タイトル: | 公開特許公報(A)_炎症性腸疾患を治療するためのリン脂質および5−アミノサリチル酸を含有する医薬品の調製 |
出願番号: | 2013206865 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/685,A61K 31/606,A61P 1/04,A61P 43/00 |
リクテンバーガ,レナド,エム JP 2014015478 公開特許公報(A) 20140130 2013206865 20131002 炎症性腸疾患を治療するためのリン脂質および5−アミノサリチル酸を含有する医薬品の調製 ザ、ボード、アヴ、リージェンツ、アヴ、ズィ、ユーニヴァーサティ、アヴ、テクサス、システィム 507119364 真田 雄造 100073841 尾原 静夫 100104053 リクテンバーガ,レナド,エム US 60/831,843 20060719 A61K 31/685 20060101AFI20131227BHJP A61K 31/606 20060101ALI20131227BHJP A61P 1/04 20060101ALI20131227BHJP A61P 43/00 20060101ALI20131227BHJP JPA61K31/685A61K31/606A61P1/04A61P43/00 121 1 2009520829 20070719 OL 13 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA17 4C086DA41 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZA66 4C086ZC75 本出願は、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる07/19/2006(2006年7月19日)に出願された米国特許仮出願第60/831843号に対する仮優先権を主張する。 本発明は、炎症性腸疾患(IBD)、例えば潰瘍性大腸炎など、を治療するための5−アミノサリチル酸(5ASA)およびリン脂質を含む独特の製剤に関する。 本発明は、大腸炎または炎症性腸疾患(IBD)による病変が存在する遠位の小腸および/または結腸内で、5ASAの抗炎症効能を高めるために5ASAを放出するように構成されている5ASAおよびリン脂質を含む独特の組成物に関する。ある実施形態において、該リン脂質組成物は、生体適合性の担体および/または樹脂中に約15重量%〜約95重量%のホスファチジルコリン(PC)を含んでいる。本発明は、また、本発明の組成物を製造し、経口で、経腸的におよび/または直腸に投与する方法にも関する。 リン脂質および抗炎症性医薬品について、読者は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4918063号、同第5043329号、同第4950656号、同第5032585号、同第5763422号、同第5955451号、およびPCT/US第01/51605号に目を向けられたい。 炎症性腸疾患(IBD)は、結腸および遠位の小腸に影響を及ぼす潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む潰瘍性疾患の仲間である。これらの疾患は、胃腸出血、下痢、発熱、感染の発現により明らかとなり、最も進んだ場合、胃腸瘻孔形成は、穿孔および癌腫によって明らかとなる。5ASAは、IBDを持つ患者を扱うための医療に用いられてきたが、患者を寛解状態に保つその効果には限界があった。発明の要約 5ASAは、効果的な治療ではあるが、IBDを治療する改良された効果を有し、患者を寛解状態に保つ5ASAに対する技術的必要性が存在する。 本発明は、リン脂質(PL)および5−アミノサリチル酸(5ASA)を含む組成物を提供する。 本発明は、また、ダイズから誘導されたリン脂質成分およびメサラミン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジド、またはそれらの混合物などの成分を含有する5−アミノサリチル酸(5ASA)を含む組成物を提供する。該組成物は、また、遠位の腸内での5ASA含有成分の放出を容易にするための樹脂(例えば、Eudragrit(登録商標)S)などのさらなる成分を含むことができる。 