生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_エンテロバクター種638およびその使用方法
出願番号:2013500090
年次:2013
IPC分類:C12N 1/20,C12N 1/21,A01G 7/00,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

ニューマン リー ヴァン ダー レリー ダニエル タガヴィ サフィー JP 2013521803 公表特許公報(A) 20130613 2013500090 20110310 エンテロバクター種638およびその使用方法 ブルックヘヴン サイエンス アソシエイツ リミテッド ライアビリティ カンパニー 501050830 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 志村 将 100162422 ニューマン リー ヴァン ダー レリー ダニエル タガヴィ サフィー US 61/313,415 20100312 C12N 1/20 20060101AFI20130517BHJP C12N 1/21 20060101ALI20130517BHJP A01G 7/00 20060101ALI20130517BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130517BHJP JPC12N1/20 AC12N1/21C12N1/20 EA01G7/00 605ZC12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2011027842 20110310 WO2011112781 20110915 56 20121112 4B024 4B065 4B024AA07 4B024AA08 4B024AA11 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA05 4B024EA04 4B024HA12 4B065AA01X 4B065AA01Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065AC20 4B065BA02 4B065CA47 4B065CA49 4B065CA53関連出願の相互引用 本出願は、米国仮特許出願61/313,415(2010年3月12日出願、前記出願は参照によりその全体が本出願に含まれる)の優先権を主張する。 本発明は米国エネルギー省のコントラクト番号DE-AC02-98CH10886により政府の支援を受けて達成された。政府は本発明において一定の権利を有する。 本発明は、エンテロバクター(Enterobacter)の新規な種および、とりわけ植物の生長および発育に関連するその使用に関する。 地球の気候変動は農業の生産性に大きな影響を与えると予想できる。例えば、化石燃料の燃焼に由来する排出物の増加は地球の気候に影響を及ぼしたと考えられ、このことは再生可能資源に由来するバイオ燃料の生産を一層希求させた。気候変動が農業の生産性に大きな影響を及ぼすと予想されるまた別の有り様は、気温の上昇および降雨パターンへの影響によるものである。 バイオ燃料製造用供給原料の生産における農業資源の需要量増加が希求されるが、この需要量増加は、依然として増大し続ける世界人口を養う食糧の同時的需要量増加と天秤にかけられる。 したがって、食糧とバイオ燃料供給原料の生産を最適化するために用いることができる持続可能な手立てが希求される。そのような手立ては、持続可能な態様で全体的な植物生産性を最適に増進させ、作物および供給原料が降雨パターンの大きな変動に耐えることができるように植物の乾燥耐性を増加させ、植物の病原体感染耐性を増進させるであろう。 ある特徴では、本発明はエンテロバクター種638の単離培養物に関する。 別の特徴では、本発明は植物用接種物に関する。前記接種物は、エンテロバクター種638の単離培養物および生物学的に許容できる媒体を含む。 さらに別の特徴では、本発明は植物で生長を増進させる方法に関する。前記方法は、植物で生長を増進させるために有効な量で植物に組成物を適用する工程を含み、前記組成物はエンテロバクター種638の単離培養物を含む。 さらに別の特徴では、本発明は植物でバイオマスを増加させる方法に関する。前記方法は植物でバイオマスを増加させるために有効な量で植物に組成物を適用する工程を含む。前記組成物はエンテロバクター種638の単離培養物を含む。 さらに別の実施態様では、本発明は植物で果実および/または種子の生産性を増進させる方法に関する。前記方法は、植物で果実および/または種子の生産性を増進させるために有効な量で植物に組成物を適用する工程を含む。前記組成物はエンテロバクター種638の単離培養物を含む。 また別の特徴では、本発明は植物で病気耐性を増進させる方法に関する。前記方法は、植物で病気耐性を増進させるために有効な量で植物に組成物を適用する工程を含む。前記組成物はエンテロバクター種638の単離培養物を含む。 また別のさらなる特徴では、本発明は植物で乾燥耐性を増進させる方法に関する。前記方法は、植物で病気耐性を増進させるために有効な量で植物に組成物を適用する工程を含む。前記組成物はエンテロバクター種638の単離培養物を含む。 本発明の他の目的、利点および特徴は以下の詳述および図面から明白となろう。エンテロバクター種638株の16S系統分析である。エンテロバクター種638の染色体の環状図である。表示されている環は外側から以下を示す:1000-bpウィンドウ当たりのGCパーセント偏差(GCウィンドウ−平均GC)、時計回り方向で転写される予想CDS、反時計回り方向で転写される予想CDS、それらのCOGクラスにしたがって色付けした時計回りおよび反時計回り方向のCDS、全てのパリンドロームリピートの位置、100のパリンドロームリピート(CCCTCTCCCXX(X)GGGAGAGGG)(配列番号:1)の位置、1000-bpウィンドウ当たりのGCスキュー(G+C/G−C)、およびキロ塩基対についての座標。大腸菌(E. coli)K12に匹敵する合成領域は橙色で表した遺伝子で示され、一方、紫色で表した遺伝子は非合成領域と一致する。矢印は、E. coli K12とシンテニーを示さない領域に位置する遺伝子の推定的機能を示す(各領域の遺伝子の内容に関する更なる詳細については表1を参照されたい)。シンテニー領域は、細菌のゲノム配列に存在し、さらに他の細菌ゲノム内の同じ遺伝子と類似する遺伝学的構成を示す少なくとも3つの連続する遺伝子によって規定される。エンテロバクター種638プラスミドpENT638-1の環状図である。表示の環は外側から以下を示す:pNET-01グループの機能、遺伝子アノテーションによる細分割、1000-bpウィンドウ当たりのGCパーセント偏差(GCウィンドウ−平均GC)、時計回り方向で転写される予想CDS(赤色)、反時計回り方向で転写される予想CDS(青色)、1000-bpウィンドウ当たりのGCスキュー(G+C/G−C)、IS因子(桃色)および偽遺伝子(灰色)由来の転移因子。毒素/抗T毒素(TA)系は星印(*)により示されている。種々の内生細菌を接種したポプラの挿穂の生長インデックスを示す。生長インデックスは、接種して挿穂を砂質土壌に植えてから10週間後に決定した。各条件につき、7植物を用いた。植物は温室で生長させた。非接種植物を参照として用いた。棒線は標準誤差を示す。生長インデックスは、接種および非接種植物を10週間生長させた後で(Mt−M0)/M0として計算した。M0は0週の植物の重量(g)であり、Mtは10週間後の植物の重量(g)である。非接種コントロール植物のバイオマス生産と比較した接種植物のバイオマス生産増加の統計的有意は、Dunnett検定を用いて5%レベル(**)で確認した。ポプラDN-34のシュートおよび根の形成におけるエンテロバクター種638の作用を示す。株638の非存在下(コントロール)または存在下(638)の2/1濃度のホアグランド(Hoagland)溶液中で植物を水耕法によりインキュベートした。根およびシュートの発育は1週後(A)および10週後(B)に提示される。4ヶ月の生長期間にわたって収穫したトマトの全重量を示す。エンテロバクター種638を接種した植物は、非接種コントロール植物と比較して10%高い収量を示した。コントロールとしての非接種ヒマワリと比較して、エンテロバクター種638を接種した植物のヒマワリの接種から開花までの時間の短縮を示す。植物抽出物の非存在下(上段のクロマトグラフ)または存在下(下段のクロマトグラフ)で増殖させたエンテロバクター種638の抽出物のクロマトグラフの比較を示す。植物抽出物の存在下におけるアセトニンおよび2,3-ブタンジオールの産生に留意されたい。この結果はシュクロースを含む限定培地で確認した。それらの遺伝学的局在性に依存する、特定のCOGクラス由来遺伝子のパーセンテージを示す:染色体またはpENT638-1。COGクラスの説明:D:細胞周期制御、細胞分裂、染色体分配;M:細胞壁/膜/エンベロープのバイオジェネシス;N:細胞運動性;O:翻訳後改変、タンパク質転換、シャペロン;T:シグナルトランスダクションメカニズム;U:細胞内輸送、分泌および小胞内輸送;V:防衛メカニズム;W:細胞外構造物;J:翻訳、リボソーム構造物およびバイオジェネシス;K:転写;L:複製、組換えおよび修復;C:エネルギー生産および変換;E:アミノ酸輸送および代謝;F:ヌクレオチド輸送および代謝;G:炭水化物輸送および代謝;H:補酵素輸送および代謝;I:脂質輸送および代謝;P:無機イオン輸送および代謝;Q:二次代謝物生合成、輸送および異化;R:一般的機能の予想のみ;S:機能不明。エンテロバクター種638の染色体上のパリンドロームリピートの分布を示す。環は以下を示す(外側から):時計回りおよび反時計回り方向で転写される予想CDS、エンテロバクター種638のゲノム上で見出される全てのパリンドロームリピートおよび“CCCTCTCCCXX(X)GGGAGAGGG”(配列番号:1)パリンドロームリピートの位置、GCパーセント偏差、GCスキュー。横の表は、XX(X)ヌクレオチド配列の変型およびそれらの累積数を示す。エンテロバクター種638を接種したときのタバコのバイオマス生産の増加を示す。比較のために、非接種コントロール植物およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)W619を接種した植物を加えた。タバコについては、エンテロバクター種638を接種した植物はもっとも高い生長増進を示しただけでなく、ヒマワリで観察されたようにより速い開花の開始を示した。発明の詳細な説明 本発明のエンテロバクター種638の生物学的寄託は、ATCC特許供託所(1080 University Blvd., Manassa, VA 20110)により2011年3月4日に実施された。A.エンテロバクター種638の培養 ある特徴では、本発明はエンテロバクター種638の単離培養物に関する。エンテロバクター種638は非植物病原性細菌株である。