生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_細胞内免疫
出願番号:2013521206
年次:2013
IPC分類:C07K 16/08,C07K 19/00,C07K 14/47,C07K 14/075,A61K 39/395,A61K 31/7088,A61K 38/00,A61K 38/21,A61K 39/12,A61K 39/02,A61P 31/04,A61P 31/12,A61K 38/16,A61K 48/00,C12P 21/08,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

ジェイムズ,レオ・シー マラリー,ドンナ・エル マキューアン,ウィリアム・エイ ビドグッド,スザンナ・アール JP 2013535462 公表特許公報(A) 20130912 2013521206 20110725 細胞内免疫 メディカル リサーチ カウンシル 597166578 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 中村 綾子 100125380 森本 聡二 100142996 角田 恭子 100154298 田中 祐 100166268 徳本 浩一 100170379 渡辺 篤司 100161001 ジェイムズ,レオ・シー マラリー,ドンナ・エル マキューアン,ウィリアム・エイ ビドグッド,スザンナ・アール US 61/367,220 20100723 GB 1012410.5 20100723 C07K 16/08 20060101AFI20130826BHJP C07K 19/00 20060101ALI20130826BHJP C07K 14/47 20060101ALI20130826BHJP C07K 14/075 20060101ALI20130826BHJP A61K 39/395 20060101ALI20130826BHJP A61K 31/7088 20060101ALI20130826BHJP A61K 38/00 20060101ALI20130826BHJP A61K 38/21 20060101ALI20130826BHJP A61K 39/12 20060101ALI20130826BHJP A61K 39/02 20060101ALI20130826BHJP A61P 31/04 20060101ALI20130826BHJP A61P 31/12 20060101ALI20130826BHJP A61K 38/16 20060101ALI20130826BHJP A61K 48/00 20060101ALI20130826BHJP C12P 21/08 20060101ALN20130826BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130826BHJP JPC07K16/08C07K19/00C07K14/47C07K14/075A61K39/395 CA61K31/7088A61K37/02A61K37/66 GA61K39/12A61K39/02A61K39/395 RA61K39/395 SA61P31/04A61P31/12A61K37/04A61K48/00C12P21/08C12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW GB2011001116 20110725 WO2012010855 20120126 59 20130325 4B024 4B064 4C084 4C085 4C086 4H045 4B024AA01 4B024BA51 4B024CA04 4B024CA07 4B024DA03 4B024EA04 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA01 4C084AA02 4C084AA07 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ウイルスおよびその宿主は何百万年もの間共進化し、これにより先天性の応答および適応性の応答に伝統的に分けられる複雑な免疫システムが生じた1。先天性免疫は、病原体関連分子パターンまたはPAMPを認識する、生殖細胞系にコードされた受容体およびエフェクター機構を含む2。先天性免疫の利点は、速くて包括的であることであるが、ウイルスは、先天性免疫を抑制することまたはその分子パターンを変化させることによって、認識を回避することに長けている。これとは対照的に、適応免疫は、感染宿主を「治癒させる」こと、およびさらなる感染から防御することができる。先天性免疫のPAMP受容体とは異なり、適応免疫は、抗体などのタンパク質を用いて病原体を標的にする。抗体は、個体の生涯を通じて進化し、進化していく病原体を標的にし続けることができるという点で、人体において独特である3。適応免疫の弱点は、最大効力に達するのに1〜2週間かかり得るということである。さらに、過去100年間の抗体免疫の定説は、抗体は細胞外防御のみをもたらすというものである1。一度ウイルスが細胞のサイトゾルに侵入すると、抗体は、その感染を防ぐことができないと考えられている。 細胞内抗体が開発されてきている。例えば、Moutel S、Perez F.、Med Sci(Paris).2009 Dec;25(12):1173〜6;Stocks M.、Curr Opin Chem Biol.2005 Aug;9(4):359〜65を参照されたい。しかし、細胞内抗体またはイントラボディを使用した結果が混合している。一般に、細胞内抗体を開発する試みは、scFvなどの単鎖抗体フラグメントならびにVHH抗体およびdAbなどの単一ドメイン抗体に集中している。 抗体および免疫血清は、病原性感染の治療に長い間使用されている。例えば、1890年代には、ウマ抗血清が破傷風およびジフテリアを治療するために使用されていた。しかし、抗血清はヒトの免疫システムによって異質と見なされ、これは、特に反復投与において、抗血清に対する抗体産生反応を示す。20世紀のほとんどの間、動物抗体の有害作用のせいで、疾患から回復したドナー由来のヒト抗血清の使用が、典型的には呼吸器感染およびB型肝炎感染の予防目的で促された。毒性問題が原因で抗体療法の人気が低下した後、ヒト化抗体およびヒト抗体によってそのような懸念が取り除かれ、そうした治療手段に戻る結果になった。Casadevallら、Nature Reviews Microbiology 2、695〜703(September 2004)を総説として参照されたい。抗体療法を用いて標的にしてきた疾患には、炭疽病、百日咳、破傷風、ボツリヌス中毒、クリプトコッカス症、クリプトスポリジウム症、エンテロウイルス消化管感染症、a群連鎖球菌感染症、壊死性筋膜炎、B型肝炎、麻疹、結核、髄膜炎、再生不良性貧血、狂犬病、RSV感染症、肺炎、帯状疱疹、VZVによる水疱および肺炎、ならびに天然痘が含まれる。しかし、こうした進展にもかかわらず、抗体療法は高用量の抗体を必要とし、予期できない結果をもたらすため、他の適切な療法が使用できない場合にだけ検討される。 病原体に対する抗体の効力は、補体の作用を仲介するのに関与する、抗体のFc部分に少なくとも部分的には依存していると理解されている。したがって、小型で、かつ、製造費が低いという利点が抗体フラグメントにあるにもかかわらず、抗体フラグメントは抗ウイルス療法に対して一般に提案されていない。 ウイルス性疾患の主な療法はワクチン接種のままであり、それは予防手段である。樹状細胞などの抗原提示細胞によってプロセッシングを受けたウイルス性抗原は、免疫システムに提示され、無感作T細胞をメモリーT細胞およびエフェクターT細胞へ分化するように誘導すると考えられている。メモリーT細胞は、二次感染に対するより攻撃的で即時型の免疫反応に関与しており、これによってワクチン接種の利点がもたらされる。総説に関しては、Kaechら、Nature Reviews Immunology、第2巻、April 2002、251を参照されたい。 感染性疾患の療法に対する免疫に基づく別の手段は、インターフェロンを含めたサイトカインの使用である。インターフェロンは、がんおよび多発性硬化症ならびにウイルス感染症の治療のために最初に提案された。インターフェロンは、1998年以来、C型肝炎治療に認可されている。さらに、特に東ヨーロッパにおいて、低用量の経口または鼻腔内インターフェロンが風邪およびインフルエンザの治療に投与されている。しかし、抗ウイルス効果が認められ得る用量よりも使用用量が低いと考えられるため、その作用機構は知られていない。O’Brienら、J Gen Virol.2009 Apr;90(第4部):874〜82は、アデノウイルス送達性VEEVワクチンのアジュバントとしてインターフェロンを使用した。彼らはこのウイルスに対する防御が低下することを認めたが、ウイルスベクターに対する免疫反応の増加も認めた。 最近、本発明者らは、そのPRYSPRYドメインを介して抗体分子の不変領域に結合することができる、TRIM21と呼ばれる細胞内のサイトゾルタンパク質を述べた4。本発明者らは、この活性は構造的、熱力学的および動力学的に哺乳動物全体にわたって保存されていることを見出した5。TRIM21の機能に関する仮説が提唱されており、その仮説には、アポトーシスへの関与およびB細胞で作られるアンフォールドされたIgGをプロテアソームに導く役割が含まれる。 抗体は細胞外タンパク質であり、(細胞内に存在するがサイトゾルには存在しないFcRnを除く)全ての既知の哺乳類IgG受容体も細胞外タンパク質である。したがって、本発明者らには、TRIM21が普遍的に保存された細胞内タンパク質であるはずであり、それにもかかわらず親和性が高く特異性が高いIgG受容体であるはずであるということは矛盾していると思われた。本発明者らは、抗体免疫に関する現時点での理解はおそらく不十分であり、TRIM21によって仲介され、細胞内で生じる「未発見」の免疫システムが存在すると仮定した。本明細書で提供するデータは、この未発見の免疫システムの存在、および二つの無関係なウイルス、すなわちdsDNAアデノウイルスおよびssRNAコクサッキーウイルスによる感染の阻止におけるその働きを示す。 したがって、本発明の第一の態様では、 (a)直接的または間接的に病原体の抗原に特異的に結合するリガンドと、ただし、TRIM21のPRYSPRYドメインではなく、 (b)RINGドメインおよび/またはTRIM21発現の誘導因子とを含む化合物が提供される。 本発明者らは、TRIM21は、免疫グロブリンに対する高親和性リガンドであることを示した。TRIM21のRINGドメインはE3リガーゼであり、これはユビキチン化され、結合した抗原と共に免疫グロブリンをプロテアソームに導く。 本発明によると、TRIMポリペプチドのRINGドメインなど、少なくともRINGドメインは抗原に対するリガンドに結合することができる。そのようなリガンドは、好ましくは直接的に抗原に結合し、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含むことができる。しかし、ペプチド、ペプチドおよび核酸に基づくアプタマー、天然起源のリガンド、受容体およびそれらの結合フラグメントを含めた他のリガンドを用いてもよい。 別の実施形態では、リガンドは間接的に抗原に結合する。例えば、リガンドは、免疫グロブリンのFc部分など、免疫グロブリンに非特異的に結合することができる。そのような一実施形態では、リガンドはTRIM21のPRYSPRYドメインではない。例示的なリガンドには、プロテインA、プロテインG、プロテインL、例えば免疫グロブリンのFc領域を認識するペプチドなどのペプチド、抗Fc抗体およびそれらのフラグメントなどが含まれる。この場合、標的特異性は、病原体の抗原に対して特異的な抗体または抗体フラグメントによって提供される。この抗体は、本発明の化合物と同時投与されてもよく、または天然起源でもよい。 本発明において、用語「リガンド」は、結合対のどちらか一方を指すのに使用される。 リガンドが免疫グロブリンである場合、リガンドは任意の免疫グロブリン分子、例えばIgG、IgA、IgM、IgE、IgD、F(ab’)2、Fab、Fv、scFv、dAb、VHH、IgNAR、TCRおよびそれらの多価的な組み合わせからなる群から選択される免疫グロブリン分子でもよい。多価抗体には、例えば、二価の抗体および抗体フラグメント、二重特異性の抗体および抗体フラグメント、それらの三価バージョンならびにダイアボディ(diabody)などの専売の形態が含まれる。dAbおよびVHH抗体などの単一ドメイン抗体は、組み合わせて多価および/または多特異性分子を形成するのに特に適する。 リガンドが抗体の場合は、抗体分子は、VHドメインおよびVLドメインまたはそれらの同等物のうちの少なくとも一つを含む。 一実施形態では、TRIMポリペプチドは、TRIM5α、TRIM19、TRIM21およびTRIM28からなる群から選択される。その抗体結合特性によるとTRIM21が好ましいが、ポリペプチドまたはそのドメインが抗原そのものまたは抗原に対して特異的なリガンドに結合しているならば、抗体結合能力はもはや必要とされない。そのような場合には、TRIM21以外のTRIMポリペプチド由来のRINGドメインを同じ趣旨で使用することができる。好都合には、Bボックスドメインまたはコイルドコイルドメインなどの別のドメインを加えることができる。コイルドコイルドメインはTRIM21の二量体化に関与する。 好ましくは、本発明による化合物に関しては、RINGドメインは二コピー以上で存在する。TRIM21の二量体化は、そのコイルドコイルドメインを介して起こり、E3介在性ユビキチン連結を介するプロテアソームへのタンパク質のターゲティングを補助する。 一実施形態では、本発明の化合物は、PRYSPRY(B30.2)ドメインが抗原または抗原特異的リガンドに交換されている、実質的にインタクトなTRIMポリペプチドを含む。例えばこのドメインは、VHドメインおよびVLドメインのうちの少なくとも一つを含む抗体に交換することができる。 さらなる実施形態では、本発明の化合物は、TRIMドメインの代わりにまたはTRIMドメインに加えて、TRIM発現の誘導因子を含む。TRIM21発現は、インターフェロンによって上方制御されているため、TRIM発現の誘導因子は、好都合には、インターフェロンまたはインターフェロン誘導因子である。細菌多糖類およびポリI:Cなどのヌクレオシド類似体を含めた、様々なインターフェロン誘導因子が当技術分野で知られている。 インターフェロン誘導因子は、細胞内または細胞表面で作用することができる。インターフェロン誘導因子が細胞表面で作用する場合は、対象に投与される化合物の少なくとも一部が細胞表面に留まり、インターフェロン誘導因子受容体に結合する。好適な実施形態では、インターフェロン誘導因子は、不安定な連結、例えば生理的条件下で半減期が限られた連結によって化合物に結合することができる。例えば、半減期は、リガンドが病原体およびインターフェロン受容体を導くのに十分であるが、著しく長くはないであろう。 第二の態様では、本発明の第一の態様による化合物を対象に投与することを含む、病原性感染を治療する方法が提供される。 同様に、対象において免疫反応を誘導するための、本発明の第一の態様による化合物の使用が提供される。 第三の態様では、本発明は、対象において感染を治療する方法であって、対象に、前記感染を引き起こす病原体の抗原に対して特異的な抗体と、前記抗体に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドとを対象に同時投与することを含む方法を提供する。 同様に、感染の治療のための、対象に前記感染を引き起こす病原体の抗原に対して特異的な抗体ならびに前記抗体に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドの使用が提供される。 本発明者らは、ウイルス特異的抗体および野生型または改変したTRIM21で細胞を処理することによって、内在性のTRIM21がノックダウンされている細胞においてでさえウイルス感染力が阻害されることを示した。したがって、TRIM21の同時投与を用いて、感染性疾患の治療に使用される抗ウイルス療法を増強することができる。 第四の態様では、感染に罹患している対象においてそのような感染を治療する方法であって、対象に、病原体の抗原に間接的に結合するリガンドおよびRINGドメインを含む治療有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む方法が提供される。 同様に、対象における感染性疾患の治療のための、病原体の抗原に間接的に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドの使用が提供される。 好ましくは、TRIM21のPRYSPRYドメインおよびRINGドメインを含むポリペプチドは、TRIM21由来などのTRIMポリペプチドのさらなるドメインを含む。