タイトル: | 公開特許公報(A)_Gテイル配列の長さ測定方法及びそれに用いるキット |
出願番号: | 2013246088 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09 |
田原 栄俊 井出 利憲 JP 2014050407 公開特許公報(A) 20140320 2013246088 20131128 Gテイル配列の長さ測定方法及びそれに用いるキット 国立大学法人広島大学 504136568 富士レビオ株式会社 306008724 山本 秀策 100078282 森下 夏樹 100113413 田原 栄俊 井出 利憲 JP 2005274523 20050921 C12Q 1/68 20060101AFI20140221BHJP C12N 15/09 20060101ALI20140221BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 A 1 2007536561 20060921 OL 34 4B024 4B063 4B024AA11 4B024CA01 4B024CA09 4B024HA14 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ02 4B063QQ03 4B063QQ08 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR40 4B063QR56 4B063QR72 4B063QR77 4B063QS34 4B063QX02 本発明は、Gテイル配列の長さ測定方法及び該方法に使用するキットに関する。 ヒトの染色体DNAの末端は、テロメアとよばれる5’-TTAGGG-3’の繰り返し配列からなる二本鎖DNAである。しかし、テロメアの最末端は、3’末端が突出した構造をしていて、75〜300塩基の一本鎖DNA部分(G-tail;以下単にGテイルという。)を形成している。前記Gテイルは、通常はテロメア延長酵素であるテロメラーゼがアクセスする場合やDNAの複製時以外は、ループを形成して保護された状態となっている(例えば、非特許文献1参照)。 大部分を占めるテロメア2本鎖部分は、細胞分裂が繰り返される度に短くなり細胞老化に関与することが知られているが、細胞分裂が繰り返されても前記Gテイルは75〜300塩基の一定の長さに維持されている。ところが、多数回の細胞分裂後のテロメア2本鎖部分の短縮による細胞分裂の停止、すなわち有限分裂寿命に至っても、通常Gテイルは75〜300塩基の一定の長さのままであるという報告と有限分裂寿命でGテイルが短縮するという相反した結果が報告された。これは、Gテイルがテロメアに比べて極めて短いため、当時、Gテイルの長さを正確かつ定量的に測定する方法がなかったためであると思われる。 一方、二本鎖テロメアDNAには結合しないがGテイルには結合するタンパク質POT1やそれらに結合するタンパク質PIP1などの発見により、テロメアのGテイルが、2本鎖部分とは全く異なる機能、例えば、下記のように細胞死の直接的シグナルや様々な細胞応答等に関係していることが近年明らかになってきた。 テロメアにはそれに結合するテロメア結合タンパク質が存在し、該テロメア結合タンパク質は、TRF1(Telomere repeat binding factor)およびTRF2が知られているが、癌細胞では、TRF2がないと、Gテイルのループ形成ができなくなり、Gテイルの短縮が起こることが明らかになった(例えば、非特許文献2参照)。この場合、重要なのはテロメア全長には変化が見られないにもかかわらず、Gテイルの短縮がみられ、さらには染色体末端の融合を引き起こしていることである。 正常細胞の場合も、TRF2の機能を細胞内で消失させるとGテイルの短縮がおこり細胞増殖が停止して、老化してしまう(例えば、非特許文献2参照)。この場合も、テロメア全長は変化しないことから、Gテイルの短縮が老化の引き金になっていると考えられる。 上記TRF1やTRF2のみならず、ATM、NBS1、MRNなど様々なタンパク質がGテイルのループ形成に要求されることが分かってきた。様々なDNA傷害剤や放射線によるDNAの傷害に感受性のシグナルでは、テロメアの短縮が見られなくてもGテイルの短縮がみられる。これは、DNAの修復に必要なタンパク質(ATM、NBS1及びMRNなど)がリクルートされてくることからも明らかである。 ATMは、血管拡張性疾患の原因遺伝子、NBS1は、ナイミーヘン症候群の原因遺伝子で高発ガン性、免疫不全、染色体不安定性、放射線感受性を特徴とする稀な常染色体劣性遺伝疾患であり、これらがGテイルにリクルートされることは、上記各疾患との関わりを示している。実際に、Gテイルのループののり付けとして機能しているTRF2の機能を阻害すると、ATMに依存したアポトーシスが誘導される(例えば、非特許文献3参照)。 また、Gテイルに特異的に作用する抗癌剤は、テロメアの短縮を伴わずGテイルの短縮を引き起こし、癌細胞を死に至らしめることもわかってきた(例えば、非特許文献4参照)。 これらの結果から、DNA障害をもたらす薬剤やストレスが、Gテイルを介して細胞にシグナルを伝え、様々な細胞応答を引き起こしているものと考えられる。 また、多くの癌で変異が知られている癌抑制遺伝子産物p53は、Gテイルに結合していることもわかっており(例えば、非特許文献5参照)、癌および老化に伴う疾患でもGテイルの変化がシグナルとなっていることが明らかである。 ところで、その後、Gテイルの長さを測定する方法が開発され、これまで、T-OLA (テロメア-オリゴヌクレオチド・ライゲーション・アッセイ)、PENT(プライマー・エクステンション/ニックトランスレーション)、3’オーバーハング・プロテクション・アッセイ等が知られている(例えば、非特許文献6、非特許文献7参照)。 しかし、表1を用いて後述するように、いずれも取扱いが面倒な放射性標識(32P等)のオートラジオグラフィーやゲル作製、泳動分離に時間を要する電気泳動を必要とする。そのため、いずれも完了するのに少なくとも2日要する煩雑なアッセイとなる。このことは、特にリアルタイムの分析が求められる癌の進行や予後を迅速に診断するには不適当であった。加えて、それら方法は、大量の試料の分析のハイスループット・スクリーニングに適用するのは困難であった。 また、従来のハイブリダイゼーション・プロテクション・アッセイ(Hybridization Protection Assay(HPA);例えば、特許文献1、非特許文献8参照)は、染色体DNAを変性後に使用しなければならなかったので、テロメア全長に比べ約100分の1以下の長さしかないGテイルの長さは操作誤差及び測定誤差の範囲であり測定できなかった。 具体的には、この方法でのGテイルのシグナル強度はノイズレベル程度に弱いものであり定量的かつ正確に測定することができず、Gテイルに特異的なシグナルであるか否かを識別することもできなかった。特開2001-95586公報グリフィス・ジェイ・ディー,コミュー・エル,ローゼンフィールド・エス,スタンセル・アール・エム,ビアンチ・エー,モス・エイチ及びデ・ランジェ・ティ(Griffith JD,Comeau L,Rosenfield S,Stansel RM,Bianchi A,Moss H and de Lange T.), Cell: 97(1999),503-14.ファン・スティーンセル・ビィ,スモゴルゼウスカ・エイ及びデ・ランジェ・ティ.(van Steensel B,Smogorzewska A and de Lange T.),92(1998),Cell :401-13.カールセダー・ジェイ,ブロッコリ・ディ,ダイ・ワイ,ハーディ・エス及びデ・ランジェ・ティ.(Karlseder J,Broccoli D,Dai Y,Hardy S and de Lange T.),Science: 283(1999),1321-5.ゴメス・ディー,パテルスキ・アール,レマルテリュー・ティー,シン‐ヤ・ケイ,メルグニー ジェイ・エル及びリュオウ・ジェイ・エフ.(Gomez D,Paterski R,Lemarteleur T,Shin-Ya K,Mergny JL and Riou JF. ),J Biol Chem: 279(2004),41487-94.スタンセル・アール・エム,サブラマニアン・ディー及びグリフィス・ジェイ・ディー.(Stansel RM,Subramanian D and Griffith JD.), J Biol Chem: 277(2002),11625-8.チャイ,ダブリュー.,シャイ,ジェイ.ダブリュー.及びライト,ダブリュー.イー.(Chai,W.,Shay,J.W. & Wright,W.E.)Mol Cell Biol: 25,2158-2168(2005).サルダンハ,エス.エヌ.,アンドリュース,エル.ジー.及びトレフスボル,ティー.オー.