も一般的に用いられている分子生物学的ツールは、マイクロアレイ解析及び次世代シークエンシング(NGS)である。これら2種類のハイスループット法によって、複数存在する可能性があるCNVを発見することができが、発見したCNVはその後独立した方法を用いて検証する必要がある。一旦検証されれば、多数の試料について確認されたCNVを調査し、CNVと表現型との間で統計的に有意な関連性を特定することができる。 定量PCR(qPCR)は、しばしば、その使いやすさ、感度及び拡張性から、CNVの検証及び関連性試験の選択肢となる方法となる。相対的な定量の原理が、この用途に利用されており、比較する試料間でコピー数が一定であると推定される基準遺伝子を最初に定義しなければならない。次いで、目的の遺伝子(GOI)のコピー数が、異なる試料間で、GOI及び基準遺伝子のCqの差に基づいて計算される。 qPCRに基づくCNVの定量には、一定コピー数の基準遺伝子が必須であるため、我々は、TERT(テロメラーゼ逆転写酵素)等の一般的に用いられている単コピーの基準遺伝子の信頼性と、多コピー標的を用いた新しい方法を比較した。基準標的としての多コピー標的は、単コピー遺伝子よりも感度及び信頼性が高いCNV定量結果を提供する。 単コピー遺伝子は、コピー数の呼び出しには信頼性が低い基準である。qPCRに基づくCNV検証のために基準遺伝子として一般的に用いられている単コピー遺伝子のTERTは、それ自体がコピー数多型の対象である。図10を参照のこと。 図は、第5番染色体上のTERT遺伝子及び5種類の既知CNVの位置を示す。ゲノム変異型に関するデータベース(Database of Genomic Variants、http://projects.tcag.ca/cgi-bin/variation/gbrowse/hg19/?name=chr5:1211340..1337106)からの情報に基づく。 加えて、dbSNPデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)に報告されている、517個のTERT一塩基多型(SNP)が存在する。qPCRプライマー又はプローブによって認識されるCNV基準遺伝子配列中のSNPは、qPCRの効率の低下、及び遅延したCq値に繋がり、その結果、誤ったコピー数の呼び出しを引き起こし得る。 単コピー遺伝子を基準遺伝子としてΔΔCq解析に使用する代わりに、ゲノム全体に分布している多コピー遺伝要素を用いることで、より信頼性のある、qPCRに基づくコピー数定量を達成することができる。 下記の理論計算は、CNV基準遺伝子の1コピーの喪失又は獲得が、基準のCq値、及びGOIのコピー数呼び出しに及ぼす影響を説明するものである。仮定として、基準及びGOIのqPCR効率は100%であり、GOIは単コピーの遺伝子であり、試料中のそのコピー数は変化しない(NC)こととする。CNV定量の基準は、18コピーの遺伝要素又は単コピー遺伝子の何れかである。図11を参照のこと。 単コピーの基準遺伝子の1コピーの喪失又は獲得は、誤ったGOIのコピー数呼び出しを引き起こす。GOIのコピー数呼び出しは、多コピー基準の1コピーの喪失又は獲得によっては影響を受けない。 サイバーグリーン(SybrGreen)に基づくqPCRは、GOI及び多コピー標的基準要素を正確に定量する。 この方法は、同じ実験で実行される、GOI及び多コピー標的の両者に関するCq値の比較に基づいている。これらの実験に用いたプライマーは、配列番号8及び配列番号9である。 プローブに基づくqPCRは、GOI及び多コピー標的基準要素を同時に正確に定量する。この方法は、1つのqPCR反応においてGOI及び多コピー標的の両方を正確に定量する、デュプレックスである、プローブに基づくqPCR法に依拠するものである。 これらの実験に用いられるプライマー及びプローブは、配列番号8、配列番号9及び配列番号10である。図12もまた参照のこと。試料においてゲノムの1以上の核酸を定量及び/若しくは検出するための、並びに/又はヒトDNAの可能性のある分解の状態を解析するための、並びに/又はコピー数多型(CNV)を解析するための方法であって、a.核酸が増幅され、かつ増幅される遺伝子座はゲノム中の多コピー遺伝子座であり、b.多コピー遺伝子座は少なくとも2つの異なる染色体上にコピーを有し、c.増副産物が検出及び/又は定量され、並びに、d.多コピー遺伝子座は反復要素ではない、方法。前記遺伝子座が、80塩基対の領域に渡り、配列番号1又は配列番号52に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。多コピー遺伝子座の少なくとも4つの異なるコピーが増幅される、請求項1又は2に記載の方法。増幅方法が非等温法又は等温法の何れかである、請求項1から3に記載の方法。増幅方法が、定量リアルタイムPCR(rtPCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、多置換増幅(MDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、転写介在増幅(TMA)、ヘリカーゼ依存増幅(HDA)、スマート増幅プロセス(SMAP)、単一プライマー等温増幅(SPIA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、指数関数増幅反応(EXPAR)、リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA)及び核酸配列ベース増幅(NASBA)の群から選択される、請求項4に記載の方法。増幅方法がヘリカーゼ依存増幅(HDA)又はリアルタイムPCR(rtPCR)である、請求項5に記載の方法。増幅産物の長さが60塩基対から200塩基対である、前記請求項の何れか1項に記載の方法。プライマーが増幅に用いられ、前記プライマーは、18個のヌクレオチドの領域に渡り、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11及び/又は12と、5つのヌクレオチドを超えて異なることは無いヌクレオチド配列を有する、前記請求項の何れか1項に記載の方法。ゲノムの核酸を検出及び/若しくは定量するための、ヒトDNAの可能性のある分解の状態を解析するための、又はコピー数多型(CNV)解析の基準遺伝子としての、ゲノム中の多コピー遺伝子座の使用であって、前記多コピー遺伝子座は少なくとも二つの異なる染色体上にコピーを有する、使用。前記遺伝子座が、80塩基対の領域に渡り、配列番号1又は配列番号52に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項9に記載の使用。ヒト核酸を検出及び/又は定量するためのキットであって、前記キットは、80塩基対の領域に渡り、配列番号1又は配列番号52に記載の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列と、ストリンジェントな条件下で結合するプライマーを含む、キット。前記キットにおける少なくとも1つのプライマーが、18個のヌクレオチドの領域に渡り配列番号2、3、5、6、8、9、10、11及び/又は12と、5つのヌクレオチドを超えて異なることは無いヌクレオチド配列を有する、請求項11に記載のキット。 本発明は、試料においてゲノムの1以上の核酸を検出及び/又は定量するための、方法、キット、及び様々な核酸配列の使用に関する。本発明では、核酸が増幅され、かつ増幅される遺伝子座はゲノム中の多コピー遺伝子座であり、多コピー遺伝子座は少なくとも2つの異なる染色体上にコピーを有し、並びに、増副産物が検出及び/又は定量される。 配列表