生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B1)_ケラチン繊維の修復方法
出願番号:2013512040
年次:2014
IPC分類:A61K 8/97,A61Q 5/12,A61Q 5/00


特許情報キャッシュ

堀川 豊勝 JP 5380759 特許公報(B1) 20131011 2013512040 20120406 ケラチン繊維の修復方法 堀川 豊勝 591067082 植木 久一 100075409 植木 久彦 100129757 菅河 忠志 100115082 伊藤 浩彰 100125243 堀川 豊勝 20140108 A61K 8/97 20060101AFI20131212BHJP A61Q 5/12 20060101ALI20131212BHJP A61Q 5/00 20060101ALI20131212BHJP JPA61K8/97A61Q5/12A61Q5/00 IPC A61K8/00−8/99 A61Q1/00−90/00 D06M10/00−23/18 DB CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(ST N) Thomson Innovation JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII) 国際公開第2006/126675(WO,A1) 特開2004−059561(JP,A) 特開2001−064134(JP,A) 特開2005−022978(JP,A) 国際公開第2008/062861(WO,A1) 特開2009−024311(JP,A) Shinichi Watanabe,FRAGRANCE JOURNAL,1999年 9月,Vol.27, No.9,p.36-41 7 JP2012059505 20120406 14 20130325 松本 直子 本発明は、毛髪や羊毛等のケラチン繊維の修復方法、ケラチン繊維修復剤、およびアイの水溶性成分の使用に関するものである。 毛髪や羊毛等のケラチン繊維は、大部分がタンパク質のケラチンからなり、コルテックスやメデュラと呼ばれる内部の皮質や紡錘状の細胞と、外部を覆うキューティクルとから構成される。キューティクルは、無色透明な鱗状の形態を有し、重なりあって繊維の外周を保護している。 ところで、毛髪には、染色、漂白、パーマネントウエーブなどの各種化学処理を施すことがあり、このような化学処理を反復して施すと表面のキューティクルが剥がれ、場合によっては内部にまで損傷を受ける。そうなると、毛髪から潤いが喪失し、切れ毛、枝毛、裂け毛が生じることになる。その一方で、毛髪は細胞が角質化して生じたものであり、謂わば死んでいる組織であるので、一度剥がれたキューティクルは同じ場所からは再生することはなく、受けた損傷は改善しえない。 また羊毛からなる衣服等の織編物についても、長年着用すると擦れなど外部からの物理的作用により表面のキューティクルは損傷を受けることがある。 これまでに毛髪の化学処理による損傷を防止する手段として、セラミドおよびグリコセラミドから選ばれた少なくとも1つの化合物、少なくとも1つのカチオン系ポリマーおよび少なくとも1つの両性ポリマーを含むケラチン繊維保護用組成物を、化学処理に先立ち毛髪に適用することにより、化学処理による損傷から毛髪を保護する方法が提案されている(特許文献1)。特開2002−128643号公報 しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、化学処理を施す前に所定の組成物を適用しておくものであり、化学処理などにより一旦損傷を受けてしまったケラチン繊維を修復、改善できるものではない。 本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、損傷を受けたケラチン繊維を修復する方法、ケラチン繊維修復剤、およびアイの水溶性成分の使用を提供することにある。 