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タイトル:公開特許公報(A)_エンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キット
出願番号:2013217505
年次:2014
IPC分類:C12Q 1/26,G01N 33/579,C07K 5/103,C07K 5/083,C07K 7/06


特許情報キャッシュ

黒田 章夫 野田 健一 JP 2014014375 公開特許公報(A) 20140130 2013217505 20131018 エンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キット 国立大学法人広島大学 504136568 岩谷 龍 100077012 黒田 章夫 野田 健一 JP 2007293491 20071112 C12Q 1/26 20060101AFI20131227BHJP G01N 33/579 20060101ALI20131227BHJP C07K 5/103 20060101ALI20131227BHJP C07K 5/083 20060101ALI20131227BHJP C07K 7/06 20060101ALI20131227BHJP JPC12Q1/26G01N33/579C07K5/103C07K5/083C07K7/06 6 2 2009541129 20081111 OL 18 4B063 4H045 4B063QA01 4B063QQ03 4B063QQ91 4B063QR02 4B063QR48 4B063QR58 4B063QS03 4B063QS36 4B063QX02 4H045BA12 4H045BA13 4H045BA14 4H045EA50 本発明は、試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キットに関するものであり、詳しくは、生物発光反応を利用したエンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キットに関するものである。 「エンドトキシン(endotoxin:内毒素)」は、グラム陰性菌の外膜を構成する成分の一つであり、その活性の本体はLPS(lipopolysaccharide:リポ多糖)である。生体内におけるエンドトキシンの存在は、グラム陰性菌の表層に外膜の一部として存在する。また、一般的にはグラム陰性桿菌の死後、フリーのエンドトキシンとして血流中に遊離して存在している。 エンドトキシンが血液中に一定量以上存在する場合、当該エンドトキシンの刺激によって単球や顆粒球等で過剰の炎症性サイトカインが産生される。その結果、エンドトキシン血症と呼ばれる発熱、敗血症、敗血症性ショック、または多臓器不全等の症状が惹起される。このため、注射用医薬品等におけるエンドトキシンの検出は極めて重要であり、日米欧の薬局方にエンドトキシン試験法が収載されている。また、臨床診断上では、血液中のエンドトキシンを正確に測定することは、早期診断や治療効果の判定に極めて重要であると考えられる。 従来のエンドトキシンの測定法としては、ウサギの体内に検査対象試料を直接注射し、その体温上昇からエンドトキシン量を測定する発熱性物質試験(パイロジェン試験)や、カブトガニの血球抽出液(amebocyte lysate)がエンドトキシンによってゲル化する現象を応用したリムルステストが知られている。このうちウサギに直接注射する方法は、コスト面、結果を得るまでの時間、および感度に問題があることから、現在ではリムルステストがエンドトキシンの測定方法の主流となっている。 図1にエンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液のゲル化反応の過程を示す。カブトガニの血球抽出液中にはエンドトキシンと特異的に反応するC因子経路が存在する。「C因子経路」は、以下の反応カスケードによって構成されている。まず、エンドトキシンは、C因子(Factor C)と強固に結合してC因子を活性化する。次に、エンドトキシンの結合により活性化されたC因子(活性型C因子)はB因子(Factor B)を活性化する。続いて、活性化されたB因子(活性型B因子)によって、さらに前凝固酵素(proclotting enzyme)が活性化されて凝固酵素(clotting enzyme)が生成される。この凝固酵素が、その基質であるコアギュローゲン(coagulogen)を部分水解する。その結果、コアギュローゲンからペプチドC(peptide C)が遊離して凝固タンパク質であるコアギュリン(coagulin)が生成される。このコアギュリンの凝固作用によってゲル化が生じる(非特許文献1参照)。 リムルステストによるエンドトキシン測定法は、上述のカブトガニの血球抽出液がエンドトキシンによってゲル化するプロセスを応用したものである。リムルステストは、判定または測定方法の違いからゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)、そして比濁時間分析法(比濁法)等の方法が知られている(非特許文献2参照)。 「ゲル化転倒法」は、検査対象試料にカブトガニの血球抽出液を試験管内で混合し、一定条件下(例えば37℃で30〜60分間)反応させた後、その試験管を転倒あるいは傾けた際に、試料が液状のままか、あるいは固化したかによって判定する方法である。前者の場合はエンドトキシン陰性、後者の場合はエンドトキシン陽性とされる。この方法は、特別な装置を必要とせず操作も比較的容易ではあるが、原料や製造のロットにより測定結果が変わりやすい点や、人による判定のため光学的方法に比べて客観性に欠けるという問題があることから通常は簡易的に用いられるに過ぎない。 「発色合成基質法」は、凝固酵素の基質に発色合成ペプチド基質を用い、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでエンドトキシン量を算出する方法である。発色合成ペプチド基質は、天然基質であるコアギュローゲンを凝固酵素が水解する部位のアミノ酸配列を模したものが使用される。凝固酵素による切断部位にパラニトロアニリン(pNA)等の発色基を結合させ、この発色基が酵素による切断で遊離することによって発色する。発色基がパラニトロアニリンの場合は、パラニトロアニリンの最大吸収波長である405nmの吸光度を経時的に測定する。また、発色基がパラニトロアニリンをジアゾカップリングした場合は、545nmの吸光度を経時的に測定する。その後、得られた経時的な透過光量の変化を解析してエンドトキシン濃度を測定する。当該発色合成基質法は、試薬が比較的高価である点や操作が煩雑である等の問題もあるが、定量性、感度、そして客観性に優れている。 「比濁時間分析法」は、ゲル化による濁度の増加を透過光量の変化として捉え、反応液の透過光量比が一定の閾値(通常90%前後)まで減少するのに要する時間をゲル化時間とし、ゲル化時間とエンドトキシン濃度の関係から作成された標準曲線を用いてエンドトキシン値を算出する方法である。定量性や客観性に非常に優れているが、測定には専用装置を必要とする。 また、リコンビナントC因子と蛍光基質を利用し、エンドトキシンを高感度で測定できる試薬キット(商品名:パイロジーンrFc、製造:Lonza Walkersville, Inc. 販売:第一化学薬品(株))が市販されている。T. Miyata, M. Hiranaga et al., Amino Acid Sequence of the Coagulogen from Limulus polyphemus Hemocytes, The Journal of Biological Chemistry, 259, 8924-8933 (1984)第十五改正日本薬局方、4.01エンドトキシン試験法、P70-73 上述のように、発色合成基質法や比濁時間分析法等のリムルステストは定量性や客観性に優れたエンドトキシン測定法である。しかしながら、これらの方法を用いても、なおエンドトキシンを測定する場合には種々の問題が指摘されている。例えば臨床症状とその結果が必ずしも対応しない等の問題である。具体的には、リムルステスト陰性の結果を得ている輸液や透析液の適用によっても、しばしば発熱等のエンドトキシンに由来すると思われる症例が現れることや、血液中にグラム陰性菌が感染することで発症する重症グラム陰性菌感染症であると臨床的に診断されているにもかかわらず、リムルステストによる血中エンドトキシン濃度レベルでは陽性を示さない場合が挙げられる。これらの原因としては、現状においてもリムルステストの感度にはまだ問題点があることが考えられる。 それゆえ、より高感度なエンドトキシンの測定方法の開発が急務となっている。さらに、専用の測定装置を用いることなく、簡便に実施できる方法の開発が望まれている。 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、従来のエンドトキシン測定法では検出できなかったレベルのエンドトキシンを、専用の測定装置を用いることなく、簡便かつ迅速に測定できる方法の提供を目的とする。 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、従来のリムルステストに生物発光反応を適用することによって、試料中のエンドトキシンを、簡便、迅速かつ高感度に測定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法であって、試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる発光基質遊離工程と、発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程と、発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する濃度定量工程とを包含することを特徴としている。 発光合成基質は、C因子が活性化されることにより生成される活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素のいずれか1種の作用により発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有することが好ましい。また、発光基質はアミノルシフェリンであり、発光酵素はルシフェラーゼであることが好ましい。 ルシフェラーゼは、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫からなる群より選択される甲虫由来であることが好ましい。さらに、ルシフェラーゼは変異型ルシフェラーゼであり、該変異型ルシフェラーゼは野生型ルシフェラーゼと比較して発光強度が増大するように、野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列が改変されていることが好ましい。 変異型ルシフェラーゼは、以下の(i)〜(v)からなる群より選択された1種であることが好ましい。(i) 配列番号13に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(ii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iv) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(v) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ C因子を含有する試薬がカブトガニ血球抽出成分であり、反応系の全量に対するカブトガニ血球抽出成分のタンパク質濃度が1.5mg/mL〜3.5mg/mLであることが好ましい。 