生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_過酸化水素プローブ
出願番号:2013188573
年次:2015
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/533,C07K 16/00,C07K 16/32


特許情報キャッシュ

森 泰生 清中 茂樹 高橋 重成 JP 2015055535 公開特許公報(A) 20150323 2013188573 20130911 過酸化水素プローブ 国立大学法人京都大学 504132272 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 森 泰生 清中 茂樹 高橋 重成 G01N 33/53 20060101AFI20150224BHJP G01N 33/533 20060101ALI20150224BHJP C07K 16/00 20060101ALI20150224BHJP C07K 16/32 20060101ALI20150224BHJP JPG01N33/53 ZG01N33/533C07K16/00C07K16/32 7 OL 13 4H045 4H045AA11 4H045BA10 4H045CA41 4H045DA75 4H045EA20 4H045EA51 4H045FA71 本発明は、過酸化水素プローブ及びその使用並びにキットに関する。 炎症反応は病原体の侵入や物理的、化学的な刺激などによって組織や細胞が傷害された際に起こる重要な生体防御機構である。炎症部位では免疫細胞による傷害性物質の除去、線維芽細胞による組織の修復、血管内皮細胞による血管新生が行われ、治癒回復を促進する。しかし、その一方で病原体の持続感染、自己免疫などにより炎症反応が長期化すると慢性炎症となる。慢性炎症では炎症細胞の浸潤による組織破壊と修復が持続し、組織の繊維化が起こり、様々な疾患の発症および重症化を引き起こすことが知られている。特に、慢性炎症が細胞の癌化や癌の悪性化に関して重要な役割を担っていると考えられており、医学全般の分野で注目が集まっている。炎症と腫瘍に関わる細胞や分子に関する研究は盛んに進められているものの、炎症そのものを可視化し観察する技術はまだ確立されていない。 一方、活性酸素種(Reactive Oxygen Species 以下ROS)はDNAを傷害することによって、癌遺伝子の活性化、癌抑制遺伝子の不活性化を引き起こす他、細胞の増殖や形態に関わるシグナル伝達を攪乱することによって細胞の癌化を引き起こすと言われている (非特許文献1,2)。 ROS の種類としては一重項酸素、スーパーオキサイドアニオン、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカルなどがあり、それぞれのROSを特異的に検出できる蛍光ROSセンサーが開発されている。Trachootham D, Alexandre J, Huang P. Targeting cancer cells by ROS-mediated mechanisms: a radical therapeutic approach? Nature Rev. Drug Discov. 8, 579-591,2009.Fruehauf JP, Meyskens FL Jr. Reactive oxygen species: a breath of life or death? Clin Cancer Res. 13, 789-794, 2007. 本発明は、炎症部位を可視化する技術を提供することを目的とする。 本発明者は、炎症性疾患の病態解析への応用を目指し、炎症性微小環境を可視化する技術の開発に取り組んだ。本技術開発により炎症を伴う癌の病態をより深く解明できるだけでなく、癌を含めた炎症性疾患の診断への応用が期待できる。炎症という現象を可視化するために、本発明者は炎症部位において様々な細胞から産生される活性酸素種(Reactive Oxygen Species 以下ROS)に着目した。本発明者はこのROS を蛍光によって検出することで炎症部位を特定できるのではないかと考えた。 本発明者はH2O2に着目し、H2O2と特異的に反応し蛍光強度が増大する蛍光ROSセンサーを基盤に開発することにした。このH2O2反応性蛍光色素であるPeroxy Green (Miller EW, Tulyathan O, Isacoff EY, Chang CJ. Molecular imaging of hydrogen peroxide produced for cell signaling. Nature Chem. Biol. 3, 263-267, 2007)は通常はほとんど蛍光を発しないが、H2O2によりホウ素とフェニル炭素の結合が切断されると共鳴を組み、強い蛍光を発するようになる。このPeroxy Green の蛍光強度の変化によりH2O2を検出できることを見出した。 本発明は、以下の複合体、使用及びキットを提供するものである。項1. H2O2反応性蛍光色素と細胞特異的抗体を結合してなる、複合体項2. さらに内部標準となる蛍光色素を結合してなる、項1に記載の複合体項3. 抗体がハーセプチンである、項1又は2に記載の複合体。項4. 項1〜3のいずれかに記載の複合体のH2O2産生部位を検出するための使用。項5. H2O2産生部位が炎症部位である。項4に記載の使用。項6. 項1〜3のいずれかに記載の複合体からなる過酸化水素プローブ。項7. 項1〜3のいずれかに記載の複合体を含む、H2O2産生部位を検出するためのキット。 本発明者は、炎症性疾患の病態解析への応用を目指し、炎症性微小環境を可視化する技術の開発に取り組んだ。本技術開発により炎症を伴う癌の病態をより深く解明できるだけでなく、癌を含めた炎症性疾患の診断への応用が期待できる。