タイトル: | 公開特許公報(A)_イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)変異を持つ急性骨髄性白血病(AML)のモデルマウス |
出願番号: | 2013230472 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A01K 67/027,C12Q 1/02,G01N 33/50,G01N 33/15,C12N 15/09 |
北林 一生 小川原 陽子 JP 2015089359 公開特許公報(A) 20150511 2013230472 20131106 イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)変異を持つ急性骨髄性白血病(AML)のモデルマウス 独立行政法人国立がん研究センター 510097747 北林 一生 小川原 陽子 A01K 67/027 20060101AFI20150414BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20150414BHJP G01N 33/50 20060101ALI20150414BHJP G01N 33/15 20060101ALI20150414BHJP C12N 15/09 20060101ALN20150414BHJP JPA01K67/027C12Q1/02G01N33/50 ZG01N33/15 ZC12N15/00 A 6 1 OL 6 2G045 4B024 4B063 2G045AA26 4B024AA11 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA02 4B024EA02 4B063QA18 4B063QQ95 4B063QR77 4B063QR80 4B063QS05 4B063QX01本発明は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)変異を持つ急性骨髄性白血病(AML)のモデルマウスに関するものである。IDH1遺伝子及びIDH2遺伝子は、脳腫瘍や急性骨髄性白血病(AML)など様々ながんにおいて高頻度に変異(非特許文献1)が見られる。IDH遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)では、ヌクレオフォスミンの細胞質局在変異(NPNc)、DNAメチル化酵素DNMT3A変異、及びチロシンキナーゼFLT3の変異が高頻度に見られ(非特許文献2)、これらの変異が協調して白血病発症に寄与していることが予想される。野生型IDHはイソクエン酸をαケトグルタル酸(α-Ketoglutarate; αKG)に変換するが、変異型IDHは野生型と異なる活性を持ち、αKGをがん特異的な代謝産物である2-Hydroxyglutarate(2HG)に変換する。2HGはTET2などのαKG 依存性2原子酸素添加酵素(dioxygenase)を阻害する。しかし、IDH変異を持つモデル動物は報告がなく、変異型IDHに対する阻害剤の薬効を生体内で調べることが困難であった。N Engl J Med 361(11):1058-1066.(2009)Nat Rev Cancer 12(9):599-612. (2012)解決しようとする課題は、IDH遺伝子変異に依存するAMLモデルマウスを確立し、変異型IDHに対する阻害剤の薬効を生体内で調べることを可能にすることである。本発明は、ヒトAMLで見られるIDH1又はIDH2遺伝子変異に依存したAMLの病態を再現するマウスであることを最も主要な特徴とする。本発明のIDH変異を持つAMLのモデルマウスは、IDH変異体に対する阻害剤の生体内での薬効を解析出来る利点がある。図1は本発明のIDH変異を持つAMLのモデルマウスの作製方法および解析結果を示した説明図である。(実施例1)図2は本発明のIDH変異を持つAMLモデルマウスからIDH変異体を取り除く方法およびその解析結果を示した説明図である。(実施例2)IDH1及びIDH2遺伝子変異に依存したAMLの病態を再現するという目的を、AML患者で高頻度に同時に見られる4つの変異遺伝子を導入することによりに実現した。図1は、ヒトAMLで高頻度に同時に見られる4つの変異遺伝子(NPMc, IDH2/R140Q, DNMT3A/R882H and FLT3/ITD)を導入したマウス造血前駆/幹細胞を野生型マウスに骨髄移植することにより、100%の効率でAMLを誘導することを示す。