タイトル: | 公開特許公報(A)_ハンマ打撃によるコンクリートの圧縮強度推定方法 |
出願番号: | 2013263618 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 29/12 |
境 友昭 久保 元樹 久保 元 JP 2015118075 公開特許公報(A) 20150625 2013263618 20131220 ハンマ打撃によるコンクリートの圧縮強度推定方法 日東建設株式会社 502386444 和泉 久志 100104927 境 友昭 久保 元樹 久保 元 G01N 29/12 20060101AFI20150529BHJP JPG01N29/12 2 1 OL 12 特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人日本コンクリート工学会、「the Third International Conference on Sustainable Construction Materials and Technologies−SCMT3」、頒布日平成25年8月5日(発行日平成25年8月18日) 2G047 2G047AA10 2G047BA04 2G047CA01 2G047CA03 2G047EA10 2G047GG23 本発明は、ハンマ打撃によってコンクリートの圧縮強度推定方法に関する。 従来より、コンクリート表面を打撃して、圧縮強度を推定する試験方法としては、主としてリバウンド法と機械インピーダンス法とが存在する。 前者のリバウンド法は、所謂シュミットハンマーと呼ばれる測定機器を用いた方法であり、測定機器及び測定方法についてもJIS基準で定められており、非破壊的な手段でコンクリートの強度推定方法として、最も普及している手法である。 前記リバウンド法は、動的なブリネル硬度測定方法として開発された経緯があるが、実際の測定機器はハンマによりコンクリートを打撃した時にリバウンドハンマの跳ね返り高さ(反発度)を測定するものであり、シュミットハンマによって測定する反発度がブリネル硬度及びコンクリート強度との間に相関があることを根拠とし、図5に示すように、反発度とコンクリート圧縮強度との相関に基づいて、反発度からコンクリートの圧縮強度を求めるものである。 次に、後者の機械インピーダンス法について説明する。 下記非特許文献1に機械インピーダンス法について詳しく説明されているので、この文献に基づいて機械インピーダンス法について詳述する。機械インピーダンス法では、コンクリートを完全弾性体と仮定し、質量Mのハンマが任意の速度Vでコンクリート表面に衝突する現象を考える。ハンマの衝突によってコンクリートに弾性変形が生じる。このときのエネルギーの釣り合いについて考えると、コンクリートの弾性変形は、ハンマの運動エネルギーによってもたらされ、エネルギー保存の法則から、下式(1)を導くことができる。 ここで、Kはコンクリートのバネ係数、xはハンマの衝突によって生じたコンクリートの変位である。 また、力Fはフックの法則より下式(2)が成立する。 式(2)をxmaxについて解き、これを式(1)に代入して整理すると、下式(3)が得られる。 ここで、MK1/2が機械インピーダンスと呼ばれる数値であり、発生した力の最大値をハンマ速度の最大値(衝突時の初速度)で除すことによって得られることが分かる。 ハンマ打撃によって得られる測定数値は加速度であるが、力Fおよび速度Vの最大値は、ハンマの加速度波形から計算(時間積分)によって算出することができる。図5に実際にコンクリートを打撃して得られる打撃力波形の例を示す。 ハンマがコンクリート表面に衝突したときに生じる加速度は、実際はハンマの速度を減速させる方向に作用する減速加速度であり、速度が0となる時刻、つまり加速度が最大となるまでの時間積分によって衝突速度が得られる。また、慣性の法則から、ハンマ質量と最大加速度の積によって最大打撃力が得られる。すなわち、下式(4)である。 ここで、A(t)は時刻歴加速度であり、Tは加速度が最大(ピーク値)となる時刻である。 図5に示されるように、波形の前半部分は、ハンマがコンクリート表面に変形を与える過程であり、この部分をアクティブ側と称する。