一実施形態では、ポリペプチドは、コイルドコイルドメインおよび/またはBボックスドメインを含む。一実施形態では、ポリペプチドはTRIM21、好ましくはヒトTRIM21である。 TRIM21が抗感染特性を有することはこれまで提唱されていない。しかし、本明細書で示すように、TRIM21は、IgGおよびIgMのFc受容体に非常に高い親和性で結合し、抗体に加えて任意の結合した抗原をプロテアソームに導く。したがって、外来性のTRIM21は、病原体に応答する内在性の抗体の効果を高める。 本発明者らの結果は、抗体が感染細胞のサイトゾル内部でウイルス中和を仲介する、未発見の細胞内免疫システムが存在することを明らかにする。この細胞内システムは、適応性免疫または先天性免疫のいずれかだけに伝統的に付随する特徴を兼ね備える。病原体のターゲティングは適応免疫によってもたらされ、一方、中和は細胞内受容体(TRIM21)および先天性の分解経路によって抗体の形としてもたらされる。TRIM21は他の抗体エフェクター機構と異なり、全身性であり、免疫監視機構に基づく。TRIM21はプロフェッショナル免疫細胞に限らず、たいていの細胞で発現しており、このことは、どの感染事象も中和の機会であることを意味する。宿主細胞内に免疫を封じ込めることは、ウイルスの伝播を抑制することにとって極めて重要である可能性がある。最後に、TRIM21はIgMとIgGの両方を利用する。このことは、TRIM21は感染の初期段階中の先天性免疫と適応免疫の両方と一緒に作用して、長期の防御をもたらすことを示唆する。 TRIM21は、過去100年間にわたる多くの抗体中和実験の一因となっている可能性がある。実際、本発明者らが、TRIM21はアデノウイルスの強力な抗体中和を仲介すると認めるように、他のウイルスの抗体中和が、侵入を阻止することによって引き起こされるのか、またはTRIM21依存的であるのかを再評価することは重要であろう。このことは、効果的なワクチンはTRIM21免疫を刺激する必要があり得るため、ワクチン設計において考慮すべき重要なことである可能性がある。本発明者らは、他のウイルスの抗体中和にTRIM21が関与することについての良い予測因子は、インターフェロンと抗体との間の相乗関係であろうことを提案する。実際、単純ヘルペスウイルス8、エンテロウイルス708およびシンドビスウイルス9に関して、インターフェロンと抗体との間の未解明の相乗作用が報告されている。常法的な組織培養で使用される子ウシ血清が潜在的な交差反応特異性の可能性のある抗体レパートリーを含むため、TRIM21はまた、抗体を添加しない実験におけるウイルス中和の一因となる可能性もある。 TRIM21/抗体の細胞内免疫反応の存在は、ウイルス感染におけるいくつかの未解明な観察を解明する助けとなる可能性がある。ウイルスを標的細胞にあらかじめ付着させておく場合でさえ、ポリオウイルス10と呼吸系発疹ウイルス11の両方の抗体中和が起こることが報告されている。また、ポリオウイルス12およびアデノウイルス13の中和を仲介するのには単一のIgGで十分であり、ライノウイルス14に関しては、わずか5〜6のIgG分子だけが必要とされることも観察されている。最後に、インタクトな抗体は、それがタンパク質分解されたフラグメントよりもはるかに、二価の抗原結合を維持するFab2よりずっと、有効であるという報告が数多くある。例えば、Fab2フラグメントは、黄熱病ウイルス15、HSV16およびインフルエンザ17の中和において、インタクトなIgGよりも有効でないことが示されており、このことは、効率的な中和に対するFcドメインのエフェクター機能を示唆する。TRIM21介在性分解によって、これら全ての現象が説明可能である。TRIM21が細胞内抗体中和を仲介することを示す図である。(A)アデノウイルスが感染したHeLa細胞の共焦点顕微鏡画像。抗体であらかじめ被覆され、二次のAlexa−fluor546(赤)で感染後に検出したアデノウイルスを細胞内部に見ることができる。内在性のTRIM21局在を緑で示し、DAPI染色した核を青で示す。これらのチャネルのマージは、抗体で被覆されたビリオンに対するTRIM21の局在を示す。画像はZ投影であり、スケールバーは10μmおよびズームボックスでは2μmである。(B)IFNα、TRIM21siRNA(KD)、siRNAコントロール(HeLa)またはIFNα&TRIM21siRNA(IFNα KD)で処理した細胞を、異なるポリクローナル抗体濃度において、GFPアデノウイルスで感染させた。GFP陽性細胞の割合を測定して感染レベルを決定し、各条件について、抗体なしのレベルに標準化した。アデノウイルス感染は、最高レベルのTRIM21を発現する細胞において2log減少する。(C)各条件におけるTRIM21タンパク質レベルのウエスタンブロット。(D)濃度を増大させるヒト血清IgGの存在下における、コクサッキーウイルスによる処理細胞の感染。IFNαおよび抗体は、相乗的に作用してウイルスを中和する。この効果は、TRIM21を特異的にノックダウンすることによって反転する。TRIM21が細胞型および抗体と無関係に感染を中和することを示す図である。(A)TRIM21の中和は、抗体存在下、siRNAの配列またはsiRNAであるかshRNAであるかとは無関係に、ノックダウンによって反転する。(B)TRIM21は三つの異なる細胞系においてアデノウイルス感染を中和する。中和はIFNαによって増強され、ノックダウン(KD)によって反転する。(C)TRIM21は、異なるポリクローナルまたは抗ヘキソンモノクローナルIgGを用いる場合、アデノウイルス感染を中和する。(D)侵入中和は、TRIM21介在性中和に比べてごくわずかである。抗体依存的なTRIM21のウイルス中和は、Fcドメインの存在が必要である。Fab2フラグメントは二価であり、侵入中和に対してインタクトなIgGと同じ能力を有するが、それにもかかわらずFab2フラグメントは、感染に限られた影響しか及ぼさない。このことは、IgG中和を反転させる、TRIM21のノックダウンによって確かめられる。(E)TRIM21は血清IgMと結合する。IgMのTRIM21への結合を蛍光異方性の変化として測定し、標準的な二次式(材料&方法)に適合させ、16.8μM±1.5μMの親和性を得た。(F)血清IgM抗体はまた、TRIM21に使用されてウイルスを中和することができる。TRIM21のノックダウン(KD)はこの効果を反転させ、IFNαはそれを増大させる。全てのパネルのエラーバーは、3回の実験から計算した。TRIM21が細胞型および抗体と無関係に感染を中和することを示す図である。(G)IgA抗体は、さらにTRIM21に使用されてウイルスを中和することができる。siRNA(siTRIM21)を用いるTRIM21のノックダウンはこの効果を反転させ、IFNαはそれを増大させる。コントロールsiRNA(siコントロール)は無影響である。TRIM21の中和機構を示す図である。(A)TRIM21(黒)、IgG(薄灰色)およびIgGとの複合体中のTRIM21(暗灰色)のSEC MALSクロマトグラム。連続トレースはRIシグナル(左側の軸)を表し、タンパク質濃度の指標である。短い横線は、各サンプリング間隔(1秒)での各ピーク内の計算質量(右側の軸)を表す。分析によって、TRIM21は107kDaの質量を有する二量体であり、IgGは154kDaの質量を有し、TRIM21:IgG複合体は遊離IgGおよび約280kDaの質量を有する1:1複合体に対応するピークをもたらすことが示される。(B&C)完全長TRIM21(左側)およびΔRING−ΔボックスTRIM21(右側)を用いる定常状態のIgGの蛍光滴定。滴定を標準的な二次式(材料&方法)に適合して、0.6±0.1nMという完全長TRIM21の抗体に対する親和性(B)およびΔRING−ΔボックスTRIM21については0.9±0.2nMの親和性(C)を得た。(D)TRIM21中和は、プロテアソーム阻害剤MG132によって反転させられるが、オートファジー阻害剤3−MAによっては反転させられない。エラーバーは3回の実験から計算した。(E)MG132の濃度とTRIM21中和の反転との間の直接相関。MG132は、抗体の存在下でのみ中和を反転する。(F)プロテアソーム分解、TRIM21および抗体は、ウイルス中和の同一経路において必要因子である。例えば、TRIM21のノックダウンは、MG132の性向を取り除く。TRIM21のE3ユビキチンリガーゼ機能はウイルス中和に必須であることを示す図である。(A)組換え完全長TRIM21はウイルスを中和するが、RINGおよびBボックスドメインを欠くTRIM21は中和しない。(B)TRIM21は活性なE3リガーゼであるが、RINGおよびBボックスドメインの欠損は、自己ユビキチン化を妨げる。(C)TRIM21は、ヘキソンまたはその結合抗体を感染中に直接的にユビキチン化しない(D)抗体で被覆されたアデノウイルスに感染したHeLa細胞を示す共焦点顕微鏡Z投影。ビリオンと共局在したTRIM21は、ユビキチンに対して陽性である。(E)感染後1〜6時間目のヘキソン、抗体およびTRIM21タンパク質レベルのウエスタンブロット。アデノウイルスのヘキソンタンパク質および抗体は、TRIM21依存的様式で迅速に分解される。MG132の添加は、部分的に分解をレスキューする。分解は、細胞のTRIM21プールに有意な影響を及ぼさない。抗体で被覆された細胞内のビーズはTRIM21を動員し、ユビキチン化されることを示す図である。ストレプトアビジン結合ラテックスビーズを抗ストレプトアビジン抗体で被覆し、細胞にトランスフェクトした。細胞内のビーズはTRIM21によって認識され、ユビキチンと共局在する。スケールバーは、10μmおよびズームボックスでは5μmを表す。 別途記載のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または均等ないかなる方法および材料も、本発明の実施または試験において使用することができる。そうした使用に適する方法、装置および材料をこれから記載する。本発明と組み合わせて使用する可能性のある、刊行物で報告されている方法論、試薬およびツールを記載および開示する目的で、本明細書で引用される全ての刊行物はその全体を参照により本明細書に組み込まれる。 特に指示がない限り、本発明の実施は、当業者に知られている化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝学、免疫学および薬理学の従来の方法を用いる。そのような手法は、文献で十分に説明される。例えば、Gennaro,A.R.編(1990)Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.;Hardman,J.G.、Limbird,L.E.およびGilman,A.G.編(2001)The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、McGraw−Hill Co.;Colowick,S.ら編、Methods In Enzymology、Academic Press,Inc.;Weir,D.M.およびBlackwell,C.C.編(1986)Handbook of Experimental Immunology、第I〜IV巻、Blackwell Scientific Publications;Maniatis,T.ら編(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第I〜III巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら編(1999)Short Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley&Sons;Reamら編(1998)Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course、Academic Press;Newton,C.R.およびGraham,A.編(1997)PCR(Introduction to Biotechniques Series)、第2版、Springer Verlagを参照されたい。 本発明において、投与は、投与される試薬、化合物または遺伝子構築物に応じて、細胞培養の標準的な手法によって行われる。例えば、細胞培養培地への添加によって、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入による細胞への導入によって、または他の手段によって投与することができる。本発明の方法が試験系としてヒト以外の哺乳動物を用いる場合は、哺乳動物は、トランスジェニックでもよく、内在性の細胞で必要な試薬を発現してもよい。 本発明において、抗原は、リガンドに認識され得、病原体に対して特異的なエピトープを有する分子である。典型的には、抗原は、ウイルスまたは細菌などの病原体の抗原決定基であり、抗体などのリガンドによる結合を生理的条件下で受ける。好ましい抗原は、既知の中和抗体または病原体に対して特異的なワクチンによって標的にされるエピトープを含む。 病原体は、対象に感染することができる生物、例えば細菌もしくは原生動物またはウイルスなどの任意の異物でもよい。好都合には、病原体はウイルスである。ウイルスはエンベロープ型でもよく、非エンベロープ型でもよい。一実施形態では、病原体は非エンベロープウイルスである。 直接的に抗原に結合するリガンドは、生理的条件下で特異的に抗原に結合することができるリガンドである。本明細書で使用する場合、用語「リガンド」は、特異的結合対のどちらか一方の部分を指すことができる。例えば、それは、抗体−抗原対の抗体または抗原を指すことができる。抗体は好ましいリガンドであり、例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、F(ab’)2、Fab、Fv、scFv、dAb、VHH、IgNAR、改変TCRおよびそれらの多価的な組み合わせを含む、当技術分野で知られているような完全な抗体でもよく、または抗体フラグメントでもよい。リガンドは、代替の非免疫グロブリンスキャフォールドに基づく結合分子、ペプチドアプタマー、核酸アプタマー、非ペプチド骨格を基礎とするポリペプチドループを含む構造化ポリペプチド、天然の受容体またはそれらのドメインでもよい。 間接的に抗原に結合するリガンドは、第二のリガンドを介して抗原に結合するリガンドである。例えば、それは、抗体に結合するリガンドである。このリガンドは、抗体の結合特異性に無関係な方式で抗体に結合する。例えば、このリガンドはFc領域と結合することができる。一実施形態では、このリガンドは、プロテインG、プロテインA、プロテインL、TRIM21のPRYSPRYドメイン、抗免疫グロブリン抗体および特異的に抗体を認識する、例えばFc領域中のペプチドを含む群から選択される。 TRIM21のPRYSPRYドメインは、PRYおよびSPRY領域からなり、それぞれ、配列番号1に記載のヒトTRIM21アミノ酸配列の286〜337および339〜465に位置する。 RINGドメインは、配列番号1に記載のヒトTRIM21アミノ酸配列のアミノ酸15から58間の、ヒトTRIM21のドメインである。 Bボックスドメインは、配列番号1に記載のヒトTRIM21アミノ酸配列のアミノ酸91から128間の、ヒトTRIM21のドメインである。 コイルドコイルドメインは、配列番号1に記載のヒトTRIM21アミノ酸配列のアミノ酸128から238間の、ヒトTRIM21のドメインである。 用語「免疫グロブリン」は、二つのβシートおよび通常保存されたジスルフィド結合を含む、抗体分子の免疫グロブリンフォールド特性を保持するポリペプチドファミリーを指す。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫システムにおける広範な役割(例えば抗体、T細胞受容体分子など)、細胞接着への関与(例えばICAM分子)および細胞内情報伝達(例えばPDGF受容体などの受容体分子)を含めた、インビボにおける細胞性および非細胞性の相互作用の多くの局面に関与している。本発明は、結合ドメインを有する全ての免疫グロブリンスーパーファミリー分子に適用することができる。好ましくは、本発明は抗体に関する。 生理的条件下で、抗原のターゲティングが結果として病原体の実質的に排他的なターゲティングになる場合は、抗原は病原体に特異的である。 免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変ドメインならびにT細胞受容体のαおよびβ鎖などの他のタンパク質中の同等物は、抗原結合特異性の決定に関与する。VHおよびVLドメインは、VHおよびVLdAbのように独立に抗原に結合することができる。VHおよびVLドメインへの言及には、合成であろうと天然起源であろうと、VHおよびVLドメインの改変バージョンが含まれる。