タイトル: | 公開特許公報(A)_毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする配列を含む組換体クローンの選択方法 |
出願番号: | 2013231763 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 1/21,C12N 15/09,C12Q 1/02 |
ギャバン,フィリップ ヴァン,メルダレン,ローレンス スパイラー,セドリック,イーブ JP 2014064579 公開特許公報(A) 20140417 2013231763 20131108 毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする配列を含む組換体クローンの選択方法 ユニベルスィテ リーブル ドゥ ブリュッセル 503305932 風早 信昭 100103816 浅野 典子 100120927 ギャバン,フィリップ ヴァン,メルダレン,ローレンス スパイラー,セドリック,イーブ US 60/271,204 20010223 C12N 1/21 20060101AFI20140320BHJP C12N 15/09 20060101ALI20140320BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20140320BHJP JPC12N1/21C12N15/00 AC12Q1/02 9 2002566361 20020222 OL 14 4B024 4B063 4B065 4B024AA11 4B024BA38 4B024CA03 4B024DA06 4B024EA04 4B024FA10 4B024GA11 4B024HA01 4B024HA08 4B024HA11 4B063QA01 4B063QA08 4B063QQ06 4B063QQ13 4B063QR33 4B063QR60 4B063QR68 4B063QR75 4B063QR80 4B063QS24 4B063QS36 4B063QS38 4B063QX01 4B065AA01X 4B065AA01Y 4B065AA26X 4B065AB01 4B065AC10 4B065AC14 4B065BA02 4B065BA25 4B065CA24 4B065CA46 本発明は組換えDNA技術の分野に属する。 より正確には、本発明は、毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする配列を含む組換体クローンを選択するための方法、核酸のコンストラクト、ベクターおよび細胞に係わる。 組換体の選択を行わずに、放射性同位体標識プローブを用いたハイブリッド形成、小規模なプラスミドの制限作用によるスクリーニングまたはX−Galの存在下でのα相補性の不活性化に基づくスクリーニング(ブルー/ホワイト・スクリーニング)による識別に時間をかけることによってDNAインサートをクローニングすることは可能である。 10年以上前から採用されているこのようなアプローチでは、完全なゲノム配列決定プログラムにつながる大規模なクローニングプロジェクトには対応できない。入手可能な配列情報は今後ますます増大する。 同定されたコード配列の生物学的機能を解析するには、生物のゲノムに存在する対応遺伝子を特異的に変異(欠失または修飾)(例えば、ノックアウト・マウスにおいて)させなければならず、それによって導入された変異に関連する表現型を調べることができる。変異の特異性は、相同な組換アームを含む(大腸菌中で構築された)標的ベクターによってもたらされる。 配列決定技術が発展して、配列が決定した遺伝子の数が激増してもなお、組換体クローンを得て対応遺伝子の機能に関する情報を得るための大規模な遺伝子のクローニングおよびサブクローニングが、機能的なゲノム・プログラムの律速段階である。 それぞれの遺伝子のクローニングおよびサブクローニングは“機能的なゲノム”プログラムの障壁である。従って、これらの処理をスピードアップできる新規のクローニング法が必要である。 組換体の確認が律速段階であるから、組換体のポジティブ選択が、従来の方法から数千個の遺伝子の取り扱いを可能にする高処理能力のクローニングへ移行する必要があることは明白である。 組換体菌株の直接選択(ポジティブ選択)を可能にするクローニングベクターは既に提案されている(例えば、Pierce et al.,1992;Kuhn et al.,1986)。