生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_癌の原発巣・骨転移の検査・治療用放射性標識薬剤
出願番号:2013221672
年次:2015
IPC分類:A61K 51/00,A61P 35/00,C07K 7/06,C07K 7/64


特許情報キャッシュ

小川 数馬 小谷 明 JP 2015083546 公開特許公報(A) 20150430 2013221672 20131025 癌の原発巣・骨転移の検査・治療用放射性標識薬剤 国立大学法人金沢大学 504160781 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 大杉 卓也 100135208 曽我 亜紀 100152319 小川 数馬 小谷 明 A61K 51/00 20060101AFI20150403BHJP A61P 35/00 20060101ALI20150403BHJP C07K 7/06 20060101ALN20150403BHJP C07K 7/64 20060101ALN20150403BHJP JPA61K49/02 AA61K43/00A61K49/02 CA61P35/00C07K7/06C07K7/64 8 1 OL 21 4C084 4C085 4H045 4C084AA12 4C084NA13 4C084ZB262 4C084ZC782 4C085HH03 4C085KA09 4C085KA11 4C085KA29 4C085KB02 4C085KB07 4C085KB09 4C085KB10 4C085KB12 4C085KB15 4C085KB82 4C085LL18 4H045BA10 4H045BA13 4H045BA31 4H045BA51 4H045BA71 4H045EA20 4H045EA51 4H045FA33 4H045FA57 4H045FA61 本発明は、癌の原発巣・骨転移の検査・治療用放射性標識薬剤に関する。(放射性標識薬剤) 放射性標識薬剤は、放射性同位元素の核種により標識された化合物を含む薬剤であり、疾患の診断や治療、特に、腫瘍の診断や治療などに利用されている。放射性標識薬剤を特定の組織や細胞に集積させることにより、感度の高い診断や有効な治療を行うことができ、さらには、正常の組織や細胞への副作用を低減することができる。 例えば、腫瘍細胞が臓器や組織に転移し、散在しているような場合でも、正常の組織や細胞に影響を与えることなく、有効な診断や治療が行える。放射性標識薬剤を用いた診断や治療においては、有用な核種の選択や、該薬剤を特定の組織や細胞に集積させるための薬剤設計が行われてきている。(インテグリン) 腫瘍成長などのいくつかの病理学的過程は、血管形成に関連している。細胞接着用のヘテロ二量体膜貫通糖タンパク質であるインテグリンファミリーにおいて、αvβ3インテグリンは、新生血管のマーカーとなること、並びに、血管形成を調節することが報告されている。さらに、αvβ3インテグリンは、メラノーマ、神経膠芽腫、卵巣癌などの多種にわたる癌の新血管形成中に内皮細胞で高度に発現するが、静止内皮細胞では殆ど発現しないことが知られている。したがって、αvβ3インテグリンは、腫瘍の画像診断及び治療のための重要な標的として関心を集めてきている。αvβ3インテグリンに対して高い親和性のある化合物が多数調査され、開発されてきている。 αvβ3インテグリンの典型的なリガンドとして、αvβ3インテグリンへの親和性が高いことからRGD配列を含む環状ペンタペプチドが研究されている。近年、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び単光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)画像診断用の放射標識RGDペプチド誘導体が多数報告されている。(癌の骨転移) 骨は増殖因子を豊富に含み、よって腫瘍が転移及び増殖しやすい環境である。よって、悪性腫瘍は骨に転移することが多い。悪性腫瘍の初期の骨転移の検査は、治療法及び薬剤の開発と共に、重要である。この数十年間、X線CT 及びMRなど画像診断技術は目覚ましく進歩してきたが、その高感度から核医学骨シンチグラフィが依然として骨転移検出の最適な検査方法である。すなわち、テクネチウム‐ビスフォスフォネート錯体などの骨親和性放射性医薬品は通常、症状やX線画像変化が現れる前に骨格病変に局在化(集積)し、全身の骨病変部位を感度よく検出する。30年にわたり、99mTcとメチレンジホスホン酸塩の錯体(99mTc-MDP)、及び99mTcとヒドロキシメチレンジホスホン酸塩の錯体(99mTc-HMDP)が骨シンチグラフィーの放射性医薬品として広く使用されてきた。 近年、ビスホスホン酸塩分子のみならず酸性アミノ酸もヒドロキシアパタイトへの高い親和性を有し、骨への薬物輸送のキャリアーとして作用することが報告されている。 非特許文献1では、「Ga-DOTA-Bn-SCN-HBPを含むシンチグラフィー試薬」を開示している。 しかし、本発明の放射性標識薬剤とは明らかに構成が異なる。 非特許文献2では、「(Asp)6がドラックデリバリーの輸送担体になること」を開示している。 しかし、本発明の放射性標識薬剤とは明らかに構成が異なる。 特許文献1では、{標的分子に結合する化合物と結合させたトリサリチルアルジミノメチル エタノール[tri−salicylaldiminomethyl−ethanol、H3(sal)3TAMEol]と、ガリウム67(gallium−67、Ga−67)またはガリウム68(gallium−68、Ga−68)とから形成される錯体構造を有する錯体を含み、標的部位への集積性及び安定性が増加した放射性ガリウム標識薬剤}を開示している。 しかし、本発明の放射性標識薬剤とは明らかに構成が異なる。上記述べたように、多数の放射性標識薬剤が研究、開発されている。