生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_SIRT3およびSIRT6の活性化剤
出願番号:2013239355
年次:2015
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/02,A23L 1/30,A61K 31/4164,A61P 3/00,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

片倉 喜範 松本 貴之 佐藤 三佳子 森松 文毅 JP 2015097508 公開特許公報(A) 20150528 2013239355 20131119 SIRT3およびSIRT6の活性化剤 国立大学法人九州大学 504145342 日本ハム株式会社 000229519 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 片倉 喜範 松本 貴之 佐藤 三佳子 森松 文毅 C12N 15/09 20060101AFI20150501BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20150501BHJP A23L 1/30 20060101ALI20150501BHJP A61K 31/4164 20060101ALI20150501BHJP A61P 3/00 20060101ALI20150501BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150501BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/02A23L1/30 ZA61K31/4164A61P3/00A61P43/00 111 12 OL 16 4B018 4B024 4B063 4C086 4B018LB08 4B018LE01 4B018MD18 4B018ME10 4B018MF02 4B024AA11 4B024CA02 4B024DA02 4B024EA04 4B024FA02 4B063QA18 4B063QQ20 4B063QR77 4B063QR80 4B063QS05 4B063QX02 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC38 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA16 4C086MA27 4C086MA28 4C086MA35 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA43 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZC21 4C086ZC41 4C086ZC52 本発明は、カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分とする剤に関する。本発明の剤は、サーチュイン(SIRT)の活性化、特にSIRT3およびSIRT6の活性化に関連した生体機能の維持・向上のために用いることができる。本発明は、一般食品、健康食品、化粧品、医薬品、アンチエイジングに関連する分野で有用である。また本発明は、アンチエイジング、高齢者の健康維持、老化に関連した疾患または状態の処置のための医薬のスクリーニングにおいても有用である。 サーチュインは、様々な組織において抗老化効果を発揮する重要な因子であるとして注目されている。ヒトでは7種類のサーチュイン(SIRT1〜SIRT7)が存在している。 カロリー制限(CR:calorie restriction)は哺乳類の老化進行を遅延させる方法として知られており、CRによる老人性難聴発症の抑制効果や寿命延長効果について数多くの報告がなされてきている。ミトコンドリアにおいて脱アセチル化酵素として働くSIRT3は、CRによるマウス加齢性難聴発症抑制に必須であることが示されている(非特許文献1)。また、ミトコンドリアは老化に関わるオルガネラであり、エネルギー代謝は寿命と密接に関わることが示唆されていることから、SIRT3はヒトにおいて老化を制御する因子である可能性が高いと考えられている。 また、SIRT6遺伝子をノックアウトしたマウスは野生型と比べ、体が小さく寿命は4週間で、白血球の減少、骨密度の低下等の老化様の表現型を示したとの報告がある(非特許文献2)。またこの報告では、SIRT6遺伝子を欠損させた細胞がDNA損傷感受性を示し、SIRT6がDNA修復機構の一つ塩基除去修復 (BER) に働くことも示されている。さらにSIRT6遺伝子トランスジェニックマウスの雄は、野生型よりも寿命が長くなり、血清中のIGF1 (insulin-like growth factor 1) の低下が見られたことが報告されている(非特許文献3)。 一方、カルノシンは、β-アラニンとヒスチジンからなるジペプチドであり、鶏肉等に含まれることが知られている。カルノシンについては、抗酸化作用等のいくつかの機能が知られている(非特許文献4〜8)。