生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に用いるためのジアゾキシド
出願番号:2013524440
年次:2013
IPC分類:A61K 31/549,A61P 43/00,A61K 45/00,A61P 21/02


特許情報キャッシュ

マルコ、プリエーゼ フアン、フランシスコ、エスピノサ、パリリャ ノエミ、ビルヒリ、トレセレス ピラール、マンセラ、アロカ アンドレア、パステン、サモラノ ホセッテ‐ニコル、マイ、ヘエンネ マニュエル、ロドリゲス、アルエ JP 2013537545 公表特許公報(A) 20131003 2013524440 20110816 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に用いるためのジアゾキシド ニューロテック、ファルマ、ソシエダッド、リミターダ 506427978 NEUROTEC PHARMA S.L. 勝沼 宏仁 100117787 中村 行孝 100091487 横田 修孝 100107342 藤井 宏行 100143971 マルコ、プリエーゼ フアン、フランシスコ、エスピノサ、パリリャ ノエミ、ビルヒリ、トレセレス ピラール、マンセラ、アロカ アンドレア、パステン、サモラノ ホセッテ‐ニコル、マイ、ヘエンネ マニュエル、ロドリゲス、アルエ EP 10382233.4 20100817 A61K 31/549 20060101AFI20130906BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130906BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130906BHJP A61P 21/02 20060101ALI20130906BHJP JPA61K31/549A61P43/00 121A61K45/00A61P21/02 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM EP2011064061 20110816 WO2012022730 20120223 27 20130411 4C084 4C086 4C084AA19 4C084MA02 4C084MA52 4C084ZA222 4C084ZC752 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC87 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA22 4C086ZC75発明の背景技術分野 本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための低用量での医薬として用いるための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩、ならびにALSに罹患した哺乳動物の治療に用いるためのジアゾキシドを低用量で含む組成物に関する。背景技術 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳および脊髄における運動ニューロンの変性を反映する進行性の筋麻痺を特徴とする神経変性症候群のスペクトラムをカバーするために用いられる用語である。しかし、この疾患の最も一般的な形態を示すために最近の診療で用いられる用語は、古典型(シャルコー)ALSであり、現在米国では、ルー・ゲーリック病としての方がよく知られている。欧州、オーストラリア、ニュージーランド、およびアジアでは、より一般的に用いられる用語は、運動ニューロン疾患(MND)である。この障害のスペクトラムに関連するその他の症候群としては、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、原発性側索硬化症(PLS)、および多系統が関与するALSが挙げられる(Wijesekera LC and Leigh PN. Amyotrophic lateral sclerosis. Orphanet Journal of Rare Disease 2009, 4:3)。 ALSは、100,000人あたり1から2人の罹患率および100,000人あたり4から6人の有病率である、最も一般的な神経変性障害の1つであり;常時30,000人もの米国人がこの疾患に罹患している(Worms PM. The epidemiology of motor neuron disease: a review of recent studies. J Neurol Sci 2001, 191:3-9)。罹患率は、男性の方が女性よりも高い(1.6:1)。患者のうちの5〜10%がALSの陽性家族歴を有しており、常染色体優性遺伝様式を有することが最も一般的である。ALSは、成熟成人の疾患であり、メジアン発症年齢は55歳、その頻度は75歳まで年齢と共に増加する。全体として、患者の50%が、最初の臨床症状から最初の3年以内に死亡する。年齢および陽性の家族歴以外にも、数多くの因子および環境トキシンが、リスク因子としてさらに研究されている。喫煙者、サッカー選手、特にイタリア人、および湾岸戦争の兵役経験者のリスクが相対的に高いとの報告がある。 散発性および家族性ALS(それぞれ、SALSおよびFALS)は、臨床的および病理学的に類似しており、共通の病原であることが示唆される。両方の形態共に、進行性の筋力低下、萎縮症、および痙縮を含む類似の病理学的特徴が現れ、これらの各々は、上位および下位運動ニューロンの変性および死滅を反映している。呼吸筋および横隔膜の除神経は、一般的に、致死イベントである。実際、現在の診療では、「球発症型ALS」および「脊髄発症型ALS」の用語が、PBPおよびシャルコーALSの用語の代わりに用いられている。典型的なALSを有する患者のおよそ3分の2が、この疾患の脊髄型を(四肢発症型)を有し、局所的な筋力低下および筋消耗に関連する症状を呈し、ここで、この症状は、上肢および下肢の遠位または近位から始まり得る。次第に、痙縮が、弱った萎縮肢で起こり得るものであり、手の起用さおよび歩行が影響を受ける。球発症型ALSを有する患者は、通常、構音障害および固体または液体に対する嚥下障害を呈し、四肢症状は、球症状とほぼ同時に起こり得るものであり、大多数のケースでは、1〜2年以内に発症する(Mitchell JD and Borasio GD. Amyotrophic lateral sclerosis. Lancet 2007, 369:2031-41)。麻痺は、進行性であり、球発症型のケースでは2〜3年以内に、四肢発症型ALSのケースでは3〜5年以内に、呼吸不全によって死に至る。 ALSのケースのおよそ10%が家族性である。残りの90%は、環境的および遺伝的要素の両方が疾患の感受性に寄与する多因子性ではあるが、散発性である。FALSおよびSALSのいずれも、その遺伝学は複雑なものである。常染色体優性FALSのケースの20%およびSALSを有する患者の2%が、21番染色体上の銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)遺伝子における突然変異を示す。この遺伝子の突然変異は、SOD1酵素の抗酸化剤機能の不全を引き起こすのではなく、毒性機能獲得を通して疾患を引き起こすものと考えられる。alsin(ALS2)、senataxin(ALS4)、またはAngiogeninを含むSOD1以外の遺伝子が、家族性ALSと関連付けられているが、大部分のケースにおいて、遺伝子欠陥は識別されていない(Pasinelli P and Brown RH. Molecular biology of amyotrophic lateral sclerosis: insight from genetics. Nat Rev Neurosci 2006, 7:710-723)。 ALSは、遺伝因子、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集、酸化損傷およびミトコンドリア機能不全、細胞骨格異常、ならびに軸索輸送異常を含む複数の病原性細胞機構間の複雑な相互作用を伴う多因子性疾患である。運動ニューロン損傷は、隣接する非神経細胞(星状およびミクログリア細胞)から発せられる侵害シグナルによって増大され、ここで、変異体SOD1が、疾患の進行を促進する興奮毒性、不適切な成長因子シグナル伝達、および炎症応答を誘発する(Cozzolino M et al. Amyotrophic Lateral Sclerosis: From current developments in the laboratory to clinical implications. Antiox Redox Sign 2008, 10:406-43)。変異体SOD1の発現の結果として損なわれた細胞機能が、散発性ALSにおいてその他の毒性因子によって活性化され得る経路上に集中することを示す証拠が増えており、変異体SOD1動物モデルにおいて効果的である治療法が、散発性ALSおよび非SOD1関連ALS(non-SOD1-linked ALS)へ変換されることが期待される。 いくつかの研究により、ALS患者において炎症反応が非常に顕著であることが明らかとなった。このような患者において、健康なコントロールには存在しないミクログリア活性化が、CNS病態の主たる構成要素であり、疾患の重篤度と共に増加する。損傷したニューロンおよびその周囲の星状細胞から発せられるシグナルに反応して、ミクログリア細胞は、休止状態のニューロンを維持する神経栄養因子の産生を下方調節し、炎症性サイトカインの産生を開始する。ミクログリア活性化が進行する限りにおいて、炎症性サイトカインは、活性酸素(ROS)および窒素(RNS)種と共に、蓄積される。結果としての炎症性環境は、運動ニューロンの変性および疾患の進行に寄与する(Turner MR et al. Evidence of widespread cerebral microglial activation in amyotrophic lateral sclerosis: an [11C](R)-PK11195 positron emission tomography study. 2004, Neurobiol Dis 15:601-609)。 ALSの研究における大きな進展は、約20%のFALSケースが、変異体SOD1に起因することの発見であった。