例えば、天然起源のVH変異体には、ラクダ科動物のVHHドメインおよび軟骨魚類の重鎖免疫グロブリンのIgNARが含まれる。 TRIMポリペプチドは、タンパク質のトリパータイト(tripartite)モチーフ(TRIM)ファミリーのメンバーであり、このファミリーは、TRIM21(Ro52)を含めた70メンバーをヒトゲノム中に含む。TRIMタンパク質は、細胞の増殖、分化、発達、癌化およびアポトーシスを含めた多様な細胞プロセスに関与している。TRIMタンパク質はマルチドメインであり、そのように呼ばれる理由は、その保存されたN末端のRBCCドメイン、すなわちE3ユビキチンリガーゼ活性をコードするRINGフィンガー、オリゴマー化を仲介するBボックスおよびコイルドコイルドメインのためである。C末端のPRYSPRYまたはB30.2ドメインは、ターゲティングモジュールとして働くことにより、異なるTRIMポリペプチドの機能を通常決定する。Nisoleら、Nature Reviews Microbiology 3、799〜808(October 2005)を参照されたい。RINGドメインは、二つの亜鉛原子を配位するシステインおよびヒスチジン残基の規則的な配置によって定義され、多種多様なタンパク質に見出される。RINGドメインは、C−X2−C−X(9〜39)−C−X(1〜3)−H−X(2〜3)−(N/C/H)−X2−C−X(4〜48)C−X2−Cの構造を特徴とし、TRIMポリペプチド中のBボックスドメインに会合している。Freemont、Curr Biol.2000 Jan 27;10(2):R84〜7を参照されたい。 ドメインは、そのタンパク質の残りの部分に関係なく三次構造を保持する、フォールドされたタンパク質構造である。一般に、ドメインは、タンパク質の別々の機能特性に関与し、多くの場合、残りのタンパク質の機能および/またはドメインの機能を失うことなく、他のタンパク質に加える、移動するまたは移転することができる。TRIMポリペプチドのRING、Bボックス、コイルドコイルおよびPRYSPRYドメインは、それらの例である。抗体可変ドメインとは、抗体可変ドメインに特有の配列を含むフォールドされたポリペプチドドメインを意味する。したがって、それには、完全な抗体可変ドメインおよび改変可変ドメインが含まれ、例えば、それらの一つまたは複数のループが、抗体可変ドメインの特性がない配列またはN末端もしくはC末端伸長部が切り捨てられた、もしくはそれを含む抗体可変ドメイン、ならびに完全長ドメインの結合活性および特異性を少なくとも部分的には保持するフォールドされた可変ドメインフラグメントによって交換されている。 TRIM発現の誘導因子は、所望のTRIMポリペプチドの細胞内レベルを増大させる薬剤である。好ましくは、ポリペプチドはTRIM21である。I型インターフェロンはTRIM21発現の誘導因子である。 本明細書で言及する場合、同時投与は、同時に目的の部位で有効であるような、二種の薬剤の同時、同時分離または連続投与である。したがって抗体およびTRIM21ポリペプチドの同時投与においては、二種の薬剤は、細胞によって内在化される前に抗体がTRIM21ポリペプチドに結合するように投与される必要がある。したがって、抗体およびTRIM21ポリペプチドは投与前に混合することができ、またはそれらが同時に血液循環中に存在するように分離投与することができる。 抗体は、病原体が細胞に感染する前に病原体を標的にする。本明細書において、本発明者らは、これらの抗体は、感染の際に病原体に結合したままであり、全ての細胞内に存在する細胞内免疫反応を導くことを示す。本発明者らは、各細胞は細胞質のIgG受容体、すなわちTRIM21を有し、それは人体の他のどんなIgG受容体よりも高い親和性で抗体に結合することを実証する。これによって、TRIM21が細胞内の抗体結合ウイルスを迅速に動員し、E3ユビキチンリガーゼ活性を介するプロテアソームにおける分解の標的にすることが可能になる。生理的抗体濃度では、TRIM21はウイルス感染を完全に中和する。こうした発見によって、新奇な広域性免疫システムが示され、抗体に仲介される防御は細胞膜で終わるのではなく、細胞内で継続して感染に対する最後のとりでとなることが明らかにされる。 TRIM21のPRYSPRYドメインは抗体結合に関与し、この意味でTRIM21は、TRIMポリペプチドファミリーにおいて独特であるように思われる。しかし、プロテアソームターゲティングに関与するTRIMドメイン、すなわちRINGドメインはTRIM21に特異的ではなく、むしろTRIMファミリーを含めたタンパク質に一般的に見られる。 細胞におけるTRIM21発現の誘導は、インターフェロンに依存しており、これはウイルス機構による遅延および干渉を受ける。したがって本発明は、病原体が細胞によって内在化される場合、病原体に結合したリガンドが直ぐに病原体をプロテアソームに導き分解するような、RINGドメインに融合した抗原特異的リガンドを提供する。これによって、病原体感染から細胞が自力で回復することが実際上可能になる。1.リガンド 生理的条件下で病原体結合抗原に結合することができ、細胞による内在化が可能な任意のリガンドが本発明における使用に適する。自然免疫システムは、病原体に対するリガンドとして抗体を使用し、抗体または抗体フラグメントは、本発明における使用に理想的である。他の可能性のあるものには、他の受容体由来の結合ドメインならびに加工された(engineered)ペプチドおよび核酸が含まれる。1a.抗体 抗原または病原体特異的抗体、抗原または病原体結合抗体および抗原または病原体に対して特異的な抗体に対する本明細書の言及は同一範囲に含まれ、病原体に存在する抗原に特異的な様式で結合し、血液循環または組織中に存在する他の分子と実質的に交差反応しない、抗体または抗体に由来する結合フラグメントを指す。 本明細書で使用する「抗体」には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、組換え、キメラ、相補性決定領域(CDR)グラフト化、単鎖、二重特異性のFabフラグメントおよびFab発現ライブラリーによって産生されるフラグメントが含まれる。そのようなフラグメントには、所望の抗原に対するその結合活性を保持する全抗体フラグメント、Fv、F(ab’)、F(ab’)2フラグメント、およびF(v)またはVH抗体フラグメントならびに抗体の抗原結合部位を含む融合タンパク質および他の合成タンパク質が含まれる。さらに、より詳細に以下に記載するように、それらの抗体およびフラグメントはヒト抗体でもよくヒト化抗体でもよい。 抗体およびフラグメントは、抗体変異体およびそれらのフラグメントも包含する。変異体には、抗原特異的抗体またはそのフラグメントと同じまたは実質的に同じ親和性および特異性のエピトープ結合を有する、一種または複数のアミノ酸配列の置換、欠損、および/または付加を含むペプチドならびにポリペプチドが含まれる。 アミノ酸残基の欠損、挿入または置換は、サイレント変化を引き起こし、機能的に等価な物質となる可能性がある。残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて、計画的なアミノ酸置換を行うことができる。例えば、負に荷電したアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、正に荷電したアミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ、同様の親水性値を持つ非荷電の極性頭部基を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。 例えば以下の表に従って、保存的置換を行うことができる。第二カラムの同じブロック内のアミノ酸および好ましくは第三カラムの同じラインにあるアミノ酸は、互いに置換することができる。 相同的置換(本明細書では、置換(substitution)と交換(replacement)の両方とも既存のアミノ酸残基を代替の残基と入れ替えることを意味するのに使用される)、すなわち、塩基性に対して塩基性、酸性に対して酸性、極性に対して極性などの同等置換が起こる可能性がある。非相同的置換、すなわち、あるクラスの残基から別のものへ、またはオルニチン(以後本明細書ではZと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以後本明細書ではBと称する)、ノルロイシンオルニチン(以後本明細書ではOと称する)、ピリイルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシンなどの非天然アミノ酸の含有物を代わりに含む置換も起こる可能性がある。 したがって、変異体には、抗原特異的抗体およびそれらのフラグメントへの一種または複数のアミノ酸配列の置換、欠損および/または付加を含むペプチドならびにポリペプチドが含まれてよく、この場合、そのような置換、欠損および/または付加がエピトープ結合の親和性および特異性を実質的に変化させない。抗体またはそのフラグメントの変異体は、天然起源の軽鎖および/または重鎖のアミノ酸配列中に変化を有してもよく、または組換えDNA技術を用いて天然配列をインビトロにおいて改変することによって導入される。天然起源の変異体には、外来抗原に応答した抗体産生中に、対応する生殖細胞のヌクレオチド配列においてインビボで発生する、「体細胞」変異体が含まれる。 抗体および結合フラグメントの変異体は、突然変異誘発の手法によって調製することもできる。例えば、アミノ酸変化は、抗体コード領域全体にわたってランダムに導入することができ、得られた変異体は、標的抗原に対する結合親和性または別の特性でスクリーニングすることができる。あるいは、アミノ酸変化は、軽鎖および/もしくは重鎖のCDR中ならびに/またはフレームワーク領域中などの抗体の選択された領域に導入することができ、得られた抗体は、標的抗原に対する結合またはいくつかの他の活性でスクリーニングすることができる。アミノ酸変化は、所定のCDR内の単一アミノ酸の差異から多数のアミノ酸置換までの、CDR中の一種または複数のアミノ酸置換を包含する。アミノ酸挿入によって作製されて、CDRの大きさが増大した変異体も包含される。 抗原結合抗体およびそのフラグメントは、ヒト化抗体またはヒトの改変抗体でもよい。本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」またはその抗原結合フラグメントは、非ヒト抗体由来の抗原結合部位の一部ならびにヒト抗体のフレームワーク領域および/または定常領域の一部を含む組換えポリペプチドである。ヒトの改変抗体または抗体フラグメントは、ヒトにおいて、改変抗体の検知可能などんな免疫原性も低減または排除するために、特異的な位置でアミノ酸を改変(例えば欠損、挿入または置換)することによって改変された、非ヒト(例えばマウス)抗体である。 ヒト化抗体には、キメラ抗体およびCDRグラフト化抗体が含まれる。キメラ抗体は、ヒトの定常領域に連結された非ヒト抗体の可変領域を含む抗体である。したがって、キメラ抗体では、可変領域は主に非ヒトであり、定常領域はヒトである。キメラ抗体およびその作製方法は、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6841〜6855(1984)に記載されている。それらは、マウスモノクローナル抗体よりも免疫原性が低い可能性があるが、キメラ抗体の投与は、抗体の非ヒト部分に対するヒト免疫反応(HAMA)と関連付けられてきた。 CDRグラフト化抗体は、ヒト「レシピエント」抗体由来のフレームワーク領域に連結された、非ヒト「ドナー」抗体由来のCDRを含む抗体である。ヒト化抗体を作製するのに使用することができる方法はまた、例えば、US5,721,367および6,180,377に記載されている。 「ベニア化(Veneered)抗体」は、その免疫原性を低減またはその機能を増強するために、特定の溶媒露出アミノ酸残基を交換するように改変された非ヒトまたはヒト化(例えば、キメラまたはCDRグラフト化抗体)抗体である。キメラ抗体のべニア化(Veneering)は、キメラ抗体の非ヒトフレームワーク領域中の溶媒露出残基を特定すること、およびそれらの少なくとも一つをヒトフレームワーク領域の対応する表面残基と置換することを含むことができる。ベニア化は、任意の適切な改変技術によって達成することができる。 抗体、ヒト化抗体、ヒト改変抗体およびそれらの調製方法に関するさらなる詳細は、Antibody Engineering、Springer、New York、NY、2001に見出すことができる。ヒト化またはヒト改変抗体の例は、IgG、IgM、IgE、IgAおよびIgD抗体である。抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)のものまたはアイソタイプでよく、カッパまたはラムダ軽鎖を含むことができる。例えば、ヒト抗体は、IgG重鎖またはアイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4の少なくとも一つなどの定義されたフラグメントを含むことができる。さらなる例として、抗体またはそのフラグメントは、IgG1重鎖およびカッパまたはラムダ軽鎖を含むことができる。 抗原特異的抗体およびそのフラグメントはヒト抗体でもよく、例えば、抗原と結合し、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン核酸配列の天然起源の体細胞変異体でもよい核酸配列にコードされる抗体ならびにそれらのフラグメント、合成変異体、誘導体および融合体などである。そのような抗体は、哺乳動物の染色体中において天然免疫グロブリンがヒトV遺伝子に交換されている(トランスジェニックマウスなどの)トランスジェニック哺乳動物の使用を介するなど、当技術分野で知られている任意の方法によって産生することができる。 国際公開第98/24893号および国際公開第91/00906号に記載のように、所望の抗原を標的にするためのヒト抗体は、内在性の免疫グロブリン産生がなく、ヒト免疫グロブリン座を含むように改変されたトランスジェニック動物を用いて産生することもできる。 ヒト抗体は、抗体を提示したライブラリーのインビトロスクリーニングを介して作出することもできる(J.Mol.Biol.(1991)227:381)。様々な抗体を含むファージディスプレイライブラリーが述べられてきており、容易に調製することができる。ライブラリーは、ヒトのFab、FvおよびscFvフラグメントなどの、適切な標的に対してスクリーニング可能な、多様なヒト抗体配列を含むことができる。ファージディスプレイライブラリーは、所望の抗原に選択的結合が可能な薬剤を特定するためにスクリーニング可能な、抗体以外のペプチドまたはタンパク質を含むことができる。 ファージディスプレイ方法は、糸状バクテリオファージの表面上に抗体レパートリーを提示すること、およびそれに続いて、選択した抗原への抗体の結合によってファージを選抜することを介して、免疫選択を模倣する。その一つの方法が国際公開第99/10494号に記載されている。抗原特異的抗体は、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製したヒトVLおよびVHのcDNAを用いて調製した組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーの、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって単離することができる。そのようなライブラリーの調製およびスクリーニングの方法論は、当技術分野で既知である。ファージディスプレイライブラリーを作出するための市販品として入手可能なキットが存在する。 本明細書で使用する場合、用語「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域など、インタクトな完全長抗体の一部分を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);二重特異性、三重特異性および多特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies))などの多特異性抗体フラグメント;結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;ミニボディ(minibodies);キレート組換え抗体;トリボディ(tribodies)またはバイボディ(bibodies);イントラボディ;ナノボディ;小モジュラー免疫薬剤(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)、VHH含有抗体;ならびに抗体フラグメントから形成される任意の他のポリペプチドが挙げられる。 抗原結合抗体およびフラグメントは、所望の抗原に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)を包含する。