タイトル: | 公開特許公報(A)_ルテニウム錯体及びその製造方法、ルテニウム含有薄膜及びその作製方法 |
出願番号: | 2013220742 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07F 17/02,C07C 13/263,C07D 207/323,H01L 21/8242,H01L 27/108,H01L 21/8246,H01L 27/105,H01L 21/28,H01L 21/285,C07F 15/00 |
尾池 浩幸 山本 俊樹 摩庭 篤 岩永 宏平 河野 和久 多田 賢一 JP 2015081246 公開特許公報(A) 20150427 2013220742 20131024 ルテニウム錯体及びその製造方法、ルテニウム含有薄膜及びその作製方法 東ソー株式会社 000003300 公益財団法人相模中央化学研究所 000173762 尾池 浩幸 山本 俊樹 摩庭 篤 岩永 宏平 河野 和久 多田 賢一 C07F 17/02 20060101AFI20150331BHJP C07C 13/263 20060101ALI20150331BHJP C07D 207/323 20060101ALI20150331BHJP H01L 21/8242 20060101ALI20150331BHJP H01L 27/108 20060101ALI20150331BHJP H01L 21/8246 20060101ALI20150331BHJP H01L 27/105 20060101ALI20150331BHJP H01L 21/28 20060101ALI20150331BHJP H01L 21/285 20060101ALI20150331BHJP C07F 15/00 20060101ALI20150331BHJP JPC07F17/02C07C13/263C07D207/323H01L27/10 681ZH01L27/10 444H01L27/10 444BH01L27/10 448H01L21/28 301RH01L21/285 CC07F15/00 A 12 2 OL 21 4C069 4H006 4H050 4M104 5F083 4C069AC07 4C069BA01 4H006AA01 4H006AA02 4H006AA03 4H006AB78 4H006AB91 4H006AC90 4H050AA01 4H050AA02 4H050AA03 4H050AB78 4H050AB91 4H050WB11 4H050WB14 4H050WB21 4M104BB04 4M104BB36 4M104DD43 4M104DD44 4M104DD45 4M104GG16 4M104HH12 4M104HH14 5F083AD00 5F083FR00 5F083FR01 5F083FZ10 5F083GA02 5F083GA09 5F083GA10 5F083GA27 5F083GA29 5F083JA02 5F083JA37 5F083JA38 5F083JA40 5F083JA43 5F083JA44 5F083PR21 5F083ZA20 本発明は、半導体素子の製造用原料として有用なルテニウム錯体及びその製造方法、該ルテニウム錯体を用いたルテニウム含有薄膜及びその作製方法に関する。 ルテニウムは、高い導電性を示すこと、導電性酸化物が形成可能であること、仕事関数が高いこと、エッチング特性にも優れること、銅との格子整合性に優れることなどの特長を持つため、DRAMなどのメモリー電極、ゲート電極、銅配線シード層/密着層などの材料として注目を集めている。次世代の半導体デバイスでは、記憶容量や応答性をさらに向上させる目的のため、高度に細密化され、かつ高度に三次元化されたデザインが採用されている。したがって次世代の半導体装置を構成する材料としてルテニウムを使用するためには、三次元化された基板上に数ナノ〜数十ナノメートル程度の厚みのルテニウム含有薄膜を均一に形成する技術の確立が必要とされている。三次元化された基板上に金属薄膜を作製するための技術としては、原子層蒸着法(ALD法)や化学気相蒸着法(CVD法)など、化学反応に基づく気相蒸着法の活用が有力視されている。例えば、この気相蒸着法を用いて次世代のDRAM上部電極として金属ルテニウムが成膜される場合、下地にはキャパシタ絶縁膜としてZrO2等の金属酸化物が使用されるため、酸化性ガスを用いる条件で成膜しても差支えない。次世代のDRAM下部電極や銅配線シード層/密着層としてルテニウムが使用される場合、下地にはバリアメタルとして窒化チタンや窒化タンタルなどが採用される見込みである。ルテニウム含有薄膜を作製する際にバリアメタルが酸化されると、バリア性能の劣化、抵抗値の上昇に起因するトランジスタとの導通不良、及び配線間容量の増加に起因する応答性の低下などの問題が生じる。これらの問題を回避するため、酸素やオゾンなどの酸化性ガスを用いない条件下でもルテニウム含有薄膜の作製を可能とする材料が求められている。 非特許文献1には、反応ガスとして還元性ガスを用いる条件下で金属ルテニウム薄膜を作製可能な化合物として、トリカルボニル(η4−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン)ルテニウム(Ru(η4−C8H8)(CO)3)、トリカルボニル(η4−メチル−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン)ルテニウム(Ru(η4−C8H7Me)(CO)3)及びトリカルボニル(η4−エチル−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン)ルテニウム(Ru(η4−C8H7Et)(CO)3)が記載されている。しかし、これらの化合物を用いて作製された金属ルテニウム薄膜の抵抗率は、それぞれ93、152及び125μΩ・cmと高抵抗率であり、実用的な材料とは言い難い。 非特許文献2には、本発明のルテニウム錯体(1)に類似の構造を持つ化合物として、(1−3:5−6−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,3,4,5−テトラメチルピロリル)ルテニウム(Ru(1−3:5−6−η5−C8H11)(η5−NC4Me4))が記載されている。しかし、該文献に記載されているのは1−3:5−6−η5−シクロオクタジエニル配位子を有する錯体に限定されている。また該文献に記載の合成方法は、ジ−μ−クロロ−(η4−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム([Ru(η4−C8H12)Cl2]x)と2,3,4,5−テトラメチルピロリルリチウムとの反応によるものであり、本発明の製造方法とは異なる。