タイトル: | 公開特許公報(A)_ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤 |
出願番号: | 2013221790 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A23K 1/18,A23K 1/16,A61P 5/06,A61K 45/00,A61K 36/02,A61P 43/00,A61K 36/06 |
川上 優 田中 秀樹 野村 和晴 JP 2015082974 公開特許公報(A) 20150430 2013221790 20131025 ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤 独立行政法人水産総合研究センター 501168814 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 川上 優 田中 秀樹 野村 和晴 A23K 1/18 20060101AFI20150403BHJP A23K 1/16 20060101ALI20150403BHJP A61P 5/06 20060101ALI20150403BHJP A61K 45/00 20060101ALI20150403BHJP A61K 36/02 20060101ALI20150403BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150403BHJP A61K 36/06 20060101ALI20150403BHJP JPA23K1/18 102AA23K1/16 304BA23K1/16 304CA61P5/06A61K45/00A61K35/80 ZA61P43/00 171A61K35/84 3 OL 14 2B005 2B150 4C084 4C088 2B005GA01 2B005GA02 2B005GA04 2B005GA05 2B005HA02 2B005KA02 2B005LB07 2B005MA01 2B150AA08 2B150AB02 2B150DC14 2B150DD12 2B150DD21 2B150DD22 2B150DD42 2B150DD45 2B150DD48 2B150DD57 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZC041 4C088AA02 4C088AA12 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZC04 4C088ZC61 本発明はウナギ目葉形仔魚の成長促進剤に関する。さらに、該剤を含む養殖用飼料に関する。 ウナギ目魚類の一つであるニホンウナギ(Anguilla japonica)はレプトケファルス幼生と呼ばれる浮遊生活に適応した葉形仔魚期を有し、約4ヶ月から5ヶ月ほどでシラスウナギへと変態する(非特許文献1、2参照)。シラスウナギは日本各地の河川へ遡上し、採捕された後、養鰻用池で肥育され、可食サイズとなって販売される。現在、ウナギ養殖に必要な種苗は100%河川で捕獲された天然のシラスウナギに依存している。近年、シラスウナギの採捕量が激減し、国内で必要な種苗が十分確保できない事態になっており、人工種苗生産の必要性が迫られている。 サメ卵を基本とする飼料によって、ニホンウナギ仔魚期に相当するレプトケファルス幼生の成長が確認されている(特許文献1参照)。そこで、サメ卵を基本として、低分子化させた大豆ペプチド、オキアミエキス、ビタミン類等を加えた栄養強化飼料が開発された。さらにサメ卵の代替として鶏卵も利用できるとされた(特許文献2参照)。しかし、現在でもサメ卵を基本とした飼料がニホンウナギ仔魚の成長において最も優れた飼料とされている。 ニホンウナギを含めたウナギ目魚類レプトケファルス幼生の体内には、グリコサミノグリカンスの一種であるヒアルロン酸が蓄積されている。ウナギ目魚類であるマアナゴ(Conger myriaster)のレプトケファルス幼生を用いてヒアルロン酸の特徴に関する研究がなされており、1)乾燥重量の50%以上をヒアルロン酸が占め、2)変態期にヒアルロン酸が代謝分解されることが明らかとなっている(非特許文献3参照)。 また、他のウナギ目魚類、カライワシ目魚類レプトケファルス幼生の生体内に含まれるグリコサミノグリカンスのほとんどはヒアルロン酸で構成され(非特許文献4参照)、さらに、カライワシ目魚類レプトケファルス幼生の生体内グリコサミノグリカンスは変態時のエネルギー源として利用されているとの報告がある(非特許文献5参照)。