またカルノシンは、β-アラニンとメチル化ヒスチジンのジペプチドであるアンセリンと共に、皮膚代謝促進(特許文献1)、ストレス緩和(特許文献2)、ならびに学習機能向上および抗不安(特許文献3)作用について検討されてきた。特開2000-201649公報特開2007-70316公報特開2000-116987公報Cell, 24;143(5), 802-12, 2010Cell, 124, 315-29, 2006Nature, 483, 218-21, 2012Molec. Aspects Med., 13, 379-444, 1993Biochemistry(mosc), 65(7), 861-71, 2000Age and Ageing, 29, 207-210, 2000Frontiers in Aging Neuroscience, 2, 1-6, 2010Nutrients, 4, 585-601, 2012 本発明者らは、SIRT3およびSIRT6に注目し、それらを活性化する食品の探索とその機能性を評価することを目的として検討を進めてきた。その中で、今般、カルノシンがSIRT3およびSIRT6を活性化することを見出し、本発明を完成した。 本発明は以下を提供する。[1]カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分とする、サーチュイン(SIRT)活性化剤。[2]サーチュインが、SIRT3またはSIRT6である、[1]に記載の剤。[3]カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分とする、SIRTの活性化に関連する疾患または状態の処置のための剤。[4]SIRTの活性化に関連する疾患または状態の処置が、酸化ストレスの制御、抗老化、寿命の延長、エネルギー代謝の改善、メタボリックシンドロームの処置、または老人性難聴の処置である、[1]に記載の剤。[5]100 mg/day以上のカルノシンおよび/またはアンセリンを摂取させるための、[1]〜[4]のいずれか一に記載の剤。[6]1,000 mg/100 g以上のカルノシンおよび/またはアンセリンを含有する、または200 mg/day以上のカルノシンおよび/またはアンセリンを含有する、対象に摂取させるための、栄養組成物。[7]散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液状製剤、ゲル状製剤、飲料、菓子、食肉加工品、魚介加工品、野菜加工品、惣菜、調味料組成物、食品添加物の形態である、[6]に記載の栄養組成物。[8]カルノシンおよび/またはアンセリンを、SIRT3またはSIRT6の活性化が望ましい対象に摂取させる工程を含む、対象におけるSIRT3またはSIRT6の活性化方法。[9]カルノシンおよび/またはアンセリンを、SIRT3またはSIRT6の活性化が望ましい対象に摂取させる工程を含む、健康維持のための食餌方法。[10]下記(1)〜(6)のいずれか一に記載のポリヌクレオチド:(1)配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(2)配列番号5に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSIRT3のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド;(3)配列番号5に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつSIRT3のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド(4)配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(5)配列番号6に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド;(6)配列番号6に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド。[11]SIRT3またはSIRT6を活性化する物質をスクリーニングする方法であって:10に記載のポリヌクレオチド、およびその下流に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含むコンストラクトで形質転換された細胞を準備し;そして候補物質を、形質転換細胞に与える工程を含み;レポーター遺伝子の転写または発現を指標として候補物質をスクリーニングする、方法。[12]老化を処置することができる物質を探索するためのものである、[11]に記載の方法。フローサイトメトリーを用いたGFP蛍光強度の測定Caco-2 (hSIRT3p-EGFP)細胞における各サンプル添加時のGFP蛍光強度Caco-2 (hSIRT6p-EGFP)細胞における各サンプル添加時のGFP蛍光強度hSIRT3プロモーター領域の配列(配列番号5)およびhSIRT6プロモーター領域の配列(配列番号6)〔有効成分〕 本発明は、カルノシンまたはアンセリンを有効成分とする剤に関する。 