タイトル: | 公開特許公報(A)_ヴィオラセインを含有する化粧品、医薬品、医薬部外品 |
出願番号: | 2013249571 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 8/49,A61Q 19/00,A61K 31/404,A61P 17/02,C12P 1/04 |
日達 浩造 上野 信 岸 秀伸 戸田 健太郎 由岐 洋 滝口 泰之 佐々木 理 平野 沙耶 國生 恵汰 弓場 稔之 JP 2015105264 公開特許公報(A) 20150608 2013249571 20131202 ヴィオラセインを含有する化粧品、医薬品、医薬部外品 三浦印刷株式会社 000175250 工藤 一郎 100109553 日達 浩造 上野 信 岸 秀伸 戸田 健太郎 由岐 洋 滝口 泰之 佐々木 理 平野 沙耶 國生 恵汰 弓場 稔之 A61K 8/49 20060101AFI20150512BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20150512BHJP A61K 31/404 20060101ALI20150512BHJP A61P 17/02 20060101ALI20150512BHJP C12P 1/04 20060101ALI20150512BHJP JPA61K8/49A61Q19/00A61K31/404A61P17/02C12P1/04 Z 5 3 OL 24 4B064 4C083 4C086 4B064AE57 4B064CA02 4B064DA01 4B064DA20 4C083AA082 4C083AA122 4C083AB112 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC122 4C083AC422 4C083AC442 4C083AC472 4C083AC851 4C083AC852 4C083AD532 4C083BB22 4C083BB48 4C083CC02 4C083EE14 4C083FF01 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA04 4C086BC13 4C086GA07 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA89 本発明は、天然青色色素であるヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品、医薬品、医薬部外品などに関する。 様々な製品の着色に用いられる色素として広く利用されているのが合成色素である。しかしながら、合成色素は人体や環境に対する有害性が疑われるものも少なくない。そのため、化粧品などのように直接的に人体に触れる製品に対しては比較的安全性に優れる天然色素が用いられる傾向がある。このような天然色素には、色素としての作用だけでなく薬理的作用が期待できるものも存在する。 例えば、細菌由来の天然青色色素であるヴィオラセインに、抗菌作用や抗ガン作用があることが近年分かってきた。特許文献1には、海洋細菌Pseudoalteromonas sp.株から精製したヴィオラセインを有効成分とするプロテインキナーゼ阻害剤が開示されている。プロテインキナーゼは生体の多くの機能に関与し、プロテインキナーゼの活性を制御することにより疾患の予防や治療が期待される。そこで、上記ヴィオラセインがプロテインキナーゼの活性を阻害することを明らかにしている。特開2010−126469号公報 ヴィオラセインの薬理的作用についてはいまだ不明な点が少なくない。そこで、ヴィオラセインを化粧品などに応用するうえで、有用な薬理的効果を明らかにし、係る薬理的効果を奏するヴィオラセイン含有の化粧品などを提供すること課題とする。 上記課題を解決するための手段として、以下の発明などを提供する。すなわち、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品を提供する。また、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する医薬品、医薬部外品を提供する。 