タイトル: | 公開特許公報(A)_シリカ複合微粒子および歯科材料用硬化性組成物 |
出願番号: | 2013244643 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 6/027 |
廣瀬 禎好 酒井 孝英 JP 2015101573 公開特許公報(A) 20150604 2013244643 20131127 シリカ複合微粒子および歯科材料用硬化性組成物 アイカ工業株式会社 000100698 山八歯材工業株式会社 592081645 廣瀬 禎好 酒井 孝英 A61K 6/027 20060101AFI20150508BHJP JPA61K6/027 6 OL 7 4C089 4C089AA06 4C089BA13 4C089BD01 4C089BE03 4C089CA02 4C089CA07 4C089CA08 本発明は硬度、研削性、透明性などが要求される歯科材料の改質に有効なシリカ複合微粒子、およびそれを用いた歯科材料用硬化性組成物に関する。 人工歯や義歯床用材料として透明性や成型加工性に優れるメタ(アクリレート)系樹脂が用いられてきたが、硬化収縮による寸法安定性や硬度、研削性が十分ではなかった。そこで、メタ(アクリレート)系単量体にシリカなどの無機粒子を分散させた組成物が用いられるようになったが、シリカなどの無機粒子はメタ(アクリレート)系単量体に分散しにくいため、透明性が低下する問題があった。 特許文献1〜3には、シラン化合物で処理したコロイダルシリカをメタ(アクリレート)系単量体に分散させた後に溶媒を留去した組成物が開示されている。しかしながら、コロイダルシリカへの前処理や、コロイダルシリカに含まれる溶媒の留去が必要なため製造工程が複雑化し、工業的に不利であった。特開平5-209027号公報特開平7-17820号公報特開平7-291817号公報 本発明の課題は硬度、研削性、透明性などが要求される歯科材料の改質に有効な生産性に優れたシリカ複合微粒子、およびそれを用いた歯科材料用硬化性組成物を提供することである。 本発明は、アルコールを添加した単量体中にシリカ粒子を分散させたシリカ分散単量体を重合させたことを特徴とするシリカ複合粒子である。また、該シリカ複合粒子を含有することを特徴とする歯科材料用硬化性組成物である。 本発明のシリカ複合粒子は、単量体にシリカ粒子を分散させた後に重合を行うことにより、シリカ粒子が分散状態で樹脂と複合している。そのため、歯科材料の改質に用いた場合、硬度、研削性だけでなく、透明性にも優れる。また、本発明のシリカ複合粒子や歯科材料用硬化性組成物は簡便な工程で得られるため、工業的に優れている。 本発明のシリカ複合粒子は、アルコールを添加した単量体中にシリカ粒子を分散させることによってシリカ分散単量体を調整し、該シリカ分散単量体を重合することにより得られる。本発明に用いられるシリカ粒子は特に制限されないが、単量体への分散性の点で疎水化処理を行った粒子径が10〜40nmのシリカ粉末を用いることが好ましい。シリカ粒子を単量体中に分散させておくことで、シリカ複合粒子やそれを用いた歯科材料用硬化性組成物の硬度、研削性を向上できる。 単量体としては、得られる粒子の硬度や透明性の点からメタクリル酸メチルを主成分とすることが好ましい。他にエチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヘキサクロロブチル(メタ)アクリレートなどの単量体を併用してもよい。 また、架橋成分を用いることによって、シリカ複合粒子やそれを用いた歯科材料用硬化性組成物の研削性を向上できる。架橋成分としては、ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニルモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのポリオールポリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、アリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル化合物などが例示できる。架橋成分が過剰となると歯科材料化した際の耐衝撃性が低下するため、単量体に対して5重量%以下、好ましくは2重量%以下の範囲で用いることが好ましい。 単に前記シリカ粒子と前記単量体と混合させても分散性が悪いため、アルコールを添加する必要がある。アルコールとしては適度な両親媒性を有する低級アルコールが好ましいが、メタノールやエタノールのような低分子量アルコールは沸点が低く安全性の面から取扱いが難しいため、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどが好ましい。添加量については、単量体がメタクリル酸メチルを主成分とする場合、2〜3重量%程度で十分である。 シリカ分散単量体を調整する際は、単量体へのシリカ粒子の分散性を向上させるため、撹拌下、アルコールを添加した単量体中にシリカ粒子を徐々に加えることによってシリカ分散単量体を得ることが好ましい。また、シリカ分散単量体を重合する際にはヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機物を分散剤として添加し、ホモミキサーなどで撹拌、分散処理することによって液滴を形成させ、単量体分散液としておくことが好ましい。