さらに該文献にはこの錯体をルテニウム含有薄膜の作製用材料として用いることに関する記述は一切ない。Dalton Transactions、第41巻、1678ページ(2012年)。Organometallics、第19巻、2853ページ(2000年)。 本発明は、反応ガスとして酸化性ガスを用いる条件下でも反応ガスとして還元性ガスを用いる条件下でもルテニウム含有薄膜を作製することが出来る作製方法、該作製方法の材料として有用なルテニウム錯体(1)、及び該ルテニウム錯体の製造方法を提供することを課題とする。 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で示されるルテニウム錯体が反応ガスとして酸化性ガスを用いる条件下でも反応ガスとして還元性ガスを用いる条件下でもルテニウム含有薄膜を作製するための材料として有用なことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、一般式(1) (1)(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは0〜2の整数を表す。)で示されるルテニウム錯体に関する。 また本発明は、一般式(2) (2)(式中、nは0〜2の整数を表す。Z−は対アニオンを表す。)で示されるカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体と、一般式(3) (3)(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示される置換ピロールを塩基の存在下で反応させる、一般式(1)で示されるルテニウム錯体の製造方法に関する。 さらに本発明は、一般式(1) (1)(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは0〜2の整数を表す。)で示されるルテニウム錯体を気化させ、該ルテニウム錯体を基板上で分解する、ルテニウム含有薄膜の作製方法に関する。 さらに本発明は、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を気化させ、該ルテニウム錯体を基板上で分解して作製されるルテニウム含有薄膜に関する。さらに本発明は、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を気化させ、該ルテニウム錯体を基板上で分解して作製されるルテニウム含有薄膜を電極部分及び/又は配線部分に使用する半導体デバイスに関する。 以下、本発明を更に詳細に説明する。まず、一般式(1)中のR1、R2及びnの定義について説明する。 R1及びR2で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。本発明のルテニウム錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが更に好ましい。 nは0〜2の整数であり、本発明のルテニウム錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧を持つ点で、0であることが好ましい。 本発明のルテニウム錯体(1)の具体例を表1及び表2に示した。なお、Me、Et、Pr、iPr、Bu、tBu、Pe及びHxは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基を示す。 表1及び表2に挙げた例示の中でも、CVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジメチルピロリル)ルテニウム(1−1)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−エチル−5−メチルピロリル)ルテニウム(1−2)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジエチルピロリル)ルテニウム(1−3)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−エチル−5−プロピルピロリル)ルテニウム(1−4)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジプロピルピロリル)ルテニウム(1−5)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−ブチル−5−プロピルピロリル)ルテニウム(1−6)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジブチルピロリル)ルテニウム(1−7)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−ブチル−5−ペンチルピロリル)ルテニウム(1−8)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジペンチルピロリル)ルテニウム(1−9)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−ヘキシル−5−ペンチルピロリル)ルテニウム(1−10)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジヘキシルピロリル)ルテニウム(1−11)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−メチル−5−イソプロピルピロリル)ルテニウム(1−12)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−tert−ブチル−5−メチル)ルテニウム(1−13)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−エチル−5−イソプロピルピロリル)ルテニウム(1−14)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジ(イソプロピル)ピロリル)ルテニウム(1−15)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−tert−ブチル−5−イソプロピルピロリル)ルテニウム(1−16)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジ(tert−ブチル)ピロリル)ルテニウム(1−17)が好ましく、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジメチルピロリル)ルテニウム(1−1)