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定用キットは、エンドトキシンと特異的に結合して活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質と、発光酵素とを構成成分として含むことを特徴としている。 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法によれば、エンドトキシンの濃度測定に生物発光反応を適用し、生じる発光量に基づいてエンドトキシン濃度を定量するので、従来のエンドトキシン測定法では検出できなかったレベルのエンドトキシンを、専用の測定装置を用いることなく、簡便かつ迅速に測定することができる。エンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液のゲル化反応の過程を示す図である。本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法の一例を示す図である。実施例1の各試料濃度における発光強度をプロットしたグラフである。比較例の各試料濃度における吸光度をプロットしたグラフである。図3の0.01EU以下の濃度における発光強度を詳細に示したグラフである。実施例4の各リムルス試薬濃度における発光強度をプロットしたグラフである。1.エンドトキシンの濃度測定方法 最初に、図1および図2を用いて、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法のメカニズムについて説明する。図1は、エンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液(LAL:Limulus Amebocyte Lysate)のゲル化反応の過程を示す図であり、図2は、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法の一例を示す図である。 図1に示すように、エンドトキシンは、C因子と強固に結合してC因子を活性化し、活性化されたC因子(活性型C因子)はB因子を活性化する。続いて、活性化されたB因子(活性型B因子)は前凝固酵素を活性化し、凝固酵素が生成される。凝固酵素はコアギュローゲンを基質として部分水解し、凝固タンパク質であるコアギュリンを生成する。 図2に示すように、エンドトキシンを含む試料とカブトガニの血球抽出液とを接触させると、試料中のエンドトキシンによりリムルス反応系が活性化される。そこで、凝固酵素の基質として「ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン」をこの反応系に添加すると、リムルス反応系の活性化により生成した凝固酵素によりArgとアミノルシフェリンとの結合が切断され、発光基質であるアミノルシフェリンが遊離する。このアミノルシフェリンにルシフェラーゼ(発光酵素)を作用させることにより、光が発生する。ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光反応を、下記反応式(I)に示す。 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、上述のメカニズムにより発生した光の量を測定し、得られた測定値(発光量)に基づいて、試料中のエンドトキシン濃度を定量する方法である。 次に、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法について詳細に説明する。本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、(1)試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる発光基質遊離工程(2)発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程(3)発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する濃度定量工程を包含するものであればよい。 (1)発光基質遊離工程 発光基質遊離工程は、試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬(以下、「C因子含有試薬」と記す)と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる工程である。 〔試料〕 試料は特に限定されないが、例えば、注射剤、輸液、透析液等の医薬品、血液(血漿)、尿等の臨床試料が挙げられる。臨床試料において、リムルス反応系の干渉因子(阻害因子や亢進因子)の不活化処理が必要な場合は、公知の不活化処理法(例えば過塩素酸処理法(PCA法)やNew PCA法など)による前処理を施しておく。 〔C因子含有試薬〕 C因子含有試薬には、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分を好適に用いることができる。例えば、リムルス(Limulus)属、タキプレウス(Tachypleus)属、あるいはカルシノスコルピウス(Carcinoscorpius)属に属するカブトガニの血球から得られたもので、エンドトキシンとの反応により凝固酵素が生成されるものであれば、特に限定されるものではない。したがって、リムルス試薬(LAL試薬)として市販されているものや、エンドトキシン測定用のキットに付属のリムルス試薬(LAL試薬)を好適に用いることができる。 また、カブトガニのC因子の遺伝子の一部または全部に基づいて合成された組換え遺伝子由来のリコンビナントC因子を用いることも可能である。リコンビナントC因子は、市販のパイロジーンrFc(製造:Lonza Walkersville, Inc. 販売:第一化学薬品(株))に付属のリコンビナントC因子を好適に用いることができる。また、公知の遺伝子工学的手法に従ってカブトガニC因子の遺伝子が挿入された発現ベクターを作製し、適当な宿主細胞に導入してリコンビナントタンパク質を発現させ、精製することにより取得することもできる。 C因子含有試薬として、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分(例えば、市販のリムルス試薬)を使用した場合には、エンドトキシンを含む試料との反応により、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素が生成される。これらはいずれもプロテアーゼ活性を有するタンパク質であることが知られている。したがって、この場合、発光合成基質には活性型C因子の認識配列を有するもの、活性型B因子の認識配列を有するもの、および凝固酵素の認識配列を有するものが使用可能である。ただし、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素のいずれか1種類のプロテアーゼ活性を指標とするので、指標とする酵素に対応する1種類の発色合成基質が用いられる。 一方、C因子含有試薬として、リコンビナントC因子を用いた場合には、当該試薬中にB因子および前凝固酵素は存在しないので、エンドトキシンを含む試料との反応により生成されるのは活性型のリコンビナントC因子のみである。したがって、この場合、発光合成基質には活性型C因子の認識配列を有するものが使用可能である。 C因子含有試薬として、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分(例えば、市販のリムルス試薬)を使用した場合、その使用料は、従来の使用量の約40%〜約80%であることが好ましい。従来の使用量(100%)では発光反応が阻害され、発光強度が低下すること、および、従来の使用量の約40%〜約80%を使用した場合に高い発光強度が得られることが明らかとなったからである。従来の使用量の約40%〜約80%は、測定系の全量に対するカブトガニ血球抽出成分(LAL)のタンパク質濃度に換算した場合、1.5mg/mL〜3.5mg/mLの範囲に相当する。より好ましくは2.0mg/mL〜3.3mg/mLである。従来の使用量より少ない量で高感度測定が可能になることから、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、産業上非常に有用である。 〔発光合成基質〕 発光合成基質は、ペプチドに発光基質が結合してなるものであればよい。本明細書において「発光基質」とは、生物発光で反応の基質となって光を発する物質を意味する。発光基質としてはルシフェリンを好適に用いることができる。なかでも下記式(II)で表されるアミノルシフェリンが好ましい。アミノルシフェリンのアミノ基が、隣接するアミノ酸のカルボキシル基とアミド結合を形成させることができるからである。 アミノルシフェリンと結合するペプチドは、当該ペプチドのC末端におけるアミノルシフェリンとのアミド結合が、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素のいずれか1種のプロテアーゼ活性により切断されるアミノ酸配列からなるものであればよい。この条件を充足する限りにおいてアミノ酸残基数およびアミノ酸配列は限定されないが、特異性、合成コスト、取扱い易さ等の観点からアミノ酸残基数は2個〜10個が好ましい。 具体的には、凝固酵素の認識配列を有するペプチドとしては、Gly−Val−Ile−Gly−Arg−(配列番号1)、Val−Leu−Gly−Arg−(配列番号2)、Leu−Arg−Arg−(配列番号3)、Ile−Glu−Gly−Arg−(配列番号4)、Leu−Gly−Arg−(配列番号5)、Val−Ser−Gly−Arg−(配列番号6)、Val−Gly−Arg−(配列番号7)などが挙げられる。 活性型C因子の認識配列を有するペプチドとしては、Ile−Glu−Ala−Arg−(配列番号8)、Leu−Gly−Asn−Lys−Val−Ser−Arg−(配列番号9)、Ile−Thr−Thr−Val−Gly−Arg−(配列番号10)などが挙げられる。 活性型B因子の認識配列を有するペプチドとしては、Thr−Thr−Thr−Thr−Arg−(配列番号11)、Ser−Arg−Gln−Arg−Arg−(配列番号12)などが挙げられる。 ペプチドのN末端は、保護基で保護されていてもよい。保護基としては、通常この分野で用いられるものであれば限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、N−succinyl基、tert−butoxycarbonyl基、benzoyl基、p−toluenesulfonyl基などが挙げられる。 本発明に用いられる発光合成基質は、例えば、特表2005−530485(国際公開番号:WO2003/066611)の実施例6および実施例7に記載の方法を参照することにより合成することができる。また、Promega社から市販されている「Proteasome‐GloTM Assay Systems」に付属の発光合成基質(ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン)を使用することができる。発光合成基質中に遊離のアミノルシフェリンが含まれる場合は、これを予め除去しておくことが好ましい。発光合成基質から遊離のアミノルシフェリンを除去することにより、バックグラウンド発光を抑制することができる。