この際、単量体の分散安定化のため、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤、亜硝酸ナトリウムなどの水相重合の禁止剤などを添加してもよい。 また、液滴径を調整することによって、重合後に得られるシリカ複合粒子の粒子径を制御できる。具体的には、液滴径を小さくする方法として、分散剤の添加量を増やす、攪拌を強くする、撹拌時間を長くするなどの方法が挙げられる。シリカ複合粒子の粒子径は15〜120μmとすることが好ましく、この範囲外であると成型物にした際に透明性が得られないおそれがある。 シリカ分散単量体を重合する際にはラジカル重合開始剤が用いられる。具体例として、ベンゾイルパーオキサイド、o−メトキシベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが例示される。また、油溶性重合開始剤を用いる場合、予め単量体に分散させておいてもよい。その使用量はモノマー総量に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%程度である。 シリカ分散単量体を重合した後、例えばメタクリル酸メチルのみからなる単量体をさらに重合することによって、シリカを含有するコア層と樹脂のみからなるシェル層からなるコア−シェル型のシリカ複合粒子とすることもできる。コア−シェル型とすることで、成型物の耐衝撃性を向上できる。 本発明のシリカ複合粒子は、人工歯や義歯床用材料となる歯科材料用硬化性組成物に適している。歯科材料用硬化性組成物は、シリカ複合粒子、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体、ラジカル重合開始剤を混合することによって餅状の組成物として得られる。歯科材料用硬化性組成物は加熱によって硬化可能であるが、沸騰水中に浸漬する方法が簡便で安全なため広く採用されている。ラジカル重合開始剤としては、シリカ分散単量体を重合する際に用いるラジカル重合開始剤と同様のものを用いることができる。メタクリル酸メチルへの分散性や、沸騰水(100℃)を用いることなどを考慮すると、例えばベンゾイルパーオキサイドを用いることが好ましい。また、歯科材料用硬化性組成物に占めるシリカ粒子の割合は5〜30重量%となることが好ましい。シリカ粒子の含有割合が高いシリカ複合粒子を用いる場合、シリカ複合粒子の他にポリメタクリル酸メチル粒子を併用することによって、歯科材料用硬化性組成物に占めるシリカ粒子の割合を調整できる。 本発明の歯科材料用硬化性組成物を硬化させ、ドリルなどで研削して人工歯や義歯床用材料とする際、研削性に優れるため(感触が硬く、削りカスが粉状に飛散する)、加工しやすい。また、透明性や硬度にも優れる。 以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。シリカ分散単量体(A)の調製 容量1Lのガラス容器にメタクリル酸メチル300重量部、イソプロピルアルコール6重量部、重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド2.4重量部を計量し、マグネチックスターラーにて撹拌溶解させ、モノマー混合液を得た。このモノマー混合液に、撹拌下、疎水性シリカ粒子(一次粒径12nm)100重量部を徐々に加えることによりゼリー状となり、さらに2分間攪拌することによって、流動性を有するシリカ混合モノマー液を得た。分散機を用いてシリカ混合モノマー液を分散処理し、シリカ分散単量体(A)を得た。単量体分散液(A−1)の調製 容量2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水650重量部、プライサーフA−210G(界面活性剤、第一工業製薬社製、商品名)0.07重量部、TCP−10U(リン酸カルシウム、太平化学産業社製、商品名)105重量部を計量し、分散剤液を得た。この分散剤液に、シリカ分散単量体(A)を加え、分散機を用いて分散処理し、単量体分散液(A−1)を得た。この単量体分散液の液滴径を光学顕微鏡で観察したところ、およそ50μmであった。実施例1 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計のついた反応容器に単量体分散液(A−1)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら75℃に昇温し、発熱確認後80〜85℃で3時間重合させることにより、実施例1のシリカ複合粒子を得た。この粒子の体積平均粒子径は48.9μmであった。比較例1 シリカ分散単量体の作成時にイソプロピルアルコールを使用しなかった以外は、実施例1と同様な方法で比較例1のシリカ複合粒子を得た。この粒子の体積平均粒子径は55.7μmであった。シリカ分散単量体(B)の調製 容量1Lのガラス容器にメタクリル酸メチル300重量部、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学社製、商品名 ライトエステルEG)2.1重量部、イソプロピルアルコール6重量部、ジラウロイルパーオキサイド2.4重量部を計量し、マグネチックスターラーにて撹拌溶解させ、モノマー混合液を得た。このモノマー混合液に、撹拌下、疎水性シリカ粒子(一次粒径12nm)100重量部を徐々に加え、系全体になじませ、シリカ混合モノマー液を得た。分散機を用いてシリカ混合モノマー液を分散処理し、シリカ分散単量体(B)を得た。