scFvは、抗体軽鎖可変領域(VL)に作動可能に連結させた抗体重鎖可変領域(VH)を含み、ここでは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、一緒にまたは独立して抗原に結合する結合部位を形成する。scFvは、アミノ末端にVH領域を、カルボキシ末端にVL領域を含むことができる。あるいは、scFvは、アミノ末端にVL領域を、カルボキシ末端にVH領域を含むことができる。さらに、Fvフラグメントの二つのドメイン、すなわちVLおよびVHは別々の遺伝子にコードされるが、組換え方法を用いて、それらがVL領域とVH領域が対になって一価分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFvとして知られる)として作られることを可能にする合成リンカーによって、それらを結合することができる。scFvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の間にポリペプチドリンカーを場合によりさらに含むことができる。 抗原結合抗体およびそのフラグメントは、イムノアドヘシンも包含する。一つまたは複数のCDRを共有結合的にまたは非共有結合的のいずれかで分子中に組み入れ、これをイムノアドヘシンにすることができる。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部として一以上のCDRを組み入れることができ、一以上のCDRを別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結することができ、または一以上のCDRを非共有結合的に組み入れることができる。CDRは、イムノアドヘシンが特異的に所望の抗原に結合するのを可能にする。 抗原結合抗体およびそのフラグメントは、(タンパク質性または炭水化物性スキャフォールドなどの)有機性または分子性スキャフォールド上に構築された一つまたは複数の抗原結合部分を含む抗体模倣物も包含する。通常タンパク質スキャフォールドと称される、比較的明確な三次元構造を有するタンパク質は、抗体模倣物の設計のための試薬として使用することができる。これらのスキャフォールドは、典型的には、特異的またはランダムな配列変異を受け入れやすい一つまたは複数の領域を含み、そうした配列ランダム化は、所望の産物を選抜することができるタンパク質ライブラリーを作製するために行われることが多い。例えば、抗体模倣物は、ループそれぞれに挿入され、親抗体に結合するリガンドに対して選択的結合活性を示す、親抗体とは異なるCDRを含む二つ以上の溶媒露出ループを有するスキャフォールドを含有する免疫グロブリン様ドメインを持つキメラの非免疫グロブリン結合ポリペプチドを含むことができる。非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールドは、新規な結合特性を有するタンパク質を得るために提唱された。 抗原特異的抗体またはそれらの抗体フラグメントは、典型的には、例えば約15nM以下、10nM以下、約5nM以下、約1nM以下、約500pM以下、約250pM以下、約100pM以下、約50pM以下、または約25pM以下、約10pM以下、約5pM以下、約3pM以下約1pM以下、約0.75pM以下、または約0.5pM以下の抗原に対する平衡結合解離定数(KD)を有するなど、(例えばBIAcoreで決定されるような)高い親和性で所望の抗原に結合する。1b ペプチドリガンド ペプチドアプタマーなどのペプチドは、スクリーニング手法によってペプチドライブラリーから選抜することができる。実際には、短鎖核酸配列を真核細胞で発現するのに適した任意のベクターシステムを用いて、ペプチドライブラリーを発現させることができる。好ましい実施形態では、高力価のレトロウイルスパッケージングシステムを用いて、ペプチドアプタマーライブラリーを作製することができる。マウスまたはヒトの細胞に感染する高力価のレトロウイルスを産生するのに使用可能な、様々なベクターならびに広宿主性および狭宿主性のパッケージング細胞系が存在する。これらの送達および発現システムは、任意の哺乳類細胞型を効率的に感染するのに容易に適合させることができ、これらを用いて、一つの実験で数千万の細胞を感染することができる。少数の、例えば5、6、7、8、9、10またはそれ以上であるが、好ましくは100未満、より好ましくは50未満、および最も好ましくは20未満のアミノ酸残基のランダムな組み合わせをコードする核酸配列を含むアプタマーライブラリーを、遊離体(free entities)として、または所定のスクリーンの標的に依存して、(例えばペプチドアプタマーの発現能、細胞内または細胞内局在、安定性、分泌能、単離能(isolatablitiy)または検出能の促進のために特異的タンパク質スキャフォールドとして働くことができるタンパク質などの異種タンパク質への融合物として、レトロウイルス感染細胞で発現させることができる。例えば、7アミノ酸から構成される場合のランダムペプチドアプタマーライブラリーは、重要および特異的な構造情報を表すのに十分であり、107以上の可能な組み合わせが試験可能な細胞数の範囲内である、多数の分子をコードする。 好ましくは、アプタマーは標的抗原の配列情報を用いて作出される。 アプタマーの特定において、例えば、アプタマーライブラリーのメンバーを発現する遺伝子構築物で細胞集団を感染させ、アプタマーの抗原結合能を、例えばBIAcoreプラットフォームで評価する。一ラウンド目のスクリーニングで選抜したアプタマーのコード配列をPCRで増幅し、再クローニングして、無感作細胞に再導入することができる。次に、最初のプール内の個々のアプタマーを確認するために、同じまたは異なるシステムを用いる選抜を繰り返すことができる。後の選抜ラウンドで特定した細胞内のアプタマーコード配列は、繰り返して増幅およびサブクローニングすることができ、次に、活性アプタマーの配列は、標準的な手法を用いて、DNAシークエンシングにより決定することができる。1c 構造化ポリペプチド 合成分子構造に結合するポリペプチドは、当技術分野で既知である(Kemp,D.S.およびMcNamara,P.E.、J.Org.Chem、1985;Timmerman,P.ら、ChemBioChem、2005)。Meloenおよび共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび関連分子を使用し、合成スキャフォールド上に多数のペプチドループを迅速かつ定量的に環化して、タンパク質表面を構造的に模倣した(Timmerman,P.ら、ChemBioChem、2005)。候補薬物化合物の作出方法であって、前記化合物が、例えばトリス(ブロモメチル)ベンゼンのような分子スキャフォールドにシステイン含有ポリペプチドを連結することによって作出される方法は、国際公開第2004/077062号および国際公開第2006/078161号に開示されている。 国際公開第2004/077062号は、候補薬物化合物の選択方法を開示している。特にこの文献は、第一および第二の反応基を含む様々なスキャフォールド分子、ならびに前記スキャフォールドを別の分子に接触させて、カップリング反応においてスキャフォールドと別の分子の間に少なくとも二つの連結を形成することを開示している。 国際公開第2006/078161号は、結合化合物、免疫原性化合物およびペプチド模倣物を開示している。この文献は、既存のタンパク質から得られるペプチドの様々なコレクションの人工合成を開示している。次に、こうしたペプチドを、コンビナトリアルライブラリーを作製するために導入された、いくつかのアミノ酸変化を有する定常合成ペプチドと結合させる。様々なアミノ酸変化を特徴とする別々のペプチドに化学的連結を介してこの多様性を導入することによって、所望の結合活性を発見する機会が増大する。この文献の図7は、様々なループペプチド構築物の合成の概略図を示す。 国際公開第2009098450号には、合成分子構造に結合するペプチドを選抜するための、ファージディスプレイなどの生物学的選抜手法の使用が記載されている。この手段では、構造的に制約されたペプチド(structurally constrained peptide)がファージ表面上に提示されるように、ペプチドをファージ上に発現し、次に、適切な条件下で分子スキャフォールドと反応させる。 そのような構造化ペプチドは、任意の所望の抗原に結合するように設計することができ、抗原リガンド複合体を細胞内部のプロテアソームに導くためにRINGドメインに連結することができる。1d 間接的リガンド 間接的リガンドは、特異的に抗原を認識する第二のリガンドを介して抗原に結合する。例えば、第二のリガンドは抗原に対して特異的な抗体である。免疫グロブリンに対して特異的であるが、標的免疫グロブリンの結合特異性に依存していない形で免疫グロブリンに結合する、上記の第1a〜1c節に記載したリガンドを調製することができる。例えば、抗Fc抗体、ペプチドおよび構造化ペプチドは、調製することができる。プロテインA、プロテインGおよびプロテインLなどの抗体結合ペプチドは使用することができる。2.RINGドメイン トリパータイトモチーフ(TRIM)タンパク質は、RINGフィンガードメイン、一つまたは二つのBボックスドメイン、コイルドコイルドメインおよび可変的なC末端を特徴とする保存されたドメイン構造(RBCCとして知られる)に基づく、タンパク質ファミリーを構成する。 TRIMタンパク質は、分化、アポトーシスおよび免疫を含めた様々な細胞機能に関係する。いくつかのTRIMタンパク質は、抗ウイルス活性を提示することが発見されており、または先天性免疫に関わる過程に関与していることが知られている。Carthagenaら、PLoS One(2009)4、3:e4894によって言及されたように、TRIM5aは、霊長類細胞において、N−MLVおよびHIV−1を含めた多様なレトロウイルスの種特異的な侵入後制限に関与し、一方TRIM1/MID2はまた、N−MLV感染に特異的に作用する抗レトロウイルス活性を提示する。Staf50としても知られるTRIM22は、HIV−1複製を阻害することが示されているが、どのステップで阻止が起こるかはまだ不明である。TRIM28は、マウス胚細胞においてMLVのLTR駆動性転写を制限する。さらに、TRIM19/PMLによって、広範囲のRNAウイルスおよびDNAウイルスが阻害されることが報告されている。今までに行われた最も大規模なスクリーンによって、TRIM11、TRIM31およびTRIM62を含めたいくつかのTRIMタンパク質は、MLVまたはHIV−1の複製の様々な段階を妨げることができることが示された。最後に、TRIM25は、そのE3ユビキチンリガーゼ活性を介して、RIGI介在性抗ウイルス活性を制御することが示された。 本明細書に記載のTRIM21のRINGフィンガーは、結合した抗体/抗原複合体のプロテアソームへの誘導に関与する。これは、RINGドメインのE3ユビキチンリガーゼ活性によるものである。したがって、好都合には、本発明で使用するRINGドメインはE3リガーゼ活性を有する。 RINGドメインの異種性のTRIMドメインとの交換、すなわちIMタンパク質間においてそれらを交換することは当技術分野で既知である。Liら、J.Virol.(2006)6198〜6206を参照されたい。 RINGドメインは、Freemontら、Cell.1991 Feb 8;64(3):483〜4によって説明されている。このドメインは、E3リガーゼとして機能すると考えられている。Meroni&Roux、BioEssays 27、11:1147〜1157(2005)を参照されたい。RINGドメインは、RINGフィンガー(Really Interesting New Gene)ドメインスーパーファミリー、すなわち二つの亜鉛原子が結合する、40から60残基のZnフィンガーの特殊型のメンバーであり、「交差ブレース(cross−brace)」モチーフC−X2−C−X(9〜39)−C−X(1〜3)−H−X(2〜3)−(N/C/H)−X2−C−X(4〜48)C−X2−Cによって定義される。ファミリー内に二つの変異型、すなわちC3HC4型とC3H2C3型(RING−H2フィンガー)があり、それらは異なるシステイン/ヒスチジンパターンを有する。 好ましいRINGドメインは、TRIMタンパク質由来であり、TRIMタンパク質の一部でもよい。一実施形態では、本発明は、その特異性を与えるB30.2ドメインが抗原特異的結合ドメインと交換されたTRIMポリペプチドを提供する。少なくともPRYSPRY(B30.2)ドメインは交換され、RINGドメインのE3リガーゼ機能が保存される限り、他のドメインは交換されてもよいし取り除かれてもよい。3.TRIM発現の誘導 TRIMポリペプチドのRINGドメインを所望の抗原に連結する代わりに、またはそれに加えて、細胞内の内在性のTRIM21の発現を刺激することが可能である。TRIM21は高い親和性で抗体に結合し、抗体および任意の結合抗原をプロテアソームに導く。 TRIM21は抗体のFc部分に結合するため、TRIM発現の誘導因子にリガンドを結合させることによって内在性のTRIM21発現が刺激される場合は、リガンドは、TRIM21のPRYSPRYドメインに対する結合部位を含む。好ましくは、それは抗体Fc領域を含み、一実施形態ではそれは抗体である。例えば、抗体はIgGまたはIgM抗体でもよい。 TRIM21の発現はインターフェロンで誘導される。したがって、一実施形態では、TRIM発現の誘導因子はインターフェロンまたはインターフェロン誘導因子である。 インターフェロンは、好ましくはI型インターフェロン、例えば、αインターフェロンまたはβインターフェロンである。 インターフェロンは、いくつかの治療適用において当技術分野で知られているが、特にHBVおよびHCVの療法で知られている。ペグインターフェロン(ペグ化されたインターフェロン)およびアルブフェロン(albuferon)(HSAに結合させたインターフェロン)などのインターフェロン誘導体は、ヌクレオチド類似体などの抗ウイルス剤と同時投与される。 インターフェロン誘導因子は、当技術分野で既知である。一般に、多くのワクチンアジュバントはインターフェロン誘導因子として働く。これらには、ウイルス性抗原、LPSなどの細菌性抗原、ポリI:C(例えばAmpligen(登録商標))などの合成ポリマーを含めた、ワクチンアジュバントとして働くことが長年知られている物質が含まれる。ごく最近、Toll様受容体(TLR)のアゴニストがインターフェロンの有効な誘導因子であることが示された。例えば、いくつかのインターフェロン誘導因子は、米国特許出願公開第2010120799号、米国特許出願公開第2010048520号、米国特許出願公開第2010018134号、米国特許出願公開第2010018132号、米国特許出願公開第2010018131号、米国特許出願公開第2010018130号、米国特許出願公開第2010003280号から既知である。さらに、例えばMusmucaら、J.Chem.Inf.Model.、2009、49(7)、1777〜1786ページに記載の小分子インターフェロン誘導因子が開発中である。4.抗体コンジュゲート 薬物または他の小分子医薬品を抗体フラグメントに結合させる方法は周知である。様々なペプチド結合化学が当技術分野で確立されており、それらには、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸;スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸;4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−[α]−(2−ピリジルジチオ)トルエン;スルホスクシンイミジル−6−[[α]−メチル−[α]−(ピリジルジチオール)−トルアミド]ヘキサノアート;N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート(proprionate);スクシンイミジル−6−[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド(proprionamido)]ヘキサノアート;スルホスクシンイミジル−6−[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノアート;3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸(dichlorotriazinic acid)、S−(2−チオピリジル)−L−システインなどの二官能性の化学的リンカーが含まれる。さらなる二官能性の架橋分子が、米国特許第5,349,066号、第5,618,528号、第4,569,789号、第4,952,394号および第5,137,877号ならびにCorsonら、ACS Cemical Biology 3、11、677〜692ページ、2008に開示されている。 