遊離のアミノルシフェリンを除去する方法としては、例えば、20mM トリシン、8mM Mg2+、0.13mM EDTAの緩衝液(pH7.8)中、0.8mM 補酵素A、1.5mM ATP、250μg/mlホタルルシフェラーゼおよび90mM DTTを含む溶液と混合し、室温(25℃)で1時間〜6時間インキュベートする方法が挙げられる。 〔反応手順(方法)〕 試料とC因子含有試薬と発光合成基質との反応手順(方法)は、これら三者が反応することにより発光合成基質から発光基質(アミノルシフェリン)が遊離する条件に適合するものであれば、特に限定されない。例えば、試料とC因子含有試薬とをよく混和して37℃で5分〜60分間程度インキュベートした後、発光合成基質を加えてよく混和し、37℃で1分〜30分間程度インキュベートする方法が挙げられる。 (2)発光量測定工程 発光量測定工程は、前段の発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する工程である。 〔発光酵素〕 本発明に用いられる発光酵素は、発光合成基質から遊離した発光基質の生物発光を触媒し、光を発生させるものであればよい。発光基質がルシフェリンである場合、発光酵素にはルシフェラーゼが好適に用いられる。また、発光基質が上記式(II)で表されるアミノルシフェリンである場合は、発光酵素には甲虫由来のルシフェラーゼが用いられる。甲虫由来のルシフェラーゼとしては、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシ、鉄道虫などの甲虫由来のルシフェラーゼを好適に用いることができる。これらの甲虫由来のルシフェラーゼのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は、表1に記載のアクセッション番号で公知のデータベース(例えば、EMBL Nucleotide Sequence Database(http://www.ebi.ac.uk/embl/))に登録されている。なお、ルシフェラーゼは、天然タンパク質でもよく、組換えタンパク質でもよい。本発明に使用可能なルシフェラーゼは、試薬として各社から市販されている。 また、ルシフェラーゼは野生型のアミノ酸配列を有するものに限定されず、発光基質の生物発光を触媒する機能を有する限りにおいて、野生型のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼであってもよい。野生型のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。ここで、「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、挿入、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されていることが意図される。 変異型ルシフェラーゼのなかでも、発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼを用いるが好ましい。超微量のエンドトキシンを高感度に測定できるからである。発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼとしては、例えば以下の変異型ルシフェラーゼを挙げることができる。(i) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号13)において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(ii) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iii) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iv) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(v) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換され、さらに、47位のイソロイシン(Ile)がスレオニン(Thr)に、50位のアスパラギン(Asn)がセリン(Ser)に、59位のメチオニン(Met)がスレオニン(Thr)に、252位のスレオニン(Thr)がセリン(Ser)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ 上記(i)〜(v)の各変異型ホタルルシフェラーゼの発光強度は、それぞれ北米ホタルルシフェラーゼ(野生型)の発光強度と比較して(i)18倍、(ii)18倍、(iii)8倍、(iv)20倍、(v)21倍に増大したことが確認されている(特開2007−97577号公報参照)。 上記変異型ホタルルシフェラーゼは、野生型ホタルルシフェラーゼの遺伝子を改変して得られた変異型ホタルルシフェラーゼ遺伝子を、公知の方法により発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞に導入して、組換えタンパク質として発現・精製することにより得ることができる。遺伝子の改変は、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、有機合成等、当業者に周知の方法により行うことができる。なお、北米ホタルルシフェラーゼ遺伝子(cDNA)の塩基配列は、アクセッション番号:M15077としてデータベース(例えば、EMBL Nucleotide Sequence Database(http://www.ebi.ac.uk/embl/))に登録されている。また、上記(i)〜(v)に記載の変異型ホタルルシフェラーゼは、特開2007−97577号公報の実施例を参照することにより作製することができる。 また、当業者は、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、マドボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫についても、公知のデータベースに登録されたこれらのルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列(表1参照)に基づいて、公知の方法により変異型ルシフェラーゼを容易に取得することができる。さらに、上記(i)〜(v)に記載の北米ホタル由来の変異型ホタルルシフェラーゼの置換アミノ酸を参照すれば、他の甲虫由来のルシフェラーゼにおける同等の位置のアミノ酸を置換することにより、当業者は発光強度が増大した変異型ルシフェラーゼを容易に取得することができる。 〔反応および測定手順(方法)〕 前段の発光基質遊離工程により得られる反応液、つまり遊離した発光基質(アミノルシフェリン)を含む反応液に、発光酵素(ルシフェラーゼ)を添加する。上記反応式(I)に示したように、ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光反応には、ATPおよび2価金属イオンが必要であるので、例えば、ATPおよびマグネシウムイオンを含む緩衝液にルシフェラーゼを溶解し、このルシフェラーゼ溶液を添加することが好ましい。具体的には、例えば、室温(25℃)で反応を行い、ルシフェラーゼ溶液を添加後2秒から10秒の発光値を計測する方法が挙げられる。 発光量の測定には、市販のルミノメータ(発光測定装置)を用いることができる。メーカーおよび性能については特に限定されないが、相対光量測定値が0から一千万の範囲で測定可能な装置であることが好ましい。具体的には、キッコーマン社のルミテスターC1000やパーキンエルマー社のARVO Light等の仕様が好適である。測定は、使用する装置の説明書に従って行えばよい。 (3)濃度定量工程 濃度定量工程は、発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する工程である。濃度既知のエンドトキシン溶液を使用して、予めエンドトキシン濃度と当該濃度における発光値との関係を表す検量線を作成し、この検量線に上記発光量測定工程により得られた測定対象試料の測定値を当てはめることにより、試料中のエンドトキシン濃度を求めることができる。2.エンドトキシンの濃度測定用キット 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定用キットは、C因子含有試薬、発光合成基質および発光酵素を構成成分として含有するものであればよい。これらの詳細については既に説明したので、ここでは説明を省略する。これら以外の具体的なキットの構成については特に限定されるものではなく、他に必要な試薬や器具等を適宜選択してキットの構成とすればよい。本発明に係るキットを用いることにより、上記本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法を簡便かつ迅速に実施することができる。 本明細書において「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは当該材料を使用するための使用説明書を備える。使用説明書は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の実施例に用いた器具、試薬、水等は、エンドトキシフリー、あるいはエンドトキシン測定結果に影響を及ぼさない極めて微量のエンドトキシンを含有するものを使用した。 〔実施例1:生物発光法によるエンドトキシンの測定〕 <方法> エンドトキシン測定試薬QCL−1000(Lonza Walkersville, Inc.)に添付のリムルス試薬(LAL)、エンドトキシン標準液(大腸菌0111:B4由来エンドトキシン)、およびパイロジェンフリー水を用いた。発光合成基質には、Proteasome‐GloTM Assay Systems(Promega)に付属のベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリンを用いた。ルシフェラーゼは、本発明者らが大腸菌を用いて発現、精製した野生型北米ホタルルシフェラーゼを使用した。具体的には、ピッカジーンカセットベクター(東洋インキ製)から切り出した北米ホタルルシフェラーゼ(野生型)遺伝子を大腸菌用発現ベクターpET28a(Novagen)へ組み込み、これを大腸菌に導入して発現させ、精製した。 まず、エンドトキシン標準液をパイロジェンフリー水で希釈することにより、0.0001〜0.1エンドトキシン単位(EU)/mLの範囲で9段階に調製し、これを試料とした。また、エンドトキシンを含まないパイロジェンフリー水をブランクとした。続いて、各試料およびブランクから50μLずつ取り出し、それぞれ別個に50μLのリムルス試薬が入った反応試験管に移した後、ボルテックスミキサーで数秒間混合した。混合後、37±1.0℃の保温器にて10分間正確に加温した。詳細な取り扱いについてはQCL−1000に添付のプロトコルに従った。 次に、1mM MgCl2を含む100mM Tris−Cl(pH8.0)に溶解した150μM 発光合成基質(ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン)を50μL加えて、37±1.0℃の保温器にて5分間正確に加温した。加温後、反応液を生物発光測定専用試験管(ルミチューブ、キッコーマン株式会社)に移した後、10−5M ATP、1mM MgCl2を含む100mM Tris−Cl(pH8.0)に溶解したルシフェラーゼ50μLを添加し、ルミテスターC1000(キッコーマン株式会社)にセットして試料の発光量を測定した。 