これに対し、後半部分はコンクリート内に蓄積された弾性変形エネルギーがハンマの速度エネルギーに変換される過程であり、これによってハンマはコンクリート表面から押し戻されることになり、この部分をリアクティブ側と呼ぶ。コンクリート表面が塑性化しているような場合、アクティブ側ではハンマ打撃によってコンクリート表面が塑性変形し、次いで弾性変形する。リアクティブ側では、弾性変形エネルギーのみがハンマのリバウンドに使われる。すなわち、塑性変形が生じると、その分だけアクティブ側と比較してリアクティブ側の速度が減少することになる。コンクリートの弾性的性質から圧縮強度を推定しようとする立場では、リアクティブ側のみに着目し、機械インピーダンスZRに対しては、下式(6)を指標とする方法を用いる。 ここで、速度のべき乗値は打撃速度の補正項である。 機械インピーダンスZRが求まれば、図7に示すように、機械インピーダンスZRとコンクリートの圧縮強度との関係を示す相関式からコンクリートの圧縮強度を推定することができる。久保元ら,「老朽化コンクリートの強度推定における新技術開発−コンクリートテスター(CTS-02)による圧縮強度推定−」,一般社団法人農業土木事業協会,情報誌JAGREE76号 しかしながら、前記リバウンド法の適用範囲は、およそ10〜60N/mm2であり、高強度コンクリートには適用できないという問題があった。また、リバウンド法は、動的ブリネル硬度測定を基本原理としているが、実際は反発度のみを計測するものであるため、何らかの仮定を設けない限り、コンクリートのブリネル硬度を測定することはできない。理論的には、コンクリートのバネ係数がすべてのコンクリートについて一定という仮定を導入し、理論を構築している。 更には、測定機器毎の器差が大きいことや反発度法の原理であるコンクリート表面を塑性変形させることによって強度を推定するため、同一箇所で繰り返して測定を行うことができないといった問題も指摘されている。 一方、前記機械インピーダンス法は、近年開発されたコンクリートの圧縮強度推定方法であり、現在では広く実用化されているものである。一般的なハンマを使用するため計測が簡便である、同一箇所で連続して測定が可能である、打撃波形が得られるため事後解析によって測定精度の向上が図れるなどの利点を有する。 しかしながら、コンクリートの圧縮強度は破壊強度であり、機械インピーダンスとの間に物理的な関係があるわけではない。このため、機械インピーダンスの測定値からコンクリートの圧縮強度を推定するためには、両者の関係を関連付ける必要があり、較正試験(相関関係式の取得)によって機械インピーダンス測定値からコンクリートの圧縮強度を推定するようにしている。 しかし、前記機械インピーダンス法によって高強度コンクリートの圧縮強度を推定した場合は、応力歪み曲線が普通コンクリートとは異なる結果、コンクリート強度が過小評価される傾向にあった。そのため、高強度コンクリートへの適用に当たっては、(1)測定した器械インピーダンスとコンクリートの圧縮強度データに基づいて、別途較正曲線を求めるか、(2)圧縮強度と強い相関関係を持つ弾性係数又はその指標値を測定によって求め、圧縮強度を推定する方法とがある。 しかし、上記(1)の方法の場合は、回帰式に切片があり、機械インピーダンス値の僅かな違いによって推定強度に大きな誤差を生む可能性があった。上記(2)の方法の場合、具体手順は、ステップ1:微小変形領域での弾性係数を推定する。ステップ2:破壊直前の弾性係数を推定する。ステップ3:破壊歪み量2500マイクロストレイン程度とおいて、σ=εEから強度を推定するという手順になるが、破壊時の歪み量は推定値であり、結果的に機械インピーダンス法のみによるコンクリートの強度推定ではコンクリートの特性によって誤差が生じてしまうといった問題点があった。 更に、機械インピーダンス法では、打撃力波形に前半部(アクティブ側)と後半部(リアクティブ側)とが存在するが、アクティブ側には、コンクリート表面の塑性化など弾性的に性質を測定する上では好ましくない影響があるため、リアクティブ側のみの機械インピーダンス(ZR)を使用しており、前半部のデータは有効利用されていなかった。また、機械インピーダンス法の場合は、ピーク値の時間位置を正確に求めないと正しい機械インピーダンス値が求められないため、コンクリート強度推定精度が低下するといった問題点があった。 