1994年、ヒトALSの原因であることが示されたヒトCu/Zn SODの遺伝子中に突然変異を有するトランスジェニック動物が開発された(Gurney ME et al. Motor neuron degeneration in mice that express a human Cu/Zn superoxide dismutase mutation. 1994, Science 264: 1772-5)。最初に作製された突然変異は、93位でのグリシンのアラニンへの置換(G93A)および4位でのアラニンのバリンへの置換(A4V)であった。その他のSOD1突然変異も、トランスジェニックマウスにて発現された。G93AおよびA4Vに加えて、最も一般的なものは、グルタメートのアルギニンへの37位(G37R)および85位(G85R)での置換である。このような動物は、後肢脱力、下肢伸展障害、および歩幅長低下を伴う進行性の前角細胞疾患を発症し、数日の内に、四肢、主として後肢の完全な麻痺へと続き、呼吸不全で死亡した。 現在、トランスジェニックSOD1G93Aマウスモデルが、依然として、疾患修飾薬候補の前臨床評価のためのALS/MNDに対する確立された最良のモデルである(Ludolph AC et al. Guidelines for the preclinical in vivo evaluation of pharmacological active drugs for ALS/MND: Report on the 142nd ENMC international workshop. 2007, Amyothr Lat Sclerosis 8:217-223)。このモデルにおいて、細胞の変化は、初期ステージでの運動ニューロンの液胞変性、およびそれらのプロセス、ならびにこれに続く、後期ステージでの脊髄におけるニューロン喪失、および前角の萎縮を主として特徴とする。FALSおよびSALSの間には、症状または病態イベントに違いが存在しないことから、両方の疾患型の基礎となる機構は共通であると仮定される。従って、トランスジェニックSOD1動物は、それらが提示する表現型が、この疾患の唯一の実証済みの原因によって引き起こされることを主たる理由として、ALSに関する数多くの研究に広く用いられてきた。このモデルはまた、実験段階で試験される薬物および治療法に対する絶対基準ともされてきた。 ALSの治癒法は存在しない。現在、この疾患の進行に大きな影響を与えることができる治療はなく、症状を改善することだけを目的とする対症療法が存在するだけである。ALSに対する仮想の疾患修飾法の多くが臨床試験で試験されてきたが、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMEA)によってこれまでに承認された薬物は、リルゾール(Rilutek、サノフィ‐アベンティス)の1つだけである。リルゾールの作用機構は、完全に確かではないが、シナプス前終末からのグルタミン酸遊離の阻害、および細胞外グルタミン酸取り込みの増加を含むと考えられる。しかし、初期の試験では、非常に僅かな生存期間の延長しか示されなかった(平均3ヶ月)。リルゾールの導入以来、10を超えるプラセボコントロール試験が実施されてきたが、疾患の進行に対するさらなる有益な効果は示されなかった。この薬物は、一般的に忍容性を示し、最も一般的な副作用は、無力感および悪心である。最近、リチウムがALSの進行を非常に劇的に遅延させることが示された。ALSにおけるリチウムの大スケールでの試験が現在進行中である。その他の現時点での多施設臨床試験としては、中でも:オレソキシム(Olesoxime)(TRO19622)、アリモクロモル、AVP‐923、メマンチン、タランパネル(Talampanel)、オランザピン、セフトリアキソン、ONO‐2506PO、抗酸化剤(コエンザイムQ10、ビタミンEなど)、ピリメタミン ミノサイクリン、およびタモキシフェンが挙げられる(Kollewe K et al. Amyotrophic lateral sclerosis: Current clinical trials and underlying pathomechanisms. 2008, Nervenartz. 79:653-61)。 従って、ALS治療の主力は、依然として対症的であり、生活の質を向上し、可能な限り患者の自律性を維持する手助けとなるようあらゆる努力が払われるべきである。ALSで直面する主たる症状およびそれらの医学的管理について、表Iに示す。表I.ALSの対症療法に関する提案 まとめると、ALSの治療のためであって、この疾患のすべての臨床症状に適用可能であり、投与が容易であり、短期間および長期間治療での使用において副作用のない、新しい治療薬を提供することが非常に望ましい。 ALS炎症に関与する要素の1つである活性化されたミクログリアは、KATPチャネルを発現することが示されており(Ramonet D et al. Putative glucosensing property in rat and human activated microglia. Neurobiol Dis 2004, 17: 1-9)、これが、新しい治療標的となる可能性が示唆されている。 国際公開第2006/000607A1号では、哺乳動物の疾患に伴うCNS慢性炎症の治療におけるKATPチャネル開口剤(KCO)の使用の可能性が開示されている。この出願ではまた、適切な用量は、医師または獣医によって決定されるべきであるが、0.01〜1000mg/kg/日の範囲内に入ることになるということも開示された。 ジアゾキシドは、KATPチャネル開口剤として作用するベンゾチアジアジンであり(Mannhold R. KATP channel openers: structure-activity relationships and therapeutic potential. Med Res Rev 2004, 24:213-66)、ヒトの高血圧症および低血糖症に対してこれまで用いられてきた。ジアゾキシドは、高血圧緊急症の治療のために、単一の注入による1〜3mg/kg(37〜111mg/m2)から最大150mg(185mg/m2)までのミニボーラスの形態にて、5〜15分ごとに非経口投与され(Hyperstat(商標))、また、治療抵抗性悪性高血圧症に対応するために、1日あたり600〜800mg(370〜493mg/m2/日)の範囲の用量にて経口でも使用される(Fang P, MacDonald I, Laver M, Hua A, Kincaid-Smith P. Oral diazoxide in uncontrolled malignant hypertension. Med J Aust. 1974 Oct 26;2(17):621-4)。低血糖症の治療のための成人における有効経口用量は、3〜8mg/kg/日(111〜296mg/m2/日)である(Proglycem(商標))。しかし、これらの用量は、浮腫および多毛症などの重篤な副作用を引き起こす場合が多い。 これまでのところ、ジアゾキシドのALSにおける効果を調べた研究はない。加えて、種々の脳損傷の状況におけるジアゾキシドの用量‐応答効果に関連する研究により、ある程度の有益な効果を得るためには、高用量が必要であることが示された。Gantenbein et al.は、ブピバカインによって引き起こされる痙攣の潜伏期間を伸ばすことによってマウスのブピバカイン誘発急性CNS毒性を低減するためには、100mg/kg(300mg/m2)のジアゾキシドが必要であることを示した(Gantenbein M et al. 1995. Life Sciences, 57: 113-116)。Farkas E et al.は、ラットにおける5mg/日(143mg/m2/日)のジアゾキシド、およびジメチルスルホキシドが、脳過灌流関連の学習障害、および頚動脈閉塞後の脳損傷を防止することを示した(Farkas E et al. Brain Research. 2004, 1008:252-260)。Lenzser G et al.は、ジアゾキシドによるプレコンディショニングが、ラットへ20mg/kg/日(120mg/m2/日)で投与した場合に、全脳虚血誘発血液脳関門透過性を減衰させることができるが、6mg/kg/日(36mg/m2/日)では効果がないことを示した(Lenzser G et al. Brain Research. 2005, 1051:72-80)。 上記にも関わらず、高血糖症などのKCOの使用に伴う望ましくない副作用を起こさない筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法を開発することは非常に重要であろう。 発明者らは、驚くべきことに、ジアゾキシドでの治療が可能であるその他の治療状態の治療にこれまで用いられてきたものよりも十分に低いジアゾキシドの1日投与量が、ジアゾキシドが治療法においてこれまでに用いられてきた用量で投与される場合に通常存在する高血糖症などのALSのみに罹患する患者にとって望ましくない治療効果を含む所望されない副作用を引き起こすことなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床症状および生存率を改善することによる予想外の有利な効果をもたらすことを見出した。 1つの態様では、本発明は、ジアゾキシド遊離塩基の1日投与量がmg/m2/日として表され、該1日投与量が0.15mg/m2/日〜13.00mg/m2/日とされる、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した哺乳動物の治療における医薬として用いられるための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩に関する。 別の態様では、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための、0.24mg〜21.1mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる医薬組成物に関する。 さらに別の態様では、本発明は、0.15mg/m2/日〜13.00mg/m2/日の範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を投与することを含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した哺乳動物の治療方法に関する。