生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_免疫再構築症候群(IRIS)の処置及び予防における使用のための血漿由来免疫グロブリン
出願番号:2013503124
年次:2013
IPC分類:A61K 39/395,A61P 37/02,A61P 39/00


特許情報キャッシュ

ルードヴィヒ・カッポス ジェンズ・キューレ JP 2013523801 公表特許公報(A) 20130617 2013503124 20110408 免疫再構築症候群(IRIS)の処置及び予防における使用のための血漿由来免疫グロブリン ウニヴェルズィテーツシュピタール バーゼル 510084138 結田 純次 100127926 竹林 則幸 100140132 ルードヴィヒ・カッポス ジェンズ・キューレ EP 10003762.1 20100408 A61K 39/395 20060101AFI20130521BHJP A61P 37/02 20060101ALI20130521BHJP A61P 39/00 20060101ALI20130521BHJP JPA61K39/395 YA61P37/02A61P39/00 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW EP2011055480 20110408 WO2011124668 20111013 24 20121116 4C085 4C085AA33 4C085CC22 4C085EE01 本発明は、免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome)(IRIS)の処置又は予防における使用のための血漿由来免疫グロブリンに関する。さらに本発明は、(a)血漿由来免疫グロブリン;(b)IRISの処置において血漿由来免疫グロブリンを投与するための使用のための指示書;及び場合により、(c)治療活性化合物/薬物を含む、IRISの処置のためのキット・オブ・パーツ(kit of parts)に関する。 本明細書において、特許出願及び製造者のマニュアルを含む多数の書類が引用される。これらの書類の開示は、本発明の特許性には関連しないとみなされるが、その全体として参照により本明細書に加入される。より詳細には、全ての参照される書類は、それぞれ個々の書類が具体的かつ個別に参照により加入されると示されるのと同じ程度まで参照により加入される。 免疫再構築症候群(IRIS)は、免疫抑制の終了後の免疫系の不均衡(dysbalance)を特徴とする病態であり、病理学的な炎症及び/又は自己免疫損傷を生じる。例えば、IRISは抗レトロウイルス治療/高度に活性な抗レトロウイルス治療(ART/HAART)の開始後のAIDS患者の分集団において観察されている。ARTの開始後の免疫系の修復が、炎症応答を生じる以前に抑制された免疫系のオーバーシュート/リバウンドをもたらすと記載されている(非特許文献1)。Beizhuisen及びGeerlings(非特許文献2)は、IRISの発症についての増加した危険性と関連する4つの因子を考察する:低いベースラインCD4 T細胞数、顕著なウイルス学的反応、ARTの開始時の日和見感染症と相関した増加した抗原荷重、及び最後に、日和見感染後のARTの早期開始。この再考察から、IRISを処置するための選択肢が限られるということが生じる。ARTの中断、コルチコステロイドの投与、及び病原体特異的治療が言及される。全ての選択肢が、多かれ少なかれ重篤な副作用と関連しているということが明らかである。根本的な機構がまだ十分に理解されておらず、そして理論に拘束されることは望まないが、IRISの臨床症状は、上述のような病理学的な炎症の症状である。免疫回復硝子体炎(IRV)はまた、HAARTにより処置されたAIDS患者において観察されており(非特許文献3)、そしてまたIRISの一形態とも考えられている。 IRISは、ARTの開始後のAIDS患者のみで見られるのではなく、免疫抑制が除去された場合の他の状態においても見られる。例えば、移植患者は免疫抑制処置を受け、これは感染症が発症する場合に一時的に中断することが必要となり得る。非特許文献4により報告された場合において、腎臓移植を受け、そしてクリプトコッカス−ネオフォルマンス(Cyptococcus neoformans)の感染に罹患した多数の患者が、免疫抑制処置の必要な一時中断の結果としてIRIS(IRS)を発症し、次いでこれがより多数の症例において移植の同種移植片拒絶を生じた。著者らは、この現象に対抗するために、日和見感染の開始時に免疫抑制を低減することを提案する。 免疫抑制はまた、免疫系に影響を及ぼす治療的抗体を用いた処置によっても引き起こされ得る。例えばナタリズマブは、α4β1インテグリン及びα4β7インテグリンのα鎖に結合するモノクローナル抗体である。α4β1インテグリンはリンパ球及び単球の表面に存在するが、通常は好中球及び造血前駆細胞のサブセット上に存在しない(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。ナタリズマブのα4β1インテグリンへの結合は、血液−脳関門を通る活性化リンパ球の接着及び血管外漏出を防止する(非特許文献8)。ナタリズマブは、2つの第III相試験において多発性硬化症(MS)における有効性を示しており(非特許文献9;非特許文献10)、これは高度に活性な、再発寛解型の症例における単剤療法として示されている。しかし、ナタリズマブ処置を長期間受けているMS患者で進行性多病巣性白質脳症(PML)を発症する患者の数が増加している。これは、おそらくJCウイルス(JCV)により引き起こされる脳の珍しい脱髄性疾患である。JCV曝露はヒトにおいて高度に流行性であり、成人の約50%はIgG血清陽性であり、そして推定で20%がJCVを尿に排出する(非特許文献11;非特許文献12)。この疾患は免疫無防備状態の個体(例えば免疫抑制剤での処置を受けている患者又はHIV患者)において発生し、非炎症性溶解反応並びに乏突起膠細胞及び星状細胞の死をもたらす。これらの患者におけるPMLの処置は、通常、例えば血漿交換及び免疫吸着によるナタリズマブの除去を含む。しかし、ナタリズマブの除去(すなわち、免疫抑制の終了/中止/除去)の後、次いでIRISを発症する患者もいる。Wenningらにより報告される(非特許文献13)1つの症例において、このような患者におけるIRISはステロイドで首尾よく処置される。 PMLはまた、リツキシマブ(抗CD20)及びエファリズマブ(抗CD11a)のような他の免疫調節性抗体を用いた処置の結果として見られる(非特許文献14、非特許文献15)。 血漿由来免疫グロブリン及び特にIVIGは、様々なこのような免疫調節性薬物誘導疾患の処置において使用されてきた。IVIGでの処置が成功しない場合もいくつかある。例えば、非特許文献16は、MS患者の症例を報告しており、その患者はインターフェロンベータ−1a及びナタリズマブでの処置の間にPMLを発症した。この患者の状態は、シドホビル、コルチコステロイド、及びIVIGでの処置にもかかわらずナタリズマブ治療の休止後に悪化した。しかし、彼の状態はシタラビンでの全身性処置の後に改善した。著者らは、彼が後にIRISに一致する症状も示したということを示した。非特許文献17は再発性リンパ形質細胞様リンパ腫の症例を報告し、これはリツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの化学療法に反応した。しかし、その後患者は胃腸炎及び敗血症の兆候を生じた。彼は最初は広域抗生物質、アシクロビル、ガンシクロビル、及びエリスロマイシンとともにIVIGを用いた処置に対して症候的に反応したが、悪化して14週後に死亡した。非特許文献18は、PMLがナタリズマブを用いたMS患者の処置の結果であり得ると記載した。一方でIVIGはPMLの処置におけるいくつかの可能性のあるツールのうちの1つとして考察されており、著者らは、PMLを処置するために使用される薬剤はどれも説得力のある臨床的改善をもたらさなかったように思われると認めている。