しかしながら、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる放射性標識薬剤が存在していなかった。WO2009/107384号公報Nuclear Medicine and biology 38(2011) 631-636JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESEARCH volume 15, Number 5, 2000 本発明は、前記要望に対して、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる放射性標識薬剤を提供することを課題とする。 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、放射性物質を含む配位子−(Asp)n−RGD含有環状ペプチドを含む化合物(参照:図1)が、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できることを確認して、該化合物を含む放射性標識薬剤を完成した。 すなわち、本発明は以下からなる。 1.放射性物質を含む配位子−(Asp)n−RGD含有環状ペプチドを含む放射性標識薬剤であって、 n=5〜25であることを特徴とする放射性標識薬剤。 2.前記放射性物質は、以下のいずれか1から選択される前項1に記載の放射性標識薬剤。 (1)ガリウム (2)銅 (3)インジウム (4)イットリウム (5)テクネチウム (6)ルテチウム (7)ビスマス (8)レ二ウム 3.前記RGD含有環状ペプチドは、以下のいずれか1から選択される前項1又は2に記載の放射性標識薬剤。(1)c(RGDfK)(2)c(RGDyK)(3)c(RGDfV)(4)c(RGDyV) 4.前記放射性物質はガリウムであることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載の放射性標識薬剤。 5.前記配位子は、以下のいずれか1から選ばれる前項1〜4のいずれか1に記載の放射性標識薬剤。 (1)1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid:DOTA) (2)1,4,7-triazacyclononane-triacetic acid(NOTA) (3)triazacyclononane-phosphinate(TRAP) (4)mercaptacetylgycilgycilglycine(MAG3) (5)tricarbonyl (6)ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) 6.前記配位子は、DOTAである請求項1〜5のいずれか1に記載の放射性標識薬剤。 7.放射性ガリウムを含むDOTA−(Asp)n−c(RGDfK)を含む放射性標識薬剤であって、 n=5〜25であることを特徴とする放射性標識薬剤。 8.ガリウムを含むDOTA−(Asp)n−c(RGDfK)を含む標識薬剤であって、 n=5〜25であることを特徴とする標識薬剤。 本発明の放射性標識薬剤は、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる。本発明の放射性標識薬剤の一例を示す。(a)67Ga-DOTA-c(RGDfK)の放射化学的収率の結果。(b)67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK) の放射化学的収率の結果。(c)67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK) の放射化学的収率の結果。(d)67Ga-DOTA-c(RGDfK)の放射化学的収率の結果。(e)67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK) の放射化学的収率の結果。(f)67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK) の放射化学的収率の結果。PBS中でインキュベートした後の67Ga-DOTA-c(RGDfK)、 67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK) 及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の放射化学的純度。各値は、3回の実験の平均値(標準偏差)で示す。アポトランスフェリンを含むPBS(アポトランスフェリン溶液)中でインキュベートした後の67Ga-DOTA-c(RGDfK)、 67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK) 及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)のアポトランスフェリンに結合しなかった放射化学的純度。各値は、3回の実験の平均値(標準偏差)で示す。ヒドロキシアパタイト結合アッセイ。各カラムは、ヒドロキシアパタイトビーズに結合した割合を示す。各値は、4回の実験の平均値(標準偏差)で示す。67Ga-DOTA-c(RGDfK)を静脈内投与した後のU87MG担癌マウスの放射能生体内分布を示す。67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)を静脈内投与した後のU87MG担癌マウスの放射能生体内分布を示す。67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)を静脈内投与した後のU87MG担癌マウスの放射能生体内分布を示す。67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)又は67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)を静脈内投与した後のU87MG担癌マウスの放射能生体内分布を比較した結果を示す。