本発明は、また、ダイズから誘導されたホスファチジルコリン(PC)成分およびメサラミン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジド、またはそれらの混合物などの成分を含有する5−アミノサリチル酸(5ASA)を含み、該PCおよび5ASA含有成分が、遠位の腸内でその成分の放出を容易にする樹脂(例えば、Eudragrit(登録商標)S)に、取り囲まれているか、カプセル化されているか、または埋め込まれている組成物を提供する。 本発明は、5ASA成分およびリン脂質成分を含む製剤を製造する方法を提供する。 本発明は、また、5ASA成分とPCを強化したリン脂質成分とを含む製剤を製造する方法を提供する。 本発明は、5ASA/PL製剤を、経口で、経腸的にまたは直腸に投与する方法を提供し、その投与は、単回投与、周期的投与、間欠投与、または何らかの投与プロトコールに従う投与(所定のスケジュールに従う、例えば、1日1回、1日2回などの投与)であり得る。 本発明は、本発明の組成物をIBD損傷部位に直接投与して炎症を軽減し、同時に、(1)その損傷の潰瘍化を減少もしくは防止し、(2)その損傷のさらなる潰瘍化を減少もしくは防止し、(3)その損傷の潰瘍化を減少もしくは治癒し、(4)あるいは遠位の腸と関連する疎水性膜および/または層の完全性を維持することによってIBDの患者を治療する方法を提供する。 本発明は、類似の要素には同じ番号が付いている添付の説明図と一緒に以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解することができる。4日間にわたって濃度が増加する(0%〜4%)デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を含有する飲用水をマウスにあてがうことによってもたらされる単位長さ当りの増加した結腸組織重量によって示された結腸炎症の増加を示すグラフを描く図である。4日間にわたる飲用水中のDSS濃度の増加が、糞便中ヘモグロビン濃度によって測定された用量依存性のマウスの胃腸出血の増加を引き起こすことを描く図である。5ASA単独(100mg/体重kg)またはそれぞれ35%、53%または75%のPCを含有する3つの異なるダイズPC製剤、P35、P53またはP75と1:1の重量基準で組み合わせた5ASAを含有する食物をマウスが食べる飼料消費を示す図である。Sal/Salの標識のある1グループを除くすべてが大腸炎を引き起こす3%DSSを含有する水を飲むアクセスを有した。実験食を給餌され、大腸炎を引き起こす飲用水中の3%DSSをあてがわれたマウスにおける単位長さ当りの結腸組織重量の増加によって示される結腸炎症の変化を示す図である。実験食を給餌され、大腸炎を引き起こす飲用水中の3%DSSをあてがわれたマウスにおける糞便中の失血の変化を示す図である。実験食を給餌され、大腸炎を引き起こす飲用水中の3%DSSをあてがわれたマウスにおける結腸ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の変化を示す図である。実験食を給餌され、大腸炎を引き起こす飲用水中の3%DSSをあてがわれたマウスにおける0(正常)から4(粘膜腺状構造の完全欠損)までの点数を用いた結腸の粘膜組織像の変化を示す図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の6日間の回復期間中の、生理食塩水、5ASAおよび2つのPC:5ASA製剤に対するヘマトクリットのレベルの変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の6日間の回復期間中の、生理食塩水、5ASAおよび2つのPC:5ASA製剤に対する糞便中の失血の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の6日間の回復期間中の、生理食塩水、5ASAおよび2つのPC:5ASA製剤に対する結腸組織浮腫の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の6日間の回復期間中の、生理食塩水、5ASAおよび2つのPC:5ASA製剤に対する結腸MPO活性の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の6日間の回復期間中の、生理食塩水、5ASAおよび2つのPC:5ASA製剤に対する結腸粘膜下層の固有層における炎症細胞の数の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の6日間の回復期間中の、生理食塩水、5ASAおよび2つのPC:5ASA製剤に対する組織学的に