1ヶ月の処理期間における、マウスへのジアゾキシド投与の60分後の血中グルコースレベル(mg/dLで表す)を示すグラフである。A:ジアゾキシド用量1mg/kg/日(3mg/m2/日);B:ジアゾキシド用量0.05mg/kg/日(0.15mg/m2/日)。結果は、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表す。媒体、およびジアゾキシド1mg/kg/日(3mg/m2/日)、0.1mg/kg/日(0.3mg/m2/日)、または0.05mg/kg/日(0.15mg/m2/日)による処理後、21週齢にて生存しているSOD1変異マウスのパーセントを示すグラフである。100日の処理期間における、トランスジェニックC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlマウスへのジアゾキシド投与の60分後の血中グルコースレベル(mg/dLで表す)を示すグラフである。A:ジアゾキシド用量4mg/kg/日(12mg/m2/日);B:ジアゾキシド用量0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日);C:コントロール媒体グループ。結果は、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表す。媒体、およびジアゾキシド8mg/kg/日(24mg/m2/日)、4mg/kg/日(12mg/m2/日)、または0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日)による処理後における、生後12週齢であるSOD1変異マウスの前脛骨CMAP振幅を示すグラフである。結果は、平均値±標準偏差(SD)として表す。各カラム内の数値は、野生型コントロールグループの平均前脛骨CMAP振幅に対する各実験グループの前脛骨CMAP振幅のパーセントを示す。発明の具体的説明 発明者らは、驚くべきことに、ヒトにおける低血糖症などのその他の状態の治療に用いられる用量よりも十分に低い1日投与量にて、ジアゾキシドが筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に有効であり、従って、低血糖症に通常は罹患していない神経変性疾患を有する患者を治療する場合に望ましくない高血糖効果が回避されることを見出した。このことは、先行技術が、CNSにおける治療効果を達成するためには、非常により高い用量のジアゾキシドが必要であることを示唆していることから、特に驚くべきことである。 本発明の1つの態様は、0.15mg/m2/日〜13.00mg/m2/日、好ましくは0.15mg/m2/日〜3.70mg/m2/日、好ましくは0.15mg/m2/日〜3.00mg/m2/日、好ましくは0.15mg/m2/日〜2.60mg/m2/日、より好ましくは0.15mg/m2/日〜2.40mg/m2/日、さらにより好ましくは0.15mg/m2/日〜1.50mg/m2/日、最も好ましくは0.15mg/m2/日〜0.75mg/m2/日の1日投与量での、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した哺乳動物の治療における医薬として用いるための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩である。本発明の1つの実施形態では、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩は、2.40mg/m2/日〜3.00mg/m2/日の1投与日量での医薬として用いられる。この医薬は、0.15mg/m2/日〜0.37mg/m2/日のジアゾキシドの1日投与量の投与用として作製されることがさらに好ましい。これらの量は、ジアゾキシド遊離塩基の量として表される。 具体的な実施形態では、この医薬は、0.15mg/m2/日、1.85mg/m2/日、2.22mg/m2/日、2.40mg/m2/日、2.96mg/m2/日、3.00mg/m2/日、および11.1mg/m2/日から選択されるジアゾキシドの1日投与量の投与用として作製される。 「薬学上許容される」の用語は、薬理学的/毒物学的観点から患者にとって、ならびに組成、製剤、安定性、患者許容性、および生体利用度に関する物理学的/化学的観点から製薬化学者にとって許容可能である特性ならびに/または物質を意味する。 「薬学上許容される塩」の用語は、薬学上許容される酸または塩基との塩を包含する。薬学上許容される酸としては、限定されないが、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、および硝酸を例とする無機酸、ならびに限定されないが、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸(シクラミン酸)、またはp‐トルエンスルホン酸を例とする有機酸の両方が挙げられる。薬学上許容される塩基としては、アルカリ金属(例:ナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例:カルシウムまたはマグネシウム)の水酸化物、ならびに限定されないが、アルキルアミン、アリールアルキルアミン、およびヘテロ環式アミンを例とする有機塩基が挙げられる。 「医薬」の用語は、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる医薬組成物を意味する。医薬は、経口的に、注射により、吸入もしくは吹送(insuflation)により、または直腸内経路により投与してよい。このような医薬組成物はすべて、薬学上許容される賦形剤と共に従来の手段によって作製される。経口および非経口製剤が好ましい。 本発明の1つの実施形態では、医薬は、経口投与用に作製される。経口投与用の医薬組成物は、シロップ、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、ロゼンジ、徐放性製剤、速溶性製剤などのいずれかの適切な剤形で投与されるか、または、使用前に水もしくはその他の適切な媒体で再構築するための乾燥製品として提供されてもよい。 懸濁液、溶液、油性または水性媒体中のエマルジョン、ペースト、および埋め込み型の持効性または生分解性製剤を含む注射用(皮下、皮内、筋肉内、静脈内など)の医薬組成物。そのような製剤は、さらに、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤を含む1つ以上の追加の成分を含んでなっていてよい。非経口投与用製剤の1つの実施形態では、活性成分は、適切な媒体(例:滅菌パイロジェンフリー水)で再構築した後に再構築された組成物を非経口投与するための、乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態で提供される。ジアゾキシドは、ボーラス注射または連続注入による非経口投与用に製剤されてよい。 有用であるその他の非経口投与用製剤としては、活性成分を、微結晶の形態で、リポソーム製剤で、または生分解性ポリマー系の成分として含んでなるものが挙げられる。持効性または埋め込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、低溶解性ポリマー、または低溶解性塩などの薬学上許容されるポリマーまたは疎水性物質を含んでなっていてよい。 医薬製剤は、単位剤形で提供されてよいことが都合良く、薬学の技術分野で公知のいかなる方法で作製されてもよい。方法はすべて、(1もしくは複数の)活性剤を担体と会合させる工程を含む。 一般的に、製剤は、活性成分を、液体担体または微細に粉砕された固体担体またはこれらの両方と均一におよび密接に会合させ、次に、必要に応じて、生成物を所望される製剤に成形することによって作製される。 経口投与に適する本発明の製剤は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤などの別個の単位として、粉末もしくは顆粒として、水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または、水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして提供されてよい。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提供されてもよい。 シロップ製剤は、一般的に、香味剤、甘味剤、および/または着色剤を含む、天然、合成、もしくは半合成オイル、または水を例とする液体担体中の化合物または塩の懸濁液または溶液からなる。 組成物が錠剤の形態である場合、固体製剤を作製するために通常用いられるいかなる医薬担体を用いてもよい。 錠剤は、所望に応じて含んでよい1つ以上の副成分と共に、圧縮または成型によって作製されてよい。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの易流動性形態の活性成分を、所望される場合はバインダー、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤、または分散剤と混合して、適切な機械により圧縮することで作製されてよい。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤され、所望される場合は乾燥および篩い分けされた活性化合物を含んでなる粉末ブレンドの混合物を、適切な機械により成型することで作製されてよい。錠剤は、所望される場合は、コーティングまたはケガキが行われてよく、およびその中の活性成分の調節された(すなわち、遅延または制御)放出が提供されるように製剤されてもよい。 組成物がカプセルの形態である場合、通常のいかなるカプセル化も適しており、例えば、硬質ゼラチンカプセルに上述の担体が用いられる。組成物が軟質ゼラチンカプセルの形態である場合、分散液または懸濁液の作製に通常用いられるいかなる医薬担体も考慮されてよい。 注射用製剤は、単位剤形として(例:アンプルにて)、または保存剤が添加されたマルチドーズ容器により提供されてよい。 治療の用語は、臨床徴候が現れる前またはその後に疾患の進行を制御するための、ジアゾキシドもしくはその薬学上許容される塩、またはその組成物の投与を示すために用いられる。