よって、レプトケファルス幼生内のヒアルロン酸は初期成長時の生命活動に重要な役割を担っていると考えられる。しかし、ウナギ目魚類レプトケファルス幼生時のヒアルロン酸代謝はほとんど明らかにされておらず、ヒアルロン酸代謝と成長との関連性も明らかにされていない。 ヒアルロン酸の合成を促進させる物質である、所謂、ヒアルロン酸産生促進物質は、ほ乳類の皮膚繊維芽細胞へ添加したり、皮膚に塗擦したりすることにより、ヒアルロン酸合成酵素やヒアルロン酸量を増加することが報告されている。 このようなヒアルロン酸産生促進物質として、マイタケ(Grifola frondosa)からの抽出物(特許文献3参照)、スジアオノリ(Ulva prolifera)、アラメ(Eisenia bicyclis)、アナアオサ(Ulva pertusa)、フクロフノリ(Gloiopelltis furcata)等の海藻類からの抽出物(特許文献4、5、6参照)が報告されている。しかし、これらの物質が、ほ乳類以外の脊椎動物もしくは非ほ乳類培養細胞においてヒアルロン酸合成酵素の発現もしくはヒアルロン酸合成にどのような影響を与えるかについては全く分かっていない。 アブラツノザメ(Squalus acanthias)等のサメ卵をベースとしたウナギ仔魚用飼料は、ニホンウナギ仔魚期に相当するレプトケファルス幼生の消化吸収能に併せて開発された飼料である(非特許文献6参照)。しかし、人工的に得られたニホンウナギレプトケファルス幼生が、養殖用種苗として用いられるシラスウナギへと変態するまでに要する養成期間は、耳石日齢より解析した天然のシラスウナギ(非特許文献1、2)より相対的に長く(非特許文献7参照)、多くの飼料も必要となる。 そこで、従来から使用されているサメ卵を基本とするウナギ仔魚用飼料より、ウナギ仔魚の成長が早く、シラスウナギまでの養成期間が短縮できる飼料、即ち、1尾辺りの人工種苗生産のコスト削減が可能な飼料の開発が望まれている。特開平11―253111号公報特開2005―13116号公報特許第4583501号(P4583501)特開平5―101871号公報特開平6―9422号公報特開平8―198741号公報Yutaka Kawakami, Noritaka Mochioka, Akinobu Nakazono. 1999. Immigration patterns of glass−eels Anguilla japonica entering river in Northern Kyushu. Bulletin of Marine Science 64,315−327.Yutaka Kawakami, Noritaka Mochioka, Ryo Kimura and Akinobu Nakazono.1999. Seasonal changes of the RNA/DNA ratio, size and lipid contents and immigration adaptability of Japanese glass−eels, Anguilla japonica, collected in northern Kyushu, Japan. Journal of Experimental Marine Biology and Ecology 238,1−19.Yutaka Kawakami, Hiromi Oku, Kazuharu Nomura, Shigeaki Gorie and Hiromi Ohta.2009. Metabolism of a glycosaminoglycan during metamorphosis in the Japanese conger eel, Conger myriaster. Research Letters in Biochemistry Article ID 251731, 5 pages doi:10.1155/2009/251731.Edward Pfeiler, Hidenao Toyoda, Michael D. Williams, Ronald A. Nieman. 2002. Identification, structural analysis and function of hyaluronan in developing fish larvae (leptocephali). Comparative Biochemistry and Physiology Part B 132, 443−451.Edward Pfeiler. 