タイトル: | 公開特許公報(A)_分析方法 |
出願番号: | 2013219028 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 17/00,G01N 33/38,G01N 25/00 |
東 康弘 根岸 香織 JP 2015081809 公開特許公報(A) 20150427 2013219028 20131022 分析方法 日本電信電話株式会社 000004226 山川 政樹 100064621 山川 茂樹 100098394 小池 勇三 100153006 東 康弘 根岸 香織 G01N 17/00 20060101AFI20150331BHJP G01N 33/38 20060101ALI20150331BHJP G01N 25/00 20060101ALI20150331BHJP JPG01N17/00G01N33/38G01N25/00 P 2 1 OL 11 2G040 2G050 2G040AA03 2G040AB11 2G040BA02 2G040BA25 2G040CA05 2G050AA02 2G050EA01 2G050EB10 本発明は、コンクリート中に存在する水溶液の水素イオンの濃度を分析する分析方法に関する。 セメントと骨材とを混合したコンクリートの多くは、鉄筋との複合材料である鉄筋コンクリートに用いられている。特に、以下に示す理由により、鉄筋コンクリートは、建設材料や土木材料として広く用いられている。まず、コンクリートは、熱膨張率が鉄筋とほぼ等しい。また、圧縮に耐えるコンクリートと、引っ張りに耐える鉄筋との組み合わせは、力学特性上有利である。また、コンクリートおよび鉄筋は、ともに原材料が廉価である。また、自然環境下では錆びやすい鉄筋を、アルカリ性のコンクリートで防護して錆を防ぐことも、コンクリートの役割の1つとなっている。 しかしながら、鉄筋コンクリートも、恒久的に機能を持続する材料ではない。例えば、長年の間に、二酸化炭素などの酸性ガスなどによってコンクリートの中性化が進むと、コンクリート中の鉄筋は錆びる恐れがある。この錆(腐食)を生じる反応は、電気化学反応で記述できる。鉄筋の劣化という観点では、電気化学反応における陽極側での鉄の溶解・イオン化による鉄筋自体の減肉が、問題となる。また、陰極側で水素が発生する反応が起きた場合、外観上で減肉が進んでいない状態でも、鉄筋の脆化が問題になることがある。酸性雨の影響のない地域では、大気中の二酸化炭素による中性化、すなわち炭酸化が鉄筋の劣化の主たる要因になる。 コンクリートの原料は、セメント,水,骨材である。骨材は、更に砕石などの粗骨材と、砂などの細骨材とに分類される。アルカリ骨材反応などの特殊な反応が起きない骨材をコンクリート原料に用いた場合、長期間の使用において骨材は劣化しないと見なせる。炭酸化は、コンクリートの中のセメント部で起きる。 コンクリート内部の炭酸化を評価(分析)する方法としては、対象となるコンクリート面にフェノールフタレインを噴霧する方法がある。この方法では、セメント部に噴霧されたフェノールフタレインが、水素イオン濃度10-8.2、すなわちpH8.2を境に、pH8.2より上のアルカリ性でピンク色、pH8.2より下の中性または酸性で無色を呈することを用いている。 pH自体の評価ではなく、熱重量分析法により、水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量を測定する方法がある。この方法では、コンクリート内部の炭酸化は、「Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O・・・(1)」に示されるように、主として水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応し、炭酸カルシウムと水を生じる反応で起きるものとしている。 熱重量分析法では、分析対象のコンクリートのうち少量を試料とし、この試料に熱を加えて、徐々に試料の温度を昇温させ、試料の重量減少を測定する。この方法では、まず、水酸化カルシウムの熱分解による脱水反応「Ca(OH)2→CaO+H2O・・・(2)」に伴う重量減少と、炭酸カルシウムの熱分解による脱炭酸反応「CaCO3→CaO+CO2・・・(3)」に伴う重量減少をそれぞれ測定することで、元々の試料に存在した水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量を測定する。この方法によれば、pH自体ではないが、炭酸化の進行度合いを分析することは可能である。小林 一輔 編著、「図解 コンクリート構造物の総合診断法」、株式会社 オーム社、第1版第2刷、10〜16頁、2007年。 しかしながら、上述した方法では、以下に示すような問題があった。まず、フェノールフタレインによる方法では、炭酸化の度合いについてはpH値8.2を境に、これより上であるか、または下であるか、のいずれかが判断できるだけである。このため、時間経過に伴う炭酸化の進行度合いを分析することはできない。 例えば、コンクリートとして強いアルカリ性を示すpHが12以上の領域を健全な領域とした場合、pH8.2より小さい状態は、既にコンクリートとして炭酸化が完全に進行しきった状態、すなわち劣化状態とすることができる。