他の報告は、単独で又は他の免疫調節性薬物との組み合わせのいずれかで、IVIGを免疫抑制により引き起こされる様々な障害(IRIS以外)における症状軽減のための有用な治療ツールと認めた。従って、Trappeらは、肝臓移植を受けていたEBV感染患者の処置におけるIVIGの使用を記載する。移植後に、おそらくEBV感染に起因して、患者は移植後リンパ球増殖性疾患(PTLD)を発症した。抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブでの処置は、化学療法と併せて、及び抗ウイルス治療と併せて、患者の状態を有意に改善しなかった。他方では、IVIGを用いた処置は、患者のかなり急速な回復をもたらした。非特許文献19は、リツキシマブ及びIVIGを用いた、自己免疫疾患である尋常性天疱瘡の処置を記載する。IVIG単独ではこの疾患の処置において成功しないことが見出された。それどころか著者らは、リツキシマブと、そしてまたおそらくリツキシマブのIVIGとの作用に起因する相乗効果が、観察された臨床応答の原因であったという結論を出している。非特許文献20は、リツキシマブで処置された、とりわけリンパ節腫脹に罹患した10歳の少年の症例を報告する。リツキシマブでの処置の後にB細胞数が急速に減少したために、この患者を特に可能性のある感染に対して保護するためにIVIGで処置した。IVIGの投与は患者の状態をかなり改善した。非特許文献21は、様々な臨床状況におけるIVIGの使用を概説する。例えば、IVIGは、例えばHLA感作移植患者における移植拒絶の処置において、リツキシマブと組み合わせて使用されてきた。非特許文献22は、パルボウイルスB19感染から生じる赤芽球ろうの処置におけるIVIGの有益な効果について考察し、ここでウイルス感染はB細胞非ホジキンリンパ腫に罹患したリツキシマブ誘導免疫抑制の結果であった。非特許文献23は、感染症又は自己免疫疾患の場合における投与を含むIVIGの様々な適用を要約する。特許文献1は、糸球体腎炎(glumerulonephritis)及びウェゲナー肉芽腫症の処置における、豊富な量の抗dsDNA抗体を含有するCohn/Oncley画分II/IIIの使用を記載する。WO2008/083680Wagner,Z.Rheumatol.67(2008),284−289The Netherlands Journal of Medicine 67(2009),327−332Henderson et al.,Br.J.Ophtalmol 83(1999),540−545Singh et al.,Transplantation 80(2005),1131−1133Alon R et al J Cell Biol(1995),128(6):1243−1253Johnston B,Kubes P.,Immunol Today(1999),20(12):545−550Arroyo AG et al Cell(1996),85(7):997−1008Coisne C et al J Immunol(2009),182(10):5909−5913Polman CH et al.,N Engl J Med(2006),354(9):899−91Rudick RA,Panzara MA.,Biologics(2008),2(2):189−199Egli A et al.,J Infect Dis(2009)Knowles WA et al.,J Med Virol(2003),71(1):115−123Wenning et al,N.Engl.J.Med.361(2009),1075−1080Carson et al,Lancet Oncology 10(2009),816−823Allison et al.,Nat.Biotech.28(2010),105−106Langer−Gould et al.(2005) N,Engl.J.Med.353,375−381Padate et al,Clin.Lab.Haem.28(2006),69−71Strueve et al.Arch.Neurol.64(2007)Ahmed et al.,N.Engl.J.Med.355(2006),1772−1778Cooper et al,British Journal of Hematology 146(2009),120−122Hartung et al,Clin.Exp.Immunol.158(Suppl 1),23−33(2009)Sharma et al.,Blood 96(2000),1184−1186Harvey,Supplemental Pharmacotherapy 25(2005),85S−93S 上で概説したように、IRISの処置は医療技術における深刻な問題を残したままである。様々な処置アプローチがとられてきたが、それらのアプローチは全て有害な副作用を伴い、それらの一部はむしろ深刻な性質のものである。従って、それらの有効性とは別に、特に患者の健康に対してより有益であるべき異なるアプローチを提供するための必要性が残る。この問題に対する解決策は、特許請求の範囲において特徴づけられる実施態様を提供することにより達成される。添付の実施例に示されるように、IVIGは驚くべきことに、他の処置計画が失敗した場合の二人の患者の全体の状態を改善した。これらの実施例は、血漿由来免疫グロブリン及び好ましくはIVIGがIRISの処置において首尾よく使用され得るという原理の証拠として考慮され得る。さらに、IRISの処置における従来技術に存在していた問題、すなわちかなり重篤な副作用を伴う化合物の必要な投与は、血漿由来免疫グロブリンの投与では見られない。この知見は当該分野で公知の全ての型のIRISに予期せぬ臨床処置の選択肢を開いた。従来技術に関連して考察してきたように、血漿由来免疫グロブリンは様々な臨床状態で使用されてきた。しかし従来技術は、血漿由来免疫グロブリン、特にIVIG又はSCIG製剤を、IRISの処置又は予防において使用することを開示も示唆もしていない。 従って、本発明は、第一の実施態様において、免疫再構築症候群(IRIS)の処置又は予防における使用のための血漿由来免疫グロブリンに関する。 本発明に従って、「血漿由来免疫グロブリン」は哺乳動物及び好ましくはヒト血漿由来のポリクローナル抗体画分を意味するように意図される。この関連で、用語「抗体」は、用語「免疫グロブリン」と交換可能に使用され得る。血漿のドナーは当該分野で定義されるように健康であるべきである。好ましくは、いくつかのドナー(好ましくは20より多く、より好ましくは100より多く、さらにより好ましくは500より多く、最も好ましくは1000より多い)健康なドナーの血漿がプールされ、そして場合によりさらに処理される。好ましくは、免疫グロブリン画分は、プールされた血漿から濃縮され、より好ましくは、免疫グロブリンはプールされた血漿から精製され、最も好ましくは免疫グロブリンは精製され、そして濃縮される。最も好ましくは、精製されたそして濃縮された免疫グロブリンG(IgG)が使用される。この文脈において用語「抗体」は、結合特異性をまだ保持しているその誘導体又はフラグメントも含む。このようなフラグメントは、とりわけFabフラグメント、F(ab')2又はFvフラグメントを含む。また、本発明は、血漿由来の免疫グロブリンに非血漿由来抗体を加えることも考慮する。 本発明に従って、血漿由来免疫グロブリンに加えられ得る非血漿由来抗体は、例えばポリクローナル又はモノクローナルであり得る。本明細書において使用され得る抗体には、IgクラスIgM、IgG及びIgAのものが含まれる。用語「抗体」はまた、結合特異性をまだ保持しているその誘導体又はフラグメントを含む。このようなフラグメントは、とりわけFabフラグメント、F(ab')2、Fvフラグメント又はscFv誘導体を含む。抗体及びそのフラグメントを製造するための技術は当該分野で周知であり、そして例えばHarlow and Lane 「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988及びHarlow and Lane 「Using Antibodies: A Laboratory Manual」 Cold Spring Harbor Laboratory Press,1998において記載される。