比較例として、同一の試料について、上記発光合成基質の代わりにQCL−1000に添付の発色基質を用いて比色エンドポイント法により測定した。操作法についてはQCL−1000に添付のプロトコルに従った。 <結果> 実施例1の結果を図3に示した。また、比較例の結果を図4に示した。図3は、実施例1の各試料濃度における発光強度をプロットしたグラフであり、図4は、比較例の各試料濃度における吸光度をプロットしたグラフである。図4に示すように、従来の発色基質を用いる比色エンドポイント法では、0.025EU/mL以下のエンドトキシンについては測定値が低すぎて定量的に評価することは不可能であった。一方、図3に示すように、発光合成基質を用いて発光強度を測定する方法では、0.01EU/mL以下の濃度でも測定可能であった。 さらに、図5に、図3の0.01EU/mL以下の濃度における発光強度を詳細に示した。図5から明らかなように、生物発光法による発光強度を測定することにより0.0005EU/mLのエンドトキシンを測定可能であることが示された。 〔実施例2:変異型ルシフェラーゼを用いた生物発光法によるエンドトキシンの測定〕 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法に、野生型ルシフェラーゼの発光強度よりも大きい発光強度を有することが確認されている変異型ルシフェラーゼを用いることを試みた。 <方法> 本実施例で使用した変異型ルシフェラーゼは、北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンに置換され、さらに、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに置換されたアミノ酸配列からなるものであり、本発明者らが特開2007−97577号公報の実施例14に記載の方法により自製したものである。 試料は、実施例1と同様に、エンドトキシン標準液をパイロジェンフリー水で希釈することにより、0.0001〜1.0EU/mLの範囲で12段階に調製した。また、エンドトキシンを含まないパイロジェンフリー水をブランクとした。実施例1で用いたルシフェラーゼ(野生型ルシフェラーゼ)と上記変異型ルシフェラーゼの両方を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。なお、本実施例では比色エンドポイント法による対照を設けていない。 <結果> 結果を表2に示した。表2から明らかなように、エンドトキシン濃度が0.0001EU/mLのときの発光強度は、約400RLUであり、野生型ルシフェラーゼを用いた場合の10倍以上であった。この結果から、変異型ルシフェラーゼを用いれば、微量のエンドトキシンを高感度に測定できることが示された。生物発光測定におけるバックグラウンドの値は20−30RLUであることから、0.0001EU/mL以下の超微量のエンドトキシンも変異型ルシフェラーゼを使用することで測定可能であることが示唆された。 〔実施例3:野生型ルシフェラーゼおよび変異型ルシフェラーゼを用いた生物発光法によるエンドトキシンの測定〕 実施例2と同じ材料および方法で、エンドトキシン濃度を測定した。なお、実施例2では、ブランク値を差し引いた数値を測定値として示したが(表2参照)、本実施例3では、ブランク値を差し引いていない実測値を測定値として示した。 結果を表3に示した。表3から明らかなように、野生型のルシフェラーゼを測定に使用した場合の検出限界は0.005EU/mLであった。これに対して変異型のルシフェラーゼを使用するとエンドトキシン濃度0.0005EU/mLまでが測定可能であった。実施例2の結果と同様に、実施例3の結果からも、変異型ルシフェラーゼを用いれば、微量のエンドトキシンを高感度に測定できることが示された。また変異型ルシフェラーゼはエンドトキシン濃度が0.0001EU/mLのときの発光強度は、約5500RLUであり、野生型ルシフェラーゼを用いた場合の10倍以上であった。生物発光測定におけるバックグラウンドの値は20−30RLUであることから、0.0001EU/mL以下の超微量のエンドトキシンも変異型ルシフェラーゼを使用することで測定可能であることが示唆された。 〔実施例4:リムルス試薬(LAL)濃度が発光強度に及ぼす影響の検討〕 <方法> エンドトキシン標準液をパイロジェンフリー水で希釈し、0.05エンドトキシン単位(EU)/mLの試料を調製した。リムルス試薬(LAL)にパイロジェンフリー水を添加して、90%(LAL:水=9:1)〜10%(LAL:水=1:9)の9段階の濃度のLALを調製した。リムルス試薬(LAL)としては、原液(100%)と、リムルス試薬(LAL)を含有しないもの(0%:パイロジェンフリー水のみ)を含む11段階の濃度のものを使用した。 ルシフェラーゼは、実施例2および3で使用した変異型ルシフェラーゼを用い、その他の試薬は実施例1と同じものを用いた。測定方法は、実施例1と同様とした。測定系の全量は、試料50μL、各濃度のリムルス試薬(LAL)50μL、発光合成基質溶液50μL、および、ルシフェラーゼ溶液50μLを加えた200μLである。また、11段階のリムルス試薬(LAL)のタンパク質濃度を、波長280nmの吸光度測定により求めた(OD280=1のとき1mg/mL)。 結果を表4および図6に示した。図4のLAL濃度は、測定系(200μL)におけるLALの最終濃度を表わす。表4および図6から明らかなように、100%LAL(希釈なし)、および90%LALを使用した場合は、発光反応が阻害され発光強度が低下すること、すなわち感度が低下することが明らかとなった。一方、40%LAL〜80%LALの範囲で高い発光強度が得られることが明らかとなった。この範囲は、測定系の全量に対するLALのタンパク質濃度が1.67mg/mL〜3.33mg/mLの範囲に相当した。この結果から、従来の通常使用量より少ない量のLALの使用により、高感度の測定が可能となることが示された。 以上のように、本発明によれば、従来のリムルステストのうち本発明と同じ時間で測定可能なエンドポイント比色法の検出下限値(0.025EU/mL)より微量である0.0005EU/mLのエンドトキシンをエンドポイント測定可能であることが示された。また、0.001EU/mLのエンドトキシンを測定可能である比濁時間法が測定に180分以上の時間を要するのに対して、本発明によれば15分以内に測定が可能であることが判明した。さらに、野生型ルシフェラーゼの発光強度よりも大きい発光強度を有する変異型ルシフェラーゼを用いれば、0.0001EU/mL以下の超微量のエンドトキシンも測定可能であることが示唆された。さらに、リムルス試薬(LAL)の使用量を従来より減らした0.4〜0.8倍容(最終濃度1.5〜3.5mg/mL)で使用することにより、発光強度が増大し、高感度のエンドトキシン測定が可能であることが明らかとなった。 これらの結果から、本発明を用いることにより、注射用医薬品等において従来の方法では検出不可能な量のエンドトキシンの混入に起因する副作用の発生を防止できる。また、臨床試料中の極微量のエンドトキシンを測定できることにより、生体中のエンドトキシン濃度と種々の病態との関連性を明確にすることができる。また、エンドトキシン血症の早期診断と早期治療が可能となり、医療現場に多大な貢献をもたらすことが期待できる。さらに、高感度のエンドトキシン測定試薬を低コストで提供することができる。 なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。 本発明は、医療分野、特に医薬品製造、臨床検査などの分野に利用することができる。 試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法であって、 試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドにアミノルシフェリンが結合してなる発光合成基質とを反応させ、該発光合成基質からアミノルシフェリンを遊離させるアミノルシフェリン遊離工程と、 前記アミノルシフェリン遊離工程により遊離したアミノルシフェリンにルシフェラーゼを作用させ、発光量を測定する発光量測定工程と、 前記発光量測定工程により得られた測定値に基づいて前記試料中のエンドトキシン濃度を定量する濃度定量工程とを包含し、 前記発光合成基質が、前記C因子が活性化されることにより生成される活性型C因子または活性型B因子の作用により、アミノルシフェリンと前記ペプチドとの結合が切断される構造を有することを特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。 前記ルシフェラーゼが、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫からなる群より選択される甲虫由来であることを特徴とする請求項1に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。 前記ルシフェラーゼは変異型ルシフェラーゼであり、該変異型ルシフェラーゼは野生型ルシフェラーゼと比較して発光強度が増大するように、野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列が改変されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。 前記変異型ルシフェラーゼが、以下の(i)〜(v)からなる群より選択された1種であることを特徴とする請求項3に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。(i) 配列番号13に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(ii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iv) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(v) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ 前記C因子を含有する試薬がカブトガニ血球抽出成分であり、反応系の全量に対する該カブトガニ血球抽出成分のタンパク質濃度が1.5mg/mL〜3.5mg/mLであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。 エンドトキシンと特異的に結合して活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドにアミノルシフェリンが結合してなる発光合成基質と、ルシフェラーゼとを構成成分として含み、前記発光合成基質が、前記C因子が活性化されることにより生成される活性型C因子または活性型B因子の作用により、アミノルシフェリンと前記ペプチドとの結合が切断される構造を有することを特徴とするエンドトキシンの濃度測定用キット。 【課題】従来のエンドトキシン測定法では検出できなかったレベルのエンドトキシンを、専用の測定装置を用いることなく、簡便かつ迅速に測定できる方法を提供する。【解決手段】測定対象試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させることにより発光合成基質から発光基質を遊離させ、遊離した発光基質に発光酵素を作用させて発光量を測定し、得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する。【選択図】図2配列表


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特許公報(B2)_エンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キット

