タイトル: | 特許公報(B2)_低活動膀胱の予防または治療用医薬組成物 |
出願番号: | 2013505265 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/403,A61P 13/10,A61P 13/02 |
立道 聡 JP 5426801 特許公報(B2) 20131206 2013505265 20120823 低活動膀胱の予防または治療用医薬組成物 キッセイ薬品工業株式会社 000104560 柳 伸子 100151231 立道 聡 JP 2011184149 20110825 20140226 A61K 31/403 20060101AFI20140206BHJP A61P 13/10 20060101ALI20140206BHJP A61P 13/02 20060101ALI20140206BHJP JPA61K31/403A61P13/10A61P13/02 A61K 31/403 A61P 13/02 A61P 13/10 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) PubMed 登録実用新案第3164015(JP,U) YAMANISHI,T. et al,Combination of a cholinergic drug and an alpha-blocker is more effective than monotherapy for the treatment of voiding difficulty in patients with underactive detrusor,Int J Urol,2004年,Vol.11, No.2,p.88-96 中平洋子,排尿障害で受診した糖尿病患者です。エコー上多くの残尿を認めます。対処と処方について教えてください。,臨床泌尿器科,2008年,Vol.62, No.4,120-1 YAMAGISHI,R. et al,Effect of KMD-3213, an alpha 1a-adrenoceptor-selective antagonist, on the contractions of rabbit prostate and rabbit and rat aorta,Eur J Pharmacol,1996年,Vol.315, No.1,p.73-9 榊原隆次ら,ウブレチド錠発売40周年記念企画:行くさ来さ【11】末梢性神経障害による排尿障害,医薬の門,2009年,Vol.49, No.1,70-4 清家泰ら,シロドシン(ユリーフ(R))により自己導尿が中止できた症例,PROGRESS IN MEDICINE,2008年,Vol.28, No.2,155(449)-158(452) 藤原豊博,次世代の前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬シロドシンカプセル(ユリーフ(R)カプセル2mg・4mg)の基礎と臨床,薬理と治療,2006年,34(8),891-929 4 JP2012071358 20120823 WO2013027806 20130228 9 20130305 安藤 公祐 本発明は、低活動膀胱の予防または治療に有用な医薬組成物に関するものである。 さらに詳しく述べれば、本発明は、シロドシン(化学名:(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミド)またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する低活動膀胱の予防または治療に有用な医薬組成物に関するものである。 低活動膀胱とは、排尿時の排尿筋(膀胱排尿筋)収縮力の低下により、排尿障害を呈する病態をいう。低活動膀胱では、一般に、膀胱を支配する末梢神経で最も重要な骨盤神経の障害により、尿意(膀胱知覚)低下、膀胱容量の増加(膀胱の過伸展)、膀胱収縮力の低下等が発現する。その結果、低活動膀胱の患者は、種々の排尿症状を呈し、多量の残尿を伴うこともある。重症化による尿閉や、慢性の残尿による尿路感染症の合併もしばしばみられ、問題となっている。なお、近年注目されている、尿意切迫感を特徴とする過活動膀胱とは異なる病態である。 糖尿病に伴う低活動膀胱は、骨盤神経を経由する知覚神経が障害されることから始まる糖尿病性自律神経障害の一つである。