Peroxy Green-NHS エステルの合成スキームH2O2によるPeroxy Green-Herceptinの蛍光強度の増大(SDS-PAGE)Peroxy Green-AF647-Herceptin によるレシオイメージングの概念図H2O2によるPeroxy Green-AF647-Herceptin の蛍光強度の増大(SDS-PAGE)Peroxy Green-AF647-Herceptin によるN87 細胞上でのH2O2のレシオイメージング担癌モデルマウスの作成とPeroxy Green-AF647-Herceptin の尾静脈投与の概念図Peroxy Green-AF647-Herceptin の尾静脈投与後の時間とPeroxy Green-AF647-Herceptin の集積度合Peroxy Green-AF647-Herceptin による炎症性微小環境のレシオイメージングPeroxy Green シグナルがポジティブな細胞集団にておいて顕著な発現増大が認められた遺伝子リスト(数値は各遺伝子がPeroxy Green シグナルがネガティブな細胞集団に対して何倍発現量の増大が認められたかを示している)。測定は計3 回行った。 本発明は、H2O2反応性蛍光色素と細胞特異的抗体を結合することで複合体を得る。H2O2反応性蛍光色素としては、公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えば芳香族ホウ素化合物が挙げられ、好ましくはペルオキシグリーン1が挙げられる。 細胞特異的抗体としては、細胞の受容体、表面抗原などを認識することで特定の細胞特にがん細胞を認識可能な抗体が挙げられ、このような抗体としては、キメラ抗体、非ヒト抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびドメイン抗体(dAbs)を含むが、これらに限定されない。また、抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。具体的な抗体の例としては、その抗原結合断片の別の例は、キャンパス(アレムツズマブ);CEA−Scanアルシツモマブ(fab断片);アービタックス(セツキシマブ);ハーセプチン(トラスツズマブ);マイオシント(イムシロマブペンテテート);プロスタシント(カプロマブペンデチド);レミケード(インフリキシマブ);レオプロ(アブシキシマブ);リツキサン(リツキシマブ);シムレクト(バシリキシマブ);シナジス(パルビズマブ);ベルルマ(Verluma)(ノフェツモマブ);ゾレア(オマリズマブ);ゼナパックス(ダクリズマブ);ゼヴァリン(イブリツモマブ・チウキセタン);オルソクローンOKT3(ムロモナブCD3);パノレックス(エドレコロマブ);マイロターグ(ゲムツズマブ・オゾガマイシン);ゴリムマブ(セントコア);シムジア(セルトリズマブペゴール);ソリリス(エクリズマブ);CNTO 1275(ウステキヌマブ);ベクチビックス(パニツムマブ);ベキサール(トシツモマブおよびヨウ素131トシツモマブ);およびアバスチン(ベバシズマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。 H2O2反応性蛍光色素は、1つの抗体に対し1個以上結合していればよく、好ましくは1〜20個、1〜10個、1〜5個、或いは、1〜3個程度結合していればよい。 H2O2反応性蛍光色素と抗体は、両者を結合させるような2官能性リンカーを用いて結合させてもよく、H2O2反応性蛍光色素に抗体と結合可能な官能基、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、マレイミドなどを導入して抗体と結合させてもよい。 本発明の複合体には、さらに内部標準となる蛍光色素を導入し、内部標準の蛍光色素とH2O2と反応する前後のH2O2反応性蛍光色素との蛍光強度の比を取ることで、癌などの細胞または組織におけるH2O2反応の量を評価するのが望ましい。このような蛍光色素としては、cy5、cy7、cy3B、cy3.5、Alexa Fluor350、Alexa Fluor488、Alexa Fluor532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor555、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor633、Alexa Fluor647、Alexa Fluor680、Alexa Fluor700、Alexa Fluor750およびフルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。 本発明の複合体は、過酸化水素と反応することで、H2O2反応性蛍光色素の蛍光波長及び蛍光強度が変化し、内部標準となる蛍光色素との比を取ることで、標的細胞、組織の周辺での過酸化水素の存在量を評価することができる。したがって、本発明の複合体は、過酸化水素プローブとして有用である。過酸化水素は炎症部位で発生、供給されるので、過酸化水素の量を評価することで、炎症の程度を評価することができる。炎症は腫瘍部位における悪性度と関わっていると考えられるので、腫瘍部位における過酸化水素量を評価することで、癌の悪性度を評価することができる。また、実施例で示されるように、本発明の複合体を用いて癌組織の中で過酸化水素の濃度が高い部位(炎症部位、或いは悪性度が高い部位)と過酸化水素濃度が低い部位における遺伝子発現を評価することで、癌の悪性度に関与する遺伝子(癌の悪性度のマーカー遺伝子)を見出すことができる。