67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)及びc(RGDfK)を静脈内同時投与した後のU87MG担癌マウスの放射能生体内分布を示す。67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)及びc(RGDfK)を静脈内同時投与した後のU87MG担癌マウスの放射能生体内分布を示す(グラフで記載)。 本発明の「放射性物質を含む配位子(好ましくは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid:DOTA)−(Asp)n−RGD含有環状ペプチドを含む放射性標識薬剤(以後、「本発明の放射性標識薬剤」と略する場合がある)」は、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる。さらに、本発明の放射性標識薬剤は、抗腫瘍効果を有する放射性物質を含むことにより、癌の原発巣・骨転移を同時に治療できる。(放射性物質) 本発明の放射性標識薬剤で使用できる放射性物質は、配位子(好ましくは、DOTA)と安定的な錯体を形成できれば特に限定されない。例えば、以下を例示することができる。(癌の原発巣・骨転移を同時に検査・治療するための放射性物質)(1)ガリウム(Ga) 原子番号31の元素であり、インジウムと同じ第13族元素に属する。ガリウムの多種類の核種の中でGa−67(以下、67Gaと略称することがある)とGa−68(以下、68Gaと略称することがある)の二つの放射性核種が核医学診断に適した性質を有している。67Gaはサイクロトロンにより製造される半減期78時間のγ線放出核種であり、67Gaクエン酸塩(67Ga−citrate)が悪性腫瘍や炎症の診断を目的とした単一光子放射線コンピュータ断層撮影(single photon emission computed tomography、以下SPECTと略称する場合がある)用薬剤として臨床で使用されている。一方、68Gaは半減期68分の陽電子放出核種であり、ポジトロン断層撮影(positron emission tomography、以下、PETと略称する場合がある)診断に用いられる。また近年、半減期270日のゲルマニウム−68(68Ge)との過渡平衡を利用したジェネレータシステムの開発により、サイクロトロンを設置しなくても使えるPET核種として期待されている。(2)銅(Cu) 64Cuは、乳癌検出用及び治療用放射性物質として研究されている。(3)インジウム(In) 111Inは、腫瘍検出用放射性物質として研究されている。(4)イットリウム(Y) 90Yは、腫瘍治療用放射性物質として研究されている。(5)テクネチウム(Tc) 99mTcは、腫瘍検出用放射性物質として研究されている。(6)ルテチウム(Lu) 177Luは、腫瘍治療用放射性物質として研究されている。(7) ビスマス(Bi) 213Biは、アルファ線放出治療用核種として使用されている。(8)レ二ウム(Re) 186Re及び188Reは、治療用核種として使用されている。{(Asp)n} 本発明の放射性標識薬剤で使用できるアスパラギン酸リンカー{(Asp)n}は、下記の実施例より、癌の骨転移箇所に特異的に結合することができる。 本発明の(Asp)nのnは、5〜25、好ましくは、6〜20、より好ましくは7〜15、最も好ましくは8〜13である。(RGD含有環状ペプチド) 本発明の放射性標識薬剤で使用できるRGD含有環状ペプチドは、腫瘍に結合することができれば、特に限定されない。例えば、以下を例示することができる。 (1)c(RGDfK):シクロ−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Lys(配列番号1) (2)c(RGDyK):シクロ−Arg−Gly−Asp−D−Tyr−Lys(配列番号2) (3)c(RGDfV):シクロ−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val(配列番号3) (4)c(RGDyV):シクロ−Arg−Gly−Asp−D−Tyr−Val(配列番号4)(配位子) 本発明の放射性標識薬剤で使用できる配位子は、癌の原発巣のみならず骨転移をも同時に検出できれば、特に限定されないが、以下を例示することができる。 (1)1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid:DOTA) (2)1,4,7-triazacyclononane-triacetic acid(NOTA) (3)triazacyclononane-phosphinate(TRAP) (4)mercaptacetylgycilgycilglycine(MAG3) (5)tricarbonyl (6)ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) 特に、好ましく配位子は、DOTAである。(本発明の放射性標識薬剤の投与方法) 本発明の放射性標識薬剤の投与方法として、静脈内投与又は動脈内投与を好ましく挙げることができる。投与経路はこれら経路に限定されず、本放射性標識薬剤の投与後、その作用が有効に発現し得る経路であればいずれも利用できる。(本発明の放射性標識薬剤の放射活性強度) 本発明の放射性標識薬剤の放射活性強度は、本薬剤を投与したことにより目的を達成し得る強度であり、かつ、被験者の放射線被爆が可能な限り低い臨床投与量である限りにおいて任意である。放射性強度は、放射性標識薬剤を使用する一般的な診断方法や治療方法で使用されている放射活性強度を参考にして決定できる。(本発明の放射性標識薬剤の形態) 本発明の放射性標識薬剤の形態は、放射性物質を含む配位子−(Asp)n−RGD含有環状ペプチドを有効成分として含み、必要に応じて、1種類または2種類以上の医薬的に許容される担体(医薬用担体)を含むことができる。