さらに、ヴィオラセイン産生細菌を培養し、ヴィオラセインを製造するためのヴィオラセイン製造方法であって、ヴィオラセイン産生細菌を前培養する前培養ステップと、前培養したヴィオラセイン産生細菌を本培養する本培養ステップと、本培養したヴィオラセイン産生細菌からヴィオラセインを抽出する抽出ステップと、抽出ステップで得られた抽出液を濾過する濾過ステップと、濾過ステップにて濾過された濾過物を乾固状にする乾固ステップと、乾固状になった濾過物を再結晶化させる再結晶ステップと、再結晶ステップで得られた再結晶物に純水を加え遠心分離した後、上清を除去した沈殿物を凍結乾燥する凍結乾燥ステップと、を含むヴィオラセイン製造方法を提供する。 本発明により、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品、医薬品、医薬部外品を提供することができる。ヴィオラセインを含有するクリームの配合例を示す表ヴィオラセインを含有する軟膏の配合例を示す表本実施形態のヴィオラセイン製造方法の一例を示すフロー図アクネ菌を加え1日静置した各試料の態様を示す写真アクネ菌を加えて1日静置したサリチル酸の様子を示す写真アクネ菌を加えて1日静置したレソルシノールの様子を示す写真イソプロピルメチルフェノールの添加濃度とアクネ菌の増殖の関係を示す図ヴィオラセインとレスベラトロールのTrolox換算量を示す図ヴィオラセインの可視・紫外領域の吸収スペクトルを示す図ヴィオラセインのUV透過率を示す図既知薬品試料の吸光度の測定結果を示す図既知薬品試料のUV透過率を示す図ワセリンのUV透過率とUVカット率を示す図ヴィオラセインのUVカット率を示す図 以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。<実施形態><概要> ニキビの原因の一つは、皮膚常在菌であるアクネ菌(Propionibacterium acnes)の過剰な増殖である。皮膚に直接触れる化粧品において、このアクネ菌に対する抗菌作用は有用である。そこで、天然色素として化粧品に応用可能であるヴィオラセインが併せて抗アクネ菌作用を有することを明らかにする。また、ヴィオラセインを製造する方法についても示す。<構成> 本実施形態は、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品である。また、ヴィオラセインの抗アクネ菌作用を用いた医薬品又は医薬部外品である。 「ヴィオラセイン(Violacein)」は、ヴィオラセイン産生細菌が生産する青紫の色素である。ヴィオラセイン産生細菌としては、例えば、「Chromobacterium violaceum」、「Chromobacterium fluviatile」、「Pseudoalteromonas luteoviolacea」、「Janthinobacterium lividum」などがある。 ヴィオラセインを得るための方法としては、寒天培地などでヴィオラセイン産生細菌を培養し、培養した菌を遠心分離機などで分離し、分離後、上澄みを除去し沈殿物にエタノールを加えて抽出する方法などがある。とくに収率の向上を図るための好適なヴィオラセイン製造方法については後に詳述する。 「アクネ菌(Propionibacterium acnes)」は、嫌気性の皮膚常在菌である。アクネ菌は嫌気性であるためとくに毛穴に生育しやすい。この毛穴に皮脂がつまるとこれを栄養としてアクネ菌が増殖する。そしてアクネ菌がつくり出す酵素リパーゼによって、皮脂が分解されて遊離脂肪酸が作られ、この遊離脂肪酸が炎症を引き起こしてニキビとなる。 このアクネ菌の増殖を抑制する抗アクネ菌作用は肌の健康に保つ上で有効であり、抗アクネ菌作用を有するヴィオラセインを化粧品に応用することは極めて有用である。なお、ヴィオラセインが有する抗アクネ菌作用は、これを化粧品に応用することのみならず、抗アクネ菌作用を効能とする医薬品や医薬部外品とすることも有用である。なお、ヴィオラセインの抗アクネ菌作用は、主に肌に塗布することにより働く。したがって、肌に直接的に用いる化粧品の他、外用薬としての医薬品及び医薬部外品として応用しやすい。また、ヴィオラセインの抗アクネ菌作用成分を抽出し、経口化粧品や内服薬や注射薬としての医薬品及び医薬部外品として応用することも可能である。 