フェノールフタレインによる方法では、例えば、劣化の初期状態であるpH11の状態は判断できず、pH8.2以下であるなどの完全に劣化している状態しか分からない。このため、フェノールフタレインを用いる方法では、劣化してしまった後に劣化状態であると判定することになり、劣化状態に至る前の時間経過に伴う炭酸化の進行度合いを分析することはできない。 また、熱重量分析法では、次に示す問題がある。実際には、式(2)に示される水酸化カルシウムの熱分解による脱水反応以外に、他の水和物の脱水反応も生じ得る。他の水和物の中には、トベルモライトのように、加水分解して水酸化カルシウムを生じる物質もあるため、水酸化カルシウムに相当するものと見なせる水和物もあれば、セメントバチルスのようにpHに寄与しない水和物もある。 このため、非特許文献1に記載されている熱重量分析法では、炭酸化の進行度合いの傾向を見ることは可能であるが、脱水と脱炭酸による重量減少から、このまま水素イオン濃度もしくはpHを算出することはできない。また重量変化は、上述した脱水や脱炭酸以外の現象によっても生じ得るから、熱重量分析では、水分子や二酸化炭素分子そのものを測定する場合よりも精度が低くなることがある。 上述したように、従来の分析方法では、コンクリート中に存在する水溶液の水素イオンの濃度を正確に分析できないという問題があった。 本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、コンクリート中に存在する水溶液の水素イオンの濃度を正確に分析できるようにすることを目的とする。 本発明に係る分析方法は、対象とするコンクリートより得られた分析試料を加熱し、発生した水および二酸化炭素の量を測定する第1ステップと、コンクリートと同じ原料組成で作製されて炭酸化が既知の参照コンクリートより得られた参照試料を加熱し、発生した水および二酸化炭素の量を測定する第2ステップと、参照試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和に対する、参照コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と水酸化カルシウムの量との和の比を示す第1の値を求める第3ステップと、コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と分析試料を対象とした測定により得られた二酸化炭素の量とは等しいものとし、第1の値、および分析試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和を用い、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量の和におけるコンクリートに含まれる炭酸カルシウムの割合である第2の値を求める第4ステップと、第2の値を用いてコンクリートに含まれている水溶液の水素イオン濃度を算出する第5ステップとを備える。例えば、参照コンクリートは、完全に炭酸化しているものであればよい。 以上説明したことにより、本発明によれば、コンクリート中に存在する水溶液の水素イオンの濃度を正確に分析できるようになるという優れた効果が得られる。図1は、本発明の実施の形態における分析方法を説明するフローチャートである。図2は、分析試料であるコンクリート試料について、本発明の実施の形態における昇温脱離分析を行った結果を示す特性図である。図3は、求められるαと、このαを用いて計算されるpHとの関係を示す特性図である。 以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における分析方法を説明するフローチャートである。まず、ステップS101で、対象とするコンクリートより得られた分析試料を加熱し、発生した水(水蒸気)および二酸化炭素の量を測定する。例えば、温度を制御しながら上記分析試料を加熱し、設定した所定の温度範囲で、発生した水および二酸化炭素の量を測定すればよい。 この測定は、一般に市販されている、1000℃程度までの加熱機構を備えるガスクロマトグラフ装置(GC)で行えばよい。また、加熱装置を備えるガスクロマトグラフ―質量分析装置(GC−MS)で上記測定を行ってもよい。また、昇温脱離分析装置(TDS)により、上記測定を行ってもよい。いずれにおいても、1000℃程度までの加熱機構,昇温機構を備える発生ガス分析装置(EGA)を用いることで、上記測定を行えばよい。加熱の制御に関しては、定速昇温あるいはステップ昇温等の通常の熱分析装置で一般的に用いられている昇温制御方法を用いて測定を行えば良い。 上述した測定では、まず、加熱により発生した水分子および二酸化炭素分子を検出し、検出した各成分の強度を計算する。ただし、水分子については、低温域において、分析試料に吸着した水分子も発生することから、低温域における水分子は測定から除外する。具体的には、水分子として、水酸化カルシウム、またはその他の水和物から脱離した水分子のみが検出される温度範囲または時間範囲で、用いた測定装置で検出された水分子にあたる温度ごとの出力、または時間ごとの出力を積算し、水分子の検出強度とする。 二酸化炭素分子については、炭酸カルシウムから脱離した二酸化炭素分子のみが検出される温度範囲または時間範囲で、当該装置で検出された二酸化炭素分子にあたる温度ごとの出力、または時間ごとの出力を積算して、二酸化炭素分子の検出強度とする。 