(Saldanha,S.N.,Andrews,L.G. & Tollefsbol,T.O.)Eur J Biochem : 270,389-403(2003).ナカムラ,ワイら(Nakamura,Y. et al. )Clin Chem: 45,1718-1724(1999). 本発明の課題は、煩雑な処理操作を用いず、変性しないで、そのままテロメアの一本鎖突出部(以下単にGテイルという。)配列の長さを特異的、高感度かつ迅速に測定する方法及びそれを用いるキットを提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、検体中の染色体DNAを変性させることなく、特定のHPA法により化学発光強度を測定し得ること、とりわけGテイルオリゴマー標準品を用いて検量線を作成しGテイル長さを定量化することにより、迅速にGテイルの長さを測定し得ることを見出した。 また、上記化学発光がエキソヌクレアーゼ処理によりGテイルに特異的であることを確認し得ること、さらには、前記エキソヌクレアーゼ処理及び未処理の発光強度比をシグナル/ノイズ(「S/N」と略す。)比として、S/N比の大きい測定条件を探知し高感度に測定し得ることを見出した。さらに、大きなS/N比となる試料濃度条件を規定し得ることも見出した。本発明者らは、これら知見に基づき本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、〔1〕検体における非変性染色体DNA中のGテイルと、テロメア反復配列に相補的な配列を有する標識DNAプローブとをハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズしたDNAプローブの化学発光を定量し、その測定値からGテイル配列の長さを求めることを特徴とするGテイル配列の長さ測定方法、〔2〕前記検体が、血液、培養細胞、新鮮組織、凍結保存組織もしくはホルマリン固定組織の細胞ペレットである前記項目〔1〕記載の方法、〔3〕前記化学発光が、前記標識DNAプローブとGテイル配列とのハイブリダイズに基づくものであることをエキソヌクレアーゼを用いて確認することを特徴とする前記項目〔1〕又は〔2〕に記載の方法、〔4〕前記エキソヌクレアーゼがエキソヌクレアーゼIである、前記項目〔3〕に記載の方法、〔5〕前記標識が、アクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール、ピロガロール、プロトヘミン、アミノブチルエチル-n-イソルミノール又はアミノヘキシルエチル-n-エチル-イソルミノールによるものである前記項目〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法、〔6〕前記テロメア反復配列に相補的な配列が、(CCCTAA)n (nは1〜10の整数を表す。)で示される塩基配列である前記項目〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法、〔7〕非変性テロメア反復配列に対し相補的な配列を有する標識DNAプローブと、細胞溶解用液と、加水分解用試薬とを少なくとも有するセットとするGテイル配列の長さ測定用キット、〔8〕確認試薬としてエキソヌクレアーゼをさらに含む、前記項目〔7〕に記載のキット、〔9〕前記標識が、アクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール、ピロガロール、プロトヘミン、アミノブチルエチル-n-イソルミノール又はアミノヘキシルエチル-n-エチル-イソルミノールによるものである前記項目〔7〕又は〔8〕に記載のキット、〔10〕前記テロメア反復配列に相補的な配列が、(CCCTAA)n(nは1〜10の整数を表す。)で示される塩基配列である前記項目〔7〕〜〔9〕いずれかに記載の測定用キット、及び〔11〕前記検体が、ヒト又はマウス由来の検体である前記項目〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法、を提供するものである。 本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。図1は、本発明のGテイル測定方法の概要を示す図である。図2は、29塩基のAE標識GテイルHPAプローブと一本鎖合成Gテイル84塩基との用量応答性試験の結果を示す図である。図3は、特異性確認試験結果を示す図である。図4は、各組み合わせにおけるAEに基づく化学発光量を示したグラフである。図5は、Gテイルをアッセイする前にExoIで前処理したゲノムDNAについてのグラフと、ExoIで前処理していないグラフである。図6−1は、非変性DNAのT7エキソヌクレアーゼ処理時間依存性化学発光量変化を示す図である。図6−2は、図6−1のグラフを前記図2を検量線として用いてrlu値をGテイルの平均長さに変換したグラフである。図7は、本発明の測定方法の感度限界(特に検出できるGテイルの最小の長さ)確認試験の結果を示す図である。図8は、化学発光量を任意単位でプロットして作成したグラフである。図9は、SiHa癌細胞系細胞ペレットに本発明の測定方法を直接適用した結果を示す図である。図10aは、各細胞ペレットに本発明の測定方法を直接適用した結果を示す図である。図10bは、比較・確認のため、各細胞ペレットから非変性ゲノムDNAを単離した後、本発明の測定方法を適用した結果を示す図である。図11aは、本発明の測定方法によりGテイルを測定した結果を示す図である。図11bは、比較例として特開2001-95586公報に記載の測定方法によりテロメア全長を測定した結果を示す図である。図12は、マウスゲノムDNAを用いたGテイル長を測定の直線性を示す図である。図13は、マウス組織でのGテイル長を示す図である。図14−1は、内部標準プローブA1aを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図14−2は、内部標準プローブA1bを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図14−3は、内部標準プローブA2aを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図14−4は、内部標準プローブA2bを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図14−5は、内部標準プローブB2_1bを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図14−6は、内部標準プローブB2_2aを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図14−7は、内部標準プローブB2_2bを用いた、マウスゲノムDNAの定量試験における直線性を示す図である。図15は、96ウエルプレートでのAH標識GテイルHPAプローブと一本鎖合成Gテイルとの応答性を測定した図である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明のGテイル配列の長さ測定方法は、ハイブリダイゼーション・プロテクション・アッセイ(Hybridization Protection Assay;HPA)法を用いて、Gテイルを構成するテロメア反復配列に相補的な標識プローブ複数をGテイルにハイブリダイズさせ、プローブに結合した非放射性標識物質の化学発光量を指標としてGテイル配列の長さを測定するものである。 一般的にHPA法とは、非放射性標識物質でラベルしたオリゴマーをプローブとして用い、該プローブが検出の対象となるDNA又はRNAにハイブリダイズしたときの当該非放射性標識物質からの発光を検出する手法である。その特徴は、ハイブリダイズしたプローブとハイブリダイズせずに遊離しているプローブとを区別するために行われる洗浄などの物理的な分離操作を行う代わりに、遊離のプローブの標識物質を選択的に加水分解させ、その標識物質を失活させてしまうことにある。 したがって、前記HPA法を適用した本発明は、ターゲットであるGテイルをPCR等により増幅させるような煩雑な操作を用いず、短時間で目的のGテイルを検出し、標識物質の化学発光量を指標としてGテイル配列の長さを測定するものである。 以下、非変性DNA含有細胞ペレットの調製について説明する。 本発明の測定方法は、二本鎖染色体DNAの一本鎖部分であるGテイルがターゲットであるから、非変性染色体DNAを含有する細胞ペレットを検体とすることができる。 本発明において、検体となる上記細胞ペレットとは、細胞もしくは組織を遠心分離(例えば、1,000Gで5分間)し、回収した細胞そのものからなるペレットをいう。 さらに、冷リン酸緩衝食塩水(PBS(-))で2回洗浄し、液体窒素中で急速凍結し、そして使用まで液体窒素中で急速凍結しそのまま低温(例えば-80℃)で保存したペレットであってもよい。 