但し、多くのクローニングベクターには以下の欠点がある:(i)大きいヌクレオチド断片(fragment)の挿入には利用できない、(ii)マニピュレート(manipulate)が容易ではない、(iii)微生物の死を伴うことなく、多数のコピーを微生物に生成させることができない。 また、公知の制限酵素反応および連結酵素(ligase)反応の代わりに、部位−特異的な組換え法を採用することができ、目的のインサートによるccdB遺伝子(毒素/抗毒素遺伝子ファミリーの一員)の置換によって組換え体を選択することができる(米国特許第5,910,438号明細書(特許文献1)、米国特許第6,180,407号明細書(特許文献2)および国際公開WO 99/58652号パンフレット(特許文献3))。 他のポジティブ選択システムと比較した場合のCcdB遺伝子含有ベクターの主な長所は、i)選択遺伝子のサイズが小さいこと(ccdB:303bp)、ii)CcdB毒に対する総抵抗性をもたらす変異を含む宿主中でベクターを増幅させることができるということ(gyrA462抵抗性菌株;Bernard and Couturier,1992)。大腸菌は、多くのモレキュラークローニングストラテジーにおいて使用される宿主であるから、クローニングの可能性を高め、拡大することができる新規のシステムを開発することが重要である。CcdB遺伝子を使用するポジティブ選択技術は、特定の目的に合う新規のベクターを得るために用いられている:PCRクローニングベクター(Gabant et al.,1997)、細菌遺伝学用のベクター(Gabant et al.,1998)、また、最近では、CcdBファミリーに属するkid遺伝子が新規のクローニングベクターの設計に使用されている(Gabant et al.,2000および国際公開WO01/46444号パンフレット(特許文献4))。 CcdB遺伝子を使用する他の例が米国特許第5,888,732号明細書(特許文献5)に開示されている。この文献は“ゲートウェイシステム(Gateway system)”として知られているクローニング法の原理を開示している。この方法では、従来の制限酵素反応および連結酵素(ligase)反応の代わりに部位−特異的な組換え法を採用し、ccdB遺伝子を目的の遺伝子によって不活性化(欠失)させることにより組換体を選択する。この方法は自動的なサブクローニングにより生物のすべての遺伝子をある1つのベクターから別のベクター(即ち、発現ベクター)へ迅速且つ効率的に転移させることができる。得られるサブクローンは翻訳融合を可能にする位置付けおよび読み枠を維持する。(総論については、Hartley et al.,2000を参照)。 但し、前記技術は、rpsl,tetR,sacB,またはccdBといった逆選択遺伝子を使用する必要のある逆選択遺伝子に基づく技術であり、これによって第1ラウンド組換えからの“傷”を持ち込んでいないシームレスな第2ラウンド生成物を得ることができる。 逆選択(毒性遺伝子の不活性化または欠失のための選択)は、多くの場合、ポジティブ選択(新しい性質の獲得)よりも効率が悪い。意図される組換えは逆選択の淘汰圧に対する解決策のうちの1つに過ぎないからである。逆選択可能な遺伝子の発現を消すような突然変異もまた逆選択の淘汰圧下において発生する。 このように、稀な遺伝学的事象(頻度が逆選択可能な遺伝子の突然変異による不活性化に匹敵する)に対しては、第2ラウンド逆選択方法から得られる候補をスクリーニングすることによって意図された組換え事象を発見する必要がある。 実際、理由は不明であるが、意図する生成物と意図しない生成物との比は広い範囲(<1%ないし15%−85%)で変動する(Muyrers G.P.P.,Trends in Biochemical Sciences,Vol.26,no.5,p.325−331,2001(非特許文献1))。米国特許第5,910,438号明細書米国特許第6,180,407号明細書国際公開WO99/58652号パンフレット国際公開WO01/46444号パンフレット特許第5,888,732号明細書Trends in Biochemical Sciences,Vol.26,no.5,p.325−331,2001 本発明は従来技術の欠点を伴わず、組換体クローンの改良されたポジティブ選択を可能にする改良された新規の方法および生成物を提供することにある。 