本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、古くから染料等の原料として用いられている植物のアイから得られる水溶性成分が損傷を受けたケラチン繊維の表面を修復する作用を有することを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明にかかるケラチン繊維の修復方法は、アイの水溶性成分をケラチン繊維の表面に付着させることを特徴とする。 本発明のケラチン繊維の修復方法においては、前記アイの水溶性成分の溶液をケラチン繊維の表面に付着させることが好ましい。このように溶液の形態でアイの水溶性成分を付着させると、本発明の修復効果をより実感しやすい。 本発明のケラチン繊維の修復方法において、前記アイはタデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)であることが好ましい。これにより、本発明の修復効果をより確実に発現させることができる。 本発明のケラチン繊維の修復方法においては、前記水溶性成分が前記アイの茎部から得られものであることが好ましい。アイは染料原料としては通常葉部のみが用いられ、茎部や根部は廃棄されているので、アイの水溶性成分がアイの茎部から得られるものであると、廃棄物を原料として利用できる。しかも、茎部から得られたアイの水溶性成分は本発明の修復効果をより確実に発現する。 本発明のケラチン繊維の修復方法においては、前記ケラチン繊維が人工的に染色されたものであることが好ましい。人工的に染色されたケラチン繊維は一般にキューティクルの損傷の程度が酷く、しかもその傷ついたキューティクルを修復することで発色性や艶が増すので、本発明の効果が有意となる。 本発明にかかるケラチン繊維修復剤は、アイの水溶性成分を含むことを特徴とする。 本発明のケラチン繊維修復剤は、溶液であることが好ましい。溶液の形態であると、本発明の修復効果をより実感しやすい。 本発明のケラチン繊維修復剤において、前記アイは、タデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)であることが好ましい。これにより、本発明の修復効果をより確実に発現させることができる。 本発明のケラチン繊維修復剤においては、前記水溶性成分が前記アイの茎部から得られものであることが好ましい。これにより、染料原料として廃棄される廃棄物を原料として利用でき、しかも茎部から得られたアイの水溶性成分は本発明の修復効果をより確実に発現する。 本発明は、ケラチン繊維を修復するためのアイの水溶性成分の使用を包含する。 本発明のアイの水溶性成分の使用においては、前記アイの水溶性成分が溶液であることが好ましい。溶液の形態であると、本発明の修復効果をより実感しやすい。 本発明のアイの水溶性成分の使用においては、前記アイはタデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)であることが好ましい。これにより、本発明の修復効果をより確実に発現させることができる。 本発明のアイの水溶性成分の使用においては、前記水溶性成分が前記アイの茎部から得られものであることが好ましい。これにより、染料原料として廃棄される廃棄物を原料として利用でき、しかも茎部から得られたアイの水溶性成分は本発明の修復効果をより確実に発現する。 本発明によれば、アイの水溶性成分を用いて損傷を受けたケラチン繊維を修復することができる。しかも本発明で用いるアイの水溶性成分は天然物に由来するため、ヒトの毛髪に対しても高い安全性で適用できる。実施例1における修復処理前の毛髪の低真空型走査型電子顕微鏡による拡大写真である。実施例1における修復処理後の毛髪の低真空型走査型電子顕微鏡による拡大写真である。実施例1における修復処理前の毛髪のデジタルマイクロスコープによる拡大写真である。実施例1における修復処理後の毛髪のデジタルマイクロスコープによる拡大写真である。実施例2における修復処理後の羊毛のデジタルマイクロスコープによる拡大写真である。実施例2における修復処理後の羊毛のデジタルマイクロスコープによる拡大写真である。実施例2における修復処理後の羊毛のデジタルマイクロスコープによる拡大写真である。実施例2における修復処理後の羊毛のデジタルマイクロスコープによる拡大写真である。 ケラチン繊維修復剤 本発明にかかるケラチン繊維修復剤は、アイの水溶性成分を含む。 