そこで本発明の主たる課題は、従来のリバウンド法や機械インピーダンス法に代わる新たなコンクリート圧縮強度の推定方法であって、直接的に動的ブリネル硬度を測定することにより、精度良く普通強度コンクリートから高強度コンクリートまでコンクリートの圧縮強度推定が可能である等の利点を有するコンクリート圧縮強度の推定方法を提供することにある。 また、従来の機械インピーダンス法と組み合わせることにより、コンクリート強度の推定精度の向上を図ったコンクリート圧縮強度の推定方法を提供することにある。 前記第1課題を解決するために請求項1に係る本発明として、コンクリート系構造物の表面に衝撃を与える打撃ハンマと、この打撃ハンマの打撃部に設けられた加速度センサと、この加速度センサと信号伝送可能に接続された解析処理装置とからなる測定機器を用いて、コンクリートの圧縮強度を推定する方法であって、 前記打撃ハンマの打撃部は半径Rの球冠を成しており、質量Mの打撃ハンマでコンクリート系構造物の表面を叩打し、測定された時刻歴加速度a(t)を前記解析処理装置に取込み、 前記解析処理装置において、前記時刻歴加速度a(t)を加速度が0から最大になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出し、 次いで、前記動的ブリネル硬度値HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定することを特徴とするハンマ打撃によるコンクリートの圧縮強度推定方法が提供される。 上記請求項1記載の発明は、コンクリート系構造物の表面に衝撃を与える打撃ハンマと、この打撃ハンマの打撃部に設けられた加速度センサと、この加速度センサと信号伝送可能に接続された解析処理装置とからなる測定機器を用いて、コンクリートの圧縮強度を推定する方法であり、解析処理装置内のプログラムは別として、従来の機械インピーダンス法に用いている装置と同様の装置を用いることが可能である。構造的違いは、前記打撃ハンマの打撃部が半径Rの球冠を成していることである。本方法は、打撃部が半径Rの球冠を成していることを前提として導いた運動方程式を基本原理としているからである。 本方法では、質量Mの打撃ハンマでコンクリート系構造物の表面を叩打し、測定された時刻歴加速度a(t)を前記解析処理装置に取込み、 前記解析処理装置において、前記時刻歴加速度a(t)を加速度が0から最大になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxとを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出したならば、予め既知とされている動的ブリネル硬度値HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定する。 本方法の原理では、従来のリバウンド法と違って、直接的に動的ブリネル硬度を測定するものであるため、適用範囲に制限がなく、普通強度コンクリートから高強度コンクリートまで適用が可能である。また、コンクリートのバネ係数を式中に含んでいないため、精度良くブリネル硬度を測定でき、精度向上が図れるようになる。 前記第2課題を解決するために請求項2に係る本発明として、コンクリート系構造物の表面に衝撃を与える打撃ハンマと、この打撃ハンマの打撃部に設けられた加速度センサと、この加速度センサと信号伝送可能に接続された解析処理装置とからなる測定機器を用いて、コンクリートの圧縮強度を推定する方法であって、 前記打撃ハンマの打撃部は半径Rの球冠を成しており、質量Mの打撃ハンマでコンクリート系構造物の表面を叩打し、測定された時刻歴加速度a(t)を前記解析処理装置に取込み、 前記解析処理装置において、前記時刻歴加速度波形a(t)のピーク値を境に前半部と後半部とに分け、前半部の時刻歴加速度波形a(t)において、加速度が0からピーク値になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出し、 後半部の時刻歴加速度波形a(t)において、加速度がピーク値から0になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの反発速度VRを算出し、前記打撃力最大値Fmaxを前記打撃ハンマの反発速度VRで除して機械インピーダンスZRを求め、 次いで、前記動的ブリネル硬度値HBと前記機械インピーダンスZRとを組み合わせた指標値を求め、この指標値とコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定することを特徴とするハンマ打撃によるコンクリートの圧縮強度推定方法が提供される。 