本発明の目的の1つは、稀な遺伝学的事象の選択、特に、長いDNA断片(fragment)が組み込まれた組換体クローンの選択を可能にする前記方法および生成物を提供することにある。 本発明の他の目的は、前記ポジティブ選択に使用される細胞において抵抗性変異が発生しても、これに全く影響されないか、またはほとんど影響されない方法および生成物を提案することにある。 本発明は、以下の(1)〜(19)の構成を有するものである。[1]目的の遺伝子(6)と、毒性分子(5)に対して機能する抗毒性蛋白質(4)をコードするヌクレオチド配列(3)とが組み込まれた組換体クローンの選択方法であって、前記組換体クローンが、前記毒性分子(5)をコードするヌクレオチド配列(21)をそのゲノム中に含む宿主細胞(20)に組み込んだ後も生き残る組換体クローンであることを特徴とする前記方法。[2]抗毒性蛋白質(4)および毒性分子(5)がそれぞれ抗毒素蛋白質および毒素蛋白質であることを特徴とする[1]に記載の方法。[3]抗毒素蛋白質および毒素蛋白質が、以下の組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする[2]に記載の方法。:CcdA蛋白質/CcdB蛋白質、Kis蛋白質/Kid蛋白質、Phd蛋白質/Doc蛋白質、SoK蛋白質/HoK蛋白質、RelB蛋白質/relE蛋白質、PasB蛋白質(またはPasC蛋白質)/PasA蛋白質、mazF蛋白質/mazE蛋白質、その他のプラスミド由来か或いはプラスミド由来ではない抗毒素蛋白質/毒素蛋白質。[4]毒性分子(5)に対する抗毒性蛋白質(4)をコードするヌクレオチド配列(3)、目的の遺伝子(6)または前記目的の遺伝子が組み込まれるための部位とから成るカセット配列(2)を含む核酸のコンストラクトであって、前記カセット配列(2)が第1組換え部位(7)と第2組換え部位(8)との間に介在することを特徴とする核酸のコンストラクト(1)。[5]抗毒性蛋白質(4)をコードするヌクレオチド配列(3)が不活性の抗毒性蛋白質(4)をコードする少なくとも1個のヌクレオチドを含み、目的の遺伝子(6)がカセット配列(2)に正しく組み込まれた後、前記抗毒性蛋白質(4)が機能的な抗毒性蛋白質(4)として再構成されることを特徴とする[4]に記載の核酸のコンストラクト(1)。[6]抗毒性蛋白質(4)および毒性分子(5)がそれぞれ抗毒素蛋白質および毒素蛋白質であることを特徴とする[4]または[5]に記載の核酸のコンストラクト(1)。[7]抗毒素蛋白質および毒素蛋白質を、以下の組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする[6]に記載の核酸のコンストラクト(1):CcdA蛋白質/CcdB蛋白質、Kis蛋白質/Kid蛋白質、Phd蛋白質/Doc蛋白質、SoK蛋白質/HoK蛋白質、RelB蛋白質/relE蛋白質、PasB蛋白質(またはPasC蛋白質)/PasA蛋白質、mazF蛋白質/mazE蛋白質、その他のプラスミド由来か或いはプラスミド由来ではない抗毒素蛋白質/毒素蛋白質。[8]目的の遺伝子(6)の挿入部位を含むヌクレオチド配列が毒性分子をコードするヌクレオチド配列であることを特徴とする[4]乃至[7]のいずれかに記載の核酸のコンストラクト。[9]抗毒性蛋白質(4)をコードするヌクレオチド配列(3)または目的の遺伝子(6)がプロモーター/オペレーター配列(9)につながれていることを特徴とする[4]乃至[8]のいずれかに記載の核酸のコンストラクト(1)。[10]第1組換え部位(7)および第2組換え部位(8)がファージλ由来のatt部位であることを特徴とする[4]乃至[9]のいずれか1項に記載の核酸のコンストラクト。[11][4]乃至[10]のいずれかに記載の核酸のコンストラクトを含むことを特徴とするベクター。[12]自己複製ベクター、好ましくはウィルスまたはプラスミド・ベクターであることを特徴とする[11]に記載のベクター。[13]ベクター・ドナーDNA分子(10)であることを特徴とする[11]に記載のベクター。[14]少なくとも1個の選択マーカーを含む第1DNA断片(segment)および/または第2DNA断片(segment)から成るベクター・ドナーDNA分子(10)であって、前記第1または第2DNA断片(segment)は、互いに再結合することのない少なくとも第1組換え部位と第2組換え部位とによって挟まれており、選択マーカーが、毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列であることを特徴とするベクター・ドナーDNA分子(10)。