抗体はまた、キメラ抗体、ヒト化抗体、炭水化物構造最適化抗体及び完全ヒト抗体のような実施態様を含む。種々の手順が当該分野で公知であり、そしてこのような抗体及び/又はフラグメントの製造のために使用され得る。さらに、単鎖抗体の製造について記載される技術は、上記の単鎖抗体又はそのフラグメントなどを製造するために適合され得る。また、トランスジェニック動物が、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体でさえも、又はそれらのフラグメントを発現させるために使用され得る。最も好ましくは、加えられる抗体はモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、限定されないが例えば非B細胞特異的抗体、例えばインテグリン特異的抗体、例えばナタリズマブであり得る。モノクローナル抗体の製造のために、連続細胞株培養により製造される抗体を提供するいずれかの技術が使用され得る。このような技術の例としては、最初はKoehler and Milstein Nature 256(1975),495−497により記載され、そしてさらに当該分野で開発されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor,Immunology Today 4(1983),72)、及びヒトモノクローナル抗体を製造するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985),77−96)が挙げられる。用語「抗体」が細胞で発現され得る抗体構築物、例えばとりわけウイルス又はプラスミドベクターを介してトランスフェクト及び/又は形質導入され得る抗体構築物を含むこともまた、本発明の状況において構想される。抗体が得られると、抗体自体又はそれをコードするDNAが配列決定され得、小規模又は大規模に組み換え技術により抗体を製造するための情報が提供される。組み換え抗体の製造方法もまた当業者に公知である。組み換え抗体はまた、例えばアイソタイプの転換、親和性成熟技術、エフェクター機能を変更するための改変、グリコシル化を変更するための改変などによりさらに改変され得る。当業者はこれらの技術を十分に知っている。 用語「免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome)(IRIS)」又は「免疫再構築症候群(immune reconstitution syndrome)(IRS)」は、免疫抑制の原因(これは根底にある状態(例えばAIDS)の結果であり得る)、又は免疫系を抑制するための種々の処置の結果(例えば移植後、炎症状態又は自己免疫疾患の処置のため)が終了されるか除去され、そしてその免疫抑制の終了の結果として、免疫系がオーバーシュートし、そして圧倒的な炎症反応及び/又は自己免疫損傷を伴って反応する患者の状況を指す。この炎症反応の突然の増加は、通常は発熱のような症状及び感染した組織への損傷を悪化させる可能性をもたらし、これがしばしば生命を脅かす状態へと発展する。この症候群は最も頻繁には感染性の原因、例えば日和見感染又は無症候性の感染と関連がある。IRISは、ウイルス感染、細菌、ミコバクテリア、真菌、原生動物若しくは蠕虫の感染、悪性疾患、自己免疫状態又は他の非感染性炎症状態に付随し得る。これはいくつかの器官系に同時に局在化し得るか又はそれらを含み得る。それは軽度であり得るか、又は特に中枢神経系が関与する場合、若しくは気道障害、臓器不全、若しくは臓器破裂のような合併症が発生する場合には生命を脅かすかもしれない。典型的にはARTの前にCMV網膜炎を処置されたAIDS患者において発生し、そして視力を危険にさらし得るCMV免疫回復硝子体炎も含まれる。 本発明はさらに、IRISの処置における血漿由来免疫グロブリンと併せたさらなる治療的に活性な化合物の使用を考慮する。これらのさらなる化合物は、血漿由来免疫グロブリンと同時に投与されても、血漿由来免疫グロブリンに対して逐次的な様式で投与されてもよい。このような薬剤の例としては、限定されないが、抗生物質、抗真菌化合物、抗ウイルス化合物及びコルチコステロイドが挙げられ得る。 好ましい実施態様において、血漿由来免疫グロブリンは血漿由来免疫グロブリンG(IgG)であり、より好ましくはヒト血漿由来IgGであり、さらにより好ましくは静脈内免疫グロブリンG(IVIG)又は皮下免疫グロブリンG(SCIG)である。 「IVIG」と略される用語「静脈内免疫グロブリンG」は、多数の(典型的には少なくとも1000)健康な個体の血漿から得られたプールされた多特異性免疫グロブリンGの治療用製剤を示す。これは通常は痕跡量の異なるIgクラス、例えばIgA又はIgMの免疫グロブリンを含有する(典型的には2%未満のIgM又はIgA、好ましくは1%未満)。典型的には、免疫グロブリンは>90%IgGであり、より好ましくは>95%IgG、さらにより好ましくは>98%IgGである。用語「健康な個体」は、当業者が十分に知っている献血に関する現在の(提供の時点で)標準的な適格性基準(このような適格性基準が継続的な改善及び変更を受けていることを踏まえて)を満たしている個体を意味する。IVIGは製品のほかに、好ましい投与経路、すなわち静脈内も示す。他方では、IVIGはまた皮下のような他の経路によっても投与され得る。好ましい実施態様において、IVIGは、少なくとも5%(質量/体積)の免疫グロブリン、より好ましくは少なくとも8%の免疫グロブリン、さらにより好ましくは少なくとも10%の免疫グロブリンを含有する液剤として提供される。この液剤は、安定剤、例えばプロリン若しくはグリシンのようなアミノ酸、又はスクロース、マルトース、ソルビトール、アルブミン、ニコチンアミド、PEG又はその他のようなさらなる成分を含有し得る。最も好ましくはIVIGはPrivigenTM又はSandoglobulinTM/Carimuneである。 SCIGと略される用語「皮下免疫グロブリンG」は、本発明に従って、IVIGのような、プールされた免疫グロブリンGの治療用製剤であるが、皮下投与用に製剤化されたものを意味する。別の好ましい実施態様において、SCIGは、好ましくは少なくとも10%(質量/体積)の免疫グロブリン、より好ましくは少なくとも15%の免疫グロブリン、最も好ましくは約20%の免疫グロブリンを含有する液剤として提供される。この液剤は、安定剤、例えばプロリン若しくはグリシンのようなアミノ酸、又はスクロース、マルトース、ソルビトール、アルブミン、ニコチンアミド、PEG、ポリソルベート80又はその他のようなさらなる成分を含有し得る。最も好ましくは、SCIGはVivaglobinTM又はHizentraTMである。 好ましい実施態様において、本発明は、IRISの処置又は予防における上記の血漿由来免疫グロブリンに関し、ここでIRISの発生は免疫抑制の終了により引き起こされる。 本発明のさらなる好ましい実施態様において、血漿由来免疫グロブリンは、免疫抑制の終了の前に、同時に、又は後に投与される。 好ましい実施態様において、IRISの発生は、治療的に活性な化合物又は「薬物」の活性により引き起こされる。 本明細書で使用される用語「薬物」は、化学的に合成された分子、さらには生物学的に産生された分子、例えばモノクローナル若しくはポリクローナル抗体、又は他の治療的に活性なタンパク質若しくは核酸を含む。他の治療剤、例えば細胞(例えば白血球)も含まれ得、これには幹細胞、例えば調節性T細胞、Tヘルパー細胞又は細胞傷害性T細胞のようなその亜群を含むT細胞が含まれる。細胞は、患者から取り出され、改変され、馴化され、又はインビトロ/エクスビボで濃縮され得、そして次いで患者に再導入され得る(例えば自家調節性T細胞)。 例えば、AIDS患者において、IRISの発生は、好ましくは異なる抗レトロウイルス薬、例えばヌクレオシド若しくはヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、移入(entry)若しくは融合阻害剤、成熟阻害剤、静ウイルス薬(virostatics)、又は広域阻害剤の組み合わせと共に、抗レトロウイルス薬での処置により引き起こされ得る。