査定した結腸粘膜障害の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の回復期間中の、飲用水中のDSSを含まない生理食塩水と、飲用水中のDSSを含む生理食塩水、5ASAおよびPC:5ASA製剤に対する単位長さ当りの結腸組織重量の変化を示す図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の回復期間中の、飲用水中のDSSを含まない生理食塩水と、飲用水中のDSSを含む生理食塩水、5ASAおよびPC:5ASA製剤に対する結腸MPO活性の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の回復期間中の、飲用水中のDSSを含まない生理食塩水と、飲用水中のDSSを含む生理食塩水、5ASAおよびPC:5ASA製剤に対する結腸接触角の変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の回復期間中の、飲用水中のDSSを含まない生理食塩水と、飲用水中のDSSを含む生理食塩水、5ASAおよびPC:5ASA製剤に対するヘマトクリットのレベルの変化を描く図である。スプラーグ・ドーリー雄ラットにおけるDSS誘発大腸炎後の回復期間中の、飲用水中のDSSを含まない生理食塩水と、飲用水中のDSSを含む生理食塩水、5ASAおよびPC:5ASA製剤に対する糞便中のヘモグロビンの変化を描く図である。 本発明者は、5−アミノサリチル酸(5ASA)および5ASA系医薬品とリン脂質の組成物が、げっ歯類大腸炎モデルを用いてげっ歯類における大腸炎を減少する改良された活性を有することを見出した。特定の実施形態において、そのリン脂質はダイズおよびその他のソースから誘導されたリン脂質である。他の実施形態において、そのリン脂質はホスファチジルコリン(PC)またはホスファチジルコリンの誘導体中で強化されたリン脂質である。これらの5ASA/PC製剤は、胃腸炎、潰瘍、出血および炎症性腸疾患(IBD)と関連するその他の症状、ならびにそれと関連する続発症の下痢、発熱および疼痛の治療または改善のために経口で、経腸的にまたは直腸に(浣腸)投与することができる。5ASAおよびリン脂質を含有する本発明の組成物は、5ASAの抗炎症性の利点を高め、IBDで減弱化した病気に侵された粘膜の疎水性バリア性を強固にする。 本発明は、リン脂質、特定の実施形態においてはホスファチジルコリン(PC)中で強化されたリン脂質と、5ASA、または5ASAを含む医薬品製剤とを含むIBDの治療のための組成物を調製する方法に関する。これらの製剤は、5ASAを含有する粉末(例えば、メサラミン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジド、もしくはそれらの混合物)または活性5ASAにジアゾ結合を介して共有結合しているより大きな分子を取り、単純にそれをリン脂質と混合することによって調製することができる。特定の実施形態において、その5ASA含有成分は、油性リン脂質成分、例えばPCを含有するダイズレシチン油、Phosphal35SB(P35)などと単に混合する。一般に、5ASA対リン脂質の重量比は、約1:10と約10:1の間である。特定の実施形態において、その重量比は、約1:5と約5:1の間である。別の実施形態において、その重量比は、約2:1と約1:2の間である。さらに別の実施形態において、その重量比は、約1:1である。 いくつかの実施形態において、該組成物は、該成分を製剤の処方を容易にするために混合して一緒に加熱することによって調製する。別の方法は、リン脂質と5ASAをリン脂質中で5ASAが融解するための十分な温度まで一般に良好な混合と共に加熱して、5ASAとリン脂質の間の分子レベルでの緻密な混合および会合複合体の形成を可能にする。その方法は、酸化的劣化のない5ASA/リン脂質会合複合体の形成を促進するために空気の存在しない高温の溶媒または生体適合性の油中で行うことができる。その製剤を製造する別の方法は、5ASAを含む水性製剤を作製し、次にその溶液をPCの乾燥脂質のフィルムを被覆した容器に加え、それを次に激しく混合するか、ボルテックスするか、超音波処理するか、または撹拌の他の手段にかけて5ASA/PCの脂質懸濁液を作製するものである。もう1つの方法は、5ASAとリン脂質を、その両方の材料を溶解する溶媒中で溶解するものである。その溶液を加熱するかまたは加熱しないで混合し、次いでその溶媒を蒸発させる。その得られた物質は、次に粉砕し、遠位の腸内で遅延放出するように樹脂でカプセル化することができる。 