[15]選択マーカーが、毒素蛋白質に対する抗毒素蛋白質をコードするヌクレオチド配列であることを特徴とする[14]に記載のベクター。[16]抗毒素蛋白質および毒素蛋白質が、以下の組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする[15]に記載のベクター:CcdA蛋白質/CcdB蛋白質、Kis蛋白質/Kid蛋白質、Phd蛋白質/Doc蛋白質、SoK蛋白質/HoK蛋白質、RelB蛋白質/relE蛋白質、PasB蛋白質(またはPasC蛋白質)/PasA蛋白質、mazF蛋白質/mazE蛋白質、その他のプラスミド由来か或いはプラスミド由来ではない抗毒素蛋白質/毒素蛋白質。[17][4]乃至[16]のいずれかに記載のベクターまたは核酸のコンストラクトのための宿主細胞(20)であって、前記細胞(20)が、その染色体DNA中に組み込まれた毒性分子(5)をコードする少なくとも1つの第1ヌクレオチド配列(21)を有しており、前記第1ヌクレオチド配列が、好ましくは抑制的なプロモーター/オペレーター・ヌクレオチド配列の制御下にあり、且つ/または前記毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする第2ヌクレオチド配列によって制御され、前記第2ヌクレオチド配列が、好ましくは抑制的なプロモーター/オペレーター・ヌクレオチド配列の制御下で抑制され得ることを特徴とする前記宿主細胞(20)。[18]寄託番号LMGP−21399号の細胞であることを特徴とする[12]に記載の細胞。[19][4]乃至[10]のいずれかに記載の核酸のコンストラクト、[11]乃至[16]のいずれかに記載のベクターおよび/または[17]または[18]に記載の細胞および、或いは、インサート・ドナーDNA分子(11)から成るクローニングキットおよび/または配列決定キットであって、互いに再結合することのない少なくとも第1組換え部位と、場合によっては第2組換え部位とに挟まれた第1DNA断片(segment)を含むことを特徴とする前記キット。 第1の本発明は、目的の遺伝子と、(細胞、好ましくは原核細胞に対する)毒性分子に対して機能する抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列とが組み込まれた組換体クローンの選択方法に係わり、その組換体クローンは、毒性分子をコードするヌクレオチド配列をそのゲノム中に含む宿主細胞に組み込んだ後も生き残る組換体クローンである。 また、本発明は、前記方法を実施するのに使用される生成物、特に、(細胞、好ましくは原核細胞に対しての)毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、目的の遺伝子または目的の遺伝子の挿入部位(好ましくは、前記挿入部位は抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列中には存在しない)とから成る少なくとも1つのカセット・ヌクレオチド配列を含む核酸のコンストラクトに係わる。尚、前記カセット・ヌクレオチド配列は、前記核酸のコンストラクトにおいて第1組換え部位と第2組換え部位との間に介在する(前記第1組換え部位と前記第2組換え部位とは互いに再結合することはない)。 本発明の好ましい実施例では、抗毒性蛋白質と毒性分子がそれぞれ抗毒素蛋白質と毒素蛋白質である。前記抗毒性蛋白質または毒素蛋白質は、野生型の蛋白質でも改変された蛋白質でもよく、生来的または人工的に毒性を有し、細胞(好ましくは原核細胞)の1つまたは2つ以上の生体機能に影響を与えて細胞死を引き起こすものである。 抗毒性蛋白質および毒性分子は、好ましくは、CcdA蛋白質/CcdB蛋白質、Kis蛋白質/Kid蛋白質、Phd蛋白質/Doc蛋白質、SoK蛋白質/HoK蛋白質、RelB蛋白質/relE蛋白質、PasB蛋白質(またはPasC蛋白質)/PasA蛋白質、mazF蛋白質/mazE蛋白質、その他のプラスミド由来か或いはプラスミド由来ではない抗毒素蛋白質/毒素蛋白質の組み合わせから成る群から選択される。 毒性分子は、生来的または人工的に毒性を有し、(原核)細胞の1つまたは2つ以上の生体機能に影響を与える毒素蛋白質であってもよい。 (枯草菌からの)sacB遺伝子がコードする蛋白質、GpE蛋白質、GATA−1蛋白質およびCrp蛋白質は、そのような毒性分子の他の例である。 sacB遺伝子は、スクロースを大腸菌に対して有毒な生成物に加水分解する反応を触媒するレバン・スクラーゼ(the levan sucrase)をコードしている(Pierce et al.Proc.Natl.Acad.Sci.,Vol.89,No6(1992)p.2056−2060)。6つのユニーク(unique)な制限酵素切断部位を含むバクテリオファージjX174からのE遺伝子が、大腸菌細胞の溶菌を引き起こす蛋白質gpEをコードしている。(Heinrich et al.,Gene,Vol.42 no3(1986)p.345−349)。蛋白質GATA−1は、トゥルーデルら(Trudel et al.)によって説明されている(Biotechniques 1996,Vol.20(4),p.684−693)。蛋白質CrPはシュリーパーら(Schlieper et al.)によって説明されている(Anal.Biochem.1998,Vol.257(2),p.203−209)。 前記毒性分子に対する抗毒性蛋白質とは、対応する毒性分子が細胞(好ましくは原核細胞)によって生成されたとき、前記細胞に対する前記毒性分子の効果を軽減または抑制することができるどんな蛋白質でもよい。 本発明の他の好ましい実施例では、抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列が、目的の遺伝子がカセット配列に正しく組み込まれると活性化(機能的)され得る不活性な抗毒性蛋白質をコードする第1ヌクレオチド断片(fragment)である。 好ましくは、本発明の核酸のコンストラクト中に存在するカセット配列が、構成的に、または目的の遺伝子(インサート)の挿入の後に、または組換え事象によって発現させ得る抗毒性蛋白質を発現させるためのプロモーター/オペレーター配列をも含む。 例えば、目的の遺伝子(インサート)が抗毒性蛋白質の発現を可能にする転写信号および/または翻訳信号を含む配列を有しているとき、または目的の遺伝子が挿入または組換え事象によって他の抗毒性分子の配列、その一部またはそのC−転写信号または翻訳信号と一体化しているときに、抗毒活性が得られる。 前記のメカニズムにより、目的の遺伝子が核酸のコンストラクト内へ正しく挿入されたものが有利に選択され得る。 前記目的の遺伝子は、前記抗毒性蛋白質の発現を可能にするか或いは高めるプロモーター/アクティベーター配列をも含むか、または前記抗毒性蛋白質を機能的(毒性分子に対して活性)にするために、前記抗毒性蛋白質の第1ヌクレオチド断片(fragment)を補完する第2ヌクレオチド断片(fragment)を含んでいてもよい。 本発明の他の実施例では、目的の遺伝子の挿入部位が、組換え部位、或いは1つまたは2つ以上の制限酵素によって特異的に切断されるヌクレオチド配列のようなクローニング部位である。 前記目的の遺伝子の挿入部位が、毒性分子、好ましくは毒素蛋白質をコードするヌクレオチド配列中に含まれていると好都合である。従って、本発明の核酸のコンストラクトは、まず第一に、(毒性分子をコードするヌクレオチド配列中に目的の遺伝子を組み込んで前記配列を不活化する)ネガティブ選択に基づき、第二に、(抗毒性蛋白質の発現を可能にする)ポジティブ選択に基づいている。 この二つの選択により、本発明の核酸のコンストラクトへの極めて長いDNA断片(fragment)の組み込みというような稀な遺伝学的事象を伴う組換体クローンの改良された選択が可能になる。 本発明の核酸のコンストラクトにおいて、組換えによって識別される第1および第2組換え部位は、好ましくは、ファージl由来のatt部位(Ptashneら(Ptashne M. et al.)によって説明されているような特異的な組換え部位である(Genetic switch,Cell Press,Cambridge,1992))。好ましくは、前記att部位は、ランディら(Landy A.et al.)によって説明されている方法で本発明の核酸のコンストラクトに組み込まれる(Annual Review,Biochemistry,Vol.58,p.913,1989)。 但し、その他のタイプの組換え部位が本発明の核酸のコンストラクトに組み込まれていてもよい。 