1996. Energetics of metamorphosis in bonefish (Albula sp.) leptocephali: Role of keratin sulfate glycosaminoglycan. Fish Physiology and Biochemistry 15, 359−362増田賢嗣, 今泉均, 橋本博, 小田憲太朗, 古板博文, 松成宏之, 照屋和久,薄浩則, 2011. イタチザメ卵とアイザメ卵を主体とした飼料によるウナギ初期飼育の可能性. Journal of Fisheries Technology 4 (1), 7−13.Hideki Tanaka, Hirohiko Kagawa, Hiromi Ohta, Tatsuya Unuma, Kazuharu Nomura. 2003. The first production of glass eel in captivity: fish reproductive physiology facilitates great progress in aquaculture. Fish Physiology and Biochemistry 28, 493−497. 本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、従来用いられているウナギ仔魚用飼料よりも、ニホンウナギ等のウナギ目葉形仔魚の成長に有用な成長促進剤を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ヒアルロン酸産生能を促進する物質を添加した飼料を与えることにより、ウナギ目葉形仔魚においてヒアルロン酸合成が促進され、葉形仔魚の成長も促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下のウナギ目葉形仔魚の成長促進剤等に関する。〔1〕ヒアルロン酸産生促進物質を有効成分とするウナギ目葉形仔魚の成長促進剤。〔2〕ヒアルロン酸産生促進物質が野菜類、真菌類、野草類、海藻類または動物性材料から得られる1種以上のヒアルロン酸産生促進物質である上記〔1〕に記載の成長促進剤。〔3〕ヒアルロン酸産生促進物質が化合物である上記〔1〕に記載の成長促進剤。〔4〕ウナギ目葉形仔魚がウナギ科魚類、ハモ科魚類、アナゴ科魚類またはウツボ科魚類の葉形仔魚である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の成長促進剤。〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の成長促進剤を含む飼料。〔6〕上記〔5〕に記載の飼料を用いてなるウナギ目葉形仔魚の成長促進方法。 本発明のウナギ目葉形仔魚の成長促進剤によって、従来の飼料よりも効果的にウナギ目葉形仔魚の成長促進が可能となる。本発明の成長促進剤を用いることにより、従来の飼料を用いた場合よりも短い養成期間で、ウナギ科魚類、アナゴ科魚類、ハモ科魚類またはウツボ科魚類等のシラスウナギを得ることが可能となることから1尾辺りの人工種苗生産のコストを削減することも可能となる。ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤を加えた飼料の調製方法(一例)をフローチャートで示した図である。ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)投与終了後のヒアルロン酸合成酵素2(Hyaluronan Synthase 2 ;HAS2(以下、HAS2と示す場合がある))の発現推移を示した図である(実施例2)。平均±標準偏差。Control:コントロール区、Grifola frondosa:マイタケ抽出区、Ini:イニシャル(初期値)、10m:10分後、20m:20分後、30m:30分後、1h:1時間後、2h:2時間後、4h:4時間後、8h:8時間後。各n=6、*<0.05。ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)を含む飼料におけるウナギ目葉形仔魚の飼育期間における生残率の推移を示した図である(実施例3)。Cont:通常餌区、Low:マイタケ低濃度区、High:マイタケ高濃度区。ウナギ目葉形仔魚の飼育期間後の全長を示した図である(実施例3)。平均±標準偏差。