抗アクネ菌作用を有するヴィオラセインを含有する化粧品としては、例えば、スキンケア化粧品として美容液、クリーム、ローション、洗顔料、乳液、美容液、化粧水、クレンジング、日焼け止めなどや、メーキャップ化粧品としてファンデーションやアイシャドーなどとすることができる。 例えば、美容液とする場合には、ヴィオラセインの他、水、コメヌカ油、ペンチレングリコール、グリセリン、スクワラン、パルミチン酸セチル、ダイマージリノール酸などを主成分とし、ヒアルロン酸ナトリウム、水添ナタネ油アルコール、カルボマー、キサンタンガム、水酸化カリウム、ジメチコン、ポリソルベート−60、ステアリン酸グリセリル、水添ヒマシ油、フェノキシエタノール、尿素、アルギニン、アルブチン、クエン酸などを添加剤とする。そして、各成分を水溶性原料・油溶性原料に分けて溶解してから、それらを加熱して混合・乳化する。これを冷却しながらエキスなどの添加物を配合し、さらに低温になったところで精油や香料などの揮発性の高いものを添加する。その後、所定の安全性の検査(菌、pH、温度安定性、粘度等)を行い、瓶などに充填して製品として提供することができる。また、アスタキサンチン、トコフェロール、ユビキノン、アスコルビン酸Naなどの抗酸化作用成分をさらに添加することにより、製品としての抗酸化作用をより向上させることも好ましい。また、パラベン類を防腐剤として添加することも可能である。具体的な配合例として、クリームを調製する一例を図1に示す。 図1に示すように、抗アクネ菌作用を有するヴィオラセイン、抗酸化作用を有するレスベラトロール、乳化成分であるモノステアリン酸グリセリドとモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、安定化成分であるセタノールと流動パラフィン、エモリエント成分であるホホバ油、保湿成分であるプロピレングリコール、そして、香料及び水を配合する。 また、抗アクネ菌作用を有する軟膏を調整する配合例を図2に示す。図2に示すように、抗アクネ菌作用を有するヴィオラセイン、肌荒れ改善成分であるグリチルレチン酸、角層柔軟成分であるイオウ、安定化成分であるサラシミツロウと流動パラフィン、乳化成分であるラノリンポリソルベート80、エモリエント成分であるオリーブ油、そして、防腐剤及び水を配合する。なお、ヴィオラセインは防腐作用を発揮し得るため、別途防腐剤を添加せずに済む余地がある。 抽出したヴィオラセインのpH依存性を確認したがpH2〜pH12の間では組成が変化することもなく、色素の分光光度計測定による分光波長もほぼ同じ値を示したため、軟膏、クリーム等の製造時にアルカリ性にて乳化した際もその効能は十分に持続していることがわかる。これより極めて化粧品製造に適した色素であることが確認できる。 また、内服薬としての医薬品や医薬部外品とする場合には、ヴィオラセインの抗アクネ菌作用成分を粉体や粒体としカプセルに充填したり、あるいは、賦形剤、結合剤、崩壊剤などを添加して打錠機等を用いて錠剤として製造することができる。また、サプリメント、健康食品とする場合には、内服薬のようにカプセルや錠剤のような形態で提供してもよいし、飲料、調味料、菓子等の各種の食品に添加した態様で提供することもできる。 上述した通り、ヴィオラセインを製造するための方法については既にいくつかの方法が報告されている。本実施形態では、とくに収率の向上を図るうえで好適なヴィオラセイン製造方法を示す。 図3は、本実施形態のヴィオラセイン製造方法の一例を示すフロー図である。まず、「前培養ステップ」(S0301)において、ヴィオラセイン産生細菌を前培養する。単離した生物をいきなり大容量の培地へ接種すると死滅する場合が多いため、最初は少量の培地へ入れて細菌数を増やし、後の本培養の前段階として行うステップである。前培養は、例えば、普通ブイヨン:1.8g、寒天:1.5g、純水:100mlを培地とし、ヴィオラセイン産生細菌であるクロモバクテリウム ヴィオラセウム(Chromobacterium violaceum)VP2株を1白金耳分接種し、培養温度を25℃として2日間程度静置培養する。 次に、「本培養ステップ」(S0302)において、前培養したヴィオラセイン産生細菌を本培養する。例えば、ポリペプトン:2.0g、K2HPO4:0.15g、MgSO4・7H2O:0.15g、グリセリン1.25g、純水:100mlを加えたキングB培地(pH7.2±0.2)に、前培養したヴィオラセイン産生細菌を接種し、培養温度を25℃とし、4日間程振とう培養する。 