疾患の進行を制御するとは、症状の軽減、疾患の期間の短縮、病理学的状態の安定化(具体的には、さらなる悪化の回避)、疾患の進行の遅延、病理学的状態の改善、および寛解(部分的および完全の両方)を含むがこれらに限定されない有益なまたは所望される臨床結果を示すことを意味する。「疾患の進行の制御」はまた、治療が施されない場合の期待生存期間と比較して延長された生存期間の意味も含み得る。本発明の特定の実施形態では、ジアゾキシドは、疾患の臨床徴候の少なくとも1つが現れた際に、疾患の進行を制御するために用いられる。 「哺乳動物」の用語は、家用および農業用の哺乳動物、霊長類、およびヒト、例えば人間、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類を含むがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋運動を制御する中枢神経系の神経細胞である運動ニューロンの変性に起因する、進行性で致死性の神経変性疾患である。散発性および家族性ALS(それぞれ、SALSおよびFALS)が知られている。いずれも臨床的および病理学的に類似しており、共通の病原であることが示唆される。 本発明に関して、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の用語は、古典型(シャルコー)ALS、ルー・ゲーリック病、運動ニューロン疾患(MND)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、原発性側索硬化症(PLS)、球発症型ALS、脊髄発症型ALS、および多系統が関与するALSの名称で知られる神経変性症候群のスペクトラムを含む(Wijesekera LC and Leigh PN. Amyotrophic lateral sclerosis. Orphanet Journal of Rare Disease 2009, 4:3)。 トランスジェニックSOD1G93Aマウスは、SOD1遺伝子にG93A変異を有することを特徴とする容認されたALSの動物モデルである(Ludolph AC et al. Guidelines for the preclinical in vivo evaluation of pharmacological active drugs for ALS/MND: Report on the 142nd ENMC international workshop. 2007, Amyothr Lat Sclerosis 8:217-223)。前記変異体マウスにおいて、変異体SOD1の凝集体は、疾患組織にのみ見られ、運動ニューロン変性の過程においてより多くの量が検出された。 市販の形態のトランスジェニックSOD1G93Aマウスの平均余命の相違は、140から160日の間であり、明らかな運動麻痺は、死亡の10〜15日前に見られる。 これまでのところ、ALS‐SOD1マウスが、依然として前臨床研究のための最良の疾患モデルである。従って、本発明の実験は、トランスジェニックSOD1G93Aマウスモデルで行われた。 本発明の実施形態では、医薬は、単一の治療剤としてジアゾキシドを含んでなる。しかし、筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である2つ以上の治療剤を用いた多重手法でALSを治療することが有利である場合もある。哺乳動物における筋萎縮性側索硬化症の治療におけるジアゾキシドの有益な使用はまた、この疾患またはその症状に対する別の治療と組み合わせる場合にも、高い有用性を示し得る。従って、本発明の別の実施形態では、医薬は、ジアゾキシドと、筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の治療剤との併用投与用に作製される。 「筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である治療剤」の用語は、筋萎縮性側索硬化症の治療に用いられるのに適する薬剤を意味する。筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である治療剤としては、CK‐2017357、オレソキシム(TRO19622)、アリモクロモル、リルゾール、トレチノインおよびピオグリタゾンHCl、AVP‐923、メマンチン、タランパネル、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、サリドマイド、オランザピン、KNS‐760704、炭酸リチウム、NP001、ONO‐2506PO、タモキシフェン、クレアチン一水和物、コエンザイムQ10、YAM80、フェニル酪酸ナトリウム、ピリメタミン、R(+)プラミペキソール二塩酸塩一水和物、ビタミンE、ミノサイクリン、トピラマート、ガバペンチン、AEOL‐10150、幹細胞注射、SB‐509、自己骨髄由来幹細胞、セフトリアキソン、E0302(メコバラミン)、MCI‐186、酢酸グラチラマー、インスリン様成長因子1(IGF‐I)、ISIS333611、sNN0029、GSK1223249、脳由来神経栄養因子(BDNF)、抗‐CD40L抗体が挙げられるが、これらに限定されない。 「併用投与」は、ジアゾキシドが、筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である治療剤と共に、一緒にまたは別々に、同時に、並行して、または順次に、任意の順序で投与されてよいことであると理解される必要があり、例えば、ジアゾキシドがまず投与されて、続いて筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の治療剤が投与されてよく;または、ジアゾキシドは最後に投与され、その前に筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の治療剤が投与されてよく;または、ジアゾキシドの投与が、筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の治療剤を伴なって行われてもよい。 当業者であれば、本発明に関して、ジアゾキシドおよび筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である追加の治療剤の併用投与のための医薬は、単一の剤形、または別々の剤形の形態であってよいと理解される。本発明の実施形態では、医薬は、ジアゾキシドと、CK‐2017357、オレソキシム(TRO19622)、アリモクロモル、リルゾール、トレチノインおよびピオグリタゾンHCl、AVP‐923、メマンチン、タランパネル、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、サリドマイド、オランザピン、KNS‐760704、炭酸リチウム、NP001、ONO‐2506PO、タモキシフェン、クレアチン一水和物、コエンザイムQ10、YAM80、フェニル酪酸ナトリウム、ピリメタミン、R(+)プラミペキソール二塩酸塩一水和物、ビタミンE、ミノサイクリン、トピラマート、ガバペンチン、AEOL‐10150、幹細胞注射、SB‐509、自己骨髄由来幹細胞、セフトリアキソン、E0302(メコバラミン)、MCI‐186、酢酸グラチラマー、インスリン様成長因子1(IGF‐I)、ISIS333611、sNN0029、GSK1223249、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および抗‐CD40L抗体;好ましくは、リルゾール、アリモクロモル、抗‐CD40L抗体、AVP‐923、炭酸リチウム、セフトリアキソン、NP001、ONO‐2506PO、KNS‐760704、幹細胞注射、およびGSK1223249から選択される筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の追加の治療剤と、を含んでなる。 本発明の別の実施形態では、ジアゾキシドおよび追加の治療剤は、単一の剤形に含有される。単一の剤形でのジアゾキシドとの併用に適する追加の治療剤は、CK‐2017357、オレソキシム(TRO19622)、アリモクロモル、リルゾール、トレチノインおよびピオグリタゾンHCl、AVP‐923、メマンチン、タランパネル、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、サリドマイド、オランザピン、KNS‐760704、炭酸リチウム、NP001、ONO‐2506PO、タモキシフェン、クレアチン一水和物、コエンザイムQ10、YAM80、フェニル酪酸ナトリウム、ピリメタミン、R(+)プラミペキソール二塩酸塩一水和物、ビタミンE、ミノサイクリン、トピラマート、ガバペンチン;好ましくは、リルゾール、アリモクロモル、AVP‐923、KNS‐760704、炭酸リチウム、NP001、およびONO‐2506POである。 本発明の別の実施形態では、ジアゾキシドおよび追加の治療剤は、別々の剤形に含有される。別々の剤形でのジアゾキシドとの併用治療に適する追加の治療剤は、AEOL‐10150、幹細胞注射、SB‐509、自己骨髄由来幹細胞、セフトリアキソン、E0302(メコバラミン)、MCI‐186、酢酸グラチラマー、インスリン様成長因子1(IGF‐I)、ISIS333611、sNN0029、GSK1223249、脳由来神経栄養因子(BDNF)、抗‐CD40L抗体;好ましくは、抗‐CD40L抗体、セフトリアキソン、幹細胞注射、およびGSK1223249である。 本発明によると、ジアゾキシドは、13mg/m2/日(ヒトでは0.351mg/kg/日)未満の用量にて、ALSの治療に有効であることが見出され、これは、低血糖症および高血圧症の治療に現在用いられている用量(それぞれ、3〜8mg/kg/日および600〜800mg/日)と比べて非常に低いものである。 ジアゾキシドは、ヒト患者の治療に用いられる場合、0.004mg/kg/日〜0.351mg/kg/日、好ましくは0.004mg/kg/日〜0,1mg/kg/日、好ましくは0.004mg/kg/日〜0.081mg/kg/日、好ましくは0.004mg/kg/日〜0.07mg/kg/日、より好ましくは0.004mg/kg/日〜0.065mg/kg/日、さらにより好ましくは0.004mg/kg/日〜0.041mg/kg/日、最も好ましくは0.004mg/kg/日〜0.020mg/kg/日、なお最も好ましくは0.004mg/kg/日〜0.010mg/kg/日の範囲の量で投与される。