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_エンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キット
出願番号:2013217505
年次:2015
IPC分類:C12Q 1/34,C12Q 1/66,G01N 33/579,C07K 7/06


特許情報キャッシュ

黒田 章夫 野田 健一 JP 5813723 特許公報(B2) 20151002 2013217505 20131018 エンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キット 国立大学法人広島大学 504136568 岩谷 龍 100077012 黒田 章夫 野田 健一 JP 2007293491 20071112 20151117 C12Q 1/34 20060101AFI20151029BHJP C12Q 1/66 20060101ALI20151029BHJP G01N 33/579 20060101ALN20151029BHJP C07K 7/06 20060101ALN20151029BHJP JPC12Q1/34C12Q1/66G01N33/579C07K7/06 C12Q 1/00−3/00 C07K 7/06 G01N 33/579 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CA/REGISTRY(STN) 特表2005−530485(JP,A) 特開2007−097577(JP,A) 特開昭58−077850(JP,A) 特表昭58−502082(JP,A) 特開平03−220456(JP,A) Lin Chen,Reckoning Recombinant Factor,2006年 The Journal of Biological Chemistry,1993年,Vol.268,No.28,p.21384-21388 The Journal of Biological Chemistry,1990年,Vol.265,No.36,pp.22426-22433 5 2009541129 20081111 2014014375 20140130 19 20131018 田中 晴絵 本発明は、試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キットに関するものであり、詳しくは、生物発光反応を利用したエンドトキシンの濃度測定方法および濃度測定用キットに関するものである。 「エンドトキシン(endotoxin:内毒素)」は、グラム陰性菌の外膜を構成する成分の一つであり、その活性の本体はLPS(lipopolysaccharide:リポ多糖)である。生体内におけるエンドトキシンの存在は、グラム陰性菌の表層に外膜の一部として存在する。また、一般的にはグラム陰性桿菌の死後、フリーのエンドトキシンとして血流中に遊離して存在している。 エンドトキシンが血液中に一定量以上存在する場合、当該エンドトキシンの刺激によって単球や顆粒球等で過剰の炎症性サイトカインが産生される。その結果、エンドトキシン血症と呼ばれる発熱、敗血症、敗血症性ショック、または多臓器不全等の症状が惹起される。このため、注射用医薬品等におけるエンドトキシンの検出は極めて重要であり、日米欧の薬局方にエンドトキシン試験法が収載されている。また、臨床診断上では、血液中のエンドトキシンを正確に測定することは、早期診断や治療効果の判定に極めて重要であると考えられる。 従来のエンドトキシンの測定法としては、ウサギの体内に検査対象試料を直接注射し、その体温上昇からエンドトキシン量を測定する発熱性物質試験(パイロジェン試験)や、カブトガニの血球抽出液(amebocyte lysate)がエンドトキシンによってゲル化する現象を応用したリムルステストが知られている。このうちウサギに直接注射する方法は、コスト面、結果を得るまでの時間、および感度に問題があることから、現在ではリムルステストがエンドトキシンの測定方法の主流となっている。 図1にエンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液のゲル化反応の過程を示す。カブトガニの血球抽出液中にはエンドトキシンと特異的に反応するC因子経路が存在する。「C因子経路」は、以下の反応カスケードによって構成されている。まず、エンドトキシンは、C因子(Factor C)と強固に結合してC因子を活性化する。次に、エンドトキシンの結合により活性化されたC因子(活性型C因子)はB因子(Factor B)を活性化する。続いて、活性化されたB因子(活性型B因子)によって、さらに前凝固酵素(proclotting enzyme)が活性化されて凝固酵素(clotting enzyme)が生成される。この凝固酵素が、その基質であるコアギュローゲン(coagulogen)を部分水解する。その結果、コアギュローゲンからペプチドC(peptide C)が遊離して凝固タンパク質であるコアギュリン(coagulin)が生成される。このコアギュリンの凝固作用によってゲル化が生じる(非特許文献1参照)。 リムルステストによるエンドトキシン測定法は、上述のカブトガニの血球抽出液がエンドトキシンによってゲル化するプロセスを応用したものである。リムルステストは、判定または測定方法の違いからゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)、そして比濁時間分析法(比濁法)等の方法が知られている(非特許文献2参照)。 「ゲル化転倒法」は、検査対象試料にカブトガニの血球抽出液を試験管内で混合し、一定条件下(例えば37℃で30〜60分間)反応させた後、その試験管を転倒あるいは傾けた際に、試料が液状のままか、あるいは固化したかによって判定する方法である。前者の場合はエンドトキシン陰性、後者の場合はエンドトキシン陽性とされる。この方法は、特別な装置を必要とせず操作も比較的容易ではあるが、原料や製造のロットにより測定結果が変わりやすい点や、人による判定のため光学的方法に比べて客観性に欠けるという問題があることから通常は簡易的に用いられるに過ぎない。 「発色合成基質法」は、凝固酵素の基質に発色合成ペプチド基質を用い、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでエンドトキシン量を算出する方法である。発色合成ペプチド基質は、天然基質であるコアギュローゲンを凝固酵素が水解する部位のアミノ酸配列を模したものが使用される。凝固酵素による切断部位にパラニトロアニリン(pNA)等の発色基を結合させ、この発色基が酵素による切断で遊離することによって発色する。発色基がパラニトロアニリンの場合は、パラニトロアニリンの最大吸収波長である405nmの吸光度を経時的に測定する。また、発色基がパラニトロアニリンをジアゾカップリングした場合は、545nmの吸光度を経時的に測定する。その後、得られた経時的な透過光量の変化を解析してエンドトキシン濃度を測定する。当該発色合成基質法は、試薬が比較的高価である点や操作が煩雑である等の問題もあるが、定量性、感度、そして客観性に優れている。 「比濁時間分析法」は、ゲル化による濁度の増加を透過光量の変化として捉え、反応液の透過光量比が一定の閾値(通常90%前後)まで減少するのに要する時間をゲル化時間とし、ゲル化時間とエンドトキシン濃度の関係から作成された標準曲線を用いてエンドトキシン値を算出する方法である。定量性や客観性に非常に優れているが、測定には専用装置を必要とする。 また、リコンビナントC因子と蛍光基質を利用し、エンドトキシンを高感度で測定できる試薬キット(商品名:パイロジーンrFc、製造:Lonza Walkersville, Inc. 販売:第一化学薬品(株))が市販されている。T. Miyata, M. Hiranaga et al., Amino Acid Sequence of the Coagulogen from Limulus polyphemus Hemocytes, The Journal of Biological Chemistry, 259, 8924-8933 (1984)第十五改正日本薬局方、4.01エンドトキシン試験法、P70-73 上述のように、発色合成基質法や比濁時間分析法等のリムルステストは定量性や客観性に優れたエンドトキシン測定法である。しかしながら、これらの方法を用いても、なおエンドトキシンを測定する場合には種々の問題が指摘されている。例えば臨床症状とその結果が必ずしも対応しない等の問題である。具体的には、リムルステスト陰性の結果を得ている輸液や透析液の適用によっても、しばしば発熱等のエンドトキシンに由来すると思われる症例が現れることや、血液中にグラム陰性菌が感染することで発症する重症グラム陰性菌感染症であると臨床的に診断されているにもかかわらず、リムルステストによる血中エンドトキシン濃度レベルでは陽性を示さない場合が挙げられる。これらの原因としては、現状においてもリムルステストの感度にはまだ問題点があることが考えられる。 それゆえ、より高感度なエンドトキシンの測定方法の開発が急務となっている。さらに、専用の測定装置を用いることなく、簡便に実施できる方法の開発が望まれている。 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、従来のエンドトキシン測定法では検出できなかったレベルのエンドトキシンを、専用の測定装置を用いることなく、簡便かつ迅速に測定できる方法の提供を目的とする。 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、従来のリムルステストに生物発光反応を適用することによって、試料中のエンドトキシンを、簡便、迅速かつ高感度に測定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法であって、試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる発光基質遊離工程と、発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程と、発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する濃度定量工程とを包含することを特徴としている。 発光合成基質は、C因子が活性化されることにより生成される活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素のいずれか1種の作用により発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有することが好ましい。また、発光基質はアミノルシフェリンであり、発光酵素はルシフェラーゼであることが好ましい。 ルシフェラーゼは、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫からなる群より選択される甲虫由来であることが好ましい。さらに、ルシフェラーゼは変異型ルシフェラーゼであり、該変異型ルシフェラーゼは野生型ルシフェラーゼと比較して発光強度が増大するように、野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列が改変されていることが好ましい。 変異型ルシフェラーゼは、以下の(i)〜(v)からなる群より選択された1種であることが好ましい。