次に、「抽出ステップ」(S0303)において、本培養後、遠心分離により菌体及び色素を沈殿させ、上清を取り除き沈殿物にエタノールを加えヴィオラセインを抽出した。なお、遠心分離は、RCF:8000×g、温度:4℃、時間:5分、で行った。 次に、「濾過ステップ」(S0304)において、抽出ステップにて得られたヴィオラセイン抽出液を濾過する。そして、「乾固ステップ」(S0305)において、濾過された濾過物の溶媒であるエタノールをロータリーエバポレーターにより乾固状にする。 次に、「再結晶ステップ」(S0306)において、乾固状になった濾過物を再結晶化させる。そして、「凍結乾燥ステップ」(S0307)において、再結晶ステップで得られた再結晶物に純水を加え遠心分離した後、上清を除去した沈殿物を凍結乾燥する。このとき、加える純水の温度を80℃程にし、3回程に分けて加えることが好ましい。先の再結晶ステップ終了後の段階でヴィオラセインを収集した場合には、培地100mlあたり30mg程の収集量に過ぎないが、本凍結乾燥ステップを経ることにより、収集量は培地100mlあたり80mg程にまで向上した。これは、エタノールの沸点よりも高い温度の純水を加えることによりエタノールの蒸発が生じたためと考えられる。<試験 抗アクネ菌作用> まず、ヴィオラセインの抗アクネ菌作用の有無を確認するための試験を行った。具体的には、培地5mlにエタノールで10倍希釈を繰り返し10−8倍希釈まで、すなわち1億倍希釈まで行ったヴィオラセイン0.1mlにアクネ菌0.1mlを加え、蓋をして37℃で1日静置した。蓋をしたのはアクネ菌が嫌気性であるためである。そして、コントロール用にエタノール0.1mlとアクネ菌0.1mlを5mlの培地に加えたものも用意し、それぞれの試料に対して630nmで吸光度計で濁度の測定を行った。その結果、ヴィオラセインの濃度が高いほど濁度が低いという結果を得ることができた。この結果から、ヴィオラセインが抗アクネ菌作用を有することが分かった。 次に、ヴィオラセインと、既知の抗菌物質である「サリチル酸」、「イソプロピルメチルフェノール」、「レソルシノール」とで抗アクネ菌作用の比較を行う実験を行った。具体的には、培地5mlにエタノールで10倍希釈を繰り返し10−3希釈まで、すなわち1千倍希釈まで行ったサリチル酸とイソプロピルメチルフェノール0.1mlと、純水にレソルシノールを溶解させて調整した試料0.1mlを培地に加え撹拌したものにアクネ菌0.1mlを加え蓋をし37℃で1日静置した。また、コントロール用にエタノール0.1mlとアクネ菌0.1mlを5mlの培地に加えたものを用意し、630nmで吸光度を測定した。 図4は、上記の通りアクネ菌を加え1日静置した各試料の態様を示す写真である。図示するようにヴィオラセインを加えた溶液に濁りがほとんどなかったが、レソルシノール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸の各試料については濁った状態であった。 また、MIC値(minimum inhibitory concentoration:最小発育阻止濃度)を検討するために、ヴィオラセイン1.6mgをエタノール0.8mgに溶解させたものを0.4mlのエタノールに加えることで希釈し、これを培地4.8mlに0.1ml加え撹拌したものにアクネ菌0.1mlを加え蓋をし37℃で1日静置した。その結果、ヴィオラセインの濃度が5μg/mlの場合には、3時間経過後から吸光度は上昇し、濃度10μg/mlの場合には、20時間経過後に吸光度が上昇した。一方、濃度20μg/mlの場合には、1日静置したのちも吸光度の上昇は認められなかった。したがって、ヴィオラセインのMIC値は、20μg/ml程度であると判明した。なお、20μg/mlという値は抗生物質と同程度であり、新たな抗生物質としての応用が考えられる。 さらに、サリチル酸、レソルシノール、イソプロピルメチルフェノールのそれぞれのMIC値を検討するための試験も行った。具体的には最終濃度が2000、1000、500、250、200、100、50、25(μg/ml)となるようエタノールで調整したレソルシノール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸を培地4.8mlに0.1ml加え撹拌し、そこにアクネ菌0.1mlを加え蓋をし37℃で1日静置し、630nmの吸光度で測定した。 