エンテロバクター種638株は、四塩化炭素およびトリクロロエチレンで汚染された地下水をその下に有するシルト性ローム土壌で生長したハイブリッドポプラ樹H11-11から採取した表面消毒根および幹のサンプルから好気性条件下で単離された。 エンテロバクター種638株は、52.98%の全G+C含量を有する4,518,712bpの単一環状染色体を含み、さらに前記は、50.57%の全G+C含量を有する157,749bpのプラスミドpENT638-1を安定的に含む。pENT638-1プラスミドは、GC含量に基づいて少なくとも4つの別個の領域を提示する(図3)。pENT638-1プラスミドは他の腸内細菌科で見出されるFプラスミドと関係を有する。この科のプラスミド(例えばペスト菌エルジニア・ペスチス(Yersinia pestis)のpFraプラスミド)は宿主相互作用およびビルレンスと密接な関係を有する。pENT638-1では、しかしながらpFraの病原性島領域(island)は、固有の23kbの推定的ゲノム内島領域(インテグラーゼ遺伝子によってフランキングされ、プラスミドの残余部分のGC含量と有意に異なるGC含量を有する)によって置き換えられている。 “単離培養物”は他の物質を含まない微生物の培養物を指す。前記他の物質とは(i)当該微生物が増殖する土壌で通常見出される物質、および/または(ii)ある物質から当該微生物を単離した前記物質である。さらにまた、そのような培養物は、当該培養物の複製を妨げるような量または通常の細菌学的、分子生物学的および/または化学的技術によって検出されるような量で、他のいずれの生物学的物質種、微生物種および/または細菌種も含まない培養物であり得る。B.植物用接種物 別の特徴では、本発明は植物用接種物に関する。本接種物はエンテロバクター種638および生物学的に許容できる媒体を含む。“微生物接種物”または“接種物”という用語は、エンテロバクター種638の単離培養物を含む調製物を指す。 エンテロバクター種638の培養を容易にするために、前記培養物を例えば適切な媒体または担体で希釈することができる。“生物学的に許容できる媒体”とは、エンテロバクター種638の生物学的活性の有効性を損なわず、かつエンテロバクター種638にとって有害ではない媒体を指す。 生物学的に許容できる媒体の例には、グルコネート含有最小塩培地および稀釈された富裕培地(1/100 LB)が含まれる。生物学的に許容できる媒体は、炭素源(例えば以下の例示的化合物:D-マンニトール、ラクトース、シュクロース、アルブチン、サリシン、トレハロース、D-マンノース、L-アラビノース、マルトース、セロビオース、キシロース、グルコネートおよびグルコース)を含むことができる。好ましくは、媒体は、グルコース、シュクロース、他の植物誘導糖、および/または植物生長促進植物ホルモン(アセトニン、2,3-ブタンジオール、図8参照)の誘発を誘導するポプラ抽出物を含む。 ある実施態様では、接種物はさらに植物生長促進微生物(例えば植物生長促進性内生細菌、真菌、根圏細菌および/または菌根真菌を含む)を含む。具体的な例示的植物生長促進微生物には以下の属のメンバーが含まれるが、ただしこれらに限定されない:アクチノバクター、アルカリゲネス、バシルス、ブルクホルデリア、ブッチアウキセラ、エンテロバクター、クレブシーラ、クルイベラ、シュードモナス、ラーネラ、ラルストニア、リゾビウム、セラチアおよびステノトロホモナス。C.生長を増進させる方法 別の特徴では、本発明は植物の生長を増進させる方法に関する。前記方法は、エンテロバクター種638の単離培養物を含む組成物の有効量を植物に適用する工程を含む。 本明細書で用いられる“植物”は、任意のタイプの植物、例えば高木、低木、花、草本、つる植物、または草を指す。“植物”という用語はまた、植物の任意の部分、例えば全植物、植物の部分、植物細胞、もしくは植物細胞群(例えば植物組織)、または前記の子孫を指す。苗木もまた“植物”の意味に含まれる。植物には、例えば任意の裸子植物および被子植物、単子葉植物および双子葉植物の両植物、並びに木本が含まれる。 単子葉被子植物の例にはアスパラガス、飼料用および食用トウモロコシ、オオムギ、コムギ、コメ、ソルガム、タマネギ、トンジンビエ、ライムギおよびエンバク並びに他の穀類、サトウキビ、アフリカチカラシバ、アメリカクサキビおよびミスカンタスが含まれるが、ただしこれらに限定されない。 双子葉被子植物の例にはトマト、タバコ、ワタ、アブラナ、フィールドビーン、ダイズ、コショウ、レタス、エンドウ、アルファルファ、クローバー、菜っ葉作物もしくはブラシッカ・オレラセア(Brassica oleracea)(例えばキャベツ、ブロッコリ、カリフラワー、コモチカンラン)、ラディッシュ、ニンジン、サトウダイコン、ナス、ホウレンソウ、キュウリ、カボチャ類、メロン、マスクメロン、ヒマワリおよび種々の観賞植物が含まれるが、ただしこれらに限定されない。好ましい実施態様では、植物はトマトである。別の好ましい実施態様では、植物はヒマワリである。さらに別の好ましい実施態様では、植物はタバコである。 木本植物種の例にはポプラ、マツ、セコイア、スギ、オークなどが含まれる。さらに木本種には例えばモミ、マツ、トウヒ、カラマツ、スギ、ベイツガ、アカシア、ハンノキ、アスペン、ブナ、カバ、モミジバフウ、アメリカスズカケノキ、ポプラ、ヤナギなどが含まれる。好ましい実施態様では、植物はポプラである。 本明細書で用いられるように、生長を“増進させる”という用語は、本発明の方法または組成物で処理された植物の特徴的な生長の増進を指し、この場合、生長指標の増加は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させたときの対応するコントロール植物の成長よりも高い。“対応する”コントロール植物は、本発明の方法または組成物で処理した植物と同じタイプまたは種である野生型植物を指す。 生長増進は、植物の特定部分(例えば根、シュート、葉、花、果実および/または種子)の生長増進であってもよく、また生長が植物全体に及ぶものであってもよい。生長を測定する手段は当分野で公知である。 生長増進には、例えば、植物および/または植物の部分における以下の指標の少なくとも1つまたは組合せの増進を含むことができる:高さ、幅、質量、放射性炭素の蓄積、乾燥重量の増加、新鮮重の増加および/または特定期間における前記増加の速度の増加。 生長増進にはまた、例えば果実の生産量の増加、開花までの時間の短縮、および/または有用な目的に供される栄養部分(前記部分が食物源となる植物の例えば根または塊茎)の質量の増加が含まれ得る。 生長増進は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物の生長と比較したとき、2、4、5、6、8、10、20倍(またはそれより高い)増加であり得る。例えば、コントロール植物と比較して生長増進を示す植物は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物より10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、100%またはそれより高い生長を示し得る。D.バイオマスを増加させる方法 さらに別の特徴では、本発明は植物でバイオマスを増加させる方法に関する。前記方法は、エンテロバクター種638の単離培養物を含む組成物の有効量を植物に適用する工程を含む。 “バイオマス”という用語は植物の乾燥重量または新鮮重を指す。バイオマスには特段の規定がなければ例えば全ての植物部分が含まれ、例えばシュートバイオマス(全地上植物部分)、葉バイオマス、および根バイオマスが該当する。“乾燥重量”という用語は、乾燥させて細胞性水分の大半が除去された植物重量を指す。“新鮮重”という用語は、未だ乾燥されず細胞性水分の大半が除去されていない植物の重量を指す。バイオマスの測定手段は当分野で公知である。 “バイオマスの増加”という用語は、本発明の方法または組成物で処理された植物のバイオマスの増加を指し、この場合、バイオマスの増加は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物のバイオマスの量よりも大きい量である。 バイオマスの増加は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物のバイオマスと比較したとき、2、4、5、6、8、10、20倍(またはそれより高い)増加であり得る。例えば、野生型植物と比較してバイオマスが増加した植物は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物より10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、100%またはそれより高いバイオマスを有し得る。E.病気耐性および/または抵抗性を増進させる方法 さらに別の特徴では、本発明は植物で病気耐性および/または抵抗性を増進させる方法に関する。前記方法は、エンテロバクター種638の単離培養物を含む組成物の有効量を植物に適用する工程を含む。特定のいかなる理論にも拘束されないが、エンテロバクター種638は、アセトインおよび2,3-ブタンジオールのエンテロバクター種638による産生により、または抗微生物化合物2-フェニルエタノールおよび4-ヒドロキシベンゾエートの産生により、またはシデロフォアエンテロバクチンの合成を介する必須栄養物の直接的競合により、および/または種々に生成された鉄シデロフォア複合体のエンテロバクター種638による取り込みにより病気耐性および/または抵抗性を植物で増進させることができる。 “病気耐性”という用語は、病気にもかかわらず機能および生産能力を維持しつつ当該病気に耐えるかまたは抵抗する植物の能力を指す。病気には例えば植物の生存性に悪影響を与える病理作用の存在(例えば植物内および/または植物表面の病原体(例えば真菌、ウイルスまたは細菌)の感染)が含まれる。 “病気抵抗性”という用語は、同一の条件および病気の下で生長させたとき病気抵抗性を示さない対応するコントロール植物よりも病気の徴候の発生を少なくする植物の能力を指す。病気抵抗性には、当該病気に対する完全な抵抗性、および/または徴候の減少、より長期の生存または病気に関する他のパラメーター(例えばより高い収量、生長の増進、バイオマスの増加、果実の成熟の加速など)として明示される種々の程度の抵抗性が含まれる。 病気は例えば真菌感染(例えばセプトリア(Septoria)、メランプソラ(Melampsora)、またはセプトチナ(Septotina))、ウイルス感染(例えばポプラモザイクウイルス)および/または細菌感染(例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)、リケッチア(Rickettsia)またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)による感染)であり得る。 