5ASAとリン脂質(PL)を組み合わせるさらに別の方法は、ジアゾ結合をもたらす標準的な技術を用いて、それらの分子を5ASAのアミノ基と反応性リン脂質(PL)、例えばホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリンまたはその他の反応性リン脂質の間でジアゾ結合を介して共有結合させるものである。その他の5ASA前駆物質、例えばスルファサラジン、オサラジン(osalazine)、およびバサラジド(basalazide)などと同じように結腸中の細菌酵素は、ジアゾ結合を加水分解して5ASAと反応性PL例えばPEなどを遊離させる。その解放された5ASAは、次にその意図された治療効果をもたらすことができ、一方解放されたリン脂質は、遠位の腸の病気に侵された粘膜の疎水性バリアを維持もしくは修復し、炎症を阻止し、治癒を促進する助けをする。 今までの前臨床試験は、PCなどのリン脂質は5ASAの大腸炎を治療する効能を高めることを示している。 適当な試薬 本発明において使用するための適当なリン脂質としては、一般式:(式中、R1およびR2は、8個から32個までの範囲の炭素原子の飽和および/または不飽和の置換基であり、ここで1つまたは複数の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはその他の主要な基元素、例えばB、C、Si、P、S、Ge、およびGaなどによって置換されていてもよく、R3はHまたはCH3であり、XはHまたはCOOHであり、R4は=OまたはH2である)のリン脂質、当該一般式の双性イオン性リン脂質の混合物および組合せが非限定で挙げられる。 式(II)の双性イオン性リン脂質の例としては、非限定で、ホスファチジルコリン類、例えばホスファチジルコリン(PC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、その他のジ飽和ホスファチジルコリン類または不飽和ホスファチジルコリン類、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンスフィンゴミエリンもしくはその他のセラミド類、またはさまざまなその他の双性イオン性リン脂質、リン脂質含有油、例えばω−3脂肪酸を強化したマリン油および/または魚油、ダイズから誘導されたレシチン油など、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン(DLL−PC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ダイズホスファチジルコリン(Soy−PCもしくはPCs)、卵ホスファチジルコリン(Egg−PCもしくはPCE)などが挙げられる。飽和リン脂質のDPPCにおいて、その飽和脂肪族置換基R1とR2は、CH3−(CH2)14であり、R3はCH3であり、XはHである。不飽和リン脂質のDLL−PCにおいて、R1とR2は、CH3−(CH2)4−CH=CH−CH2−CH=CH−(CH2)7であり、R3はCH3であり、XはHである。不飽和リン脂質の混合物であるEgg−PCにおいて、R1は、飽和脂肪族置換基(例えばパルミチン酸またはステアリン酸)を主として含み、R2は、主として不飽和脂肪族置換基(例えばオレイン酸またはアラキドン酸)である。Soy−PCにおいては、それは飽和リン脂質(パルミチン酸およびステアリン酸)に加えて不飽和リン脂質の混合物(オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸)である。海産動物(例えばオキアミ、サケ)に由来するPCにおいてそのR1およびR2基は、ω−3脂肪酸類:エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を構成することができる。好ましい双性イオン性リン脂質としては、非限定で、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、またはそれらの混合物が挙げられる。 組成物の調製 約35重量%のホスファチジルコリン(PC)を含有するダイズレシチン油のPhosal 35 SBを、ガラスのビーカーに入れ、それに5ASA(または5ASAを含有する医薬品)を、約40℃の中熱下で撹拌しながら1:1の重量比が得られるまで加えた。得られた油性製剤をpH感受性のポリマー、例えばMultiSal(商標)、またはEudragrit(登録商標)−Sで被覆し、5ASA/PC組成物のポリマーでカプセル化した微粒子を形成した。