糖尿病に伴う低活動膀胱の患者では膀胱知覚低下が起こり、さらに神経障害が進行すると、排尿筋の収縮障害をきたす(非特許文献1参照)。 低活動膀胱の原因疾患としては、糖尿病やアルコール中毒症などの自律神経症のほか、広汎子宮全摘術や直腸がん根治術などの骨盤内手術、二分脊椎症や椎間板ヘルニアなどの脊椎脊髄疾患等も知られている。臨床的に最も多くみられるのは、糖尿病による末梢神経障害および骨盤内手術による神経損傷である(非特許文献1参照)。 低活動膀胱の治療は、一般に、膀胱の過伸展を取り除き膀胱収縮力を回復させることを目的とする間歇導尿治療や、排尿筋を収縮させる薬剤(主にコリン作動薬)を中心とした薬物治療を適宜組み合せて行われる。 コリン作動薬として、ムスカリン受容体作用薬である塩化ベタネコールやアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である臭化ジスチグミン等が用いられている。しかしながら、これらのコリン作動薬は、コリン作動性クリーゼの発現などの重大な副作用があり、その使用には十分注意する必要があるとされている(非特許文献1参照)。 α1受容体遮断薬は、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞に伴う排尿障害治療薬として広く用いられている。低活動膀胱患者に、膀胱頸部および尿道の抵抗を軽減する目的で、α1受容体遮断薬が用いられることもある。しかしながら、α1受容体遮断薬として、神経因性膀胱に対して適応をもつ薬剤はウラピジルのみであり、α1受容体遮断薬の低活動膀胱の治療に対する有効性は依然不明である。ウラピジルの糖尿病性神経因性膀胱に対する効果が報告されているが、残尿や膀胱の過伸展の改善効果に関する記載は無い(非特許文献2)。 このように、現在、低活動膀胱の治療に用いられている薬剤は、有効性と安全性面から必ずしも臨床上満足されているものではなく、新しい治療剤が求められている。 シロドシンは、α1受容体遮断薬であり、前立腺肥大に伴う排尿障害、神経障害に伴う過活動膀胱および尿管結石症等の治療剤として有用であることが知られている(特許文献1〜5)。しかしながら、シロドシンが低活動膀胱の治療に有用であることは知られていない。 以上のとおり、シロドシンが、低活動膀胱における尿流率の改善のみならず、膀胱の過伸展や残尿の改善作用を有し、低活動膀胱の治療剤として有用であることは、上記の何れの文献にも記載も示唆もない。特開平06−220015号公報国際公開第2005/085195号国際公開第2006/038611号国際公開第2006/038619号国際公開第2007/060974号山口著、「図説 下部尿路機能障害」、メディカルレビュー社、2004年8月、p.27−33宮下、「糖尿病性神経因性膀胱に対するウラピジルの効果と評価法」、糖尿病、2004年、第47巻、第9号、p.715−721 本発明は、低活動膀胱の予防または治療に有用な医薬組成物を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究した結果、驚くべきことに、シロドシンが、低活動膀胱モデルラットにおける膀胱機能測定において、尿流率の改善、膀胱の過伸展および残尿の改善作用を示し、低活動膀胱の治療に極めて有用であることを見出し、本発明を成すに至った。 すなわち、本発明は、〔1〕シロドシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する低活動膀胱の予防または治療用医薬組成物;〔2〕低活動膀胱が、糖尿病に伴う低活動膀胱である前記〔1〕に記載の医薬組成物;〔3〕残尿がある患者の治療に使用するための、前記〔1〕または〔2〕に記載の医薬組成物;〔4〕膀胱の過伸展がある患者の治療に使用するための、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の医薬組成物;〔5〕シロドシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する膀胱過伸展の予防または治療用医薬組成物;等に関するものである。 本発明の医薬組成物は、尿流率の改善作用、膀胱の過伸展の改善作用および残尿の改善作用等を有し、低活動膀胱の予防または治療に有用である。実施例1のQmaxの結果を示す。