(i) 配列番号13に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(ii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iv) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(v) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ C因子を含有する試薬がカブトガニ血球抽出成分であり、反応系の全量に対するカブトガニ血球抽出成分のタンパク質濃度が1.5mg/mL〜3.5mg/mLであることが好ましい。 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定用キットは、エンドトキシンと特異的に結合して活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質と、発光酵素とを構成成分として含むことを特徴としている。 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法によれば、エンドトキシンの濃度測定に生物発光反応を適用し、生じる発光量に基づいてエンドトキシン濃度を定量するので、従来のエンドトキシン測定法では検出できなかったレベルのエンドトキシンを、専用の測定装置を用いることなく、簡便かつ迅速に測定することができる。エンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液のゲル化反応の過程を示す図である。本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法の一例を示す図である。実施例1の各試料濃度における発光強度をプロットしたグラフである。比較例の各試料濃度における吸光度をプロットしたグラフである。図3の0.01EU以下の濃度における発光強度を詳細に示したグラフである。実施例4の各リムルス試薬濃度における発光強度をプロットしたグラフである。1.エンドトキシンの濃度測定方法 最初に、図1および図2を用いて、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法のメカニズムについて説明する。図1は、エンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液(LAL:Limulus Amebocyte Lysate)のゲル化反応の過程を示す図であり、図2は、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法の一例を示す図である。 図1に示すように、エンドトキシンは、C因子と強固に結合してC因子を活性化し、活性化されたC因子(活性型C因子)はB因子を活性化する。続いて、活性化されたB因子(活性型B因子)は前凝固酵素を活性化し、凝固酵素が生成される。凝固酵素はコアギュローゲンを基質として部分水解し、凝固タンパク質であるコアギュリンを生成する。 図2に示すように、エンドトキシンを含む試料とカブトガニの血球抽出液とを接触させると、試料中のエンドトキシンによりリムルス反応系が活性化される。そこで、凝固酵素の基質として「ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン」をこの反応系に添加すると、リムルス反応系の活性化により生成した凝固酵素によりArgとアミノルシフェリンとの結合が切断され、発光基質であるアミノルシフェリンが遊離する。このアミノルシフェリンにルシフェラーゼ(発光酵素)を作用させることにより、光が発生する。ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光反応を、下記反応式(I)に示す。 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、上述のメカニズムにより発生した光の量を測定し、得られた測定値(発光量)に基づいて、試料中のエンドトキシン濃度を定量する方法である。 次に、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法について詳細に説明する。本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、(1)試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる発光基質遊離工程(2)発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程(3)発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する濃度定量工程を包含するものであればよい。 (1)発光基質遊離工程 発光基質遊離工程は、試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬(以下、「C因子含有試薬」と記す)と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる工程である。 〔試料〕 試料は特に限定されないが、例えば、注射剤、輸液、透析液等の医薬品、血液(血漿)、尿等の臨床試料が挙げられる。臨床試料において、リムルス反応系の干渉因子(阻害因子や亢進因子)の不活化処理が必要な場合は、公知の不活化処理法(例えば過塩素酸処理法(PCA法)やNew PCA法など)による前処理を施しておく。 〔C因子含有試薬〕 C因子含有試薬には、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分を好適に用いることができる。例えば、リムルス(Limulus)属、タキプレウス(Tachypleus)属、あるいはカルシノスコルピウス(Carcinoscorpius)属に属するカブトガニの血球から得られたもので、エンドトキシンとの反応により凝固酵素が生成されるものであれば、特に限定されるものではない。したがって、リムルス試薬(LAL試薬)として市販されているものや、エンドトキシン測定用のキットに付属のリムルス試薬(LAL試薬)を好適に用いることができる。 また、カブトガニのC因子の遺伝子の一部または全部に基づいて合成された組換え遺伝子由来のリコンビナントC因子を用いることも可能である。リコンビナントC因子は、市販のパイロジーンrFc(製造:Lonza Walkersville, Inc. 販売:第一化学薬品(株))に付属のリコンビナントC因子を好適に用いることができる。また、公知の遺伝子工学的手法に従ってカブトガニC因子の遺伝子が挿入された発現ベクターを作製し、適当な宿主細胞に導入してリコンビナントタンパク質を発現させ、精製することにより取得することもできる。 C因子含有試薬として、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分(例えば、市販のリムルス試薬)を使用した場合には、エンドトキシンを含む試料との反応により、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素が生成される。これらはいずれもプロテアーゼ活性を有するタンパク質であることが知られている。したがって、この場合、発光合成基質には活性型C因子の認識配列を有するもの、活性型B因子の認識配列を有するもの、および凝固酵素の認識配列を有するものが使用可能である。ただし、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素のいずれか1種類のプロテアーゼ活性を指標とするので、指標とする酵素に対応する1種類の発色合成基質が用いられる。 一方、C因子含有試薬として、リコンビナントC因子を用いた場合には、当該試薬中にB因子および前凝固酵素は存在しないので、エンドトキシンを含む試料との反応により生成されるのは活性型のリコンビナントC因子のみである。したがって、この場合、発光合成基質には活性型C因子の認識配列を有するものが使用可能である。 C因子含有試薬として、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分(例えば、市販のリムルス試薬)を使用した場合、その使用料は、従来の使用量の約40%〜約80%であることが好ましい。従来の使用量(100%)では発光反応が阻害され、発光強度が低下すること、および、従来の使用量の約40%〜約80%を使用した場合に高い発光強度が得られることが明らかとなったからである。従来の使用量の約40%〜約80%は、測定系の全量に対するカブトガニ血球抽出成分(LAL)のタンパク質濃度に換算した場合、1.5mg/mL〜3.5mg/mLの範囲に相当する。より好ましくは2.0mg/mL〜3.3mg/mLである。従来の使用量より少ない量で高感度測定が可能になることから、本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法は、産業上非常に有用である。 〔発光合成基質〕 発光合成基質は、ペプチドに発光基質が結合してなるものであればよい。本明細書において「発光基質」とは、生物発光で反応の基質となって光を発する物質を意味する。発光基質としてはルシフェリンを好適に用いることができる。なかでも下記式(II)で表されるアミノルシフェリンが好ましい。アミノルシフェリンのアミノ基が、隣接するアミノ酸のカルボキシル基とアミド結合を形成させることができるからである。 アミノルシフェリンと結合するペプチドは、当該ペプチドのC末端におけるアミノルシフェリンとのアミド結合が、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素のいずれか1種のプロテアーゼ活性により切断されるアミノ酸配列からなるものであればよい。この条件を充足する限りにおいてアミノ酸残基数およびアミノ酸配列は限定されないが、特異性、合成コスト、取扱い易さ等の観点からアミノ酸残基数は2個〜10個が好ましい。 具体的には、凝固酵素の認識配列を有するペプチドとしては、Gly−Val−Ile−Gly−Arg−(配列番号1)、Val−Leu−Gly−Arg−(配列番号2)、Leu−Arg−Arg−(配列番号3)、Ile−Glu−Gly−Arg−(配列番号4)、Leu−Gly−Arg−(配列番号5)、Val−Ser−Gly−Arg−(配列番号6)、Val−Gly−Arg−(配列番号7)などが挙げられる。 活性型C因子の認識配列を有するペプチドとしては、Ile−Glu−Ala−Arg−(配列番号8)、Leu−Gly−Asn−Lys−Val−Ser−Arg−(配列番号9)、Ile−Thr−Thr−Val−Gly−Arg−(配列番号10)などが挙げられる。 活性型B因子の認識配列を有するペプチドとしては、Thr−Thr−Thr−Thr−Arg−(配列番号11)、Ser−Arg−Gln−Arg−Arg−(配列番号12)などが挙げられる。 ペプチドのN末端は、保護基で保護されていてもよい。保護基としては、通常この分野で用いられるものであれば限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、N−succinyl基、tert−butoxycarbonyl基、benzoyl基、p−toluenesulfonyl基などが挙げられる。 本発明に用いられる発光合成基質は、例えば、特表2005−530485(国際公開番号:WO2003/066611)の実施例6および実施例7に記載の方法を参照することにより合成することができる。