積分すべき温度範囲は、非特許文献1などに記載がある。なお、計算(積算)で得られた水分子と二酸化炭素分子の検出強度を記憶しておく。この際、分析試料に起因しないノイズが検出強度に含まれる場合、ノイズは除くものとする。例えば、用いた測定装置に起因するバックグラウンドノイズは除くものとする。 次に、上述したように求めた水分子と二酸化炭素分子の検出強度から、各々の量に変換する。量とは、重量でもよく、また、物質量(モル数)でもよい。ただし、最終的に水素イオン濃度を算出するためには物質量であることが便利であるので、ここでは、物質量を例に説明する。 水分子の検出強度から水酸化カルシウムの物質量を得るには、あらかじめ既知の物質量の水酸化カルシウムを標準試料として用い、上述同様の測定を行い、水分子の検出強度を既知の物質量で除した感度係数を求めておけばよい。この感度係数をkH2Oとする。ただし、分析試料の測定により得られた水分子の検出強度をkH2Oで除する場合、得られる値nH2Oには、水酸化カルシウムの物質量(nCH)と他の水和物の物質量(n水和物) との両方の情報が含まれる。他の水和物が平均して1モル当たりmモルの水を含むものとすると、「nH2O=nCH+m×n水和物・・・(4)」と表せる。この時点で、式(4)の右辺のnCH、m、n水和物は未知である。 二酸化炭素分子の検出強度から炭酸カルシウムの物質量を得るには、あらかじめ既知の物質量の炭酸カルシウムを標準試料として用い、上述同様の測定を行い、二酸化炭素分子の検出強度を既知の物質量で除した感度係数を求めておけばよい。この感度係数をkCO2とする。ここでは、炭酸化によって生じる炭酸塩は、すべて炭酸カルシウムであるものとする。前述したように記憶してある二酸化炭素分子の検出強度をkCO2で除して、nCO2を得る。炭酸カルシウムの物質量(nCC)は、nCO2に等しい。nCC=nCO2 ・・・(5) 次に、ステップS102で、上記コンクリートと同じ原料組成で作製されて炭酸化が既知の参照コンクリートより得られた参照試料を加熱し、発生した水(水蒸気)および二酸化炭素の量(物質量)を測定する。なお、上記分析試料の測定および上記参照試料の測定は、どちらを先に実施してもよい。 参照試料としては、分析試料と同一の起源を持つが、炭酸化の度合いが予め明らかな試料を用いる。もっとも分かりやすい場合として、分析試料と同一の起源(組成)を持ち、完全に炭酸化したコンクリートを用いた例をここでは説明する。この参照試料について、前述した分析試料の測定と同様にする。 次に、ステップS103で、参照試料を対象とした測定により得られた水の量(物質量)と二酸化炭素の量(物質量)との和に対する、参照コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量(物質量)と水酸化カルシウムの量(物質量)との和の比を示す第1の値を求める。 まず、参照試料の測定により得られる水分子の物質量、二酸化炭素分子の物質量、水酸化カルシウムの物質量、他の水和物の物質量、炭酸カルシウムの物質量を、各々、nH2O(R)、nCO2(R)、nCH(R)、n水和物(R)、nCC(R)とすると、以下の各式が得られる。nCH(R)=0 ・・・(6)nH2O(R)=m×n水和物(R) ・・・(7)nCO2(R)=nCC(R) ・・・(8) 式(5)および式(8)を用いて、分析試料および参照試料の炭酸カルシウム量としてnCCおよびnCC(R)を算出する。 炭酸化の反応系において、反応のどの段階においてもカルシウムの物質量は不変であり、原物質である水酸化カルシウムと生成物である炭酸カルシウムの物質量の和は一定である。また、同じ起源のコンクリートであれば、この和に対する他の水和物の物質量の割合も一定とすることができる。この割合をβとする。他の水和物は炭酸化に寄与しないから、βは炭酸化の反応のどの段階でも一定である。 より詳細に説明すると、まず、「nH2O+nCO2=nCH+m×n水和物+nCC ・・・(9)」、「nH2O(R)+nCO2(R)=nCH(R)+m×n水和物(R)+nCC(R) ・・・(10)」であるから、「(nH2O+nCO2)/(nCH+nCC)=(nH2O+nCC)/(nCH+nCC)=1+β ・・・(11)」、「{nH2O(R)+nCO2(R)}/{nCH(R)+nCC(R)}={nH2O(R)+nCC(R)}/nCC(R)=1+β ・・・(12)」である。 上記式(12)を用いることで、測定によって得られたnH2O(R)、nCC(R)より、「1+β」(第1の値)が決定される。 次に、ステップS104で、分析対象のコンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量(物質量)と分析試料を対象とした測定により得られた二酸化炭素の量(物質量)とは等しいものとし、第1の値、および分析試料を対象とした測定により得られた水の量(物質量)と二酸化炭素の量(物質量)との和を用い、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量(物質量)の和におけるコンクリートに含まれる炭酸カルシウムの割合である第2の値を求める。 まず、前述したように決定した「1+β」(第1の値)を用いることで、式(10)から、測定によって求められたnH2O、nCCを用い、nCHが算出できる。