病気耐性および/または抵抗性を“増進させる”という用語は、本発明の方法または組成物で処理された病気の植物の病気耐性および/または抵抗性の増進を指し、この場合、前記病気耐性および/または抵抗性は、同一の条件および病気の下で生長させた対応するコントロール植物の病気耐性および/または抵抗性よりも高い。 病気耐性および/または抵抗性の増進は、同一の条件および病気に曝露して生長させた対応するコントロール植物の耐性および/または抵抗性と比較して2、4、5、6、8、10、20倍(またはそれより高い)増進であり得る。例えば、野生型植物と比較して病気耐性および/または抵抗性が増進した植物は、発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物より10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、100%またはそれより高い病気耐性および/または抵抗性を有し得る。 病気耐性および/または抵抗性を評価する方法は当分野では公知である。例えばそのような方法は、コントロール植物と比較して、病気の徴候の物理的明示、植物の活力の低下、または枯死および特異的な病気応答遺伝子の活性化の観察並びに等級付けを含むことができる。F.果実および/または種子の生産性を増進させる方法 さらに別の特徴では、本発明は植物で果実および/または種子の生産性を増進させる方法に関する。前記方法は、エンテロバクター種638の単離培養物を含む組成物の有効量を植物に適用する工程を含む。 “生産性を増進させる”とは、本発明の方法または組成物で処理した植物によって生産される果実および/または種子の質量または数の増加を指し、この場合、生産性の増加は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させたときの対応するコントロール植物の生産量より高い量である。 生産性の増加を評価する方法には、例えば当該植物によって生産された果実の数、当該植物によって生産された個々の果実の重量、当該植物の開花までの期間、当該植物の果実の成熟までの期間、および/または当該植物の個々の果実または花によって生産された種子の数の決定が含まれる。 本発明の方法または組成物を適用せずに同一の条件下で生長させた対応するコントロール植物と比較したとき、例えば、植物が生産した果実の数が増加したならば、植物が生産した個々の果実の重量が増加したならば、植物で開花までの期間が短縮したならば、植物で果実が成熟するまでの期間が短縮したならば、および/または植物の個々の果実または花が生産した種子の数が増加したならば、生産性は増進されている。 前記生産性の増加または低下は、本発明の方法または組成物を適用せずに同一の条件下で生長させた対応するコントロール植物の生産性よりも2、4、5、6、8、10、20倍(またはそれを超える)高いまたは低いそれぞれ増加または低下であり得る。例えば、コントロール植物と比較して生産性が増進した植物は、発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物より10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、100%またはそれより高い生産性を有し得る。G.乾燥耐性および/または抵抗性を増進させる方法 別の特徴では、本発明は植物で乾燥耐性および/または抵抗性を増進させる方法に関する。前記方法は、エンテロバクター種638の単離培養物を含む組成物で植物を処理する工程を含む。いかなる特定の理論にも拘束されないが、エンテロバクター種638は、アセトニンおよび2,3-ブタンジオールのエンテロバクター種638による産生により乾燥耐性および/または抵抗性を植物で増進させることができる。 “乾燥耐性”という用語は乾燥状態に耐えるかまたは抵抗する植物の能力を指す。“乾燥”とは、植物が浸透圧ストレスまたは水ポテンシャル低下を受ける状態を指す。例えば、乾燥はある期間の間利用可能な水が欠乏することによって引き起こされ得る。乾燥状態は、植物の生長または成熟に必要な水の量を植物が利用可能な水の量と比較することによって評価することができる。例えば、乾燥状態は、植物によって内部で使用されるかまたは発散される水の量に対して降雨または灌漑が不足することによって引き起こされ得る。 “乾燥抵抗性”という用語は、水ストレスの同一条件下で生長させたときの対応するコントロール植物よりも水ストレスの徴候(例えば生産性の低下、葉の消失、枯死)を少なくする植物の能力を指す。乾燥抵抗性は、乾燥作用に対する完全な抵抗性(生産性低下無し)または徴候の減少またはより長期の生存期間によって明示される種々の程度の抵抗性を含む。 徴候の表現型の評価を用いて、植物が乾燥により損害を受けたか否かおよびどの程度損害を受けたかを決定することができる。例えば、乾燥耐性および/または抵抗性は、立ち枯れ、生長停止、枯死、生産性、葉の消失(例えば葉のローリング、葉のねじれ、葉の脱落、葉焼け)、幹または小枝の枯死、光合成効率、開花および植物の収量レベルの観察および等級付けによって評価できる。さらにまた、植物の乾燥耐性および/または抵抗性は例えば、植物の特異的応答遺伝子の発現または活性化を測定する生化学アッセイまたは核酸系アッセイによって評価できる。 乾燥によって引き起こされるストレス徴候の重症度の低下を植物が示すならば、乾燥耐性および/または抵抗性は増進されている。本発明の方法または組成物を適用せずに同一の条件下で生長させた対応するコントロール植物と比較して、例えば立ち枯れ、生長停止、枯死、葉の消失(例えば葉のローリング、葉のねじれ、葉の脱落、葉焼け)、および/または幹または小枝の枯死が減少するならば、乾燥耐性および/または抵抗性は増進されている。乾燥耐性および/または抵抗性の増進の他の例には、本発明の方法または組成物を適用せずに同一の条件下で生長させた対応するコントロール植物と比較して、植物の生産性、植物の活力、光合成効率、開花、収量レベルの増加が含まれる。 したがって、乾燥耐性および/または抵抗性の“増進”という用語は、本発明の方法または組成物で処理されて影響を受けた植物の乾燥耐性および/または抵抗性の増進を指し、この場合、前記耐性および/または抵抗性は、同一の条件および水ストレス下で生長させた対応するコントロール植物の乾燥耐性および/または抵抗性よりも高い。 乾燥耐性および/または抵抗性の増進は、同一の条件および水ストレス下で生長させた対応するコントロール植物の耐性および/または抵抗性と比較して2、4、5、6、8、10、20倍(またはそれより高い)高い増加であり得る。例えば、コントロール植物と比較して乾燥耐性および/または抵抗性が増進した植物は、発明の方法または組成物を適用せずに同一条件下で生長させた対応するコントロール植物より10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、100%またはそれより高い乾燥耐性および/または抵抗性を有し得る。H.一般的方法 植物に組成物を適用するいずれの方法も本発明の方法で用いることができる。組成物を植物の表面および/または内部に適用する方法は当分野で公知である。ある実施態様では、本組成物は植物を有する土壌に接種できる。別の実施態様では、本発明の組成物は、水耕培養液中での生長を介して植物の根に導入するか、または植物の葉に噴霧することができる。 本発明の組成物は、植物の任意の部分(種子を含む)に適切な被覆メカニズムまたは結合剤を使用することにより適用することができる。本発明の組成物は植える前に植物に適用するか、または植えている間に植物の畝に導入できる。別の実施例として、本発明の組成物は植物の根に適用できる。本発明の組成物は担体と一緒に調製するか、または担体無しに調製し植物を植える畝に直接挿入するために別々の接種物として販売することもできる。 本発明の方法にしたがえば、本発明の組成物の有効量は、所望の結果が処理植物で達成されるように十分な細菌の増殖を確立するために十分な量である。本発明の組成物の有効量は、個々の植物種について公知の手段によって決定できる。例えば、本発明の組成物による接種は水耕法で6日間実施し、接種から3日後に細菌懸濁物を補給することができる。 ある実施態様では、有効量は、例えば約101から約1012細胞/植物の間の任意の量であり得る。別の実施態様では、有効量は、接種物1mL当たり約105から約1010CFUの細胞濃度、より好ましくは約106から約108CFU/mL、もっとも好ましくは約108CFU/mLである。さらに別の実施態様では、本発明の組成物は、土壌1グラムにつき約105から約1010細胞の量で土壌と混合される。実施例1:エンテロバクター種638の単離および性状決定 ワシントン州の実験サイトで8年間四塩化炭素の存在下で生長していた、樹齢10年のハイブリッドポプラH11-11(Populus trichocarpa_P. deltoids)から根およびシュートサンプルを収集した。さらにまた、天然のヤナギ(Salix gooddingii)材料を樹齢5年の天然の植物から収集した。前記ヤナギはトリクロロエチレン(18ppm)および四塩化炭素(12ppm)の両物質の存在下で5年間生長していたものである。切断片はクリッパーで植物から取り出した。前記クリッパーは、切断のたびにエタノールで洗浄し、アセトンで洗浄した揮発性有機物質解析バイアル(前記バイアルは野外から搬送するために氷上に置かれていた)に入れた。根およびシュートは別々に処理した。新鮮な根およびシュートサンプルを5分間蒸留水で激しく洗浄し、溶液100mL当たりTween80を1滴補充した、1%(wt/vol)の活性塩素(次亜塩素酸ナトリウム[NaOCl]溶液として添加)を含む溶液で5分間表面を消毒し、さらに滅菌蒸留水で3回洗浄した。前記3回目の洗浄から得た水のサンプル100μLを869培地(25)にプレートして消毒の有効性を立証した。消毒後、前記の根およびシュートをポリトロン(Polytron)RT1200ミキサー(Kinematica A6)を用いて10mLのMgSO4(10mM)中で柔らかくした。連続希釈を作成し、100μLサンプルを非選択培地にプレートし、内生菌の存在およびそれらの性状を試験した。 エンテロバクター種638は、ハイブリッドポプラH11-11および天然のヤナギ(前記は、それぞれ四塩化炭素またはトリクロロエチレンおよび四塩化炭素で汚染された地下水がその下を流れるシルト性ローム土壌で生長した)から採取した、表面を消毒した根および幹サンプルから好気性条件下で単離された。その全ゲノムDNAを抽出し、16 rRNA遺伝子の増幅に用いた。16S rRNA遺伝子は標準的26F-1392Rプライマーセット(Amann, 1995)を用いてPCRで増幅させた。実施例2:植物生長促進特性について内生細菌をポプラでスクリーニングする 内生細菌を1/10の濃度の869培地(25)でロータリーシェーカーにて109 CFU/mLの細胞濃度(660nmでの光学密度[OD660]は1)に達するまで30℃で増殖させることによって、接種物(250mLの培養物)を調製した。