図中、棒グラフは左からシロドシン処置前,シロドシン0.001 mg/kg 処置後、シロドシン0.01 mg/kg 処置後の値をそれぞれ示す。縦軸は、Qmax(mL/分)(各群6例の平均値および標準誤差)を示す。実施例1のQaveの結果を示す。図中、棒グラフは左からシロドシン処置前,シロドシン0.001 mg/kg 処置後、シロドシン0.01 mg/kg 処置後の値をそれぞれ示す。縦軸は、Qave(mL/分)(各群6例の平均値および標準誤差)を示す。実施例2の血糖値の結果を示す。図中、棒グラフは左から正常群(Normal)、溶媒処置群(Control)、シロドシン0.3 mg/kg/day 処置群、シロドシン1.0 mg/kg/day処置群の値をそれぞれ示す。縦軸は、血糖値(mg/dL)(各群8-10例の平均値および標準誤差)を示す。実施例2の体重100 g当たりの膀胱重量の結果を示す。図中、棒グラフは左から正常群(Normal)、溶媒処置群(Control)、シロドシン0.3 mg/kg/day 処置群、シロドシン1.0 mg/kg/day処置群の値をそれぞれ示す。縦軸は、体重100 g当たりの膀胱重量(g/体重100g)(各群8-10例の平均値および標準誤差)を示す。実施例2の膀胱容量の結果を示す。図中、棒グラフは左から正常群(Normal)、溶媒処置群(Control)、シロドシン0.3 mg/kg/day 処置群、シロドシン1.0 mg/kg/day処置群の値をそれぞれ示す。縦軸は、膀胱容量(mL)(各群8-10例の平均値および標準誤差)を示す。実施例2の膀胱容量/膀胱重量の結果を示す。図中、棒グラフは左から正常群(Normal)、溶媒処置群(Control)、シロドシン0.3 mg/kg/day 処置群、シロドシン1.0 mg/kg/day処置群の値をそれぞれ示す。縦軸は、膀胱容量/膀胱重量(mL/g)(各群8-10例の平均値および標準誤差)を示す。実施例3の膀胱容量の結果を示す。図中、棒グラフは左から正常群(Normal)、溶媒処置群(Control)、シロドシン0.3 mg/kg/day処置群、シロドシン1.0 mg/kg/day処置群の値をそれぞれ示す。縦軸は、膀胱容量(mL)(各群7-10例の平均値および標準誤差)を示す。実施例3の残尿量の結果を示す。図中、棒グラフは左から正常群(Normal)、溶媒処置群(Control)、シロドシン0.3 mg/kg/day処置群、シロドシン1.0 mg/kg/day処置群の値をそれぞれ示す。縦軸は、残尿量(mL)(各群7-10例の平均値および標準誤差)を示す。 シロドシンは、公知の方法、例えば、特開平06−220015号公報に記載された方法またはそれに準じた方法で製造することもできる。 シロドシンの薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、(+)−カンファースルホン酸、(−)−カンファースルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等との酸付加物を挙げることができる。 本発明の有効成分には、薬理学的に許容される溶媒(例えば、水、エタノール等)との溶媒和物も含まれる。 また、本発明の有効成分は、プロドラッグに変換して使用することもできる。プロドラッグは、例えば、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 p.163−198に記載の基を導入することで製造することもできる。 本発明の医薬組成物の投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、ドライシロップ剤等による経口投与、あるいは注射剤、貼付剤、坐剤、吸入剤、点鼻剤等による非経口投与が挙げられる。 本発明の医薬組成物は、市販の製剤を用いることもでき、シロドシンを、適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の製剤担体と適宜混合または希釈・溶解し、常法により種々の剤形のものを製造することもできる。 シロドシンの投与量は、患者の体重、年齢、性別、疾患の程度等に応じて適宜定めればよい。例えば、成人に対する投与量は、経口投与の場合1〜50mg/日、好ましくは1〜16mg/日、より好ましくは4〜8mg/日の範囲であり、非経口投与の場合0.5〜5mg/日の範囲である。