図5は、アクネ菌を加えて1日静置したサリチル酸の様子を示す写真である。図中の数は調整した最終濃度を示している。高濃度である程濁度は低下しているので抗菌作用は認められる。しかしながら、2000μg/mlの濃度においても若干の濁りが認められた。したがって、サリチル酸のMIC値は2000μg/mlよりも高い値となる。 図6は、アクネ菌を加えて1日静置したレソルシノールの様子を示す写真である。図中の数は調整した最終濃度を示している。レソルシノールは2000μg/mlの濃度において濁りがなく、MIC値は2000μg/ml程度であると認められる。 図7は、アクネ菌を加えて1日静置したイソプロピルメチルフェノールの各濃度における濁度変化を示すグラフである。濃度100μg/mlまでの各試料はいずれも20分を過ぎたあたりから吸光度が上昇した。一方、濃度200μg/ml試料については吸光度の変化はなく、イソプロピルメチルフェノールのMIC値は200μg/ml程度であると認められる。 上記の通り、ヴィオラセインのMIC値は、20μg/ml程度であると判明した。一方、既知の抗菌物質については、イソプロピルメチルフェノールのMIC値は200μg/ml程度であり、レソルシノールのMIC値は2000μg/ml程度であった。サリチル酸は2000μg/mlの濃度においても若干の濁りが認められたため、MIC値は2000μg/mlを上回る値になる。したがって、ヴィオラセインは上記各抗菌物質に対して優れた抗アクネ菌作用を有すると考えられる。<試験 抗酸化作用> 抗酸化作用とは、スーパーオキシドなどの活性酸素を無害化する作用などをいう。活性酸素は生体の脂質や蛋白質を酸化させ細胞の損傷等を及ぼし、例えば、肌にしわやたるみを生じさせたりする。抗酸化物による抗酸化作用は、経口摂取によって体内に及ぶだけでなく、肌に塗って浸透させることによって皮膚細胞に対しても作用すると考えられている。 抗酸化力の測定はABTS法を用いて測定を行った。7mM(M:モル濃度)のABTS(2,2'−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))水溶液5mlに140mMのペルオキソ二硫酸カリウム水溶液88μlを加え暗所室温で16時間静置することによりABTS溶液の調製を行った。ヴィオラセイン1mgにエタノール4mlを加えた溶液0.5mlにABTS溶液をエタノールで15倍希釈したもの1mlを加え10分間反応させ630nmの吸光度で測定を行った。また、比較のため既知の抗酸化物であるレスベラトロール1mgにエタノール4mlを加えた溶液0.5mlにABTS溶液をエタノールで15倍希釈したもの1mlを加え10分間反応させ630nmの吸光度で測定を行った。 図8は、上記ABTS法による測定結果に基づき、ヴィオラセインとレスベラトロールの抗酸化力をTrolox換算量として算出した結果を示すものである。なお、Troloxは既知の抗酸化物質である6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸である。図示するように、ヴィオラセインはレスベラトロールの半分程度の抗酸化力を有することが判明した。 以上の通り、ヴィオラセインに一定の抗酸化作用があること分かった。したがって、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用及び抗酸化作用を有する化粧品、医薬品、医薬部外品として提供することも可能である。<試験 UVカット作用> 上記の各試験結果から、ヴィオラセインが抗アクネ菌作用及び抗酸化作用を有することが明らかになった。さらに、化粧品に応用する際の有用なUVカット(紫外線カット)作用について検討すべく試験を行った。なお、本試験におけるUVカット作用とは、紫外線の透過を妨げる作用をいう。 この試験では、市販のUVカットに使用されている薬品とヴィオラセインのUVカット作用の比較検討を行った。具体的には、プロピレングリコール10mlにヴィオラセイン1mgを加え1日撹拌したものを、通常の測定手順に従い光度計の石英セルに収め吸光度の測定を行った。