遠心沈殿により細胞を収集し、10mMのMgSO4で2回洗浄して最初の体積の1/10に懸濁し(10mMのMgSO4)、1010 CFU/mLの細胞濃度を有する接種物を得た。1つの被検微生物株につき、ポプラ(Populus deltoidsxP. nigra)DN-34から7つの挿穂(約30cm)を秤量し、2/1濃度の無菌的ホアグランド(Hoagland's)栄養溶液(5)0.5リットルを含む1リットルビーカーに入れた。前記栄養溶液は3日毎に新しくした。根の形成が開始するまで約4週間前記挿穂を根付かせた。続いて、細菌接種物を2/1濃度の無菌的ホアグランド栄養溶液で最終濃度108 CFU/mL で各ジャーに加えた。接種3日後に挿穂を秤量し非滅菌砂質土壌に植え、定常温度22℃および14時間点灯10時間消灯サイクル(165 mmol/m2sの光合成活性照射を有する)の温室に置いた。10週間後に植物を採集し、それらの全バイオマス、バイオマスの増加、および種々の植物組織のバイオマスを決定した。データは非接種コントロール植物からも収集した。生長インデックスは、内生菌接種物の存在下または非存在下で10週間生長させた後の(Mt−M0)/M0として計算した。式中、M0は0週の植物の質量(g)、Mtは10週後の植物の質量(g)である。結果の統計的有意はDunnet検定を用い5%レベルで確認した。ポプラDN-34の発根における内生細菌の作用を決定するために、内生菌接種物を1日目から添加するという点を除いて上記のように挿穂を処理した。 ポプラから単離したエンテロバクター種638を宿主植物の生長を改善するその能力について、ポプラで見出された他の内生ガンマプロテオ細菌とともに試験した。ブルクホルデリア・セパシアBu72(最初にキイロルピナスから単離された内生菌であり、前記はポプラで生長促進作用を有することが見出された)、およびクプリアビヅス・メタリヅランス(Cupriavidus metallidurans)CH34(ラルストニア・メタリヅランス(Ralstonia metallidurans)CH34とも称される)(植物生長促進作用が不明の典型的な土壌細菌)をそれぞれ陽性および陰性コントロールとして加えた。さらに非接種挿穂もまたコントロールとして用いた。 水耕条件下で根を形成させ、続いて内生菌を接種した後、ポプラDN-34挿穂を栄養不良の砂質土壌に植え10週間生長させた。その後、この植物を採集しそれらのバイオマスを決定した。10週間の生長後、M. ポプリ(populi)BJ001を接種したポプラは、コントロールより少ない新規なバイオマスを生じた(図4)(P<0.05)。エンテロバクター種638(P=0.018)およびB.セパシアBU72(P=0.042)を接種したポプラ挿穂は、生長インデックスによって示されたように、コントロール植物よりも統計的に良好な生長を示した(図4)。エンテロバクター種638およびB.セパシアBU72の植物生長促進作用は、別個に実施した実験で再現性を示した。 試験した温室条件下では、非接種コントロール植物の生長インデックスとS.マルトフィリア(S. maltophilia)R551-3、P.プチダW619およびS.プロテアマキュランス(S. proteamaculans)568を接種した植物の生長インデックスとの間に差異は見出されなかった。前記植物の成長は、C.メタリヅランスCH34を接種した植物で観察された生長に匹敵した。さらにまた、コントロール植物および内生細菌を接種した植物は、M.ポプリBJ001を接種した植物を除き外観的に健康であった。後者はストレスの徴候(葉の白化現象を含む)を示した。実施例3:内生細菌を植物生長促進特性についてタバコでスクリーニングする 形質転換および代謝実験のために大型植物モデルとして実験室ではニコチアナ(Nicotiana)種が用いられるので、たとえ野外での応用に有用でないとしてもそのような植物を実験に用いるのは有用であろう。ニコチアナ・キサンティ(Nicotiana xanthi)の苗木を無土壌増殖媒体で始動させ、初期葉が発生した後で水耕溶液に移した。1週間後に植物を108 CFUのエンテロバクター種638を含む溶液に入れた。3日後に接種物を新しくし、さらに3日後に植物を温室内のポットに植えた。 植物の生長を毎週モニターし、開花開始までの時間を記録した。植物は非接種植物よりも迅速に完全サイズに達し、大半の植物が同じ数の非接種植物が開花する1か月前に開花した。実施例4:ポプラの根の発育における内生細菌の作用 さらに根の発育における内生細菌の作用を試験するために、エンテロバクター種638のgfp-標識誘導体の存在下および非存在下で発根実験を実施した。根の形成は非接種植物で非常に遅かった。対照的に、選択した内生菌の存在下で発根させた挿穂の場合、根の形成は1週間以内に開始し、シュートの形成は、非接種植物のシュート形成と比較していっそう著名であった(図5A)。10週後に、非接種コントロールの根の形成は依然として貧弱であったが、エンテロバクター種638を接種した植物では根およびシュートはよく発達した(図5B)。蛍光顕微鏡を用い、gfp-標識株により植物の根の内部局在を可視化して、それらの株の内生菌の行動態様が確認された。P.プチダW619で観察された根の表面のマイクロコロニーの形成はエンテロバクター種638を接種した植物では存在せず、後者では内部のコロニー形成のみが観察された。gfp発現は非接種コントロール植物の根では検出されなかった。実施例5:果実および花の生産性における内生細菌の影響 果実生産量に対する内生細菌の影響を試験するために、トマトの種子(法定相続変種ブランディワイン(Brandywine)、Park Seed)をパーライト/水マトリックス中で始動させ、続いて1/2の濃度のホアグランド溶液による水耕溶液に移した。植物の高さが約7.62cm(3インチ)のときに、それら植物を上記のように108 CFU/mLの内生細菌を含む溶液に移した。接種後3日に苗木を温室のプロミックス(ProMix:市販のポットミックス)に植えた。最初の結実日およびトマトの総量を3ヶ月の間記録した。エンテロバクター種638を接種したトマトの植物は非接種植物に対して果実生産性が10%増加した。非接種植物は82個の果実を生産し総量は22.374kgであったが、接種植物は90個の果実を生産し合計質量は24.909kgであった(図6)。 ヒマワリの苗木(Mammoth, Park Seed)を記載の方法を用いて始動させ、開花までの時間を記録した。温室条件下では、接種したヒマワリは非接種植物よりも5日早く開花を開始し、さらに非接種植物の10%のみが開花したとき接種植物は50%が開花した。非接種植物の70%のみが開花したとき接種植物の100%が開花した(図7)。実施例6:乾燥抵抗性 ハイブリッドポプラの硬木挿穂(OP-367 Populus deltoidsxP. nigra)を3日間水に入れて根の形成を開始させ、続いて内生細菌108 CFU/mLを含む1/2濃度のホアグランド溶液に3日間移した。引き続いて、庭園土壌を含むポットに挿穂を植え余分に水を供給しながら3カ月間温室で生長させた。3ヶ月後に植物の給水を一時停止し、老化までの時間をモニターした。非接種植物と比較して、接種植物では乾燥徴候の開始が平均して20%遅くなった。実施例7:病気抵抗性 植物の活力の増加とともに内生細菌に存在する遺伝的因子により、当該接種植物は病原体のコロニー形成に対してより抵抗性となり、当該徴候は接種植物でより曖昧となるであろう。 ハイブリッドポプラの挿穂(H11-11(真菌症高感受性)およびOP-367(真菌症耐性)の両方)に記載のように接種する。植物を無菌的なポットミックスに植え、6から8枚の葉が出現するまで生長させる。続いて、植物を真菌性病源体に曝露し、感染の物理的徴候の開始時間および重症度をモニターする。植物はまた、既知の病気応答遺伝子活性の決定のために解析できる。実施例8:ゲノム構造および一般的特徴 ガンマプロテオ細菌のエンテロバクター種638のゲノム(図2)は、52.98%の全G+C含量を有する4,518,712bpの単一環状染色体を含み、前記はさらに157,749bpのプラスミドpENT638-1(全G+C含量50.57%)を含む(表1)。エンテロバクター種638の染色体はGCスキュー転換を示し、これはその複製起点(oriC)および終点と一致する(図2)。OriC部位は完全なDnaA-結合ボックス(TTATCCACA)(配列番号:2)を含み、前記はdnaA ATG開始コドン(座標4,487,245bp)の31,985bp上流に存在する。 pENT638-1プラスミドは、GC含量を基準にして少なくとも4つの別個の領域を示す(図3)。前記プラスミドは、おそらく水平遺伝子移転により獲得された領域を有するアンセスター由来の骨格を含む(前記骨格は、F-ファミリープラスミドに共通であり、プラスミドの転移と複製のための基本的機能を収納する)。pENT638-1プラスミドのこれらの領域は、腸内細菌科の残りの種とは異なるコドン使用頻度マトリックスを示す。さらにまた、これらの領域は、近縁株の配列決定済み染色体またはプラスミドとシンテニーをもたず、さらに興味深いことに、これらの領域は植物への粘着およびコロニー形成に関連する遺伝子をコードする。pENT638-1およびこれらの領域のエンテロバクター種638における安定的維持(おそらくエンテロバクター種638とその植物宿主との間の相互作用の達成で役割を果たす)は、6つのrelBE毒素/抗毒素(TA)系の存在に関して重要であるように思われる。 対照的に、エンテロバクター種638の染色体は、毒素/抗毒素の3カップル(Ent638_0434-0435、Ent638_0476-0477およびEnt638_2066-2067)しかコードしない。この小さな数は宿主に付随する生物に典型的である。 前記染色体は87.9%のコード密度を示す4395の仮説的コード配列(CDS)をコードし、プラスミドpENT638-1は80.4%のコード密度を有する153の仮説的CDSをコードする。それらの手動アノテーションの後で、3562のCDS(78.3%)が仮説的な生物学的機能に割り当てられ、一方、835のCDS(18.4%)が未知の機能の推定的タンパク質としてアノテーションされた。保存された推定的タンパク質は684のCDS(15.0%)に該当し、一方、151CDS(3.3%)は以前に報告された配列のいずれとも相同性をもたない。MaGe系のCOGnitorモデュールを用いて、3597のCDS(79.1%)を1つまたは2つ以上のCOG機能クラスに割り当てることができた(図9参照)。種々のCOGクラス間でのエンテロバクター種638のCDS再分配は、大腸菌K12について観察されたものと非常に類似している。3つのもっとも豊富なクラスはアミノ酸(E)、炭水化物(G)および無機鉄(P)輸送および代謝であり、全てのCDSの37%以上を占め、宿主が提供する栄養物の効率的な摂取を必要とするエンテロバクター種638および大腸菌K12の共生的生存様式を示している。7セットの5S、16S、23S rRNA遺伝子および1つの追加の5S rRNA遺伝子が見出された。