1日投与量を1回で、または2回以上(好ましくは2または3回)に分けて投与することができる。 本発明において、低活動膀胱には、排尿筋低活動および低緊張性膀胱等の用語で表される同種の病態が含まれ、前立腺肥大等の下部尿路閉塞を伴う低活動膀胱は含まれない。 低活動膀胱の診断は、自覚症状、尿流測定、残尿測定、内圧・尿流同時測定(Pressure-Flow Study)等によって行うことができる。 自覚症状としては、尿勢低下、尿線途絶、排尿遅延、腹圧排尿、残尿感、尿閉等が挙げられる。 尿流計を用いた尿流測定により、排尿量、最大尿流率(Qmax)、平均排尿率(Qave)等を測定することができ、例えば、Qmaxの低下は、15または20 mL/秒以下を目安とすることができる。残尿量は、排尿直後の導尿または膀胱超音波検査により推定することもでき、50または100 mL以上を目安とすることができる。また、尿流曲線パターンから排出障害の有無を判断することもできる。 排尿筋圧(膀胱内圧から直腸内圧を引いたもの)と尿流とを同時記録するPressure-Flow Studyにより、排尿筋圧、尿流率、膀胱容量等を評価することができる。例えば、尿意(膀胱知覚)の低下は、初発尿意が150 mL以上、膀胱の過伸展は、膀胱容量が500 mL以上、排尿筋の収縮障害(排尿を命令しても排尿筋圧が低い状態)は、排出相の排尿筋圧が20 cmH2O未満をそれぞれ目安とすることができる。 本発明の医薬組成物は、低活動膀胱の排尿症状(自覚症状、尿流率の低下、排尿時間の延長、残尿、尿意低下、排尿時の排尿筋収縮障害、膀胱の過伸展等)の一または二以上を改善することができ、特に残尿、膀胱の過伸展の改善に有効である。 以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。低活動膀胱モデルラットにおける尿流率測定 ZDF系ラット(オス、30〜38週齢、各群6例、日本チャールス・リバー株式会社)を、25%ウレタン(1.0 g/kg, 腹腔内投与)で麻酔した。下腹部を正中切開し、膀胱を露出した。膀胱頂部よりカニューレ(PE-50、日本ベクトンディッキンソン株式会社)を挿入固定した。両側尿管にカニューレ(PE-10、日本ベクトンディッキンソン株式会社)を挿入し、尿ドレナージを行った。下腹部を縫合し、膀胱および両側尿管に挿入したカニューレを腹部より導出した。被験薬の投与経路として大腿静脈に生理食塩液を満たしたカニューレを挿入固定した後、ラットを伏臥位に固定した。膀胱に挿入したカニューレに精密シリンジポンプ(kdS Model 200:室町機械株式会社)を接続し、膀胱注入路とした。排尿量は採尿カップを接続した張力トランスデューサ(Type 45196A、日本GEマルケットメディカルシステム株式会社)を介し測定した。排尿量はレクチグラフ(Recti-Horiz-8K、日本GEマルケットメディカルシステム株式会社)および波形解析ソフトPowerLab(登録商標)(ADInstruments)により記録した。尿流率を測定するため、採尿カップをラットのペニス近くに設置し、膀胱内に生理食塩液を精密シリンジポンプにて持続注入(注入速度:6 mL/h)することにより排尿反射を惹起した。 数回の排尿反射を確認した後、ハルトマン液に溶解したシロドシン2臭化水素酸塩溶液(シロドシンとして0.001または0.01 mg/kg、1 mL/kg)を大腿静脈より用量漸増法にて静脈内投与し、同時に持続注入を開始し排尿時の尿流率を評価した。その結果、図1および2に示したとおり、シロドシン処置により最大尿流率(Qmax)および平均尿流率(Qave)の上昇が認められた。低活動膀胱モデルオスラットにおける膀胱機能測定 SD系ラット(オス、6週齢、各群8〜10例、日本チャールス・リバー株式会社)に、0.1N(約0.03 mol/Lに相当)クエン酸緩衝液(pH 4.5)に溶解したストレプトゾトシン(STZ)溶液を尾静脈より静脈内投与し(50 mg/kg、1 mL/kg)、糖尿病を惹起した。正常群(Normal)には0.1 Nクエン酸緩衝液を静脈内投与した(1 mL/kg)。STZまたは0.1 Nクエン酸緩衝液投与1週間後、エーテル麻酔下にてハルトマン液に溶解したシロドシン2臭化水素酸塩溶液(シロドシンとして0.3または1 mg/kg/day)およびその溶媒(ハルトマン液)を封入した埋め込み型ミニ浸透圧ポンプ(2ML4、Alzet(登録商標))を皮下に埋め込んだ。