また、Promega社から市販されている「Proteasome‐GloTM Assay Systems」に付属の発光合成基質(ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン)を使用することができる。発光合成基質中に遊離のアミノルシフェリンが含まれる場合は、これを予め除去しておくことが好ましい。発光合成基質から遊離のアミノルシフェリンを除去することにより、バックグラウンド発光を抑制することができる。遊離のアミノルシフェリンを除去する方法としては、例えば、20mM トリシン、8mM Mg2+、0.13mM EDTAの緩衝液(pH7.8)中、0.8mM 補酵素A、1.5mM ATP、250μg/mlホタルルシフェラーゼおよび90mM DTTを含む溶液と混合し、室温(25℃)で1時間〜6時間インキュベートする方法が挙げられる。 〔反応手順(方法)〕 試料とC因子含有試薬と発光合成基質との反応手順(方法)は、これら三者が反応することにより発光合成基質から発光基質(アミノルシフェリン)が遊離する条件に適合するものであれば、特に限定されない。例えば、試料とC因子含有試薬とをよく混和して37℃で5分〜60分間程度インキュベートした後、発光合成基質を加えてよく混和し、37℃で1分〜30分間程度インキュベートする方法が挙げられる。 (2)発光量測定工程 発光量測定工程は、前段の発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する工程である。 〔発光酵素〕 本発明に用いられる発光酵素は、発光合成基質から遊離した発光基質の生物発光を触媒し、光を発生させるものであればよい。発光基質がルシフェリンである場合、発光酵素にはルシフェラーゼが好適に用いられる。また、発光基質が上記式(II)で表されるアミノルシフェリンである場合は、発光酵素には甲虫由来のルシフェラーゼが用いられる。甲虫由来のルシフェラーゼとしては、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシ、鉄道虫などの甲虫由来のルシフェラーゼを好適に用いることができる。これらの甲虫由来のルシフェラーゼのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は、表1に記載のアクセッション番号で公知のデータベース(例えば、EMBL Nucleotide Sequence Database(http://www.ebi.ac.uk/embl/))に登録されている。なお、ルシフェラーゼは、天然タンパク質でもよく、組換えタンパク質でもよい。本発明に使用可能なルシフェラーゼは、試薬として各社から市販されている。 また、ルシフェラーゼは野生型のアミノ酸配列を有するものに限定されず、発光基質の生物発光を触媒する機能を有する限りにおいて、野生型のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼであってもよい。野生型のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。ここで、「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、挿入、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されていることが意図される。 変異型ルシフェラーゼのなかでも、発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼを用いるが好ましい。超微量のエンドトキシンを高感度に測定できるからである。発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼとしては、例えば以下の変異型ルシフェラーゼを挙げることができる。(i) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号13)において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(ii) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iii) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iv) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(v) 北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換され、さらに、47位のイソロイシン(Ile)がスレオニン(Thr)に、50位のアスパラギン(Asn)がセリン(Ser)に、59位のメチオニン(Met)がスレオニン(Thr)に、252位のスレオニン(Thr)がセリン(Ser)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ 上記(i)〜(v)の各変異型ホタルルシフェラーゼの発光強度は、それぞれ北米ホタルルシフェラーゼ(野生型)の発光強度と比較して(i)18倍、(ii)18倍、(iii)8倍、(iv)20倍、(v)21倍に増大したことが確認されている(特開2007−97577号公報参照)。 上記変異型ホタルルシフェラーゼは、野生型ホタルルシフェラーゼの遺伝子を改変して得られた変異型ホタルルシフェラーゼ遺伝子を、公知の方法により発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞に導入して、組換えタンパク質として発現・精製することにより得ることができる。遺伝子の改変は、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、有機合成等、当業者に周知の方法により行うことができる。なお、北米ホタルルシフェラーゼ遺伝子(cDNA)の塩基配列は、アクセッション番号:M15077としてデータベース(例えば、EMBL Nucleotide Sequence Database(http://www.ebi.ac.uk/embl/))に登録されている。また、上記(i)〜(v)に記載の変異型ホタルルシフェラーゼは、特開2007−97577号公報の実施例を参照することにより作製することができる。 また、当業者は、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、マドボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫についても、公知のデータベースに登録されたこれらのルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列(表1参照)に基づいて、公知の方法により変異型ルシフェラーゼを容易に取得することができる。さらに、上記(i)〜(v)に記載の北米ホタル由来の変異型ホタルルシフェラーゼの置換アミノ酸を参照すれば、他の甲虫由来のルシフェラーゼにおける同等の位置のアミノ酸を置換することにより、当業者は発光強度が増大した変異型ルシフェラーゼを容易に取得することができる。 〔反応および測定手順(方法)〕 前段の発光基質遊離工程により得られる反応液、つまり遊離した発光基質(アミノルシフェリン)を含む反応液に、発光酵素(ルシフェラーゼ)を添加する。上記反応式(I)に示したように、ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光反応には、ATPおよび2価金属イオンが必要であるので、例えば、ATPおよびマグネシウムイオンを含む緩衝液にルシフェラーゼを溶解し、このルシフェラーゼ溶液を添加することが好ましい。具体的には、例えば、室温(25℃)で反応を行い、ルシフェラーゼ溶液を添加後2秒から10秒の発光値を計測する方法が挙げられる。 発光量の測定には、市販のルミノメータ(発光測定装置)を用いることができる。メーカーおよび性能については特に限定されないが、相対光量測定値が0から一千万の範囲で測定可能な装置であることが好ましい。具体的には、キッコーマン社のルミテスターC1000やパーキンエルマー社のARVO Light等の仕様が好適である。測定は、使用する装置の説明書に従って行えばよい。 (3)濃度定量工程 濃度定量工程は、発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のエンドトキシン濃度を定量する工程である。濃度既知のエンドトキシン溶液を使用して、予めエンドトキシン濃度と当該濃度における発光値との関係を表す検量線を作成し、この検量線に上記発光量測定工程により得られた測定対象試料の測定値を当てはめることにより、試料中のエンドトキシン濃度を求めることができる。2.エンドトキシンの濃度測定用キット 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定用キットは、C因子含有試薬、発光合成基質および発光酵素を構成成分として含有するものであればよい。これらの詳細については既に説明したので、ここでは説明を省略する。これら以外の具体的なキットの構成については特に限定されるものではなく、他に必要な試薬や器具等を適宜選択してキットの構成とすればよい。本発明に係るキットを用いることにより、上記本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法を簡便かつ迅速に実施することができる。 本明細書において「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは当該材料を使用するための使用説明書を備える。使用説明書は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の実施例に用いた器具、試薬、水等は、エンドトキシフリー、あるいはエンドトキシン測定結果に影響を及ぼさない極めて微量のエンドトキシンを含有するものを使用した。 〔実施例1:生物発光法によるエンドトキシンの測定〕 <方法> エンドトキシン測定試薬QCL−1000(Lonza Walkersville, Inc.)に添付のリムルス試薬(LAL)、エンドトキシン標準液(大腸菌0111:B4由来エンドトキシン)、およびパイロジェンフリー水を用いた。発光合成基質には、Proteasome‐GloTM Assay Systems(Promega)に付属のベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリンを用いた。ルシフェラーゼは、本発明者らが大腸菌を用いて発現、精製した野生型北米ホタルルシフェラーゼを使用した。具体的には、ピッカジーンカセットベクター(東洋インキ製)から切り出した北米ホタルルシフェラーゼ(野生型)遺伝子を大腸菌用発現ベクターpET28a(Novagen)へ組み込み、これを大腸菌に導入して発現させ、精製した。 まず、エンドトキシン標準液をパイロジェンフリー水で希釈することにより、0.0001〜0.1エンドトキシン単位(EU)/mLの範囲で9段階に調製し、これを試料とした。また、エンドトキシンを含まないパイロジェンフリー水をブランクとした。続いて、各試料およびブランクから50μLずつ取り出し、それぞれ別個に50μLのリムルス試薬が入った反応試験管に移した後、ボルテックスミキサーで数秒間混合した。混合後、37±1.0℃の保温器にて10分間正確に加温した。詳細な取り扱いについてはQCL−1000に添付のプロトコルに従った。 