使用時には、例えば、後述するハイブリダイゼーションバッファー中に再懸濁し、懸濁液をピペッティングによって混合し、26Gシリンジでせん断したものを使用することができる。 本発明において、S/N比の大きい条件で実施する観点から、細胞ペレットを検体とする場合には、検体中の細胞数は1x105〜3.5x106が好ましく、3x105〜7x105がより好ましい。 また、非変性染色体DNAを用いる場合、非変性染色体DNA量は0.5μg〜40μgが好ましく、1μg〜20μgがさらに好ましく、3μg〜7μgが特に好ましい。 細胞検体の種類は非変性染色体DNAを含有する限り特に制限されるものではないが、血液、培養細胞、各種組織を挙げることができる。 上記組織は、器官の由来を問わず、任意に選択することができる。例えば、脳神経系、筋肉・骨格系、消化器系、呼吸器系、造血系、リンパ系などの器官の組織が挙げられる。また、これらの組織は新鮮組織(生検により得られた直後もの)、凍結保存組織又はホルマリン固定組織などあらゆる状態のものを使用することができる。 本発明の測定方法は、個体間のGテイル長さの比較評価だけでなく、単一個体内における異なる組織間の血液細胞もしくは組織細胞のGテイル長さの比較評価に有用である。例えば、単一個体内における肝臓細胞、心筋細胞、脳神経細胞等のGテイル長さの比較評価が挙げられる。 さらに、上記組織は正常のものに限定されず、各種疾患(癌、肝疾患など)の組織を使用することができる。例えば、癌由来のものとして、大腸癌、肝臓癌などの癌組織のほか、頸管癌、大腸癌、肝臓癌、子宮頸癌、慢性骨髄性白血病、膠芽腫、乳癌、繊維肉腫などの癌細胞系、例えばSiHa、K562、MKN1、HeLa、U937、U373MG、T98G、A172、MCF-7、HT-1080、LoVo、WiDr、SW857、VA-4等が挙げられる。 本発明の測定方法において、前述のように細胞ペレットをそのまま用いることができるので、培養細胞又はヒト組織から非変性染色体DNAを精製して使用する必要はないが、精製非変性染色体DNAを使用してもよく、後述のハイブリダイゼーションバッファーに溶解して使用する。非変性染色体DNAの精製は、任意の方法であってよい(例えば、タハラ・ヒデトシら“オンコジーン”(Tahara H. et al.,Oncogene),15(1997),1911-1920)。 本発明において、検体、後述するプローブ等を溶解するハイブリダイゼーションバッファーは、細胞そのものを検体とする観点から、細胞膜、核膜等を溶解するバッファーであることが好ましい。例えば、ラウリル硫酸塩、塩化リチウム、EDTA及びEGTAを含むコハク酸リチウムバッファー等を挙げることができる。 以下、本発明に用いる標識HPAプローブについて説明する。 本発明に用いる標識HPAプローブとしては、(CCCTAA)n(nは1〜10の整数を表す。)で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであって、少なくとも1つの非放射性標識物質でラベルしたオリゴヌクレオチドである。nは、目的とする染色体DNAに応じて適宜選択されるが、2〜8が好ましく、3〜5がさらに好ましい。 プローブに用いるオリゴヌクレオチドは、ホスホアミダイト法等任意のDNA製造法により市販のDNA合成機を用いて製造することができる。なお、化学合成の際に、非放射性標識物質により標識するためのアミノリンカーを導入しておくのが好ましい。 ホスホアミダイト法を用いた場合、アミノリンカーを導入する試薬として、例えば、下記リンカー導入試薬1〜3を挙げることができる。 前記アミノリンカーを導入したオリゴヌクレオチドは、例えば、特許第3483829号公報に記載の方法に準じて製造することができる。 本発明において、アクリジニウム・エステル(以下単にAEという。)とは、フェニルエステル基を有する下記化合物4−(2−スクシンイミジルオキシカルボニルエチル)フェニル−10−メチルアクリジニウム9−カルボキシレートをいう。 前記AEは、前述のように導入したアミノリンカーのアミノ基と、AEのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応により前記アミノリンカーを導入したオリゴヌクレオチドを標識することができ、これにより本発明に用いる標識HPAプローブが構築される。 AEによる標識方法及び操作手順については、例えば、特許第3483829号公報に記載の方法に準じて行なうことができる。 AE等の標識位置は、DNA合成時に導入するアミノリンカーの位置によって自由に設定することができる(特表平2-502283号公報)。 前記標識HPAプローブは、例えば、ジェン・プローブ社から入手でき、AE標識GテイルHPAプローブ(5'-CCCTAACCCTAACC*CTAACCCTAACCCTA-3’、配列番号1、29塩基)が例として挙げられる。*はAE標識位置であり、前述のようにリンカー導入試薬1、2又は3を用いて構築されたオリゴヌクレオチドに導入されたアミノリンカーのアミノ基がAEのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応により標識されている。 前記非放射性標識物質としては、前記AEの他に、ルミノール(Luminol)、イソルミノール(Isoluminol)、ピロガロール(Pyrogallol)、プロトヘミン(Protohaemin)、アミノブチルエチル-n-イソルミノール(Aminobutylethyl-n-isoluminol)又はアミノヘキシルエチル-n-エチル-イソルミノール(Aminohexylethyl-n-ethyl-isoluminol)が挙げられる。前記非放射性標識物質はオリゴヌクレオチドに導入されたアミノリンカーのアミノ基と化学結合しうる置換基を有する。そのような置換基として、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基が挙げられる。 なお、上記標識物質に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(I):([一般式I中、Xはハロゲン又は下記一般式(II):(式(II)中、X1は窒素原子、リン原子、ホウ素原子又はヒ素原子を表し、R1はアルコキシ若しくはアリールオキシ、又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル若しくはアリールを表し、R2は水素原子、アルコキシ若しくはアリールオキシ、又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル若しくはアリールを表す。) 若しくは下記一般式(III): −X2−R2 (III)(一般式(III)中、X2は酸素原子又は硫黄原子を表し、R2は前記と同様である。)で示される基を表し、Yは酸素原子、硫黄原子又はNHを表し、R3は水素原子、アミノ、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、ハロゲン、ニトロ、アルコキシ若しくはアリールオキシ、又は置換若しくは非置換のアセチル、アルキル、アルケニル若しくはアリールを表し、R4は置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアリールを表し、R1、R2、R3又はR4の少なくとも1つは前記アミノリンカーと化学結合できる反応性部位を含む。])で示されるアクリジン誘導体を使用することもできる。 ここで、ハロゲンとしては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はアスタチンが挙げられる。アルキルとしては炭素数1〜20、好ましくは1〜5のもの、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル等が挙げられる。アルケニルとしては炭素数1〜10、好ましくは1〜5のもの、例えばビニル、アリル等が挙げられる。アリールとしては、例えばフェニル、トリル、ナフチル、キシリル等が挙げられる。アルコキシとしては、炭素数1〜10、好ましくは1〜5のもの、例えばメトキシ、エトキシ等が挙げられ、アリールオキシとしては、例えばフェノキシ、ナフトキシ等が挙げられる。 図1を参照して本発明のGテイル配列の長さ測定方法について説明する。 図1は本発明のGテイル測定方法の概要を示す図であり、図中の符番について説明すると、1はGテイル、2はテロメアG鎖、3はテロメアC鎖、4は2本鎖テロメア部分、5は標識(HPA)プローブ、6はAE、7はハイブリダイズしなかったプローブ、8は加水分解して失活したプローブ、を各々意味する。Gテイル1は染色体DNA末端のテロメアG鎖2及びC鎖3からなるテロメア2本鎖部分4のG鎖末端に位置する。 本発明に用いるAE標識プローブ5はAE6で標識されており、Gテイルにおける反復配列と相補的な配列を有するため、反復配列の反復回数に応じた数の前記プローブが図1中(a)のハイブリダイゼーションによりハイブリダイズする。 