また、本発明は、本発明の核酸のコンストラクトを含むベクター(例えば、プラスミド、バクテリオファージ、ウィルス、陽イオン小胞のような自己複製ベクターまたはその他のタイプのベクター)にも係わる。 本発明の好ましい実施例は、第1DNA断片(segment)と第2DNA断片(segment)とから成るベクター・ドナーDNA分子に係わり、前記第1および第2DNA断片(segment)は、選択マーカーとして、毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、前記第1および第2DNA断片(segment)は、互いに再結合することのない少なくとも第1および第2組換え部位によって挟まれている。 本発明のベクターDNA分子中の前記選択マーカーはまた、少なくとも1つの抗毒性分子の配列の不活性断片(fragment)をも含んでいてもよく、前記第1および第2組換え部位にわたって、前記選択マーカーの不活性断片(fragment)を含むさらなるDNA断片(segment)(抗毒性分子の配列の他の断片(fragment))と組み換えられることによって機能的な選択マーカーが得られる。 ベクター・ドナーDNA分子において、組み換え部位は、上記組み換え部位、好ましくは、米国特許第5,888,732号明細書に記載されているような種々の組み換え部位から成る群から選択される。 本発明のベクター・ドナーDNA分子は、インサート・ドナーDNA分子と組合わせて、複数の部品(parts)からなるキット(kit)(好ましくは、クローニングキット)とするのが好都合であり、前記インサート・ドナーDNA分子は、互いに再結合することのない第1および第2組換え部位によって挟まれた第1DNA配列を含む。前記インサートDNA分子の特徴は、参考のためここに引用する米国特許第5,888,732号明細書および国際公開WO99/21977号、WO01/31039号、WO01/42509号パンフレットに記載されている。 また、本発明は細胞に係わり、場合によっては、上記キットに組み込まれた細胞、好ましくは、本発明のベクターまたは核酸のコンストラクトのための宿主原核細胞であり、前記細胞は、その染色体DNA中に組み込まれた毒性分子をコードする少なくとも1つの(好ましくは、少なくとも2つ以上の)ヌクレオチド配列を有する(核酸のコンストラクト中に存在するヌクレオチド配列が、その毒性分子に対する抗毒性分子をコードしている)。上記毒性分子の発現は、好ましくは、転写および/または翻訳を抑制する手段、例えば、毒性分子をコードする前記ヌクレオチド配列に抑制プロモーター/オペレーター・ヌクレオチド配列を加えることによってネガティブ抑制(制御)されており、それによって毒素蛋白質の転写および/翻訳の抑制的制御が可能になり、細胞死を防ぐことができる。 但し、前記抑制的制御は、特定の化合物(即ち:糖類)を細胞に対して添加するか或いは添加を抑制することによって解除することができ、それによってこの細胞による毒性分子の発現が可能になる。 また、毒性分子の活性は、条件的であってもよい(例えば、熱感受性アレルまたは特異的なアンバー変異抑制を導入することによって)。 さらにまた、細胞は、ある条件下で発現して細胞における毒性分子の悪影響を阻止できる抗毒性分子を含んでいてもよい。 好ましくは、本発明の細胞は、寄託番号LMGP−21399の細胞である。 上記細胞は2002年2月15日付でBCCM(Laboratorium voor Microbiologie−Universiteit Generalement,K.L.ledeganckstraat 35,B−9000 Gent,Collection of the Belgian Coordinated Collection of micro−organisms)に寄託された(番号LMGP−21399号)。この寄託は、微生物寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に従って行われた。 また、本発明は、組換え体の選択を目的とする前記生成物の使用、および、組換えクローンの選択方法に係わり、この選択方法は、本発明の核酸のコンストラクトまたはベクター中にカセット配列を設けるか、さもなければ前記カセット配列中に設けられた挿入部位に目的の遺伝子を挿入し、本発明の細胞を本発明の核酸のコンストラクトまたはベクターで形質転換して生存する組換え細胞クローンを選択するステップから成る。 