RINGドメインおよび抗体を含めたポリペプチドリガンドは、一つの(または両方の)ポリペプチドに官能基または反応基を介して結合させることができる。これらは、ポリペプチドポリマー中に見出される特定のアミノ酸の側鎖から典型的には形成される。そのような反応基は、システイン側鎖、リジン側鎖またはN末端アミン基もしくは任意の他の適切な反応基でよい。 反応基は、結合することになるリガンドに対して共有結合を形成することができる。官能基は、官能基を形成する天然または非天然のいずれかのアミノ酸内の特定の原子群である。 天然アミノ酸の適切な官能基は、システインのチオール基、リジンのアミノ基、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジニウム基、チロシンのフェノール基またはセリンの水酸基である。非天然アミノ酸は、アジド、ケト−カルボニル、アルキン、ビニルまたはハロゲン化アリール基を含めた、広範囲の官能基を提供することができる。ポリペプチド末端のアミノ基およびカルボキシル基も、所望のリガンドに対して共有結合を形成する官能基としての役目をすることができる。 チオール介在性結合に代わるものを使用して、共有結合相互作用を介してポリペプチドにリガンドを結合することができる。こうした方法は、相補的官能基を有する組み合わせ低分子中で必要な化学官能基を持つ非天然アミノ酸を有するポリペプチドを生成することによって、または分子が選抜/単離フェーズ後に作製される予定の場合は、化学的にまたは組換えで合成されたポリペプチド中に非天然アミノ酸を組み込むことによって、チオール介在性の方法の代わりに(またはそれと組み合わせて)使用することができる。 ファージ上のペプチドおよびタンパク質に組み込まれた非天然アミノ酸は、1)ヒドラジン、ヒドロキシルアミンおよびそれらの誘導体と特異的に反応することができる(パラまたはメタアセチル−フェニルアラニンに見られるような)ケトン官能基(Addition of the keto functional group to the genetic code of Escherichia coli.Wang L、Zhang Z、Brock A、Schultz PG.Proc Natl Acad Sci USA.2003 Jan 7;100(1):56〜61;Bioorg Med Chem Lett.2006 Oct 15;16(20):5356〜9.Genetic introduction of a diketone−containing amino acid into proteins.Zeng H、Xie J、Schultz PG)、2)銅触媒性「クリックケミストリー」または歪み促進(3+2)環状付加を介してアルキンと反応して、対応するトリアゾールを形成することができる(p−アジド−フェニルアラニンに見られるような)アジド(Addition of p−azido−L−phenylalanine to the genetic code of Escherichia coli.Chin JW、Santoro SW、Martin AB、King DS、Wang L、Schultz PG.J Am Chem Soc.2002 Aug 7;124(31):9026〜7;Adding amino acids with novel reactivity to the genetic code of Saccharomyces cerevisiae.Deiters A、Cropp TA、Mukherji M、Chin JW、Anderson JC、Schultz PG.J Am Chem Soc.2003 Oct 1;125(39):11782〜3)、またはシュタウディンガーライゲーションを介してアリールホスフィンと反応して、対応するアミドを形成することができるアジド(Selective Staudinger modification of proteins containing p−azidophenylalanine.Tsao ML、Tian F、Schultz PG.Chembiochem.2005Dec;6(12):2147〜9)、4)アジドと反応して、対応するトリアゾールを形成することができるアルキン(In vivo incorporation of an alkyne into proteins in Escherichia coli.Deiters A、Schultz PG.Bioorg Med Chem Lett.2005 Mar 1;15(5):1521〜4)、5)一つより多くの適切に間隔のあいた水酸基を含む化合物と特異的に反応することができるまたはハロゲン化化合物とパラジウム介在性カップリングを受けることができるボロン酸(ボロナート)(Angew Chem Int Ed Engl.2008;47(43):8220〜3.A genetically encoded boronate−containing amino acid.、Brustad E、Bushey ML、Lee JW、Groff D、Liu W、Schultz PG)、6)特異的に金属イオンを配位させることができる、ビピリジルを有するものを含めた金属キレート化アミノ酸(Angew Chem Int Ed Engl.2007;46(48):9239〜42.A genetically encoded bidentate,metal−binding amino acid.Xie J、Liu W、Schultz PG)を含むことができる。 非天然アミノ酸は、1)コドンに対応して非天然アミノ酸の組み込みを導く直交アミノアシルtRNA合成酵素およびtRNA、2)非天然アミノ酸を組み込む部位に選択されたコドンを含むように改変されたファージDNAまたはファージミドプラスミド(Proc Natl Acad Sci USA.2008 Nov 18;105(46):17688〜93.Protein evolution with an expanded genetic code.Liu CC、Mack AV、Tsao ML、Mills JH、Lee HS、Choe H、Farzan M、Schultz PG、Smider VV;A phage display system with unnatural amino acids.Tian F、Tsao ML、Schultz PG.J Am Chem Soc.2004 Dec 15;126(49):15962〜3)を含むプラスミドまたはプラスミドの組み合わせでE.coliを形質転換することによって、タンパク質およびペプチド中に組み込むことができる。直交アミノアシルtRNA合成酵素およびtRNAは、Methancoccus janaschiiのチロシル対または合成酵素(Addition of a photocrosslinking amino acid to the genetic code of Escherichiacoli.Chin JW、Martin AB、King DS、Wang L、Schultz PG.Proc Natl Acad Sci USA.2002 Aug 20;99(17):11020〜4)およびピロリシンを自然に組み込むtRNA対(Multistep engineering of pyrrolysyl−tRNA synthetase to genetically encode N(epsilon)−(o−azidobenzyloxycarbonyl)lysine for site−specific protein modification.Yanagisawa T、Ishii R、Fukunaga R、Kobayashi T、Sakamoto K、Yokoyama S.Chem Biol.2008 Nov 24;15(11):1187〜97;Genetically encoding N(epsilon)−acetyllysine in recombinant proteins.Neumann H、Peak−Chew SY、Chin JW.Nat Chem Biol.2008 Apr;4(4):232〜4.Epub2008Feb17)に由来してもよい。組み込みのためのコドンはアンバーコドン(UAG)、別の終止コドン(UGAまたはUAA)でもよく、あるいは4塩基コドンでもよい。アミノアシルtRNA合成酵素およびtRNAは、pBK系ベクター、pSUP(Efficient incorporation of unnatural amino acids into proteins in Escherichia coli.Ryu Y、Schultz PG.Nat Methods.2006 Apr;3(4):263〜5)ベクターおよびpDULEベクター(Nat Methods.2005 May;2(5):377〜84.Photo−cross−linking interacting proteins with a genetically encoded benzophenone.Farrell IS、Toroney R、Hazen JL、Mehl RA、Chin JW)を含む既存のベクターから産生することができる。使用するE.coli株は、(一般にtraオペロンを介して)F’線毛を発現するものである。アンバーサプレッションを用いる場合は、E.coli株は、それ自体の活性アンバーサプレッサーtRNA遺伝子を含まないものである。アミノ酸は、好ましくは最終濃度が1mM以上で増殖培地に添加することになる。アミノ酸組み込みの効率は、直交リボソーム結合部位を有する発現構築物を用いて、リボ−Xを有する遺伝子を翻訳させることによって高めることができる(Evolved orthogonal ribosomes enhance the efficiency of synthetic genetic code expansion.Wang K、Neumann H、Peak−Chew SY、Chin JW.Nat Biotechnol.2007 Jul;25(7):770〜7)。これによって、リガンドに対する多数の結合部位をもたらす非天然アミノ酸の効率的な多重部位組み込みが可能になり得る。 上記のような方法は、抗体および非ペプチドリガンドを含めた他のリガンドにRINGドメインを結合させるのに有用である。そのような方法はまた、小分子インターフェロン誘導因子およびTRIM21発現の他の誘導因子を結合させるのにも有用である。 薬物および他の化合物に抗体を結合させる手法はまた、Carter&Senter、Cancer Journal:May/June 2008−第14巻−第3号−154〜169ページ;DucryおよびStump、Bioconjugate Chem.、2010、21(1)、5〜13ページに記載されている。 あるいは、二重特異性抗体を用いてもよい。例えば、二重特異性ドメイン抗体は当技術分野で既知であり、所望の抗原およびRINGドメインまたはRINGドメイン含有ポリペプチドの両方をターゲティングするのに有用である。 血清中の抗体コンジュゲートの半減期はいくつかの要因に依存するが、小さな抗体フラグメントほど血液循環からすばやく除去される傾向にある。したがって、より小さな構築物、例えばドメイン抗体およびRINGドメインを含む構築物は、好都合には、血清半減期を増大させるポリペプチドに連結される。例えば、それらはHSAに連結することができる。好ましくは、HSAへの結合は不安定なものであり、例えば、その結合は、細胞に結合した時に構築物がHSAから遊離され、HSAなしで内在化されるような限られた半減期を有する。有用な手段は、リガンドもまたHSAに結合し、血液循環中でそれを維持するように、多特異性リガンド構築物を使用することである。HSAに対するリガンドの親和性は、リガンドが細胞によって適切に内在化され得るように適合させることができる。 5.TRIM21と抗体の同時投与 治療用抗体は、当技術分野で周知である。TRIM21は、IgGおよびIgM抗体のFc部分に結合し、対象へのそれらの同時投与は、細胞が病原体を破壊するのを促進するのに有効である。 表1は、病原性感染の治療に使用可能な既存の抗体薬物を示す。TRIM21の同時投与は、そのような薬物を伴った治療に適応される。 抗体薬物と同時投与されるポリペプチドは、好ましくはTRIM21のPRYSPRYドメインおよびE3リガーゼとして働くことができるRINGドメインを含む。しかし、抗体の標的特異性に無関係な様式で免疫グロブリンに結合するプロテインA、プロテインGもしくはプロテインLまたは抗Fcペプチドなどの、他の免疫グロブリン特異的リガンドを用いてもよい。 好ましくは、ポリペプチドはまた、コイルドコイルドメインおよび/またはBボックスドメインも含む。好ましい実施形態では、ポリペプチドは実質的に完全なTRIM21ポリペプチドである。 TRIM21は、好ましくは配列番号1に記載のヒトTRIM21である。Tanaka,M.ら、Histochem. Cell Biol.133(3)、273〜284(2010)を参照されたい。 本発明は、少なくとも抗体結合およびE3リガーゼ機能を保存する、TIM21の改変誘導体を包含する。例えば本発明は、必要とされる機能が十分に維持される限り、TRIM21のアミノ酸配列内に置換、付加または欠損を包含する。ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性(相同性)を有し得る。 本発明のポリペプチドの変異は、その特定のドメインを標的にすることができる。配列同一性の高レベルな保存は、例えばPRYSPRYドメインにおいて要求される。このドメインは、ポリペプチドによる抗体結合に関与する。低レベルな同一性は、例えばRINGドメインにおいて一般に要求される。RINGドメインは、ゲノム中に広く存在し、保存されたE3リガーゼ機能を有する。好都合には、コンセンサス配列C−X2−C−X(9〜39)−C−X(1〜3)−H−X(2〜3)−(N/C/H)−X2−C−X(4〜48)C−X2−Cを保持する。6.化合物の投与 一般に、本発明による化合物は、薬理学的に適切な担体と共に、精製された形で利用されることになる。典型的には、こうした担体には、水性もしくはアルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液が含まれ、いずれも生理的食塩水および/または緩衝化媒体を含む。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムならびに乳酸リンゲルが含まれる。ポリペプチド複合体を懸濁液中で維持するために必要な場合は、適切な生理学的に許容可能な補助剤をカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸などの増粘剤から選択することができる。 静脈内用ビヒクルには、リンガーデキストロースに基づくものなど、流体および栄養補充物ならびに電解質補充物が含まれる。防腐剤および他の添加物、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなども存在してよい(Mack(1982)Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版)。 本発明の化合物は、分離投与組成物として、または他の薬剤と併用して使用することができる。これらには、さらなる抗体、抗体フラグメントおよびコンジュゲートならびにシルコスポリン(cylcosporine)、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチナムおよび免疫毒素などの様々な免疫療法薬を含めることができる。医薬組成物には、本発明の選択された抗体、受容体またはそれらの結合タンパク質と併用する、様々な細胞障害性薬物または他の薬剤の「カクテル」、または異なる標的リガンドを用いて選抜されたポリペプチドなど、本発明による選択された異なる特異性を有するポリペプチドの組み合わせを含めることができ、これらを投与前にプールするか否かは問わない。 本発明による医薬組成物の投与経路は、当業者に通常知られているいかなるものであってもよい。免疫療法(それに限定はされない)を含めた療法のために、本発明の選択された抗体、受容体またはそれらの結合タンパク質を、標準的な手法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路経由を含めた任意の適切な方法でよく、または適宜、カテーテルを用いる直接注入によってもよい。投与量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、禁忌ならびに臨床医が考慮すべき他のパラメーターによって決まる。 本発明の化合物は凍結乾燥して保存することができ、使用前に適切な担体中で再構成することができる。この手法は有効であることが示されており、技術分野で既知の凍結乾燥および再構成法を用いることができる。凍結乾燥および再構成は、様々な程度の活性の損失をもたらす恐れがあり、使用レベルを上方に調整して補正する必要があり得ることを当業者なら理解するであろう。 