まず本発明で用いるアイの水溶性成分の調製方法について説明する。 前記水溶性成分は、アイから水性溶剤により抽出される抽出物である。 原料とするアイとしては、例えば、タデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)、マメ科コマツナギ属のインドアイ(木藍)(学名:Indigofera suffruticosa)、アブラナ科タイセイ属のウォード(学名:Isatis tinctoria)、キツネノマゴ科イセハナビ属のリュウキュウアイ(琉球藍)(学名:Strobilanthes cusia)、ガガイモ科キジョラン属のソメモノカズラ(染物蔓)(学名:Marsdenia tinctoria)、トウダイグサ科ヤマアイ属のヤマアイ(山藍)(学名:Marsdenia leiocarpa)など、「アイ」と称される各種植物が挙げられる。これらの中でも特に、タデ科タデ属のアイがより確実に効果を発揮できる点で好ましい。以下、タデ科タデ属のアイを単に「タデアイ」と称することがある。原料とするアイは、天然に自生するものであっても、人工栽培されているものであってもよい。また、アイの状態も特に限定されず、例えば、刈り取り直後の水分を含んだもの、凍結したもの、乾燥したもの、乾燥物を発酵させたもの等が挙げられる。乾燥物を発酵させたものとしては、アイ染めに用いられる「すくも」や「藍玉」が挙げられる。保存や運搬が容易な点からは、アイの乾燥物を用いることが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 原料とするアイは根部、茎部、葉部からなるが、本発明ではいずれの部位を用いてもよい。染料原料として使用されるアイの葉を除いた後の廃棄物を有効活用するうえでは、根部または茎部を原料とすることが好ましく、より確実に効果を発揮できる点からは、アイの茎部を原料とすることが特に好ましい。さらに水溶性成分を効率よく抽出するには、原料とするアイは破砕または粉砕等を施しておくことが好ましい。 水溶性成分を原料のアイから抽出する方法は特に限定されるものではない。例えば、アイを水性溶剤に浸漬した後、必要に応じて撹拌処理、加熱処理、加圧処理、超音波処理などから選択される少なくとも1種の処理を施して、アイに含まれる水溶性成分を溶剤中に溶出させる方法が挙げられる。本発明において加熱処理を行う場合には、液温が60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上となるように加熱するのが好ましい。液温を60℃以上にすることにより、アイに含まれる水溶性成分を効率よく溶剤中に溶出させることができる。また、より高温で抽出された抽出物ほど、熱に強く、例えば水溶性成分を付着させた後の毛髪をドライヤー等で乾燥させた際にも、熱により本発明の修復効果が損なわれることがない。なお、液温の上限については特に限定されるものではなく、溶剤の沸点まで加熱してもよい。また、加熱時間は5分以上であることが好ましく、24時間以下であることが好ましい。加熱時間は、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは25分以上であり、より好ましくは60分以下、さらに好ましくは50分以下である。上記時間内の加熱によって、アイに含まれる水溶性成分を効果的に溶剤中に抽出することができる。 アイ水溶性成分の抽出に用いる水性溶剤としては、例えば、水道水、純水、イオン交換水などの水;メタノール、エタノールなどのアルコール類と上記水との混合溶剤;アセトンなどのケトン類と上記水との混合溶剤;などが挙げられる。アルコール類やケトン類の水に対する混合率は50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることが好ましい。これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に毛髪に適用する場合など安全性を重視する場合には、水、またはエタノールと水との混合溶剤を溶剤として用いることが好ましく、水のみを用いることがより好ましい。また、水性溶剤は、pHを適宜調整してもよい。通常、pHは2〜13の範囲であることが好ましく、5〜8の範囲であることがさらに好ましい。 