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−エチル−5−メチルピロリル)ルテニウム(1−2)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジエチルピロリル)ルテニウム(1−3)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−エチル−5−プロピルピロリル)ルテニウム(1−4)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジプロピルピロリル)ルテニウム(1−5)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−ブチル−5−プロピルピロリル)ルテニウム(1−6)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジブチルピロリル)ルテニウム(1−7)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−メチル−5−イソプロピルピロリル)ルテニウム(1−12)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−tert−ブチル−5−メチル)ルテニウム(1−13)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−エチル−5−イソプロピルピロリル)ルテニウム(1−14)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジ(イソプロピル)ピロリル)ルテニウム(1−15)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2−tert−ブチル−5−イソプロピルピロリル)ルテニウム(1−16)、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジ(tert−ブチル)ピロリル)ルテニウム(1−17)が更に好ましく、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジメチルピロリル)ルテニウム(1−1)が殊更好ましい。 次に、本発明のルテニウム錯体(1)の製造方法について説明する。 本発明のルテニウム錯体(1)は、以下の製造方法1、又は製造方法3により製造することができる。 製造方法1は、カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)と、置換ピロール(3)を、塩基の存在下反応させることにより本発明のルテニウム錯体(1)を製造する方法である。製造方法1(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。Z−は対アニオンを表す。nは0〜2の整数を表す。) カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)のカチオン部分の具体例を以下の(2−1)〜(2−12)に示した。 (2−1)〜(2−12)に挙げた例示の中でも、CVD材料やALD材料として好適な蒸気圧を持つ点で、[ビス(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(ヒドリド)ルテニウム(IV)]([RuH(η5−C8H11)2])(2−1)が好ましい。 一般式(2)における対アニオンZ−の例としては、カチオン性金属錯体の対アニオンとして一般的に用いられているものを挙げることが出来る。具体的にはテトラフルオロホウ酸イオン(BF4−)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)、テトラフルオロアルミン酸イオン(AlF4−)などのフルオロ錯アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3−)、メタンスルホン酸イオン(MeSO3−)、メチル硫酸イオン(MeSO4−)などの一価スルホン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3−)、過塩素酸イオン(ClO4−)、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl4−)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン((CF3SO2)2N−)などの一塩基酸の対アニオン、硫酸イオン(SO42−)、硫酸水素イオン(HSO4−)、リン酸イオン(PO43−)、リン酸一水素イオン(HPO42−)、リン酸二水素イオン(H2PO4−)、ジメチルリン酸イオン(MeO)2PO4−)、ジエチルリン酸イオン((EtO)2PO4−)などの多塩基酸の対アニオン又はその誘導体などを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、対アニオンZ−としてはBF4−、PF6−などのフルオロ錯アニオン、CF3SO3−、MeSO3−などの一価スルホン酸イオンが好ましく、BF4−が更に好ましい。 カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)の好ましい具体例としては、[ビス(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(ヒドリド)ルテニウム(IV)][テトラフルオロボラト]([RuH(η5−C8H11)2][BF4])、[(ビス(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(ヒドリド)ルテニウム(IV))][ヘキサフルオロホスファト]([RuH(η5−C8H11)2][PF6])、[(ビス(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(ヒドリド)ルテニウム(IV))][トリフルオロメタンスルホナト]([RuH(η5−C8H11)2][CF3SO3])、[(ビス(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(ヒドリド)ルテニウム(IV))][メタンスルホナト]([RuH(η5−C8H11)2][MeSO3])などを挙げることが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、[ビス(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(ヒドリド)ルテニウム(IV)][テトラフルオロボラト]([RuH(η5−C8H11)2][BF4])等が好ましい。 