なお、ミニ浸透圧ポンプは、4週間後に新たなポンプと入れ替えた。 STZ処置9週間後(薬物処置8週間後)、ラットを25%ウレタン(1.25 g/kg、 皮下投与)で麻酔し、背位に固定した。尾静脈より採血し(10〜20 μL)、小型電極式グルコース分析装置(アントセンスII、HORIBA)にて血中グルコースを測定した。下腹部を正中切開し膀胱を露出した後、膀胱頂部よりカニューレ(PE-50、日本ベクトンディッキンソン株式会社)を挿入固定した。膀胱に挿入したカニューレに精密シリンジポンプ(kdS Model 100、室町機械株式会社)を接続し、膀胱注入路とした。 膀胱内に生理食塩液を排尿反射が生じるまでシリンジポンプにて持続注入(注入速度:Normal:1〜4 mL/h、STZ:2〜15 mL/h)した。測定終了後に開腹し、腹部大動脈より放血致死後、膀胱組織を摘出し、湿重量を測定した。その結果、図3、4、5および6に示すように、STZ処置9週間後(薬物処置8週間後)、溶媒処置群(Control)において、血糖値、体重100g当たりの膀胱重量、膀胱容量および膀胱容量/膀胱重量の増加が認められた。シロドシン処置群では膀胱容量および膀胱容量/膀胱重量が低下した。一方、体重100g当たりの膀胱重量および血糖値には影響は認められなかった。低活動膀胱モデルメスラットにおける膀胱機能測定 SD系ラット(メス、6週齢、各群n=7〜10、日本チャールス・リバー株式会社)に、0.1 Nクエン酸緩衝液に溶解したストレプトゾトシン(STZ)溶液を尾静脈より静脈内投与し(50 mg/kg、1 mL/kg)、糖尿病を惹起した。正常群(Normal)には0.1 Nクエン酸緩衝液を静脈内投与した(1 mL/kg)。STZまたは0.1 Nクエン酸緩衝液投与1週間後、エーテル麻酔下にてハルトマン液に溶解したシロドシン2臭化水素酸塩溶液(シロドシンとして0.3または1 mg/kg/day)およびその溶媒(ハルトマン液)を封入した埋め込み型ミニ浸透圧ポンプ(2ML4、Alzet(登録商標))を皮下に埋め込んだ。なお、ミニ浸透圧ポンプは、4週間後に新たなポンプと入れ替えた。 STZ処置9週間後(薬物処置8週間後)、ラットを25%ウレタン(1.25 g/kg、 皮下投与)で麻酔し、背位に固定した。尾静脈より採血し(10〜20 μL)、小型電極式グルコース分析装置(アントセンスII、HORIBA)にて血中グルコースを測定した。下腹部を正中切開し膀胱を露出した後、膀胱頂部よりカニューレ(PE-50、日本ベクトンディッキンソン株式会社)を挿入固定した。膀胱に挿入したカニューレに精密シリンジポンプ(kdS Model 100、室町機械株式会社)を接続し、膀胱注入路とした。排尿量および残尿量はケージ下に設置した尿量測定用上皿電子天秤(GF-300、株式会社エー・アンド・デイ)により測定し、レクチグラフ(Recti-Horiz-8K、日本GEマルケットメディカルシステム株式会社)に記録した。膀胱内に生理食塩液を排尿反射が生じるまでシリンジポンプにて持続注入(注入速度:Normal:1〜3 mL/h、STZ:6〜15 mL/h)した。膀胱内への生理食塩液の注入は1回の排尿ごとに停止した。排尿後,膀胱内カテーテルを開放し,膀胱内の尿(残尿)を採取した。測定終了後に開腹し、腹部大動脈より放血致死後、膀胱組織を摘出し、湿重量を測定した。その結果、図7および8に示すように、STZ処置9週間後(薬物処置8週間後)、溶媒処置群(Control)において、膀胱容量および残尿量の増加が認められた。シロドシン処置群では膀胱容量および残尿量が低下した。 本発明の医薬組成物は、低活動膀胱の予防または治療剤として極めて有用である。シロドシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する低活動膀胱(ただし、下部尿路閉塞を伴う低活動膀胱は除く。)の予防または治療用医薬組成物。低活動膀胱が、糖尿病に伴う低活動膀胱である請求項1に記載の医薬組成物。低活動膀胱の予防または治療が、低活動膀胱に伴う膀胱過伸展の予防または治療である、請求項2記載の医薬組成物。シロドシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する低活動膀胱(ただし、前立腺肥大の下部尿路閉塞を伴う低活動膀胱は除く。)に伴う膀胱過伸展の予防または治療用医薬組成物。