カルノシンはβ-アラニンとヒスチジンからなるジペプチドである。構成するヒスチジンの立体構造により、カルノシンにはL体とD体とが存在する。本発明およびその説明において、単に「カルノシン」というときは、特に記載した場合を除き、L-カルノシン、D-カルノシンまたはそれらの混合物を指す。L-カルノシンはヒトなどの哺乳類では、筋肉や神経組織に比較的高い濃度で存在していることが知られている。 L-カルノシン(L-carnosine、IUPAC名:(2S)-2-[(3-Amino-1-oxopropyl)amino]-3-(3H-imidazol-4-yl)propanoic acid)の構造を下記に示す。 一部の動物では、β-アラニンとメチル化ヒスチジンとからなるL-アンセリンが多く見られる。本発明およびその説明において、単に「アンセリン」というときは、特に記載した場合を除き、L-アンセリン、D-アンセリンまたはそれらの混合物を指す。L-アンセリン(L-anserine、IUPAC名:(2S)-2-[(3-amino-1-oxopropyl)amino]-3-(3-methyl-4-imidazolyl)propanoic acid)の構造を下記に示す。 カルノシンとアンセリンは、水溶性である(カルノシン 1g/3.1ml at 25℃)。 本発明で「カルノシンおよび/またはアンセリン」というときは、特に記載した場合を除き、カルノシンとアンセリンのうち、少なくともいずれか一方を指す意図である。例えば、「カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分として含む」というときは、カルノシンを有効成分とし、アンセリンを含まない場合と、アンセリンを有効成分とし、カルノシンを含まない場合と、カルノシンおよびアンセリンを有効成分とする場合との、いずれかである。また、「カルノシンおよび/またはアンセリン」に関し、量または濃度をいう場合は、特に記載した場合を除き、カルノシンとアンセリンの双方が存在する場合はカルノシンとアンセリンとを合計した量または濃度をいう。 本発明においては、有効成分であるカルノシンおよび/またはアンセリンとして、合成物、単離されたもの、精製されたものを用いることができ、また鶏肉のようなカルノシンおよび/またはアンセリンが比較的多く含まれる食品や天然物の、抽出物、濃縮物、粗精製物等を用いることができる。〔用途、機能〕 本発明の剤は、SIRT3またはSIRT6の活性化のために用いることができる。本発明でSIRT3 またはSIRT6の活性化というときは、特に記載した場合を除き、SIRT3とSIRT6のうち、少なくとも一方が活性化される場合をいう。また活性化とは、遺伝子の転写または発現の増強と言い換えることもできる。 SIRT3またはSIRT6の活性化作用の有無および程度は、後述するように、SIRT3遺伝子のプロモーター領域(配列番号5で表される領域)またはSIRT6遺伝子のプロモーター領域(配列番号6で表される領域)を用いた系を構築して評価することができる。 本発明は、SIRT3またはSIRT6の活性化が関連する疾患または状態(病的な状態と、病的ではない状態、例えば、健常人における身体活動・運動に伴う状態とを含む。)の処置のために、SIRT3またはSIRT6の活性化が望ましい対象(例えば、SIRT3またはSIRT6の活性化が関連する疾患または状態にある者、高齢者)に対して、カルノシンおよび/またはアンセリンを摂取させるために、用いることができる。加齢に伴い、SIRT3が抑制され、また老化した造血幹細胞中のSIRT3のアップレギュレーションが自己再生能力を改善することが報告されている(Cell Reports 3, 319-327, 2013)。また高齢のヒト対象からの皮膚線維芽細胞は若年のヒト対象からのものよりもリプログラミング効率が劣るが、リプログラミング中にSIRT6を添加することにより加齢繊維芽細胞における効率が実質的に改善されるとの報告がある(J. Biol. Chem., 288, 18439-18447, 2013)。すなわち、加齢に伴い、SIRT3およびSIRT6の活性が低下することが判明している。したがって、本発明は、高齢者に対して、またアンチエイジングのために特に有用であろう。 SIRT3は、ミトコンドリアに存在し、酸化ストレス制御に関わるサーチュインとして注目されている。SIRT3の活性化により、この酸化ストレス制御を通じて、抗老化を実現できるのではないかと考えられている。SIRT3はまた、ミトコンドリアに存在するエネルギー代謝を制御する複数の酵素を基質とし、その活性を制御していることが見出されている。ミトコンドリアは老化に関わるオルガネラであり、エネルギー代謝は寿命と密接に関わることが示唆されていることから、SIRT3はヒトにおいて老化を制御する因子である可能性が高いと考えられている。さらにエネルギー代謝は、肥満や糖尿病など、いわゆるメタボリックシンドロームと密接に関わっていることが知られている。SIRT3はまた、CRによるマウス加齢性難聴発症抑制に必須であることが明らかにされている(前掲非特許文献1)。したがって、SIRT3の活性化は、抗老化、寿命の延長、エネルギー代謝の改善、メタボリックシンドロームの処置、老人性難聴等において有用である可能性がある。 