医薬用担体として、pHを調整するための酸、塩基、緩衝液、安定化剤、等張化剤、保存剤を例示できる。(本発明の放射性標識薬剤の効果) 本発明の放射性標識薬剤は、画像診断や、内用放射線治療に使用することができる。本発明の放射性標識薬剤は、癌疾患の診断や治療に好ましく使用されるが、適用疾患は特に限定されず、画像診断や内用放射線治療が適用される疾患であればいずれの疾患にも使用できる。診断や治療の対象となる標的の特性にしたがって、放射性物質を選択することにより、該標的の診断や治療が可能であり、本放射性標識薬剤は診断及び治療の分野で広く使用できる。 以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(材料及び装置) 本実施例では、下記の材料及び装置を使用した。 プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルをJEOL JNM-ECS400(JEOL Ltd, Tokyo, Japan)によって測定し、化学シフトは内部標準のテトラメチルシランからダウンフィールドされたppmで表した。 エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI-MS)をJEOL JMS-T100TD(JEOL Ltd)によって測定した。 マトリックス支援レーザー脱離イオン化法飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)は、ABI 4800 plus(AB SCIEX, Foster, CA, USA)によって測定した。 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-tris(t-酢酸ブチル)(DOTA-tris)はMacrocyclics社(Dallas, TX, USA)製を使用した。 67GaCl3はNihon Medi-physics社(Tokyo, Japan)から譲り受けたものである。 放射活性はAuto Gamma System ARC-7010B(Hitachi Aloka Medical, Tokyo, Japan)によって測定した。 U87MG神経膠芽腫細胞はDS Pharma Biomedical社(Osaka, Japan)製を使用した。 他の化学薬品及び溶剤はすべて試薬グレードのものであり、精製を加えずに使用した。{放射性物質を含むDOTA−(Asp)n−c(RGDfK)の合成} 下記の方法により、放射性物質を含むDOTA−(Asp)n−c(RGDfK)の合成を行った。さらに、併せて、放射性物質を含むDOTA-c(RGDfK)及びc(RGDfK)も合成した。{c(RGDfK)の合成} c(RGDfK)を下記の方法に従い合成した。 ペプチドを標準Fmoc系固相法によって合成した。詳しくは、Fmoc-Gly-OH(樹脂に対して4モル当量)をジクロロメタンに溶解して、溶解液を得た。次に、塩化2-クロロトリチル樹脂及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA, 3.5当量)を、該溶解液に添加した。さらに、該添加後の反応混合物を1時間回転させ、1 mLのメタノールを添加して、さらに30分間反応させた。 次に、以下の工程からなるサイクルにしたがってペプチド鎖を作製した。 (a)ジメチルホルムアミド(DMF)中20%のピペリジンを用いて、Fmoc基を15分間脱保護する工程。 (b)DMF中で、Fmoc-Arg(pmc)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Phe-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(2.5当量)と、1,3-ジイソプロピル-カルボジイミド(DIPCI, 2.5当量)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HoBt, 2.5当量)とを、1.5時間共役させる工程。その共役反応の反復によって、該樹脂がKaiser試験に陽性になり、樹脂-Gly-Arg(pmc)-Lys(Boc)-D-Phe-Asp(Otbu)が得られた。 樹脂結合ペプチドをジクロロメタン中、30%の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)で5分間処理した。ろ過した後、ろ液中の溶剤を真空除去した。残留物である{Gly-Arg(pmc)-Lys(Boc)-D-Phe-Asp(OtBu)(4): ESI-MS: 1044 [M + H]+}は精製を加えることなく次の反応に使用した。 ペプチド{Gly-Arg(pmc)-Lys(Boc)-D-Phe-Asp(OtBu)}をDMF (5 mM)に溶解し、NaHCO3(5当量)及びジフェニルホスホリルアジド(DPPA, 3当量)を添加した。室温で24時間攪拌した後、固体NaHCO3をろ過で除去し、DMFを真空除去した。残留物である{環状Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)- D-Phe-Lys(Boc)(5): ESI-MS: 1026 [M + H]+}は精製を加えることなく次の反応に使用した。 環状ペプチドを95%のトリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%の水及び2.5%のトリイソプロピルシラン(TIS)で室温にて24時間かけて処理した。粗ペプチドをCosmosil 5C18-AR 300カラム(10 × 150 mm)上での逆相(RP)-HPLCによって、4.0 mL/minの流速で、0.1 %TFAを含む10%メタノール水溶液から0.1%TFAを含む50%メタノール水溶液への勾配移動相で20分間精製した。220 nmの波長におけるUV吸収をモニタリングし、クロマトグラムを得た。