予防および/または治療処置のために、本発明のペプチドリガンドを含む組成物またはそのカクテルを投与することができる。特定の治療適用において、選択された細胞集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅またはいくつかの測定可能な他のパラメーターを達成するのに十分な量を「治療有効量」と定義する。こうした投与量を達成するのに必要な量は、疾患の重症度および患者自身の免疫システムの全体的な状態によって決まることになるが、一般に、体重キログラムあたり、選択されたペプチドリガンドは0.005から5.0mgの範囲であり、0.05から2.0mg/kg/投薬の用量がより一般的に用いられる。予防的適用のために、本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含む組成物はまた、同様のまたはやや少ない投薬量で投与することができる。 本発明による化合物を含む組成物を予防的および治療的環境において利用して、哺乳動物における選択した標的細胞集団の変質、不活化、死滅または除去に役立てることができる。さらに、本明細書に記載のポリペプチドの選択されたレパートリーを体外またはインビトロで選択的に用いて、不均一な細胞集合体から標的細胞集団を死滅、枯渇または別な形で有効に除去することができる。哺乳動物の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で混合し、これによって、血液から望ましくない細胞を死滅または別の形で除去し、標準的な手法に従って哺乳動物に戻すことができる。本発明を以下の例でさらに説明する。[材料&方法]<細胞株> HEK293T、HeLa、TE671、QT35およびHT1080を、10%ウシ胎仔血清ならびに100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを追加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、湿潤なインキュベーターにおいて37℃で維持した。293F細胞(Invitrogen、Paisley、UK)を無血清のFreestyle培地(Invitrogen)中で、旋回振盪機において50rpm、37℃で生育させた。必要に応じて、1mg/ml G418(Invitrogen)または2μg/mlのピューロマイシン(Sigma−Aldrich、Poole、UK)で細胞を選抜した。<ウイルス産生> コクサッキーウイルスを以前の記述18に改変を加えて産生した。ウイルスポリペプチドのN末端にeGFP配列および切断配列を有するpH3株をコードするプラスミドeGFP−CVB3を、Superfect(Qiagen、Crawley、UK)を使用し、製造業者の指示に従って、10cmシャーレのHEK293T細胞にトランスフェクトした。48時間後に細胞をシャーレから機械的に取り出し、3回凍結融解してビリオンを放出させ、上清を1,000gで清澄化してから、0.45μmで濾過した。ウイルスのストックをHeLa細胞中で48時間増大させ、上記のように凍結融解および濾過を行うことによりウイルス粒子を回収した。必要になるまでアリコートを−80℃で凍結した。力価は、典型的には106から107IU/mlの範囲であった。アデノウイルスAd5−GFP19をトランス相補性細胞系293F中で72時間生育させてから、3回凍結融解を行ってウイルス粒子を放出させ、0.45μmで濾過した。2回の超遠心分離によって、塩化セシウムのグラジエント上にバンド化するウイルスストックを精製し、PBS/10%グリセロール中で透析して、必要になるまで−80℃で凍結した。精製したウイルスの力価は、典型的には、108から109IU/mlであった。<安定的なノックダウンおよび過剰発現細胞系の作出> ヒトTRIM21DNAを、NotI/SalI制限酵素フラグメントとしてpDONAI(Takara、Saint−Germain−en−Laye、France)にクローニングして、pDON−T21を作出した。ヒトTRIM21配列GCAGCACGCTTGACAATGAに対する低分子ヘアピン型(sh)RNAをコードするDNAをpSIREN Retro−Q(Clontech)にクローニングして、pSIREN−shT21を作製した。ルシフェラーゼを標的とするコントロールshRNAは、pSIREN−shLucにコードされていた。レトロウイルスの形質導入粒子は、各5μgのMLVのgag−pol発現プラスミドpCMViおよびVSV−G発現プラスミドpMDG20と一緒に、5μgのpDON−T21、pSIREN−shT21、空のpDONAIまたはpSIREN−Lucを4×106のHEK293T細胞にトランスフェクトして作製した。72時間後に上清を回収し、0.45μmで濾過し、これを用いてHeLa細胞を形質導入した。安定的な形質導入細胞をG418(pDON−T21、pDONAI)またはピューロマイシン(pSIREN−shT21、pSIREN−shLuc)で選抜した。TRIM21タンパク質のレベルをウエスタンブロット法(sc−25351、Santa Cruz)で測定した。<一過的なsiRNAノックダウン> 6ウェルプレートのウェルあたり1×105細胞で細胞を蒔き、一晩接着させた。各150pmolの低分子干渉(si)RNAオリゴヌクレオチドT21siRNA1(UCAUUGUCAAGCGUGCUGC、Dharmacon、Lafayette、CO、USA)およびT21siRNA2(UGGCAUGGAGGCACCUGAAGGUGG、Invitrogen)または300pmolのコントロールオリゴ(Invitrogen)を、Oligofectamine(Invitrogen)を細胞にトランスフェクトした。3時間後に細胞を洗浄し、72時間インキュベートしてから感染させた。必要な場合は、1000UのIFN−α(PBL InterferonSource、Edison、NJ、USA)を、ノックダウンしてから48時間後に添加した。<ウイルス中和アッセイ> Ad5−GFPおよびeGFP−CVB3の両感染に関しては、標的HeLa細胞を6ウェルプレート中の2mlの完全DMEM中にウェルあたり1×105細胞で感染前日に播種した。必要な場合は、1000UのIFN−αと共に細胞をインキュベートした。5×104感染単位(IU)のAdV5−GFPを、10μl容積中で抗体と共に30分間室温でインキュベートしてから細胞に添加した。細胞を48時間インキュベートしてから、洗浄し、トリプシン処理し、4%パラホルムアルデヒド中に固定した。コクサッキーウイルスに関しては、2×104IUを200μlのインキュベーション中で抗体と共に30分間室温でインキュベートした。感染させてから8時間後に感染細胞を固定して、感染が広がるのを防止した。両ウイルスに関して、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences、San Jose、CA、USA)でGFP陽性細胞を計数した。 VNAにおいて使用される抗体は、ヒト血清IgGとIgMとをプールしたもの(090707および090713、Athens Research and Technology、Athens、GA、USA)、精製された9C12抗アデノウイルス5ヘキソンマウスIgG(Developmental Studies Hybridoma Bank、University of Iowa、IA、USAから入手したハイブリドーマ)、ヤギ抗アデノウイルスポリクローナル抗体(0151−9004、Abd Serotec、Oxford、UKおよびAB1056、Millipore、Watford、UK)である。<免疫蛍光法> 2.5×104のHeLa細胞を24ウェルプレート中のカバーガラス上に播種し、一晩接着させた。細胞を感染前にDMEMで2回洗浄した。5×104IUのAdV5−GFPをポリクローナルまたはモノクローナルの抗ヘキソンアデノウイルス抗体と共に(例えば、230μlのDMEMを添加する前に、500ngのマウスモノクローナルIgGと20μl容積中で室温で30分間)インキュベートした。細胞を250μlのこの混合物で37℃30分間感染させた。細胞をPBSで3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.5%TritonX−100のPBSで透過処理し、PBS−BSA(5%ウシ血清アルブミン、0.1%TweenのPBS)で1時間ブロッキングした。TRIM21に対する免疫染色をウサギ50kDa Ro/SSA一次抗体20960(Santa Cruz Biotechnology,Inc.、Santa Cruz、U.S.A.)を用いて、ユビキチンに対する免疫染色をヤギ一次6085(Santa Cruz Biotechnology,Inc.、Santa Cruz、U.S.A.)を用いて、PBS−BSAで1:200に希釈して実施した。AlexaFluor結合二次抗体(Invitrogen)を1:200希釈で用いて一次抗体を検出した。ストレプトアビジンで被覆された0.25μmのラテックスビーズ(Sigma−Aldrich)を、ウサギ抗ストレプトアビジンポリクローナル血清S6390(Sigma−Aldrich)と共に4℃で一晩インキュベートした。ビーズをPBSで3回洗浄し、Oligofectamineを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション3時間後に細胞をPBS洗浄し、上記のように固定した。TRIM21に対する免疫染色を組換えTRIM21RBCCに対してマウスで産生した免疫血清を用いて、結合ユビキチンに対する免疫染色を上記のように、両方ともPBS−BSAで1:200に希釈して実施した。AlexaFluor結合二次抗体(Invitrogen)を1:500希釈で用いて一次抗体を検出した。共焦点画像を、LSM710顕微鏡(Carl Zeiss MicroImaging GmbH、Germany)でZeiss63Xレンズを用いて撮影した。<Fate−of−capsidアッセイ> HeLa細胞を6ウェルプレート中の2mlのDMEM中にウェルあたり2×105細胞で蒔いて、一晩放置して接着させた。一部のウェルを8μMのMG132(Boston Biochem)で4時間処理した。未処理の細胞は、処理の間、等量のDMSOにさらした。4×107IUのAd5−GFPを6μgの9C12モノクローナル抗体と混合し、室温で30分間インキュベートし、次に1ml完全培地中の細胞上に添加した。感染物を37℃で1時間インキュベートしてから、感染混合物を除去し、DMEMに交換した。細胞を最初の感染後の指示された時点で回収して、還元剤を含む100μlの1×LDSサンプルバッファー(Invitrogen)中で煮沸した。ウイルスをヤギ抗ヘキソンAd5(1:1000、AB1056、Millipore)およびHRP結合抗ヤギIgG(1:5000、sc−2056、Santa Cruz)で検出した。抗体をロバ抗マウスIgG(1:500、AP192Millipore)およびプロテインA−HRP(1:2000、610438、BD Biosciences)で検出した。TRIM21RBCC免疫血清(1:2000)およびマウス抗体に対するゲル上での交差反応を避けるためのプロテインA HRPを用いて、TRIM21を検出した。<免疫ブロット> 6ウェルプレートの単一ウェルから細胞を掻き取り、再懸濁し、還元剤を含む100μlの1×LDSサンプルバッファー(Invitrogen)中で98℃で5分間加熱した。等容積を4〜12%のNuPAGEゲルにロードして、1×MOPSバッファー(Invitrogen)中で電気泳動した。タンパク質をProtranニトロセルロース膜(Whatman)に転写し、指示された抗体で免疫ブロットした。全てにおいて、ブロットは、5%ミルク、0.1%Tweenを含むPBSで抗体とインキュベートし、PBS−Tweenで洗浄した。ECL Plusウエスタンブロティング検出システム(GE Healthcare)で可視化した。再検出のために、ウェスタンを1×Re−Blot Plus Strong Solution(2504、Millipore)で製造業者の指示通りにストリッピングした。ローディングコントロールブロットは、ウサギポリクローナルβ−アクチン(1:1000、#4967、Cell Signalling)を用いて行った。<蛍光滴定> 完全長およびΔRINGボックス組換えTRIM21をMBP融合タンパク質としてE.coliで発現させ、アミロース樹脂およびサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。tevプロテアーゼ切断を介してMBPタグを取り除き、切断されたTRIM21を20mMのトリスpH8、100mMのNaCl、1mMのDTT中で透析した。定常状態の蛍光滴定実験は、Cary Eclipse蛍光分光光度計(Varian)を使用し、励起が296nmおよび放出が335nm、スリット幅が15nmおよびPMT電圧が850で、20℃で行った。IgGの滴定における内在性のTRIM21トリプトファン蛍光のクエンチングを5秒の平均化時間で測定した。各滴定は、Kaleidagraph(Synergy Software)を用いて、二次式F=FTR+f’((−(I0−TR0+Kd)±(((I0−TR0+Kd)2)+(4KdTR0))1/2))/2(式中、Fは観察された蛍光、FTRはモルTRIM21蛍光、f’は蛍光のモル変化、(TR0)は総TRIM21濃度、(I0)は総抗体濃度およびKdは解離定数である)に適合させた。<蛍光異方性> TRIM21のPRYSPRYドメインを以前の記述4、5のように発現および精製した。タンパク質をAlexa Fluor488 5−SDPエステル(Invitrogen)で標識し、200mMのNaClを含む50mMトリスpH8で透析した。異方性実験は、Cary Eclipse 蛍光分光光度計(Varian)を用いて、励起が488nmおよび放出が530nm、スリット幅が10nmおよびPMT電圧が600で行った。IgM(Athens Research and Technology、Athens、GA、USA)を50nMのPRYSPRY中に滴定し、偏光蛍光を5秒かけて平均した。解離定数(Kd)は、Kaleidagraph(Synergy Software)を用いて、異方性の変化を上記の二次式に適合させて決定した。<SEC MALS> SEC MALSは、Wyatt Optilab rEXオンライン屈折率検出器に連結された、Wyatt Heleos II18角度光散乱器を用いて実施した。試料を上述のように調製し、0.5ml/minで流すSuperdex S−200分析用ゲル濾過カラムで分離してから、標準的なSEC MALS型の光散乱および屈折率検出器を通過させた。タンパク質濃度を1mg/mlに対する0.186ΔRIに基づく屈折率から決定し、観察された散乱強度と組み合わせて、Wyatt’s ASTRA分析ソフトウェアを用いて絶対分子量を計算した。TRIM21の主要な種類は、ピークの指定された領域にわたって平均化された、107kDaの質量を有する。単量体TRIM21の推定質量は54kDaであり、溶液中でTRIM21を二量体にするが、以前に報告されているように、三量体にはしない。IgGのSEC MALSによって、わずかな(10%未満)レベルの二量体質量325kDaを伴って、期待される質量である154kDaが示され、これはIgGに典型的なものである。TRIM21−IgG複合体は多数のピークとして分離され、これは、先のような質量および溶出容積ならびに質量約280kDaを持つピークを有する過剰なIgGに対応する。280kDaのピークは、TRIM21:IgGの1:1複合体と矛盾がなく、ここでは各タンパク質がホモ二量体である。<外来性のTRIM21を使用する補体中和アッセイ> HeLa細胞を6ウェルプレート中の2mlの完全DMEM中に、1ウェルあたり1×105細胞で感染前日に播種した。5×104IUのAdV5−GFPを4μgのヤギ抗アデノウイルスポリクローナル抗体(AB1056、Millipore、Watford、UK)と共に15分間インキュベートしてから、200μgの適切な組換えTRIM21タンパク質を添加して、100μlの総容積で、さらに15分室温でインキュベーションした。細胞上の培地をこの混合物と交換し、完全なDMEMで1mlにした。細胞を湿潤なインキュベーター中で37℃で48時間インキュベートし、次にウイルス中和アッセイと同様に処理した(上記を参照されたい)。<インビトロユビキチン化アッセイ> インビトロアッセイを大部分は以前の記述21のように行った。反応は、示されている通り、2mMのATP、300ngのHis−Uba1、300ngのHis−UbcH5c、1μgのユビキチン(Sigma)および50ngのMBP−TRIM21またはMBP−TRIM21ΔRingボックスを添加した1×ユビキチン化バッファー(50mMのトリス−HCl(pH7.4)、2.5mMのMgCl2、0.5mMのDTT)中で行った。