SIRT6は、SIRT6遺伝子を導入したマウスの寿命が延長したことで注目を集めている。またSIRT6の機能として、血中のIGF-1濃度、NF-κBターゲット遺伝子の抑制、テロメアの安定化、DNA修復への寄与が知られている。さらにSIRT6は解糖系を制御しており、人のガンの約2割でSIRT6が欠損していたとの報告がある。したがって、SIRT6の活性化は、寿命の延長、IGFに関連した疾患の処置、抗老化、ガンの処置等において有用である可能性がある。 本発明の剤は、SIRT3またはSIRT6以外のSIRTを活性化する可能性もある。 本発明で疾患または状態について「処置」というときは、発症リスクの低減、発症の遅延、予防、治療、進行の停止、遅延を含む。処置には、医師が行う、病気の治療を目的とした医療行為と、医師以外の者、例えば栄養士(管理栄養士、スポーツ栄養士を含む。)、スポーツ指導員、プロスポーツ選手(アスリート)、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、美容部員、エステティシャン、食品製造者、食品販売者等が行う、非医療的行為とが含まれる。また処置には、特定の食品の投与または摂取の推奨、食餌方法指導、保健指導、栄養指導(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、および健康の保持増進のための栄養の指導を含む。)、給食管理、給食に関する栄養改善上必要な指導を含む。本発明における処置の対象は、ヒト(個体)を含み、好ましくは、上述したいずれかの処置を施すことが望ましいか、または上述したいずれかの処置を施す必要のあるヒトである。 本発明による、有効成分であるカルノシンおよび/またはアンセリンの摂取量は、当業者であれば、摂取する対象の、年齢、体重、性別、適用される疾患または状態等に応じ、適宜設計することができる。有効成分であるカルノシンおよび/またはアンセリンの摂取量は、例えば、50 mg/dayとすることができ、100 mg/dayとすることが好ましく、200 mg/day以上とすることがより好ましく、500 mg/day以上とすることがさらに好ましい。また、1,000 mg/day以上としてもよく、2,000 mg/day以上としてもよく、5,000 mg/day以上としてもよく、7,500 mg/day以上としてもよい。いずれの場合であっても、10,000 mg/day以下とすることができる。また下限値が500 mg以下であるいずれの場合であっても、5,000 mg/day以下とすることができ、3,000 mg/day以下とすることが好ましく、2,000 mg/day以下とすることがよりに好ましく、1,000 mg/day以下とすることがさらに好ましい。有効成分であるカルノシンおよび/またはアンセリンとして、上記の一日当たりの摂取量を一度に摂取してもよいし、複数回に分けて摂取してもよい。〔剤〕 本発明で「剤」というときは、特に記載した場合を除き、有効成分そのものである場合と、有効成分とそれ以外の成分とを含む場合とがあるが、カルノシンおよび/またはアンセリンを含有する既存の食品、例えば鶏肉自体は含まない。 本発明の剤には、目的の効果を発揮しうる限り、有効成分以外の他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、または医薬として許容される種々の添加剤であり得る。この例には、賦形剤、酸化防止剤抗(酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。 他の成分は、有効成分以外の機能性成分であってもよい。他の機能性成分に例としては、アミノ酸類(例えば、分岐鎖アミノ酸類、オルニチン)、不飽和脂肪酸類(例えば、EPA、DHA)、ビタミン類、微量金属類、グルコサミン、コンドロイチン類等が挙げられる。 本発明の剤が有効成分と有効成分以外の他の成分からなる場合、有効成分の含有量は、当業者であれば、製造し易さ、用い易さ等の点から適宜設計でき、例えば、0.1〜99.9%とすることができ、また1〜95%とすることができ、また10〜90%とすることができ、さらに51〜90%以上とすることができる。また、カルノシンとして21%以上とすることができ、アンセリンとして31%以上とすることができる。 本発明の剤の形態は、上述したように、既存の食品を除き、種々の形態であり得る。例えば、経口医薬品または栄養組成物であり得る。また、本発明の剤は、経口医薬品または栄養組成物に添加して用いることができる。本発明で「栄養組成物」というときは、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えば飲料を含む。また、本発明で「栄養組成物」というときは、特に記載した場合を除き、健康食品、サプリメント、保健機能食品(栄養機能食品および特定保健用食品を含む。)を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、およびダイエット食、並びにそれらのための素材を含む。 