c(RGDfK)を含む画分を質量分析法によって測定し、回収した。凍結乾燥によって溶剤を除去し、白色粉末のc(RGDfK)(ESI-MS (m/z): 604 [M + H]+、化合物6, 39.8%)を得た。{DOTA-c(RGDfK)、DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の合成} 環状[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys(Alloc)]を標準Fmoc系固相法によって人為的に合成し、N2雰囲気下、クロロホルム:酢酸:N-メチルモルホリン(37:2:1)中でPd(PPh3)4を2時間処理してAlloc保護基を選択的に脱保護した。 粗ペプチドをCosmosil 5C18-AR 300カラム(10 × 150 mm)上でのRP-HPLCによって、4.0 mL/minの流速で、0.1 %TFAを含む55%メタノール水溶液から0.1%TFAを含む90%メタノール水溶液への勾配移動相で20分間精製した。220 nmの波長におけるUV吸収をモニタリングし、クロマトグラムを得た。環状Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lysを含む画分を質量分析法によって測定し、回収した。凍結乾燥によって溶剤を除去し、黄色粉末の環状Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys(98.8 mg, 53.3%、ESI-MS (m/z): 926 [M + H]+)を得た。 DOTA-tris及び[Asp(OtBu)]8若しくは[Asp(OtBu)]11を用いて、自体公知のFmoc固相法によって、 [Asp(OtBu)]8-DOTA(tris)及び[Asp(OtBu)]11-DOTA(tris)を合成した。環状[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys](9.25 mg, 10.0 μmol)及び[Asp(OtBu)]11-DOTA(tris)(24.6 mg, 10.0 μmol)を500 μLのDMFに溶解して、反応溶液を作成した。HoBt(8当量)及びDIPCI(7当量)を該反応溶液に添加した。さらに、該反応溶液を2時間静かに震盪させ、その後、Cosmosil 5C18-AR-300カラム(10 × 150 mm)上でのRP-HPLCによって、4.0 mL/minの流速で、0.1 %TFAを含む70%メタノール水溶液から0.1%TFAを含む100%メタノール水溶液への勾配移動相で20分間精製した。220 nmの波長におけるUV吸収をモニタリングし、クロマトグラムを得た。 DOTA(tris)-[Asp(OtBu)]11-c[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys]を含む画分を質量分析法によって測定し、回収した。凍結乾燥によって溶剤を除去し、白色粉末(24.0 mg、71.4%、ESI-MS (m/z): 3361 [M + H]+)を得た。 [Asp(OtBu)]11-DOTA(tris)に代わる出発物質として[Asp(OtBu)]8-DOTA(tris)を使用し、上述の方法でDOTA(tris)-[Asp(OtBu)]8-c[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys](12.4 mg, 43.5%)を得た{ESI-MS (m/z): 2255 [M + H]+}。 [Asp(OtBu)]11-DOTA(tris)に代わる出発物質としてDOTA(tris)を使用し、DOTA(tris)-[Asp(OtBu)]11-c[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys]の場合と同じ方法でDOTA(tris)-c[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys](6.8 mg, 45.9%、ESI-MS (m/z): 1481 [M + H]+)を得た。 DOTA(tris)-[Asp(OtBu)]11-c[Arg(pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Lys]を95%のTFA、2.5%の水及び2.5%のTISによって室温で24時間処理した。粗ペプチドをCosmosil 5C18-AR 300カラム(10 × 150 mm)上での逆相RP-HPLCによって、4.0 mL/minの流速で、0.1 %TFAを含む10%メタノール水溶液から0.1%TFAを含む50%メタノール水溶液への勾配移動相で20分間精製した。220 nmの波長におけるUV吸収をモニタリングし、クロマトグラムを得た。凍結乾燥によって溶剤を除去し、白色粉末のDOTA-(Asp)11-c(RGDfK)(1.40 mg, 8.7%)を得た。 DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)(1.20 mg, 9.7%)及びDOTA-c(RGDfK)(1.20 mg, 26.4%、ESI-MS (m/z): 990 [M + H]+)を上述の方法で得た。 最後に、DOTA-c(RGDfK)、DOTA-(Asp)8-c(RGDfK){MALDI-TOF-MS (m/z): 1911 [M + H]+}及びDOTA-(Asp)11-c(RGDfK){MALDI-TOF-MS (m/z): 2256 [M + H]+}の全収率はそれぞれ6.5%、2.3%及び3.3%であった。(非標識Gaの導入及びその確認) Ga(NO3)3(3.6mg, 14.1μmol)を360 μLの水に溶解して、Ga(NO3)3水溶液を作成した。