生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_創傷治療用外用剤
出願番号:2013211194
年次:2015
IPC分類:A61K 47/18,A61P 17/02,A61K 47/06,A61P 31/04,A61K 47/14


特許情報キャッシュ

杉山彩代 森 絵美 山崎祐亮 篠田克巳 JP 2015074627 公開特許公報(A) 20150420 2013211194 20131008 創傷治療用外用剤 三洋化成工業株式会社 000002288 杉山彩代 森 絵美 山崎祐亮 篠田克巳 A61K 47/18 20060101AFI20150324BHJP A61P 17/02 20060101ALI20150324BHJP A61K 47/06 20060101ALI20150324BHJP A61P 31/04 20060101ALI20150324BHJP A61K 47/14 20060101ALI20150324BHJP JPA61K47/18A61P17/02A61K47/06A61P31/04A61K47/14 9 OL 13 4C076 4C076AA06 4C076BB31 4C076CC19 4C076CC20 4C076DD07 4C076DD13 4C076DD19 4C076DD34A 4C076DD46 4C076FF67 本発明は、褥瘡、糜爛、切傷、擦過傷、皮膚潰瘍、火傷及び水虫などの皮膚損傷を伴う疾患を治療するための創傷治療用外用剤に関する。 皮膚組織や粘膜は種々の原因によりしばしば損傷を受ける。これらの皮膚組織等の損傷である傷や潰瘍は一般に「創傷」と呼ばれ、その具体例として、褥瘡、糜爛、切傷、擦過傷、皮膚潰瘍、火傷及び水虫などが挙げられる。 近年、創傷治癒促進を目的として、種々の殺菌剤を含む創傷治療用外用剤の開発が進んでいる。中でも白糖とヨウ素による殺菌作用を示すポビドンヨードとを混合した創傷治療用外用剤は、創傷治癒促進を目的とした殺菌作用に優れた製剤として、皮膚潰瘍等の創傷治療に使用されてきた。 創傷治癒促進を目的とした外用剤にはその作用効果を高めるべく、通常、高濃度の白糖が含まれる(特許文献1)。しかしながら、創傷治癒促進効果はほとんど向上せず、さらに、瘢痕化を惹起するといった問題がある。 また、これら従前の創傷治療用外用剤は、創面を乾燥させること、洗浄性を優先し、水溶性の基剤が多く用いられている。しかしながら、創面の保護については考慮されていない。 そこで、近年では、創面を保護する観点から、ワセリン、ゲル化炭化水素などの油性基剤を使用した創傷治療用外用剤が開示されている(特許文献2)。特開2000−38342号公報特開2010―77143号公報 しかしながら、特許文献2に記載の外用剤はヨウ素を含有しており、創傷面及びその周辺の皮膚へのヨウ素製剤の蓄積、ヨウ素の残存により、皮膚の着色(所謂ヨウ素焼け)やヨウ素製剤そのものによる刺激などの副作用が懸念されるため、その用途と効果が限定されている。 本発明は、低刺激性で、創傷治癒促進を目的とした殺菌作用に優れた創傷治療用外用剤を提供することにある。 本発明は、油性基剤(A)並びにカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を含有し、創傷治癒用外用剤中の(B)及び(C)の合計含有量が、創傷治癒用外用剤の重量を基準として、0.001〜5重量%である創傷治療用外用剤である。 本発明の創傷治癒用外用剤は、低刺激性で、創傷治癒促進を目的とした殺菌作用に優れている。 本発明における油性基剤(A)は通常、創傷治療用外用剤として使用されている炭化水素類(ワセリン、ゲル化炭化水素及び流動パラフィン等)、脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル等)、ロウ類(ミツロウ及びラノリン等)等、油脂性基剤であれば特に限定されないが、創傷治療用外用剤基剤として適度な稠度があるため取り扱い易く、微生物が繁殖しにくく、pHも変化しないなどの観点から、ワセリン及びゲル化炭化水素が好ましい。 (A)は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 本発明においてワセリンとしては、日本薬局法収載の黄色ワセリン、白色ワセリン及び親水ワセリン等が挙げられ、精製度が高い及び創傷治癒促進の観点から、好ましいのは白色ワセリンである。 本発明におけるゲル化炭化水素としては、医薬品添加物規格収載「ゲル化炭化水素」適合品であり、流動パラフィンをポリエチレンでゲル化したものである。 一般市場で入手できるゲル化炭化水素としては、プラスチベース(登録商標、ブリストル・マイヤーズスクイブ社製)及びポロイド(登録商標、丸石製薬(株)製)等が挙げられる。 