TL:全長、Ini:イニシャル(初期値)、Cont:通常餌区、Low:マイタケ低濃度区、High:マイタケ高濃度区、*<0.01。ウナギ目葉形仔魚の飼育期間後の体高を示した図である(実施例3)。平均±標準偏差。BD:体高、Ini:イニシャル(初期値)、Cont:通常餌区、Low:マイタケ低濃度区、High:マイタケ高濃度区、*<0.05。ウナギ目葉形仔魚の飼育期間後のヒアルロン酸量を示した図である(実施例3)。平均±標準偏差。HA:ヒアルロン酸、Ini:イニシャル(初期値)、Cont:通常餌区、Low:マイタケ低濃度区、High:マイタケ高濃度区、*<0.0001。ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(海藻抽出物)を含む飼料におけるウナギ目葉形仔魚の飼育期間における生残率の推移を示した図である(実施例4)。Cont:通常餌区、U.prolifera:スジアオノリ投与区、E.bicyclis:アラメ投与区。ウナギ目葉形仔魚の飼育期間後の全長を示した図である(実施例4)。平均±標準偏差。TL:全長、Ini:イニシャル(初期値)、Cont:通常餌区、U.prolifera:スジアオノリ投与区、E.bicyclis:アラメ投与区、*<0.01,**<0.005。ウナギ目葉形仔魚の飼育期間後の体高を示した図である(実施例4)。平均±標準偏差。BD:体高、Ini:イニシャル(初期値)、Cont:通常餌区、U.prolifera:スジアオノリ投与区、E.bicyclis:アラメ投与区、*<0.0001。 本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」とは、ウナギ目葉形仔魚の育成環境に添加したり、飼料に加えて給餌させたりすることにより、ウナギ目葉形仔魚からシラスウナギへの成長を促進する剤のことを言う。この「成長の促進」の程度はウナギ目葉形仔魚の全長や体高、体内におけるヒアルロン酸量の推移等から判断することができる。 なお、本発明において「葉形仔魚」とは、レプトケファルス幼生と呼ばれ、浮遊生活に適応した仔魚期に属するもののことをいい、ウナギ型を呈した透明な魚となったシラスウナギは「葉形仔魚」には含まれない。また、本発明において、ウナギ科魚類以外のアナゴ科魚類、ハモ科魚類またはウツボ科魚類等の他のウナギ目魚類においても、ウナギ型を呈した透明な魚となったものはシラスウナギとして示す。 本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」は、ヒアルロン酸産生促進物質を有効成分として含む剤であり、ヒアルロン酸産生促進物質のみからなる剤であってもよい。また、ウナギ目葉形仔魚の成長を阻害しないその他の成分を含む剤であってもよい。 本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」の有効成分となる「ヒアルロン酸産生促進物質」は、ヒアルロン酸の産生を促進する物質であって、ウナギ目葉形仔魚の成長を促進し得る物質であれば、従来知られているいずれの物質であっても良い。 ここで「ヒアルロン酸産生促進物質」とは、例えばヒト繊維芽細胞等のヒアルロン酸産生細胞に対して培養条件下で同物質を添加した際に、ヒアルロン酸合成酵素が活性化される、もしくはヒアルロン酸量の増大が認められる物質のことをいう。また、本発明の「ヒアルロン酸産生促進物質」とは、ヒトを含む動物の皮膚に塗布した際、表皮もしくは真皮内にヒアルロン酸量の増大が認められる物質のことであっても良い。 本発明の「ヒアルロン酸産生促進物質」として、例えば、野菜類、真菌類、野草類もしくは海藻類の植物性材料や動物性材料から得られるヒアルロン酸産生促進物質、またはこれらの植物性材料と動物性材料との混合物から得られるヒアルロン酸産生促進物質等が挙げられる。これらの「ヒアルロン酸産生促進物質」はこれらの材料から蒸留水もしくは有機溶媒等を用いて抽出された単一物質または混合物質であっても良く、これらを精製して得られる物質であっても良い。また、これらのヒアルロン酸産生促進物質を含む単一物質または混合物質そのものをミキサー等で粉砕した物質であっても良い。 本発明のこのような「ヒアルロン酸産生促進物質」は、使用目的によって必要な形状とすることができ、エタノール、油脂類もしくは蒸留水に溶解した液体状や、凍結乾燥させた固形状等の形状であっても良い。 