全ての20アミノ酸に対して特異性を有する合計83のtRNA遺伝子およびセレノシステインのためのただ1つのtRNAが同定された。 エンテロバクター種638のゲノムは以下の8つのシグマ因子をコードする:fliA(Ent638_2509;シグマ28)、3つのrpoE様シグマ24(Ent638_3060、Ent638_3117およびTnt638_3389)、rpoS(Ent638_3212、シグマ38)、rpoD(Ent638_3473、シグマ70)、rpoN(Ent638_3638、シグマ54)およびrpoH(Ent638_3865、シグマ32)。 エンテロバクター種638は、GATC部位でのアデニンのメチル化に必要とされる活性なdamメチラーゼをコードし、これは前記DNAのMboIおよびSau3AI消化によって確認された(最初の酵素はメチル化されたエンテロバクター種638 DNAを消化できない)。 エンテロバクター種638のゲノムで100のパリンドロームリピート(CCCTCTCCCXX(x)GGGAGAGGG)が見出された。前記は染色体全体に不均一に分布している(図10参照)。これらのヘアピンループを形成するリピート(XX(X)は主としてTGA/ACAまたはAC/TGである)はしばしば遺伝子の3'末端のデュプリケートまたはトリプリケートとして存在し、おそらく転写終了において役割を果たす。 8つの挿入配列(IS)因子がエンテロバクター種638のゲノムで見出された。すなわち、IS3/IS51ファミリーに由来する2つの因子(1つはフレームシフトを有する3つのORF(Ent638_0739、Ent638_0740、Ent638_0741)を含み、1つはただ1つのORF(Ent638_0060)を含む)、IS110ファミリー(Ent638_1530)に由来するIS因子、およびIS481ファミリー(Ent638_2980、Ent638_3160およびEnt638_3288)に由来する3つのIS因子である。これらのIS因子のいくつかは境界が定められた推定的ゲノム内島領域である(以下のセクションを参照されたい)。 プラスミドpENT638-1は、2つの完全なIS因子(1つのORF(Ent638_4224)を含むTn3ファミリー由来の1つの因子、および2つのORF(Ent638_4320およびEnt638_4321)を含むIS3/IS407ファミリー由来の1因子)を、IS3/IS407ファミリーに由来する2つの切端トランスポザーゼとともに保有する。IS3/IS407ファミリーに由来する完全なISおよび切端トランスポザーゼは、プラスミドの維持および複製に必要な遺伝子(sopAB、repA)および接合によるプラスミド移転に必要な遺伝子(tra)をコードする大きな領域とフランキングしている。この75kb領域はpENT638-1の骨格と考えることができる。 エンテロバクター種638のゲノムを近縁株のゲノムと比較したとき、エンテロバクター・キャンセロゲヌス(Enterobacter cancerogenus)ATCC35316が最も近いゲノムであり(CDSの80.4%がエンテロバクター種638とシンテニーを示す)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)ATCC BAA-895(73%)がその後に続き、さらに大腸菌種(63%から73%)がその後に続くと決定された。 エンテロバクター種638のその植物宿主への特異的な順応を、他の植物付随微生物および胃腸管細菌の大腸菌K12(MG1655)とのゲノム比較によって吟味した。大腸菌のこの株(もっとも詳しくアノテーションされた細菌ゲノムであるという理由で参照細菌として選択した)は、エンテロバクター種638と2938のシンテニックCDS(それらのゲノムの69.2%)を共有していた(共有の基準はタンパク質全長の80%において80%の同一性を有することである)。前記シンテニック領域は、各シントンにつき平均数10.5のCDSを含む304のシントンに分けられる。 エンテロバクター種638のゲノムで56領域が同定された(前記は近縁細菌のゲノムとシンテニーを示さなかった)。それらの中で、18領域が推定的なゲノム内島領域(表2で灰色で強調されている)の基準を満たした。これらのゲノム内島領域は、糖の輸送(PTS系)、粘着、ペクテート利用、シデロフォアレセプターを介する鉄の摂取、ナイトレートの還元、線毛の生合成とともに他の多くのトランスポーターおよびレギュレーターに必要なタンパク質をコードする遺伝子を含んでいる。領域番号47は、内生菌生存様式への順応に必要な遺伝子を含むゲノム内島領域の獲得を示す例である。この領域は、推定的ペクテートトランスポーターおよび分解タンパク質をコードする(前記は炭素源としてペクテート(重要な植物合成化合物)を利用して株638が生長することを可能にし得る)。このゲノム内島領域はインテグラーゼ遺伝子にフランキングし、tRNA-Glu部位に挿入される。 8のファージおよび1つの推定的組込みプラスミドが染色体上に見出された。合計302のファージタンパク質(18の推定的インテグラーゼ遺伝子を含む)が同定された。 さらにまた、エンテロバクター種638の染色体は、クラスターを形成する規則的間隔を有する短いパリンドロームリピート(Clusutered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat;CRISPR)を有する領域を含む。前記CRISPRはCRISPR関連配列(Cas)をコードする6つの遺伝子(Ent638_1401−1406)の隣に位置する。CRISPRは、おそらくバクテリオファージに対する後天的耐性を提供する。8つのプロファージのうちの6つが複数の領域とフランキングする。それらの領域は、近縁細菌(例えば大腸菌K12、O157-H7およびUT189、クレブシーラ・プニューモニアエ(Klebsiella pneumonia)MGH78578またはシトロバクター・コセリBAA-895)内の対応する領域とのシンテニーを欠き、ファージのトランスダクションにより獲得された可能性がある。これらの領域は細菌/植物相互作用において重要な遺伝子(例えばアミノ酸および鉄/シデロフォアトランスポーター、溶血素(HCP)、並びにヘマグルチニンタンパク質およびトランスポーター)を含む。これまで、ゲノム内島領域、ファージおよびIS因子の細胞間または細胞外移動性は実験的に提示されたことはなかった。実施例9:植物根圏内での生存:エンテロバクター種638の代謝能力の大要 一般的に、ポプラは挿木によって殖やされる。挿木中の内生菌の数は非常に少ないので、内生細菌の多くの種は、ポプラでコロニーを形成する前に土壌中で生存する必要がある。エンテロバクター種638は植物根圏中での生存に良好に順応している。なぜならば、エンテロバクター種638は、炭水化物、アミノ酸および鉄の摂取に必要な多くのトランスポーターとともにいくつかの重金属耐性遺伝子をコードするからである。下記に述べる代謝経路の大半は、選択的生長条件下で株638を培養することによって確認された(Taghavi et al. 2009)。炭水化物代謝 エンテロバクター種638ゲノムは中心的な代謝のための経路の全てをコードする。前記経路には、トリカルボン酸サイクル、エントナー‐ドゥドロフの経路、エムデン‐マイエルホーフ‐パルナス経路およびペントース‐リン酸経路が含まれる。この株は独立栄養によって生長することはできないが、以下のような多様な化合物を炭素源として用いることができる:D-マンニトール、ラクトース、シュクロース、アルブチン、サリシン、トレハロース、D-マンノース、L-アラビノース、マルトース、セロビオース、キシロース、グルコネートおよびグルコース(Taghavi et al. 2009)。エンテロバクター種638は、ラクターゼ(lacZ、Ent638_0928)、キシロースイソメラーゼ(Ent638_0156)およびキシルコキナーゼ(Ent638_0157)を有する。唯一の炭素源としてのラクトース利用は腸内細菌科の特徴である。エンテロバクター種638はマロネートを基に生長する遺伝的能力を有し、そのゲノムは9つの遺伝子クラスター(mdcABCDEFGHR、Ent638_3779-Ent638_3772)を含む(前記遺伝子はマロネートのアセテートへの変換を触媒するマロネート脱カルボキシル反応に必要である)。 糖の利用の多様性はグリコシドヒドロラーゼの多様性と関係があるかもしれない。エンテロバクター種638ゲノムは、推定的グリコシドヒドロラーゼ(24の異なるファミリーを表す(CAZyデータベース))をコードする55の遺伝子を有する。対照として、ヒトの病原体のエンテロバクター・サカザキ(E. sakazakii)は63のグリコシドヒドロラーゼ(CAZyデータベース)を有することもまた記述されるべきである。 植物病原性細菌および真菌は、グリコシドヒドロラーゼを用いて植物細胞壁化合物を活発に分解することによって進入を達成する。前記グリコシドヒドロラーゼには、セルラーゼ/エンドグルカナーゼ(グリコシドヒドロラーゼファミリーGH5、GH9、GH44、GH48およびGH74のメンバーを含む)、リケナーゼ(GH16)およびキシラナーゼ(GH10、GH11)が含まれる。植物細胞壁のポリマーを分解するために一般的に用いられるエンド-、エキソ-、セルラーゼおよびヘミセルラーゼファミリーの推定的メンバーに該当するグリコシドヒドロラーゼは、エンテロバクター種638ゲノムにコードされてなかった。この観察は、エンテロバクター種638の植物非病原性態様と一致する。しかしながら、2つのエンド-1,4-D-グルコナーゼ(GH8)(bcsZ:Ent638_3928、Ent638_3936)が細菌のセルロース合成遺伝子座の部分として見出されたことは特記されるべきである。植物栄養物の摂取 例えばエンテロバクター種638とそのポプラ宿主のように共生的結合で生存する生物は資源を共有する必要があり、したがってエンテロバクター種638のゲノムは、植物放出栄養物の摂取を可能にする多様なトランスポーターをコードすると予想される。合計631のORFが推定的トランスポータータンパク質をコードする。それらはとりわけ、コードされた295のABCトランスポーター(1つのホスフェートトランスポーターを含む)、主要な促進因子スーパーファミリー(MES)由来の81のコードされたトランスポーターを、ホスホトランスフェラーゼ系ファミリー(PTS)由来の41のコードトランスポーター並びに耐性のノジュール化および細胞分裂ファミリー(RND)由来の14のコードトランスポーターをコードする(推定的トランスポーターおよびSOMにおけるそれらの基質の完全リストを参照されたい)。この観察は、エンテロバクター種638の植物付随性生存様式(植物合成栄養物(根圏に放出されるものを含む)の効率的摂取を要求する)と一致する。 エンテロバクター種638ゲノムは多くのPTSトランスポーターをコードする。