ヒトUba1およびUbcH5cを細菌で発現させ、Ni−NTA樹脂(Qiagen)を用いて、以前の記述21のように精製した。抗体アデノウイルス混合物を150ngのヤギポリクローナル抗ヘキソン(Millipore)につき5×104IUのAdV5−GFPで30分間インキュベーションして作製し、ここでは、1μlの混合液が3.6×104IUおよび106ngの抗体を含む。示されている通り、量を増大させて反応混合液に添加した。Ad5または抗ヘキソン抗体のどちらか一方だけを有するコントロールは、それぞれ、1.25×105IUおよび150ngの抗体を含んでいた。反応混合液を37℃で1時間インキュベートし、次にLDSサンプルバッファーを添加し、98℃まで5分間加熱して終了させた。示されている通り、試料をゲルで流し、TRIM21(1:500、sc−25351、Santa Cruz)、Ad5ヘキソン(ロバ抗ヤギIgG HRP 1:5000 sc−2056、Santa Cruz)またはユビキチン(1:1000、FK−2、Enzo Life sciences)に対してウエスタンブロットを行った。<抗体を内在化する> 抗体はウイルス感染中にサイトゾルに通常入らないと考えられている。これを試験するために、本発明者らは、アデノウイルス(呼吸器疾患を起こすモデルヒトウイルス)を抗体とプレインキュベーションし、培養HeLa細胞にビリオンを添加した。アデノウイルスは非エンベロープウイルスであり、細胞感染前にそのカプシドが血清抗体に自然に露出されているという理由で、アデノウイルスを選択した。感染30分後に、細胞を固定し、蛍光性抗IgG抗体を添加して、抗体で被覆されたビリオンを検出した。 1Aから分かるように、抗体で被覆されたビリオンは首尾よく細胞に感染した。同様の結果が、ポリクローナル抗ヘキソン抗体およびヒト血清IgGを用いて得られた。アデノウイルスは、CAR受容体に結合しエンドサイトーシスされることによって細胞に侵入する。本発明者らは、抗体添加はこのプロセスを妨げず、抗体は、侵入後ウイルスに結合したままであることを見出した。<TRIM21は細胞内ウイルス中和を仲介する> 抗体で被覆されたウイルスがサイトゾルのTRIM21に到達できるかどうかを検討するために、本発明者らはTRIM21に対して共染色した。図1Aに示すように、TRIM21は、抗体で被覆されたウイルス粒子に効率的に動員された。 次に、本発明者らは、アデノウイルス感染レベルを定量化することにより、TRIM21動員のビリオンに対する効果を試験した。本発明者らは、感染効率をフローサイトメトリー分析によって決定できるようにするために、GFP遺伝子を保有するウイルスを使用した。コントロールsiRNA、TRIM21siRNA、インターフェロンα(IFNα)またはIFNαおよびTRIM21siRNAで前処理したHeLa細胞で、標準的なウイルス中和アッセイを行った(図1B)。これらの異なる条件間の毒性および変化しやすい細胞死を考慮するために、本発明者らは抗体添加に起因する感染の低下を測定した。抗体が存在しない場合は、アデノウイルスは約50%の細胞に感染した。感染細胞の割合は、400ng/μl抗体では、感染は50倍超低下するように、抗体濃度が高まるに従って迅速に低下した(図1B)。しかし、TRIM21が枯渇した細胞では、400ng/μl抗体の添加は、感染にわずかな影響しか与えなかった(約3倍)。 免疫反応中に、IFNαは抗ウイルス遺伝子の転写を活性化する。本発明者らは、TRIM21はIFNα制御性であり、あまり高くないレベルの内在性TRIM21タンパク質がIFNαによって大きく増加することを見出した(図1C)。この結果に合致して、400ng/μl抗体において感染が230倍超減少したように、IFNαで細胞をプレインキュベーションすることによって抗体中和効果が増大する。IFNαは多面的効果を有するが、抗体を加えない場合、本発明者らは、アデノウイルス感染に対してほとんど影響がないことを観察した。IFNα/抗体中和相乗作用がTRIM21依存的であることを示すために、本発明者らはIFNαによって上方制御されているTRIM21レベルを特異的に枯渇させ、これによって、95%超感染力が回復した(図1B)。全ての実験において、ウイルス感染の抗体中和はTRIM21レベルと直接的に相関した(図1C)。例えば、最も多いTRIM21を発現する細胞は、最も少ない発現のものよりもアデノウイルス感染に対しておよそ2桁違いに抵抗性である。<条件のバリエーション> TRIM21/抗体の細胞内中和がアデノウイルス特異的ではないことを実証するために、本発明者らは、コクサッキーウイルスB3感染へのその効果を試験した。コクサッキーウイルスB3は、ポリオウイルスと同じ属のピコルナウイルスであり、無菌性髄膜炎の主因である。GFPレポーター遺伝子を有する自己複製型株を用いて、TRIM21siRNAおよびIFNαの組み合わせで前処理したHeLa細胞を上述の通りに感染させた。感染時間を16時間未満に制限して、感染が広がるのを防止した。TRIM21の内在性レベルは、有効な阻止を仲介するには不十分であった(TRIM21の枯渇の際は感染が2倍増加した)が、IFNαで処理すると、15μg/ml抗体の存在下でほぼ完全に感染を阻止した(図1D)。IFNα処理細胞におけるTRIM21の枯渇によって、未処理の細胞レベルまで感染レベルが回復し、このことは、この処理がTRIM21依存的効果であることを示す。 本発明者らは異なるsiRNA配列、細胞型および抗体型の効果を試験することによって、この表現型の頑健性を確認した。図2Aで分かるように、異なる標的配列を有する異なるTRIM21siRNAは、TRIM21レベルをノックダウンすることによってアデノウイルス感染の抗体中和を反転させた。次に、本発明者らは、HeLa、HT1080およびTE671を含めた細胞系の範囲を試験した。いずれの場合もsiRNA2の配列に基づいたshRNAベクターを用いてTRIM21の安定的なノックダウン系統を確立した。全ての細胞において、TRIM21はアデノウイルスの抗体中和を仲介した(図2B)。最後に、本発明者らは、二つの異なる抗Ad5ポリクローナル抗体(Abd SerotecおよびMillipore)および抗Ad5ヘキソンモノクローナル(9C12)のアデノウイルス中和への効果を試験した。どの場合においても、アデノウイルスの中和は、TRIM21の上方制御によって増強されTRIM21KDによって反転された(図2C)。 受容体結合を阻止し、細胞侵入を阻止することによって、抗体はウイルスを中和すると一般に考えられている。しかし、本発明者が観察した抗体アデノウイルスの中和の90%超は、TRIM21によって仲介される(例えば、200ng/μl抗体では、HeLaコントロールにおいて0.27%の感染細胞が存在し、これに対してTRIM21が枯渇した細胞では10%であった)。これら二つの機構のどちらがポリクローナル応答で優勢であるか試験するために、本発明者らは、プールされたヒト血清IgGでアデノウイルスの中和を調べた。本発明者らは中和の性向(affect)の大部分(試験した濃度範囲内で)がTRIM21によって仲介されることを見出した(図2D)。TRIM21は、Fcドメインを介してIgGに結合する。したがって、Fcを欠く抗体フラグメントは、もはやウイルスを有効に中和することができないであろう。一次ウイルス中和源はTRIM21であって受容体阻止ではないかを確認するために、本発明者らは血清IgGをペプシンで処理した。IgGのペプシン切断によって、Fcが取り除かれFab2フラグメントが作出され、これはまだ二価であり抗原を架橋結合させることができる。さらに、Fab2フラグメントは、IgGと同じ親和性で抗原を結合させる。本発明者らは、Fab2フラグメントは、もはやアデノウイルス感染を有効に中和することができないことを見出した(図2D)。さらに、Fab2を使用した場合は、IFNα処理またはTRIM21KDは、もはやアデノウイルス感染に影響を及ぼさなかった。<IgMおよびIgAとの相互作用> 前述の例は、抗体が細胞内ウイルス中和を仲介するためには、抗体がFcフラグメントを含む必要があり、TRIM21が存在する必要があることを実証した。 先天性免疫が重要である感染の初期段階中は、IgG抗体よりもむしろIgMが抗体レパートリーで優勢である。本発明者らは、TRIM21がIgMと相互作用するかどうか、もしそうであればIgMのウイルス中和におけるTRIM21の重要性を試験した。TRIM21:IgM結合を調べるために、本発明者らは、TRIM21のPRYSPRYドメインをAlexa488フルオロフォアで標識し、IgMの滴定でその蛍光異方性を測定した(図2E)。得られた滴定曲線を適合させ(材料&方法)、16.8μM±1.5μMの親和性(KD)を得た。IgMに対するTRIM21のインビボでの親和性は著しく高い可能性があるが、これは完全長TRIM21が多量体のためである。ナノモルの親和性でIgMに結合する補体C1qは、単量体として測定した場合は、親和性は検知不可能である6。 次に本発明者らは、アデノウイルス感染への血清IgMの効果を試験した。本発明者らは、プールされたヒト血清IgMおよびTRIM21が相乗的に作用してアデノウイルス感染を中和することを見出した(図2F)。さらにIgGと同様に、IgMによるウイルス中和はTRIM21を必要とする。このことは、TRIM21は先天性免疫と一緒に働き、液性免疫反応の初期段階において防御性であることを示唆する。 IgAについては同じ効果が見られた(図2G)。IgAは粘膜における主要なアイソタイプであるため重要であり、IgAはウイルスとの接触の第一ポイントであることが多い。血清分泌型IgAを使用する感染実験によって、TRIM21はIgAを用いてウイルスを中和することができることが示される。抗TRIM21siRNAはウイルス中和を妨げるが、一方IFN−αはその効果を高める。<TRIM21免疫機構> 先の例は、TRIM21によって仲介される細胞内免疫反応およびウイルス感染を阻止することができる抗体が存在することを実証する。次に、本発明者らは、この細胞内中和を起こす機構を試験した。本発明者らは三種の方法でこの機構を調べた。第一に、本発明者らはTRIM21が抗体を標的にする方法および相互作用の熱力学を決定した。第二に、本発明者らは、ターゲティングの後にどんな事象が中和に必要とされるかを試験した。第三に、本発明者らはウイルスが中和される方法を求めた。 TRIM21は、RING、Bボックス、コイルドコイルおよびPRYSPRYドメインからなるマルチドメインタンパク質である。本発明者らは、多角度光散乱(MALS)および蛍光滴定分光法を用いて、IgG結合におけるこれらのドメインの役割を試験した。MALSデータの分析により、以前の報告7のように、組換え完全長TRIM21は、安定的な二量体を形成し、三量体は形成しないことが明らかになる(図3A)。さらに、IgGと混合した場合は、TRIM21は、一つの抗体および一つのTRIM21からなる化学量論的複合体を形成する(図3A)。RINGドメイン単独の欠損は組換えタンパク質を不安定化させたが、RINGおよびBボックス両方の欠損はTRIM21安定性またはその二量体化能に影響を与えなかった(データ非表示)。蛍光滴定分光法は、完全長TRIM21およびΔRINGボックスは1nM未満という同様の解離定数(KD)でIgGに結合することを明らかにした(図3B&C)。単量体のPRYSPRYドメインは約150nMの親和性で結合する4、5ため、これはコイルドコイルドメインがTRIM21の二量体化および両方のIgG重鎖の同時会合に必要であることを示す。IgGに対するTRIM21のnM以下の親和性によって、TRIM21は人体で親和性が最も高い抗体受容体となる。TRIM21がウイルスを有効に標的にする方法は、そのような高親和性の相互作用の進化によって説明がつく。 次に、本発明者らは、TRIM21が動員された後にウイルスに起こること、およびRINGおよびBボックスドメインの役割を調べた。RINGドメインは、E3ユビキチンリガーゼ活性を提示することが多いため、本発明者らは、TRIM21が、結合したウイルスをユビキチン化を介する分解の標的にする可能性を仮定した。細胞は、ユビキチン化された物質の二つの分解経路、すなわちプロテアソームおよびオートファジーを有する。ウイルスのTRIM21中和におけるこれらの経路の役割を探るために、本発明者らは、MG132(プロテアソーム阻害剤)および3−メチルアデニン(3−MA、オートファジー阻害剤)の存在下でウイルス感染実験を実施した。オートファジー阻害剤は、感染力に影響を及ぼさなかったが、MG132は、TRIM21の感染力中和を有意に反転した(図3D)。滴定実験は、MG132の増加レベルと中和の低減との間に直接的な相関関係を示した(図3E)。MG132が中和を反転させる能力は、抗体およびTRIM21の存在に依存した。さらに、MG132の添加は、TRIM21が枯渇した細胞の感染を回復できず、このことは、TRIM21およびプロテアソームの機能が中和経路の必須な要素であることを示す(図3F)。 ウイルスをプロテアソームの標的にするのにユビキチン化が必須であるか決定するために、本発明者らは、完全長TRIM21およびΔRINGボックス組換えタンパク質の感染中和能力を試験した。本発明者らは、抗体で被覆されたビリオンと共にタンパク質をインキュベートし、TRIM21が枯渇した細胞にウイルスを感染させた。図4Aで分かるように、RINGおよびBボックスドメインの欠損は、TRIM21のウイルス中和を妨げた。本発明者らはTRIM21過剰発現細胞でこれらの実験を繰り返すことを試みたが、これは機能欠損をもたらした。機能欠損は、部分的にインターフェロンで反転することができ、このことは、過剰発現は、不活性タンパク質を作り出すというよりもむしろ必須補助因子を漸増する(titrates)ことを示す(データ非表示)。本発明者らが組換えタンパク質を用いて観察した中和がユビキチンリガーゼ活性と相関するか確認するために、本発明者らは、完全長およびΔRINGボックスタンパク質の自己ユビキチン化能を比較した。RINGおよびBボックスドメインの欠損はIgG結合に影響しないが、ユビキチン化を無効にする(図4B)。したがって、TRIM21のユビキチン化活性およびプロテアソーム機能の両方がウイルス中和に必要である。ユビキチン化されるのは細胞内のTRIM21結合ウイルスの粒子であることを実証するために、本発明者らは共焦点顕微鏡で感染細胞を調べ、ユビキチンを染色した。図4Cで分かるように、TRIM21と共局在するビリオンは、ユビキチンに対して陽性でもある。 E3ユビキチンリガーゼは、自己ユビキチン化することが知られている一方、プロテアソームターゲティングにとって重要であると考えられている、ユビキチンの基質への移送体である。しかし、自己ユビキチン化を介するプロテアソームターゲティングによって、TRIM21が任意のウイルスを中和し、ユビキチン結合を免れる突然変異ウイルスの進化を妨げることが可能になると思われる。この機構に合致して、本発明者らのインビトロでのユビキチン化アッセイにおいて、本発明者らは、TRIM21はユビキチン鎖をそれ自体に効率的に形成することを見出した一方、IgGまたはウイルスのいずれのユビキチン化も検知不可能であることを見出した(図4D)。これは、TRIM21が抗体と結合するように進化した極めて高い親和性と相関する。TRIM21が通常の酵素的ターンオーバーを介して抗体またはウイルスにユビキチンを移してしているならば、高い親和性は非常に非効率的なKMとして解釈されるであろう。 TRIM21介在性のプロテアソームへのターゲティングの後にウイルスに起こっていることを決定するために、本発明者らはfate−of−capsid経時変化実験を行った。本発明者らは、感染HeLa細胞中のヘキソンタンパク質(ウイルスのカプシド)レベルとTRIM21が枯渇した細胞中のそのレベルとを比較した。感染後2時間まで、TRIM21枯渇細胞と比べてHeLa中のヘキソンは顕著に低かった(図4E)。このことは、TRIM21はウイルスの分解を仲介すること、およびそれは迅速なプロセスであることの両方を示す。MG132の添加はヘキソンレベルの低下を防ぎ、このことは、ウイルスはプロテアソーム依存的様式で物理的に分解されていることを裏付ける。TRIM21によるプロテアソームターゲティングは、ウイルスが抗体結合性になる必要があることから、本発明者らは感染細胞中の抗体レベルも調べた。本発明者らは、ウイルスの破壊は、抗体の消失(disposal)と類似することを見出した(図4E)。それとは対照的に、本発明者らは、MG132はTRIM21レベルにほとんど影響をおよばさないことを確かめ、このことは細胞性TRIM21の総プールのほんの一部が分解されるまたはTRIM21が再利用されることを示す(図4E)。 抗体ターゲティングとTRIM21の自己ユビキチン化との組み合わせは、中和には、ウイルスの直接相互作用は必要とされないこと意味する。このことは、TRIM21介在性免疫がたいていの細胞内病原体に対して広く有効であるはずであることを意味する。