単量体分散液(B−1)の調製 容量2Lのセパラブルフラスコに、イオン交換水750重量部,プライサーフA−210Gを0.2重量部,TCP−10Uを200重量部計量し、分散剤液を得た。この分散剤液に、シリカ分散単量体(B)を加え、分散機を用いて分散処理し、単量体分散液液(B−1)を得た。この単量体分散液の液滴径を光学顕微鏡で観察したところ、およそ40μmであった。実施例2 撹拌機,還流冷却管,窒素導入管,温度計のついた反応容器にB−1の単量体分散液を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら75℃に昇温し、発熱確認後80〜85℃で1時間30分重合させた。この重合物を50℃以下に冷却した後、MMAモノマー40重量部にジラウロイルパーオキサイド0.04重量部を溶解させたモノマー液を30分間にわたって系内に連続滴下した。モノマー液滴下終了後、80℃に加熱昇温し、80〜85℃で2時間重合させて実施例2のシリカ複合粒子を得た。この粒子の体積平均粒子径は40.8μmであった。シリカ分散単量体(C)の調製 容量1Lのガラス容器にメタクリル酸メチル300重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学社製、商品名 ライトエステル3EG)5重量部、イソプロピルアルコール6重量部、ラウロイルパーオキサイド2.3重量部を計量し、マグネチックスターラーにて撹拌溶解させ、モノマー混合液を得た。このモノマー混合液に、撹拌下、疎水性シリカ粒子(一次粒径12nm)85重量部を徐々に加え、系全体になじませ、シリカ混合モノマー液を得た。分散機を用いてシリカ混合モノマー液を分散処理し、シリカ分散単量体(C)を得た。単量体分散液(C−1)の調製 容量2Lのセパラブルフラスコに、イオン交換水580重量部,プライサーフA−210Gを0.7重量部,TCP−10Uを720重量部計量し、分散剤液を得た。この分散剤液に、シリカ分散単量体(C)を加え、分散機を用いて分散処理し単量体分散液液(C−1)を得た。この単量体分散液の液滴径を光学顕微鏡で観察したところ、およそ20μmであった。実施例3 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計のついた反応容器に単量体分散液(C−1)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら75℃に昇温し、発熱確認後80〜85℃で3時間重合させることにより、実施例3のシリカ複合粒子を得た。この粒子の体積平均粒子径は19.3μmであった。試験評価方法 チャック付きポリエチレン袋に各実施例・比較例のシリカ複合粒子50重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.15重量部、メタクリル酸メチルモノマー25重量部を計量し、袋を密封して揉み混ぜ、餅状の混練液を得た。餅状になった混練液を型に入れ、プレス機を用いて8MPaの圧力でプレスした。プレス後、型枠ごと沸騰水中に20分間浸漬することによって混練液を熱重合させ、成型物を得た。 また、シリカ複合粒子50重量部に代えてポリメタクリル酸メチル粒子50重量部を用いた他は同様に行い、比較例2の成型物を得た。さらに、シリカ複合粒子50重量部に代えてポリメタクリル酸メチル粒子38.5重量部およびシリカ分散単量体の調製で用いた疎水性シリカ粒子11.5重量部を用いた他は同様に行い、比較例3の成型物を得た。 得られた成型物について、次のような性能評価を実施した。透明性:透明性を以下の3段階で評価した。 ◎ 透明、 ○ ほぼ透明、 × 白濁硬度:ビッカーズ硬度計を用いて、成型物のビッカーズ硬度を測定した。削り感:歯科技工用ダイヤモンド研削材を用いて成型物を研削し、研削時の感触や削りカスの状態を確認した。比較例3を100として、相対的な官能評価値を記載した。 各実施例のシリカ複合微粒子を用いた歯科材料用硬化性組成物は、硬度、研削性、透明性のいずれにも優れていた。一方、シリカ粒子の分散時にアルコールを添加しなかった比較例1は硬度および削り感が悪かった。またシリカ粒子を含有しない比較例2は透明性に優れるものの削り感が悪く、ポリメタクリル酸メチル粒子とシリカ粒子を複合化することなく併用した比較例3は透明性が悪かった。 アルコールを添加した単量体中にシリカ粒子を分散させたシリカ分散単量体を重合させたことを特徴とするシリカ複合粒子。 前記アルコールがイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1記載のシリカ複合粒子。 前記単量体に架橋成分が含まれることを特徴とする請求項1または2記載のシリカ複合粒子。 非架橋のシェル層を有することを特徴とする請求項3記載のシリカ複合粒子。 平均粒子径が15〜120μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のシリカ複合粒子。 請求項1〜5いずれかに記載のシリカ複合粒子を含有することを特徴とする歯科材料用硬化性組成物。 【課題】硬度、研削性、透明性などが要求される歯科材料の改質に有効な生産性に優れたシリカ複合微粒子、およびそれを用いた歯科材料用硬化性組成物を提供する。【解決手段】アルコールを添加した単量体中にシリカ粒子を分散させたシリカ分散単量体を重合させることによって、シリカ複合粒子を製造する。アルコールがイソプロピルアルコールであることが好ましく、単量体に架橋成分が含まれることが好ましい。【選択図】なし