これらのカプセル化した微粒子は、5ASAおよびPCが、pHが7以上でそのポリマー被覆が劣化する遠位の腸に薬物が到達したときのみに放出されるように形成されている。この製剤を次に評価のためマウスまたはラットの餌に加えた。そのマウスまたはラットに大腸炎を引き起こすためのそれらの飲用水中に含めた3%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)溶液をあてがった。 上記の油性製剤に対する別法は、5ASAまたは5ASAを含有する医薬品を水中または適当な水溶液中に懸濁させるものである。その水溶液は次に乾燥したPCの脂質フィルムを被覆した第2の容器に加える。得られた混合物を、次に激しい混合、ボルテキシング、超音波処理またはその他の撹拌の手段にかけて、経口、経腸または直腸(浣腸)投与用の水性脂質懸濁液を形成する。 げっ歯類大腸炎モデルのC57BL/6マウスを用いる実施例 4つのC57BL/6マウスのグループを、異なる量のそれらの飲用水中のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)に4日間さらした。そのマウスを次に安楽死させ、マウスの各グループについて長さ当りの結腸組織の重量測定を行った。ここで図1について言及すると、DSS処理は、長さ当りの増加した結腸組織の重量により判断して大腸の炎症または浮腫をもたらし、ここで3%DSSが重量対長さの計測において最大の増加を示した。 C57BL/6マウスのグループを、異なる量のそれらの飲用水中のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)に4日間さらした。4日の期間の終わりにマウスの糞便中ヘモグロビンの測定を行った。ここで図2について言及すると、DSS処理は、それらの飲料中のDSSの濃度の増加に伴い糞便中ヘモグロビンの増加をもたらし、4%DSSが、最高の糞便中ヘモグロビンを示した。 C57BL/6マウスのグループを、異なる食物にさらし、それらの毎日の飼料消費量(グラム/日)を、4日間にわたって測定した。グループ1は、対照のグループを表し、DSSを含まない生理食塩水および5ASAを含有する製剤は何も含まない普通の餌を受けた。グループ2は、DSS対照を表し、3%DSSを含む生理食塩水および5ASAを含有する製剤は何も含まない普通の餌を受けた。グループ3は、5ASA治療グループを表し、3%DSSを含む生理食塩水および5ASAをMultiSal(商標)でカプセル化した微粒子を含む食物を受けた。グループ4から6は、5ASAを3つの油性5ASA/PC製剤と比較するために設計されている。グループ4は、5ASA/P35(5ASAと約35重量%のPCを含有する油性ダイズレシチン製品のPhosphal(登録商標)35SBの1:1の重量比)で治療するグループを表し、3%DSSを含む生理食塩水および5ASA/P35をMultiSal(商標)でカプセル化した微粒子を含む食物を受けた。グループ5は、5ASA/P35(5ASAと約53重量%のPCを含有する油性ダイズレシチン製品のPhosal(登録商標)53MCTの1:1の重量比)で治療するグループを表し、3%DSSを含む生理食塩水および5ASA/P53をMultiSal(商標)でカプセル化した微粒子を含む食物を受けた。グループ6は、5ASA/P35(5ASAと約75重量%のPCを含有する油性ダイズレシチン製品のPhosal(登録商標)75SAの1:1の重量比)で治療するグループを表し、3%DSSを含む生理食塩水および5ASA/P75をMultiSal(商標)でカプセル化した微粒子を含む食物を受けた。ここで図3について言及すると、マウスの餌の消費(グラム/日)を、上記の食物にあてはめた。前の3つの棒は、餌の中に5ASAの存在しないものと存在するものにおける正常なマウスの給餌パターンを明らかにし、一方後の3つの棒は、5ASA/PC製剤の存在するものにおけるマウスの給餌パターンを表す。図3は、活性物質がマウスの食事のパターンに有意に影響しなかったことを示している。 誘発した大腸炎の治療について5ASAと5ASA:PL製剤を比較するマウスのデータ 前の実施例は、3%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を含有する生理食塩水を含む飲用水がマウスに大腸炎型の障害を引き起こすことができることを示している。だから今や、マウスの大腸炎型障害の治療において、5ASA:PL製剤を5ASAと比較することができる。