置換ピロール(3)の具体例としては、2,5−ジメチルピロール、2−エチル−5−メチルピロール、2,5−ジエチルピロール、2−エチル−5−プロピルピロール、2,5−ジプロピルピロール、2−ブチル−5−プロピルピロール、2,5−ジブチルピロール、2−ブチル−5−ペンチルピロール、2,5−ジペンチルピロール、2−ヘキシル−5−ペンチルピロール、2,5−ジヘキシルピロール、2−メチル−5−イソプロピルピロール、2−tert−ブチル−5−メチルピロール、2−エチル−5−イソプロピルピロール、2,5−ジ(イソプロピル)ピロール、2−tert−ブチル−5−イソプロピルピロール、2,5−ジ(tert−ブチル)ピロールなどを挙げることが出来る。ルテニウム錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧を持つ点で、2,5−ジメチルピロール、2−エチル−5−メチルピロール、2,5−ジエチルピロール、2−エチル−5−プロピルピロール、2,5−ジプロピルピロール、2−ブチル−5−プロピルピロール、2,5−ジブチルピロール、2−メチル−5−イソプロピルピロール、2−tert−ブチル−5−メチルピロール、2−エチル−5−イソプロピルピロール、2,5−ジ(イソプロピル)ピロール、2−tert−ブチル−5−イソプロピルピロール、2,5−ジ(tert−ブチル)ピロールが好ましく、2,5−ジメチルピロールが更に好ましい。 製造方法1で用いることが出来る塩基としては、無機塩基及び有機塩基を挙げることが出来る。該無機塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどの第2族金属炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムなどの典型金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムなどの典型金属水素化物、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどの典型金属水素化錯化合物、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジアルキルアミドなどのアルカリ金属アミドなどを例示することが出来る。また該有機塩基としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリブチルアミンなどの第2級又は第3級アミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロオクタンなどの環状脂肪族アミン、ピリジンなどの芳香族アミンを例示することが出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、塩基としては第2級又は第3級アミン、ピリジンが好ましく、第2級又は第3級アミンが更に好ましく、トリエチルアミンが殊更好ましい。 製造方法1は、ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、不活性ガス中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来、アルゴン又は窒素ガスが更に好ましい。 製造方法1は、ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で有機溶媒中で実施することが好ましい。製造方法1を有機溶媒中で実施する場合、該有機溶媒として具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジブロモメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコールなどを例示することが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。ルテニウム錯体(1)の収率が良い点で、有機溶媒としてはクロロホルム、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール及びヘキサンが好ましく、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが更に好ましい。 置換ピロール(3)の入手方法としては、市販の製品を入手するほか、Journal of the American Chemical Society,第77巻,3340ページ(1955年)やOrganic Letters,第15巻,1436ページ(2013)などに記載の製造方法を挙げることが出来る。 次に製造方法1を実施するときのカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)、置換ピロール(3)及び塩基のモル比に関して説明する。好ましくはカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)1モルに対して1モル以上の置換ピロール(3)及び塩基を用いることによって、収率良くルテニウム錯体(1)を製造することが出来る。 また製造方法1では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、−80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってルテニウム錯体(1)を収率良く製造することが出来る。製造方法1によって製造したルテニウム錯体(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィーなどを挙げることが出来る。 製造方法1の原料であるカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)は、Organometallics,第10巻,455ページ(1991年)に記載の製造方法2に従って製造することが出来る。製造方法2は、(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)とプロトン酸H+Z−とを反応させることによりカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)を製造する方法である。 製造方法2(式中、nは0〜2の整数を表す。Z−は対アニオンを表す。) (シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)は、Journal of Organometallic Chemistry,第272巻,179ページ(1984年)に記載の方法に従って製造することが出来る。