本発明におけるカチオン性界面活性(B)としては、公知のカチオン性界面活性剤を使用できるが、低刺激性及び殺菌性の観点から、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。 式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜22の脂肪族炭化水素基;R3は、炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基又は炭素数7〜22のアリールアルキル基;R4は炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基;fは1〜3の整数、Xf-はf価のアニオンを表す。 一般式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜22の脂肪族炭化水素基を表し、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油アルコールから水酸基を除いたアルキル基(以下、ヤシ油アルキル基と略記する。)及びオレイル基等が挙げられる。 これらのうち、殺菌性の観点から、好ましいのはメチル基、エチル基及びプロピル基であり、特に好ましいのはメチル基である。 R3は炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基又は炭素数7〜22のアリールアルキル基を表す。 炭素数が1〜22の脂肪族炭化水素基としては上記と同様のものが挙げられる。 炭素数7〜22のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等があげられる。 これらのうち、殺菌性の観点から、好ましいのはデシル基及びベンジル基である。 R4は炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基を表し、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油アルキル基及びオレイル基等が挙げられる。 これらのうち、殺菌性の観点から、好ましいのはデシル基、ドデシル基及びテトラデシル基である。 一般式(1)におけるカチオン性界面活性剤(B)のカチオン部位の具体例としては、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルヤシ油アルキルアンモニウム、ジメチルエチルドデシルアンモニウム、ジメチルエチルテトラデシルアンモニウム、ジメチルエチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルエチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルエチルヤシ油アルキルアンモニウム、メチルジエチルドデシルアンモニウム、メチルジエチルテトラデシルアンモニウム、メチルジエチルヘキサデシルアンモニウム、メチルジエチルオクタデシルアンモニウム、メチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウム、ジメチルジヘキシルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルデシルベンジルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウム及びヤシ油アルキルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。 これらのうち、殺菌性の観点から、好ましいのはジデシルジメチルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム及びジメチルテトラデシルベンジルアンモニウムである。 一般式(1)におけるXf-はf価の酸のアニオンであり、fは1〜3の整数であるが、殺菌性の観点から、好ましくは1である。 本発明において、一般式(1)におけるXf-に関して、プロトンと結合したXf-・fH+の第1解離段階でのHammett酸度関数(H0)は、創傷治癒用外用剤の刺激性の観点から、−12以下であることがこのましい。 Hammett酸度関数(H0)とは、酸の強度は水素電極又はガラス電極を用いて測定した水素イオン濃度をpHによって表すことが出来るが、イオン濃度が0.1moldm-3より大きな超強酸はこのような方法は適用できない。このような場合に酸強度を示すためにpHの代わりに用いられる尺度がHammett酸度関数(H0)であり、H0=pKa(BH+)−log[BH+]/[B]で表され、硫酸よりも強い酸の水溶液が水素イオンを与える能力、または水素イオンを受け取る能力を示す関数である。 