マウスのグループに3%のDSSを含有する生理食塩水を含む飲用水を4日間にわたってあてがい、大腸炎型障害を誘発させ、次いで本発明の組成物により治療した。治療組成物の効果は、単位長さ当りの結腸組織重量を測定することによって判定した。ここで図4について言及すると、一定の長さ当り増加した結腸組織の重量によって測定される結腸の炎症は、DSS無しで治療されるマウスで通常の食物のグループと共に、生理食塩水、5ASA、5ASA:P35、5ASA:P53および5ASA:P75をDSSと組み合わせ、マウスにそれらの食物に入れて投与して治療したとき部分的な逆転を示した。そのデータは、3つの5ASA:PL製剤が、長さに対して増加した結腸組織重量により測定した組織炎症の逆転において5ASA単独より優れていることを示した。 マウスのグループに、3%のDSSを含有する生理食塩水を含む飲用水を4日間あてがい、大腸炎型の障害を誘発させ、次いで本発明の組成物により治療した。糞便中の増加したヘモグロビン含量によって示される血液の発生を測定して5ASA対5ASA:PL製剤の効果を判定した。ここで図5について言及すると、マウスの糞便中のヘモグロビン含量は、5ASA:P35製剤および5ASA:P75を含有する食物をあてがわれたマウスについては生理食塩水/DSSおよび5ASA/DSSと比較して著しく減少した。 マウスのグループに、3%のDSSを含有する生理食塩水を含む飲用水を4日間あてがい、大腸炎型の障害を誘発させ、次いで本発明の組成物により治療した。増加した組織ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性により示される結腸の炎症を、生理食塩水、5ASAおよび5ASA:PC35の効果を判定するために測定した。ここで図6について言及すると、5ASA:P35製剤を含有する食物をあてがわれたマウスについては結腸の炎症が減少した。 マウスのグループに、3%のDSSを含有する生理食塩水を含む飲用水を4日間あてがい、大腸炎型の障害を誘発させ、次いで本発明の組成物により治療した。結腸粘膜を、光学顕微鏡により検分し、0が正常な結腸粘膜を表し、4が結腸の腺状構造の全損失を表す採点法を用いて組織学的に採点した。ここで図7について言及すると、5ASA/P35製剤は、5ASA:P35を含有する食物をあてがわれたマウスにおいて、結腸粘膜に対する顕微鏡下の損傷を著しく減少した。 げっ歯類のデータは、投与された製剤がリン脂質を含むとき遠位の腸における5ASAの効果の明白な増大をはっきりと示している。 誘発した大腸炎の治療について5ASAと5ASA:PL製剤を比較するラットのデータ ラットに4%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を含有する飲用水を5日と20時間にわたってあてがって大腸炎を誘発させた後、それらを通常の飲用水に戻した。その動物に、次いでその後の6日間1日2回、(a)生理食塩水(DSS対照)、(b)100mg/kgの用量の5ASA、(c)1:1の重量比の5ASAとPhosal35SB(油性製剤)、または(d)1:2の重量比の5ASAとPhospholipon90G(水性脂質懸濁液)を5ASAの用量と同じ1日2回の100mg/kgで、胃内に投与した。製剤(c)と(d)は、ホスファチジルコリン(PC)が会合した5ASA製剤であり、PCと5ASAとが分子レベルで会合している。これらの処理は、5ASAと2つの異なるPC:5ASA製剤の効果を比較するために策定されている。 1日、3日および6日目に、生化学的および組織学的分析をして結腸の炎症および胃腸出血を査定するために、ラットを安楽死させ、結腸組織、血液および糞便を集めた。ラットの別のグループはDSSを与えずに「正常対照」として扱った。 ここで図8について言及すると、6日の回復期間の間のヘマトクリットの変化は、安楽死させたラットから測定した。ヘマトクリットのレベルの変化は、6日の回復期間中のグループの間の貧血および内(胃腸)出血の間接的推定を表す。DSSにさらした後のすべてのグループでヘマトクリットのレベルの<10%の少量の減少がDSS無しまたは「正常対照」のヘマトクリットのレベルと比較して見られたが、試験グループの間でのこのパラメータの著しい違いは6日の回復期間中はなかったことが分かる。 糞便ヘモグロビンの変化が図9に示されている。糞便の血液は、試験グループの殆どにおいて回復期間の初日に検出されており(正常対照の値に対して)、5ASA±90Gが糞便出血を減少する薬効を有した可能性のあることを見ることができる。 