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タイトル:公開特許公報(A)_二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の製造方法
出願番号:2013225872
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,C07K 16/18,C07K 16/46,C12P 21/08,C07K 16/22,C07K 16/28,A61K 39/395,A61K 51/00,A61K 49/00,A61P 43/00,A61P 35/00,A61P 29/00,A61P 37/02,A61P 37/06,A61P 31/00,A61P 31/12,A61P 37/08,G01N 33/53,G01N 33/532


特許情報キャッシュ

金 罠 京 李 政 ▲いく▼ 黄 修 晶 李 在 日 JP 2014090721 公開特許公報(A) 20140519 2013225872 20131030 二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の製造方法 三星電子株式会社 390019839 Samsung Electronics Co.,Ltd. 八田国際特許業務法人 110000671 金 罠 京 李 政 ▲いく▼ 黄 修 晶 李 在 日 KR 10-2012-0122559 20121031 C12N 15/09 20060101AFI20140422BHJP C07K 16/18 20060101ALI20140422BHJP C07K 16/46 20060101ALI20140422BHJP C12P 21/08 20060101ALI20140422BHJP C07K 16/22 20060101ALI20140422BHJP C07K 16/28 20060101ALI20140422BHJP A61K 39/395 20060101ALI20140422BHJP A61K 51/00 20060101ALI20140422BHJP A61K 49/00 20060101ALI20140422BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140422BHJP A61P 35/00 20060101ALI20140422BHJP A61P 29/00 20060101ALI20140422BHJP A61P 37/02 20060101ALI20140422BHJP A61P 37/06 20060101ALI20140422BHJP A61P 31/00 20060101ALI20140422BHJP A61P 31/12 20060101ALI20140422BHJP A61P 37/08 20060101ALI20140422BHJP G01N 33/53 20060101ALI20140422BHJP G01N 33/532 20060101ALI20140422BHJP JPC12N15/00 AC07K16/18C07K16/46C12P21/08C07K16/22C07K16/28A61K39/395 NA61K49/02 AA61K49/00 AA61P43/00 105A61P35/00A61P29/00A61P37/02A61P37/06A61P31/00A61P31/12A61P37/08G01N33/53 DG01N33/532 A 14 1 OL 27 4B024 4B064 4C085 4H045 4B024AA01 4B024AA11 4B024AA12 4B024AA14 4B024BA43 4B024BA53 4B024CA07 4B024CA10 4B024DA03 4B024EA04 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA01 4B064DA05 4B064DA13 4B064DA14 4B064DA15 4C085AA14 4C085AA16 4C085BB01 4C085BB11 4C085BB31 4C085CC23 4C085DD62 4C085EE01 4C085HH03 4C085HH11 4C085KA03 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045BA41 4H045DA76 4H045EA22 4H045EA28 4H045EA29 4H045EA50 4H045EA51 4H045EA53 4H045FA74 本発明は、二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体、二重特異性抗体の製造方法、二重特異性抗体の薬学的用途に関する。 モノクローナル抗体は新薬市場の目玉商品となっており、多様な標的に対する薬としてとして開発されている。しかしながら多くの場合、例えば、満足すべき薬効を示せないでいたり、抗体生産に費用がかかったりするなど、新薬の開発は制限されている。かような問題の1つの解決法として、1980年半ば以来、二重特異性抗体に対する研究が絶え間なく進められているが、多くの努力にもかかわらず、有力な技術は未だに現れていない。 従来の二重特異性抗体の製造法では、同質の二重特異性抗体を量産することが困難であったり、あるいは低い効能と副作用とによって実用化が困難であったりした。近年、抗体工学技術の発達に力を借りて、競争力のある新たな抗体プラットフォームが現れているが、依然として検証段階である。 従って、従来技術によってさえも、少なくとも2つの異種抗原または同一抗原の2個のエピトープに対して特異性を有する抗体、該抗体を調製するための新たなプラットフォーム、及びそれを製造するための方法の開発が要求されている。 本発明は、2つの抗原結合部位を含む二重特異的抗原結合蛋白質複合体を提供することを課題とする。 本発明は、前記二重特異的抗原結合蛋白質複合体をコーディングするポリヌクレオチドを提供することを更なる課題とする。 本発明は、組み換え発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を使用した二重特異性抗体の製造方法を提供することを課題とする。 本発明は、前記二重特異性抗体を含む薬剤組成物を提供することを課題とする。 本発明は、前記二重特異性抗体を含む診断用組成物を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ある種の二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体によって上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。本発明は、以下の内容をその骨子とする。(1)第1抗原結合部位をN末端に含む第1ポリペプチド、第2抗原結合部位をN末端に含む第2ポリペプチド、並びに前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを連結するリンカー、を含み、前記リンカーは両末端のうち少なくとも1つの末端にタグを含み、前記タグが前記第1ポリペプチドのC末端及び前記第2ポリペプチドのN末端のうち少なくとも1つに連結され、前記タグは切断可能なアミノ酸配列を含む、二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体。(2)前記リンカーは、両末端のうち1つの末端に第1タグを、及び前記第1タグとは反対の末端に第2タグを含み、前記第1タグが前記第1ポリペプチドのC末端に連結され、前記第2タグが前記第2ポリペプチドのN末端に連結され、前記第1タグ及び前記第2タグは切断可能なアミノ酸配列をそれぞれ含む、(1)に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。(3)前記第1抗原結合部位及び前記第2抗原結合部位のうち少なくとも一つが、Fab、Fab’、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される、(1)または(2)に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。(4)前記タグは、ユビキチン、ユビキチン類似蛋白質、及びTEV切断ペプチドからなる群から選択されることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。(5)前記第1抗原結合部位及び第2抗原結合部位が、互いに独立して、VEGF、EGFR、EpCAM、CCR5、CD19、HER−2neu、HER−3、HER−4、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、βhCG、ルイス−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシドGD3、9−O−アセチル−GD3、GM2、グローボH、フコシルGM1、ポリSA、GD2、炭素脱水酵素IX、CD44v6、ソニックヘッジホッグ、Wue−1、形質細胞抗原、(膜結合)IgE、メラノーマ結合コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF−α前駆体、STEAP、メソテリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly−6、デスモグレイン4、E−カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカー、ミュラー管抑制物質(MIS)II型受容体、sTn(シアル化Tn抗原;TAG−72)、線維芽細胞活性化蛋白質(FAP)、エンドシアリン、EGFRvIII、LG、SAS及びCD63、からなる群から選択される標的抗原に、特異的に結合する部位を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。(6)前記リンカーが、1から100個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドであることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。