本発明の1つの実施形態では、ジアゾキシドまたは薬学上許容される塩は、0.065mg/kg/日〜0.081mg/kg/日の1日投与量にて、ヒト患者の治療のための医薬として用いられる。これらの用量は、平均体重が60Kgの患者の場合、0.24mg/日〜21.1mg/日、好ましくは0.24mg/日〜6mg/日、好ましくは0.24mg/日〜4.86mg/日、好ましくは0.24mg/日〜4.22mg/日、より好ましくは0.24mg/日〜3.89mg/日、さらにより好ましくは0.24mg/日〜2.43mg/日、最も好ましくは0.24mg/日〜1.22mg/日、なお最も好ましくは0.24mg/日〜0.60mg/日の範囲の1日投与量に相当する。本発明の1つの実施形態では、ヒト患者の治療のためのジアゾキシドまたは薬学上許容される塩の1日投与量は、3.89mg/日〜4.86mg/日である。これらの量は、ジアゾキシド遊離塩基の量として表される。 これらの1日投与量は、1日1回投与されてよく、または1日の中で投与される2もしくは3回分の用量に等分されてもよい。医薬組成物中のジアゾキシドの含有量は、1日の投与回数に応じて変更できる。 従って、別の態様によると、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための1日3回投与用に製剤された単位用量組成物を提供し、それは、0.08mg〜7.03mg、好ましくは0.08mg〜2mg、好ましくは0.08mg〜1.62mg、好ましくは0.08mg〜1.41mg、より好ましくは0.08mg〜1.30mg、さらにより好ましくは0.08mg〜0.81mg、最も好ましくは0.08mg〜0.41mg、なお最も好ましくは0.08mg〜0.20mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含有する。本発明の1つの実施形態では、1日3回投与用に製剤された単位用量組成物は、1.30mg〜1.62mgを含有できる。 別の態様によると、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための1日2回投与用に製剤された単位用量組成物を提供し、それは、0.12mg〜10.55mg、好ましくは0.12mg〜3mg、好ましくは0.12mg〜2.43mg、好ましくは0.12mg〜2.11mg、より好ましくは0.12mg〜1.95mg、さらにより好ましくは0.12mg〜1.21mg、最も好ましくは0.12mg〜0.61mg、なお最も好ましくは0.12mg〜0.30mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含有する。本発明の1つの実施形態では、1日2回投与用に製剤された単位用量組成物は、1.94mg〜2.43mgを含有できる。 さらに別の態様によると、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための1日1回投与用に製剤された単位用量組成物を提供し、それは、0.24mg〜21.1mg、好ましくは0.24mg〜6mg、好ましくは0.24mg〜4.86mg、好ましくは0.24mg〜4.22mg、より好ましくは0.24mg〜3.89mg、さらにより好ましくは0.24mg〜2.43mg、最も好ましくは0.24mg〜1.22mg、なお最も好ましくは0.24mg〜0.60mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含有する。本発明の1つの実施形態では、1日1回投与用に製剤された単位用量組成物は、3.89mg〜4.86mgを含有できる。 好ましい実施形態では、ジアゾキシドは、0.06mg/kg/日、0.08mg/kg/日、および0.3mg/kg/日;好ましくは、0.06mg/kg/日および0.08mg/kg/日;最も好ましくは、0.06mg/kg/日、から選択される量にて、ヒト患者の治療のために用いられる。これらの用量は、平均体重が60Kgの患者の場合、それぞれ、3.6mg、4.8、および18mgの1日投与量に相当する。これらの量は、ジアゾキシド遊離塩基の量として表される。 特定の実施形態では、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための、1.2mg、1.6mg、1.8mg、2.4mg、3.6mg、4.8mg、6mg、9mg、および18mg;好ましくは、6mg、9mg、および18mg;より好ましくは、1.6mg、2.4mg、および4.8mg;最も好ましくは、1.2mg、1.8mg、および3.6mgから選択される量でジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる単位用量組成物を提供する。 本発明において、「医薬組成物」の用語は、本明細書で用いられる場合、「医薬」の用語と同等である。 医薬組成物は、1日1回または1日2回投与を意図する経口剤形であってよい。これにより、患者が治療計画に従うことが容易となり、従って、この計画へのコンプライアンスが促進される。 別の態様では、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患する哺乳動物の治療方法に関し、それは、0.15mg/m2/日〜13.00mg/m2/日、好ましくは0.15mg/m2/日〜3.70mg/m2/日、好ましくは0.15mg/m2/日〜3.00mg/m2/日、好ましくは0.15mg/m2/日〜2.60mg/m2/日、より好ましくは0.15mg/m2/日〜2.40mg/m2/日、より好ましくは0.15mg/m2/日〜1.90mg/m2/日、さらにより好ましくは0.15mg/m2/日〜1.50mg/m2/日、最も好ましくは0.15mg/m2/日〜0.75mg/m2/日の範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩の投与を含んでなる。0.15mg/m2/日〜0.37mg/m2/日の範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を投与することがさらに好ましい。 ジアゾキシドがヒト患者の治療に用いられる場合、この治療方法は、0.004mg/kg/日〜0.351mg/kg/日、好ましくは0.004mg/kg/日〜0,1mg/kg/日、好ましくは0.004mg/kg/日〜0.081mg/kg/日、好ましくは0.004mg/kg/日〜0.07mg/kg/日、より好ましくは0.004mg/kg/日〜0.065mg/kg/日、さらにより好ましくは0.004mg/kg/日〜0.041mg/kg/日、最も好ましくは0.004mg/kg/日〜0.020mg/kg/日、なお最も好ましくは0.004mg/kg/日〜0.010mg/kg/日の範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩の投与を含んでなる。これらの用量は、平均体重が60Kgの患者の場合、0.24mg/日〜21.1mg/日、好ましくは0.24mg/日〜6mg/日、好ましくは0.24mg/日〜4.86mg/日、好ましくは0.24mg/日〜4.22mg/日、より好ましくは0.24mg/日〜3.89mg/日、さらにより好ましくは0.24mg/日〜2.43mg/日、最も好ましくは0.24mg/日〜1.22mg/日、なお最も好ましくは0.24mg/日〜0.60mg/日の範囲の1日投与量に相当する。これらの量は、ジアゾキシド遊離塩基の量として表される。 好ましい実施形態では、ジアゾキシドは、ヒト患者の治療のために用いられ、ここで、治療の方法は、0.06mg/kg/日、0.08mg/kg/日、および0.3mg/kg/日;好ましくは、0.06mg/kg/日および0.08mg/kg/日;最も好ましくは、0.06mg/kg/日、から選択される量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩の投与を含んでなる。これらの用量は、平均体重が60Kgの患者の場合、それぞれ、3.6mg、4.8、および18mgの1日投与量に相当する。これらの量は、ジアゾキシド遊離塩基の量として表される。 これらの1日投与量は、1日1回投与されてよく、または1日の中で投与される2もしくは3回分の用量に等分されてもよい。投与されるジアゾキシドの量は、1日の投与回数に応じて変更できる。 従って、別の態様によると、本発明は、0.08mg〜7.03mg、好ましくは0.08mg〜2mg、好ましくは0.08mgから1.62mg、好ましくは0.08mg〜1.41mg、より好ましくは0.08mg〜1.30mg、さらにより好ましくは0.08mg〜0.81mg、最も好ましくは0.08mg〜0.41mg、なお最も好ましくは0.08mg〜0.20mgの範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を、1日3回投与することを含んでなる治療の方法を提供する。 さらに別の態様では、本発明は、0.08mg〜7.03mg、好ましくは0.08mg〜2mg、好ましくは0.08mg〜1.62mg、好ましくは0.08mg〜1.41mg、より好ましくは0.08mg〜1.30mg、さらにより好ましくは0.08mg〜0.81mg、最も好ましくは0.08mg〜0.41mg、なお最も好ましくは0.08mg〜0.20mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療において1日3回投与するための医薬組成物を提供する。 別の態様によると、本発明は、0.12mg〜10.55mg、好ましくは0.12mg〜3mg、好ましくは0.12mg〜2.43mg、好ましくは0.12mg〜2.11mg、より好ましくは0.12mg〜1.95mg、さらにより好ましくは0.12mg〜1.21mg、最も好ましくは0.12mg〜0.61mg、なお最も好ましくは0.12mg〜0.30mgの範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を、1日2回投与することを含んでなる治療の方法を提供する。 さらに別の態様では、本発明は、0.12mg〜10.55mg、好ましくは0.12mg〜3mg、好ましくは0.12mg〜2.43mg、好ましくは0.12mg〜2.11mg、より好ましくは0.12mg〜1.95mg、さらにより好ましくは0.12mg〜1.21mg、最も好ましくは0.12mg〜0.61mg、なお最も好ましくは0.12mg〜0.30mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療において1日2回投与するための医薬組成物を提供する。 