具体的には、亜鉛存在下、塩化ルテニウムとシクロオクタジエンとを反応させることにより、(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)を製造する方法である。 シクロオクタジエンの具体例としては、1,5−シクロオクタジエン、1−メチル−1,5−シクロオクタジエン、1,2−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,4−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、2,4−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、3,7−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンなどを挙げることが出来る。入手しやすい点で、1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンが好ましく、1,5−シクロオクタジエンが更に好ましい。 シクロオクタジエンの入手方法としては、市販の製品を入手するほか、Journal of the American Chemical Society,第116巻,2889ページ(1994年)やHeterocycles,第77巻,927ページ(2009年)や特開平11−209314号公報などに記載の方法を挙げることが出来る。 (シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)の好ましい具体例としては、(η4−1,5−シクロオクタジエン)(η6−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(Ru(η4−C8H12)(η6−C8H10))を挙げることが出来る。 製造方法2で用いることが出来るプロトン酸の対アニオンZ−の例としては、カチオン性金属錯体の対アニオンとして一般的に用いられているものを挙げることが出来る。具体的にはテトラフルオロホウ酸イオン(BF4−)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)、テトラフルオロアルミン酸イオン(AlF4−)などのフルオロ錯アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3−)、メタンスルホン酸イオン(MeSO3−)、メチル硫酸イオン(MeSO4−)などの一価スルホン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3−)、過塩素酸イオン(ClO4−)、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl4−)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン((CF3SO2)2N−)などの一塩基酸の対アニオン、硫酸イオン(SO42−)、硫酸水素イオン(HSO4−)、リン酸イオン(PO43−)、リン酸一水素イオン(HPO42−)、リン酸二水素イオン(H2PO4−)、ジメチルリン酸イオン(MeO)2PO4−)、ジエチルリン酸イオン((EtO)2PO4−)などの多塩基酸の対アニオン又はその誘導体などを例示することが出来る。カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)の収率が良い点で、対アニオンZ−としてはBF4−、PF6−などのフルオロ錯アニオン、CF3SO3−、MeSO3−などの一価スルホン酸イオンが好ましく、BF4−が更に好ましい。 具体的なプロトン酸としては、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロりん酸などのフルオロ錯酸;硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸;塩化水素などのハロゲン化水素などを例示することが出来る。該プロトン酸は、ジメチルエーテルやジエチルエーテルなどのエーテルと錯体を形成していても良い。錯体を形成しているプロトン酸の例としては、テトラフルオロホウ酸ジメチルエーテル錯体、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、ヘキサフルオロりん酸ジエチルエーテル錯体などを挙げることが出来る。カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)の収率が良い点で、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体等が好ましい。 また製造方法2で用いるプロトン酸として、フルオロ錯アニオン含有塩と強酸とを反応させることにより、反応系中で生成させたフルオロ錯酸を用いることも出来る。この場合、用いることが出来るフルオロ錯アニオン含有塩の例としては、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロりん酸アンモニウム、ヘキサフルオロりん酸リチウム、ヘキサフルオロりん酸ナトリウム、ヘキサフルオロりん酸カリウムなどを挙げることが出来る。用いることが出来る強酸としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素、臭化水素などを例示することが出来る。反応系中で生成させることが出来るフルオロ錯酸の具体例としては、テトラフルオロホウ酸及びヘキサフルオロりん酸を挙げることが出来る。コストメリットが高く収率が良い点で、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム又はヘキサフルオロりん酸アンモニウムのいずれかを硫酸と混ぜて用いるのが好ましい。 さらに製造方法2で用いるプロトン酸として三フッ化ホウ素と強酸とを反応させることにより、反応系中で生成させたフルオロ錯酸を用いることも出来る。この場合、用いることが出来る強酸としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素、臭化水素などを例示することが出来る。 次に製造方法2で使用する(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)とプロトン酸のモル比について説明する。プロトン酸の好ましい使用量はプロトン酸の種類によって異なる。