H0の値は強い酸性であるほど負に大きな数値となる。例として、25℃での100%硫酸は−12、フルオロスルホン酸は−15である。 一般式(1)におけるカチオン性界面活性剤(B)のアニオン部位の具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、硫酸イオン(H0=−11.93)、クロロスルホン酸イオン(H0=−13.80)、フルオロスルホン酸イオン(H0=−15.07)及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン(H0=−14.1)等が挙げられる。 これらのうち、創傷治癒用外用剤の経時的な安定性、(B)の刺激性及び製造時の取り扱いやすさの観点から、好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸イオンである。 カチオン性界面活性剤(B)は、殺菌作用が高いものの皮膚刺激性が強いため、カチオン性界面活性剤(B)のみで創傷治癒用外用剤として使用することができない。 一方、本発明では、カチオン性界面活性剤(B)を油性基剤(A)と混合することで殺菌作用を残しつつ皮膚刺激性を低下させることが可能である。 本発明における両性界面活性(C)は殺菌作用を示すものであれば用いることができる。例えば、アルキルの炭素数が1〜30のアルキルアミノエチルグリシン、アルキルの炭素数が1〜30のアルキルジアミノエチルグリシン又はアルキルの炭素数が1〜30のアルキルポリアミノエチルグリシンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができ、具体例としては、アルキルアミノエチルグリシン{デシルアミノエチルグリシン、ラウリルアミノエチルグリシン、ヤシ油アルキルアミノエチルグリシン、ミリスチルアミノエチルグリシン、ジオクチルアミノエチルグリシン、ジ−2−エチルヘキシルアミノエチルグルシン、ジデシルアミノエチルグリシン、ジヘキシルアミノエチルグリシン等}、アルキルジアミノエチルグリシン{デシルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン、ヤシ油アルキルジアミノエチルグリシン、ジヘキシルアミノエチルアミノエチルグリシン、ジオクチルアミノエチルアミノエチルグリシン、ジ−2−エチルヘキシルアミノエチルアミノエチルグリシン、ジデシルアミノエチルアミノエチルグリシン、ミリスチルジアミノエチルグリシン等}等が挙げられる。 これらのうち、殺菌性の観点から、好ましいのはラウリルジアミノエチルグリシン及びジオクチルアミノエチルグリシンである。 本発明におけるカチオン界面活性剤(B)及び両性界面活性剤(C)の合計含有量は、創傷治療用外用剤の重量を基準として、0.001〜5重量%であるが、創傷治癒用外用剤の経日的な安定性、創傷治癒促進を目的とした殺菌効果及び低刺激性の観点から、好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%である。 0.001重量%以上であることで、十分な創傷治癒促進を目的とした殺菌効果が得られるので好ましい。また、5重量%以内であることで、経日的に安定であり好ましい。 本発明は、油性基剤(A)並びにカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を含有するものであるが、必要により、非イオン界面活性剤(D)を含んでもよい。 本発明においては、非イオン界面活性剤(D)を含むことにより、(B)及び/又は(C)を(A)に均一に配合することが出来る。 非イオン界面活性剤(D)は、HLBが5.0以下のものであり、多価アルコール型非イオン界面活性剤が含まれ、具体的には、多価アルコールの脂肪酸エステル化物が含まれる。 多価アルコールとしては、炭素数2〜6のアルコールが含まれ、例えば、2価のもの{エチレングリコール、プロピレングリコール等}、3価以上のもの{グリセリン、ソルビタン等}等が挙げられる。 脂肪酸としては、炭素数8〜24の脂肪酸が含まれ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リシノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。HLBとは、界面活性剤の親水性及び疎水性を示す尺度として知られている尺度であり、HLBの値が高いほど親水性が高いことを意味する。 HLBの算出方法はアトラス法に基づいており、HLB=20(1−S/A)(Sはケン化価、Aは原料脂肪酸の酸価を表す)で表される。 