本発明は、以下の例に基づいて詳細に説明されるが、この例に限定されるものではない。核酸のコンストラクトを示す図。大腸菌株CYS10のコンストラクションを模式的に示す図。プラスミドおよび菌株の説明 図1に示す本発明の核酸のコンストラクト1は、毒性分子5に対する抗毒性蛋白質4をコードするヌクレオチド配列3および目的の遺伝子6または目的の遺伝子6の挿入部位から成るカセット・ヌクレオチド配列2とプロモーター/オペレーター配列9とを含み;カセット配列2は第1組換え部位7と第2組換え部位8との間に介在し、前記第1および第2組換え部位7,8は互いに再結合することがない。 前記核酸のコンストラクト1は、選択マーカー11をも含むインサート・ドナーDNAベクター10であるベクターに組み込まれることが有益である。前記インサートDNAドナーベクター10は、組換え部位13およびもう一つの選択マーカー14を含むインサート・アクセプターDNAベクター12と結合させることができる。前記インサート・ドナーDNAベクター10とインサート・アクセプターベクターまたは分子12は、組換え後、本発明の組換体ベクター15を形成する。正しい組換え方向は、選択マーカー11の特徴を利用するとともに染色体に存在する毒性分子5をコードする1つまたは2つ以上の遺伝子配列を発現する細菌菌株を利用することによって選択される。 この例において、抗毒性蛋白質4をコードするヌクレオチド配列は、細菌によって発現される毒性分子5(CcdB蛋白質)に対する抗毒性分子であるCcdA蛋白質をコードするヌクレオチド配列である。 インサート・ドナーDNAベクター10に存在する第1の選択マーカー11は毒素蛋白質kidであり、第2の選択マーカー14は抗生物質(アンピシリン)に対する遺伝的耐性である。 インサート・ドナーDNAベクター10は、第1の選択マーカー11の活性に対する抵抗性を有する細菌、例えば、毒蛋白質kidに対する抗毒素蛋白質kisを発現する細菌中において増幅させれば好都合である。 構成的にkis配列を含むこの種の細菌は文献WO01/46444に記載されており、寄託番号LMGP−19171号によって保護されている。 また、本発明は、組換え体クローンの選択が行われる宿主細胞の菌株20に係わる。 好ましい菌株は、DH10B菌株由来の大腸菌菌株CYS10である(Invitrogenによって商品化されたmcrAΔ(mrr−hsdRMS−mcrBC)f80lacZdM15 ΔlacW74 endA1 recAl deoR Δ(ara,leu)7697 araD139 ga/U ga/K nupG rpsL)。この菌株は、染色体のdcm遺伝子においてPtacプロモーター22の制御下にあるccdB毒遺伝子21と、λPERFLUOROCARBON LIQUIDプロモーターおよび温度感受性のCI857リプレッサーの制御下にあるRedおよびGam機能を発現するディフェクティブλ(このシステムの説明:Yu et al.,2000,PNAS 97:5978−5983)と2つのプラスミド(Pulb3566プラスミド23、Psc101Laclqプラスミド24)とを有する。pULB3566プラスミド23はPbadプロモーターの制御下にあるCcdA抗毒素3を生成し、アンピシリン耐性遺伝子を有する。Psc101 laclqプラスミド24はLaclqリプレッサーを生成し、スペクチノマイシン耐性遺伝子を有する。ccdB毒遺伝子の発現を制御するPtacプロモーター22はLaclq蛋白質によって抑制され、培地にIPTG 26(イソプロピル β−Dチオガラクトシド、C9H18O5S、Roche;0.5ミリモル/リットル)を添加することにより誘導される。但し、Laclq蛋白質の存在するときでもPtacプロモーター22は完全には抑制されず、残留発現を伴う。ccdA抗毒素遺伝子3の発現を制御するPbadプロモーターは、アラビノース25が存在しないときには完全に抑制されるが、培地にアラビノース25(1%)を添加することによって発現が誘導される(Guzman et al.,1995,Journal of bacteriology,Vol.177,p.4121−4130)。 温度感受性DI857リプレッサーの作用により、菌株は30℃においてのみ成長する。染色体中にccdBが存在するため、菌株は、抗毒素CcdAの生成を可能にするアラビノースの存在下でのみ成長する。従って、菌株はLB培地で、アラビノース(1%)の存在下で、30℃において成長する。 CYS10のコンストラクションを図2に模式的に示す。 