ここで、水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの物質量の和における炭酸カルシウムの割合をα(第2の値)とすると、分析試料におけるαは、nCC/(nCH+nCC)であって、式(1)における反応進行度に等しい。 次に、ステップS105で、第2の値を用いてコンクリートに含まれている水の水素イオン濃度を算出する。GC,GC−MS,TDSやいずれのEGAにおいても、コンクリート中の水溶液の水素イオン濃度を直接測定するものではなく、以上の測定から得られたαの値から元々あった水溶液の水素イオン濃度を算出している。 まず、式(1)で表される反応の素反応および関係する反応を以下に詳細に示す。 式(13)で、固相の水酸化カルシウムが十分多く残存している場合、式(13)の塩基解離定数5.5×10-6(25℃)を用いてpH=12.35(25℃)と計算される。しかし、炭酸化が進行すると、式(15)によってカルシウムイオンが消費され、式(13)の平衡は右に偏り、ついには、水酸化カルシウムはすべて水中に溶出する。相の水酸化カルシウムが十分多く残存している場合、水中のカルシウムイオン濃度は最大で1.1×10-2mol/dm3である。この濃度をc0とする。水酸化カルシウムは、すべて水中に溶出した後は、炭酸化により水中のカルシウムイオン濃度が減少してゆく。このときのカルシウム濃度をcとする。 炭酸化の反応が進む場合も、コンクリート中の水溶液はアルカリ性であるので、式(14)で生じた水素イオンは、式(16)によって消費される。従って、式(14)の平衡は右に偏っている。ここでは、式(14)における第2酸解離定数をK2=4.79×10-11(25℃)とする。また式(16)において、水のイオン積Kw=10-14(25℃)とする。 式(15)における炭酸カルシウムの溶解度積Ksは、4.7×10-9(25℃)と小さく、水中で生成した炭酸カルシウムは沈殿する。式(1)の反応が右に進行し、α=1になったとき、pHは9.97となり、c=1.29×10-4mol/dm3となる。 以上に説明したように、「K2=[H+][CO32-]/[HCO3-]=4.79×10-11(25℃) ・・・(17)」、「Ks=[Ca2+][CO32-]=4.7×10-9(25℃) ・・・(18)」、「Kw=[H+][OH-]=10-14(25℃) ・・・(19)」である。また、電気的中性条件の「[H+]+2[Ca2+]=[HCO3-]+2[CO32-]+[OH-] ・・・(20)」が成立する。 ここで、簡単のため、[H+]=a,[OH-]=b,[Ca2+]=c,[HCO3-]=y,[CO32-]=zとする。これにより、まず、式(17)は、「K2=az/y ・・・(21)」となる。また、式(18)は、「Ks=cz ・・・(22)」となり、式(19)は、「Kw=ab ・・・(23)」となる。また、式(20)は、「2c+a=b+y+2z ・・・(24)」となる。これらのことより、「2c+a=b+(az/K2)+2z=(Kw/a)+(Kwa/K2c)+(2Kw/c) ・・・(25)」が得られる。 アルカリ性では、b>>aであるので、aについて次式を得る。 このとき、cの範囲を1.1×10-2〜1.29×10-4mol/dm3とし、この範囲のcで式(15)の反応で消費されたカルシウムイオンの割合が、炭酸カルシウムが難溶性であることから、αに一致するものとする。すなわち、残存するカルシウムイオン濃度について、「c/c0=1−α ・・・(29)」の近似を行う。αが1に近くない場合,この近似は正確である。上記のcの範囲から、αの範囲を0〜0.988とする。 αは、測定で得られた水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの物質量から求められる。ただし、求められたαの値が0〜0.988の範囲から逸脱する場合は使用しない。αから「c=c0(1−α)・・・(30)」を用いてcを得て、式(28)により水素イオン濃度aを得る。このとき、pHは、「pH=log(1/a)=−loga ・・・(31)」で得られる。 ここで、αが1より十分に小さい場合、式(28)は以下の式(32)近似してもよい。 このとき、pH値は、「pH(近似1)=−loga(近似1)・・・(33)」として近似してもよい。 また、αが1より十分に小さい場合、式(32)はさらに以下の式(34)で近似することもできる。 このとき、pH値は、「pH(近似2)=−loga(近似2)=log(2c/Kw)=14.3+logc=12.35+log(1−α)・・・(35)」と近似される。必要な正確度に応じて、式(32)から式(35)を、水素イオン濃度またはpHの算出に用いてもよい。 次に、実際に分析を行った結果について図2を用いて説明する。以下では、TDSを用いており、図2は、昇温脱離曲線である。図2において、横軸は温度に対応する時間、縦軸は出力(イオン強度)である。TDSなどの質量分析では、発生したガス分子をイオン化して質量分離して検出する。図2において、実線は水分子のイオンm/z=18)、点線は二酸化炭素分子のイオン(m/z=44)を示す。水分子から生じるイオンは、m/z=16,17もあるので、これらのイオンを検出してもよい。