(7)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが、配列番号8から配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。(8)(1)〜(7)のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体をコーディングするポリヌクレオチド。(9)前記ポリヌクレオチドが、配列番号45から配列番号81からなる群から選択される塩基配列を有することを特徴とする、(8)に記載のポリヌクレオチド。(10)(8)または(9)に記載のポリヌクレオチドを挿入させた組み換え発現ベクターを構築する段階と、前記組み換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換させる段階と、前記形質転換された宿主細胞を培養する段階と、前記宿主細胞で発現された二重特異性抗体を回収する段階と、を含む二重特異性抗体の製造方法。(11)(10)に記載の製造方法によって製造された二重特異性抗体の治療的有効量、及び薬剤学的に許容できるキャリアー、賦形剤または安定化剤を含み、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される、病気の予防用または治療用薬剤組成物。(12)前記二重特異性抗体が、第2活性化剤と結合された状態で存在し、前記第2活性化剤を病巣に標的化することを特徴とする、(11)に記載の薬剤組成物。(13)(10)に記載の製造方法によって製造された二重特異性抗体を含む、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される、病気の診断用組成物。(14)前記組成物が、インビボ(in vivo)投与用であり、検出可能な標識が接続された前記二重特異性抗体を含むことを特徴とする、(13)に記載の診断用組成物。 本発明によれば、2個の抗原、または同一抗原の2個のエピトープを同時に認識する二重特異性抗原結合蛋白質複合体または二重特異性抗体、及びその製造方法が提供される。該二重特異性抗原結合蛋白質複合体または二重特異性抗体は、細胞増殖疾患または免疫疾患のような障害の診断、予防または治療の目的に使用される。図1は、本発明に係る二重特異性抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の概路図である。図2は、本発明に係る二重特異性抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の概路図である。図3Aは、本発明に係る二重特異性抗原結合蛋白質複合体のアミノ酸配列構造を示している。図3Bは、本発明に係る二重特異性抗原結合蛋白質複合体のアミノ酸配列構造を示している。図4は、本発明に係る二重特異性抗体の発現及び精製についてのイオン交換クロマトグラフィーの結果を示す。図5は、本発明に係る二重特異性抗体をβ−メルカプトエタノール未処理群(−)、β−メルカプトエタノール処理群(+)に分けた、SDS−PAGEの結果を示す。図6は、二重特異性抗体の二重抗原結合反応を示したセンサーグラム(sensorgram)である。 添付の図面にも例示されている本発明に係る態様について、より詳細に述べるが、類似の参照数字は全体を通して類似の要素について述べている。この点において、本発明に係る態様は別の形態を有してもよく、本明細書において説明される記述に限定されて解釈されるものではない。従って、図面を参酌することによって、単に本発明を説明するために本発明の態様は以下に記述される。本明細書で使用される「及び/または」という用語は、関連するリスト項目のいずれかまたは一つ以上の組み合わせをすべて含む。「少なくとも一つの」のような用語は、要素のリストの前で使用される場合は、要素のリスト全体を修正(modify)し、リストの個別要素を修正するのではない。 本明細書で開示される例示的な態様は、説明的な意味でのみ解釈され、限定の目的とされるべきでないと理解されるべきである。各態様の特徴や側面についての記述は、他の態様の他の類似する特徴や側面についても概して利用できると考えられる。 本発明の一態様は、第1抗原結合部位をN末端に含む第1ポリペプチド、第2抗原結合部位をN末端に含む第2ポリペプチド、並びに前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを連結するリンカー、を含み、前記リンカーは両末端のうち少なくとも1つの末端にタグを含み、前記タグが前記第1ポリペプチドのC末端及び前記第2ポリペプチドのN末端のうち少なくとも1つに連結され、前記タグは切断可能なアミノ酸配列を含む、二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体を提供する。 本発明の他の態様は、第1抗原結合部位をN末端に含む第1ポリペプチド、第2抗原結合部位をN末端に含む第2ポリペプチド、並びに前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを連結するリンカー、を含み、前記リンカーは両末端のうち1つの末端に第1タグを、及び前記第1タグとは反対の末端に第2タグを含み、前記第1タグが前記第1ポリペプチドのC末端に連結され、前記第2タグが前記第2ポリペプチドのN末端に連結され、前記第1タグ及び前記第2タグは切断可能なアミノ酸配列をそれぞれ含む、二重特異性抗原結合蛋白質複合体を提供する。 本明細書において使用される用語「二重特異性(bispecific)」は、2個の互いに異なる抗原、または同一抗原でも、互いに異なるエピトープ(epitope)に対する結合特異性を有することを指す。エピトープは、2種の互いに異なる抗原に起源するか、あるいは同一抗原に起源するものでもある。本明細書において、用語「二重特異性抗原結合蛋白質複合体(単に「蛋白質複合体」とも称する。)」及び「二重特異性抗体」は、全長(full length)抗体、及び抗原結合部位を有するそのフラグメントを有する全ての調製産物を意味する。抗体は、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化(humanized)抗体またはキメラ抗体でもある。 本明細書において使用される用語「抗原結合部位(antigen binding site)」は、抗原またはエピトープが結合する免疫グロブリン分子内の部位を意味し、抗原結合部位は相補性決定領域(CDR)を含むこともある。CDRは、免疫グロブリンの重鎖(heavy chain)及び軽鎖(light chain)の高頻度可変性領域(hypervariable region)に見出されるアミノ酸配列を意味する。重鎖及び軽鎖は、それぞれ3個のCDR(CDRH1,CDRH2,CDRH3;CDRL1,CDRL2,CDRL3)を含む。CDRは、抗原が結合し、または抗体がエピトープに結合するための主要な接触残基(contact residue)を提供する。本明細書において使用される用語「重鎖」は、抗原に対する特異性を決定するアミノ酸配列を有する可変領域(VH)、及び3個の不変ドメイン(CH1,CH2及びCH3)を有する不変領域を含む全長重鎖、並びにこれらのフラグメントをいずれも含む意味に解釈される。また、本明細書で使用される用語「軽鎖」は、抗原に対する特異性を決定するアミノ酸配列を有する可変領域(VL)、及び不変領域(CL)を含む全長軽鎖、並びにこれらのフラグメントをいずれも含む意味に解釈される。 本発明の一態様によれば、蛋白質複合体及び二重特異性抗体は、互いに異なる抗原または互いに異なるエピトープに結合する第1抗原結合部位及び第2抗原結合部位を含んでもいる。抗原結合部位に結合される抗原は、正常状態では発現されないか、または低レベルで発現されるが、特定の病的症状、例えば、腫瘍疾患または免疫疾患などで発現が増加する抗原でもある。そのような抗原は、VEGF、EGFR、EpCAM、CCR5、CD19、HER−2neu、HER−3、HER−4、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、βhCG、ルイス(Lewis)−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシド(ganglioside)GD3、9−O−アセチル−GD3、GM2、グローボ(Globo)H、フコシル(fucosyl)GM1、ポリSA、GD2、炭素脱水酵素IX(MN/CA IX)、CD44v6、ソニックヘッジホッグ(SonicHedgehog、Shh)、Wue−1、形質細胞抗原(plasma Cell Antigen)、(膜結合性)IgE、メラノーマ結合コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP:melanoma chondroitin sulfate proteoglycan)、CCR8、TNF−α前駆体、STEAP、メソテリン(mesothelin)、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA:prostate stem cell antigen)、Ly−6、デスモグレイン(desmoglein)4、E−カドヘリンネオエピトープ(E−cadherin neoepitope)、胎児アセチルコリン受容体(fetal acetylcholine receptor)、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカー、ミュラー管抑制因子(MIS:Muellerian inhibitory substance)、MISII型受容体、sTn(シアル化Tn抗原;TAG−72)、線維芽細胞活性化蛋白質(FAP)、エンドシアリン(endosialin)、EGFRvIII、LG、SAS及びCD63からなる群から選択されることが好ましい。