前記AE標識プローブ5とGテイル1とのハイブリダイゼーションは、具体的にはAE6で標識されたプローブを含むハイブリダイゼーション溶液を細胞ペレットに加え、例えば60〜65℃で5〜30分間インキュベート(保温保持)することにより行うことができる。 Gテイル1とハイブリダイズしたAE標識プローブ5は、AEが安定化し、図1中(b)の一定時間加水分解を行ってもAEのエステル結合は保護されるため、アルカリ及び過酸化水素を加えることでAEは化学発光することができ、その発光量を図1中(c)のように定量することによりGテイル1の長さを測定することができる。 一方、プローブとGテイル1とハイブリダイズしなかったプローブ7において、AEは安定化しない。この状態で(b)の加水分解を行うとAEのエステル結合は加水分解を受け失活したプローブ8となり、化学発光は全く起こらず、失活したプローブ8は検出されない。 未反応のプローブに基づく化学発光を除くため加水分解(b)について具体的には、加水分解試薬を加え、さらに60℃で5〜10分間インキュベートすることにより行なうことができる。インキュベート後の図1中(c)のようなAEの化学発光量の測定は、ルミノメーター(例えばLeader I(商品名、ジェン・プローブ社製))を用いて行なうことができる。特に96ウェルルミノメーターは、本発明の測定方法を用いたハイスループット・スクリーニングのために使用するのに好ましい。 本発明の測定方法において、DNA試料を3’→5’方向に一本鎖ヌクレオチドを選択的に除去するようにエキソヌクレアーゼI(ExoI)で処理しGテイル配列を選択的に削除し前記化学発光がGテイル特異的であることを確認することが好ましい。 また、ExoIで処理していない試料のシグナルとExoIで処理した試料のシグナルの比をS/N比として算出することもできる。これにより検体中にいかなる夾雑物が存在していてもGテイル長さを特異的に測定することができる。 さらに、T7エキソヌクレアーゼで処理し、5’→3’方向にテロメアC鎖3を除去し、テロメアG鎖2のGテイルを増加させることで前記化学発光がGテイル配列特異的であることを確認することもできる。 以上説明した本発明の方法において、例えば、Gテイルの反復配列の基本単位となる配列(5'-TTAGGG-3')が24回反復しており、プローブとして(5'-CCCTAA-3')の配列を4回反復させたもの[5'-(CCCTAA)4-3']を使用すると仮定すると、Gテイルにはプローブが理論上6個ハイブリダイズすることができる。従って、プローブ6個分の標識が検出されることとなる。長さの分かっているDNA標準品に上記プローブをハイブリダイズさせたときに検出される標識の強度を予め求めておいて検量線を作成しておけば、Gテイル配列の長さに換算することができる。 標識としてAE以外のアクリジン誘導体、その他の非放射性標識物質(例えば、ルミノール、イソルミノール、ピロガロール、プロトヘミン、アミノブチルエチル-n-イソルミノール、アミノヘキシルエチル-n-エチル-イソルミノール)を用いた場合も同様に化学発光量を定量しGテイル長さを測定することができる。すなわち、細胞ペレットに前記アクリジン誘導体もしくはその他の非放射性標識物質で標識したプローブを適量加えて反応させ、反応終了後、加水分解等の処理を行った後、化学発光量を定量するものである。 以下、本発明のGテイル配列の長さ測定用キットについて説明する。 本発明のキットは、非変性テロメア反復配列に相補的な配列(例えば、(CCCTAA)n (nは1〜10の整数を表す。))を有する標識DNAプローブと、細胞溶解用液と、加水分解用試薬とを少なくとも有するセットとするものである。このような標識DNAプローブは、標識HPAプローブとして前述したものが挙げられ、具体例、好ましい範囲とも前述したものと同様である。 前記細胞溶解用液としてラウリル硫酸塩、塩化リチウム、EDTA及びEGTAを含むコハク酸リチウムバッファーが挙げられる。前記加水分解用試薬としては、トリトンX-100を含む四ホウ酸ナトリウムバッファーが挙げられる。 本発明のキットには、Gテイル長さ検量線作成用の標準品(好ましくは20塩基以上、より好ましくは30〜100塩基のGテイル配列)を含めることが好ましい。 染色体DNA量標準化検量線作成用の標準品(好ましくは20塩基以上、より好ましくは30〜100塩基のAlu配列の合成DNA)及び染色体DNA量標準化用Alu・HPAプローブ(例えば、5'-TGTAATCCCA*GCACTTTGGGAGGC-3';*AE標識の位置、配列番号2)を含めることがより好ましい。 確認試薬としてエキソヌクレアーゼ(例えば、ExoI、T7エキソヌクレアーゼ等が挙げられ、好ましくはExoI)を含めることがさらに好ましい。 さらにポジティブコントロールDNAとして、例えば任意の癌細胞の精製染色体DNA等も含めることもできる。 Alu配列とは、5'-GCCTCCCAAAGTGCTGGGATTACA-3'(配列番号3)で示される塩基配列を有し、染色体DNAあたりの量は培養細胞でも組織でも一定であることが知られている(J.D.ワトソン著、遺伝子の分子生物学、p668)。そこで、Gテイルを測定する際に各サンプルごとに内部標準としてAlu配列量も測定し、Gテイル配列とAlu配列との測定比を求めることにより、染色体DNA一定量あたりのGテイル配列量を求めることができる。これにより平均Gテイル配列の長さを算出することができる。 上記表1を参照して本発明の測定方法と従来法と比較を示す。 表1から明らかなように、従来法はいずれも取扱いが面倒な放射性標識(RI)やゲル作製、泳動分離に時間を要する電気泳動を必要とし、いずれも完了するのに少なくとも2日要する煩雑なアッセイであり、細胞をそのまま測定に用いることもできない。また、それら従来方法は、大量の試料の分析のハイスループット・スクリーニングに適用できない。 一方、本発明の方法では、放射性物質を使用しないため特殊な廃棄処理設備を必要とせず、従来のように反応産物と取り込まれなかった放射性物質とを分離させる電気泳動等も必要ない。また、僅か1つの容器(例えば、試験管)を用いて、組織採取から短時間(40分以内程度)に20ヌクレオチドまで短い長さのGテイルを特異的、定量的かつ高感度に測定できる。さらに、測定結果にばらつきが少ないため、再現性よくGテイル長を測定することができ、大量のサンプルを容易に取り扱うことができる。さらに本発明の測定方法は、非変性染色体DNAだけでなく細胞を直接測定でき、大量の試料の分析のハイスループット・スクリーニング等に適用できる。 また、ゲノムDNAをインタクト(未切断)な状態で採取する必要がないため、培養細胞、新鮮組織などのほか、長期保存された組織(例えばホルマリン固定されたもの)におけるGテイル長を測定することが可能となる。さらに、本発明の方法により、従来の検出方法と比較して高感度の検出結果が得られる。すなわち、感度は精製DNAではサザン法の約1000倍であり、数ngのゲノムDNAを測定することができる。 本発明の効果について以下に説明する。本発明のGテイル配列の長さ測定方法によれば、テロメアを変性せずに、かつ煩雑な処理操作を用いず、僅か3工程で20ヌクレオチドまで短い長さのGテイルを特異的、定量的かつ高感度に測定できる。 また、本発明の測定方法は、非変性染色体DNAだけでなく細胞そのものを検体として直接測定できるので迅速化が可能となり、大量の試料の分析のハイスループット・スクリーニング等に適用することができる。 さらに、5x105細胞数以下の少量の細胞をそのまま直接的に測定できるので、試料調製により染色体DNAを損失することがなく、例えば、血液検査、微穿刺吸引もしくは尿中癌細胞からの臨床試料等に起こり得るような入手細胞数に限界がある場合に有用である。 本発明のGテイル配列の長さ測定用キットは、僅か1つの容器(例えば、試験管)を用いて検体のGテイル配列の長さを40分未満で測定できる。 本発明の測定方法は、Gテイル損失の結果として生じる、癌や老化に伴う様々な疾患の患者に対して臨床的に使用できる。 本発明の測定方法は癌、加齢、テロメア異常の生物学的影響についての基礎研究に有用である。 以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。〔実施例1〕〈1−1〉一本鎖合成Gテイル用量応答性確認試験 本発明の測定方法の用量応答性を確認するために、一本鎖合成Gテイル84塩基、5’-(TTAGGG)14-3’(プロリゴ社製)の種々の濃度の下記ハイブリダイゼーションバッファー希釈液を、化学発光量3x107 relative light units (以下単にrluという。)のAE標識GテイルHPAプローブ(5'-CCCTAACCCTAACC*CTAACCCTAACCCTA-3’、配列番号1、*AE標識の位置、29塩基)とともに下記ハイブリダイゼーションバッファー100μL中60℃で20分間インキュベートし、ハイブリダイズした。 