このような「ヒアルロン酸産生促進物質」として、オクラ、アロエ、アスパラガス等の野菜類からの抽出物、マイタケ(Grifola frondosa)等の真菌類からの抽出物、マルバチシャノキ、リュウキュウチシャノキ、チシャノキ等の野草類からの抽出物、βクリプトキサンチンもしくはその誘導体を含む柑橘類からの抽出物、スジアオノリ(Ulva prolifera)、アラメ(Eisenia bicyclis)、アナアオサ(Ulva pertusa)もしくはフクロフノリ(Gloiopelltis furcata)等の海藻類からの抽出物、サケ由来コラーゲンペプチドとエラスチンペプチド等である動物性材料からの抽出物が挙げられる。 これらの「ヒアルロン酸産生促進物質」は、本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」の有効成分として使用できる物質であれば、独自に抽出したものであっても、抽出物や抽出物の精製物として市販されているものであっても使用することができる。市販されている「ヒアルロン酸産生促進物質」としては、例えば、マイタケ抽出物であるグリピン等が挙げられる。 また、本発明の「ヒアルロン酸産生促進物質」として、ホスファジチルセリンやホスファジチルイノシトール等のグリセロリン脂質、N−メチル−L−セリン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−メチルシクロペンダデカノン、N−メチル−L−セリン、エタノールアミン、またはN−メチルエタノールアミン等の化合物を使用することもできる。 本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」における「ウナギ目葉形仔魚」とは、ウナギ目に属する葉形仔魚(レプトケファルス; leptocephali)のことをいう。このような「ウナギ目葉形仔魚」として、例えば、ニホンウナギ(Anguilla japonica)、ニューギニアウナギ(Anguilla bicolor pacifica)、オオウナギ(Anguilla marmorata)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)、オーストラリアウナギ(Anguilla australis australis)、モザンビークウナギ(Anguilla mossambica)もしくはアメリカウナギ(Anguilla rostrata)等のウナギ科魚類の葉形仔魚が挙げられる。また、スズハモ(Muraenesox bagio)もしくはハモ(Muraenesox cinereus)等のハモ科魚類の葉形仔魚、マアナゴ(Conger myriaster)、ゴテンアナゴ (Anago anago)もしくはチンアナゴ(Heteroconger hassi)等のアナゴ科魚類の葉形仔魚、またはウツボ(Gymnothorax kidako)等のウツボ科魚類の葉形仔魚も本発明の「ウナギ目葉形仔魚」として挙げられる。 なお、本発明の「成長促進剤」はウナギ目葉形仔魚以外に限られず、例えば、カライワシ目魚類等の「葉形仔魚」の成長促進のために使用することも可能である。 本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」は、ウナギ目葉形仔魚の飼料に加えて使用することができる。「飼料」は、ウナギ目葉形仔魚の成長に有用な飼料であれば、従来知られているいずれの飼料であっても良い。例えば、ウナギ仔魚用飼料として知られるアブラツノザメの卵や鶏卵を主成分とする飼料に加えても良い。 本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」は、その他の全飼料成分に対し、重量比で0.002%以上加えることが好ましく、さらに0.02%、0.2%以上、または2.0%以上となるように加えることが好ましい。 本発明の「飼料」は、「ウナギ目葉形仔魚」が摂取可能な形状であればいずれの形状であってもよい。例えば、水溶液内で分散し懸濁するコロイド状、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシルメチルセルロース等の増粘剤を加えることによって形成されるペースト状、マイクロカプセル化した粒子状、乾燥後ゼラチン等で封入したタブレット状の飼料が挙げられる。 本発明の「飼料」はさらに、本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」とともに、ヒアルロン酸の基質または前駆体であるグルクロン酸、N−アセチルグルコサミンまたはブドウ糖を加えても良い。