非イオン界面活性剤(D)の具体例としては、モノオレイン酸ソルビタン(HLB=4.3)、トリオレイン酸ソルビタン(HLB=1.8)、セスキオレイン酸ソルビタン(HLB=3.7)モノステアリン酸ソルビタン(HLB=4.7)、トリステアリン酸ソルビタン(HLB=2.1)、セスキステアリン酸ソルビタン(HLB=4.2)及びモノラウリン酸ソルビタン(HLB=4.7)等が挙げられる。 非イオン海面活性剤(D)のうち、経日的な安定性の観点から、モノオレイン酸ソルビタン及びトリオレイン酸ソルビタンが好ましい。 本発明における非イオン界面活性剤(D)の含有量は、創傷治療用外用剤の重量を基準として、経日的な安定性の観点から、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.05〜1重量%である。 カチオン性界面活性剤(B)と非イオン界面活性剤(D)との組み合わせとしては、創傷治癒用外用剤の低刺激性、創傷治癒促進性を目的とした殺菌性及び安定性の観点から、ジデシルジメチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホン酸とトリオレイン酸ソルビタンとの組み合わせが好ましい。 両性界面活性剤(C)と非イオン界面活性剤(D)との組み合わせとしては、創傷治癒用外用剤の低刺激性、創傷治癒促進性を目的とした殺菌性及び経日的な安定性の観点から、ラウリルジアミノエチルグリシン、ヤシ油アルキルジアミノエチルグリシン及びミリスチルジアミノエチルグリシンからなる群より選ばれる少なくとも1種とモノオレイン酸ソルビタンとの組み合わせが好ましい。 本発明の創傷治療用外用剤は上記(A)、(B)、(C)及び(D)以外に、必要によりさらに薬学的に許容されるその他の基剤成分を添加して、外用剤として従来から公知の剤型としてもよい。 創傷治癒用外用剤の取り扱い易さの観点から、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤などの剤型とすることが好ましい。 その他の基剤成分としては、脂肪類、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコール、合成及び天然高分子、低級アルコール、ケトン類、セルロース類並びに無機塩類が含まれる。 脂肪類としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ハードファット等の合成油、オリーブ油、ダイズ油、ナタネ油、ラッカセイ油、ベニバナ油、ヌカ油、ゴマ油、ツバキ油、トウモロコシ油、メンジツ油、ヤシ油等の植物油、豚脂、牛脂等の動物油及びこれらの硬化油等が挙げられる。 ロウ類としては、例えばラノリン、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ等の天然ロウや、モンタンロウ等の鉱物ロウ及び合成ロウ等を使用することができる。 高級脂肪酸としては、炭素数8〜24のものが含まれ、例えばステアリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が挙げられる。 高級アルコールとしては、炭素数8〜24のものが含まれ、例えばセタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びコレステロール等が含まれる。 多価アルコールとしては、炭素数2〜3の2価以上のアルコールが含まれ、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン及び1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。 合成及び天然高分子としては、例えばカラギーナン、デンプン、デキストリン、デキストリンポリマー(カデキソマー)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー)トラガント、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、プルラン、アルギン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。 低級アルコールとしては、炭素数2〜4のアルコールが含まれ、例えばエタノール及びイソプロピルアルコール等が挙げられる。 ケトン類としては、炭素数3〜6のものが含まれ、例えばアセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。 セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。 無機塩類としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナリウム、硫化ナトリウム、ホウ砂、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化カリウム等が挙げられる。 