次に、1mM MgCl2を含む100mM Tris−Cl(pH8.0)に溶解した150μM 発光合成基質(ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン)を50μL加えて、37±1.0℃の保温器にて5分間正確に加温した。加温後、反応液を生物発光測定専用試験管(ルミチューブ、キッコーマン株式会社)に移した後、10−5M ATP、1mM MgCl2を含む100mM Tris−Cl(pH8.0)に溶解したルシフェラーゼ50μLを添加し、ルミテスターC1000(キッコーマン株式会社)にセットして試料の発光量を測定した。 比較例として、同一の試料について、上記発光合成基質の代わりにQCL−1000に添付の発色基質を用いて比色エンドポイント法により測定した。操作法についてはQCL−1000に添付のプロトコルに従った。 <結果> 実施例1の結果を図3に示した。また、比較例の結果を図4に示した。図3は、実施例1の各試料濃度における発光強度をプロットしたグラフであり、図4は、比較例の各試料濃度における吸光度をプロットしたグラフである。図4に示すように、従来の発色基質を用いる比色エンドポイント法では、0.025EU/mL以下のエンドトキシンについては測定値が低すぎて定量的に評価することは不可能であった。一方、図3に示すように、発光合成基質を用いて発光強度を測定する方法では、0.01EU/mL以下の濃度でも測定可能であった。 さらに、図5に、図3の0.01EU/mL以下の濃度における発光強度を詳細に示した。図5から明らかなように、生物発光法による発光強度を測定することにより0.0005EU/mLのエンドトキシンを測定可能であることが示された。 〔実施例2:変異型ルシフェラーゼを用いた生物発光法によるエンドトキシンの測定〕 本発明に係るエンドトキシンの濃度測定方法に、野生型ルシフェラーゼの発光強度よりも大きい発光強度を有することが確認されている変異型ルシフェラーゼを用いることを試みた。 <方法> 本実施例で使用した変異型ルシフェラーゼは、北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンに置換され、さらに、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに置換されたアミノ酸配列からなるものであり、本発明者らが特開2007−97577号公報の実施例14に記載の方法により自製したものである。 試料は、実施例1と同様に、エンドトキシン標準液をパイロジェンフリー水で希釈することにより、0.0001〜1.0EU/mLの範囲で12段階に調製した。また、エンドトキシンを含まないパイロジェンフリー水をブランクとした。実施例1で用いたルシフェラーゼ(野生型ルシフェラーゼ)と上記変異型ルシフェラーゼの両方を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。なお、本実施例では比色エンドポイント法による対照を設けていない。 <結果> 結果を表2に示した。表2から明らかなように、エンドトキシン濃度が0.0001EU/mLのときの発光強度は、約400RLUであり、野生型ルシフェラーゼを用いた場合の10倍以上であった。この結果から、変異型ルシフェラーゼを用いれば、微量のエンドトキシンを高感度に測定できることが示された。生物発光測定におけるバックグラウンドの値は20−30RLUであることから、0.0001EU/mL以下の超微量のエンドトキシンも変異型ルシフェラーゼを使用することで測定可能であることが示唆された。 〔実施例3:野生型ルシフェラーゼおよび変異型ルシフェラーゼを用いた生物発光法によるエンドトキシンの測定〕 実施例2と同じ材料および方法で、エンドトキシン濃度を測定した。なお、実施例2では、ブランク値を差し引いた数値を測定値として示したが(表2参照)、本実施例3では、ブランク値を差し引いていない実測値を測定値として示した。 結果を表3に示した。表3から明らかなように、野生型のルシフェラーゼを測定に使用した場合の検出限界は0.005EU/mLであった。これに対して変異型のルシフェラーゼを使用するとエンドトキシン濃度0.0005EU/mLまでが測定可能であった。実施例2の結果と同様に、実施例3の結果からも、変異型ルシフェラーゼを用いれば、微量のエンドトキシンを高感度に測定できることが示された。また変異型ルシフェラーゼはエンドトキシン濃度が0.0001EU/mLのときの発光強度は、約5500RLUであり、野生型ルシフェラーゼを用いた場合の10倍以上であった。生物発光測定におけるバックグラウンドの値は20−30RLUであることから、0.0001EU/mL以下の超微量のエンドトキシンも変異型ルシフェラーゼを使用することで測定可能であることが示唆された。 〔実施例4:リムルス試薬(LAL)濃度が発光強度に及ぼす影響の検討〕 <方法> エンドトキシン標準液をパイロジェンフリー水で希釈し、0.05エンドトキシン単位(EU)/mLの試料を調製した。リムルス試薬(LAL)にパイロジェンフリー水を添加して、90%(LAL:水=9:1)〜10%(LAL:水=1:9)の9段階の濃度のLALを調製した。リムルス試薬(LAL)としては、原液(100%)と、リムルス試薬(LAL)を含有しないもの(0%:パイロジェンフリー水のみ)を含む11段階の濃度のものを使用した。 ルシフェラーゼは、実施例2および3で使用した変異型ルシフェラーゼを用い、その他の試薬は実施例1と同じものを用いた。測定方法は、実施例1と同様とした。測定系の全量は、試料50μL、各濃度のリムルス試薬(LAL)50μL、発光合成基質溶液50μL、および、ルシフェラーゼ溶液50μLを加えた200μLである。また、11段階のリムルス試薬(LAL)のタンパク質濃度を、波長280nmの吸光度測定により求めた(OD280=1のとき1mg/mL)。 結果を表4および図6に示した。図4のLAL濃度は、測定系(200μL)におけるLALの最終濃度を表わす。表4および図6から明らかなように、100%LAL(希釈なし)、および90%LALを使用した場合は、発光反応が阻害され発光強度が低下すること、すなわち感度が低下することが明らかとなった。一方、40%LAL〜80%LALの範囲で高い発光強度が得られることが明らかとなった。この範囲は、測定系の全量に対するLALのタンパク質濃度が1.67mg/mL〜3.33mg/mLの範囲に相当した。この結果から、従来の通常使用量より少ない量のLALの使用により、高感度の測定が可能となることが示された。 以上のように、本発明によれば、従来のリムルステストのうち本発明と同じ時間で測定可能なエンドポイント比色法の検出下限値(0.025EU/mL)より微量である0.0005EU/mLのエンドトキシンをエンドポイント測定可能であることが示された。また、0.001EU/mLのエンドトキシンを測定可能である比濁時間法が測定に180分以上の時間を要するのに対して、本発明によれば15分以内に測定が可能であることが判明した。さらに、野生型ルシフェラーゼの発光強度よりも大きい発光強度を有する変異型ルシフェラーゼを用いれば、0.0001EU/mL以下の超微量のエンドトキシンも測定可能であることが示唆された。さらに、リムルス試薬(LAL)の使用量を従来より減らした0.4〜0.8倍容(最終濃度1.5〜3.5mg/mL)で使用することにより、発光強度が増大し、高感度のエンドトキシン測定が可能であることが明らかとなった。 これらの結果から、本発明を用いることにより、注射用医薬品等において従来の方法では検出不可能な量のエンドトキシンの混入に起因する副作用の発生を防止できる。また、臨床試料中の極微量のエンドトキシンを測定できることにより、生体中のエンドトキシン濃度と種々の病態との関連性を明確にすることができる。また、エンドトキシン血症の早期診断と早期治療が可能となり、医療現場に多大な貢献をもたらすことが期待できる。さらに、高感度のエンドトキシン測定試薬を低コストで提供することができる。 なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。 本発明は、医療分野、特に医薬品製造、臨床検査などの分野に利用することができる。 試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法であって、 試料と、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子および活性型C因子により活性化されるB因子を含有する試薬と、ペプチドにアミノルシフェリンが結合してなる発光合成基質とを反応させ、該発光合成基質からアミノルシフェリンを遊離させるアミノルシフェリン遊離工程と、 前記アミノルシフェリン遊離工程により遊離したアミノルシフェリンにルシフェラーゼを作用させ、発光量を測定する発光量測定工程と、 前記発光量測定工程により得られた測定値に基づいて前記試料中のエンドトキシン濃度を定量する濃度定量工程とを包含し、 前記発光合成基質が、活性型B因子の作用により、アミノルシフェリンと前記ペプチドとの結合が切断される構造を有し、 前記ペプチドのアミノ酸配列が、Thr−Thr−Thr−Thr−Arg−(配列番号11)またはSer−Arg−Gln−Arg−Arg−(配列番号12)であることを特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。 前記ルシフェラーゼが、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫からなる群より選択される甲虫由来であることを特徴とする請求項1に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。 前記ルシフェラーゼは変異型ルシフェラーゼであり、該変異型ルシフェラーゼは野生型ルシフェラーゼと比較して発光強度が増大するように、野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列が改変されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。 前記変異型ルシフェラーゼが、以下の(i)〜(v)からなる群より選択された1種であることを特徴とする請求項3に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。(i) 配列番号13に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(ii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iii) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(iv) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ(v) 配列番号13に示される北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ エンドトキシンと特異的に結合して活性化されるC因子および活性型C因子により活性化されるB因子を含有する試薬と、ペプチドにアミノルシフェリンが結合してなる発光合成基質と、ルシフェラーゼとを構成成分として含み、前記発光合成基質が、活性型B因子の作用により、アミノルシフェリンと前記ペプチドとの結合が切断される構造を有し、前記ペプチドのアミノ酸配列が、Thr−Thr−Thr−Thr−Arg−(配列番号11)またはSer−Arg−Gln−Arg−Arg−(配列番号12)であることを特徴とするエンドトキシンの濃度測定用キット。配列表


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