系統学的解析を用いて、基質特異性を以下のようにエンテロバクター種638のPTSトランスポーターに割り当てた:7つはα-グルコシドに属し(グルコース、N-アセチルグルコサミン、マルトース、グルコサミンおよびα-グルコシドの摂取用)、7つはβ-グルコシドに属し(シュクロース、トレハロース、N-アセチルムラミン酸およびβ-グルコシドの摂取用)、2つはフラクトースPTSトランスポーターであり(フラクトース、マンニトール、マンノースおよび2-O-α-マンノシルD-グリセレートの摂取用)、さらに6つはラクトースPTSトランスポーターであった(ラクトース、セロビオースおよび芳香族β-グルコシドの摂取用)。重金属に対する抵抗性 エンテロバクター種638ゲノムは、以下を含む銅抵抗性に推定的に必要とされる遺伝子を保有する:P型ATPアーゼCopA(Ent638_0962)(その発現はCueR(Ent638_09630)によって調節される)、銅排出オペロンcusABCF(Ent638_1157−1154)、多重銅オキシダーゼCueO(Ent638_0671)、および推定的CopCおよびCopD銅抵抗性タンパク質をコードするオペロン(Ent638_2411−12)。興味深いことに、この株は100μMのCu(NO3)2の存在下において284グルコース最少培地で増殖できなかった。 エンテロバクター種638ゲノムはまた砒素/砒酸塩抵抗性クラスターをコードする。前記クラスター(arsHRBC、Ent638_4254−Ent638_4257)はプラスミドpENT638-1の複製起点の隣に見出され、株638は200μMの砒酸塩(Na2HAsO4として)の存在下で284グルコース最少培地において良好に増殖することが見出された。 砒酸塩および推定的銅抵抗性遺伝子の存在は予想されないことではない。なぜならば、エンテロバクター種638は、ASARCO精錬所(Tacoma, WA)(1905年から1982年の操業中はUSAで最大の砒素放出源の1つと考えられていた銅精錬所)からの放出物の影響を受けた領域で生長したポプラから単離されたからである。 染色体に存在する他の重金属抵抗性遺伝子には、推定的クロム酸塩レダクターゼ(YieFまたはChrR、Ent638_4144)および亜鉛/カドミウム/コバルト抵抗性に必要なP-型排出ATPアーゼZntA(Ent638_3873)が含まれる。株638は、500μMのZnSO4、500μMのCdCl2、100μMのCoCl2および50μMのNiCl2の存在下において284グルコース最少培地増殖できた。これらの遺伝子は大腸菌種にも存在すると主張することは可能であるが、それらの存在は、根圏での生存に、特にこれらの金属が存在する根圏での生存に他の細菌よりも選択的利点を提供するために十分であろう。 重金属はまた重要な補助因子であり、エンテロバクター種638ゲノムは重金属の摂取および排出に必要ないくつかの遺伝子をコードする。複数の遺伝子が、亜鉛(znuACB、Ent638_2426−2428)およびニッケル(nikABCDE、Ent638_1834−Ent638_1838)の摂取に必要なABCトランスポーターに関して見出された。ニッケルはウレアーゼのための必須の補助因子であり(Dosanjh et al. 2007)、大腸菌K12およびS.プロテアマキュランス568と異なり、エンテロバクター種638は尿素をアンモニアに変換することができる(ureABC、Ent638_3464−Ent638_3466)。酸化ストレスは植物の防衛メカニズムを妨害する 植物は、細菌、ウイルスおよび真菌感染に対して多様な防衛メカニズムを利用する。前記メカニズムには、反応酸素種(ROS)(超酸化物、ヒドロペルオキシルラジカル、過酸化水素およびヒドロキシルラジカル種)、酸化窒素およびフィトアレキシンの生成が含まれる。根のコロニー形成の前に、株638は酸化的根圏環境で生存しなければならない。エンテロバクター種638染色体は以下の3つの超酸化物ジスムターゼをコードする:SodA、Mn超酸化物ジスムターゼ(Ent638_4063);SodB、Fe超酸化物ジスムターゼ(Ent638_1191);およびSodC、Cu/Zn超酸化物ジスムターゼ(Ent638_1801)。前記はまた3つのカタラーゼ(KatE(Ent638_1712)、KatN(Ent638_3129)およびKatG(Ent638_4032))、3つのヒドロペルオキシドレダクターゼ(ahpC(Ent638_0872およびEnt638_1145)およびahpF(Ent638_1146))、2つのまた別のヒドロペルオキシドレダクターゼ(推定的ahpC Ent638_3391およびAhpDドメインを有するEnt638_0498)、1つのクロロペルオキシダーゼ(Ent638_1149)、および2つのチオールペルオキシダーゼ(Ent638_2151およびEnt638_2976)を含む。 我々はまた推定的有機過酸化物抵抗性タンパク質(ohr、Ent638_0518)を同定した(前記はその有機過酸化物センサー/レギュレーター(ohr、Ent638_0519)の隣に位置する)。 エンテロバクター種638は、フラボヘモタンパク質窒素酸化物ジオキシゲナーゼ(Ent638_3037)および嫌気的硝酸塩還元オペロン(norRVW、Ent638_3181−3183)の存在によって遊離ラジカル酸化窒素を無毒化することができるようである。酸化ストレス応答系の発現は複雑な調節ネットワークにより制御される。重要な調節因子は過酸化水素センサーOxyR(Ent638_4025)であり、前記は、過酸化水素誘導遺伝子、例えばkatG、gor(グルタチオンレダクターゼ、Ent638_3913)、ahpC、ahpF、oxyS(調節性RNA、Ent638_misc_RNA_29)、dpsA(飢餓時DNA防御タンパク質、Ent638_1299)、fur(シドロフォア生合成および輸送のDNA結合転写二重調節因子、Ent638_1198)およびgrxA(グルタレドキシン、Ent638_1364)(前記はいずれもエンテロバクター種638に存在する)のレギュロンの発現を活性化する。3つのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子(Ent638_0139、Ent638_0268およびEnt638_1329)、1つのグルタチオンABCトランスポーター(GsiABCD、Ent638_1323−1326)、2つのグルタチオンペルオキシダーゼ(Ent638_1732およびEnt638_2699)、1つのガンマ-グルタメート-システインリガーゼ(GshA、Ent638_3168)、グルタチオンシンターゼ(GshB、Ent638_3351)およびガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT、Ent638_3850)がエンテロバクター種638のゲノム上に見出された。AcrAB(Ent638_0943−0944)遺伝子座(トランスポーターのRNDファミリーに属する)もまたエンテロバクター種638のゲノムで同定された。実施例10:内生細菌のコロニー形成および宿主植物での定着 植物宿主での内生菌のコロニー形成は4つの工程プロセスに分割することができる(van der Lelie et al. 2009).工程1:ポプラの根に向かって移動する:運動性/化学走性 エンテロバクター種638は、植物の根(内生菌のコロニー形成の好ましい部位)に向かって活発に移動するために良好な装備を有する。そのゲノムは3つの鞭毛生合成オペロンを含む(flgNMABCDEFGHIJKL, flhEABfimA yraIJ lpfD cheZYBR tap csuEDCAB int cheWA motBA flhCD fliYZA fliCDSTEFGHJKLMNOPQR, Ent638_2445−2541およびfliEFHIJKLMNOPQR)。 しかしながら、エンテロバクター種638のflhオペロンは、線毛生合成遺伝子の2つの挿入を含んでいる。これらの領域の1つ(csu)はインテグラーゼによってフランキングされ、後天的獲得を示している。エンテロバクター種638はまた多数のピリ線毛/線毛生合成遺伝子(少なくとも60遺伝子)を有する。エンテロバクター種638では、ピリ線毛/線毛生合成遺伝子は10の別個の領域にまとめられている。化学走性(che)に必要な決定基もまた鞭毛生合成遺伝子クラスター内で発見された。工程2および3:根の表面への粘着およびコロニー形成 エンテロバクター種638では、根との推定的粘着に必要なタンパク質をコードするいくつかの遺伝子が同定された。多くはゲノム内島領域またはプラスミドpENT638-1に存在し、植物の根におけるこのコロニー形成工程でプラスミドに特異的な役割を示している。特に、pENT638-1は、23kbの推定的ゲノム内島領域(インテグラーゼ遺伝子によってフランキングされ、56.2%のGCを有し、これはこのプラスミドの残余よりも有意に高い)とともに推定的srfABCオペロンを含む。srfABCオペロンの正確な機能は不明であるが、宿主でのコロニー形成に必要であると考えられる。 植物への侵入に必要な多くの他の遺伝子がpENT638-1に存在し、これらには、オートロトランスポータードメイン(V分泌型)をもつ推定的タンパク質、およびビルレンス/粘着ドメインをもつ推定的タンパク質(ヘマグルチニン(Ent638_4267)、パータクチン(Ent638_4201およびEnt638_4206)および粘着(Ent638_4317))が含まれる(図3)。 ヘマグルチニン:エンテロバクター種638の染色体は、2つの推定的ヘマグルチニンタンパク質(Ent638_0148、Ent638_3119)、および線状ヘマグルチニンをコードする5つの遺伝子(Ent638_0052−0057)を含むクラスターをコードする。 さらにまた、ペクチンリアーゼ/パータクチンドメイン(Ent638_1775、Ent638_0318、Ent638_0501)または粘着ドメイン(Ent638_1867、Ent638_3408)をもつオートトランスポーターをコードする、いくつかの遺伝子がエンテロバクター種638の染色体上で見出された。 2つのエンテロバクター種638 yadA遺伝子は、両方ともオートトランスポータードメインおよび侵入/粘着ドメインをもつタンパク質をコードする。YadAタンパク質は植物のコロニー形成/侵入を促進する可能性があるが、前記はまた過去の腸内細菌の生存様式の残存物を表しているのかもしれない。 pENT638-1のヘマグルチニン遺伝子(Ent638_4267)は2つのRelB/E毒素/抗毒素系によって取り囲まれている。前記はこのようにしてpENT638-1で安定化されているので、Ent638_4267ヘマグルチニンは根への粘着で重要な役割を果たしているにちがいないと仮定される。ヘマグルチニン遺伝子Ent638_4267とともに、テトラトリコペプチド(TPR-2)リピートドメインを含むタンパク質をコードする2つの遺伝子(Ent638_4265−4266)が同定された。前記は、タンパク質‐タンパク質相互作用および粘着装置への正確なアッセンブリーで必要であると推定される。 