上記請求項2記載の発明は、前記時刻歴加速度波形a(t)のピーク値を境に前半部と後半部とに分けて、前半部の加速度波形では前記請求項1に記載した方法に従って動的ブリネル硬度値HBを算出する。また、後半部の加速度波形では、従来の機械インピーダンス法に従って機械インピーダンスZRを求めたならば、前記動的ブリネル硬度値HBと前記機械インピーダンスZRとを組み合わせた指標値を求め、この指標値とコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定するものである。 従来の機械インピーダンス法の場合は、打撃力波形(加速度波形)を前半部(アクティブ側)と後半部(リアクティブ側)と分けて、反発側(リアクティブ側)のみの波形のみを使用し、リアクティブ側の機械インピーダンス(ZR)を算出して、機械インピーダンス(ZR)とコンクリート圧縮強度との相関式から圧縮強度を推定しており、前半部の加速度波形は何ら有効利用されていなかったが、本方法の場合は、得られた1つの加速度波形から動的ブリネル硬度値HBと前記機械インピーダンスZRとを算出し、これらの組み合わせて指標値を作るため、従来の機械インピーダンス法の問題点であった、ピーク値の時間位置を正確に求めないと正しい機械インピーダンス値が求められないため、コンクリートの強度推定精度が低下するといった問題点が一挙に解決できるようになる。 以上詳説のとおり本発明によれば、従来のリバウンド法や機械インピーダンス法に代わる新たなコンクリート圧縮強度の推定方法であって、直接的に動的ブリネル硬度を測定することにより、精度良く普通強度コンクリートから高強度コンクリートまでコンクリートの圧縮強度推定が可能である等の利点を有する。 また、従来の機械インピーダンス法と組み合わせることにより、コンクリート強度の推定精度向上が図れるようになる。本発明で用いる測定機器1の装置構成図である。動的ブリネル硬度HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関図である。従来の機械インピーダンス法とを組み合わせたコンクリート強度推定方法を説明するための加速度波形図である。動的ブリネル硬度HBとコンクリート圧縮強度との関係をべき乗近似した場合の相関図である。従来の機械インピーダンス法を説明するための加速度波形図である。リバウンドハンマー反発度とコンクリート圧縮強度との関係を示す相関図である。機械インピーダンスZRとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関図である。 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。 図1に示されるように、測定機器1は、コンクリート構造物Hの表面2に衝撃を与える打撃ハンマ3と、この打撃ハンマ3の打撃部3aの反対側の面に取り付けられるとともに、打撃ハンマ3の構造物表面2を叩いた際に加速度を測定する加速度センサ4と、この加速度センサ4と信号伝送可能なように導電線5により接続された解析処理装置6とから構成されている。前記打撃ハンマ3は、把持部3cと、連結部3bと、半径Rの球冠を成している打撃部3aとから構成されている。 前記打撃ハンマ3でコンクリート構造物Hの表面2を叩打した場合、構造物表面2には打撃ハンマ3の打撃による弾性変形ないし僅かな塑性変形が生じる。この時、前記加速度センサ4によって時刻歴加速度a(t)が測定され、前記構造物表面2に発生した打撃力F(t)は、打撃ハンマ3の質量をM、加速度をa(t)とすると、F(t)=M・a(t)として計測されることになる。 本方法では、前記解析処理装置6において、前記時刻歴加速度a(t)を加速度が0から最大になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxとを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出し、 次いで、前記動的ブリネル硬度値HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定する。 