アイ水溶性成分の抽出に用いる溶剤量は特に限定されるものではなく、効果および効率を考慮すると、アイの乾燥物1gに対して溶剤10g以上が好ましく、1000g以下が好ましい。アイの乾燥物1gに対する溶剤の量は、より好ましくは15g以上、さらに好ましくは20g以上、特に好ましくは40g以上であり、より好ましくは500g以下、さらに好ましくは100g以下、特に好ましくは50g以下である。 アイ水溶性成分は、上記抽出操作を経て得られた水溶性成分含有液から、必要に応じて、ろ過、遠心分離、デカンテーションなどの固液分離手段によって、水溶性成分抽出後の固形分であるアイの残渣などを分離することによって、アイ水溶性成分溶液として得られる。このようにして得られたアイ水溶性成分溶液は、そのままケラチン繊維修復剤としてケラチン繊維に付着させてもよいし、必要に応じて、さらに濃縮や乾燥などの処理を施して、アイ水溶性成分の濃度を調整してケラチン繊維修復剤としたり、一旦粉状、顆粒状、ペースト状など形態のアイ水溶性成分やケラチン繊維修復剤にしてもよい。アイ水溶性成分を粉状、顆粒状、ペースト状など形態にしておけば、取り扱いが容易になるとともに、例えば適用するケラチン繊維に応じた最適な溶媒を選択して再溶解させ使用できるという利点も得られる。なお、乾燥や濃縮の方法としては、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、限外ろ過濃縮など公知の方法から1種または2種以上を適宜採用すればよい。 ケラチン繊維修復剤中におけるアイ水溶性成分の濃度は、特に制限されるものではなく、適用するケラチン繊維の損傷程度や所望する修復効果の程度に応じて、適宜設定すればよい。例えば、ケラチン繊維修復剤がアイ水溶性成分の溶液である場合、アイ水溶性成分の濃度は0.0001〜0.1質量%程度であり、好ましくは0.001〜0.01質量%程度である。 ケラチン繊維修復剤は、各種溶媒や、整髪料、洗髪料、洗濯用薬剤等に、アイ水溶性成分を添加することにより得られる。ケラチン繊維修復剤には、さらに、変色や異臭の発生あるいは微生物の増殖を抑制するための抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤等;毛髪や衣服等の織編物に香りを付与するための各種香粧品香料;pH調整剤;など公知の添加剤を添加してもよい。これらの成分の添加時期や添加量は、本発明の効果を妨げない限り特に制限されない。 ケラチン繊維の修復方法 本発明のケラチン繊維の修復方法では、上述したアイの水溶性成分をケラチン繊維の表面に付着させる。 本発明において、アイ水溶性成分をケラチン繊維の表面に付着させる方法は、特に制限されない。例えば、i)ケラチン繊維修復剤としてアイ水溶性成分を適当な溶媒に溶解させた溶液を用意し、該溶液を、ポンプ式、超音波式、電動式などの霧吹き器又は噴霧器を用いて毛髪や羊毛等のケラチン繊維に噴霧することにより付着させてもよいし、ii)アイ水溶性成分を、水性エマルジョン、ゲル、エアロゾル泡、クリームおよびハイドロアルコールローション等の形態の整髪料に含有させてなるケラチン繊維修復剤を毛髪に付着させてもよいし、iii)アイ水溶性成分を、シャンプー、リンス、トリートメント等の洗髪料に含有させてなるケラチン繊維修復剤を毛髪に付着させてもよいし、iv)アイ水溶性成分を、洗濯用洗剤、柔軟剤等の洗濯時に使用する薬剤に含有させてなるケラチン繊維修復剤を羊毛等からなる織編物に付着させてもよい。上記i)〜iv)の中でも、本発明の修復効果をより実感しやすい点では、i)の方法が好ましい。 上記i)の方法を採用する場合、アイ水溶性成分を溶解させる溶媒としては、上述した抽出に用いることのできる水性溶剤が挙げられるが、例えば、毛髪に適用する場合は、安全性を重視して、水単独とするか、アルコール類やケトン類と水との混合溶剤であればアルコール類やケトン類の水に対する混合率が比較的低い混合溶剤を用いることが好ましい。この場合、アルコール類やケトン類の水に対する混合率は、例えば10〜30質量%程度が好ましい。他方、羊毛等からなる織編物等に適用する場合は、沸点の低いアルコール類やケトン類を高めの混合率で水と混合させた混合溶剤が、溶媒の揮発性を高めるうえで好ましい。