本発明の剤、経口医薬品または栄養組成物の形態の例として、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液状製剤(エリキシル剤、リモナーデ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、ドリンク剤を含む。)、ゲル状製剤、治療食、飲料、菓子、食肉加工品、魚介加工品、野菜加工品、惣菜、調味料組成物、食品添加物を挙げることができる。 本発明の剤、経口医薬品または栄養組成物における、有効成分であるカルノシンおよび/またはアンセリンの量は、当業者であれば適宜設計できるが、例えば1,000 mg/100 g以上とすることができ、1,500 mg/100 g以上とすることが好ましく、2,000 mg/100 g以上とすることがより好ましく、2,500 mg/100 g以上とすることがより好ましく、3,000 mg/100 g以上とすることがより好ましく、3,500 mg/100 g以上とすることがさらに好ましい。いずれの場合であっても、50,000 mg/100 g以下とすることができ、40,000 mg/100 g以下とすることが好ましく、30,000mg/100 g以下とすることがより好ましく、20,000 mg/100 g以下とすることがさらに好ましい。 本発明の剤、経口医薬品または栄養組成物を治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、またはダイエット食の形態とする場合、有効成分の含量は、一食としての摂取量を勘案して設計することができる。 本発明の剤、経口医薬品または栄養組成物は、繰り返し対象に摂取させることができ、また長期間にわたり、対象に摂取させることができる。 本発明の剤、経口医薬品または栄養組成物には、SIRT3またはSIRT6に関連した疾患または状態の処置のために用いることができる旨を表示することができ、また特定の対象に対して摂取を薦める旨を表示することができる。より具体的には、老人性難聴、抗老化、メタボリックシンドロームの処置等に資する旨を表示することができる。表示は、直接的にまたは間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所または手段による、広告・宣伝活動を含む。〔製造方法〕 本発明の剤、経口医薬品または栄養組成物は、種々の公知の技術を用いて製造することができる。有効成分を所定の濃度になるように調整する工程は、製造工程の種々の段階で適用できる。当業者であれば、有効成分の溶解性、安定性、揮発性等を考慮して、本発明の剤のための製造工程を、適宜設計しうる。本発明者の検討によると、アンセリンおよびカルノシンは、常温では十分に安定であり、また180℃以下の調理条件であれば十分に安定であることが確認されている。さらに、溶液状態で少なくとも2年9月は安定に保存できることが確認されている。〔SIRTプロモーター領域、それを用いたスクリーニング方法〕 本発明はまた、SIRT3のプロモーター領域およびSIRT6のプロモーター領域およびそのホモログも提供する。すなわち、下記(1)〜(6)のいずれか一に記載のポリヌクレオチドを提供する。(1)配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(2)配列番号5に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSIRT3のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド;(3)配列番号5に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつSIRT3のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド(4)配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(5)配列番号6に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド;(6)配列番号6に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド。 本発明でポリヌクレオチドに関し、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」というときは、特に記載した場合を除き、いずれのポリヌクレオチドにおいても、ハイブリダイゼーションの条件は、Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 2nd ed.(Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)およびHybridization of Nucleic Acid Immobilization on Solid Supports(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 138,267−284(1984))の記載に従い、取得しようとするポリヌクレオチドに合わせて適宜選定することができる。