すなわち、本発明の一態様では、第1抗原結合部位及び第2抗原結合部位が、互いに独立して、VEGF、EGFR、EpCAM、CCR5、CD19、HER−2neu、HER−3、HER−4、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、βhCG、ルイス−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシドGD3、9−O−アセチル−GD3、GM2、グローボH、フコシルGM1、ポリSA、GD2、炭素脱水酵素IX、CD44v6、ソニックヘッジホッグ、Wue−1、形質細胞抗原、(膜結合)IgE、メラノーマ結合コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF−α前駆体、STEAP、メソテリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly−6、デスモグレイン4、E−カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカー、ミュラー管抑制物質(MIS)II型受容体、sTn(シアル化Tn抗原;TAG−72)、線維芽細胞活性化蛋白質(FAP)、エンドシアリン、EGFRvIII、LG、SAS及びCD63、からなる群から選択される標的抗原に、特異的に結合する部位を有する。 一定の生理学的効果を達成するために、互いに異なる抗原に結合する蛋白質複合体及び二重特異性抗体は、2種の抗原−抗体反応の相乗作用を誘発するか、または一連の関連した作用を可能にする抗原の組み合わせを使用することもある。このような組み合わせは、例えば、腫瘍細胞抗原(tumor cell antigen)及び細胞毒性誘発性分子抗原(cytotoxic triggering molecule antigen)を標的にする二重特異性抗体(bispecific antibodiy:BsAb)、例えば、抗FcγRI/抗CD15、抗p185HER2/抗FcγRIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B細胞(1D10)、抗CD3/抗p185HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR−3、抗CD3/抗L−D1(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラノサイト刺激ホルモンアナログ(melanocyte stimulating hormone analogue)、抗EGFR/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/抗MoV18、抗神経細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合蛋白質(FBP)/抗CD3、抗pan癌腫関連抗原(AMOC−31)/抗CD3;腫瘍細胞抗原及び抗毒素抗原を標的にするBsAb、例えば、抗サポニン/抗Id−1、抗CD22/抗サポニン、抗CD7/抗サポニン、抗CD38/抗サポニン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロンα(IFN−α)/抗ハイブリードマイディオタイブ(anti−hybridoma idiotype)、抗CEA/抗ビンカアルカロイド(Vinca alkaloid);酵素によって活性化される可変性プロドラッグのためのBsAb、例えば、抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(ミトマイシンホスファターゼプロドラッグのミトマイシンアルコールへの変化を触媒する);フィブリン分解剤として使用されるBsAb、例えば、抗フィブリン/抗組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤(uPA);細胞表面受容体中の免疫コンプレックスを標的にするためのBsAb、例えば、抗低密度リポ蛋白質(LDL)/抗Fc受容体(例:FcγRI、FcγR11、またはFcγRIII);感染性疾病の治療のためのBsAb、例えば、抗CD3/抗ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV:herpes simplex virus)、抗T細胞受容体:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗FcγR/抗HIV;インビトロ(in vitro)またはインビボ(in vivo)で腫瘍検出のためのBsAb、例えば、抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185HER2/抗ハプテン(hapten);ワクチンアジュバント(adjuvant)としてのBsAb;及び診断手段としてのBsAb、例えば、抗ラビットIgG/抗フェリチン、抗ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/抗サブスタンスP、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗β−ガラクトシダーゼなどが挙げられる。 本発明の一態様によれば、抗原結合部位を含むポリペプチドは、完全な抗体または完全な抗体のフラグメント(抗原結合性フラグメント)でもある。 完全な抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であり、軽鎖と重鎖がそれぞれジスルフィド結合(S−S結合)で連結される。抗体の不変領域は、重鎖不変領域と軽鎖不変領域とに分けられ、重鎖不変領域にはガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びイプシロン(ε)のタイプがあり、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)がある。軽鎖の不変領域にはカッパ(κ)及びラムダ(λ)のタイプがある。 本明細書で使用される用語「抗原結合性フラグメント(antigen binding fragment)」は、抗原結合部位を含むことにより抗原結合能力がある完全な抗体の、一部分を指す。本定義に含まれる抗原結合性フラグメントは、(i)軽鎖可変領域(VL)、軽鎖不変領域(CL)、重鎖可変領域(VH)、及び重鎖の第1不変領域(CH1)を有するFabフラグメント;(ii)CH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を有するFabフラグメントであるFab’フラグメント;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインを有するFdフラグメント;(iv)VHドメイン、CH1ドメイン及びCH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を有するFd’フラグメント;(v)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインを有する最小の抗体フラグメントであるFvフラグメント(二本鎖Fvは、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが非共有結合で連結されており、一本鎖Fv(scFv)は、一般的には、重鎖変領域と軽鎖可変領域とがペプチドリンカーを介して共有結合で連結され、または一本鎖FvがC末端で直接に連結されていることにより二本鎖Fvのようにダイマーを形成することもある);(vi)VHドメインによって構成されたdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341、544−546(1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2個のFab’フラグメントを含む、二価(bivalent)フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(ix)一本鎖抗体分子(例えば、一本鎖Fv(scFv)(Bird et al.,Science 242:423−426(1988);Huston et al.,PNAS(USA)85:5879−5883(1988));(x)同一のポリペプチド鎖に軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含む、2個の抗原結合部位を有する「二特異性抗体(diabody)」(Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993));(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に1対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む「線形抗体」(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995));並びに(xii)VH、CH2及びCH3によって構成された重鎖のみを含む「単一ドメイン抗体(single−domain antibody)」が挙げられる。抗原結合性フラグメントは、プロテアーゼを利用して得ることができ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すればFabを得ることができ、ペプシンで切断すれば、F(ab’)2を得ることができる)、組み換えDNA技術によってフラグメントを調製することもできる。 本発明の一態様によれば、抗原結合部位を含むポリペプチドは、単一ドメイン抗体(single−domain antibody)でもある。本明細書で使用される用語「単一ドメイン抗体」は、1つの可変領域(VH)モノマーを有し、軽鎖及び重鎖のCH1領域が存在しない、約110個のアミノ酸で構成されるペプチド鎖である。単一ドメイン抗体は、重鎖抗体、従来の4鎖抗体から由来した単一ドメイン抗体、人工抗体、及び抗原に由来していない単一ドメインスカフォールド(scaffold)を含む。単一ドメイン抗体分子は、IgG分子の約1/10倍サイズと非常に小さく、非常に安定した一本鎖ポリペプチドであって、極限pHまたは温度条件でも安定性を維持する。また、従来の抗体とは異なり、単一ドメイン抗体分子はプロテアーゼの作用に対して耐性を有し、インビトロでの高い収率により量産が可能である。