但し、前記毒性分子の活性(ccdBの生成)に対して抵抗性を有する突然変異体の選択を減少させるかまたは回避するために、熱感受性を除くこと、およびさらに多くの毒性分子をコードする遺伝子配列を追加して導入することによって、前記菌株の特性を改善することができる。 毒性蛋白質をコードする第1組換えヌクレオチド配列が染色体DNA中に組込まれた組換体原核細胞であって、前記第1組換えヌクレオチド配列の発現は毒性蛋白質に対する抗毒性蛋白質によって抑制および/または制御されており、前記抗毒性蛋白質は前記細胞中にもたらされる第2ヌクレオチド配列によってコードされることを特徴とする組換体原核細胞。 抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列がプラスミド中に存在することを特徴とする請求項1に記載の細胞。 抗毒性蛋白質および毒性蛋白質が、以下の組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の細胞:CcdA蛋白質/CcdB蛋白質、Kis蛋白質/Kid蛋白質、Phd蛋白質/Doc蛋白質、RelB蛋白質/relE蛋白質、PasB蛋白質/PasA蛋白質、PasC蛋白質/PasA蛋白質、mazE蛋白質/mazF蛋白質、その他のプラスミド由来か或いはプラスミド由来ではない抗毒性蛋白質/毒性蛋白質。 寄託番号LMGP−21399号の細胞であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞。 第1ヌクレオチド配列の転写が第1プロモータ/オペレータヌクレオチド配列によって制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組換体原核細胞。 第2ヌクレオチド配列の転写が第2プロモータ/オペレータヌクレオチド配列によって制御されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換体原核細胞。 以下のことを含む、組換体クローンの選択方法: − 毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列をゲノム中に含む宿主細胞を得ること、そして − 前記毒性蛋白質に対する機能的な抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列を前記宿主細胞に導入すること、ただし、前記組換体クローンは、前記ヌクレオチド配列の導入後に生き残る組換体クローンであり、前記ヌクレオチド配列は、不活性な抗毒性蛋白質をコードするベクター、および抗毒性蛋白質の失われた部分をコードする他のヌクレオチド配列、または転写もしくは翻訳信号と一体化しているDNAインサートからなる。 抗毒性蛋白質および毒性蛋白質が、以下の組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法:CcdA蛋白質/CcdB蛋白質、Kis蛋白質/Kid蛋白質、Phd蛋白質/Doc蛋白質、RelB蛋白質/relE蛋白質、PasB蛋白質/PasA蛋白質、PasC蛋白質/PasA蛋白質、mazE蛋白質/mazF蛋白質、その他のプラスミド由来か或いはプラスミド由来ではない抗毒性蛋白質/毒性蛋白質。 毒性蛋白質に対する抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列が、不活性な抗毒性蛋白質をコードする第1ヌクレオチド断片であり、毒性蛋白質に対する抗毒性蛋白質をコードするヌクレオチド配列の第2ヌクレオチド断片を含むインサートであって毒性蛋白質に対する機能的な抗毒性蛋白質を再構成するインサートの正しい組み込みの後、前記不活性な抗毒性蛋白質が機能的になることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。 【課題】毒性分子に対する抗毒性蛋白質をコードする配列を含む組換体クローンの選択方法の提供。【解決手段】毒性蛋白質をコードする第1組換えヌクレオチド配列が染色体DNA中に組込まれた組換体原核細胞であって、前記第1組換えヌクレオチド配列の発現は毒性蛋白質に対する抗毒性蛋白質によって抑制および/または制御されており、前記抗毒性蛋白質は前記細胞中にもたらされる第2ヌクレオチド配列によってコードされることを特徴とする組換体原核細胞。【選択図】なし