このことを試験するために、本発明者らは、抗ストレプトアビジン抗体で被覆されたストレプトアビジンラテックスビーズを細胞にトランスフェクトした。TRIM21は、抗体結合ビーズに効果的に動員された(図5)。さらに、TRIM21結合ビーズは、ユビキチンに対して陽性である。したがって、TRIM21は、結合またはユビキチン化に関していずれの直接的な病原体相互作用も必要とせず、広域性病原体に対して有効であるはずであり、逃れにくいはずである。<細胞培養における活性> 胚線維芽細胞を野生型またはTRIM21KO C57BL/6マウス(22)のいずれかから調製し、9C12、すなわちモノクローナル抗ヘキソン抗体(DSHB、Iowaから入手可能)の存在下で、GFP−アデノウイルスを攻撃感染した。ヘキソンはアデノウイルスの主要な外被タンパク質である。9C12は、野生型マウス由来細胞の感染を強力に阻止したが、ノックアウトマウス由来の細胞の感染を阻止することにはほとんど影響を及ぼさなかった。飽和濃度の抗体存在下でさえ、ノックアウト由来のほとんど全ての細胞が感染した。図6を参照されたい。このことは、TRIM21非存在下では強力な中和抗体が非中和性になるため、TRIM21はウイルス感染に対して非常に強力な防御をもたらすことおよびTRIM21は抗体の中和能力にとって重要であることを示す。<野生型およびノックアウトマウスにおける活性><ウイルス調製> 3T3マウス線維芽細胞の細胞系をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入したマウスアデノウイルス1型(MAV−1)参考株で感染させた。4日後の感染細胞および上清を回収した。凍結融解サイクルを3回繰り返してウイルスを細胞から放出させた。細胞上清とペレットを有さない細胞可溶化物とを一緒にプールし、MAV−1粒子を平衡遠心法によって連続CsClグラジエント中で2回精製した。1.8×1013pfu/mlに相当するA260値を測定することによってウイルスを定量した。ウイルス感染力を終末点希釈アッセイによって測定し、ReedおよびMunchの方法によって計算した50%組織培養感染量値(TCID50)は、8.4×108/mlまたは5.8×108pfu/mlであった。<実験的感染> LD50を決定するために、100μlのPBS中のMAV−1の10倍段階希釈用量を腹腔内(i.p.)注射(投与毎に4匹の動物)することによって、6週齢のC57BL6マウスを感染させ、罹患および死亡を一日二回まで観察した。4×105pfuでの野生型マウス感染は、75%の死亡率であった(図8)。したがって、C57BL/6野生型およびTRIM21ノックアウトマウスにおける全てのさらなる実験について、本発明者らは無症状の4×104pfu用量のMAV−1を選択した。<ウイルスの力価> 感染に対する免疫へのTRIM21の関与を試験するために、本発明者らは6匹のWTおよび6匹のKO無感作マウスを4×104pfu用量のMAV−1で攻撃感染した。マウスが中程度の症状を超えない限り、感染後9日目にマウスを殺処分した。殺処分した動物から脾臓および脳を回収し、両方のウイルスおよびゲノムDNAを調製した。特異的ヘキソンプライマーを用いたRT−PCRにゲノムDNAを用いてウイルスレベルを定量した。ウイルスをTCID50によって力価測定し、各動物のウイルス血症を決定した。TRIM21が一次免疫反応(IgM)を増強する能力が生存および/またはウイルス血症の原則決定要因となるように、実験を計画した。 防御免疫(IgG)におけるTRIM21の役割を決定するために、ウイルスに対する中和抗体を有するMAV−1で攻撃感染したマウスを対象として実験を実施した。したがって、マウスを無症状用量のMAV−1で攻撃感染し、9日後に臨床用量のウイルスで再度攻撃感染した。 両実験において、MAV−1感染の結果として、TRIM21KOマウスがウイルス負荷の増加および/または死亡を示すことが観察された。本発明者らは、マウスにおいて抗体治療の抗ウイルス効果を仲介することにとって、TRIM21の存在が重要であると結論し、このことは、アデノウイルス感染に対して有効であることが知られている(16)。<抗体−TRIM21融合体> 本発明者らは、モノクローナル抗ヘキソンマウス抗体(9C12)を試験し、この抗体がアデノウイルス感染に対して強力な中和活性を有することを見出した(実施例6を参照されたい)。9C12ハイブリドーマ細胞からcDNAを調製し、以下のプライマーを用いて軽鎖および重鎖をPCRで増幅した。<軽鎖>pBudCE4.1のCMVプロモーター中のκ鎖:順方向:VL1S acgtGTCGACccaccATG GAG ACA GAC ACA CTC CTG CTA TVL2S acgtGTCGACccaccATG GAT TTT CAA GTG CAG ATT TTC AGVL3S acgtGTCGACccaccATG GAG WCA CAK WCT CAG GTC TTT RTAVL4S acgtGTCGACccaccATG KCC CCW RCT CAG YTY CTK GTVL5S acgtGTCGACccaccATG AAG TTG CCT GTT AGG CTG TTG逆方向CLX catgtctagaCTAACACTCATTCCTGTTGAAGC順方向VH1N aataGCGGCCGCcaccATGGRATGSAGCTGKGTMATSCTCTTVH2N aataGCGGCCGCcaccATGRACTTCGGGYTGAGCTKGGTTTTVH3N aataGCGGCCGCcaccATGGCTGTCTTGGGGCTGCTCTTCTVH4N aataGCGGCCGCcaccATGATRGTGTTRAGTCTTYTGTRCCTG逆方向CHKpn catgGGTACCTCATTTACCAGGAGAGTGGGAG<重鎖>pBudCE4.1(図7)のEF−1aプロモーター中の重鎖γ1:順方向VH1N aataGCGGCCGCcaccATGGRATGSAGCTGKGTMATSCTCTTVH2N aataGCGGCCGCcaccATGRACTTCGGGYTGAGCTKGGTTTTVH3N aataGCGGCCGCcaccATGGCTGTCTTGGGGCTGCTCTTCTVH4N aataGCGGCCGCcaccATGATRGTGTTRAGTCTTYTGTRCCTG逆方向CHKpn catgGGTACCTCATTTACCAGGAGAGTGGGAGここでは:r=a、g;y=c、t;m=a、c;k=g、t;s=c、g;w=a、t;v=a、c、g;n=a、c、g、tである。 次に、増幅したDNAを配列決定し、以下の軽鎖および重鎖配列を得た。重鎖:配列番号13軽鎖:配列番号14 次に、対応するアミノ酸配列を、pBudCE4.1(図7)で発現させるためのコドン最適化DNA配列に逆翻訳した。各鎖は、抗体タンパク質の分泌を確実にするN末端分泌シグナルを付加してクローン化した。 最適化配列は以下の通りである。重鎖:配列番号15軽鎖:配列番号16 次に、得られた組換え9C12発現ベクターを起点として用いて、重鎖のC末端(CH3末端)が短いリンカーを介してTRIM21の先頭に結合するように融合タンパク質をクローン化した。三種の変異体を完全長TRIM21、RING、Bボックスおよびコイルドコイルドメイン、またはRINGおよびBボックスのいずれかの融合体の代表としてクローン化した。一形態において、得られた融合配列は、9C12−完全TRIM21融合体:配列番号179C12−RBCC融合体:配列番号189C12−RB融合体:配列番号19である。 いずれの場合にも、これらの重鎖融合体は、多鎖発現ベクターpBudの未改変軽鎖と共に発現させる(図7を参照されたい)。これらの構築物の発現は、懸濁細胞系293Fなどの細胞系で行うことができる。抗体は培地へ分泌される。培地から抗体を精製するために、上清をプロテインAアフィニティー樹脂にアプライし、次に低pHバッファーで溶出した。溶出後、精製タンパク質を生理食塩水バッファーに戻した。精製タンパク質の純度をSDS−PAGEでアッセイした。 次に、以下の実験を用いて、キメラのタンパク質の有効性を試験した。GFPアデノウイルスを様々な濃度のキメラタンパク質とプレインキュベーションする。約0.5のMOIをもたらすように設計されたウイルスの力価で、アデノウイルス−キメラ混合物を培養細胞に添加する。感染細胞を約24時間インキュベートして、FACS分析によって、GFP陽性細胞数を数えることによって感染効率を決定する。有効性を試験するのに使用可能な細胞系には、293、HeLaおよびMEFなどのアデノウイルス許容細胞系が含まれる。さらにキメラの有効性を実証するために、siRNAまたはshRNAによって内在性のTRIM21を枯渇させた条件下またはTRIM21が遺伝的にノックアウトされた細胞で、これらの実験を行うことができる。 上記の例は、ウイルス結合活性およびTRIM21の機能が単一ポリペプチド中に一体となった分子に関する。この単一ポリペプチドが機能的になるために別のポリペプチド鎖(例えば軽鎖)を必要とする場合は、これは、ウイルスとのインキュベーション前に、通常発現中に含まれている必要がある。次の例では、本発明者らは、内在性のTRIM21タンパク質非存在下で抗体に結合することができ、TRIM21活性を有する分子を説明する。したがって、ウイルス結合とTRIM21機能との両方を備える単一分子を有することの代わりに、これら二つの活性は、二つの別々の分子、すなわち(抗体に例示されるような)病原体に結合する能力を有する第一のもの、および第一のものに結合し、病原体を中和させる能力を持つ(TRIM21に例示されるような)第二のものに分離する。本発明者らは、すでに先に、外来的にTRIM21を添加することを述べており、これが抗ウイルス活性を有することを示した。この例によって、プロテインA(pA)の抗体結合ドメインのTRIM21の触媒ドメインに対する融合体が説明される。三つの例は、RING、Bボックスおよびコイルドコイルドメイン、RINGおよびBボックスドメインまたはRINGドメインのいずれかを用いて示される。さらなる例は、プロテインAドメインがC末端に見出される改変である。さらなる構築物が予想され、それらはpAが別の抗体結合ドメイン(例えばプロテインG、選択されたペプチドリガンド)と交換されたものおよび/または触媒ドメインが(例えば別のTRIMタンパク質のものと)交換されユビキチンプロテアソーム動員を維持するものである。pA−RBCC配列番号20pA−RB:配列番号21pA−R:配列番号22RBCC−Pa:配列番号23 これらの配列をアフィニティータグを有する細菌性発現構築物中にクローニングすることで、効率的な精製(HisおよびMBPタグ)を可能にした。タンパク質を25℃で一晩発現させ、細胞を溶解し、タンパク質をアフィニティー樹脂、続いてゲル濾過によって精製した。タンパク質を様々な濃度で抗ウイルス抗体(例えば9c12)とインキュベートし、この混合物をウイルス(例えばGFPアデノウイルス)に加えてから、約0.5のMOIで培養細胞を感染させることで、抗ウイルス効果を試験した。許容細胞系を使用する必要がある(例えばアデノウイルスについては、HeLa、293、MEF)。次に、感染効率をFACSによって、GFP陽性細胞数を数えることによって決定する。[参考文献] (a)直接的または間接的に病原体の抗原に特異的に結合するリガンドと、ただし、TRIM21のPRYSPRYドメインではなく、 (b)RINGドメインおよび/またはTRIM21発現の誘導因子とを含む化合物。 前記リガンドが、前記抗原に直接的に結合し、かつ、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分、ペプチドおよび/または核酸アプタマー、ならびに構造化ポリペプチドリガンドからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。 前記免疫グロブリン分子が、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、F(ab’)2、Fab、Fv、scFv、dAb、VHH、IgNAR、改変TCRおよびそれらの多価的な組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。 前記免疫グロブリン分子がVHドメインおよびVLドメインの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の化合物。 前記抗原がウイルスに特異的である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。 前記リガンドが、前記抗原に間接的に結合し、かつ、プロテインA、プロテインG、プロテインL、抗免疫グロブリンペプチドおよび抗免疫グロブリン抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。 前記RINGドメインがE3リガーゼ活性を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。 前記RINGドメインがTRIMポリペプチドに由来する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。 前記TRIMポリペプチドがTRIM5α、TRIM19、TRIM21およびTRIM28からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。 二つ以上のRINGドメインを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。 TRIMポリペプチドBボックスドメインおよび/またはTRIMポリペプチドコイルドコイルドメインをさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。 前記B30.2ドメインが、VHドメインおよびVLドメインの少なくとも一つにより置換されているTRIMポリペプチドを含む、請求項11に記載の化合物。 前記TRIM21発現の誘導因子が、インターフェロンまたはインターフェロン誘導因子である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。 前記インターフェロン誘導因子が、ウイルスまたは細菌性抗原、ポリアニオン、TLRアゴニストおよび小分子インターフェロン誘導因子からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。 前記インターフェロンまたはインターフェロン誘導因子が不安定なリンカーによって化合物に結合している、請求項13または14に記載の化合物。 請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を対象に投与することを含む、病原性感染を治療する方法。 病原性感染を治療するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。 対象において感染を治療する方法であって、前記対象に、前記感染を引き起こす病原体の抗原に対して特異的な抗体と、前記抗体に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドとを同時投与することを含む方法。 感染の治療のための、対象において前記感染を引き起こす病原体の抗原に対して特異的な抗体と、前記抗体に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドとの使用。 感染に罹患している対象において前記感染を治療する方法であって、前記対象に、病原体の抗原に間接的に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドを含む治療有効量のポリペプチドを投与することを含む方法。 対象における感染性疾患の治療のための、病原体の抗原に間接的に結合するリガンドおよびRINGドメインを含むポリペプチドを含むポリペプチドの使用。 前記リガンドが、TRIM21のPRYSPRYドメイン、プロテインA、プロテインG、プロテインL、抗免疫グロブリンペプチドおよび抗免疫グロブリン抗体からなる群から選択される、請求項18もしくは20に記載の方法または請求項19もしくは21に記載の使用。 前記ポリペプチドが、TRIMポリペプチドのコイルドコイルドメインおよび/またはTRIMポリペプチドのBボックスドメインをさらに含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法または使用。 前記ポリペプチドがヒトTRIM21である、請求項23に記載の方法または使用。 直接的または間接的に病原体の抗原に特異的に結合するリガンドと、ただし、TRIM21のPRYSPRYドメインではなく、RINGドメインおよび/またはTRIM21発現の誘導因子とを含む化合物。 配列表


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