単一ドメイン抗体は、抗原結合部位及び結晶性フラグメント(Fc)領域を含む。抗原結合部位は、例えば、結合抗原がVEGFである場合は、添付の配列リストに示される配列番号2または3のアミノ酸配列を有することがあり、結合抗原がEFGRである場合は、配列番号5または6のアミノ酸配列を有することがある。Fc領域は、ヒンジ領域(hinge region)、2個の不変領域(CH2及びCH3)から構成され、例えば、添付された配列リストの配列番号4のアミノ酸配列を有することができる。 これらの抗原結合性フラグメントのうち、好ましくは第1抗原結合部位及び第2抗原結合部位のうち少なくとも一つが、Fab、Fab’、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される。 本発明の一態様では、第1抗原結合部位及び/または第2抗原結合部位は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列、並びに配列番号2、配列番号3、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、抗原結合能力を有するアミノ酸配列、からなる群から選択される。本発明の一態様によれば、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、配列番号8から配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することもある。また、本発明の一態様によれば、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、配列番号8から配列番号44のアミノ酸配列、並びに配列番号8から配列番号44のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、抗原結合能力を有するアミノ酸配列、からなる群から選択される。 本明細書で使用される用語、「タグ(tag)」は、融合蛋白質(第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチド)の末端に結合された蛋白質またはポリペプチドを意味し、該タグは互いに異なる融合蛋白質間を連結するための媒介になる。タグは、ポリペプチドのN末端またはC末端に連結されたものでもある。本発明の一態様によれば、タグは、インビトロまたはインビボで切断可能でもある。インビトロまたはインビボでの切断はプロテアーゼによることでもある。 本発明の一態様によれば、タグは、ユビキチン(Ub:ubiquitin)、ユビキチン類似蛋白質(ubiquitin−like protein)及びTEV切断ペプチド(TEV cleavage peptide)からなる群から選択されてもよい。ユビキチン(Ub)は、自然界で発見される最も保存性のある(conservative)蛋白質であり、76個のアミノ酸配列からなり、昆虫、ニジマス及び人間のような進化的に多様な種間の完璧な相同性(homology)を示す水溶性蛋白質である。また、ユビキチンは、pHの変化に対して安定した蛋白質として知られており、高温でも容易には変性せず、プロテアーゼに対しても安定性があるが、複数のプロテアーゼによって切断可能であることは当業者に知られており、インビトロまたはインビボで切断が可能なアミノ酸配列を有する。 ユビキチンまたはユビキチン類似蛋白質は、野生型ユビキチン、野生型ユビキチン類似蛋白質、突然変異ユビキチン及び突然変異ユビキチン類似蛋白質からなる群から選択される。本発明の一態様によれば、ユビキチンは、配列番号7のアミノ酸配列からなる。ユビキチン類似蛋白質は、ユビキチンとその特性が類似した蛋白質であり、例えば、Nedd8、SUMO−1、SUMO−2、NUB1、PIC1、UBL3、UBL5及びISG15からなる群から選択される。突然変異ユビキチンは、野生型ユビキチンのアミノ酸配列を、他のアミノ酸配列に変えたものを意味し、例えば、野生型ユビキチンのLysをArgで置換したユビキチン、野生型ユビキチンC末端RGGをRGAに変更させたユビキチンを含む。本発明の一態様によれば、野生型ユビキチンのLysをArgで置換した突然変異型ユビキチンで、該置換は、野生型ユビキチンの配列上6番目、11番目、27番目、29番目、33番目、48番目及び63番目に位置するLysで、それぞれ独立して、または組み合わせて起こることがある。 本発明の一態様によれば、ユビキチンまたはユビキチン類似蛋白質は、プロテアーゼによってインビトロまたはインビボで切断可能なアミノ酸配列を、好ましくはアミノ酸配列のC末端に含む。プロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列は、当業者に公知の検索データベースで確認することができる。例えば、http://www.expasy.org/tools/peptidecutter/peptidecutter_enzymes.htmlで検索されるプロテアーゼ、及びその切断可能なアミノ酸配列を利用することができる。切断可能なアミノ酸配列が含まれることで、蛋白質複合体は、インビトロまたはインビボでタグが切断され、蛋白質複合体が、二重特異性抗体としての三次構造を形成し、その機能を遂行することができる。 本発明の一態様によれば、前記蛋白質複合体は、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを互いに連結するリンカーを含んでもよい。リンカーは、ペプチドリンカーでもある。ペプチドリンカーは、当業者に公知の多様なリンカーを利用することができ、例えば、複数のアミノ酸からなるリンカーでもある。本発明の一態様によれば、リンカーは、例えば、1個から100個、または2個から50個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドでもある。 ペプチドリンカーは、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとの間を十分な距離に離隔させることで、機能を発揮する二次構造または三次構造に折り畳まれる。例えば、ペプチドリンカーは、Gly、Asn及びSerを含むことがあり、Thr及びAlaのような中性アミノ酸を含むこともある。ペプチドリンカーに適するアミノ酸配列は、当業者に知られている。一方、リンカーの長さは、融合蛋白質(抗原結合能を有するポリペプチド)の機能に影響を及ぼさない限度内で、その長さを多様に決定することができる。 本発明の一態様によれば、リンカーは、両末端のうち、少なくとも1つの末端にタグを含む。また、タグは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの末端に連結され、切断可能なアミノ酸配列を含む。 本発明の他の具体例では、蛋白質複合体は、分泌のためのシグナル配列をさらに含んでもよい。 分泌のためのシグナル配列は、蛋白質コーディング配列のN末端に連結されることで、発現される蛋白質またはペプチドが細胞膜または細胞外に分泌されるように誘導する配列を意味し、18個から30個のアミノ酸によって構成されたペプチド配列でもある。細胞質外に輸送可能な全ての蛋白質は、いずれも特徴的なシグナル配列を有し、該シグナル配列は、シグナルペプチダーゼによって細胞膜にて切断される。一般的に、宿主細胞内では自然には発現されない外来蛋白質の場合、該蛋白質をペリプラズム若しくは培養液に分泌させるためのシグナル配列またはその変形配列が使用される。 本発明の態様では、例えば抗原特異性などの意図する機能または特性が実質的に変わらない範囲で、蛋白質複合体のアミノ酸配列を適切に変形させることができる。アミノ酸の変形は、アミノ酸残基置換体の類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、及び/または大きさなどに基づいて生じ、このため、アミノ酸の疎水性インデックス(hydrophobic index)が考慮されてもよい。該変形は、例えば、一部アミノ酸の置換、欠失、及び/またはアミノ酸の付加でもあり、特に置換は、保存的置換(conservative substitution)である。本明細書において使用される用語「保存的置換」は、結果として生じる分子の生物学的活性を有意に変更させない置換であり、置換されるアミノ酸が、蛋白質の三次構造や局所電荷状態に有意の影響を与えないものを指す。分子活性を全体的に変更させないアミノ酸置換は、本願技術分野に知られており、例えば、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Glyの間の置換が挙げられる。 本発明の他の態様は、二重特異性抗原結合蛋白質複合体をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。 本明細書にて使用される用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖の形態で存在するデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを意味する。ポリヌクレオチドは、RNAゲノム配列、DNA(gDNA及びcDNA)及びDNAから転写されたRNA配列を含み、特別に他の言及がない限り、糖または塩基の部位が変形されたアナログ(analogue)も含む。本発明の一態様では、ポリヌクレオチドは、軽鎖ポリヌクレオチドである。 ポリヌクレオチドは、蛋白質複合体のアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列だけではなく、その配列に相補的な配列も含む。相補的な配列は、完璧に相補的な配列だけではなく、実質的に相補的な配列も含み、それは、当業者に公知のストリンジェント(stringent)な条件下で、抗原結合能力を有する該蛋白質複合体のアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列とハイブリダイズできる配列を意味する。