前記AE標識Gテイルプローブは、特許第3483829号公報に記載の方法に準じて、前記リンカー導入試薬3を用いて製造したアミノリンカー導入オリゴヌクレオチド(配列番号1)をAE標識することにより調製した。 なお、EDTAはエチレンジアミン四酢酸、EGTAはエチレングリコールビス(2‐アミノエチルエーテル)四酢酸である。〈1−2〉ハイブリダイズしなかったプローブの加水分解及び化学発光検出 ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解は、300μLの加水分解バッファー(50mL/LのトリトンX-100を含有する0.6mol/L四ホウ酸ナトリウムバッファー、pH8.5)を各反応チューブに添加し、ボルテックス ミキサーでよく撹拌し、60℃で10分間インキュベートすることにより行なわれた。ハイブリダイズしたプローブのAEは、上記条件では加水分解しなかった。それらチューブは、1分以上氷冷し、化学発光はルミノメーター(商品名Leader 1、ジェン-プローブ社製)で1つのチューブ当り2秒間測定した。〈1−3〉結果 図2は上記29塩基のAE標識GテイルHPAプローブと一本鎖合成Gテイル84塩基との用量応答性試験の結果を示す図である。図2から明らかなように0.05fモル〜10fモルの範囲にわたるオリゴヌクレオチド用量の増加に伴って、シグナル強度の直線的増加が得られた。〈2−1〉特異性確認試験 前記29塩基のAE標識GテイルHPAプローブが、Gテイルを構成する5’-TTAGGG-3’反復配列を特異的に検出することを確認した。WT(野生型)に一塩基を置換させた次に示す種々の84塩基のGテイル一本鎖DNA(10fモル)を前記29塩基のAE標識GテイルHPAプローブで前記〈1−1〉と同様な条件でハイブリダイズした。:WT[5’-(TTAGGG)14-3’]、変異GテイルオリゴA[5’-(TTGGGG)14-3’]、Gテイル変異オリゴB[5’-(TTAAGG)14-3’]、Gテイル変異オリゴC[5’-(TTCGGG)14-3’]、及びGテイル変異オリゴD[(5’-(TTAGGC)14-3’](各GテイルDNAはいずれもプロリゴ社製である。)。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。〈2−2〉結果 図3は、特異性確認試験結果を示す図である。図3中、WTは野生型一本鎖Gテイル配列を、変異GテイルオリゴAは5’-(TTGGGG)14-3’を、変異GテイルオリゴBは5’-(TTAAGG)14-3’を、変異GテイルオリゴCは5’-(TTCGGG)14-3’を、及び変異GテイルオリゴDは5’-(TTAGGC)14-3’を、NCはネガティブコントロールを示している。NCはこの試験におけるバックグラウンドシグナルレベルを示す。図3から明らかなように、本発明に用いるHPAプローブは、目的の哺乳類Gテイル配列を特異的にかつ高いS/N比で検出することがわかる。〈3−1〉AEのアルカリ処理抵抗性確認試験 AEの化学発光にはGテイルとAE標識GテイルHPAプローブ(29塩基)の間のハイブリダイゼーションにおいて何個の完全なヌクレオチド塩基対が必要か、アルカリ処理抵抗性確認試験を行なった。 前記AE標識GテイルHPAプローブと同様な塩基長29塩基の一本鎖Gテイル(WT)と、前記プローブ側標識位置から5塩基離れた位置に点変異を有する29塩基の下記変異Gテイル(Mu)と、通常の前記AE標識GテイルHPAプローブと、下記3種の変異AE標識GテイルHPAプローブ(Mut1、Mut2及びMut3)とを用いて図4に示した組み合わせ(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)で前記〈1−1〉と同様な条件でハイブリダイズしAEに基づく化学発光量を測定した。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。 Mu:5'-TAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGG -3'(配列番号4、変異Gテイル) Mut1:5'-CCCTAAC*CATAACCCTAACCCTAACCCTA-3’(配列番号5、*AE標識の位置、下線が点変異位置、29塩基) Mut2:5'-CCCTAACCA*TAACCCTAACCCTAACCCTA-3’(配列番号6、*AE標識の位置、下線が点変異位置、29塩基) Mut3:5'-CCCTAACCATAACC*CTAACCCTAACCCTA-3’(配列番号7、*AE標識の位置、下線が点変異位置、29塩基)〈3−2〉結果 図4は各組み合わせにおけるAEに基づく化学発光量を示したグラフである。 図4から明らかなように、AE標識位置がミスマッチ(iv)及びAE標識位置から1塩基離れた箇所がミスマッチ(iii)の組み合わせでは、化学発光がほとんど検出されなかった。また、AE標識位置から5塩基離れた箇所のミスマッチ((ii)及び(v))は若干化学発光が低下した程度であった。よってAE標識位置から6塩基程度離れた箇所のミスマッチはHPA化学発光に影響しないことがわかった。〈4−1〉非変性ゲノムDNA用量応答性及びGテイル特異性確認試験(1) 本発明の測定方法の非変性ゲノムDNA用量応答性を確認するために、種々の量のSiHa癌細胞系由来非変性ゲノムDNA(1μg、3μg、5μg、10μg及び20μg)と3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブとをハイブリダイズした。すなわち、ゲノムDNA中テロメア3’突出部(Gテイル)の検出のため、ファルコン352053チューブ(商品名)中のDNA溶液の総量は、滅菌水もしくはTEバッファー(10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH8.0)で100μLに調節した。100μLの前記ハイダブリゼーション・バッファー中の3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブをDNA溶液に添加し、ボルテックス ミキサーでよく撹拌し、60℃で20分間インキュベートした。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。〈4−2〉非変性ゲノムDNAの単離 本発明において、非変性ゲノムDNAを単離して用いる必要はないが、上記〈4−1〉確認試験に使用した非変性ゲノムDNAとしては下記のように単離したものを使用した。Gテイル長さ測定に使用する非変性ゲノムDNAは、フェノール-クロロホルム抽出法を用いて各細胞系から単離した。すなわち、細胞は、エッペンドルフ・マイクロ遠心管中6000rpm、4℃で5分間遠心分離することによりマイクロ・チューブ中にペレット化した。ペレットはPBS(-)で1回洗浄し、10mMトリスバッファー(pH7.6)、150mMNaCl及びNP-40を含有する抽出バッファーに最終濃度が0.5%となるように再懸濁した。プロテイナーゼK処理後、フェノール-クロロホルム抽出は2回行なった。ゲノムDNAはエタノール沈殿し、RNアーゼAで処理後TEバッファー中に溶解した。 〈4−3〉Gテイル特異性確認のためのエキソヌクレアーゼI処理 非変性ゲノムDNAを3’→5’方向に一本鎖ヌクレオチドを選択的に除去するエキソヌクレアーゼI(ExoI)で処理し、Gテイル配列を選択的に削除し化学発光がGテイル特異的であることを確認した。非変性ゲノムDNAのエキソヌクレアーゼI処理は下記のように行なった。 1xエキソヌクレアーゼ・バッファー(67mMグリシン-KOH(pH9.5)、6.7mM MgCl2、10mM 2-メルカプトエタノール)中37℃で2時間ExoI(ニュー・イングランド・バイオラボズ社製、0.2U/μgDNA)で処理し、そしてGテイルをアッセイする前に80℃で20分間熱失活させた。〈4−4〉結果 図5にGテイルをアッセイする前にExoIで前処理したゲノムDNAについての結果のグラフと、ExoIで前処理していない結果のグラフを示す。後述の方法により各量の1/20量の非変性ゲノムDNAを変性させ、3x106rluのAE標識AluプローブでハイブリダイズしゲノムDNA総量をノーマライズして任意単位をプロットして得られたグラフである。図5から明らかなように非変性ゲノムDNA1μg〜20μgの濃度範囲における直線的応答を得た。この結果から、非変性ゲノムDNA5μgを典型的に使用できることが分かる。図5から全ての試料はExoI感受性であることが分かり、検出された化学発光が一本鎖Gテイルに特異的であることが確認され、かつExoIで前処理したグラフと、ExoIで前処理していないグラフの対比から上記測定範囲内であれば、極めて大きいS/N比を示すことが分かる。