以下、具体的に詳述する。〔ブリネル硬度の測定〕 先ずは、前記測定機器1を用いて、動的ブリネル硬度HBを測定し得る理論について詳述する。 コンクリートの構造物Hの表面2を先端が球冠の打撃部3a(以下、球冠3aともいう。)で打撃し、深さdの圧痕を生成させる。この時、打撃ハンマ3に作用する反力F(コンクリート表面の塑性変形抵抗)が発生する。球冠3aとコンクリートとの接触面積Aは、球冠3aの半径をRとすると、下式(6)で表される。 従って、単位面積当たりのコンクリートの塑性変形抵抗(体積圧縮応力)は、下式(7)となる。これは、動的ブリネル硬度HBに相当する。 本技術は、このブリネル硬度を打撃ハンマ3によって測定し、コンクリートの圧縮強度を推定する方法である。上式(7)に示されるように、動的ブリネル硬度Hbを測定するためには、コンクリート表面の塑性変形時の反力Fと、圧痕の深さdの二つの量を測定する必要があるが、コンクリート表面が塑性変形によって生成した反力の最大値と、打撃ハンマ3に作用する打撃力の最大値は等しいでの、力Fは下式(8)に示すように、質量Mに測定した加速度の最大値a(max)を乗じることによって求めることができる。 ブリネル硬度HBは材料固有の値であり物理定数であり、打撃ハンマ3の貫入深さdに拘わらず一定であるから、打撃ハンマ3がコンクリート表面に貫入するときの運動方程式は、打撃ハンマ3の貫入量をxとして、下式(9)によって表されることになる。 上式(9)は単弦振動型の運動方程式であるから、x=Asinωtとおいて、下式(10)が得られる。なお、式(9)は球冠3aを持ったハンマで打撃した場合に限り、成立する式である。 これから、下式(11)が得られる。 速度νは、変位の1階微分であるから、下式(12)となる。 時刻t=0で、初速度V0であるから、下式(13)が得られる。 さらに、力Fmaxについて、式(9)〜式(13)から下式(14)が得られる。 これから、動的ブリネル硬度HBは、下式(15)によって求められる。 ここで、Mはハンマ質量であり、ハンマの衝突速度V0は時刻歴加速度a(t)を加速度が0から最大になるまでの時間に亘って時間積分することにより得られた数値である。〔コンクリート圧縮強度の推定〕<強度推定方法(その1)> 前述の要領によって、動的ブリネル硬度HBが得られたならば、動的ブリネル硬度HBとコンクリートの圧縮強度との間に相関関係があることが既往の文献より分かっているので(例えば、図2参照)、前記動的ブリネル硬度値HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定することができる。<強度推定方法(その2)> 図3に示されるように、打撃ハンマ3でコンクリート表面を叩打して得られた時刻歴加速度波形a(t)のピーク値(Fmaxの時間位置)を境に前半部と後半部とに分け、前半部の加速度波形a(t)により前述した要領によって前記動的ブリネル硬度値HBを算出する。 そして、後半部の時刻歴加速度波形a(t)において、加速度がピーク値から0になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの反発速度VRを算出し、下式(16)に示すように、前記打撃力最大値Fmaxを前記打撃ハンマの反発速度VRで除して機械インピーダンスZRを求める。 次いで、前記動的ブリネル硬度値HBと機械インピーダンスZRとを組み合わせた指標値を求め、この指標値とコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定する。 前記指標値としては、例えば、下式(17)に示されるように、前記動的ブリネル硬度値HBと機械インピーダンスZRとの二乗和平方根を取ったり、或いは動的ブリネル硬度HBと、コンクリートの圧縮試験結果の関係をべき乗近似すると、図4に示すように、ブリネル硬度HBの2乗と圧縮強度に比例関係があることが分かるため、下式(18)に示されるように、動的ブリネル硬度HBの2乗と機械インピーダンスZRの2乗を乗じて指標値を求めたりすることによって、より精度の向上が期待できる。 ここで、ηは比例定数である。 