より具体的に、各剤型と添加成分の関係を示せば次の通りである。 パスタ剤は、軟膏類似の製剤であるが、軟膏より硬く、皮膚に直接塗布するのではなく、ガーゼなどに塗り広げて貼付して用い油性パスタ剤及び水性パスタ剤の剤型が含まれる。 油性パスタ剤の場合には、その他の基剤成分として、例えば脂肪類、ロウ類、炭化水素等が使用できる。 水性パスタ剤の場合には、その他の基剤成分として、例えば合成及び天然高分子、多価アルコール、界面活性剤等を使用できる。 界面活性剤としては、HLBが5.0より大きいもの、例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。 軟膏剤の場合には、その他の基剤成分として、例えば脂肪類、多価アルコール等を使用することができる。 クリーム剤の場合には、その他の基剤成分として、例えば界面活性剤、高級アルコール、高級脂肪酸、多価アルコール、水(精製水)等を使用することができる。 液剤及びゲル剤の場合には、その他の基剤成分として、例えば水(精製水)、低級アルコール、ケトン類、脂肪類、多価アルコール、界面活性剤、合成及び天然高分子等を使用することができる。 上記その他の基剤成分の添加量は、剤型によるが、創傷治療用外用剤の製剤安定性の観点から、創傷治癒用外用剤の重量に対して、0.01〜20.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10.0重量%である。 さらに、本発明の創傷治療用外用剤には、必要に応じてpH調整剤として水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を使用してもよく、また、防腐・保存剤として、例えば安息香酸ナトリウム等の安息香酸アルカリ金属塩、パラオキシ安息香酸エステル及びソルビン酸等を配合してもよい。 さらに、必要により、抗酸化剤として、例えばトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等を用いてもよい。 上記により得られた本発明の創傷治療用外用剤は、エマルジョン型の製剤とすることもできるが、その場合のエマルジョンの形態はW/O型、O/W型どちらの形態であっても構わない。 また、本発明の創傷治療用外用剤は、皮膚外用剤自体をそのまま患部に塗布してもよいが、例えば、当該外用剤をさらに伸縮性を有する布や不織布あるいはプラスチックシート等に塗布したパップ剤やプラスター剤等の貼付剤として患部に適用してもよい。 上記により得られた本発明の創傷治療用外用剤は、皮膚に対して安全であり、使用感も良好で、臨床的に優れ、かつ創傷に対して極めて有効な治癒促進作用を発揮することができるものである。 本発明の創傷治療用外用剤の調整・製造は油性基剤(A)にカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を製剤学的に慣用されている製剤技術で常法により混合、均一化して調整する方法と、油性基剤(A)であるゲル化炭化水素の製造時にカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を混合、均一化することにより製造する方法のどちらでも良い。 油性基剤(A)にカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を混合、均一化して調整する方法では、カチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)、必要により非イオン界面活性剤(D)を50〜100℃で均一に溶解した後、40℃まで冷却し、引き続き冷却しながら油性基剤(A)を徐々に加えながら練合し、均一の状態になるようにして本発明の創傷治療用外用剤が調製される。この場合の製造設備としては、攪拌羽と釜壁のクリアランスが5mm以下の万能混合機の使用が望ましい。 (A)がゲル化炭化水素である場合、ゲル化炭化水素の製造時にカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を混合、均一化することにより製造する方法では、流動パラフィン90〜95重量部とポリエチレン5〜10重量部の混合物を予めポリエチレンの融点以上、例えば、120℃で均一に溶解したものに、別の溶解槽でカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)、必要により非イオン界面活性剤(D)を50〜100℃で均一に溶解したものを均一に混合し、均一混合物を冷却する際、100℃から40℃までの温度領域における冷却温度勾配が1.5℃/秒以上を保持しながら冷却することにより得られる。 