さらに別の態様によると、本発明は、0.24mg〜21.1mg、好ましくは0.24mg〜6mg、好ましくは0.24mg〜4.86mg、好ましくは0.24mg〜4.22mg、より好ましくは0.24mg〜3.89mg、さらにより好ましくは0.24mg〜2.43mg、最も好ましくは0.24mg〜1.22mg、なお最も好ましくは0.24mg〜0.60mgの範囲の量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を、1日1回投与することを含んでなる治療の方法を提供する。 さらに別の態様では、本発明は、0.24mg〜21.1mg、好ましくは0.24mg〜6mg、好ましくは0.24mg〜4.86mg、好ましくは0.24mg〜4.22mg、より好ましくは0.24mg〜3.89mg、さらにより好ましくは0.24mg〜2.43mg、最も好ましくは0.24mg〜1.22mg、なお最も好ましくは0.24mg〜0.60mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療において1日1回投与するための医薬組成物を提供する。 さらに別の態様では、本発明は、0.24mg〜21.1mg、好ましくは0.24mg〜6mg、好ましくは0.24mg〜4.86mg、好ましくは0.24mg〜4.22mg、より好ましくは0.24mg〜3.89mg、さらにより好ましくは0.24mg〜2.43mg、最も好ましくは0.24mg〜1.22mg、なお最も好ましくは0.24mg〜0.60mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなることを特徴とする、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための医薬組成物を提供する。 特定の実施形態では、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療において投与するための、1.2mg、1.6mg、1.8mg、2.4mg、3.6mg、4.8mg、6mg、9mg、および18mg;好ましくは、6mg、9mg、および18mg;より好ましくは、1.6mg、2.4mg、および4.8mg;最も好ましくは、1.2mg、1.8mg、および3.6mg、から選択される量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる医薬組成物を提供する。 特定の実施形態では、本発明は、1.2mg、1.6mg、1.8mg、2.4mg、3.6mg、4.8mg、6mg、9mg、および18mg;好ましくは、6mg、9mg、および18mg;より好ましくは、1.6mg、2.4mg、および4.8mg;最も好ましくは、1.2mg、1.8mg、および3.6mg、から選択される量のジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなることを特徴とする、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療に用いるための医薬組成物を提供する。 特定の実施形態では、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩は、2.22mg/m2/日、2.96mg/m2/日、および11.1mg/m2/日から選択される量で投与される。 1つの実施形態では、方法は、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩が経口投与されることを特徴とする。 本発明の1つの実施形態では、方法は、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩が、単一の治療剤として投与されることを特徴とする。他の実施形態では、方法は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に有用である1つ以上の治療剤と組み合わせて、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩のある量を投与することを含んでなる。好ましい実施形態では、ジアゾキシドおよび追加の治療剤は、単一の剤形に含有される。他の好ましい実施形態では、ジアゾキシドおよび追加の治療剤は、別々の剤形に含有される。 本発明の1つの実施形態では、方法は、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩が、1日1回投与が意図される剤形として投与されることを特徴とする。別の実施形態では、1日2回の投与が意図される。 本発明の好ましい実施形態では、方法は、ヒトを治療するために用いられる。 マウスで実施した本発明の実験により、ジアゾキシドは、13mg/m2/日未満の様々な1日投与量にて有効であることが示された。 ジアゾキシドの用量は、体重1kgあたりのジアゾキシドのmgとして、または体表面積1平方メートルあたりのジアゾキシドのmgとして表されてよい。Reagan-Shaw S. "Dose translation from animal to human studies revisited". FASEB J 2007, 22:659-661、の論文が、mg/kgからmg/m2への変換に用いられる標準変換係数を提供している。 用量(mg/kg)×Km=用量(mg/m2) この論文はまた、この変換が、第一の動物種における用量を第二の動物種における用量へ変換する基礎であることも説明している(非比例的用量換算(allometric dose translation))。従って、mg/kg単位の動物の用量(AD)を、mg/kg単位のヒトに相当する用量(HED)へ、以下の式を用いて変換することができ: ここで、各々の種に対するKmを表IIに示す(データは、Reagan-Shaw S. Dose translation from animal to human studies revisited. FASEB J 2007, 22:659-661より抽出)。 従って、0.05mg/kg/日、0.1mg/kg/日、0.8mg/kg/日、1mg/kg/日、および4mg/kg/日の用量によるマウスでの実験は、哺乳動物での一般的用量、0.15mg/m2/日、0.3mg/m2/日、2.4mg/m2/日、3mg/m2/日、および12mg/m2/日に相当する。 本発明の利点は、以下の実施例を参照することでより十分に説明される。実施例1:低用量のジアゾキシドはマウスにおいて高血糖症を引き起こさない 非常に低用量のジアゾキシドによる糖血症への影響を生体内で調べるために、ジアゾキシドをマウスに毎日投与して測定した。11週齢の雌C57BL/6Jマウスをチャールズリバー(Charles River)より購入し、標準的な食餌および水の自由な摂食が可能な状態で12:12時間の明暗サイクルにて飼育した。実験は11:00時に開始した。ジアゾキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)を、4日間の初期期間中、1mg/kg(3mg/m2)(図1A)および0.05mg/kg(0.15mg/m2)(図1B)(n=6/グループ)の用量にて経管栄養法(p.o.)により毎日経口投与した。この期間は、血漿中ジアゾキシド濃度の定常状態を作り出すのに必要であると考えた。第4日以降、30日間の処理期間にわたって、3〜4日ごとに血中グルコースレベルを測定した。測定は、薬物投与直前(時間0)および60分の時点に行った。血液サンプルは伏在静脈から採取し、グルコースレベルはグルコメーターおよびグルコース試験紙(Accu‐Chek(商標)Aviva、ロシェダイアグノスティック(Roche Diagnostics)、インディアナポリス,インディアナ州,米国)を用いて測定した。各グループについて、グルコース濃度が176mg/dL以上の場合に、高血糖症であると見なした。図1に示すように、本研究で試験した2つの用量のいずれも、30日間のジアゾキシド処理後、高血糖症を示さなかった。実施例2:低用量のジアゾキシドは、筋萎縮性側索硬化症のC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlトランスジェニックマウスモデルにおいて高血糖症を引き起こさない 非常に低用量のジアゾキシドによる糖血症への影響を生体内で調べるために、トランスジェニックマウスC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlに、ジアゾキシドまたは媒体(コントロールグループ)を毎日投与して測定した。トランスジェニックC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlマウスは、元はジャクソンラボラトリー(Jackson Laboratories)(バーハーバー,メイン州)から購入したものであり、PCR増幅によって早期の生後齢において導入遺伝子の陽性担体として通常の方法で識別されたものである(Garney et al. Motor neuron degeneration in mice that express a human Cu,Zn superoxide dismutase mutation. Science 1994. 264(5166): 1772-5)。制御された温度(22±2℃)、湿度(40〜60%)、および光(12時間サイクル)の下、動物のコロニーを飼育し、動物の保護に関するヨーロッパ共同体理事会指令(86/609/EEC)に従って処理した。 生後40日齢にて、SOD1‐G93A導入遺伝子の陽性担体として識別されたマウスを、ジアゾキシド処理またはコントロールグループへランダムに振り分けた。処理は生後第45日に開始し、生後第145日まで継続した。薬物は、投与体積200μLにて、経管栄養法(p.o.)により毎日経口投与した。ジアゾキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)を、4mg/kg/日(12mg/m2/日)(図3A)および0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日)(図3B)の用量で投与した。