NPM遺伝子欠損をヘテロに持つマウスの骨髄細胞からc-KIT陽性細胞を精製し、これに4つの変異遺伝子(NPMc, IDH2/R140Q, DNMT3A/R882H and FLT3/ITD)又は4つのうちの3つの遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて導入し、導入細胞を6Gy放射線照射した野生型同系マウスに尾静脈から移植する(図1A)。4つの変異遺伝子を移植したマウスは、移植後70日から275日にAMLを発症した(図1B)。一方、3つの変異遺伝子を移植したマウスはいずれの組み合わせでも4つの変異遺伝子を移植したマウスより発症が遅かった。発症マウスの骨髄では芽級が約60%見られる(図1C)。発症マウスの骨髄細胞のほとんどは骨髄性細胞のマーカーであるGr1及びMac1が陽性である(図1D)。2次移植を行うと速やかにAMLを発症する(図1E)0012-0016の結果は、4つの変異遺伝子(NPMc, IDH2/R140Q, DNMT3A/R882H and FLT3/ITD)がAMLの発症には必要であることを示す。図2の実施例は、4つの変異遺伝子(NPMc, IDH2/R140Q, DNMT3A/R882H and FLT3/ITD)により誘導されたAMLの維持にはIDH変異体(IDH2/R140Q)の発現が必要であることを示す。IDH変異体を導入後、条件的にIDH変異体を欠損出来るようにするため、IDH変異遺伝子の前後にloxP配列を挿入したベクターを作製した(図2A)。これを他の3遺伝子(NPMc, DNMT3A/R882H and FLT3/ITD)と共にERT2-Creを発現しNPM遺伝子欠損をヘテロに持つマウスの骨髄細胞に導入し、導入細胞を3Gy放射線照射した野生型同系マウスに尾静脈から移植する(図2B)。AMLを発症したマウスの骨髄細胞を2次移植した後、タモキシフェンを投与してCreを活性化してIDH変異体の欠損を誘導する。IDH変異遺伝子はタモキシフェン投与後7日以内に欠損した(図2C)。2-Hydroxyglutarate(2HG)のレベルは末梢血細胞中(図2D左)や血漿中(図2D右)でタモキシフェン投与後7日以内に低下した。 タモキシフェン投与によるIDH変異体の欠損により、AMLの発症は著名に遅れた(図2E-F)。0019-0020の結果は、IDH遺伝子変異体がAMLの維持に必要であることを示す。本発明のIDH変異を持つAMLのモデルマウスにおいて、IDH遺伝子変異体はAMLの維持には必要であった。従って本モデルマウスは、IDH変異体に対する阻害剤の生体内での薬効測定およびスクリーニング用途に適用できる。IDH2/R140Q変異遺伝子とNPMc、DNMT3A/R882H、FLT3/ITDの変異遺伝子のうちいずれか2つ以上の変異遺伝子を有することを特徴とするAMLモデルマウスIDH2/R140Q、NPMc、DNMT3A/R882H、およびFLT3/ITDの変異遺伝子を有することを特徴とする請求項1記載のAMLモデルマウスIDH2/R140Q変異遺伝子の前後にloxP配列が挿入され、IDH2/R140Q変異遺伝子欠損を誘導しうる請求項1または2に記載のAMLモデルマウスNPM遺伝子欠損をヘテロに持つマウスの骨髄細胞からc-KIT陽性細胞を精製し、これに前記4つの変異遺伝子、又はIDH2/R140Q変異遺伝子とNPMc、DNMT3A/R882H、FLT3/ITDの変異遺伝子のうちいずれか2つ変異遺伝子導入し、導入細胞を放射線照射した野生型同系マウスに移植することを特徴とするAMLモデルマウスの作製方法ERT2-Creを発現しNPM遺伝子欠損をヘテロに持つマウスの骨髄細胞からc-KIT陽性細胞を精製し、これにloxP配列をその前後に挿入したIDH2/R140Q変異遺伝子とNPMc、DNMT3A/R882H、FLT3/ITDの変異遺伝子のうちいすれか2つ以上を導入し、導入細胞を放射線照射した野生型同系マウスに移植することによりIDH2/R140Q変異遺伝子の欠損を誘導できる請求項AMLモデルマウスの作製方法請求項1〜3のいずれか一つに記載のAMLモデルマウス又はその細胞を用いることを含むIDH2阻害剤のスクリーニング方法 【課題】IDH1又はIDH2遺伝子変異に依存したAMLの病態を発現する。【解決手段】マウスの骨髄細胞に4つの変異遺伝子(NPMc, IDH2/R140Q, DNMT3A/R882H and FLT3/ITD)を導入し、導入細胞をマウスに移植することによりAMLを発症するモデルマウスを作製する。【選択図】図1