この場合、沸点の低いケトン類としてはアセトン等が挙げられ、アルコール類やケトン類の混合率は、例えば30〜50質量%程度が好ましい。 上記ii)〜iv)の方法を採用する場合、整髪料、洗髪料、洗濯用薬剤の成分組成等については特に制限はなく、本発明の効果を損なわない限り、公知の範囲から適宜選択することができる。また上記ii)〜iv)の方法を採用する場合、粉状、顆粒状、ペースト状などの形態のアイ水溶性成分を用いて、整髪料、洗髪料、洗濯用薬剤等に加工することもできるが、アイ水溶性成分の溶液を用いて加工することもできる。 アイ水溶性成分のケラチン繊維に対する付着量は、特に制限されるものではなく、適用するケラチン繊維の損傷程度や所望する修復効果の程度に応じて、適宜設定すればよい。具体的には、アイ水溶性成分の付着量が多ければ多いほど、より高い修復効果が期待できる。本発明におけるアイ水溶性成分は天然物由来の成分であるため安全であり、過剰に付着させたとしても特に不具合は生じない。例えば、上記i)の方法を採用する場合、アイ水溶性成分の濃度が0.0001〜0.1質量%程度、好ましくは0.001〜0.01質量%程度の溶液を用い、毛髪に対しては1回あたり1〜30mL程度、好ましくは5〜20mL程度を噴霧すればよく、羊毛等の織編物に対しては、1cm2あたり0.1〜10mL程度、好ましくは0.1〜5mL程度を噴霧すればよい。 本発明においては、アイ水溶性成分をケラチン繊維の表面に付着させた後、自然乾燥させてもよいし、必要に応じ、ドライヤー、アイロン、乾燥機等の加熱機器で加熱乾燥してもよい。加熱乾燥する際の温度や時間等は特に制限されるものではなく、各機器の通常の使用範囲に従えばよい。 本発明において修復するケラチン繊維としては、ヒトの毛髪;ウールすなわち羊毛、カシミヤ、アンゴラ、らくだ、アルパカ、ビクーニャ、グアナコ、リャマ、キヴィアック、ポッサム、ミンク、チンチラ等の獣毛などの動物の毛;が挙げられ、好ましくはヒトの毛髪または羊毛が挙げられ、特に人工的に染色されたケラチン繊維が好ましい。人工的に染色されたケラチン繊維は一般にキューティクルの損傷の程度が酷く、しかもその傷ついたキューティクルを修復することで発色性や艶が増すので、本発明の効果が有意となる。勿論、本発明のケラチン繊維の修復方法の適用対象であるケラチン繊維は、損傷を受けたケラチン繊維に限定されるものではなく、染色、漂白、パーマネントウエーブなどの各種化学処理が施されていない毛髪に予防的に適用してもよい。 アイの水溶性成分の使用 本発明においては、ケラチン繊維を修復するために上述したアイの水溶性成分を使用する。 本発明においてケラチン繊維を修復するとは、染色、漂白、パーマネントウエーブなどの各種化学処理等によりキューティクルが剥がれるなどして損傷を受けた毛髪や、衣服等の織編物として長年着用され続けた際の擦れ等によりキューティクルが剥がれるなどして損傷を受けた羊毛などに対し、その表面のキューティクルを滑らかにし、損傷によるささくれ立ち等を抑制して目立たなくすることである。本発明では、アイ水溶性成分がケラチン繊維表面のキューティクルを構成するタンパク質に結合することにより、キューティクルの剥がれを本来の状態、すなわち鱗片が密に重なりあって繊維外周を覆った状態に近づけ、修復できると考えられる。 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。 製造例1 タデアイ水溶性成分スプレー液の調製 自然乾燥したタデアイの茎部を約1cm以下に裁断した。得られた裁断タデアイ5質量部を、還流管を付けたフラスコ中、100質量部の精製水に浸漬し、水温が100℃になるまで加熱し、還流状態で30分間、タデアイの水溶性成分を抽出した。その後、ステンレス製の篩を用いて固形分を濾別することにより、タデアイ抽出液を得た。 得られた抽出液のうち10gを90℃で加熱して乾固させ、その質量を測定することにより抽出液の固形分濃度を算出したところ、上記タデアイ抽出液の濃度は0.5質量%であった。このタデアイ抽出液に精製水を加えて500倍に希釈し、下記の実施例で用いるタデアイ水溶性成分スプレー液とした。 実施例1 毛髪の修復 毛染めをしている30歳代男性の毛髪を市販のシャンプーで洗髪した後、ドライヤーで乾燥させ、頭頂部あたりの毛髪を根元から切断し、処理前の毛髪の状態を観察した。