本第2手法では、時刻歴加速度波形a(t)のピーク値を境に前半部と後半部とに分け、前記前半部の加速度波形a(t)により前記動的ブリネル硬度値HBを算出し、後半部の加速度波形a(t)により機械インピーダンスZRを求める。そうすると、ピーク値の検出位置が仮に真値よりも後寄りになった場合を考えると、前半部から求める動的ブリネル硬度値HBが小さくなり、それに反して後半部から求める機械インピーダンスZRの数値が大きくなる。逆にピーク値の検知位置が真値よりも前側寄りになった場合は、前半部から求める動的ブリネル硬度値HBが大きくなり、それに反して後半部から求める機械インピーダンスZRの数値が小さくなる。 式(17)のように、動的ブリネル硬度値HBと機械インピーダンスZRとを組み合わせた指標値σを求めるようにすれば、ピーク値の位置が少し違ったとしても、前半部から求める動的ブリネル硬度値HBと後半部から求める機械インピーダンスZRとの間で相殺し合う関係になり、測定値のバラツキが小さくなり、結果的に測定精度の向上が図れるようになる。 1…測定機器、2…コンクリートの表面、3…打撃部(球冠部)、4…加速度センサ、5…導電線、6…解析処理装置、H…コンクリート構造物 コンクリート系構造物の表面に衝撃を与える打撃ハンマと、この打撃ハンマの打撃部に設けられた加速度センサと、この加速度センサと信号伝送可能に接続された解析処理装置とからなる測定機器を用いて、コンクリートの圧縮強度を推定する方法であって、 前記打撃ハンマの打撃部は半径Rの球冠を成しており、質量Mの打撃ハンマでコンクリート系構造物の表面を叩打し、測定された時刻歴加速度a(t)を前記解析処理装置に取込み、 前記解析処理装置において、前記時刻歴加速度a(t)を加速度が0から最大になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出し、 次いで、前記動的ブリネル硬度値HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定することを特徴とするハンマ打撃によるコンクリートの圧縮強度推定方法。 コンクリート系構造物の表面に衝撃を与える打撃ハンマと、この打撃ハンマの打撃部に設けられた加速度センサと、この加速度センサと信号伝送可能に接続された解析処理装置とからなる測定機器を用いて、コンクリートの圧縮強度を推定する方法であって、 前記打撃ハンマの打撃部は半径Rの球冠を成しており、質量Mの打撃ハンマでコンクリート系構造物の表面を叩打し、測定された時刻歴加速度a(t)を前記解析処理装置に取込み、 前記解析処理装置において、前記時刻歴加速度波形a(t)のピーク値を境に前半部と後半部とに分け、前半部の時刻歴加速度波形a(t)において、加速度が0からピーク値になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出し、 後半部の時刻歴加速度波形a(t)において、加速度がピーク値から0になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの反発速度VRを算出し、前記打撃力最大値Fmaxを前記打撃ハンマの反発速度VRで除して機械インピーダンスZRを求め、 次いで、前記動的ブリネル硬度値HBと前記機械インピーダンスZRとを組み合わせた指標値を求め、この指標値とコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定することを特徴とするハンマ打撃によるコンクリートの圧縮強度推定方法。 【課題】従来のリバウンド法や機械インピーダンス法に代わる新たなコンクリート圧縮強度の推定方法を提供する。【解決手段】打撃ハンマ3の打撃部3aは半径Rの球冠を成しており、質量Mの打撃ハンマ3でコンクリート系構造物Hの表面2を叩打し、測定された時刻歴加速度a(t)を前記解析処理装置6に取込み、前記解析処理装置6において、前記時刻歴加速度a(t)を加速度が0から最大になるまでの時間に亘って時間積分することにより打撃ハンマの衝突速度V0を算出するとともに、構造物表面に発生した時刻歴打撃力F(t)(=M(ハンマ質量)×a(t))の最大値Fmaxを求めたならば、式(15)によって動的ブリネル硬度値HBを算出し、前記動的ブリネル硬度値HBとコンクリート圧縮強度との関係を示す相関式に基づいて、コンクリートの圧縮強度を推定する。【選択図】図1