前記で合成したDOTA-(Asp)11-c(RGDfK)(1.1mg,0.488μmol)を96 μLの水に溶解し、さらに、48 μLのGa(NO3)3水溶液と混合して、混合液を作製した。該混合液を40℃、2時間で加熱した後、HPLCで精製してGa-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK) {0.56 mg, 87.5%:図2(f)}を得た。HPLCは、Cosmosil 5C18-AR-II(4.6 × 150 mm)(flow rate of 1 mL/min with a gradient mobile phase of 15% methanol in water with 0.1% TFA to 40% methanol in water with 0.1% TFA for 30 minutes)を用いて行った。 さらに、DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及びDOTA-c(RGDfK)に上記同様に非標識Gaを導入し、さらに精製して、それぞれ、Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK){図2(e)}及びGa-DOTA-c(RGDfK){図2d}を得た。 Ga-DOTA-c(RGDfK){ESI-MS (m/z): 1056 [M + H]+}、Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK){ MALDI-TOF-MS (m/z): 1977 [M + H]+}及びGa-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK){ MALDI-TOF-MS (m/z): 2325 [M + H]+}の分子量を確認することによって、合成できていることを確認した。(67Gaの導入及びその確認) 前記で合成したDOTA-(Asp)11-c(RGDfK)(20 μg)を75 μLの0.2 M酢酸アンモニウム緩衝液(pH 5.0)に溶解し、該溶液に25 μLの67GaCl3(74 MBq/mL)溶液を添加した。80°C で8分間加熱した後、溶液をCosmosil 5C18-AR-II(4.6 × 150 mm)上でのRP-HPLCによって、1 mL/minの流速で、0.1 %TFAを含む15%メタノール水溶液から0.1%TFAを含む40%メタノール水溶液への勾配移動相で30分間精製した。 さらに、DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び DOTA-c(RGDfK)を上記同様に放射標識し、さらに精製した。 67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の放射化学的収率は90%を超えていた。さらに、HPLCによって精製した後、放射化学的純度は97%を超えていたことを確認した(図2)。 HPLC分析では、67Ga-DOTA-c(RGDfK) {図2(a)}、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK) {図2(b)}及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK) {図2(c)}の各保持時間はそれぞれ12.5分、17.0分及び18.5分であった。 以上により、67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、高い放射性化学的純度を有していることを確認した。{67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の安定性確認} 67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)を0.1 MのPBS(pH 7.4)中、37°Cで、それぞれ1、3及び24時間インキュベートした。 サンプル溶液をCosmosil 5C18-AR-II(4.6 × 150 mm)上でのRP-HPLC分析に供し、1 mL/minの流速で、勾配移動相は0.1%TFAを含む10%メタノール水溶液から0.1%TFAを含む50%メタノール水溶液への勾配で、20分間移動させた。 また、67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)を、アポトランスフェリン7.5 mg/mLを含む1 M PBS(pH 7.4)溶液で、37°Cで1、3及び24時間インキュベートし、その後、流速0.3 mL/min、0.1 M PBS(pH 6.8)の無勾配移動相で、TSK-GEL Super SW3000カラム(4.6 × 300 mm, TOSOH, Tokyo, Japan)上でのサイズ排除(SE)-HPLC分析によって分析した。 67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)のPBS 及びアポトランスフェリン溶液中での安定性を示した結果を図3及び図4に示す。 図3及び図4は、それぞれ、PBS及びアポトランスフェリン溶液中での67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の安定性を示している。 ガリウムとキレートするためのDOTAを共通に有する67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、PBS及びアポトランスフェリン溶液中での安定度も同じであった。 さらに、PBS中、37°Cで24時間インキュベートした後、約85%の67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)が未変化のままであった。24時間アポトランスフェリンでインキュベートした結果、アポトランスフェリンによって67Gaが配位交換されることはほとんど確認できなかった。 