特に、抗レトロウイルス化合物の組み合わせは、HIV複製に対する複数の障害を生じさせて、それにより産生されるウイルス粒子の数を減らし、そして薬物の1つへの抵抗性を発生させる変異の出現の可能性を減らすために使用される。薬物の1つに対する抵抗性を伝達する変異が出現する場合、組み合わせ中の他の薬物が抵抗性変異の複製を抑制するように作用するはずである。最初の投与計画において使用される薬物の組み合わせの例は:エファビレンツ+ジドブジン+ラミブジン、エファビレンツ+テノホビル+エムトリシタビン、リトナビルでブーストされたロピナビル+ジドブジン+ラミブジン、又はリトナビルでブースとされたロピナビル+テノホビル+エムトリシタビンである。 従って、本発明の好ましい実施態様において、薬物は、HIV−1又はHIV−2での感染のようなHIV感染の処置において使用される、抗ウイルス薬、好ましくは抗レトロウイルス薬、好ましくは上記の抗レトロウイルス薬の組み合わせである。 別の好ましい実施態様において、IRISの発生は薬物の活性の中断により引き起こされる。薬物の活性の中断は、好ましくは薬物の投与の中断により達成される。 本発明のこの実施態様において、外部投与された薬物の中断が、IRISの発症をもたらす最初の事象である。例えば、このような外部投与された薬物は、治療的モノクローナル抗体、例えばキメラ又はヒト化抗体、例えば多発性硬化症(MS)の処置において広く使用されるナタリズマブであり得る。上述のように、まれにナタリズマブのような抗体での処置が、おそらくJCウイルスの活性化を介してPMLの発生に至る。これは通常、抗体の投与の中断か、又は抗体を積極的に除去するために血漿交換及び免疫吸収(immune absorption)も必要とする。その後、免疫系はJCウイルスのようなウイルス、又は他の微生物に対する増強された反応を示し得、これがIRISの臨床症状へと発展する。 本発明のこの実施態様において、薬物は細胞ベースの治療であってもよい。例えば、免疫抑制は調節性T細胞の投与により引き起こされ得、好ましくは患者自身の調節性T細胞がエクスビボで増殖されて免疫反応を静めるために患者に再導入され得る。この処置の終了はIRISの発生をもたらし得る。 本発明にしたがって、いずれの科学的理論にも拘束されることを望まないが、血漿由来免疫グロブリンは患者内の免疫バランスを回復させるために役立つと考えられている。このことは、IRISが薬物活性又は薬物活性の中断の結果である実施態様に当てはまる。 IRISの発生が薬物の活性の中断により引き起こされる場合、別の好ましい実施態様において、薬物はその中断の前に長期間、例えば移植後に、又は自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、炎症性腸疾患のような慢性炎症状態の処置において、又は多発性硬化症のような神経炎症(neuroinflammatory)状態の処置において使用された。長期間の使用は、典型的には1ヶ月より長く、好ましくは2ヶ月より長く、さらにより好ましくは3ヶ月より長く、最も好ましくは6ヶ月、1年、又は2年より長い。典型的には、薬物は免疫調節薬、好ましくは免疫抑制剤である。好ましくは薬物は免疫調節性抗体である。 異なる好ましい実施態様において、薬物は非B細胞特異的抗体である。 本実施態様に従う抗体は、抗体に関連して本明細書において上で記載されたいずれかの種類の抗体であり得る。「非B細胞」特異的抗体は、B細胞だけに存在するわけではないエピトープ/受容体、例えばCD20、CD19、又はCD21に特異的に結合する抗体である。 本発明に従って、「特異的に〜と相互作用する」と交換可能に使用される用語「特異的に結合する」は、抗体が、類似した構造のエピトープと交差反応しないか、又は本質的に交差反応しないことを意味する。研究中の抗体パネルの交差反応性を、例えば従来の条件下でのその抗体パネルの目的のエピトープに対する結合、さらには多数の多かれ少なかれ(構造的及び/又は機能的に)密に関連したエピトープに対する結合を評価することにより試験し得る。その関連した状況において(例えばタンパク質の構造中の特定のモチーフ)目的のエピトープに結合するが、他のエピトープのいずれにも結合しないか又は本質的に結合しない抗体のみが、目的のエピトープに対して特異的とみなされ、それ故本発明に従って記載される抗体であるとみなされる。対応する方法が、例えばHarlow及びLane,1988及び1999(上記引用文中)に記載される。この定義に該当する抗体としては、ナタリズマブ、エファリズマブ、アレムツズマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ビジリズマブ、ザノリムマブ(zanolimumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)及び類似のモノクローナル抗体が挙げられる。 ベラタセプト(belatacept)(Bristol−Myers−Sqibb)のようなT細胞を特異的に標的とする薬物もまた本発明に従って考慮される。ベラタセプトはT細胞抑制剤であり、より具体的には、CTLA−4の細胞外ドメインに連結されたヒトIgG1のFcフラグメントから構成される融合タンパク質である。このような薬物の別の例はアバタセプト(Orcenia)である。 より好ましい実施態様において、非B細胞特異的抗体は、インテグリンに対して特異的な抗体である。 インテグリンは、典型的には細胞の表面上に位置する膜貫通受容体である、ポリペプチド/タンパク質である。機能的には、それらは細胞と他の細胞との間の接着又は細胞外マトリクス(ECM)との接着を媒介する。インテグリンは、細胞接着分子、セレクチン又はカドヘリンのような他のタンパク質と一緒に作用する。 なおより好ましくは、インテグリンに対して特異的な抗体は抗インテグリンα4特異的抗体である。本発明に従って、このような抗体の主要な例及び特に好ましい実施態様は、その臨床的使用及び特性が本明細書において上で記載されたナタリズマブである。 本発明はまた、(a)血漿由来免疫グロブリン;(b)IRISの処置において血漿由来免疫グロブリンを投与するための使用のための指示書;及び場合により、(c)治療的に活性な化合物/薬物を含む、IRISの処置のためのキット・オブ・パーツ(kit of parts)に関する。 キット・オブ・パーツの構成要素は、1つ又はそれ以上のバイアルのような1つ又は異なる容器に入れられていてもよい。血漿由来タンパク質は、貯蔵寿命を増強するために液状又は固形(例えば凍結乾燥後)であり得る。液状形態である場合、血漿由来タンパク質は、本質的に貯蔵寿命を増強するためにも、安定剤及び/又は保存料、例えばプロリン、グリシン又はスクロースのような添加剤を含み得る。 キット・オブ・パーツは、血漿由来タンパク質と同時に、又は連続して投与しようとする治療的に活性な化合物/薬物(本発明のこの用語の定義に従う)のような異なる化合物を含み得る。このような化合物は、ビタミン類、抗生物質、抗ウイルス剤などのような異なる性質のものであり得る。 いずれかの場合も、使用のための指示書は、IRISの処置において血漿由来タンパク質を使用するための指示を含む。それらはさらに、血漿由来タンパク質の調製方法(例えば、凍結乾燥した血漿由来タンパク質の場合は、希釈又は再構成する)についての情報を含み得る。それらはさらに、投薬量及び投与の頻度に関する指針を含み得る。 キット・オブ・パーツは、(使用に関して言及された指示書を備えた)医薬組成物の形態であり得る。本発明に従って、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、上に記載された化合物を単独で、又は組み合わせて含む。本組成物は固形(この場合もやはり再構成するため)であっても、液状形態であってもよい。液状形態が好ましい。本発明の医薬組成物は、場合により、そしてさらに、薬学的に許容しうる担体を含み得る。本医薬組成物は、全身投与、例えば静脈内又は皮下投与され得る。