例えば85%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液および50%ホルムアミドの存在下、45℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、60℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。また90%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液および50%ホルムアミドの存在下、50℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液)を用い、65℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。 本発明で塩基配列(ヌクレオチド配列ということもある。)に関し「同一性」というときは、特に記載した場合を除き、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致したヌクレオチドの個数の百分率を意味する。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出でき、市販されているアルゴリズムを用いて計算することができる。本明細書において、塩基配列に関し、同一性というときは、特に記載した場合を除き、いずれの場合も、少なくとも80%、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97.5%以上、さらに好ましくは98%以上さらに好ましくは99%以上の配列の同一性を指す。 本発明で用いるポリヌクレオチドまたはそれを含むコンストラクト(例えば、発現カセット、ベクター、プラスミド)は、当業者であれば、従来技術を利用して適宜調製することができる。 本発明により初めて提供される、SIRT3遺伝子またはSIRT6遺伝子の転写または発現を制御するプロモーター領域は、SIRT3またはSIRT6を活性化する物質をスクリーニングするのに利用できる。このようなスクリーニング方法は、下記の工程からなる。(1) SIRT3プロモーター領域またはSIRT6プロモーター領域、およびその下流に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含むコンストラクトで形質転換された細胞を準備する工程;そして(2) 候補物質を、形質転換細胞に与える工程。 スクリーニングに際しては、レポーター遺伝子の転写または発現を指標とすることができる。レポーター遺伝子は、検出が容易でかつ細胞毒性が少ないものであれば、各種のものを適用することができる。好ましい例として、緑色蛍光タンパク質(GFP)を挙げることができる。必要であれば、レスベラトロール、カルノシンまたはアンセリンをポジティブコントロールとして用いてもよい。 以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の範囲は実施例に記載したものに限られない。〔SIRT3及びSIRT6活性化食肉成分の探索〕(1)方法第1項 hSIRT3p-EGFP及びhSIRT6p-EGFPベクターの作製 はじめにTIG-1細胞より抽出したヒトゲノムDNAを鋳型として、hSIRT3(human SIRT3) プロモーター領域(-651〜-1)及びhSIRT6(human SIRT6)プロモーター領域(-1105〜-1)をPCRにより取得した。プライマーとして、報告されているhSIRT3及びhSIRT6のゲノム配列情報をもとにして、各プライマーの末端にAseIとNheIの認識配列を付加したものを合成した(下記)。PCRの反応条件は、94℃、2分間の後、98℃、10秒間:68℃、1分間を40サイクル行った。また、DNAポリメラーゼにはKOD FX(東洋紡)を使用し、プライマーの合成はシグマ社に委託した。hSIRT3p forwardプライマーATTAATGCTCACTCACTTCCGGCGCCGA (配列番号1)hSIRT3p reverseプライマーGCTAGCGTTCCGCGCAGTCCAAGGAG (配列番号2)hSIRT6p forward プライマーATTAATACTGCGCCCGGCTCACTCAC (配列番号3)hSIRT6p reverse プライマーGCTAGCCCTCGACTGCCCCACGGGAA (配列番号4) 次に、PCRにより得られたhSIRT3及びhSIRT6プロモーター断片をpGEM-T Easy Vector(Promega)へTAクローニングした。このTAクローニングしたベクターを用いてシークエンシングを行い、配列の確認を行った。シークエンシング後、pGEM-T Easy Vectorにインサートとして組み込まれているhSIRT3及びhSIRT6プロモーター断片をAseIとNheIの制限酵素処理により切り出すとともに、同じAseIとNheIの制限酵素処理によりCMVプロモーターを除去したpEGFP-C3 Vector(Takara)を準備した。