1つのコントロールグループでは、90%の水と10%のジメチルスルホキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)からなる、ジアゾキシドの溶解に用いた媒体を毎日経口投与した(図3C)。各グループは3体の動物からなる。 生後第105、115、および145日に血中グルコースレベルを測定した。測定は、薬物投与直前(時間0)および60分の時点に行った。血液サンプルは伏在静脈から採取し、グルコースレベルはグルコメーターおよびグルコース試験紙(Accu‐Chek(商標)Aviva、ロシェダイアグノスティック、インディアナポリス,インディアナ州,米国)を用いて測定した。各グループについて、グルコース濃度が176mg/dL以上の場合に、高血糖症であると見なした。図3に示すように、本研究で試験した2つの用量のいずれも、100日間のジアゾキシド処理後、高血糖症を示さなかった。実施例3:低用量のジアゾキシドは、筋萎縮性側索硬化症のC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlトランスジェニックマウスモデルにおいて生存率を改善する トランスジェニックC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlマウスは、元はジャクソンラボラトリー(バーハーバー,メイン州)から購入したものであり、PCR増幅によって早期の生後齢において導入遺伝子の陽性担体として通常の方法で識別されたものである(Garney et al. Motor neuron degeneration in mice that express a human Cu,Zn superoxide dismutase mutation. Science 1994. 264(5166): 1772-5)。制御された温度(22±2℃)、湿度(40〜60%)、および光(12時間サイクル)の下、動物のコロニーを飼育し、動物の保護に関するヨーロッパ共同体理事会指令(86/609/EEC)に従って処理した。 生後70日齢にて、SOD1‐G93A導入遺伝子の陽性担体として識別されたマウスを、ジアゾキシド処理またはコントロールグループへランダムに振り分けた。野生型C57BL/6Jから構成される追加のグループも、自然死に対する絶対コントロールとして用いた。処理は生後第70日に開始し、動物を屠殺するまで継続した。薬物は、投与体積200μLにて、経管栄養法(p.o.)により毎日経口投与した。ジアゾキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)を、0.05mg/kg/日(0.15mg/m2/日)、0.1mg/kg/日(0.3mg/m2/日)、および1mg/kg/日(3mg/m2/日)の用量で投与した。1つのコントロールグループでは、98.5%の水と1.5%のジメチルスルホキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)からなる、ジアゾキシドの溶解に用いた媒体を毎日経口投与した。各グループは14体の動物からなる。 生後およそ75日にて、処理および未処理マウスは、探索行動および摂食行動の低下、ならびに体重の減少を示し始めた。20〜30日後、運動の欠乏が明らかに観察可能となり、筋肉量および体重は継続して減少した。生後第137日から172日までの間に、動物は、いずれの側に横たえた状態からも30秒以内に立ち上がることができなくなり始め、これが動物の生存期間の最後であった。各マウスについて、死亡した日付と原因を記録した。人道的理由により、動物を密接に測定し、重篤な瀕死状態に対する基準を用いて、実際に死亡する前に瀕死状態にて屠殺を行った。確実におよび人道的に生存期間を決定するために、用いた瀕死状態は、マウスが横たえた状態から30秒以内に立ち上がれない状態として定めた。瀕死のマウスは「死亡」と見なし、二酸化炭素を用いて安楽死させた。動物がこの「瀕死」段階に達すると、それから24時間を超えて生存することができないことは公知である。 生後第21週には、媒体で処理したC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlマウスの僅かに46.2%のみが生存し、一方、1mg/kg/日(3mg/m2/日)のジアゾキシドで処理した動物は、85.7%が依然として生存していた。0.1mg/kg/日(0.3mg/m2/日)および0.05mg/kg/日(0.15mg/m2/日)の用量の場合は、この週齢での生存パーセントは、それぞれ71.4%および78.6%であった(図2および表III)。野生型‐非トランスジェニックコントロールグループの場合、この週齢での生存率は100%であった。 試験したジアゾキシド用量はすべて、コントロールグループと比較して、良好な生存のメジアン値を示した。媒体コントロールグループのメジアン生存期間は、147日間であり、ジアゾキシド1mg/kg/日(3mg/m2/日)の場合は、それは156日間、0.1mg/kg/日(0.3mg/m2/日)の場合は、それは152日間、0.05mg/kg/日(0.15mg/m2/日)の場合は、それは153日間であった(表IV)。実施例4:低用量のジアゾキシドは、筋萎縮性側索硬化症のC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlトランスジェニックマウスモデルにおいて疾患発症を改善する トランスジェニックC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlマウスは、元はジャクソンラボラトリー(バーハーバー,メイン州)から購入したものであり、PCR増幅によって早期の生後齢において導入遺伝子の陽性担体として通常の方法で識別されたものである(Garney et al. Motor neuron degeneration in mice that express a human Cu,Zn superoxide dismutase mutation. Science 1994. 264(5166): 1772-5)。制御された温度(22±2℃)、湿度(40〜60%)、および光(12時間サイクル)の下、動物のコロニーを飼育し、動物の保護に関するヨーロッパ共同体理事会指令(86/609/EEC)に従って処理した。 生後40日齢にて、SOD1‐G93A導入遺伝子の陽性担体として識別されたマウスを、ジアゾキシド処理またはコントロールグループへランダムに振り分けた。処理は生後第45日に開始し、生後第145日まで継続した。薬物は、投与体積200μLにて、経管栄養法(p.o.)により毎日経口投与した。ジアゾキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)を、4mg/kg/日(12mg/m2/日)および0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日)の用量で投与した。1つのコントロールグループでは、90%の水と10%のジメチルスルホキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)からなる、ジアゾキシドの溶解に用いた媒体を毎日経口投与した。各グループは30体の動物からなる。 疾患発症は、マウスがそのピーク体重に達した時点として決定した。 試験したジアゾキシド用量はすべて、コントロールグループと比較して、良好な疾患発症日齢メジアン値を示した。媒体コントロールグループのメジアン疾患発症日齢は、111日であり、ジアゾキシド4mg/kg/日(12mg/m2/日)の場合は、それは116日、0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日)の場合は、それは121日であった(表V)。実施例5:低用量のジアゾキシドは、筋萎縮性側索硬化症のC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlトランスジェニックマウスモデルにおいて神経伝導を改善する トランスジェニックC57BL/6J‐TgN(SOD1‐G93A)1Gurdlマウスは、元はジャクソンラボラトリー(バーハーバー,メイン州)から購入したものであり、PCR増幅によって早期の生後齢において導入遺伝子の陽性担体として通常の方法で識別されたものである(Garney et al. Motor neuron degeneration in mice that express a human Cu,Zn superoxide dismutase mutation. Science 1994. 264(5166): 1772-5)。制御された温度(22±2℃)、湿度(40〜60%)、および光(12時間サイクル)の下、動物のコロニーを飼育し、動物の保護に関するヨーロッパ共同体理事会指令(86/609/EEC)に従って処理した。 生後40日齢にて、SOD1‐G93A導入遺伝子の陽性担体として識別されたマウスを、ジアゾキシド処理またはコントロールグループへランダムに振り分けた。野生型C57BL/6Jから構成される追加のグループも、神経伝導測定に対する絶対コントロールとして用いた。処理は生後第45日に開始し、生後第85日まで継続した。薬物は、投与体積200μLにて、経管栄養法(p.o.)により毎日経口投与した。ジアゾキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)を、8mg/kg/日(24mg/m2/日)、4mg/kg/日(12mg/m2/日)、および0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日)の用量で投与した。1つのコントロールグループでは、90%の水と10%のジメチルスルホキシド(シグマアルドリッチ、セントルイス,ミズーリ州,米国)からなる、ジアゾキシドの溶解に用いた媒体を毎日経口投与した。各グループは8体の動物からなる。 生後85日齢にて、動物に神経伝導測定のための試験を行った。運動神経伝導試験については、坐骨神経を、坐骨切痕に配置した1対のニードル電極を通して送られる長さ0.02msの単パルスにより(Grass S88)経皮刺激した。複合筋活動電位(CMAP、M波)を、前脛骨(TA)からマイクロニードル電極によって記録した。