例えばプロトン酸が一塩基酸の場合、収率が良い点で(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)1モルあたり1モル以上のプロトン酸を使用することが好ましく、二塩基酸の場合には(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)1モルあたり0.5モル以上のプロトン酸を使用することが好ましい。プロトン酸としてフルオロ錯アニオン含有塩と強酸との混合物を用いる場合、(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)錯体(4)1モルあたり1モル以上のフルオロ錯アニオン含有塩、及び0.5〜2.0モルの強酸を適宜用いることにより、収率良くカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)を得ることが出来る。 製造方法2は、カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)の収率が良い点で、不活性ガス中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来、アルゴン又は窒素ガスが更に好ましい。 製造方法2は、カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)の収率が良い点で有機溶媒中で実施することが好ましい。製造方法2を有機溶媒中で実施する場合、該有機溶媒として具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジブロモメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコールなどを例示することが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。カチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)の収率が良い点で、有機溶媒としてはクロロホルム、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等が好ましい。また製造方法2では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、−80℃から150℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)を収率良く製造することが出来る。 製造方法2によって製造したカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、結晶化などを挙げることが出来る。 またルテニウム錯体(1)は、製造方法2と製造方法1とを連続して実施する製造方法3によっても製造することが可能である。この場合、製造方法2によって製造したカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)を、精製することなく製造方法1の製造原料として用いることが出来、また当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製したカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体(2)を製造方法1の製造原料として用いることも出来る。該精製方法の例としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、結晶化などを挙げることが出来る。 次に、ルテニウム錯体(1)を気化させ、該ルテニウム錯体を基板上で分解することを特徴とする、ルテニウム含有薄膜の作製方法について詳細に説明する。 ルテニウム含有薄膜を作製するときの成膜条件としては、当業者が金属含有薄膜を作製するのに用いる通常の技術手段を例示することが出来る。具体的には、化学反応に基づく気相蒸着法、並びにディップコート法、スピンコート法又はインクジェット法などの溶液法などを例示することが出来る。本明細書中では、化学反応に基づく気相蒸着法とは、一般式(1)で示されるルテニウム錯体を気化させ、基板上で分解することによりルテニウム含有薄膜を作製する方法であり、具体的には熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法などのCVD法や、ALD法などを含む。三次元化された構造を持つ基板の表面にも均一にルテニウム含有薄膜を形成しやすい点で、化学反応に基づく気相蒸着法が好ましく、CVD法又はALD法が更に好ましい。CVD法は成膜速度が良好な点でとりわけ好ましく、またALD法は段差被覆性が良好な点でとりわけ好ましい。例えばCVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製する場合、ルテニウム錯体(1)を気化させて反応チャンバーに供給し、反応チャンバー内に備え付けた基板上でルテニウム錯体(1)を分解することにより、該基板上にルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。ルテニウム錯体(1)を分解する方法としては、当業者が金属含有薄膜を作製するのに用いる通常の技術手段を挙げることが出来る。具体的にはルテニウム錯体(1)と反応ガスとを反応させる方法や、ルテニウム錯体(1)に熱、プラズマ、光などを作用させる方法などを例示することが出来る。 反応ガスを用いる場合、用いることが出来る反応ガスとしては、還元性ガスや酸化性ガスを例示することが出来る。還元性ガスの具体例としては、アンモニア、水素、モノシラン、ヒドラジンなどを例示することが出来る。酸化性ガスの具体例としては、酸素、オゾン、水蒸気、過酸化水素、笑気ガス、塩化水素、硝酸ガス、ぎ酸、酢酸などを挙げることが出来る。成膜装置の仕様による制約が少なく取扱いが容易である点で、還元性ガスとしてはアンモニア又は水素が好ましく、酸化性ガスとしては酸素、オゾン、水蒸気が好ましい。反応ガスとして酸化性ガスを用いずに還元性ガスを用いる場合は、ルテニウム含有薄膜の成膜速度が良好な点でアンモニアが更に好ましい。反応ガスの流量は材料の反応性と反応チャンバーの容量に応じて適宜調節される。例えば反応チャンバーの容量が1〜10Lの場合、反応ガスの流量は特に制限は無く、経済的な理由から1〜10000sccmが好ましい。 これらの分解方法を適宜選択して用いることにより、ルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。複数の分解方法を組み合わせて用いることも出来る。反応チャンバーへのルテニウム錯体(1)の供給方法としては、例えばバブリング、液体気化供給システムなど当業者が通常用いる方法が挙げられ、特に限定されるものではない。 CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製する際のキャリアガス及び希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス又は窒素ガスが好ましく、経済的な理由から窒素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴンが特に好ましい。キャリアガス及び希釈ガスの流量は反応チャンバーの容量などに応じて適宜調節される。例えば反応チャンバーの容量が1〜10Lの場合、キャリアガスの流量は特に制限は無く、経済的な理由から1〜10000sccmが好ましい。なお、本明細書中においてsccmとは気体の流量を表す単位であり、1sccmは理想気体に換算すると2.68mmol/hの速度で気体が移動していることを表す。 CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を作製するときの基板温度は、熱、プラズマ、光などの使用の有無、反応ガスの種類などにより適宜選択される。例えば光やプラズマを併用することなく反応ガスとしてアンモニアを用いる場合には、基板温度に特に制限は無く、経済的な理由から200℃〜1000℃が好ましい。成膜速度が良好な点で300℃〜750℃が好ましく、350℃〜700℃が殊更好ましい。また、光やプラズマ、オゾン、過酸化水素などを適宜使用することで200℃以下の温度域でルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。 本発明の作製方法により得られるルテニウム含有薄膜としては、例えばルテニウム錯体(1)を単独で用いた場合は、金属ルテニウム薄膜、酸化ルテニウム薄膜、窒化ルテニウム薄膜、酸窒化ルテニウム薄膜などが得られる。また他の金属材料と組み合わせて用いた場合は、ルテニウム含有複合薄膜が得られる。例えば、ストロンチウム材料と組み合わせて用いればSrRuO3薄膜が得られる。ストロンチウム材料としては、例えば、ビス(ジピバロイルメタナト)ストロンチウム、ジエトキシストロンチウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)ストロンチウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウム、ビス(トリイソプロピルシクロペンタジエニル)ストロンチウムなどが挙げられる。さらに白金、イリジウム、ロジウムなどの遷移金属やケイ素、アルミニウムなどの典型元素を含有するルテニウム含有複合膜を得ることも出来る。また、CVD法又はALD法によりルテニウム含有複合薄膜を作製する場合において、ルテニウム錯体(1)と他の金属材料とを反応チャンバー内に別々に供給しても、混合してから供給しても良い。 本発明のルテニウム含有薄膜を構成部材として用いることにより、記憶容量や応答性を向上させた高性能な半導体デバイスを製造することが出来る。半導体デバイスとしてはDRAM、FeRAM、ReRAMなどの半導体記憶装置や電界効果トランジスタなどを例示することが出来る。これらの構成部材としてはキャパシタ電極、ゲート電極等の電極部分、銅配線ライナー等の配線部分などを例示することが出来る。 本発明のルテニウム錯体(1)を材料として用いることにより、反応ガスとして酸化性ガスを用いる条件下でも反応ガスとして還元性ガスを用いる条件下でもルテニウム含有薄膜を作製することが出来る。実施例2〜7、比較例1〜4で用いたCVD装置を示す図である。実施例3で得られた膜の原子間力顕微鏡(以下、AFM)像を示す図である。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、Me及びEtは、それぞれメチル基及びエチル基を示す。1H及び13C−NMRスペクトルは、Varian社製VXR−500S NMR Spectrometerを用いて測定した。 実施例1 アルゴン雰囲気下で、Journal of Organometallic Chemistry,第272巻,179ページ(1984年)に記載の方法に従って合成した(η4−1,5−シクロオクタジエン)(η6−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(Ru(η4−C8H12)(η6−C8H10))11.8g(37.6mmol)とジクロロメタン120mLを混合することにより調製した溶液に、−78℃下でテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体6.39g(39.5mmol)を加えた後、25℃で1時間撹拌した。この時点での反応混合物を一部サンプリングして1H−NMRを用いて分析したところ、[RuH(η5−C8H11)2][BF4]が生成していることが確認された。25℃で2,5−ジメチルピロール5.36g(56.4mmol)を加え、20時間撹拌した後、25℃でトリエチルアミン15.2g(150.3mmol)を加えた。この混合物を22時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った液体を減圧蒸留(留出温度99℃/背圧15Pa)することにより、(1−5−η5−シクロオクタジエニル)(η5−2,5−ジメチルピロリル)ルテニウム(Ru(η5−C8H11)(η5−NC4Me2H2))を黄褐色液体として得た(7.5g,収率66%)。1H−NMR(500MHz,CDCl3,δ)5.76(t,J=6.0Hz,1H),5.09(s,2H),4.00−4.10(m,2H),3.43−3.55(m,2H),2.02(s,6H),1.69−1.76(m,2H),1.25−1.36(m,2H),1.03−1.12(m,1H),−0.21−−0.097(m,1H).13C−NMR(125MHz,CDCl3,δ)114.8,102.1,82.1,75.3,46.5,29.3,20.7,15.1. 実施例2、3、比較例1、2(反応ガスとしてアンモニアを用いたルテニウム含有薄膜の作製例) ルテニウム錯体(1)又はRu(η5−C5EtH4)2を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は表3に示す通りであり、その他の条件は以下の通りである。 材料容器内全圧:13.3kPa、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.012sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板:SiO2/Si、成膜時間:1時間。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。