ストリンジェント条件とは、例えば、モレキュラークローニングラボラトリーマニュアル第3版(Molecular Cloning Laboratory Manual 3rd Edition)(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載されている条件が挙げられる。例えば、ハイブリダイゼーションバッファー(5×SSC(3M NaCl、0.3Mクエン酸を20×SSCの組成とする。)、0.1重量%N−ラウロイルサルコシン、0.02重量%SDS、2重量%ブロッキング試薬、50重量%ホルムアミド)中で、55〜70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件である。インキュベーション後の洗浄には、例えば1×SSC溶液(0.1重量%SDS)を洗浄バッファーとして用いることができる。 また、蛋白質複合体のアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列は、変形されてもよい。該変形は、ヌクレオチドの付加、欠失、非保存的置換または保存的置換であって、コーディングされる蛋白質複合体が抗原結合能力を有するものを含む。蛋白質複合体のアミノ酸配列をコーディングするポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むものであると解釈される。実質的な同一性とは、蛋白質複合体をコーディングするヌクレオチド配列と、任意の他の配列とを最大限対応するようにアライン(align)し、当業者に一般的に利用されるアルゴリズムを利用してアラインされた配列を分析した場合、80%以上の相同性、90%以上の相同性または95%以上の相同性を示す配列でもある。 本発明の一態様によれば、ポリヌクレオチドは、配列番号45から配列番号81からなる群から選択される塩基配列を有するものでもある。本発明の一態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号8から配列番号44のアミノ酸配列、並びに配列番号8から配列番号44のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、抗原結合能力を有するポリペプチドを含む二重特異性抗原結合蛋白質複合体をコーディングする。 本発明に係る蛋白質複合体の製造は、ポリヌクレオチドを使用し、当業者に公知の遺伝子工学技術及び化学的合成を介して行われる。遺伝子工学技術では、クローニングベクター(vector)または発現ベクターを構築し、該ベクターによって宿主細胞を形質転換させ、目的蛋白質を発現させるために宿主細胞を培養することでもある。 従って、本発明の一態様は、前述の蛋白質複合体をコーディングするポリヌクレオチド配列を挿入させた組み換え発現ベクターを構築する段階、前記組み換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換させる段階、前記形質転換された宿主細胞を培養する段階、及び前記宿主細胞で発現された前記二重特異性抗体を回収する段階を含む、二重特異性抗体の製造方法を提供する。 本明細書における用語「ベクター」は、目的遺伝子を発現させるための手段であり、宿主細胞内に導入されたときに、ベクター及び細胞内部に独立してクローニング及び挿入された外来DNAのコピーを生産する。本明細書において使用される用語「組み換え発現ベクター(recombinant expression vector)」は、特定蛋白質を増幅するため外来DNAフラグメントが挿入されたベクターであり、該外来DNAフラグメントは、本発明に係る蛋白質複合体をコーディングするポリヌクレオチドでもある。発現またはクローニングを目的にしたベクターシステムの構築方法は、当業者に知られている。 ベクターは、本発明係るポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された(operably linked)調節配列を含んでもよい。 本明細書における用語「調節配列」は、コーディング配列(標的ポリペプチド、蛋白質をコーディングする核酸配列)を発現するのに必要な核酸配列を指し、調節配列の性質は宿主生物によって異なる。原核生物では、調節配列は、一般的にプローモーター、リボソーム結合部位及び転写/翻訳ターミネーター(terminators)を含む。真核生物では、調節配列は、一般的にプローモーター、ターミネーター、及び一部の場合では、エンハンサー(enhancer)、トランス活性化因子(transactivator)及び/または転写因子を含む。本明細書における用語「作動可能に連結された(operatively linked)」は、前構成要素が意図したとおりに機能するように、機能的結合によって生じる並置(juxtaposition)を意味する。コーディング配列に作動可能に連結された調節配列は、コーディング配列の発現が、調節配列と両立することができる条件下でなるように連結される。 原核細胞を宿主として使用する場合、組み換えベクターは転写を進めることができる強力なプローモーター(例えば、tacプローモーター、lacプローモーター、lacUV5プローモーター、lppプローモーター、pLλプローモーター、pRλプローモーター、rac5プローモーター、ampプローモーター、recAプローモーター、SP6プローモーター、trpプローモーター及びT7プローモーターなど);翻訳開始のためのリボソーム結合サイト;及び転写/翻訳ターミネーターを含んでもよい。宿主細胞としてE.coli(例えば、HB101、BL21、DH5αなど)が利用される場合、トリプトファン生合成経路のE.coliプローモーター部位及びオペレーター部位(Yanofsky,C.(1984)、J.Bacteriol.,158:1018−1024)、及び/またはファージλの左向きプローモーター(pLλプローモーター;Herskowitz,I.及びHagen,D.(1980),Ann.Rev.Genet.,14:399−445)が調節領域(調節配列)として利用されてもよい。真核細胞を宿主として使用する場合、哺乳動物前駆細胞由来のプローモーター(例:メタロチオネインプローモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプローモーター(例:アデノウイルス後期プローモーター、ワクシニアウイルスプローモーター7.5K、SV40プローモーターまたはサイトメガロウイルスプローモーター、及びHSVのtkプローモーター)が利用され、転写ターミネーター配列としてポリアデニル化配列を有することもある。 調節配列以外に加えて、組み換え発現ベクターは、制限酵素部位、薬物抵抗性遺伝子のようなマーカー遺伝子、分泌シグナル配列及び/またはリーダー(leader)配列などをさらに含むこともある。制限酵素部位は、制限酵素によって特異的に認識される特定の塩基配列を指す。制限酵素部位は、例えば、EcoRI、BamHI、HindIII、KpnI、NotI、PstI、SmaI、XhoIのような制限酵素によって特異的に認識される配列である。マーカー遺伝子は選択マーカーとして機能し、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及び/またはテトラサイクリンのような薬物に対する薬剤耐性遺伝子でもある。分泌シグナル配列またはリーダー配列は、合成された蛋白質を細胞区画(例えば、ペリプラズム空間(periplasmic space))に移動させたり、または細胞外の培養培地に合成された蛋白質が分泌したりするように誘導する配列であり、その配列は、本発明に係るポリヌクレオチド配列のコーディング配列に添加されてもよい。該配列は、導入するDNA、宿主細胞の種類、及び/または培養培地の条件などによって、当業者によって適切に選択される。 前述の要素を具備した適切な発現ベクターは知られており、例えば、オカヤマ−バーグ(Okayama−Berg)cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia);pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen);pEF−DHFR、pEF−ADA若しくはpEF−neo、あるいはpSPORT1(GIBCO BRL)が挙げられる。 本発明のある態様では、宿主細胞は、組み換え発現ベクターまたは二重特異性抗原結合蛋白質複合体で、宿主を形質転換またはトランスフェクションさせることで調製される。 宿主細胞は、組み換えベクターを安定化して継続的にクローン化及び発現する、当業者に知られた任意の原核生物細胞または真核細胞でもある。原核生物は、蛋白質の発現を目的としてDNA分子またはRNA分子が形質転換されたバクテリアを指す。例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)及びバチルス チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida))、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス カルノーサス(Staphylocus carnosus))、ラットチフス菌(S.typhimurium)または霊菌(Serratia marcescens)などがある。真核細胞は、酵母、高等植物、昆虫及び哺乳動物細胞を含む。本発明の一態様では、宿主細胞は、哺乳動物細胞でもある。有用な哺乳動物細胞としては、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1細胞株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓細胞株(HEK−293細胞または懸濁培養で成長するようにサブクローニングされたhEK−293細胞;Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1、ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頚部癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(HepG2、HB 8065);マウス乳房癌細胞(MMT060562、ATCC CCL 51);TR1細胞(Mather et al.,Annals.N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及び/またはヒト肝腫瘍細胞株(HepG2)などを含んでもよい。 