記録された電位を増幅し、ベースラインから最大ネガティブピークまでの振幅測定に適するように設定したデジタルオシロスコープ上(Tektronix 450S)に表示した。再現性を確保するために、記録用ニードルを顕微鏡下に置き、解剖学的目印をガイドとして、すべての動物に対して確実に同じ配置とした。試験の間、サーモスタット付の保温パッドにより、マウスの体温を一定に維持した。 神経伝導の研究は、下位運動ニューロンの機能喪失を評価するために行った。野生型コントロールグループからの平均CMAP振幅を100%として図4に示すように、0.8mg/kg/日(2.4mg/m2/日)および4mg/kg/日(12mg/m2/日)のジアゾキシド用量は、媒体コントロールグループと比較して、それぞれ前脛骨CMAPの振幅の17.1%および3.4%の増加を示した。8mg/kg/日(24mg/m2/日)のジアゾキシド用量では、媒体コントロールグループと比較した場合の差異は観察されなかった。 ジアゾキシド遊離塩基の1日投与量がmg/m2/日として表され、該1日投与量が0.15mg/m2/日〜13.00mg/m2/日とされるように用いられる、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した哺乳動物の治療における医薬として用いられるための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 遊離塩基の形態のジアゾキシドが用いられる、請求項1に記載の使用のための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記哺乳動物がヒトである、請求項1または2に記載の使用のための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、経口投与用に作製される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、0.15mg/m2/日〜3.00mg/m2/日のジアゾキシドの1日投与量の投与用に作製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、2.40mg/m2/日〜3.00mg/m2/日のジアゾキシドの1日投与量の投与用に作製される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、0.15mg/m2/日、2.22mg/m2/日、2.40mg/m2/日、2.96mg/m2/日、3.00mg/m2/日、および11.1mg/m2/日から選択されるジアゾキシドの1日投与量の投与用に作製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、ジアゾキシドを単一の治療剤として含んでなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、ジアゾキシドと、筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の治療剤との併用投与用に作製される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 前記医薬が、ジアゾキシドと、CK‐2017357、オレソキシム(TRO19622)、アリモクロモル、リルゾール、トレチノインおよびピオグリタゾンHCl、AVP‐923、メマンチン、タランパネル、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、サリドマイド、オランザピン、KNS‐760704、炭酸リチウム、NP001、ONO‐2506PO、タモキシフェン、クレアチン一水和物、コエンザイムQ10、YAM80、フェニル酪酸ナトリウム、ピリメタミン、R(+)プラミペキソール二塩酸塩一水和物、ビタミンE、ミノサイクリン、トピラマート、ガバペンチン、AEOL‐10150、幹細胞注射、SB‐509、自己骨髄由来幹細胞、セフトリアキソン、E0302(メコバラミン)、MCI‐186、酢酸グラチラマー、インスリン様成長因子1(IGF‐I)、ISIS333611、sNN0029、GSK1223249、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および抗‐CD40L抗体から選択される筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の追加の治療剤とを含んでなる、請求項9に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 ジアゾキシドおよび前記追加の治療剤が、単一の剤形に含有される、請求項9に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 ジアゾキシドおよび前記追加の治療剤が、別々の剤形に含有される、請求項9に記載の使用のためのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩。 筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療における使用のための、0.24mg〜21.1mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、医薬組成物。 0.24mg〜4.86mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。 1.2mg、1.6mg、1.8mg、2.4mg、3.6mg、4.8mg、6mg、9mg、および18mgから選択される量でジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。 本発明は、筋萎縮性側索硬化症を治療するための低用量での医薬として用いるための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩に関する。 20130422A16333全文3 ジアゾキシド遊離塩基の1日投与量がmg/m2/日として表され、該1日投与量が0.15mg/m2/日〜13.00mg/m2/日とされるように用いられる、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した哺乳動物の治療のための、ジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、医薬組成物。 遊離塩基の形態のジアゾキシドが用いられる、請求項1に記載の医薬組成物。 前記哺乳動物が、ヒトである、請求項1または2に記載の医薬組成物。 前記組成物が、経口投与用に作製される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。 0.15mg/m2/日〜3.00mg/m2/日のジアゾキシドを1日投与量とされるように用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。 2.40mg/m2/日〜3.00mg/m2/日のジアゾキシドを1日投与量とされるように用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。 0.15mg/m2/日、2.22mg/m2/日、2.40mg/m2/日、2.96mg/m2/日、3.00mg/m2/日、および11.1mg/m2/日から選択されるジアゾキシドを1日投与量とされるように用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。 前記組成物が、ジアゾキシドを単一の治療剤として含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。 前記組成物が、ジアゾキシドと、筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の治療剤との組み合わせを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。 前記組成物が、ジアゾキシドと、CK‐2017357、オレソキシム(TRO19622)、アリモクロモル、リルゾール、トレチノインおよびピオグリタゾンHCl、AVP‐923、メマンチン、タランパネル、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、サリドマイド、オランザピン、KNS‐760704、炭酸リチウム、NP001、ONO‐2506PO、タモキシフェン、クレアチン一水和物、コエンザイムQ10、YAM80、フェニル酪酸ナトリウム、ピリメタミン、R(+)プラミペキソール二塩酸塩一水和物、ビタミンE、ミノサイクリン、トピラマート、ガバペンチン、AEOL‐10150、幹細胞注射、SB‐509、自己骨髄由来幹細胞、セフトリアキソン、E0302(メコバラミン)、MCI‐186、酢酸グラチラマー、インスリン様成長因子1(IGF‐I)、ISIS333611、sNN0029、GSK1223249、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および抗‐CD40L抗体から選択される筋萎縮性側索硬化症の治療に有用である1つ以上の追加の治療剤とを含んでなる、請求項9に記載の医薬組成物。 ジアゾキシドおよび前記追加の治療剤が、単一の剤形に含有される、請求項9に記載の医薬組成物。 ジアゾキシドおよび前記追加の治療剤が、別々の剤形に含有される、請求項9に記載の医薬組成物。 筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患したヒトの治療のための、0.24mg〜21.1mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、医薬組成物。 0.24mg〜4.86mgのジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、請求項13に記載の医薬組成物。 1.2mg、1.6mg、1.8mg、2.4mg、3.6mg、4.8mg、6mg、9mg、および18mgから選択される量でジアゾキシドまたはその薬学上許容される塩を含んでなる、請求項13に記載の医薬組成物。


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