比較対象として、UVカット薬品として既知のフェニルベンズイミダゾールスルホン酸1mgにプロピレングリコール10mlを加えたものと同じく既知のUVカット薬品であるヒドロキシメトキシベンゾフェノン1mgにプロピレングリコール10mlを加えたもの(以下、既知薬品試料とする)とを混合して、上記ヴィオラセインと同様に吸光度の測定を行った。 なお、吸光度とUV透過率及びUVカット率は、以下の関係にある。吸光度A=−log10(T)T(UV透過率)=10−A UVカット率(%)=100(1−T)また、地表に届く紫外線(波長10−400nm)は、波長によりUV−A(波長315−400nm)及びUV−B(波長280−315nm)に細分される。そこで、それぞれの紫外線領域にも着目した。 図9は、ヴィオラセインの吸光度の測定結果を示す図である。また、図10は、図9の結果に基づき、上記の関係からUV透過率を算出した結果を示す図である。これらの結果から、ヴィオラセインのUVカット率は、UV−Aに対して約47%のカット率、UV−Bに対して約60%のカット率であることが分かった。 図11は、既知薬品試料の吸光度の測定結果を示す図である。また、図12は、図11の結果に基づき、上記の関係からUV透過率を算出した結果を示す図である。これらの結果から、既知薬品試料のUVカット率は、UVAに対して約77%のカット率、UVBに対して約97%のカット率であることが分かった。したがって、ヴィオラセインには市販のUVカット剤よりやや劣るものの、一定のUVカット作用が認められた。 UVカット作用について、ヴィオラセインを含有する化粧品等を肌に塗布する場合を想定した試験も行った。具体的には、エタノール100μlにヴィオラセイン1mgを溶かしワセリン10mgに加え石英板に塗布し0.150mmの厚さに伸ばし、この石英板を分光光度計にセットして200〜800nmで吸光度の測定を行った。 図13は、ヴィオラセイン50μg/mgをワセリンに溶解したものの吸光度から予め測定したワセリンの吸光度を引き、その結果から算出したヴィオラセイン50μg/mgのUV透過率と、UV透過率から換算したUVカット率を示す図であり、図13(a)はUV透過率を示し、図13(b)はUVカット率を示している。 図14は、ヴィオラセイン5μg/mgをワセリンに溶解したものの吸光度から予め測定したワセリンの吸光度を引き、その結果から算出したヴィオラセイン5μg/mgのUV透過率と、UV透過率から換算したUVカット率を示す図であり、図14(a)はUV透過率を示し、図14(b)はUVカット率を示している。 測定結果によればヴィオラセイン5μg/mgでUV−A、UV−Bともに透過率換算で約0〜6%のUVカット率であり、ヴィオラセイン50μg/mgではUV−Aは約50%、UV−Bは約60%のUVカット率であった。UVカット効果を発揮させるためには、ヴィオラセイン50μg/mg以上の含有率が必要であることが判明した。なお、ヴィオラセインの含有率が50μg/mg以下である場合であっても、微弱ながらUVカット効果を得ることができるので、既存のUVカット剤を添加する量をヴィオラセインにより補うことが可能となる。 なお、50μg/mg以上の含有量を添加すると人間の肌に塗った際、青色色素の色が目視で分かる。肌に塗布した際に青色の着色を認識できないようにするためには、ヴィオラセインの最大添加量を50μg/mg以下にすることが好ましい。この色素着色テストは日焼け止め化粧品の評価方法である人の肌1平方センチあたり2mgを塗布した際の皮膚テストより確認できた。 また、化粧品として使用した際の肌への影響の確認テストとして人間の肌によるパッチテストを行った(被験者=2名:内、1名はアルコールパッチテスト陽性の敏感肌の者にてテスト)。ヴィオラセイン濃度10mgにてバインダーとしてプロピレングリコールを使用した。毎日同じ場所に塗布を行い5日間で肌に影響がないか経過観測した。この結果2名ともに肌になんの炎症等もでないことが分かった。 併せて、マウスに対してパッチテストも行った。実験対象としたマウスは、BALB/c雄 9週齢 2匹であり、エタノール溶液に1%のヴィオラセインを溶解しその溶液を腹部に電気バリカンで剃毛し50μlずつ3日間連続塗布し、感作した。感作終了後に腹部を比べると、腹部は薄い紫色をしているが炎症等は見られなかった。 以上の通り、ヴィオラセインに一定のUVカット作用があること分かった。