この場合の製造設備としては、攪拌羽と釜壁のクリアランスが5mm以下の万能混合機、冷却装置を備えた2軸押し出し成型機、かき取り装置を備えた冷却プレート、ベルトなどが使用できる。 前記流動パラフィンは日本薬局方収載の流動パラフィンであり、密度が0.860〜0.890で、粘度が37mm2/s以上である。前記ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(JISで密度0.910以上0.930未満と定義されている)で、重量平均分子量が5,000〜20,000、MFR(メルトフローレート)が0.5〜50g/10minである。 上記により得られた本発明の創傷治療用外用剤は、刺激性が低く皮膚に対して安全であるため、患部に直接的に塗布することによって褥瘡、糜爛、切傷、擦過傷、火傷、皮膚潰瘍、水虫などの創傷の治癒に十分な効果を発揮することができるものである。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、以下において、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。〔実施例1〕 PE7部及び流動パラフィン91.9部を攪拌機付き溶解槽に量り取り、120℃で均一に溶解した。 別の溶解槽にDFSを0.1部とS−85を1部量り取り、100℃で均一に溶解した後、PE/流動パラフィン溶解槽に全量投入し均一に混合した。ジャケットに5℃の冷却水を通した容量150部の万能混合機に、この溶液100部を30℃を超えない給液量で投入し、急冷化ゲル化して、創傷治癒用外用剤(1)を得た。〔実施例2〜3〕 実施例1において、表1に記載の油性基剤(A)、カチオン性界面活性剤(B)及び非イオン界面活性剤(D)を用いる以外は同様にして、創傷治癒用外用剤(2)〜(3)を得た。〔実施例4〕 白色ワセリン94.9部を容量150部の万能混合機に仕込んだ。別の溶解槽にG−50を0.05部とS−80を5部仕込み、80℃で均一に溶解した。 ジャケットに5℃の冷却水を通した万能混合機に、この溶液5.05部を30℃を超えない給液量で投入し、創傷治癒用外用剤(4)を得た。〔実施例5〕 実施例4において、表1に記載の油性基剤(A)、両性界面活性剤(C)及び非イオン界面活性剤(D)を用いる以外は同様にして、創傷治癒用外用剤(5)を得た。〔実施例6〕 実施例1において、表1に記載の油性基剤(A)、カチオン性界面活性剤(B)、両性界面活性剤(C)及び非イオン界面活性剤(D)を用いる以外は同様にして、創傷治癒用外用剤(6)を得た。〔比較例1〕 PE7部及び流動パラフィン92部を攪拌機付き溶解槽に量り取り、120℃で均一に溶解した。 別の溶解槽にDFSを0.0005部とS−85を1部量り取り、100℃で均一に溶解した後、PE/流動パラフィン溶解槽に全量投入し均一に混合した。 ジャケットに5℃の冷却水を通した容量150部の万能混合機に、この溶液100部を30℃を超えない給液量で投入し、急冷化ゲル化して、創傷治癒用外用剤(1’)を得た。〔比較例2〕 比較例1において、表1に記載の油性基剤(A)、カチオン性界面活性剤(B)及び非イオン界面活性剤(D)を用いる以外は同様にして、創傷治癒用外用剤(2’)を得た。 なお、表1中、各成分は下記のものを用いた。PE:ポリエチレン、重量平均分子量17,000、宇部丸善ポリエチレン(株)製、「F222」流動パラフィン:モレスコ社製、品名「モレスコホワイト P−350」白色ワセリン:建栄製薬(株)製、品名「日本薬局方 白色ワセリン」DFS:ジデシルジメチルアンモニウム・三フッ化メチル硫酸、三洋化成工業(株)製、「ネオジャーミDFS」DDAC:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、三洋化成工業(株)製、「カチオンDDC−80」G−50:ヤシ油アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、三洋化成工業(株)製、「カチオンG−50」LAG−40:ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩の40重量%水溶液S−80:モノオレイン酸ソルビタン、三洋化成工業(株)製、「イオネットS−80」S−85:トリオレイン酸ソルビタン、三洋化成工業(株)製、「イオネットS−85」 実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた創傷治療用外用剤で次の性能評価を行った。結果を表2に示す。(殺菌性評価) 5cm四方ガラス板に、創傷治癒用外用剤(1)〜(6)及び(1’)〜(2)1gをそれぞれ均一に塗り、紫外線を1時間照射し殺菌性評価用試料とした。 