結腸の炎症および損傷を多数の生化学的および組織学的指標を測定することによって評価した。最初に、組織浮腫を組織の湿重量/単位長さを測定することによって評価した。図10に示されているこれらの結果は、腸管浮腫が生理食塩水処理した対照においてDSS後3日に最大であり、この炎症性変化は5ASAによって減少(顕著ではない)し、2つのPC−[5ASA]製剤により治療したラットにおいてさらに減少(顕著に)したことを明示している。DSS後6日のこのパラメータのグループ間には、90Gと組み合わせた5ASAにより処置した動物が炎症のリバウンド発症を有するいくつかの徴候があったものの顕著な差はなかった。 組織中への好中球浸潤の生化学的マーカーの結腸ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を、炎症のもう1つのマーカーとして測定した。図11に示した結果は、3日目に減少を示す5ASAによる上記のものと似てはいるが一層劇的に変化し、PC−[5ASA]製剤は両方とも殆ど検知できないレベルまでMPO活性をさらに減少することを明示している。MPO活性は、90Gと組み合わせた5ASAにより処置したグループ以外のすべてのグループで6日までに正常対照のレベルに戻った。 組織の組織構造を、損傷および炎症のしるしに対して採点(目隠し状態で)した。炎症を評価するために、われわれは結腸粘膜下層の固有層中の炎症細胞の数を1(正常)から4(非常に炎症が起きている)までの採点法を用いて採点した。図12に示されているこれらの結果は、5ASAで処置したラットが減少した数の炎症細胞を持ち、5ASA/P35が3日後および6日後に比較できるほどのまたはより優れた抗炎症活性を示し、この場合も同様に5ASAと組み合わせた90Gは、6日後には炎症のリバウンドを起こすことを示している。 結腸粘膜損傷を評価するため、0=正常な粘膜、1=表面損傷、2=中間の腺領域に伸びる損傷、3=深い腺領域に伸びる損傷、4=漿膜(筋肉)層に伸びる損傷、の組織学的採点法を用いた。図13は、粘膜損傷が、すべてのグループにおいてDSS後1日目には増加し、3日目までに5ASA±PCにより処置したラットで回復し、5ASA/P35が、90Gより一貫性のある粘膜保護の証拠を示したことを示している。 結論 上の一連の実験で使用したプロトコールは、実験的に(DSS)誘発した大腸炎の回復を促進するための5ASAおよびPC−5ASA製剤の治療効果を評価する非常に有用なげっ歯類モデルシステムであることが分かる。興味深いことに、炎症は大腸炎誘発剤のDSSの使用中止後最初の3日間は前進し、6日までに治まる。多数の生化学的および組織学的マーカーを用いると、100mg/kgの用量の5ASAは、生理食塩水で処置した対照の値と比較して、結腸の炎症およびDSS後3日の組織損傷を著しく減少させるようである。油性5ASA/P35SB製剤は、炎症の4つのマーカーのうちの2つにおいて大腸炎からの回復のさらなる改善を示した(5ASA単独と対比)。対照的に、5ASA/90G製剤は、DSS後6日目に起こる炎症のリバウンドを伴う二相性効果を有した。上記のモデルシステムを使用するこの回復実験が、当該PC−5ASA試験製剤が、5ASA単独と比較して、抗炎症効果のよりはっきりした説得力のある増強を実証することができるか否かを決定するために、5ASAのより低い効果の少ない用量(1日に2回50mg/kg)を用いて繰り返すこと、およびわれわれの活動を油性の5ASA/P35製剤に集中することが推奨される。 誘発した大腸炎の治療についての5ASAと5ASA:PL製剤とを比較するラットのデータ 以下の実験は、4%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)をラットの飲用水に5日を超えて(5日と20時間)加えることによって誘発させた大腸炎を受けさせ、次いで正常な飲用水に戻したラットを治療する中で、5ASA対5ASA:PC製剤の効果の比較をするために設計した。そのラットはそのとき、PL成分無しまたは有りの5ASAにより、この実験では前に検討したものより低い用量(50mg/kg、1日2回)で、DSS誘発大腸炎後3日間にわたる処置をした。 32匹の健康な雄のラットをこの調査では使用した。プロトコール、仕入先、性徴、および体重に関して似ているラットを連続的に4つのグループに分けた。グループ1は、DSSが添加されていない飲用水を与えた。グループ2〜4は、4%DSSを含有する飲用水を6日間にわたって受けた。6日目に、グループ2は、1mLの生理食塩水を1日2回胃内に受けた。