組み換え発現ベクターの宿主細胞への形質転換は、例えば、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション(DEAE−dextran mediated transfection)、エレクトロポレーション(electroporation)、形質導入(transduction)、リン酸カルシウムトランスフェクション(calcium phosphate transfection)、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション(cationic lipid−mediated transfection)、スクレープローディング(scrape loading)及び/または感染(infection)によって行われる。 宿主細胞の培養は、当業者に公知の適切な培地及び培養条件を使用して行われる。市販の培地、例えば、Ham’s F10(Sigma)、MEM(最小必須培地、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、Sigma)などが利用される。必要な場合、ホルモン若しくはその他の成長因子、塩、緩衝剤、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素及び/またはグルコースなどが、公知の適する濃度で補充されてもよい。培養条件、例えば、温度及び/またはpHは、選択された宿主細胞によって、当業者によって適切に決定される。 宿主細胞によって発現された二重特異性抗原結合蛋白質複合体は、分泌シグナルペプチドによって細胞外に分泌され、その場合、培養液または培地から回収することによって蛋白質複合体は得られる。例えば、蛋白質フィルタを使用して培養上清液を濃縮し、抗体蛋白質を分離することができる。しかし、分泌シグナル配列無しで発現された場合、蛋白質複合体は細胞内ペリプラズム空間に存在するので、細胞溶解物(cell lysate)から直接回収されてもよい。ペリプラズム空間へ分泌された抗体を単離する工程は当業者に知られており、一般的に、微粒子フラグメント(宿主細胞のフラグメントまたは分解された宿主細胞)を遠心分離または限外濾過によって除去することができる。 選択肢として、培養物から得られた二重特異性抗体を、当業者に知られた方法によって、さらに精製することができる。例えば、回収される抗体次第で、二重特異性抗体に、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親水性、疎水性及び/またはサイズ排除)、クロマトフォーカシング、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−PAGE(poly−acrylamide gel electrophoresis)、分画溶解(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)のような、通常の蛋白質精製技術を使用することができる。本発明の一態様では、二重特異性抗体は、アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。アフィニティーリガンドとして、プロテインAの適合性は、抗体に存在する免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプによって異なる。アフィニティーリガンドが結合するマトリックスは、アガロースでもあるが、それに限定されるものではなく、機械的に安定したマトリックス(例えば、調節されたポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン)は、アガロースと比べて、流速及びプロセシング時間が向上することもある。 本発明の他の態様は、前述の二重特異性抗体、及び薬剤学的に許容可能なキャリアー、賦形剤または安定化剤を含む薬剤組成物に関する。 該薬剤組成物は、治療メカニズムとして、二重特異性抗体の二重特異性抗原−抗体結合によって引き起こされる生理学的効果を有することで、疾患の予防や治療に使用されたり、または該組成物は、抗原−抗体反応によって病巣を標的化することに使用されたりする。本発明の一態様では、該症状または疾患は、例えば、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患(graft−versus−host disease)及び宿主対移植片疾患(host−versus−graft disease)が挙げられる。 例えば、VEGF及びEGFRに特異的に結合する二重特異性抗体の場合、二重特異性抗体を含む薬剤組成物は、血管新生の抑制及び/または上皮細胞増殖の抑制によって改善される疾患、例えば、腫瘍疾患の予防及び/または治療に使用される。腫瘍疾患は、肺扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮細胞癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃腺癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠腫(glioma)、グリア芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌若しくは子宮癌、唾液腺癌、腎細胞癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌腫及び多様なタイプの頭頚部癌;B細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)非ホジキンリンパ腫、中級/濾胞性非ホジキンリンパ腫、中級拡散非ホジキンリンパ腫、高級免疫芽球性非ホジキンリンパ腫、高級リンパ芽球性非ホジキンリンパ腫、高級小非切断細胞性非ホジキンリンパ腫、バルキー病非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストロームマクログロブリン血症(Waldenstrom’s macroglobulinemia)を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄性白血病;移植後リンパ増殖性障害(PTLD);及び/若しくは母斑症(phacomatosis)と係わる血管内皮細胞の異常増殖、浮腫(脳腫瘍と係わる浮腫)並びに/またはメージュ症侯群(Meige syndrome)などでもある。 本発明の一態様では、薬剤組成物の二重特異性抗体は、第2活性化剤(機能性分子)と結合された状態で含まれてもよい。第2活性化剤は、対象疾患の予防活性または治療活性を示す任意の機能性分子でもあり、化合物、ペプチド、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質または無機粒子を含んでもよい。薬剤組成物において、二重特異性抗体それ自体が治療活性を有することもできるが、結合された第2活性化剤を、特定の病巣(病巣領域)に標的化(targeting)する機能を、二重特異性抗体は果たすことができる。病巣領域は、二重特異性抗体が特異的に結合する抗原が密集して分布する器官、組織、細胞などでもある。標的化された薬物は病巣に高濃度で存在することになるので、対投与量換算での薬効を上昇させることができる。従って、本発明に係る医薬組成物は薬剤耐性がある腫瘍の治療に有用であり、薬物の非特異的分布に起因する副作用及び有害薬剤反応を低減させることができる。 薬剤組成物は、意図した純度を有する二重特異性抗体を薬剤学的に許容可能なキャリアー、賦形剤または安定化剤と混合して調製されてもよい。薬剤学的に許容可能なキャリアー、賦形剤または安定化剤は、使用される投与量及び濃度において受容体に無毒性であり、リン酸、クエン酸及びその他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸及びメチオニン);防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールまたはm−クレゾール);低分子量(10残基未満)ポリペプチド;蛋白質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン);単糖類、二糖類及びその他炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩生産性カウンターイオン;金属錯体;及び/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM(登録商標)、PLURONICSTM(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG))を含んでもよい。それ以外にも、製剤化方法によって、一般的に使用される充填剤、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、及び/または界面活性剤が、当業者によって適切に選択されてもよい。 二重特異性抗体を含む本発明に係る薬剤組成物中の活性成分は、例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル、ゼラチンマイクロカプセル、ポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド薬物デリバリーシステム(リポソーム、アルブミン小胞子、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及び/若しくはナノカプセル)、またはマクロエマルジョンのようなコアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセルに封入(entrapping)させてもよい。 また、二重特異性抗体は、徐放性(extended−release)タブレットに製剤化されてもよい。徐放性タブレットは、例えば、抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透科性マトリックスでもある。マトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどの形態でもあり、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体、例えば、LUPRON DEPOTTM(登録商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドを含む注射可能なマイクロスフェア)、及び/またはポリD−(−)−3−ヒドロキシブチル酸でもある。カプセル化された抗体蛋白質が長期間体内に留まる場合、37℃の温度で湿気に露出される結果、抗体は変性または凝集し、生物学的活性を喪失し、免疫原性(immunogenicity)に変化が生ずることがあので、抗体安定化のための適切な方法が考慮される。例えば、凝集メカニズムが、チオジスルフィド交換を介した細胞間S−S結合形成であるときは、スルフヒドリル基を形成させ、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を調節し、適切な添加剤を使用すること、及び/または特定のポリマーマトリックスを開発することで、抗体を安定化させてもよい。 本発明の他の態様は、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される状態の予防または治療のために、治療的有効量の薬剤組成物を個体に投与する段階を含む、予防及び/または治療方法に関する。 本発明に係る薬剤組成物は、ラット、マウス、家畜、及び/または人間を含む個体に多様な経路で投与されてもよい。投与の全ての方式は予想可能なものであるが、例えば、経口、経直腸、静脈内、経鼻、腹腔内、皮下または局所への投与などが可能である。該組成物はまた、当該技術分野に知られた他の方法(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science最新版に記載された方法)を使用して投与されてもよい。 本明細書で使用される「治療的有効量」は、合理的な利益/リスクの比率で疾患の治療に十分な量を意味する。治療的有効量は、疾患の種類、重症度、発病時期、個体の年齢、体重、排泄速度、反応感応性、健康状態、及び/若しくは合併症のような患者側の要因;並びに/または薬物の活性、投与経路、投与期間、回数及び/若しくは併用薬物のような薬物側の要因;によって異なり、当業者が目的とする治療に応じて適切に選択することができる。投与量は、例えば、大人の体重を基準に、1日当たり0.001から100mg/kg範囲になるように、任意に数回に分けて投与することができる。 本発明のさらに他の態様は、前述の二重特異性抗体を含む、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される病態の診断用組成物に関する。 本発明の一態様によれば、該診断用組成物は生物学的試料に適用され、ある疾患で特異的に見出される抗原を検出するのに使用されてもよい。用語「生物学的試料」は、細胞、組織、全血、血清、血漿、組織剖検試料(脳、肌、リンパ節、及び脊髓など)、細胞培養上清、及び/または破裂した真核細胞などを含んでもよい。本発明に係る組成物の適用は、採取された生物学的試料を対象に、インビトロで行われるか、あるいは該組成物を被検個体内に投与し、インビボでも行われる。 本明細書で使用される用語「検出」は、本発明に係る診断用組成物の二重特異性抗体を生物学的試料と反応させ、抗原−抗体複合体の形成を確認することを意味し、公知の検出可能な標識(detectable label)及び検出方法によって行われる。検出方法は、比色法(colormetric method)、電気化学法(electrochemical method)、蛍光法(fluorimetric method)、発光法(luminometry)、粒子計数法(particle counting method)、肉眼測定法(visual assessment)またはシンチレーション計数法(scintillation counting method)などである。検出可能な標識は、酵素、蛍光物質、発光物質、リガンド、ナノ粒子または放射性アイソトープでもある。標識として使用される酵素は、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリンホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ及び/またはβ−ラクタマーゼが挙げられる。蛍光物質は、フルオレセイン、Eu3+、Eu3+キレートまたはクリプテートを含んでもよい。発光物質は、アクリジニウムエステル及び/またはイソルミノール誘導体を含んでもよく、リガンドは、ビオチン誘導体を含んでもよく、ナノ粒子はコロイドまたは金着色ラテックスを含んでもよく、放射性アイソトープは、57Co、3H、125I、125I−ボントン(Bonton)及び/またはハンター(Hunter)試薬などを含んでもよい。本発明の一態様では、抗原―抗体複合体の検出は、酵素免疫測定(ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay)によって行われてもよい。また、診断用組成物を個体内に投与することで抗原―抗体反応を検出する場合、検出可能な標識を二重特異性抗体に結合、カップリング、または接続させた状態で投与してもよい。 本発明のさらなる態様は、前述の二重特異性抗体を含むキットに関する。該キットは、前述の組成物と同様に、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される状態を診断し、治療し、または予防するための医学的キットでもある。 本発明に関するタンパク質複合体を用いて、2種の抗原または同じ抗原の2種のエピトープを認識する二重特異性抗体の効率的な調製が可能である。二重特異性抗体は、細胞増殖疾患または免疫疾患のような病気の診断、予防、及び/または治療の目的に使用される。 以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、一つ以上の具現例を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。 図1及び図2は、本発明の一態様である、抗原結合部位を含む二重特異性抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の概路図である。 図1から分かるように、第1抗原結合部位101を含む第1ポリペプチド100、及び第2抗原結合部位201を含む第2ポリペプチド200は、それぞれその末端に、第1タグ102及び第2タグ202が連結されており、ポリペプチドからなるリンカー300の末端に、前記第1タグ102及び第2タグ202が連結されている。前記第1タグ102及び第2タグ202は、ユビキチンまたはユビキチン類似蛋白質のような蛋白質からなっているので、インビトロまたはインビボで切断が可能である。インビトロまたはインビボのいずれかで、前記第1抗原結合部位101を含む第1ポリペプチド100、及び第2抗原結合部位201を含む第2ポリペプチド200は、完全な自発的結合(ジスルフィド結合)を介して互いに結合され、互いに異なる抗原結合部位を有する二重特異性抗体を形成することができる。 図2は、図1に開示された具体例による抗原結合部位を含む2以上のポリペプチドを含む蛋白質複合体で、第2タグ202(図1)がない形態の例を示す。前述のように、インビトロまたはインビボでの切断を介して、互いに異なる抗原結合部位を有する二重特異性抗体を蛋白質複合体は形成するが、;図2で開示された蛋白質複合体は第2タグ202を有していないので、第2抗原結合部位201を含む第2ポリペプチド200にリンカー300が結合された形態で存在するが、;リンカー300は、2個から50個の短いアミノ酸配列を含むので、前記第2抗原結合部位201を含む第2ポリペプチド200の機能に影響を及ぼさない。 [実施例1.抗VEGF−EGFR二重特異性蛋白質複合体発現ベクターの製造] 血管内皮成長因子(VEGF)及び上皮成長因子受容体(EGFR)に対してそれぞれ特異的な結合部位を含む二重特異性抗体を製造するため、血管内皮成長因子(VEGF)及び上皮成長因子受容体(EGFR)に対してそれぞれ特異的な二重特異性蛋白質複合体の発現ベクターをGeneArtに依頼して製造した。蛋白質発現用ベクターとしては、pcDNA3.1myc/hisA(Invitrogen)を使用した。 具体的には、図3(A)及び図3(B)に示すように、分泌のためのシグナル配列(ss:signal sequence)(配列番号1);血管内皮成長因子(VEGF)結合部位であるV1またはV2(Anti−VEGF)(配列番号2または3)及びヒンジ(hinge)を含むFcドメイン(Hige−CH2−CH3)(配列番号4)から構成される単一ドメイン抗体;上皮成長因子受容体(EGFR)結合部位であるE1またはE2(Anti−EGFR)(配列番号5または6)及びヒンジを含むFcドメイン(配列番号4)から構成される単一ドメイン抗体;少なくとも1つのユビキチンタグ(Ubiquitin)(配列番号7);並びにリンカー(Linker)(Gly−Glyまたは(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)nペプチド)によって構成された蛋白質複合体のアミノ酸配列に相当する一本鎖DNA(V1/V2及びE1/E2の長さ、リンカーの長さ、並びにユビキチンの個数の組み合わせによって、総37種);を合成した。前記蛋白質複合体を発現させるためにプラスミドに挿入されるDNAフラグメントのヌクレオチド配列を、配列番号45から配列番号81で示した。前記挿入DNAフラグメントは、EcoRIで切断することができるヌクレオチド配列を5’末端に、XhoIで切断することができるヌクレオチド配列を3’末端に含み、pcDNA3.1myc/hisAベクターのEcoRI−Xho1制限酵素サイトに挿入される。 [実施例2.