IおよびIV型線毛:6つの推定的な先導タンパク質がエンテロバクター種638のゲノムで見出された(Ent638_0084、Ent638_0403、Ent638_0990、Ent638_1071、Ent638_2450およびEnt638_2459)。この数は、植物付随細菌の他の属で見出された先導タンパク質の平均数よりもはるかに大きい。 エンテロバクター種638の染色体で、ピリ線毛/カーリー/線毛生合成に必要な56の遺伝子が同定された。前記にはI型線毛生合成遺伝子の6つのクラスター(Ent638_0074−0086、Ent638_0401−0409、Ent638_0987−0994、Ent638_1068−1072、Ent638_2448−2451、Ent638_2458−2462)が含まれる。最後の2つのクラスターは化学走性および運動性に必要な遺伝子(鞭毛生合成)によってフランキングおよび分離されてあり(運動性のセクションを参照されたい)、おそらく非生物性表面におけるバイオフィルムの形成に必要であろう。この領域(Ent638_2445−2541)は、植物の根でのコロニー形成における種々の局面(化学走性、運動性および粘着)で必要な遺伝子のクラスター形成の好例である。 IV型線毛:エンテロバクター種638のゲノムで、IV型線毛生合成遺伝子の2つのクラスター(Ent638_0650−0652、およびEnt638_3266−3268)が、性状不明の推定的線毛合成遺伝子の1クラスター(おそらくDNA取り込みに必要)(Ent638_3804およびEnt638_3808)とともに同定された. カーリー線維:構造的および生化学的に、カーリーは、数が増えつつある、アミロイドとして知られる線維クラスに属する。エンテロバクター種638のゲノムで、カーリー生合成のための1つのクラスターが同定された(Ent638_1553−1559)。セルロース生合成 その非病原性態様と一致して、エンテロバクター種638のゲノムはセルロース分解に必要なタンパク質をコードしない。しかしながら、セルロース生合成に必要なオペロンは同定された(Ent638_3927‐3940)。ビルレンス 顕微鏡試験によって、エンテロバクター種638は、皮目の管腔間にある根の木部にコロニーを形成することが示された。細胞内のコロニー形成は観察されなかった(Taghavi et al. 2009)。 植物でのコロニー形成実験では、エンテロバクター種638は日和見的病原体としての機能は全く認められなかったが、そのゲノムはビルレンスに必要であると推定されるいくつかのタンパク質をコードする。ビルレンスはまた、細菌とその宿主との間の密接な相互作用(内生菌のコロニー形成に要求され得るものと類似する)を必要とし得ることは留意されるべきである。内部膜ヘモリシン(ファミリーIII)をコードする1つの遺伝子(yqfA、Ent638_3317)、推定的ヘモリシンドメインを含む部分的CDS(Ent638_0251)、およびビルレンス因子をコードする3つの遺伝子(Ent638_0829、Ent638_2912およびEnt638_3004)が同定された。 他の推定的ビルレンス因子には、pagC(Ent638_3136)およびmsgA(Ent638_1656)(前記はビルレンスおよびマクロファージ内での生存のために要求される)、並びに推定的virK遺伝子(Ent638_1394およびEnt638_2409)(その生成物はVirG(Ent638_3560)の発現および細菌細胞表面での正確な膜局在のために要求される)が含まれる。 しかしながら、III型分泌系をコードする遺伝子(病原体(例えばエルウィニア(Erwinia)およびP.シリンガエ(P. syringae))に典型的な活発な病原性生存様式に欠くことができない)は、エンテロバクター種638のゲノムで同定されなかった。 最後に、pENT638-1プラスミドと同様に、srfABCオペロン(Ent638_2108−Ent638_2110)がエンテロバクター種638の染色体で見出された。内生菌としての行動態様におけるこれらの遺伝子の機能は不明である。工程4:根の侵入および活発なコロニー形成による植物内定着 エンテロバクター種638は、そのゲノムがエンド/エキソセルラーゼまたはヘミセルラーゼ(これらの酵素は植物細胞壁の活発な分解を介して内生菌のコロニー形成を可能にするであろう)をコードしないので、植物の根の組織損傷部位から進入することができる。ペクチン/ペクテートの分解 エンテロバクター種638は、唯一の炭素源としてのペクチン(ポリ(1,4-アルファ-D-ガラクツロネート))では増殖できないが、そのゲノムは、ペクテート(ペクチンの脱メチル化骨格および植物細胞壁の構成成分)の分解に必要な遺伝子をコードするゲノム内島領域を含んでいる。ペクテートを分解するエンテロバクター種638の能力は、植物細胞間の間隙領域でのコロニー形成に役割を果たし得よう。 分泌されたペクテートリアーゼ、PelB(ペクテートを4-デオキシ-アルファ-D-ガラクト-4-エンウロノシル基を有するオリゴ糖にそれらの非還元末端で切断する際に必要である)が、オリゴガラクツロネート特異的ポリン、KdgM(オリゴガラクツロニドのペリプラズムへの摂取に必要である)の隣に見出された。ペリプラズムのペクチナーゼ、PelX(このゲノムの別の領域によってコードされる)は、オリゴガラクツロニドのペリプラズム内分解に必要である。 別の領域では、炭水化物摂取ABCトランスポーター、TogMNAB(内膜を通過してオリゴガラクツロニドを転移させるために必要である)およびいくつかのまた別のタンパク質、Ogl、KduIおよびKduD(オリゴガラクツロニドの2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートへの分解に必要である)が同定された。KdgKおよびKdgA(D-ガラクツロネート代謝に必要)はさらに、2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートをピルベートおよび3-ホスホグリセロアルデヒド(ともに一般的な細胞代謝化合物である)に分解する。この領域(IS481ファミリーのトランスポザーゼによってフランキングされている)は、水平遺伝子転移を介して獲得されたのかもしれない。タンパク質、UxaA、UxaBおよびUxaC(ガラクツロネートを2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコネートに分解するまた別の経路に必要)はまたエンテロバクター種638の染色体によってコードされる。ペクテートの分解は、病原性作用を回避するために上手に調節されねばならない。 プラスミドpENT638-1は、ペクチンリアーゼドメインを有するオートロトランスポータータンパク質をコードする2つの隣接遺伝子(Ent638_4201、Ent638_4206)を保有する。これらのタンパク質は、エンテロバクター種638のポプラの根への粘着に、または根の細胞の細胞壁を溶解することができる酵素の搬出を含むコロニー形成メカニズムの部分として必要とされるかもしれない。これら2つの遺伝子の間で、2つの成分転写調節因子(厳密な調節が示唆される)が、2つのまた別の遺伝子(莢膜多糖の生合成に必要な遺伝子(Ent638_4207)およびグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(Ent638_4208))とともに同定された。細胞表面のリポ多糖類(LPS)は宿主特異性に密接に関係するという仮説が提唱され、これらの遺伝子の近接は植物への侵入におけるエンテロバクター種638の協調的役割を示唆している。pENT638-1プラスミドのセロビオースホスホリアーゼ プラスミドpENT638-1では、プラスミドの複製起点の隣に位置するndvB遺伝子(8532bp)は、β-(1‐>2)-グルカンの生成に必要なタンパク質をコードする。膜結合NdvBタンパク質は以下の3つの酵素活性を触媒する:開始(タンパク質のグルコシル化)、伸長およびβ-(1‐>2)-グルカンのin situ環化(前記β-(1‐>2)-グルカンは続いてペリプラズムに放出される)。実施例11:宿主植物との協調的相互作用:植物の生長促進および健康間接的な植物生長促進作用窒素の固定および代謝 エンテロバクター種638は窒素を固定できず、必要なnif遺伝子を欠いている。しかしながら、エンテロバクター種638は、異化および同化硝酸塩還元経路に要求される遺伝子を含んでいる。硝酸塩輸送および硝酸塩/亜硝酸塩還元遺伝子は、インテグラーゼおよび推定的粘着/侵入遺伝子によって分離された2つのオペロン(narIJHGKXLおよびnasAB ntrCBA nasR、Ent638_2312−Ent638_2326)内に存在する。亜硝酸輸送および還元(nirBDC、Ent638_3793−3795)、硝酸輸送および還元(narUZYWV、Ent638_2061−Ent638_2065)並びにアンモニウム摂取輸送(amtB、Ent638_0919)およびその調節因子(Ent638_0918)で必要とされる他の領域もまた、硝酸塩/亜硝酸塩センサータンパク質(narQ、Ent638_2964)とともにエンテロバクター種638の染色体で見出された。シデロフォア エンテロバクター種638は鉄の摂取に関して中間的解決策を発達させた。そのゲノムは、2つの第一鉄イオンの摂取系(FeoAB、EfeUOB)および9つの鉄ABCトランスポーターを含む。 エンテロバクター種638はシデロフォアエンテロバクチン(EntD、EntF、EntC、EntE、EntBおよびEntA)を合成し、これを分泌し(EntS)、第二鉄シデロフォア取り込み系(ExbDB)を用いて鉄‐エンテロバクチン複合体を回収し、鉄‐エンテロバクチン複合体の内在化後にエンテロバクチンエステラーゼ(Fes)を用いて鉄を抽出することができる。エンテロバクチンのこの生合成に必要なこれらの遺伝子は、鉄の摂取に必要な2つのABCトランスポーターをコードする遺伝子(sitABCDおよびfepCGDB)と一緒に、17遺伝子(Ent638_1111−1128)の大きなクラスターとして寄せ集められている。さらにまた、エンテロバクター種638は12の第二鉄および第二鉄関連シデロフォア外膜レセプター(TonB依存性)を保有する(この数は大腸菌K12(7つのシデロフォアレセプターを保有するのみである)で見出される数のほぼ2倍である)。この観察は鉄について競合する必要がある細菌にとって矛盾しない。効率的な鉄の摂取系の存在は、したがって真菌感染から宿主植物を防御するために寄与し得る。抗微生物化合物 エンテロバクター種638はフェニルエチルアルコールを構成的に産生することが示された。この分子(一般的に香料として用いられる)は、エンテロバクター種638に好ましい花の香りを提供するが、より興味深いことに前記分子は抗微生物特性を有する。2つの候補遺伝子(Ent638_1306およびEnt638_1876)が、フェニルアセトアルデヒドからフェニルエチルアルコールへの変換に必要と推定される酵素をコードする。これら2つの遺伝子は他の近縁種とシンテニーを示さない領域に存在する。 