〈5−1〉Gテイル特異性確認試験(2)及びGテイル配列の長さ測定 まず、非変性ゲノムDNAをT7エキソヌクレアーゼで処理し、5’→3’方向にテロメアC鎖を除去し、テロメアG鎖のGテイルを増加させることで化学発光がGテイル特異的であることを確認した。SiHa癌細胞系由来非変性ゲノムDNA(5μg)は下記のようにT7エキソヌクレアーゼ処理した。1xNEBuffer4(50mM酢酸カリウム、20mMトリス酢酸、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトール、pH7.9)中25℃で図中に示した時間、T7エキソヌクレアーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボズ社製、1U/μgDNA)とインキュベートした。反応は、25mMの最終濃度となるようにEDTA(pH8.0)を添加することにより停止した。〈5−2〉Gテイルの検出のための前記ハイダブリゼーション・バッファー中での前記AE標識GテイルHPAプローブと非変性DNAとのインキュベーション及びハイブリダイゼーションは、前記〈4−1〉と同様な条件で行なった。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。〈5−3〉結果 図6−1は非変性DNAのT7エキソヌクレアーゼ処理時間依存性化学発光量変化を示す図である。ExoI処理をしたグラフとExoIで前処理をしなかったグラフとの対比から、極めて大きいS/N比を示すことが分かる。図6−2は、図6−1のグラフを前記図2を検量線として用いてrlu値をGテイルの平均長さに変換したグラフを示す図である。図6−1から明らかなように、T7エキソヌクレアーゼで処理し、5’→3’方向にテロメアC鎖を除去することで時間依存的に化学発光量が増加し、Gテイル配列が増加したことが分かる。 図6−2から明らかなようにSiHa癌細胞系は通常約220nt(ntはヌクレオチド数)の平均長さのGテイル配列を有することが分かる。また、SiHa癌細胞系由来非変性ゲノムDNAをT7エキソヌクレアーゼ処理すると化学発光量が増加した90秒で、観察されたrlu値は、図6−2から明らかなようにほぼ平均1600ntの長さを有するGテイルが生成したことを示している。 これら結果から、本発明の測定方法が特異的にGテイル配列の長さを測定できることがわかる。〈6−1〉本発明の感度限界確認試験 下記10nt、20nt、26nt、43nt及び62ntのGテイルを有する合成テロメア末端構築物(T7 TEL Gt10、Gt20、Gt26、Gt43及びGt62)を用いて本発明の測定方法の感度限界、特に検出できるGテイルの最小の長さを決定した。0.5、1.0、5.0及び10fモルの合成テロメア末端構築物を各試験に用いた(測定回数各2回)。なお、各合成テロメア末端構築物は配列番号8のDNAと、配列番号9〜13のDNA(いずれもプロリゴ社製)をアニーリングし、ゲル電気泳動で精製することで調製した。 なお、Gテイルの検出のための前記ハイダブリゼーション・バッファー中での前記AE標識GテイルHPAプローブと非変性DNAとのインキュベーション及びハイブリダイゼーションは、前記〈4−1〉と同様な条件で行なった。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。〈6−2〉結果 図7は、感度限界確認試験の結果を示すグラフである。 図7から明らかなように、HPAプローブが29塩基の長さを有するにもかかわらず、GテイルDNA29塩基よりも短いGテイルDNAを用いたとき、すなわち10ntのGテイルも検出できたが、直線性は20nt〜62ntにおいて得られ、本発明の測定方法は20nt以上のGテイル長を定量的に測定できることが分かる。〈7−1〉内部標準試験(ゲノムDNA総量の標準化(normalization)) 本発明の測定方法を実施する前に細胞数を調整したときでも、AluDNA配列を内部標準として用いてゲノムDNA総量をノーマライズすることができる。GテイルとAluとの測定比を求めるために、本発明の測定試験に使用する非変性DNAを熱変性させ、Alu・HPAプローブを用いハイブリダイズした。使用するAlu・HPAプローブについては、5'-TGTAATCCCA*GCACTTTGGGAGGC-3'(*AE標識の位置、配列番号2)である。なお、前記Alu・HPAプローブは、特許第3483829号公報に記載の方法に準じて、前記リンカー導入試薬3を用いて製造したアミノリンカー導入オリゴヌクレオチド(配列番号2)をAE標識することにより調製した。〈7−2〉結果 図8は化学発光量を任意単位でプロットして作成したグラフである(測定回数3回)。図8から明らかなようにAluDNA配列による発光量について、0.005μg〜1μgの濃度のゲノムDNAで直線的応答が得られた。〔実施例2〕〈8−1〉細胞ペレットを直接用いたGテイル配列の長さ測定(1) 細胞ペレット中のGテイル長さを測定するための下記〈8−2〉のように調製したSiHa癌細胞系細胞ペレットは100μLの前記ハイダブリゼーション・バッファー中再懸濁し、懸濁液をピペッティングによって混合し、26Gシリンジでせん断して使用した。3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブと細胞ペレットとのインキュベーション及びハイブリダイゼーションは、前記〈4−1〉と同様な条件で行なった。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。さらに前記〈7−1〉と同様に変性して細胞ペレット(1/10体積)を3x106rluのAE標識Aluプローブでハイブリダイズして、ゲノムDNA総量をノーマライズした。〈8−2〉細胞ペレットの調製 前記SiHa癌細胞系細胞ペレットは、SiHa癌細胞系を1,000Gで5分間遠心分離し回収し、冷PBS(-)で2回洗浄し、液体窒素中で急速凍結し調製した。そして使用まで-80°Cで保存した。〈8−3〉結果 図9は、SiHa癌細胞系細胞ペレットに本発明の測定方法を直接適用した結果を示す図である(測定回数2回)。 図9のグラフのrlu値を前記図2を検量線として用いてGテイルの平均長さに変換したところ、SiHa癌細胞系のGテイルの平均長さは220ntであった。また、図9から明らかなように、本発明の測定方法は1x105〜3.5x106細胞の範囲で良い直線性を示したことから、Gテイルの測定に5x105程度の細胞数の細胞ペレットが典型的に使用できることが分かる。〈9−1〉細胞ペレットを直接用いたGテイル配列の長さ測定(2) 各々5x105細胞数の種々の細胞ペレット(各種TIG-3ヒトフィブロブラスト、各種SV40形質転換細胞及び各種SiHa癌細胞)へ本発明のGテイル測定方法に直接適用し、各細胞のGテイル長さを測定しかつ各細胞間Gテイル長さの差から生物学的評価を行なった。前記〈8−2〉と同様にして調製した各細胞ペレット(5x105細胞)は100μLの前記ハイブリダイゼーション・バッファー中に再懸濁し、懸濁液をピペッティングによって混合し、26Gシリンジでせん断して使用した。 3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブと細胞ペレットとのインキュベーション及びハイブリダイゼーションは、前記〈4−1〉と同様な条件で行なった。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。さらに前記〈7−1〉と同様に変性して細胞ペレット(1/10体積)を3x106rluのAE標識Aluプローブでハイブリダイズして、ゲノムDNA総量をノーマライズした。また、比較・確認のため、各細胞ペレット(各種TIG-3ヒトフィブロブラスト、各種SV40形質転換細胞及び各種SiHa癌細胞)から前記〈4−2〉と同様な方法によって非変性ゲノムDNAを単離した後、各細胞の非変性ゲノムDNAについても本発明の測定方法を適用した。〈9−2〉使用細胞の培養 本発明の測定方法を適用した各細胞は下記のように培養保存しているものを使用した。 通常ヒトフィブロブラストTIG-3、SVts9-3(SV40形質転換TIG-3)、TIG-3-hTERT (ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)cDNA感染TIG-3)、ヒト頸管癌細胞系SiHa及びレトロウイルスパッケージング細胞系PT67は、10%ウシ胎児仔血清(ハイクローン社製)で補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養保存した。〈9−3〉ドミナント・ネガティブ対立遺伝子(TRF2ΔBΔM)を感染させたSiHa細胞の調製 本発明の測定方法を適用した細胞のうち、(TRF2ΔBΔM)を感染させたSiHa細胞(SiHa dn TRF2)の調製については、まず、レトロウイルス上清作製のため、pBabe-N-mycTRF2ΔBΔMレトロウイルス構築物(Titia de Langeロックフェラー大学教授から譲受した。