以上により、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、インビトロでの分解は緩やかであり、非常に高い割合で放射性物質を保持できることを確認した。(ヒドロキシアパタイト結合アッセイ) 文献{Biochim Biophys Acta.1991;1075(1):56-60}に記載の方法を改変して、本発明の放射性標識薬剤のヒドロキシアパタイト結合アッセイを行った。 より詳しくは、ヒドロキシアパタイトビーズ(Bio-Gel; Bio-Rad, Hercules, USA)を1 mg/mL、2.5 mg/mL、10 mg/mL、25 mg/mLの割合でTris/HCl緩衝生理食塩水(50 mM, pH 7.4)に懸濁した。DOTA-RGDfK、DOTA-(Asp)8-RGDfK及びDOTA-(Asp)11-RGDfK を懸濁液に添加して、リガンド濃度を19.5 μMに調整した。67Ga標識ペプチド各200 μLの溶液を200 μLのヒドロキシアパタイト懸濁液に添加した。該混合液を室温で1 時間静かに震盪させて、さらに10,000gで5分間遠心分離した後、上清の放射活性を測定した。コントロール群ではヒドロキシアパタイトビーズを使用せずに同じ手順を行った。 下記式でヒドロキシアパタイトの結合率を求めた。 ヒドロキシアパタイト結合率(%)=(1-[各試料の上清の放射活性]/[コントロールの上清の放射活性])×100(ヒドロキシアパタイト結合アッセイの結果) 67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)のヒドロキシアパタイト結合アッセイの結果を図5に示す。 ヒドロキシアパタイトの量が増加すると、ヒドロキシアパタイトに結合した67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の割合も上昇した。長鎖アスパラギン酸ペプチドリンカー{(Asp)n}を有する67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)と比較して、ヒドロキシアパタイトへの結合率が高かった。 一方、DOTAとc(RGDfK)モチーフ間に長鎖アスパラギン酸ペプチドリンカーを持たない67Ga-DOTA-c(RGDfK)はヒドロキシアパタイトには殆ど結合しなかった。 以上により、DOTAとc(RGDfK)モチーフ間に (Asp)nを挿入することにより、特異的かつ強力にヒドロキシアパタイトに結合できることを確認した。これにより、67Ga-DOTA-(Asp)n-c(RGDfK)は、特異的かつ強力にヒドロキシアパタイトに結合できる。(生体内分布の確認) 本発明の放射性標識薬剤の生体内分布の確認を行った。詳細は、以下の通りである。(使用した動物) 金沢大学「動物実験委員会(Committee on Animal Experimentation)」から承認を受けた実験方法を採用した。さらに、金沢大学の「実験動物の管理と使用に関するガイドライン(Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animals)」に従って本実施例を行った。 23°C 、12時間毎の照光/遮光周期で、食餌及び水を自由に摂取できるようにヌードマウスを収容した。10%の加熱不活性化ウシ胎仔血清、ペニシリン(100 units/mL)及びストレプトマイシン(100 μg/mL)を含むEagle最小必須培地(EMEM)にて、37°C で5% CO2雰囲気下を維持しながら、U87MG細胞を細胞培養皿中で培養した。腫瘍を生成するため、100 μLのPBS中、約5 × 106個の調製済みU87MG神経膠芽腫細胞を、4週齢の雌BALB/cヌードマウス(15〜19 g, Japan SLC, Inc., Hamamatsu, Japan)の左右の肩に皮下注射した。接種から約14〜21日後(腫瘍が明確に判別できる大きさに達するのに必要な期間)において、下記の生体内分布実験を行った。(生体内分布実験) 前記のU87MG担癌マウス(各4匹のマウス群)に、67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)、又は67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)を含む生理食塩水溶液100 μLを静脈内投与した。注射から1時間後及び3時間後、マウスを屠殺した。そして、各組織を摘出、秤量し、オートウェルガンマカウンターで放射能計数を測定した。 過剰量のRGDペプチドが生体内分布に及ぼす影響を確認するため、3匹のマウス群に67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)(74 kBq)及びc(RGDfK) の混合溶液100 μLを静脈内投与した(0.2 mg/マウス)。注射から1時間後にマウスを屠殺した。そして、各組織を摘出、秤量し、オートウェルガンマカウンターで放射能計数を測定した。 胃でのパーセント注射量(%用量)、及び他の器官での1グラム当たりのパーセント注射量(%用量/g)でデータを示した。一元配置分散分析(ANOVA)、次いでTukey-Kramer事後試験によって、67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA- (Asp)11-c(RGDfK)の生体内分布の有意性を判定した。Studentの両側t検定によってブロッキング実験の有意性を判定した。p<0.05で、結果は統計学的に有意であると判定した。(生体内分布実験結果) 67Ga-DOTA-c(RGDfK), 67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の生体内分布の結果を図6〜9に示す。 