殺菌性評価用試料の上に、105CFU/mlの菌懸濁液(大腸菌又は黄色ブドウ球菌)0.5mlをそれぞれ散布し、4cm四方のポリエチフィルムでラップし、24時間放置した。 24時間後に、生理食塩水4.5mlで菌懸濁液を洗い流し、洗液を培養して生菌数(CFU/ml)を測定し、殺菌性として表2に示した。 なお、生菌数が少ないほど、殺菌性が優れていることを示す。(製剤安定性評価) 医薬品添加物規格「ゲル化炭化水素」の遊離流動パラフィン試験方法に準じ、試験した。 なお、0.2%以下であるものが、製剤安定性が良好であることを示し、数値が小さいほど、製剤の安定性が優れていることを示す。(刺激性評価:モルモットにおける皮膚一次刺激性試験)動物は、ハートレイ系白色種モルモットを試験に供し、側腹部を適用部位と定め、電気バリカンと電気カミソリで剪毛し、健常皮膚部に実施例1〜5及び比較例1〜2で得た創傷治癒用外用剤を開放塗布した。開放塗布は試料を綿棒に付けて直径2cmの円形状に塗布した。 塗布した皮膚について、ISO 10993−10Biological Evaluation of Medical Devices− Part 10(2002)に従って一次刺激性インデックス(P.I.I.)で評価した。 なお、0.5以下のものが刺激性の評価が良好なものであることを示し、数値が小さいほど、刺激性が低く優れていることを示す。 実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた創傷治療用外用剤で性能評価を行った表2の結果から、本発明の創傷治癒用外用剤(1)〜(6)は、低刺激性及び創傷治癒促進を目的とした殺菌作用を両立することができ、かつ製剤の安定性にも問題ないことが分かった。 本発明の創傷治癒用外用剤は、褥瘡、糜爛、切傷、擦過傷、皮膚潰瘍、火傷及び水虫などの皮膚損傷を伴う疾患を治療するための創傷治療用外用剤として利用できる。油性基剤(A)並びにカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を含有し、創傷治癒用外用剤中の(B)及び(C)の合計含有量が、創傷治癒用外用剤の重量を基準として、0.001〜5重量%である創傷治療用外用剤。油性基剤(A)が、ワセリン及び/又はゲル化炭化水素である請求項1に記載の創傷治療用外用剤。カチオン性界面活性剤(B)が、下記一般式(1)で表される請求項1又は2に記載の創傷治療用外用剤。[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜22の脂肪族炭化水素基;R3は、炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基又は炭素数7〜22のアリールアルキル基;R4は炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基;fは1〜3の整数、Xf-はf価のアニオンを表す。]一般式(1)におけるXf-に関して、プロトンと結合したXf-・fH+の第1解離段階でのHammett酸度関数(H0)が−12以下であることを特徴とする請求項3に記載の創傷治療用外用剤。両性界面活性剤(C)が、アルキルアミノエチルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン又はアルキルポリアミノエチルグリシンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の創傷治療用外用剤。両性界面活性剤(C)がアルキルジアミノエチルグリシンである請求項1〜5のいずれかに記載の創傷治療用外用剤。さらに、HLBが5.0以下の非イオン界面活性剤(D)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の創傷治療用外用剤。非イオン界面活性剤(D)の含有量が、創傷治癒剤の重量を基準として、0.001〜10重量%である請求項7に記載の創傷治療用外用剤。前記創傷が、褥瘡、糜爛、切傷、擦過傷、火傷、皮膚潰瘍及び水虫からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8項いずれか1項に記載の創傷治療用外用剤。 【課題】低刺激性で、創傷治癒促進を目的とした殺菌作用に優れた創傷治療用外用剤を提供することを目的とする。【解決手段】油性基剤(A)並びにカチオン性界面活性剤(B)及び/又は両性界面活性剤(C)を含有し、創傷治癒用外用剤中の(B)及び(C)の合計含有量が、創傷治癒用外用剤の重量を基準として、0.001〜5重量%である創傷治療用外用剤;好ましくは油性基剤(A)が、ワセリン及び/又はゲル化炭化水素であることである。【選択図】 なし


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