その製造方法は、ファン・スティーンセル・ビィ,スモゴルゼウスカ・エイ及びデ・ランジェ・ティ.“セル”(van Steensel B,Smogorzewska A and de Lange T. Cell),92(1998),401-13に記載の方法に準じて行なった。)はPT67パッケージング細胞系(BDクロンテック社製)にフュージェーン6トランスフェクション試薬(ロシュ社製)によりトランスフェクションした。2日後、上清を回収し、6μg/mlの最終濃度になるようポリブレン添加後0.22μmフィルター(ミリポア社製)に通した。ろ過した上清はSiHa癌細胞系の感染に用いた。翌日、培地を新鮮なピューロマイシン(0.5μg/ml)含有コンプリート培地に置き換え、4日間培養を続けTRF2ΔBΔMを感染させたSiHa細胞系を調製した。〈9−4〉結果 図10aは、各細胞ペレットに本発明の測定方法を直接適用した結果を示す図である。一方、図10bは、比較・確認のため、各細胞ペレットから非変性ゲノムDNAを単離した後、本発明の測定方法を適用した結果を示す図である。図10b中、右の棒グラフはテロメアGテイル特異的に化学発光していることを確認するためにGテイル測定をする前にExoI処理をした結果を示すグラフであり、左の棒グラフはExoIで前処理をしなかったグラフである。図10a及び10bにおいて、「TIG-3(Y)」は細胞集団倍化数(PDL)28の健常で若い細胞を、「TIG-3(S)」は81PDLの老化細胞を、「TIG-3-hTERT」はhTERT導入細胞をそれぞれ意味し、「SVts9-3(50)」は50PDLの若いSV40形質転換細胞を、「SVts9-3(121)」は121PDLの破局状態の細胞を意味し、及び「SiHa」はコントロールベクターを感染させたSiHa細胞を、「SiHa dn TRF2」はドミナント・ネガティブ対立遺伝子(TRF2ΔBΔM)を感染させたSiHa細胞を意味する。 図10a及び10bから明らかなように、細胞ペレットからのデータは精製ゲノムDNAからのデータと整合していた。また、ExoI処理をしたグラフとExoIで前処理をしなかったグラフとの対比から、極めて大きいS/N比を示すことが分かる。図10aの各グラフの縦軸を前記図2を検量線として用いてGテイルの平均長さに変換したところ、下記表3のような結果が得られた。 図10及び表3から明らかなようにテロメアGテイルの平均の長さが特にSV40形質転換破局時細胞で縮小することが分かり、破局時にヒトテロメアGテイルが縮小するという従来の知見(例えば、非特許文献6を参照。)と整合していることが分かる。なお、hTERT発現TIG-3細胞において、Gテイルの縮小は観察されなかった。また、TRF2のドミナント・ネガティブ対立遺伝子(TRF2ΔBΔM)はGテイルの長さを縮小することが知られている(例えば、非特許文献2、参照。)が、SiHa細胞の結果から、Gテイルにおいて予想された縮小が確認された。以上の結果から本発明の測定方法は細胞ペレットを用いて直接的にGテイルの長さを測定でき、その測定されたGテイルの長さの細胞間の差から生物学的評価を行なうことができる。〔実施例3〕〈10−1〉本発明の測定方法と特開2001-95586公報に記載の測定方法との比較試験 種々の細胞(HeLa癌細胞、SiHa癌細胞、MCF-7癌細胞、MRC-5-hTERT正常線維芽細胞、及び90p正常乳腺上皮細胞)に前記〈9−3〉と同様な手順によりドミナント・ネガティブ対立遺伝子(TRF2ΔBΔM)を感染させた後、各々の細胞(HeLa癌細胞、SiHa癌細胞、MCF-7癌細胞、MRC-5-hTERT正常線維芽細胞、及び90p正常乳腺上皮細胞)から前記〈4−2〉と同様な手順により非変性DNAを単離し、各非変性DNA(5μg)を本発明のGテイル測定方法に適用し、各細胞のGテイル長さを測定しかつ比較例として特開2001-95586公報に記載の測定方法を各変性DNA(0.5μg)に適応し、テロメア全長の測定を行なった。なお、ExoI処理については前記〈4−3〉に記載の手順、使用細胞の培養については前記〈9−2〉に記載の手順と同様である。 図11aは、本発明の測定方法によりGテイルを測定した結果を示す図である。図11bは、比較例として特開2001-95586公報に記載の測定方法によりテロメア全長を測定した結果を示す図である。図11a中「C」はコントロールを示し、「T」はGテイルを短縮させる薬剤テロメスタチン5μMで48時間処理した細胞を示し、+は、ExoI処理した細胞、−は処理していない細胞を示す。ExoI処理をしたグラフとExoIで前処理をしなかったグラフとの対比から極めて大きいS/N比を示すことが分かる。図11b中「C」はコントロールを示し、「T」はGテイルを短縮させる薬剤テロメスタチン5μMで48時間処理した細胞を示す。 まず、図11a及び11bについて概観する。縦軸の任意単位は同一のプローブ及び同一の装置を用いて測定された発光強度を内部標準としてのAlu配列に対する比として表したグラフであるから、図11a及び11bを比較評価することができる。図11a及び図11bを比較すると、図11aはおおよそ任意強度2程度である一方、図11bは任意強度70程度であり、図11aのシグナル強度は図11bの約1/35程度しかないことがわかる。さらに、図11aは非変性DNAを5μg用いた一方、図11aは0.5μg用いたグラフであるので、同一濃度とした場合は約1/350程度しかないことになる。 よって、特許文献1(特開2001-95586公報)に記載の測定方法においてはGテイルの長さは操作誤差及び測定誤差の範囲のノイズレベル程度のシグナル強度でありGテイルは測定できないことが分かる。次に、図11aの各グラフの縦軸を前記図2を検量線として用いてGテイルの平均長さに変換し、図11bの各グラフの縦軸についてはテロメア全長に変換したところ、下記表4のような結果が得られた。 表3及び図11bから明らかなように、全体の長さが4kbpから数十kbpであるテロメアの長さに比べて、Gテイルの長さは、75〜300塩基であるため、テロメスタチンで強制的に染色体末端のGテイルを短縮させた場合に、100塩基ほどのGテイルの短縮がみられたとしても、従来のテロメアHPA法である特許文献1(特開2001-95586公報)に記載の測定方法では差が観察されなかった。一方、表3及び図11aから明らかなように、本発明の測定方法によればHeLa癌細胞、SiHa癌細胞、MCF-7癌細胞は、dnTRF2によりGテイルが短縮されたことが分かり、20塩基の違いでも測定できることが分かる。また、MRC-5-hTERT正常線維芽細胞、90p正常乳腺上皮細胞は、dnTRF2で短縮しないことが分かる。〔実施例4〕マウスの培養細胞を用いたGテイル長さ測定〈11−1〉非変性ゲノムDNAの単離 本発明において、非変性ゲノムDNAを単離して用いる必要はないが、下記〈11−2〉確認試験に使用した非変性ゲノムDNAとしては下記のように単離したものを使用した。Gテイル長さ測定に使用する非変性ゲノムDNAは、フェノール-クロロホルム抽出法を用いて各細胞系から単離した。すなわち、細胞は、エッペンドルフ・マイクロ遠心管中6000rpm、4℃で5分間遠心分離することによりマイクロ・チューブ中にペレット化した。ペレットはPBS(-)で1回洗浄し、10mMトリスバッファー(pH7.6)、150mMNaCl及びNP-40を含有する抽出バッファーに最終濃度が0.5%となるように再懸濁した。プロテイナーゼK処理後、フェノール-クロロホルム抽出は2回行なった。ゲノムDNAはエタノール沈殿し、RNアーゼAで処理後TEバッファー中に溶解した。〈11−2〉非変性ゲノムDNA用量応答性及びGテイル特異性確認試験 本発明の測定方法の非変性ゲノムDNA用量応答性を確認するために、種々の量のNIH3T3マウス繊維芽細胞由来非変性ゲノムDNA(0.001μg、0.003μg、0.005μg、0.01μg、0.03μg、0.05μg、0.1μg、0.3μg、0.5μg、1μg、3μg、5μg及び10μg)と3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブとをハイブリダイズした。すなわち、ゲノムDNA中テロメア3’突出部(Gテイル)の検出のため、ファルコン352053チューブ(商品名)中のDNA溶液の総量は、滅菌水もしくはTEバッファー(10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH8.0)で100μLに調節した。これを65℃の水浴中で5分間加温し、100μLの前記ハイダブリゼーション・バッファー中の3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブをDNA溶液に添加し、ボルテックス ミキサーでよく撹拌し、60℃で20分間インキュベートした。