なお、反応チャンバーへの材料供給速度は、(キャリアガス流量×材料の蒸気圧÷材料容器内全圧)の計算式に基づいて求めることが出来る。 実施例2、3のいずれの場合においても、作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。蛍光X線分析は理学電機社製3370Eを用いた。測定条件はX線源:Rh、出力:50kV 50mA、測定径:10mmとした。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表3に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表3に示した。四探針法は三菱油化社製LORESTA HP MCP−T410を用いた。 実施例3の条件で作製した薄膜(ただし、成膜時間は1.5時間とした。)に含まれる不純物について、二次イオン質量分析法により定量した。二次イオン質量分析法はPHI社製ADEPT1010を用いた。測定条件は一次イオン種:Cs+、一次イオン加速電圧:2kV、二次イオン極性:Positive、電荷補償:E−gunとした。C:0.13atm%,N:0.27atm%,O:0.53atm%. 実施例3で得られた薄膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜の算術平均粗さ(Ra)は2.0nm、二乗平均平方根粗さ(Rms)は2.7nmであった(図2)。AFMはBruker・AXS社製NanoScope IIIaを用いた。測定条件はタッピングモードとした。 比較例1、2で作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表3に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で評価したところ、絶縁膜であった。 実施例4〜7、比較例3、4(反応ガスとして酸素を用いたルテニウム含有薄膜の作製例) ルテニウム錯体(1)又はRu(η5−C5EtH4)2を材料に用いてルテニウム含有薄膜を熱CVD法により作製した。薄膜作製のために使用した装置の概略を図1に示した。成膜条件は表4に示す通りであり、その他の条件は以下の通りである。 材料容器内全圧:13.3kPa、キャリアガス流量:30sccm、材料供給速度:0.012sccm、酸素流量:0.16sccm、希釈ガス流量:169sccm、基板:SiO2/Si、成膜時間:1時間。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。実施例4〜7のいずれの場合においても、作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところルテニウムに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表4に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表4に示した。 比較例3、4で作製した薄膜を蛍光X線分析で確認したところ、比較例3で作製した薄膜はルテニウムに基づく特性X線が検出され、比較例4で作製した薄膜はルテニウムに基づく特性X線は検出されなかった。検出されたX線の強度から算出した膜厚を表4に示した。作製したルテニウム含有薄膜の電気特性を四探針法で測定し、得られた抵抗率を表4に示した。 以上の実施例から以下のことが理解出来る。即ち、実施例2、3により、ルテニウム錯体(1)は、酸化性ガスを用いなくてもルテニウム含有薄膜を作製可能な材料であることが分かる。また、ルテニウム錯体(1)を材料として用いて作製したルテニウム含有薄膜は、良好な電気伝導特性を有していることが分かる。さらに実施例3より、ルテニウム錯体(1)を材料として用いることで、酸化性ガスを用いなくても不純物の少ない金属ルテニウム薄膜が作製可能であることが分かる。さらに実施例3より、ルテニウム錯体(1)を材料として用いることで、酸化性ガスを用いなくても表面平滑性に優れた金属ルテニウム薄膜が作製可能であることが分かる。 実施例4〜7により、ルテニウム錯体(1)は、酸化性ガスを用いてもルテニウム含有薄膜を作製可能であることが分かる。さらに比較例3、4との比較から、ルテニウム錯体(1)は低温でルテニウム含有薄膜を作製可能な材料であり、薄膜形成用材料として適用範囲が広い有用な材料であることが分かる。 1 材料容器 2 恒温槽 3 反応チャンバー 4 基板 5 反応ガス導入口 6 希釈ガス導入口 7 キャリアガス導入口 8 マスフローコントローラー 9 マスフローコントローラー 10 マスフローコントローラー 11 油回転式ポンプ 12 排気一般式(1) (1)(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは0〜2の整数を表す。)で示されるルテニウム錯体。nが0である請求項1に記載のルテニウム錯体。R1及びR2がメチル基である請求項1又は2に記載のルテニウム錯体。一般式(2) (2)(式中、nは0〜2の整数を表す。Z−は対アニオンを表す。)で示されるカチオン性ビス(シクロオクタジエニル)錯体と、一般式(3) (3)(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示される置換ピロールを塩基の存在下で反応させる請求項1〜3のいずれかに記載のルテニウム錯体の製造方法。塩基が有機塩基である請求項4に記載のルテニウム錯体の製造方法。請求項1〜3のいずれかに記載のルテニウム錯体を気化させ、該ルテニウム錯体を基板上で分解することを特徴とする、ルテニウム含有薄膜の作製方法。化学反応に基づく気相蒸着法によるルテニウム含有薄膜の作製方法である、請求項6に記載の作製方法。化学気相蒸着法によるルテニウム含有薄膜の作製方法である、請求項6又は7に記載の作製方法。反応ガスとして還元性ガスを用いる、請求項6〜8のいずれかに記載の作製方法。ルテニウム含有薄膜が金属ルテニウム薄膜である請求項6〜9のいずれかに記載の作製方法。請求項6〜10のいずれかに記載の方法によって作製されるルテニウム含有薄膜。請求項11に記載のルテニウム含有薄膜を電極部分及び/又は配線部分に使用する半導体デバイス。 【課題】反応ガスとして酸化性ガスを用いる条件下でも反応ガスとして還元性ガスを用いる条件下でもルテニウム含有薄膜を作製するのに有用なルテニウム錯体、及び該ルテニウム錯体の製造方法を提供する。【解決手段】一般式(1)【化1】 (1)(式中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは0〜2の整数を表す。)で示されるルテニウム錯体。【選択図】図2