最後にこれらをライゲーションさせ、ヒトゲノムからクローニングしたヒトSIRT3及びSIRT6遺伝子のプロモーター領域をEGFP-C3 Vector中のCMVプロモーターと置換したレポーターベクター(hSIRT3p-EGFP及びhSIRT6p-EGFPベクター)が完成した。なお、得られたhSIRT3プロモーター領域の配列(配列番号5)およびhSIRT6プロモーター領域の配列(配列番号6)を、図4に示した。第2項 Transfectionと安定発現株の作製 トランスフェクションにはHilyMax(同仁化学)を使用し、それに準ずるプロトコルで行った。トランスフェクション前日はCaco-2細胞(東京大学食糧化学研究室より供与)を6×105で5mL dishに播種し、10% FBSを含むDMEM培地(ニッスイ)で37℃、5% CO2条件下で培養した。トランスフェクション当日、まず1.5mL tubeにおいてDMEM培地 300μl, hSIRT3p-EGFPまたはhSIRT6p-EGFPベクター 15μg, HilyMax 70μlを混合し室温で20分間インキュベートした。これを前日に播種し培養しておいたCaco-2細胞に全量添加し、48時間培養した。 hSIRT3p-EGFP及びhSIRT6p-EGFPベクターにはKanr/Neorの薬剤耐性遺伝子が含まれているため、トランスフェクションから48時間の培養後、細胞を薬剤G418を用いて薬剤選択にかけた。G418は終濃度800μg/mlになるよう培地に添加し、継代や3日毎の培地交換を繰り返しながら、その都度G418を同濃度で添加し、コントロールのCaco-2細胞が完全に死滅後も2週間以上薬剤選択にかけた。 ベクター遺伝子が導入され安定発現株が樹立できているかの確認はフローサイトメトリーを用いてGFPの蛍光を測定することで行った。5mL dishでサブコンになっているCaco-2、Caco-2 (hSIRT3p-EGFP)及びCaco-2 (hSIRT6p-EGFP)細胞を10% FBS/DMEM 2ml中に懸濁し、この細胞懸濁液をフローサイトメーターに供し、プログラム「Caco-2 GFP2」を用いて測定を行った。測定した全細胞集団に対して、細胞内の大きさを示す前方拡散FS(Forward Scatter)の値が大きく、かつ細胞内の複雑さを示す側方拡散SS(Side Scatter)の値が小さい細胞集団を生細胞とみなし、この細胞の部分集団についてGFP蛍光強度をヒストグラム化し、コントロールのCaco-2細胞と比較して遺伝子導入細胞においてGFP蛍光のピークが高強度側にずれていることを確認した(図1)。第3項 食肉成分サンプルの添加とIN Cell Analyzer 1000によるGFP蛍光強度の測定 Caco-2 (hSIRT3p-EGFP)及びCaco-2 (hSIRT6p-EGFP)細胞を0.6×104 cells/wellになるよう96 well plateに播種し、24時間後に滅菌水で調製した各種食肉成分サンプルを添加した。各種食肉成分サンプルの添加終濃度はL-カルノシンが10μM、100μM、1mM、10mM、その他はすべて100 μg/mlになるように添加した。食肉成分以外にポジティブコントロールとしてレスベラトロールを終濃度10μMで添加した。実験に用いた各種食肉成分サンプルの詳細を下表に示した。 サンプルを添加して2日後、培養液の上から8% PFAを100μl/well添加し、室温15min固定した。固定後、固定液を捨ててPBSを200μl/wellずつ入れて2回洗浄し、500倍希釈したHoechst33342溶液を100 μl/wellで添加し、15 min 遮光染色した。染色後Hoechst33342溶液を捨て、PBSを100 μl/wellで添加してIn Cell Analyzer1000にてGFPの蛍光強度を測定した。(2)結果 結果を図2、図3に示した。Caco-2 (hSIRT3p-EGFP)を用いた系では、L-カルノシンを添加した場合に、GFP蛍光強度が大きく、SIRT3およびSIRT6を活性化したことが分かった。〔製造例〕(1)カプセル剤 カルノシン1.0重量部、プラセンタエキス(粉末)0.2重量部および乳糖1.3重量部を混合して均一化した後、常法に準じてハードカプセルに充填し、内容量250 mgのカプセル剤(カルノシン100 mg/カプセル)を製造した。(2)錠剤 マルトース、デキストリン、デンプン、ビタミンE含有直物油、イソマルトオリゴ糖、難消化性デキストリン、貝カルシウム、トレハロース、ショ糖エステル、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、香料、シェラック、ナイアシン、ビタミンK、甘味料、塩化カリウム、ビタミンA、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ピロリン酸鉄、ビタミンB類、ビタミンD、炭酸マグネシウム、葉酸とともに、1錠(300 mg)当たりカルノシン・アンセリン混合物60 mgを含む錠剤を製造した。(3)飲料 果汁20重量部、ゼラチン加水分解物組成物8重量部、クエン酸0.2g、フレーバー0.1g、カルノシン・アンセリン混合物1重量部に、水を加えて全量を100重量部とし、常法により飲料を調製し、500ml入りの容器詰飲料とした。