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、実施例の前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。〈11−3〉結果 図12から明らかなように非変性ゲノムDNA 0.001μg〜10μgの濃度範囲における直線的応答を得た。この結果から、非変性ゲノムDNA 0.01μgを典型的に使用できることが分かる。〈12−1〉 マウス組織を用いたGテイル長さ測定 マウスの組織、例えば肝臓、腎臓、胃、大腸、胸腺などからゲノムDNAを単離し、ゲノムDNAを1μgから5μg用いてGテイルを測定した。〈12−2〉非変性ゲノムDNAの単離 本発明において、非変性ゲノムDNAを単離して用いる必要はないが、上記〈12−1〉確認試験に使用した非変性ゲノムDNAとしては下記のように単離したものを使用した。 Gテイル長さ測定に使用する非変性ゲノムDNAは、フェノール-クロロホルム抽出法を用いて各組織から単離した。すなわち、組織は、−80℃にて凍結させたものあるいは組織単離後すぐにホモジナイズし、10mMトリスバッファー(pH7.6)、150mMNaCl及びNP-40を含有する抽出バッファーに最終濃度が0.5%となるように再懸濁した。プロテイナーゼK処理後、フェノール-クロロホルム抽出は2回行なった。ゲノムDNAはエタノール沈殿し、RNアーゼAで処理後TEバッファー中に溶解した。〈12−3〉非変性ゲノムDNA用量応答性及びGテイル特異性確認試験 本発明の測定方法の非変性ゲノムDNA用量応答性を確認するために、種々のマウス組織由来非変性ゲノムDNA0.5μgと3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブとをハイブリダイズした。すなわち、ゲノムDNA中テロメア3’突出部(Gテイル)の検出のため、ファルコン352053チューブ(商品名)中のDNA溶液の総量は、滅菌水もしくはTEバッファー(10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH8.0)で100μLに調節した。これを65℃の水浴中で5分間加温し、100μLの前記ハイダブリゼーション・バッファー中の3x106rluの前記AE標識GテイルHPAプローブをDNA溶液に添加し、ボルテックス ミキサーでよく撹拌し、60℃で20分間インキュベートした。また、ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解及び化学発光検出は、前記〈1−2〉と同様な条件で行なった。〈12−4〉結果 小腸、大腸、精巣などの組織で本測定方法でGテイルのシグナルが検出できた。小腸や精巣では長いGテイルが検出されたが、大腸はそれに比べて短い。図13から全ての試料はExoI感受性であることが分かり、検出された化学発光が一本鎖Gテイルに特異的であることが確認され、かつExoIで前処理したグラフと、ExoIで前処理していないグラフの対比からマウス組織においてもGテイルが十分に測定できる。〈13−1〉マウスを用いた場合の内部標準試験(ゲノムDNA総量の標準化) 本発明の測定方法を実施する前に細胞数を調整したときでも、マウスに存在する繰り返し配列A1またはB2を内部標準として用いてマウスゲノムDNA総量をノーマライズすることができる。GテイルとA1、A2またはB2との測定比を求めるために、本発明の測定試験に使用する非変性DNAを熱変性させ、A1、A2またはB2・HPAプローブを用いハイブリダイズした。使用するA1、A2またはB2・HPAプローブについてはA1a probe:5’−GAA CAG TGT ATA T*C AAT GAG TTA CAA T−3’(配列番号14)、A1b probe:5’−GAA CAG TGT ATA TCA A*T GAG TTA CAA T−3’(配列番号15)、A2a probe:5’−CGT TGG AA* ACG GGA TTT GTA GAA CA−3’(配列番号16)、A2b probe:5’−CGT TGG AAA CGG GA* TTT GTA GAA CA−3’(配列番号17)、B2_1b probe:5’−GTC TGA AGA CA* GCT ACA GTG TA−3’(配列番号18)、B2-2a probe:5’−CCG ACT G*C TCT TCT GAA GGT C−3’(配列番号19)、B2_2b probe:5’−CCG ACT GCT CTT C*T GAA GGT C−3’(配列番号20)(配列中の「*」印は、AE標識の位置を示す。)、である。 なお、前記A1、A2またはB1・HPAプローブは、特許第3483829号公報に記載の方法に準じて、前記リンカー導入試薬3を用いて製造したアミノリンカー導入オリゴヌクレオチド(配列番号2)をAE標識することにより調製した。〈13−2〉結果 図14−1〜図14−7は化学発光量を任意単位でプロットして作成したグラフである(測定回数3回)。図14−1〜14−7より明らかなようにA1、A2またはB2DNA配列による発光量について、0.5μg〜10μgの濃度のゲノムDNAで直線的応答が得られた。〔実施例5〕 96ウエルプレートを用いたGテイル長の測定〈14−1〉96マルチウエルプレートでの一本鎖合成Gテイル用量応答性確認試験 本発明の測定方法の用量応答性を確認するために、一本鎖合成Gテイル84塩基、5’-(TTAGGG)14-3’(プロリゴ社製)の種々の濃度のハイブリダイゼーションバッファー希釈液(30μL)を、化学発光量3x106 relative light units (以下単にrluという。)のAE標識GテイルHPAプローブ(5'-CCCTAACCCTAACC*CTAACCCTAACCCTA-3’、配列番号1、*AE標識の位置、29塩基)とともに実施例1〈1−1〉項に記載のハイブリダイゼーションバッファー30μL中70℃で30分間、プレート用ブロックヒーターでインキュベートし、ハイブリダイズした。例えば、サーモミキサーコンフォート(エッペンドルフ株式会社)。使用する機器によって温度、時間は変更可能である。 前記AE標識Gテイルプローブは、特許第3483829号公報に記載の方法に準じて、前記リンカー導入試薬3を用いて製造したアミノリンカー導入オリゴヌクレオチド(配列番号1)をAE標識することにより調製した。〈14−2〉ハイブリダイズしなかったプローブの加水分解及び化学発光検出 ハイブリダイズしなかったプローブのAEの加水分解は、90μLの加水分解バッファー(50mL/LのトリトンX-100を含有する0.6mol/L四ホウ酸ナトリウムバッファー、pH8.5)を各反応チューブに添加し、よく撹拌し、70℃で25分間、プレート用ブロックヒーターでインキュベートすることにより行なわれた。ハイブリダイズしたプローブのAEは、上記条件では加水分解しなかった。それらチューブは、室温に2分程度放置し、96ウェルプレート対応型ルミノメーター(2つの試薬を同時に加えることのできるタイプ、GloMax(商標) 96 Microplate Luminometer w/Dual Injectors(商品名)、Promega社製)で、60μLのリーダーI液を加えてその2秒後に60μLのリーダーII液を加え、測定時間2秒で、その発光を測定する。〈14−3〉結果 図15は、上記29塩基のAE標識GテイルHPAプローブと一本鎖合成Gテイル84塩基との96ウエルプレートを用いた方法でのGテイル測定において、用量応答性試験の結果を示す図である。図15から明らかなように0.05fモル〜10fモルの範囲にわたるオリゴヌクレオチドの用量の増加に伴って、シグナル強度の直線的増加が得られた。 本発明によれば、煩雑な処理操作を用いず、変性しないで、そのままテロメアの一本鎖突出部(Gテイル)配列の長さを特異的、高感度かつ迅速に測定する方法、及びその測定キットを提供する。 本発明の測定方法は、Gテイル損失を伴う疾患とされている、癌、老化に伴う種々の疾患の患者の検査試薬として有用である。また、加齢に伴う疾患、癌、テロメア異常の生理的基礎研究に有用である。 本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。 明細書に記載されるGテイル配列の長さ測定方法、および、そのためのキット。 【課題】煩雑な処理操作を用いず、変性しないで、そのままテロメアの一本鎖突出部(以下単にGテイルという。)配列の長さを特異的、高感度かつ迅速に測定する方法及びそれを用いるキットを提供すること。【解決手段】検体における非変性染色体DNA中のGテイルと、テロメア反復配列に相補的な配列を有する標識DNAプローブとをハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズしたDNAプローブの化学発光を定量し、その測定値からGテイル配列の長さを求めるGテイル配列の長さ測定方法、及びそれに用いるキット。【選択図】なし配列表