4-ヒドロキシベンゾエートは重要な電子伝達系ユビキノンの前駆体であるが、抗微生物活性を有することもまた知られている。エンテロバクター種638は、この反応を達成することができる推定的タンパク質をコードするubiC(Ent638_0243)遺伝子を保有する。 エンテロバクター種638ゲノムは、クロラムフェニコール耐性に必要であり、他の内生菌生物または根圏生物によって産生される抗微生物化合物から本細菌を生存させるために役立つことができるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat、Ent638_1533)をコードする。実施例12:エンテロバクター種638による直接的植物生長促進1-アミノシクロプロパン-1-カルボキシレートデアミナーゼ 1-アミノシクロプロパン-1-カルボキシレート(ACC)デアミナーゼ(acd)、(EC:3.5.99.7)はエンテロバクター種638のゲノムには存在しない(このことは、本株はACCを代謝できないという以前の実験(Taghavi et al. 2009)を追認する)。しかしながら、アミノ酸デアミナーゼは見出されたが、それらはいずれも特定のアミノ酸E296およびL323(前記はPLPの活性部位のピリジン窒素原子にアプローチする)を欠いている(それぞれTまたはSおよびTによって置き換えられている)。根の生長促進ホルモンアセトイン、および2,3-ブタンジオールの産生 エンテロバクター種638ゲノムはピルベートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子poxB(Ent638_1387)を保有する。PoxBの基本的機能はピルベートをアセトアルデヒドに変換することであるが、小さな割合のピルベートが、ヒドロキシエチル‐チアミンジホスフェート反応中間体の副生成物としてアセトインに変換される。 エンテロバクター種638ゲノムは、ピルベートからアセトールアセテートへの変換に必要なアセトールアセテートシンターゼ(budB、Ent638_2027)をコードする。アセトインデカルボキシラーゼ(budA、Ent638_2026)はアセトールアセテートのアセトインへの変換を触媒する。アセトインは細菌によって放出されるか、または続いてエンテロバクター種638もしくはポプラによりアセトインレダクターゼ(budC、Ent638_2028)によって2,3-ブタンジオールに変換され得る。好気性条件下で、アセトールアセテートは偶発的にジアセチルに変換され、前記はアセトインデヒドロゲナーゼタンパク質(Ent638_2737)によって順を追ってアセトインに変換され得る。 エンテロバクター種638による揮発性化合物の生合成およびポプラの葉の抽出物の添加によるそれらの誘発を質量分析により精査した。2,3-ブタンジオールおよびアセトイン産生は、エンテロバクター種638およびポプラの葉の抽出物を含むサンプルで、誘発後12時間に開始して観察された(図8)。ジアセチル合成は確認できなかったが、3つの化合物のための完全な代謝経路の存在により、おそらく合成が生じるのであろう。また別のピークが試験サンプルおよびコントロールサンプルの両方で観察され(6:42,9:45および14:01)、これらの化合物の同定を現在実施中である。 エンテロバクター種638のゲノムは、アセトインおよび2,3-ブタンジオールの中心的代謝物への異化変換に必要な遺伝子(acoABCX adh)を欠いている。したがって、エンテロバクター種683によるこれら成長ホルモンの生成と分解においてアンタゴニスト作用は存在しない。植物生長ホルモンIAAの産生 エンテロバクター種638によるインドール酢酸(IAA)の産生が実験的に示された(Taghavi et al. 2009)。IAA生合成は、おそらくトリプトファン分解経路VII(芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、Ent638_1447)による中間体分子としてのインドールピルベートの生成を介するようである。インドールピルベートデカルボキシラーゼIpdC(Ent638_2923)および推定的インドール-3-アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Ent638_0143)はさらにIAA合成を触媒する。 本発明の好ましい実施態様と現在考えられるものをこれまで述べてきたが、変更および改変が本発明の精神から逸脱することなく実施され得ることは当業者には理解されよう。そのような変更および改変はいずれも、添付の特許請求の範囲に示した本発明の範囲内であると主張するものである。表1表2表2(続き)提示の座標は当該遺伝子のものであり、比較に用いたファージ生物(K. pneumonia MGH78578、E. coli K12、O157-H7、UT189、C. Koseri BAA-895)のリピートの座標ではない。568および342との比較であり、K12および638はオペロン0231−0234、ポリンおよびリポタンパク質を有する。表S1(プライマー)表S4 マイクロアレイ表S4(続き)表S4(続き)表S4(続き)表S-3トランスポーター比較Ent638情報源:(1)http://www.membranetransport.org/および(2)http://www.tcdb.org/ エンテロバクター(Enterobacter)種638の単離培養物。 さらにpENT638-1プラスミドを含む、請求項1に記載の培養物。 エンテロバクター種638および生物学的に許容できる媒体を含む、植物のための接種物。 前記媒体が植物ホルモンを含む、請求項3に記載の接種物。 前記植物ホルモンがアセトインである、請求項4に記載の接種物。 前記植物ホルモンが2,3-ブタンジオールである、請求項4に記載の接種物。 前記植物ホルモンがインドール-酢酸である、請求項4に記載の接種物。 前記媒体が抗微生物性化合物を含む、請求項3に記載の接種物。 前記抗微生物性化合物がフェニルエタノールである、請求項8に記載の接種物。 前記抗微生物性化合物が4-ヒドロキシベンゾエートである、請求項8に記載の接種物。 前記媒体が植物ホルモンおよび抗微生物性化合物を含む、請求項3に記載の接種物。 さらに植物生長促進微生物を含む、請求項3に記載の接種物。 前記微生物が、アクチノバクター(Actinobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、バシルス(Bacillus)、ブルクホルデリア(Burkhplderia)、ブッチアウキセラ(Buttiauxella)、エンテロバクター(Enterobacter)、クレブシーラ(Klebsiella)、クルイベラ(Kluyvera)、プシュードモナス(Pseudomonas)、ラーネラ(Rahnella)、ラルストニア(Ralstonia)、リゾビウム(Rhizobium)、セラチア(Serratia)およびステノトロホモナス(Stenotrophomonas)から成る群から選択される、請求項12に記載の方法。 植物で生長を増進させる方法であって、前記植物に、前記植物の生長を増進させるために有効な量で組成物を適用する工程を含み、前記組成物がエンテロバクター種638の単離培養物を含む、前記方法。 前記組成物を前記植物の根、シュート、葉および/または種子に適用する工程を含む、請求項14に記載の方法。 前記植物が被子植物である、請求項14に記載の方法。 前記被子植物がトマトである、請求項16に記載の方法。 前記被子植物がヒマワリである、請求項16に記載の方法。 前記被子植物がタバコである、請求項16に記載の方法。 前記被子植物がポプラである、請求項16に記載の方法。 植物でバイオマスを増加させる方法であって、前記植物に、前記植物でバイオマスを増加させるために有効な量で組成物を適用する工程を含み、前記組成物がエンテロバクター種638の単離培養物を含む、前記方法。 前記組成物を前記植物の根、シュート、葉および/または種子に適用する工程を含む、請求項21に記載の方法。 前記植物が被子植物である、請求項21に記載の方法。 前記被子植物がトマトである、請求項23に記載の方法。 前記被子植物がヒマワリである、請求項23に記載の方法。 前記被子植物がタバコである、請求項23に記載の方法。 前記被子植物がポプラである、請求項23に記載の方法。 植物で果実および/または種子の生産性を増進させる方法であって、前記植物に、前記植物で果実および/または種子の生産性を増進させるために有効な量で組成物を適用する工程を含み、前記組成物がエンテロバクター種638の単離培養物を含む、前記方法。 前記組成物を前記植物の根、シュート、葉および/または種子に適用する工程を含む、請求項28に記載の方法。 前記植物が被子植物である、請求項29に記載の方法。 前記被子植物がトマトである、請求項30に記載の方法。 前記被子植物がヒマワリである、請求項30に記載の方法。 前記被子植物がタバコである、請求項30に記載の方法。 前記被子植物がポプラである、請求項30に記載の方法。 植物で病気耐性を増進させる方法であって、前記植物に、前記植物で病気耐性を増進させるために有効な量で組成物を適用する工程を含み、前記組成物がエンテロバクター種638の単離培養物を含む、前記方法。 病気が真菌性、細菌性またはウイルス性である、請求項35に記載の方法。 前記組成物を前記植物の根、シュート、葉および/または種子に適用する工程を含む、請求項35に記載の方法。 前記植物が被子植物である、請求項37に記載の方法。 前記被子植物がトマトである、請求項38に記載の方法。 前記被子植物がヒマワリである、請求項38に記載の方法。 前記被子植物がタバコである、請求項38に記載の方法。 前記被子植物がポプラである、請求項38に記載の方法。 植物で乾燥耐性を増進させる方法であって、前記植物に、前記植物で病気耐性を増進させるために有効な量で組成物を適用する工程を含み、前記組成物がエンテロバクター種638の単離培養物を含む、前記方法。 前記組成物を前記植物の根、シュート、葉および/または種子に適用する工程を含む、請求項42に記載の方法。 前記植物が被子植物である、請求項42に記載の方法。 前記被子植物がトマトである、請求項44に記載の方法。 前記被子植物がヒマワリである、請求項44に記載の方法。 前記被子植物がタバコである、請求項44に記載の方法。 前記被子植物がポプラである、請求項44に記載の方法。 本発明は、エンテロバクター(Enterobacter)の新規な種(エンテロバクター種638)に関し、さらに、本発明の方法を適用しないで同一の条件下で生長させたコントロールまたは野生型植物と比較したとき、例えば植物の生長を増進させ、植物のバイオマスを増加させ、植物の果実および/または種子の生産性を増進させ、植物の病気耐性および/または抵抗性を増進させ、および植物の乾燥耐性および/または抵抗性を増進させる方法に関連する前記新規な種の使用に関する。【選択図】なし 配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る