観察は、切断した毛髪の中央部について、(A)低真空型走査型電子顕微鏡(Nicon社製「ε−SEM−2700」)と、(B)デジタルマイクロスコープ(HiROX社製「KH7700」)を用いて行った。(A)による拡大写真(1000倍)を図1に、(B)による拡大写真(1400倍)を図3に、それぞれ示す。 次いで、製造例1で調製したスプレー液を電動式の霧吹き器に詰め、該スプレー液約5〜30mLを洗髪、乾燥後の毛髪全体に満遍なく噴霧し、その後、ドライヤーで乾燥させ、頭頂部あたりの毛髪を根元から切断し、処理後の毛髪の状態を観察した。観察は、上記と同様、切断した毛髪の中央部について、(A)低真空型走査型電子顕微鏡と、(B)デジタルマイクロスコープを用いて行った。(A)による拡大写真(1000倍)を図2に、(B)による拡大写真(1400倍)を図4に、それぞれ示す。 図1および図3のとおり、毛染めした処理前の毛髪は表面の毛表皮であるキューティクルがささくれ立ち、荒れていることが分かる。しかし、図2および図4のとおり、本発明に係るタデアイ水溶性成分を噴霧して付着させると、毛髪表面のささくれ立ちは抑制されて滑らかな表面になり、キューティクルの一つ一つが丸みを帯びて保護されていることが分かる。 毛髪の構成成分の大部分はタンパク質のケラチンであり、毛根細胞で生合成された後に毛髪内部から修復はされない。したがって、上記の結果は、本発明に係るタデアイ水溶性成分が毛髪表面のタンパク質に結合し、キューティクルを修復したことによるものであると考えられる。 実施例2 羊毛の修復 製造例1で調製したスプレー液を電動式の霧吹き器に詰め、該スプレー液を、約40年間保管した市販の羊毛100%セーター(C−BEAT社製)の表面に満遍なく噴霧した後、一昼夜放置して自然乾燥させた。このとき噴霧量は、約15cm2当たり約1〜3mLとした。このセーターのスプレー液を噴霧した部分から羊毛を4本抜き出し、デジタルマイクロスコープ(HiROX社製「KH7700」)を用いて観察した。得られた拡大写真(1400倍)を図5〜図8にそれぞれ示す。なお、この試験に供したセーターは、年に1回程度着用し、その都度、洗濯して保管していたものである。 約40年間保管したセーターを構成する羊毛は、長年にわたる摩擦等によって、染色した毛髪のように、繊維表面のささくれ立ちなどの損傷を受けていると考えられるが、本発明に係るタデアイ水溶性成分を噴霧して付着させると、図5〜8のとおり、繊維1本1本の表面が滑らかになり、ささくれ立ち等の損傷は認められなかった。 羊毛の構成成分は毛髪と同様にタンパク質であることから、上記の結果は、本発明に係るタデアイ水溶性成分が羊毛表面のタンパク質に結合して修復したことによるものであると考えられる。 タデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)の茎部から得られた水溶性成分(全草から得られた水溶性成分は除く)をケラチン繊維の表面に付着させることを特徴とするケラチン繊維の修復方法。 前記アイの水溶性成分の溶液をケラチン繊維の表面に付着させる請求項1に記載のケラチン繊維の修復方法。 前記ケラチン繊維が人工的に染色されたものである請求項1または2に記載のケラチン繊維の修復方法。 タデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)の茎部から得られた水溶性成分(全草から得られた水溶性成分は除く)を含むことを特徴とするケラチン繊維修復剤。 溶液である請求項4に記載のケラチン繊維修復剤。 ケラチン繊維を修復するための、タデ科タデ属のアイ(学名:Polygonum tinctorium Lour)の茎部から得られた水溶性成分(全草から得られた水溶性成分は除く)の使用。 前記アイの水溶性成分が溶液である請求項6に記載の使用。 本発明は、損傷を受けたケラチン繊維を修復する方法を提供することを課題とする。本発明のケラチン繊維の修復方法は、アイの水溶性成分をケラチン繊維の表面に付着させることを特徴とする。


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