さらに麦芽糖等の二糖類や多糖類を本発明の「ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤」とともに加えても良い。また、糖質が含まれる食材を加えても良い。 このような本発明の「飼料」は、例えば、本発明の成長促進剤を他の飼料材料とともに、ミキサーで2分から4分程度撹拌することで、流動性のあるペースト飼料として調製することができる。また、図1に飼料の調製工程の一例として示したように、他の飼料材料を混合した後に、本発明の成長促進剤を加えてさらにミキサーで2分から4分程度撹拌することで調製することもできる。 このように調製した「飼料」を用い、「ウナギ目葉形仔魚の成長促進方法」を行うことが可能である。この「成長促進方法」は、この「飼料」を用いて「ウナギ目葉形仔魚」の成長を促進できる方法であれば従来知られているいずれの成長方法を用いても良く、従来の成長方法を改良した方法であっても良い。 「ウナギ目葉形仔魚」として、孵化後、摂餌開始時期から変態するまでの仔魚期、所謂、レプトケファルス幼生期の仔魚を対象とすることが好ましい。これらの葉形仔魚を、例えば10mL容積の小型水槽や数100トンクラスの大型化水槽等に入れ、止水状態や流水下環境で給餌することで「ウナギ目葉形仔魚の成長促進方法」を行うことができる。水槽の大きさや給餌方法は特に限定されず、水槽水面、底面や壁面に投餌したり、飼育水中に分散したりすることで給餌できる。 以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。1.ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤の調製 ヒアルロン酸産生促進物質として次のマイタケ抽出物および海藻抽出物を調製した。これらをウナギ目葉形仔魚の成長促進剤の有効成分とした。1)マイタケ抽出物 市販のマイタケ子実体の乾燥物を準備し、乾燥物の10倍重量の純エタノールを加え24時間スターラーを用いて抽出を行った。抽出液は不純物を除くためにろ過し、回収した抽出液の溶媒を凍結乾燥器で除去し、マイタケ抽出物を得た。2)海藻抽出物 市販のスジアオノリとアラメの乾燥物を準備し、それぞれに乾燥物の10倍重量の30%エタノールを加え半日室温に静置した。エタノールを回収後、ろ過により不純物を除去し、再回収した抽出液の溶媒を凍結乾燥器で除去し、スジアオノリ抽出物およびアラメ抽出物を得た。2.ウナギ目葉形仔魚の飼料の調製 アブラツノザメ卵48g、自己消化オキアミエキス25g、不二製油社製ハイニュートHK3g、日本水産社製YOP−C6gに、上記1.にて調製したマイタケ抽出物、スジアオノリ抽出物またはアラメ抽出物を、飼料全体量に対しそれぞれ0.002%以上の重量比となる量加え、ミキサーで2分から4分撹拌し、流動性のあるペースト飼料として、本発明のウナギ目葉形仔魚の飼料を調製した。 また、アブラツノザメ卵48g、自己消化オキアミエキス25g、不二製油社製ハイニュートHK3g、日本水産社製YOP−C6gのみで調製したものは従来型のウナギ葉形仔魚用飼料とした。<ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)によるニホンウナギヒアルロン酸合成酵素タイプ2のmRNAの発現増強効果の解析>1)飼育環境 人為催熟によって得られた受精卵から孵化した、摂餌開始期に相当する7日齢のニホンウナギレプトケファルス幼生を用いた。10L円形アクリル水槽を2基用意し、水槽内に海水を注水し、容積を5Lとした。全長平均6.09±0.50mmのニホンウナギレプトケファルス幼生を各水槽に約1000尾収容した。 実施例1、1.にて調製したマイタケ抽出物100mgと麦芽糖2gに対し、0.8%キサンタンガム溶液を加え溶解し、容量を10mLとした(マイタケ抽出区)。さらに麦芽糖2gに対し、0.8%キサンタンガム溶液を加え容量を10mLとした飼料をコントロール区とした。 各ニホンウナギレプトケファルス幼生を水槽に馴致させた後、上述した飼料10mLをピペットで水槽底面に投与し給餌を開始した。給餌期間中は止水状態で15分間給餌させた。15分終了時点をスタートとし、10分、20分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間経過後のレプトケファルス幼生を回収し−80℃で凍結保存した。2)解析 上記1.