グループ3は、5ASA(50mg/Kg)を1日2回胃内に受けた。グループ4は、これまで5ASA:PCと称していた5ASA(50mg/Kg):Phosal35SB:MCT油(1:1:0.3)を1日2回胃内に受けた(ただし、MCTは、中鎖トリグリセリドである)。 9日目にラットを安楽死させ、以下を測定した:(a)ヘマトクリット、(b)糞便のヘモグロビン、(c)結腸の重量/長さ、(d)結腸のミエロペルオキシダーゼ(MPO)、(e)結腸表面の疎水性および(f)結腸組織像。 この調査においては、ラットは通常の飲用水(グループ1)または4%DSSを含有する水をあてがわれ、次いで、胃内に、生理食塩水(グループ2)、1日2回50mg/kgの用量での5ASA(グループ3)、または5ASA:PC(1:1重量比のP35SB)(グループ4)を3日間胃内に投与され、その時点で次の変化が見られた。 ここで図14について言及すると、結腸の重量/長さのデータが示されている。この粘膜の浮腫の測定は、DSS生理食塩水で処置したグループ(グループ2)を絶対的対照(DSS無し、グループ1)と比較すると顕著な増加を明示した。このDSSで誘発した粘膜の浮腫は、1日2回50mg/kgの用量の5ASA(グループ3)により部分的に逆転し、5ASA:PCのグループ(グループ4)においては完全に逆転し、グループ4のラット対グループ2および3のラットの間では著しい違いが見られたが、グループ1のラットに対しては見られなかった。 ここで図15について言及すると、MPOタンパク質のデータが示されている。この炎症の生化学的測定は、上で概要を述べたものと同様のパターンを示し、DSSは、対照のグループ1(DSS無し)に対してMPO活性の著しい増加を誘発し、この炎症は5ASAおよび5ASA:PCによってそれぞれ部分的および完全に逆転した。著しい違い(p<0.05)がグループ4のラット対グループ2および3のラットの間で見られたが、グループ1のラットに対しては見られなかった。 ここで図16について言及すると、結腸接触角の分析データが示されている。多分この表面の性質は、DSS誘発大腸炎後の3日間によって完全に回復したために、グループ間での結腸粘膜表面の疎水性の違いは見られなかった。 ここで図17について言及すると、ヘマトクリットのデータが示されている。胃腸出血によるこの貧血の量は、実験グループのDSSによる処置対対照(DSS無し)の間で著しく異なることはなかったが、著しく高かった5ASA:PC(グループ4)を投与したものを除いて、DSSで処置したグループにおいて低い傾向があった。 ここで図18について言及すると、糞便のヘモグロビンのデータが示されている。活性胃腸出血のこの直接的な量は、対照(DSS無し)グループ(グループ1)と対比して生理食塩水で処置したDSSのグループ(グループ2)においては増加することを明らかにした。このDSSに誘発された胃腸糞便失血の増加は、5ASAの投与により部分的に逆転し、5ASA:PCの投与によって完全に逆転した。著しい違い(p<0.05)がグループ4対グループ2および3の間で見られたが、グループ1に対しては見られなかった。 DSSは、DSS後3日でまだ明らかであるラットにおける結腸の炎症および出血を生じる。50mg/kgの用量で1日2回胃内に投与した5ASA単独は、DSSに誘発された大腸炎からの組織の回復を促進し、胃腸出血を減少させる。PC−5ASAは、活性5ASAを同じ用量で胃内に投与したとき、胃腸出血の形跡が殆どまたは全くないDSSに誘発された大腸炎からの粘膜の完全な回復を引き起こした。 本明細書に引用されているすべての参考文献は、参照により援用される。本発明は、その好ましい実施形態に関して開示してきたが、この説明を読むことにより当業者であれば上記およびこの後請求される本発明の範囲および精神から逸脱しない変化および修正を引き起こすことができることを理解できる。 5−アミノサリチル酸(5ASA)およびリン脂質またはリン脂質含有油を含む組成物。 【課題】炎症性腸疾患(IBD)を治療するための5−アミノサリチル酸(5ASA)を投与する方法を提供する。【解決手段】ジアゾ結合を介して共に共有結合している5ASAと反応性リン脂質との混合物、分子会合複合体または共有結合化合物であり得る5ASAとリン脂質との独特の組成物、および該組成物をIBDの症状を治療するために投与する方法。リン脂質は大豆から誘導されたリン脂質成(ホスファチジルコリン)及びメサラミン、スルフォサラジン、オルサラジン、バルサラジド、またはそれらの混合物などを含有するものである。【選択図】なし