投与のために適切な用量に対応する投薬計画は、担当医、及びとりわけその状態の病期又は重症度に依存し得る臨床因子により決定され得る。 本発明のキット・オブ・パーツの好ましい実施態様において、血漿由来免疫グロブリンは血漿由来IgG、好ましくはヒト血漿由来IgG、最も好ましくはIVIG又はSCIGである。 図面は以下を示す:頭部MRIにおける進行性多病巣性白質脳障害(PML)の経過(症例報告1):最上段は再発が疑われたために2009年1月14日に行われたMRIを示す。アキシャル及びコロナルのT2強調非増強(左(アキシャル水抑制シーケンスはこの時点で行われていない)及び中央の画像)及びコントラスト増強T1強調画像は、多発性硬化症に対応するわずかな質周囲非増強病変を示す(矢印)。 二番目(から四番目)の段は、2009年8月29日に行われた、アキシャル水抑制(左)、コロナルT2強調(中央)及びコントラスト増強T1強調の経過観察MRI画像を示す。右中央の領域における新しい高強度のわずかにガドリニウム(gd)で増強された、皮質下のリボン状病変の最初の実証は、腫瘤効果を示さず、そして皮質は回避している(sparing)(矢印)。第二の小さい高強度の非gd増強病変が、同じ側のさらに吻側に見られた(短い矢印)。 2009年9月28日に行われたMRI(三番目の段)は、高強度病変のわずかな進行を示し(左及び中央の画像)、そして低密度の円縁状(rim−shape)gd増強(右)を確認した。 2009年11月23日に、右中央の領域における高強度で同時に融合性の病変の劇的な悪化が見られた(左及び中央)。対応するT1信号は低強度で、gd増強はより顕著であった。 下段は2010年1月28日に行われた、アキシャル及びコロナルの水抑制(左及び中央(コロナルT2強調シーケンスはこの時点では行われていない)及びコントラスト増強T1強調の経過観察MRI画像を示す。融合性の右側の頭頂後頭病変はわずかに小さくなり(左及び中央)、リボン状のgd増強は存続していたが、点状のgd増強パターンはわずかに可逆性であった。脳生検材料の組織学的検査(症例報告1):組織学的検査は、実質性慢性リンパ球性炎症の徴候を示した(A:ヘマトキシリン及びエオシン)。CD4+−T細胞(B)はCD8+−T細胞(C)と同様の頻度であった。頻繁なミクログリア活性化が実証された(CD68)(D)。異様な星状細胞又はp53陽性封入体の徴候はなかった。JCV−及びSV−40染色は陰性であった。JCV(NINDS)のインサイチュハイブリダイゼーションは陰性であった。 以下の実施例は本発明を説明するが、本発明を限定することは意図されない。 実施例は、多発性硬化症に罹患した患者の2件の症例を示し、患者はPMLをナタリズマブ治療中に発症し、そしてナタリズマブを除去するとIRISを発症した。両方の患者が静脈内免疫グロブリン(IVIG)処置に対して少なくとも部分的に有利に反応した。本発明に従って、PML及び免疫再構築症候群(IRIS)を有するMS患者においてIVIGは有効な免疫調節性処置であることが見出され、これはCNSへの自己免疫損傷を回避しながら免疫再構築を可能にした。 免疫再構築は、PMLについての唯一の実績のある有効な治療であり(Crowder CDet al,Am J Transplant(2005),5(5):1151−1158;Shitrit D et al Transpl Int(2005),17(11):658−665;Kappos L et al.Lancet Neurol(2007),6(5):431−441)、そして血漿交換は血中のナタリズマブを急速に減少させる(Crowder CD et al,Am J Transplant(2005),5(5):1151−1158)。IRISは病原特異的免疫反応の回復に起因して発生する可能性が最も高く、そして臨床疾患又は疾患の悪化に関連付けられる(Crum−Cianflone NF,AIDS Read(2006),16(4):199−217;Shelburne SA et al.,Medicine(Baltimore)(2002),81(3):213−227)。平均α4−インテグリン飽和レベルは、ナタリズマブ注入の4週間後に70%より高いままであったが、MS患者におけるナタリズマブの薬物動態学的半減期は約11+/−4日であった(Khatri BO et al.,Neurology(2009),72(5):402−409)。薬物は12週まで循環中で検出可能であり、そしてCSF細胞数は6ヶ月までの間に減少した(Miller DH et al.,N Engl J Med(2003),348(1):15−23;Stuve O et al.,Arch Neurol(2006),63(10):1383−1387)。免疫再構築のバランスを保ってウイルス感染を制御することを可能にするが傍観者損傷を回避しようとする試みにおいて、本発明者らは独特のアプローチを行うことを決定し、そして高用量の静脈内免疫グロブリンを投与した。 実施例1:症例報告1(BR、27.10.60) 2007年11月に、48歳の女性が、1991年での彼女の顔面の右側におけるしびれ及び彼女の右腕の脱力の病歴を示した。彼女は1995年9月に両足の感覚運動不全麻痺を経験した。この第二のエピソードは、高用量のコルチコステロイドで処置され、そして症状は消失した。再発寛解型MSの最初の診断は、1995年9月のエピソードの後に臨床病歴、オリゴクローナルバンドを示すCSF及びT2強調画像において5つの脳室周囲病変を示す脳のMRIに基づいて為された。彼女は1996年10月から1999年1月までインターフェロンベータ−1b(ベタフェロン、1日おきに皮下で8MIU)で処置され、この薬物は、有効性のないこと、及び局所的副作用のために停止された。グラチラマー酢酸塩(Copaxone、毎日皮下に20mg)が1999年6月から1999年9月までの3ヶ月の期間にわたって処方され、その後それは局所的脂肪組織萎縮のために停止された(表1)。 彼女は、片頭痛、L4/5レベルでの腰部椎間板手術後の状態、及び抑うつの病歴を有しており、これにより1997年から100%労働不能になり、完全(full)障害年金を受ける。 患者は1995年から1年におよそ2回の再発があったと報告し、その頻度は上述の免疫調節処置により影響を受けなかった。左腕の感覚運動不全麻痺を伴う最後の再発は2007年7月に起こった。不全麻痺は軽症であり、そして2週間にわたって発達した。2007年11月の彼女を処置する神経学者への提示では、彼女は約3〜4km歩くことができた。彼女はわずかな回内筋流動(drift)及び左体肢の虚脱感を有し、左脚に軽度から中程度の横側の痙縮(paraspasticity)を訴えながら左側の反射は増加した。バビンスキー徴候は両側ともなかった。左の腕及び脚のわずかな拮抗運動反復不全及び測定障害もあり、そしてわずかに歩行失調及び痙縮があった。Kurzke拡大身体障害状態スケール(EDSS)における患者のスコアは3.0であった(0〜10の範囲に及ぶスケールで、より高いスコアはより高い身体障害を示す)。2007年12月における脳及び脊髄のMRIは、T2強調画像で9つの非増強脳室周囲病変を示した(1つの皮質下病変及び2つのテント下病変を含む)。頸髄(C4)における1つのT2高強度非ガドリニウム(gd)増強病変もあった(示していない)。 静脈内ナタリズマブ治療(4週毎に300mgの用量で)(NI)を2008年1月29日に開始した。3回目のNIは副鼻腔炎の臨床診断のために遅らされ、2回目の投薬の16週後の2008年6月24日に投与された。 2009年1月に、患者は顔を含む身体の左半分の進行性の知覚過敏及び異常感覚、平衡感覚の障害及び左脚の脱力を訴えた。脳及び脊髄のMRIを2009年1月14日に行い、これは2007年11月と変化なかった。Gd増強病変はなかった。以前に記載した脊髄病変はもはや見られなかった(図1)。 2009年2月24日の11回目のNIの投与時に、2009年1月に記載された症状は消えており、MSの再発であった可能性が最も高いと判断した。患者は具合が良く、MS疾患は安定しており、そして2009年5月には休暇を楽しんだ。2009年6月2日に14回目のNIが投与されたときに、彼女は二週前からの協調の問題及び左脚の脱力、並びに不安定歩行を報告した。