抗VEGF−EGFR二重特異性抗体の発現及び精製] 実施例1で得られた組み換えベクターのうち、配列番号78のDNAフラグメントが挿入された組み換えベクターを、HEK−293細胞株(Human Embryonic Kidney−293 cell)(韓国セルラインバンク)にリポソームを使用してトランスフェクションし、それにより、VEGF−EGFR二重特異性蛋白質複合体を発現させた。二重特異性蛋白質複合体のユビキチンタグがHEK−293細胞内で切断され、血管内皮成長因子(VEGF)結合部位を含む単一ドメイン抗体と、上皮成長因子受容体(EGFR)結合部位を含む単一ドメイン抗体とが自発的結合を介して互いに結合されることにより生成した二重特異性抗体を、HEK−293細胞から分離及び精製した。 500mL三角フラスコ(Erlenmeyer flask)に、Freestyle293培地100mLを使用し、HEK−293細胞を1×106細胞/mLの濃度で播種し、DNA−リポソーム混合液の調製にはFreestyle(登録商標)MAXを使用した。DNA−リポソーム複合体の調製の際は、室温で10分間反応させ、複合体混合液をHEK−293細胞に添加した。37℃の8%CO2撹拌インキュベータ(shaking incubator)内で、細胞を7日間培養して蛋白質発現を誘導した。 二重特異性抗体を含む前記二重特異性蛋白質複合体発現細胞の培養液を、0.2μmフィルタを利用して濾過した。プロテインAアフィニティーカラム(GE healthcare)を使用し、細胞培養液のクロマトグラフィーを行った。細胞培養液に含まれた二重特異性抗体を、プロテインAカラムに結合させた後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄し、溶出液(100mMグリシン−HCl、pH2.7)を利用して、プロテインAカラムから抗体を溶出した。溶出液を中和するため、1/10体積のトリスバッファー(1M Tris−HCl、pH9.0)を溶出液に加えた。脱塩カラムを利用し、溶出液を緩衝溶液(30mM Tris−HCl、pH9.0)に置換し、MonoSカラム(GE healthcare)にアプライしてイオン交換クロマトグラフィーを行った。その結果、図4に示すように、前記二重特異性抗体を溶出した。 得られた溶出液中に二重特異性抗体が存在することは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−PAGE(poly−acrylamide gel electrophoresis)によって確認した。二重特異性抗体のモノマー形態の分子量を確認するため、ゲルにローディングする前に、二重特異性抗体をβ−メルカプトエタノールによって処理した。その結果、図5に示すように、VEGF結合部位を含む単一アーム(one−armed)抗体、及びEGFR結合部位を含む単一アーム抗体がそれぞれモノマーの形態で検出されたことを確認した。 [実施例3:抗VEGF−EGFR二重特異性抗体の抗原結合力の検証] 実施例2で製造した二重特異性抗体の二重特異性抗原・抗体反応を確認するため、BiacoreT100機器(GE Healthcare Bio−Sciences AB)を使用して、VEGF及びEGFRに対する抗体の結合力を検証した。約2,000RU(response unit、反応単位)の濃度となるように、ヒトVEGF(R&D Systems)をアミンカップリング化学反応によってCM5チップに固定化した。実施例2で製造された二重特異性抗体を10μl/分の流速で1分間流した。結合を確認した後、ヒトEGFR細胞外ドメイン(Prospec)を、10μl/分の流速で1分間流した。結合を確認した後、グリシン−HCl溶液(pH2.0)(GE Healthcare)を10μl/分の流速で1分間流して表面を再生させた。 前記分析の結果、二重特異性抗体が、ヒトVEGFとヒトEGFRとに同時に結合する能力を有するということが確認された(図6)。 本発明にかかる二重特異性抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の製造方法は、例えば、新薬開発関連の技術分野に効果的に適用可能である。 100 第1ポリペプチド 101 第1抗原結合部位 102 第1タグ 200 第2ポリペプチド 201 第2抗原結合部位 202 第2タグ 300 リンカー 第1抗原結合部位をN末端に含む第1ポリペプチド、 第2抗原結合部位をN末端に含む第2ポリペプチド、並びに 前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを連結するリンカー、を含み、 前記リンカーは両末端のうち少なくとも1つの末端にタグを含み、 前記タグが前記第1ポリペプチドのC末端及び前記第2ポリペプチドのN末端のうち少なくとも1つに連結され、前記タグは切断可能なアミノ酸配列を含む、二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体。 前記リンカーは、両末端のうち1つの末端に第1タグを、及び前記第1タグとは反対の末端に第2タグを含み、 前記第1タグが前記第1ポリペプチドのC末端に連結され、前記第2タグが前記第2ポリペプチドのN末端に連結され、前記第1タグ及び前記第2タグは切断可能なアミノ酸配列をそれぞれ含む、請求項1に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。 前記第1抗原結合部位及び前記第2抗原結合部位のうち少なくとも一つが、Fab、Fab’、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される、請求項1または2に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。 前記タグは、ユビキチン、ユビキチン類似蛋白質、及びTEV切断ペプチドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。 前記第1抗原結合部位及び第2抗原結合部位が、互いに独立して、VEGF、EGFR、EpCAM、CCR5、CD19、HER−2neu、HER−3、HER−4、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、βhCG、ルイス−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシドGD3、9−O−アセチル−GD3、GM2、グローボH、フコシルGM1、ポリSA、GD2、炭素脱水酵素IX、CD44v6、ソニックヘッジホッグ、Wue−1、形質細胞抗原、(膜結合)IgE、メラノーマ結合コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF−α前駆体、STEAP、メソテリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly−6、デスモグレイン4、E−カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカー、ミュラー管抑制物質(MIS)II型受容体、sTn(シアル化Tn抗原;TAG−72)、線維芽細胞活性化蛋白質(FAP)、エンドシアリン、EGFRvIII、LG、SAS及びCD63、からなる群から選択される標的抗原に、特異的に結合する部位を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。 前記リンカーが、1から100個のアミノ酸からなるポリペプチドであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。 前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが、配列番号8から配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体。 請求項1〜7のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合蛋白質複合体をコーディングするポリヌクレオチド。 前記ポリヌクレオチドが、配列番号45から配列番号81からなる群から選択される塩基配列を有することを特徴とする、請求項8に記載のポリヌクレオチド。 請求項8または9に記載のポリヌクレオチドを挿入させた組み換え発現ベクターを構築する段階と、 前記組み換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換させる段階と、 前記形質転換された宿主細胞を培養する段階と、 前記宿主細胞で発現された二重特異性抗体を回収する段階と、を含む二重特異性抗体の製造方法。 請求項10に記載の製造方法によって製造された二重特異性抗体の治療的有効量、及び薬剤学的に許容できるキャリアー、賦形剤または安定化剤を含み、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される、病気の予防用または治療用薬剤組成物。 前記二重特異性抗体が、第2活性化剤と結合された状態で存在し、前記第2活性化剤を病巣に標的化することを特徴とする、請求項11に記載の予防用または治療用薬剤組成物。 請求項10に記載の製造方法によって製造された二重特異性抗体を含む、増殖疾患、腫瘍疾患、炎症疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、感染疾患、ウイルス疾患、アレルギー症状、移植片対宿主疾患及び宿主対移植片疾患からなる群から選択される、病気の診断用組成物。 前記診断用組成物が、インビボ(in vivo)投与用であり、検出可能な標識が接続された前記二重特異性抗体を含むことを特徴とする、請求項13に記載の診断用組成物。 【課題】二重特異性(bispecific)抗原結合蛋白質複合体及び二重特異性抗体の製造方法を提供する。【解決手段】二重特異性抗原結合蛋白質複合体、二重特異性抗体、前記抗体の製造方法及び医薬学的用途に係り、該蛋白質複合体を使用することにより、2個の抗原、または同一抗原の2個のエピトープを同時に認識する二重特異性抗体の効果的な製造が可能であり、該二重特異性抗体は、細胞増殖疾患または免疫疾患のような障害の診断、予防または治療目的に使用される。【選択図】図1配列表


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