にて回収した各時間のレプトケファルス幼生(約50尾)に対し、ISOGEN(ニッポンジーン)を1mL添加し、ISOGEN添付のグアニジンイソシアネート法に従ってトータルRNAを抽出した。cDNAの分収には、SuperScript(登録商標) VILO(商標) cDNA Synthesis Kit(インビトロジェン)を使用し、本キットに添付の操作手順に準じて行った。 各時間のレプトケファルス幼生のmRNAから作製したcDNAを鋳型とし、HAS2(Forward)プライマー(配列表配列番号1)およびHAS2(Reverse)(配列表配列番号2)プライマーを用いてリアルタイムPCR(バイオラッド)によってヒアルロン酸合成酵素タイプ2(HAS2)の遺伝子量の定量をおこなった。 またPCR反応用のキットはSsoFast(商標) EvaGreen(登録商標) Supermix(バイオラッド)を使用し、反応時間は95℃30秒×1サイクル、95℃5秒・60℃10秒×40サイクルとした。3)結果 その結果、図2に示したように、給餌後30分までのマイタケ抽出区のニホンウナギレプトケファルス幼生では、コントロール区のレプトケファルス幼生との間に有意な差が認められなかったが、1時間、2時間、4時間後では、マイタケ抽出区のレプトケファルス幼生においてHAS2の発現量が有意に増加した。 これにより、コントロール区のレプトケファルス幼生では給餌終了1時間後にはHAS2の発現が減少するが、ヒアルロン酸産生促進物質であるマイタケ抽出物を添加することにより、ニホンウナギレプトケファルス幼生において、HAS2の長時間にわたる高発現が維持されることが確認された。<ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)の飼育における効果の検討>1)飼育環境 人為催熟によって得られた受精卵から孵化した、摂餌開始期に相当する7日齢のニホンウナギレプトケファルス幼生を用いた。10L円形アクリル水槽を6基用意し、水槽内に海水を注水し、容積を5Lとした。水槽内に収容するウナギレプトケファルス幼生の全長、体高を測定しイニシャル(初期値)とした。全長平均7.03±0.34mmのウナギレプトケファルス幼生を各水槽に200尾収容した。 従来型ウナギ仔魚用飼料を与える群を通常餌区とした。実施例1、1.にて調製したマイタケ抽出物を飼料全体量に対し0.2mg/gとなるように加えて調製した飼料を与える群をマイタケ低濃度区とし、実施例1、1.にて調製したマイタケ抽出物を飼料全体量に対し2mg/gとなるように加えて調製した飼料を与える群をマイタケ高濃度区とした。各試験区では、それぞれ2基の水槽を用意した。 各ニホンウナギレプトケファルス幼生を水槽に馴致させた後、3.5mL相当の上述した飼料をピペットで水槽底面に投与し給餌を開始した。給餌期間中は止水状態で15分間給餌させた。15分経過後、1分間に0.4Lの流量で底面に残った餌を洗い流した。この作業を2時間おきに計5回繰り返した。給餌時刻は、9時、11時、13時、15時、17時とし、5回目の給餌後に同型の水槽にニホンウナギレプトケファルス幼生を移し替えた。給餌以外の時間帯は、1分間に0.4Lの流量で注水し続けた。給餌実験期間中はすべて25℃の濾過海水を掛け流しで行い、給餌飼育期間は20日とした。2)仔魚測定 飼育期間中の生残数を計測するとともに、飼育終了(20日目)後にそれぞれ全長と体高を測定した。その結果、図3に示したように、本発明のヒアルロン酸産生促進物ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)を加えても、従来型の飼料と同等の生残が認められた。 また、図4に示したように、飼育終了時点において、マイタケ高濃度区のニホンウナギレプトケファルス幼生では、通常餌区のニホンウナギレプトケファルス幼生よりも有意に全長の増加が認められた。さらに、図5に示したように、飼育終了時点において、マイタケ高濃度区のニホンウナギレプトケファルス幼生は、通常餌区のニホンウナギレプトケファルス幼生よりも有意に体高の増加が認められた。従って、これらの結果より、本発明のウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)を飼料に加えることにより、ニホンウナギレプトケファルス幼生の成長が促進されることが確認できた。3)ヒアルロン酸量測定 飼育終了(20日目)後に、全長、体高を測定した各ニホンウナギレプトケファルス幼生の個体を−20℃で凍結保存した。20−30尾の凍結個体をまとめ、遠心濃縮機を用いて水分を除去し、乾燥重量を測定した。