したがって、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用及び/又は抗酸化作用及び/又はUVカット作用を有する化粧品、医薬品、医薬部外品として提供することも可能である。<試験 光安定性> 次に、ヴィオラセインの光安定性ついて試験を行った。具体的にはアスコルビン酸もしくはアスコルビン酸誘導体を含有することで、紫外線照射を行い、ヴィオラセイン(10mg/ml)を10μL取り、ろ紙に滴下し光安定性を色素の色変化にて測色計(X−Rire 520)より確認した。結果、約24時間UV照射時でアスコルビン酸誘導体含有物はヴィオラセイン単体より2倍〜4倍の光安定性を有することが測定結果より判明した。測色計より、当初ΔE=18が5時間でヴィオラセインのみではΔE=5、アスコルビン酸誘導体を含有させたものは、5時間後の測定値はΔE=17にとどまった。24時間後では色素単体ではΔE=4、アスコルビン酸誘導体含有物はΔE=12に抑制された。また蛍光灯下では24時間においての光安定性は向上し、24時間では蛍光灯によるアスコルビン酸誘導体含有(入り)ヴィオラセイン色素は退色することなく、UVカット効果を24時間フルに持続できることが判明した(開始から24時間後までΔE=18)。一方、蛍光灯下でのヴィオラセイン単体では24時間後にΔE=4までの差がでる結果を得た。 上記試験結果より、ヴィオラセイン色素の光安定性を向上させるためには抗酸化物質との混合が好ましいことが分かった。例えば、ヴィオラセイン色素によるUVカット効果を安定かつ持続するためにはアスコルビン酸などの抗酸化物質を1種もしくは複数種含有させることが好ましい。 上記の通り、ヴィオラセインが抗アクネ菌作用を有するとともに、抗酸化作用及びUVカット作用についても若干の効果が認められた。これら各作用は、スキンケアの観点からいずれも有用な作用である。したがって、ヴィオラセインは、洗顔料、乳液、美容液、化粧水、クレンジング、日焼け止めなどの化粧品に含有する成分として極めて有用なものであることが分かった。<効果> 本実施形態により、ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品、医薬品、医薬部外品を提供することができる。 ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品。 ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する医薬品。 ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する医薬部外品。 ヴィオラセイン産生細菌を培養し、ヴィオラセインを製造するためのヴィオラセイン製造方法であって、 ヴィオラセイン産生細菌を前培養する前培養ステップと、 前培養したヴィオラセイン産生細菌を本培養する本培養ステップと、 本培養したヴィオラセイン産生細菌からヴィオラセインを抽出する抽出ステップと、 抽出ステップで得られた抽出液を濾過する濾過ステップと、 濾過ステップにて濾過された濾過物を乾固状にする乾固ステップと、 乾固状になった濾過物を再結晶化させる再結晶ステップと、 再結晶ステップで得られた再結晶物に純水を加え遠心分離した後、上清を除去した沈殿物を凍結乾燥する凍結乾燥ステップと、を含むヴィオラセイン製造方法。 前記ヴィオラセイン産生細菌はバクテリウム ヴィオラセウムである請求項4に記載のヴィオラセイン製造方法。 【課題】ヴィオラセインを化粧品などに応用するうえで、有用な薬理的効果を明らかにし、係る薬理的効果を奏するヴィオラセイン含有の化粧品などを提供すること課題とする。【解決手段】ヴィオラセインを含有し、その抗アクネ菌作用を有する化粧品、医薬品、医薬部外品を提供する。また、ヴィオラセイン産生細菌を前培養する前培養ステップと、前培養したヴィオラセイン産生細菌を本培養する本培養ステップと、本培養したヴィオラセイン産生細菌からヴィオラセインを抽出する抽出ステップと、抽出ステップで得られた抽出液を濾過する濾過ステップと、濾過ステップにて濾過された濾過物を乾固状にする乾固ステップと、乾固状になった濾過物を再結晶化させる再結晶ステップと、再結晶ステップで得られた再結晶物に純水を加え遠心分離した後、上清を除去した沈殿物を凍結乾燥する凍結乾燥ステップと、を含むヴィオラセイン製造方法を提供する。【選択図】図3