二酸化炭素分子から生じるイオンはm/z=28などもあるので、これらのイオンを検出してもよい。 図2では、m/z=18とm/z=44の昇温脱離曲線について、バックグラウンドノイズを減じた上で積算(積分)し、(a)の部分の面積1および(b)の部分の面積2を得て、水分子および二酸化炭素分子それぞれの検出強度とする。参照試料についても同様の測定および計算を実施し、水分子と二酸化炭素分子それぞれの検出強度を得る。標準試料による感度係数を用いて物質量に変換し、分析試料におけるαを得る。 図3に、上記αを用いて計算したpHを示す。αの範囲は0〜0.988である。図3における実線は、式(30)で得られたcを式(28)に代入し、さらに式(31)で計算したpH値である。また、近似1は式(32)、式(33)により求め、近似2は式(34)、式(35)による求めたものである。近似1ではαが0から0.960までの間、pH値で10.94に至るまでの間、pH値の誤差として0.1%以下の正確度であった。また、近似2では、αが0から0.958までの間、pH値で10.96に至るまでの間、pH値の誤差として0.1%以下の正確度であった。以上のように、近似1、近似2は、各々のαの範囲で十分な近似となっていることがわかる。 以上に説明したように、本発明では、記参照試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和に対する、記参照コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と水酸化カルシウムの量との和の比を示す第1の値を求め、第1の値、および分析試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和を用い、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量の和におけるコンクリートに含まれる炭酸カルシウムの割合である第2の値を求め、この第2の値よりコンクリートに含まれている水の水素イオン濃度を算出するようにした。 この結果、本発明によれば、コンクリート中に存在する水溶液の水素イオンの濃度を正確に分析できるようなる。これにより、まず、劣化状態に至る前の時間経過に伴うコンクリートの炭酸化の進行度合いを評価できるようになる。また、炭酸化の進行度合いを、元々あったコンクリート中の水溶液の水素イオン濃度またはpH値という形式で表示できる。本発明によれば、測定結果に加え、一般的な腐食予測技術などを組み合わせることで、コンクリート構造物の適切な維持管理を行うことが可能となる。 なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。 対象とするコンクリートより得られた分析試料を加熱し、発生した水および二酸化炭素の量を測定する第1ステップと、 前記コンクリートと同じ原料組成で作製されて炭酸化が既知の参照コンクリートより得られた参照試料を加熱し、発生した水および二酸化炭素の量を測定する第2ステップと、 前記参照試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和に対する、前記参照コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と水酸化カルシウムの量との和の比を示す第1の値を求める第3ステップと、 前記コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と前記分析試料を対象とした測定により得られた二酸化炭素の量とは等しいものとし、前記第1の値、および前記分析試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和を用い、前記コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量の和における前記コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの割合である第2の値を求める第4ステップと、 前記第2の値を用いて前記コンクリートに含まれている水溶液の水素イオン濃度を算出する第5ステップと を備えることを特徴とする分析方法。 請求項1記載の分析方法において、 前記参照コンクリートは、完全に炭酸化していることを特徴とする分析方法。 【課題】コンクリート中に存在する水溶液の水素イオンの濃度を正確に分析できるようにする。【解決手段】参照試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和に対する、参照コンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と水酸化カルシウムの量との和の比を示す第1の値を求める。次に、ステップS104で、分析対象のコンクリートに含まれる炭酸カルシウムの量と分析試料を対象とした測定により得られた二酸化炭素の量とは等しいものとし、第1の値、および分析試料を対象とした測定により得られた水の量と二酸化炭素の量との和を用い、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの量の和におけるコンクリートに含まれる炭酸カルシウムの割合である第2の値を求める。【選択図】 図1