15回目で最後のNIは、右側眼部帯状疱疹(2009年6月末に発生し、バラシクロビルで14日間処置された)が疑われたため、そして2009年8月上旬の気道感染のために、10週間遅らされた。彼女は、嚥下時の痛み、腫大した頚部リンパ節を報告し、咳、鼻感冒、発熱はなく、これらは両方とも2009年8月11日には解決し、このとき15回目のNIが投与された。 2009年6月2日に報告された左脚のわずかな脱力は持続し、そして2009年8月24日から2009年8月28日までの入院及び高用量コルチコステロイド処置に至った。頭部MRIを2009年8月29日に繰り返した(図1)。新しいT2−及び流体抑制反転回復法(Fluid−Attenuated Inversion Recovery)(FLAIR)高強度の、右中央領域に局在化したかすかにgd増強した皮質下のリボン状病変があり、これは腫瘤効果を示さなかった。同様に、より小さいT2−及びFLAIR高強度の病変が同じ側のより吻側で近軸に(parafalxially)見られた。PMLの診断が疑われ、そしてCSFが2009年9月2日に調べられ、これは1立方ミリメートルあたり1.0の白血球、正常な細胞学的所見、血液脳関門完全性のマーカーとしての正常なアルブミンCSF/血清比(qAlb 3.0(<7.4))、正常なCSF総タンパク質(0.33g/l)及びオリゴクローナルIgGバンドの存在を示した。CSFは3つの独立した研究所に送られた(H.H.Hirsch教授、臨床及び移植ウイルス学、医療微生物学研究所、バーゼル大学、スイス、及びK.Muehlemann教授、臨床微生物学、ベルン大学、スイス、及び神経学的障害及び発作の国立研究所(NINDS)における分子医薬及び神経科学研究室(Ryschkewitsch C et al J Virol Methods(2004);121(2):217−221))。CSF(及びNINDS研究室には血漿、血清、尿)におけるJCVについてのPCRは、3つの研究室全てにおいて一貫して陰性であった。ナタリズマブを除去するために、2サイクルのプラズマフェレーシスを2009年9月4日及び2009年9月7日に行った(それぞれ1.5血漿体積交換)(Khatri BO et al.,Neurology(2009),72(5):402−409)。 2009年9月28日に繰り返したMRI(図1)は、既に2009年8月29日に記載したT2−及びFLAIR高強度病変のわずかな進行を示した。gd増強は以前のスキャンと比較してわずかにより高くなった。再びPMLが疑われ、そして腰椎穿刺を行った(2009年10月15日)。再び、活動性炎症の徴候はなかった(1立方ミリメートルあたり1.0白血球、正常な細胞学的所見、正常なアルブミンCSF/血清比(qAlb 2.8(<7.4))、正常なCSF総タンパク質(0.28g/l)、オリゴクローナルバンドの存在)。JCV PCRを以前に述べた2つの国立研究所で行い、そしてそれらは再び陰性であった。免疫再構築症候群(IRIS)が疑われ、そして高用量コルチコステロイド処置が開始された(2009年10月19日から2009年10月23日までの5日間連続で5用量の500mgメチルプレドニゾロン)。 2009年11月23日の脳のMRIは、T2−及びFLAIR高強度で同時に融合性の病変の劇的な進行を示し、皮質は回避していた(sparing)(図1)。対応するT1信号は低強度であり、gd増強はより顕著であり、リボン−帯状で斑のgd増強パターンが右半球にあった。 患者は我々の病院に2009年11月27日に収容された。彼女は左腕の不全麻痺(M4/5)及び左脚の遠位で顕著な不全麻痺(近位M3−4/5、遠位M3/5)を有しており、彼女は数秒間伸ばした左脚を表面から2〜3cm上げることができた。彼女は過度の筋緊張、左側の増加した腱反射及び陽性の左側バラビンスキー徴候を有していた。感覚は左膝より下でやや障害されており、左足の位置感覚が障害されていた。彼女は助けなしに500−600m歩くことができ、EDSSスコアは4.0であった。 2009年11月27日のCSFの3回目の分析は、1立方ミリメートルあたり1.3白血球、正常な細胞学的所見、及び正常なアルブミンCSF/血清比(3.1,<7.3)及び総タンパク質(0.28g/l)を示した。等電点電気泳動は正(positive)であり、IgGの髄腔内割合は44%であり、IgAは39%、そしてIgMは8%であった(Felgenhauer K et al J Neurol Sci(1976),30(1):113−128;Reiber H,Felgenhauer K,Clin Chim Acta(1987);163(3):319−328)。再びCSFについてJCV PCRは全ての3つの上述の研究所において陰性であり、血漿において16コピー/mlを検出した。単純ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、水痘帯状疱疹ウイルス、エブスタイン−バー(Ebstein−Barr)ウイルス及びエンテロウイルスについてのCSFのPCRは陰性であった。HIVについての血清学的分析は陰性であり、全血球数、C反応性タンパク質レベル及び肝臓酵素レベルは正常であった。 右頭頂葉の定位脳生検を2009年12月10日に行った。脳組織からのJCV PCRは明らかに陽性であった(9.31*104 Geq/ml、12670 JCV−Geq/100000細胞に対応する)。組織学はIRISと十分に一致していた。ミクログリア活性化(CD68)及び慢性リンパ球性炎症があった(図2)。T細胞(CD5)は明らかにB細胞(CD20)に影響を及ぼしており、そしてCD4+−T細胞はCD8+−T細胞と同様の頻度であった。異様な星状細胞又はp53陽性封入体の徴候はなかった。JCV−及びSV−40染色は陰性であった。組織学はIRISと十分に一致すると記載される。JCVについてのインサイチュハイブリダイゼーション(NINDS)は陰性であった。 臨床的な悪化のために、高用量の静脈内免疫グロブリンを2009年12月17日から12月21日まで5日間連続で投与することを決定した(0.4g/体重Kg:21g)。1日に1回トラゾドン(Trazodon)75mgを抑うつの処置のために投与した。患者は2010年1月5日の彼女を処置する神経学者との次の経過観察時に、感覚鈍麻及び左脚の強度及び歩行能力の改善を示した。左側の反射はなお亢進しており、そしてバビンスキー徴候は陽性であった。MRIを2010年1月28日繰り返した(図1)。右側頭頂後頭病巣は小さくなる傾向があったが持続していた。点状のgd増強がまだ存在しており、2009年11月23日のMRIと比較して小さくなる傾向も示していた。同日に、彼女は左脚の強度及び歩行能力における改善を報告した。しびれの重症度は変動していたが持続していた。検査の際、彼女は正常な左右の視力及び左右別々の注視誘発眼振を有していた。反射は亢進しており、左で顕著であり、そして陽性の左側バビンスキー徴候が存在していた。左腕の強度は正常であったが、わずかな回内筋変動が存在した。左脚の不全麻痺は4/5近位及び遠位であり、彼女は明らかに伸ばした脚を45°まで約5秒間上げることができた。かかと及びつま先で歩くことは左ではできなかった。片足跳びは左で3回、そして右で7回できた。脚の筋緊張はわずかに増加した。繋ぎ足歩行(Tandem walking)は軽度の歩行失調のためにできなかった。左膝より下の感覚能はわずかに低下しており、彼女は悪化した軽い触感(light touch)又は疼痛を自覚していたが、鋭/鈍を完全に区別することができていた。彼女は軽度の尿意切迫を訴えたが失禁はなかった。歩行距離は約1.5Kmに改善していた。EDSSスコアは3.5であった。 実施例2:症例報告2(DG,11.09.64)「ナタリズマブ前」病歴(1994年2月〜2006年8月) 我々は、1994年2月にMSの最初の症状としてめまい感、右に倒れる傾向、複視及び頭痛を経験した45歳女性(10.02.10の時点で)の症例を記載する。検査は右腕のわずかな脱力及びしびれを示し、EDSSスコアは2.0であった。