(4)ゲル状製剤 グラニュー糖8重量部、増粘多糖類を6重量部をあらかじめ混合し、ゼラチン加水分解物2重量部と適量の水を加え、加熱溶解した。あら熱を除去した後、アイソトニックミックス10重量部、フレーバー0.1g、カルノシン・アンセリン混合物2重量部、ビタミンミックス0.09重量部、クエン酸0.3重量部を加え、全量を100重量部とし、常法により一食150gのゲル状製剤を製造した。配列番号1 hSIRT3p forwardプライマー配列番号2 hSIRT3p reverseプライマー配列番号3 hSIRT6p forward プライマー配列番号4 hSIRT6p reverse プライマー配列番号5 hSIRT3プロモーター領域の配列配列番号6 hSIRT6プロモーター領域の配列カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分とする、サーチュイン(SIRT)活性化剤。サーチュインが、SIRT3またはSIRT6である、請求項1に記載の剤。カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分とする、SIRTの活性化に関連する疾患または状態の処置のための剤。SIRTの活性化に関連する疾患または状態の処置が、酸化ストレスの制御、抗老化、寿命の延長、エネルギー代謝の改善、メタボリックシンドロームの処置、または老人性難聴の処置である、請求項3に記載の剤。100 mg/day以上のカルノシンおよび/またはアンセリンを摂取させるための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。1,000 mg/100 g以上のカルノシンおよび/またはアンセリンを含有する、または200 mg/day以上のカルノシンおよび/またはアンセリンを含有する、対象に摂取させるための、栄養組成物。散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液状製剤、ゲル状製剤、飲料、菓子、食肉加工品、魚介加工品、野菜加工品、惣菜、調味料組成物、食品添加物の形態である、請求項6に記載の栄養組成物。カルノシンおよび/またはアンセリンを、SIRT3またはSIRT6の活性化が望ましい対象に摂取させる工程を含む、対象におけるSIRT3またはSIRT6の活性化方法。カルノシンおよび/またはアンセリンを、SIRT3またはSIRT6の活性化が望ましい対象に摂取させる工程を含む、健康維持のための食餌方法。下記(1)〜(6)のいずれか一に記載のポリヌクレオチド:(1)配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(2)配列番号5に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSIRT3のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド;(3)配列番号5に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつSIRT3のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド(4)配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(5)配列番号6に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド;(6)配列番号6に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチド。SIRT3またはSIRT6を活性化する物質をスクリーニングする方法であって:請求項10に記載のポリヌクレオチド、およびその下流に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含むコンストラクトで形質転換された細胞を準備し;そして候補物質を、形質転換細胞に与える工程を含み;レポーター遺伝子の転写または発現を指標として候補物質をスクリーニングする、方法。老化を処置することができる物質を探索するためのものである、請求項11に記載の方法。 【課題】SIRT3またはSIRT6を活性化する剤を提供する。【解決手段】カルノシンおよび/またはアンセリンを有効成分とする。本発明の剤は、酸化ストレスの制御、抗老化、寿命の延長、エネルギー代謝の改善、メタボリックシンドロームの処置、または老人性難聴の処置のために有用である。本発明はまた、SIRT3遺伝子のプロモーター領域として機能可能であるポリヌクレオチドおよびSIRT6のプロモーターとして機能可能であるポリヌクレオチドを提供する。このようなポリヌクレオチドは、SIRT3またはSIRT6を活性化する物質をスクリーニング方法において、利用することができる。【選択図】なし配列表


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