乾燥させたサンプルにアクチナーゼE溶液を加え、50℃で24時間反応させ、サンプル内のタンパク質を分解した。酵素処理したサンプルはx7000gで10分間遠心し、上澄みを回収しヒアルロン酸量を測定した。ヒアルロン酸量の測定には、ヒアルロン酸定量Elisaキット(フナコシ)を用いた。 その結果、図6に示すように、飼育終了時点において、マイタケ低濃度区、マイタケ高濃度区は共に通常餌区よりも有意にヒアルロン酸量の増加が認められた。従って、この結果より、本発明のウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(マイタケ抽出物)を飼料に加えることにより、ニホンウナギレプトケファルス幼生内のヒアルロン酸の蓄積が促進されることが確認できた。<ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(海藻抽出物)の飼育における効果の検討>1)飼育環境人為催熟によって得られた受精卵から孵化した、摂餌開始期に相当する7日齢のニホンウナギレプトケファルス幼生を用いた。10L円形アクリル水槽を6基用意し、水槽内に海水を注水し、容積を5Lとした。水槽内に収容するウナギレプトケファルス幼生の全長、体高を測定しイニシャル(初期値)とした。全長平均6.96±0.21mmのウナギレプトケファルス幼生を各180尾収容した。 従来型ウナギ仔魚用飼料を与える群を通常餌区とした。実施例1、1.にて調製した海藻抽出物(スジアオノリ抽出物またはアラメ抽出物)を飼料全体量に対し2mg/gとなるように加えて調製した飼料を与える群をそれぞれスジアオノリ投与区またはアラメ投与区とした。各試験区では、それぞれ2基の水槽を用意した。 各ニホンウナギレプトケファルス幼生を水槽に馴致させた後、3.5mL相当の上述した飼料をピペットで水槽底面に投与し給餌を開始した。給餌期間中は止水状態で15分間給餌させた。15分経過後、1分間に0.4Lの流量で底面に残った餌を洗い流した。この作業を2時間おきに計5回繰り返した。給餌時間は、9時、11時、13時、15時、17時とした。5回目の給餌後に同型の水槽にニホンウナギレプトケファルス幼生を移し替えた。給餌以外の時間帯は、1分間に0.4Lの流量で注水し続けた。給餌実験期間中はすべて25℃の濾過海水を掛け流しでおこなった。給餌飼育期間は18日とした。2)仔魚測定 飼育期間中の生残数を計測するとともに、飼育終了(18日目)後にそれぞれ全長と体高を測定した。その結果、図7に示したように、本発明のヒアルロン酸産生促進物ウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(海藻抽出物)を加えても、従来型の飼料と同等の生残が認められた。 また、図8に示したように、飼育終了時点において、スジアオノリ投与区、アラメ投与区のニホンウナギレプトケファルス幼生はいずれも通常餌区のニホンウナギレプトケファルス幼生よりも有意に全長の増加が認められた。さらに、図9に示したように、飼育終了時点において、スジアオノリ投与区、アラメ投与区のニホンウナギレプトケファルス幼生いずれも通常餌区のニホンウナギレプトケファルス幼生よりも有意に体高の増加が認められた。従って、これらの結果より、本発明のウナギ目葉形仔魚の成長促進剤(海藻抽出物)を飼料に加えることにより、ニホンウナギレプトケファルス幼生の成長が促進されることが確認できた。 本発明のウナギ目葉形仔魚の成長促進剤によって、従来の飼料よりも効果的にウナギ目葉形仔魚の成長促進が可能となる。本発明の成長促進剤を用いることにより、従来の飼料を用いた場合よりも早く、ウナギ科魚類、アナゴ科魚類、ハモ科魚類等のシラスウナギを得ることが可能となることから、1尾辺りの人工種苗生産のコストを削減することも可能となる。ヒアルロン酸産生促進物質を有効成分とするウナギ目葉形仔魚の成長促進剤。ヒアルロン酸産生促進物質が真菌類および/または海藻類から得られるヒアルロン酸産生促進物質である請求項1に記載の成長促進剤。ウナギ目葉形仔魚がウナギ科魚類、ハモ科魚類、アナゴ科魚類またはウツボ科魚類の仔魚である請求項1または2に記載の成長促進剤。 【課題】ニホンウナギ等のウナギ目葉形仔魚の成長に有用な、成長促進剤を提供すること。【解決手段】ヒアルロン酸産生促進物質を有効成分とするウナギ目葉形仔魚の成長促進剤を提供する。さらに詳しくは、ヒアルロン酸産生促進物質が真菌類および/または海藻類から得られるヒアルロン酸産生促進物質であるウナギ目葉形仔魚の成長促進剤を提供する。【選択図】なし配列表