彼女は高用量コルチコステロイド(5日間にわたって5x500mg)(HDC)で処置された。MRIは6つのGd増強の無いT2高強度病変(T2H)を示し、CSFオリゴクローナルバンド及び正常な白血球数(5.3/μl)であった。 (1998年) 彼女は1998年5月に右眼の球後視神経炎を経験し、HDCで処置された、そして臨床的に明確なMSの診断が1998年5月8日に記述された。1998年7月のMRIは、いくつかの新しいT2Hを示した。彼女は1998年9月に顔の左半分におけるしびれを伴うさらなる再発を経験し、HDCで処置された。 (1999年) 1999には、週に3回のインターフェロンベータ1a、44μg(Rebif)が1999年6月に始まった後、1999年8月にしびれ及び疲労を伴う1回の増悪があり、HDCで処置された。この免疫調節処置は1999年9月20日に停止され(子供を持ちたいという要望)、1999年6月のMRIは3つのgd増強病変と共にT2Hの明らかな進行を示していた。 (2000年) 二番目の娘が09.08.00に生まれ、彼女は2000年3月と2000年9月の間に5用量の静脈内免疫グロブリン(IVIG)を受けた。週に3回のインターフェロンベータ1a、44μg(Rebif)は2000年9月に再開された。彼女は2000年10月に視力障害及び両脚における疼痛を伴うさらなる再発を経験した(HDC)。この再発の間のEDSSは2.0であり、そしてMRIは再び進行性のT2H及びいくつかのgd増強病変を示した。2000年12月のMRIにおいて2つの新しいT2H及び多数のgd増強病変があり、同じ時点で彼女は続発性全汎化(secondary generalization)を伴う部分複雑発作を経験し、バルプロエート治療が開始された。 (2001年) 高い再発活動性及び持続性の再発のために、ミトキサントロン処置が2001年1月15日に開始され(10mg/m2)、インターフェロンベータ1a(Rebif)は停止された。17mg用量のミトキサントロンを2001年1月15日(1.)、2001年2月5日(2.)、2001年2月26日(3.)、そして2001年4月4日(4.)に投与した。EDSSは2001年4月1日には2.0であった。新しいか又はgd増強の病変は2001年3月22日に行われたMRIにはなかった。彼女は他の軽症の再発(EDSS 2.0)を2001年7月に経験し、これはHDCで処置され、再発の時点でのMRIは2つの新しいT2H及び3つのgd増強病変を示した。ミトキサントロンを2001年7月13日(5.)、2001年8月7日(6.)、2001年11月13日(7.)と継続した。 (2002年) 2002年2月26日(8.)及び2002年7月18日(9.)。18.07.02の時点での累積ミトキサントロン用量は93.3mg/体表m2であり、EDSSスコアは1.5であった。2002年11月及び12月に、2回のさらなる再発(しびれ、疲労)があり、HDCで処置され、そしてインターフェロンベータ1a(Rebif)は2002年11月4日に再開された。2002年12月27日のMRIは、新しい病変を示さず、2つのgd増強病変を示した。 (2003年及び2004年) 2003年に彼女は1回の再発、そして2004年に4回の再発を経験し、HDCで処置された。EDSSは2004年末の時点で3.0であった。2004年11月のMRIは、T2H病変量(lesion load)の増加及び1つのgd増強病変を示した。 (2005年) 2005年1月25日にミトキサントロンを1回投与した(10.、累積:112.2m2体表)。彼女はわずかな複視、両腕のわずかな脱力、及び注意低下を有しており、疲労を訴え、EDSSスコアは3.0であった。2005年2月の神経心理学的評価は、軽度認知障害(主に注意及び記憶の欠損)という診断に至った。 (2006年) 2006年1月及び3月にさらなる再発があり、HDCで処置され、EDSSは最初の再発(3.0)及び2番目の再発(3.5)で安定していた。2006年6月のn MRIは、複数のブラックホールと共に少なくとも20の新しいgd増強病巣を示した。彼女は2006年6月に不全対麻痺を伴う深刻な再発(EDSS 3.5)を経験し、これはHDCで2回処置された。グラチラマー酢酸塩(Copaxone)を2006年6月以降投与し、そして局所的副作用及び不耐のために2006年9月に停止した。2006年7月に、彼女は右顔面麻痺及び右側核間性眼筋麻痺(INOP)、中程度の講和障害、片側運動失調及び注意欠陥の増加を伴う別の深刻な再発を経験した。2回のHDCに続いて6回の血漿交換を行った。2006年8月に彼女はてんかん重積持続状態のために入院し、バルプロエート及びレベチラセタムで処置された。2006年8月のMRIは、複数のブラックホール及び13のリング状増強病巣を示した。CSFの検査は2.7細胞/μl、正常血液−脳関門機能及びオリゴクローナルバンドの存在を示した。2006年9月のEDSSスコアは3.5であった。 ナタリズマブ(2006年9月〜2009年9月) 2006 2007 2008 2009 ナタリズマブ(300mg iv、4週毎)処置を2006年9月に開始した。疾患は目覚ましく安定した。2007年4月に、軽度〜中程度の神経心理学的障害があり、これは患者の意見では改善しつつあった。EDSSは2.5〜3.0の間で安定しており、彼女は2009年6月まで新しい症状も悪化する症状も経験しなかった。2006年8月と比較して2009年2月のMRIは1つの可能性のある新しいT2Hを示し、増強病巣はなかった。 PML(2009年7月〜2009年10月) 2009 2009年7月に右側の軽度の半盲がわかり、EDSSは3.0であった。ナタリズマブを15.09.09に停止した(全体で36回の注入)。2009年9月に彼女と彼女の夫は構音障害の悪化、増加した認知障害を訴え、彼女は彼女の娘の宿題(数学)を理解しなかったのでもはや娘の宿題を手伝うことができなかった。臨床的検査は、右側の半盲、不完全な右側INOP、軽度の構音障害、過剰(exaggerated)BSR及びTSR、過剰PSR、陽性両側バビンスキー徴候、左臀部屈曲はM4/5であり、右腕回内、両脚の軽度の衰弱(sinking)、両側で片足跳び1〜5回、軽度の横側の痙縮(paraspasticity)、軽度の測定障害及び四肢全ての反復拮抗運動不全、繋ぎ足歩行は明らかに障害されており、軽度の歩行失調、目を閉じたロンベルク試験での軽度の不安定性、振動感覚は両方の下肢で7/8であり、精神機能の軽度の低下、中程度の疲労を示し、歩行距離は2−3kmと報告され、EDSSスコアは3.0であった。 24.09.09に行われたMRIは、増強を示さなかったが新しいT2H、T1低強度病変 頭頂側頭骨左及び左側後頭極(occipito−polar)(U線維を含む)を示し、新しいT2Hが左側の後外側橋(posterolateral pons)及び前延髄(anterior medulla oblongata)にあった。CSF検査を28.09.09及び30.09.09に行い、白血球数は1.0細胞/ulであり、血液脳関門機能は両方の場合に正常であった。等電点電気泳動は1回目でCSFと血清とで同一のバンドの結果になり、そしてCSF特異的オリゴクローナルバンドが二回目のサンプルで検出された。IgG、IgM及びIgAの髄腔内割合(intrathecal fractions)は、両方のサンプルで0%であった(Felgenhauer et al.,1976;Reiber and Felgenhauer,1987)。CSFサンプルを神経学的障害及び発作の国立研究所(NINDS)NINDの分子医薬及び神経科学研究室に送った。JCVが両方のCSFサンプルで検出された(28.09.09:1333コピー/ml(遠心分離);30.09.09:2374コピー/ml(非遠心分離))。血清、血漿及び尿におけるJCV PCRはそれぞれ9、18及び40コピー/mlの検出に至った。 患者を2009年9月29日から2009年10月12日まで入院させて、5回の血漿交換を30.09.09と09.10.09の間に行った。2009年10月14日に構音障害はわずかに進行性であり、そして彼女は軽度から中程度の神経心理学的障害を有していた。EDSSスコアは4.0であった。 