骨中の67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の集積は、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)と比較して、有意に高かった(参照:図9)。67Ga-DOTA-c(RGDfK)は、骨中では殆ど集積しなかった(参照:図6、9)。 一方、67Ga-DOTA-c(RGDfK)、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、腫瘍中で多量に集積していた(参照:図9)。 67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、腎臓、肝臓、腸及び脾臓でやや集積し、膵臓、肺、心臓、胃、筋肉及び脳での集積は少ないという類似した生体内分布パターンを示した。 過剰量のRGDペプチドが生体内分布に及ぼす影響の結果を図10、11に示す。 c(RGDfK)ペプチドを67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)と同時に生体内に注射すると、腫瘍内での67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の集積が大幅に減少することを確認した。すなわち、67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)のc(RGDfK)が腫瘍に特異的に結合することを確認した。 さらに、c(RGDfK)ペプチドを67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)と同時に生体内に注射すると、骨での蓄積が大幅に増加することも確認した。すなわち、67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)の骨中蓄積がc(RGDfK)に起因するものではなくアスパラギン酸リンカー{(Asp)n}に起因することによることを確認した。 以上により、67Ga-DOTA-(Asp)8-c(RGDfK)及び67Ga-DOTA-(Asp)11-c(RGDfK)は、生体内の腫瘍及び骨を選択的に認識して腫瘍内及び骨に蓄積できることを確認した。 これにより、本発明の放射性標識薬剤は、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる。(総論) 本発明の放射性標識薬剤は、アスパラギン酸リンカー{(Asp)n}及びRGD含有環状ペプチドの存在により、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる。 また、配位子、特に、DOTAは、ガリウムのみならずインジウム(111In)、イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)等と安定的な錯体を形成できるので、配位子(特に、DOTA)-(Asp)11-c(RGDfK)はこのような放射性金属で標識できる。したがって、配位子(特に、DOTA)-(Asp)n-c(RGDfK) と多様な放射性金属、特に抗腫瘍効果を有する放射性物質との錯体は診断薬としてだけでなく、治療薬としても有用である。 また、67Gaの代わりに68Gaを使用した68Ga-配位子(特に、DOTA)-(Asp)n-c(RGDfK)は、癌の初期病変のみならず骨転移を同時に診断するためのPETトレーサーとして有用である。 本発明では、癌の原発巣のみならず骨転移をも同時に検出できる放射性標識薬剤を提供することができる。 放射性物質を含む配位子−(Asp)n−RGD含有環状ペプチドを含む放射性標識薬剤であって、 n=5〜25であることを特徴とする放射性標識薬剤。前記放射性物質は、以下のいずれか1から選択される請求項1に記載の放射性標識薬剤。 (1)ガリウム (2)銅 (3)インジウム (4)イットリウム (5)テクネチウム (6)ルテチウム (7)ビスマス (8)レ二ウム 前記RGD含有環状ペプチドは、以下のいずれか1から選択される請求項1又は2に記載の放射性標識薬剤。 (1)c(RGDfK) (2)c(RGDyK) (3)c(RGDfV) (4)c(RGDyV) 前記放射性物質はガリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の放射性標識薬剤。 前記配位子は、以下のいずれか1から選ばれる請求項1〜4のいずれか1に記載の放射性標識薬剤。 (1)1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid:DOTA) (2)1,4,7-triazacyclononane-triacetic acid(NOTA) (3)triazacyclononane-phosphinate(TRAP) (4)mercaptacetylgycilgycilglycine(MAG3) (5)tricarbonyl (6)ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) 前記配位子は、DOTAである請求項1〜5のいずれか1に記載の放射性標識薬剤。 放射性ガリウムを含むDOTA−(Asp)n−c(RGDfK)を含む放射性標識薬剤であって、 n=5〜25であることを特徴とする放射性標識薬剤。 ガリウムを含むDOTA−(Asp)n−c(RGDfK)を含む標識薬剤であって、 n=5〜25であることを特徴とする標識薬剤。 【課題】癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できる放射性標識薬剤を提供する。【解決手段】放射性物質を含む配位子−(Asp)n−RGD含有環状ペプチドを含む化合物が、癌の原発巣のみならず、骨転移をも同時に検出できることを確認して、該化合物を含む放射性標識薬剤を完成した。【選択図】図1配列表


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