IRIS(2009年10月〜...) 2009年10月16日のMRIは少数のgd増強病巣を示した。200mgプレドニゾンp.o.での処置が22.10.09に開始された。10月26日に患者は歩行問題の増加、及び認知障害の悪化を訴え、彼女は転倒の危険を伴う重篤な歩行失調を有しており、EDSSスコアは5.5であった。 患者は2009年10月26日から2009年11月17日まで入院した。彼女は1000mgメチルプレドニゾロンを2009年10月26日から10月29日まで投与され、2009年10月30日から2009年11月3日まで200mgを投与され、そして2009年11月16日まで経口タッパー(oral tapper)であった。この入院の間の3回のMRIは進行もgd増強も示さなかった。2009年11月16日のCSF分析はJCVに関して陽性であったが、炎症活性の徴候は示さなかった(正常白血球数及び血液脳関門機能)(分析はNINDSの研究室で行われた:CSF:1978コピー/ml(非遠心分離)、2514コピー/ml(遠心分離)、血清:45コピー/ml、血漿:131コピー/ml)。退院時に彼女は補助なしに5メートル歩くことができた。 彼女は2009年11月24日から2010年1月7日まで再び入院した。彼女は構音障害の悪化を訴え、見当識障害であり、失行症の徴候を示し、そして歩こうとすると右に転倒した。彼女はかかとで立つことができず、そして両側の援助がある場合のみつま先で立つことができた。進行性の糞尿失禁があった。試験時に(24.11.09)、彼女は覚醒しており、時間に対して見当識が保たれておらず、場所及び状況に対しては部分的に見当識が保たれ、そして右側の半盲、構音障害、全失語症、右腕の痙縮を示し、筋力は協力がなかったために試験できず、右腕の衰弱、測定異常及び右腕の緩徐拮抗運動反復不全(bradydisdiadochokinesis)を示した。測定異常及び陽性右側バビンスキー徴候を伴う右脚で顕著な中程度の横側の痙縮(paraspasticity)、右脚の不全麻痺M4/5があった。EDSSはこの時点で8.0であった。 2009年11月24日のMRIは、いくつかのgd増強病変を示し、これらは30.11.09の経過観察の際に進行性であった。右小脳、右延髄、左側の皮質下頭頂−弁蓋(operculo)−側頭(temporally)及び左の半卵円中心にgd増強があった。右側の小脳腕(brachium cerebelli)にもより大きなT2Hがあった。Gd活性は07.12.09に持続しており、16.12.09には複数のgd増強病変があり、単一の病変も新しい増強を示し、いくつかはgd増強のわずかな減少も示した。28.12.09には頭頂後頭左及び弁蓋側頭左に進行性の増強、並びに小脳の両側に既知のgd増強があった。延髄の中心に新しい増強があった。 彼女は静脈内メチルプレドニゾロン1000mgで2009年11月25日から11月27日まで処置され、そして125mgで2009年11月28日から11月29日まで処置された。彼女は2009年12月1日から12月5日及び2009年12月19日から12月23日まで2サイクルのIVIG(連続5日間で24g)を投与された。これら2サイクルのIVIGの後、構音障害、認知及び実行の改善があった。右腕の増加した強度が認められた。適切なはい/いいえの回答及び単一の理解可能な言葉を再び発した。この患者は2010年1月7日に退院して社会復帰した。 2010年2月9日のMRIは進行した数のT2Hを示した。テント上及びテント下のgd増強病変の数の進行もあった。 2010年2月11日の臨床試験において、最も良い視力は右目で0.8及び左目で1.0であった。右への完全な同側半盲があった。不完全な右側の核間性眼筋麻痺及び30°の水平注視の際の持続した眼振があった。反射は亢進し、そしてバビンスキー徴候は両側で陽性であった。右腕の強度は4/5であり、そして右側の臀部屈曲についても4/5であった。腕の位置試験は左に軽度の回内及び右に明らかな回内を示した。下肢における衰弱についても同じことが見られた。運動失調及び失行のために片足跳びはできなかった。脚における筋緊張は穏やかに増加しており、明らかな歩行痙縮があった。 この患者は、軽度の頭部振戦及び中程度の測定異常、並びに全ての範囲の機能を妨げる右腕及び脚の運動反復不全を示した。明らかに繋ぎ脚歩行をすることはできず、通常歩行での平衡が異常であり、そして彼女はロンベルク手技において眼を開けたまま立つことができなかった。感覚能は認知障害のため信頼して試験できなかった。彼女は腸又は膀胱の問題は否定した。彼女は時間に対する見当識が保たれていなかったが人物及び場所については保たれおり、そして別の人物の補助により120mより長く歩くことができた。EDSSは2009年11月24日の8.0から6.0に改善した。 彼女は別のサイクルのIVIG(連続した5日間で24g)を2010年2月13日に開始した。 結論として、両方の患者が静脈内免疫グロブリン(IVIG)処置に対して有利に反応した。我々は、免疫再構築症候群(IRIS)を有する患者(例えばナタリズマブ処置がPMLのために中断されてIRISとなった場合のMS患者)においてIVIGが有効な免疫調節処置であり、CNSに対する自己免疫損傷を回避しながら免疫再構築を可能にすると仮定する。 免疫再構築症候群(IRIS)の処置又は予防における使用のための血漿由来免疫グロブリン。 静脈内免疫グロブリンG(IVIG)又は皮下免疫グロブリンG(SCIG)である、請求項1に記載の血漿由来免疫グロブリン。 IRISの発生が、免疫抑制の終了により引き起こされる、請求項1又は2に記載の血漿由来免疫グロブリン。 血漿由来免疫グロブリンが、免疫抑制の終了の前に、同時に、又は後に投与される、請求項3に記載の血漿由来免疫グロブリン。 IRISの発生が、薬物の活性により引き起こされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物が抗ウイルス薬である、請求項5に記載の血漿由来免疫グロブリン。 IRISの発生が、薬物の活性の中断により引き起こされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物が調節性T細胞を含む、請求項5に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物が免疫抑制剤である、請求項7に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物がT細胞抑制剤である、請求項7に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物が抗体である、請求項7又は9に記載の血漿由来免疫グロブリン。 抗体がインテグリンに特異的な抗体である、請求項11に記載の血漿由来免疫グロブリン。 インテグリンに特異的な抗体が抗インテグリンα4特異的抗体、好ましくはナタリズマブである、請求項12に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物が、中断前の延長された期間の間投与される、請求項7〜13のいずれか1項に記載の血漿由来免疫グロブリン。 薬物が自己免疫状態又は炎症状態の処置として投与される、請求項7〜14のいずか1項に記載の血漿由来免疫グロブリン。 自己免疫状態又は炎症状態が多発性硬化症、関節リウマチ、又は炎症性腸疾患である、請求項15に記載の血漿由来免疫グロブリン。 (a)血漿由来免疫グロブリン; (b)IRISの処置又は予防において血漿由来免疫グロブリンを投与するための使用のための指示書;及び (c)場合により、医薬化合物を含む、IRISの処置のためのキット・オブ・パーツ。 本発明は、免疫再構築症候群(IRIS)の処置における使用のための血漿由来免疫グロブリンに関する。さらに本発明は、(a)血漿由来免疫グロブリン;(b)IRISの処置において血漿由来免疫グロブリンを投与するための使用のための指示書を含む、IRISの処置のためのキット・オブ・パーツに関する。


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