このような癌の悪性度のマーカー遺伝子としては、spermine oxidase(SMOX), Obg-like ATPase 1(OLA1), histone deacetylase 3(HDAC3), glutaredoxin (thioltransferase)(GLRX), kelch-like ECH-associated protein 1 (KEAP1), glutathione peroxidase 2 (gastrointestinal)(GPX2), Thioredoxin-related transmembrane protein 2 (TMX2), superoxide dismutase 3, extracellular (SOD3), Thioredoxin-related transmembrane protein 1 (TMX1), oxidation resistance 1 (OXR1), EIF4EBP2, breast cartinoma amplified sequence 1 (BCAS1), platelet-derived growth factor alpha polypeptide (PDGFA), hypoxia inducible factor 1 (HIF-1), matrix metallopeptidase 10 (MMP10), matrix metallopeptidase 9 (MMP9), FIHなどが挙げられる。 本発明の複合体は、必要に応じて緩衝液、容器などと組み合わせて、H2O2産生部位を検出するためのキットとして使用することができる。 以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。実施例1Materials and Methods細胞培養N87 細胞の培養には10 % のウシ胎児血清 fetal bovine serum (FBS)、30 U/ml penicillin と30 μg/ml streptomycin が含まれたRoswell Park Memorial Institute medium (RPMI)(以下RPMI(+))を用い、37℃、5 % CO2にセットされたインキュベーターにおいて培養した。・Peroxy Green-NHS エステルの合成3,6-dihydroxyxanthone (1)の合成 大気雰囲気下、2,2’,4,4’-Tetrahydroxybenzophenone 15.2 g (62 mmol)と酢酸ナトリウム50 g(610 mmol)を蒸留水350 ml に溶解し、115℃で、20 時間攪拌した(還流)。0℃まで冷却した後、1規定の塩酸を加えてpH を4〜5 にした。反応液を沈殿物ごと吸引ろ過し、水道水で洗浄した後、40℃で減圧乾燥し、薄黄色固体13.5 g (59 mmol, 96%)を得た。同定は1H-NMR により行った。1H-NMR(DMSO-d6, TMS, 400 MHz) δ/ppm ; 10.81 (s, 2H), 7.96 (d, J=8.8 Hz, 2H), 6.83(dd, J=8.8 Hz, 2.0 Hz, 2H), 6.80 (d, J=2.0 Hz, 2H).3,6-Bis-(tert-butyldimethylsilanyloxy)xanthen-9-one (2)の合成 窒素雰囲気下、化合物1 (5.0 g、22 mmol)とイミダゾール6.2 g (89 mmol)をdry DMF 30 ml に溶解し、室温で攪拌しながらTBDMS-Cl 9.9 g (66 mmol)をdry DMF 20 mL に溶かした溶液を滴下した。2 時間撹拌した後、AcOEt/hexane=1/1 を加え、蒸留水、0.1% NaOH 水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧除去し、析出してきた白色固体7.6 g (17 mmol, 76%)を得た。同定は1H-NMR により行なった。1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz) δ/ppm ; 8.19 (dd, J=8.0 Hz, 1.2 Hz, 2H), 6.85 (d, J=8.0Hz, 2H), 6.83 (d, J=1.2 Hz, 2H), 1.00 (s, 18H), 0.28 (s, 12H).(4-bromo-3-methylphenoxy)-tert-butyldimethylsilane (3)の合成 窒素雰囲気下、4-Bromo-3-methylphenol 3.0 g (16 mmol)とイミダゾール5.8 g (82 mmol)をdry DMF 10 ml に溶解し、室温で攪拌しながらTBDMS-Cl 3.9 g (25 mmol)をdry DMF 15 mLに溶かした溶液を滴下した。1.5 時間撹拌した後、AcOEt/hexane=1/1 を加え、蒸留水、0.1%NaOH 水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製し、無色油状残渣4.7 g(15.6 mmol, 94%)を得た。同定は1H-NMR により行なった。1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz) δ/ppm ; 7.33 (d, J=8.4 Hz, 1H), 6.72 (d, J=2.8 Hz, 2H),6.54 (dd, J=8.4 Hz, J=2.8 Hz, 1H), 2.32 (s, 3H), 0.97 (s, 9H) 0.18 (s, 6H).6-hydroxy-9-(4-hydroxy-2-methylphenyl)xanthen-3-one (5)の合成 窒素雰囲気下、Mg(turnings) 0.32 g (12.1 mmol)にdry THF 15 mL、触媒量のI2(1 粒)を加え、化合物3 3.3 g (10.8 mmol)をdry THF 15 mL に溶かした溶液を滴下した。1 時間60℃で還流したのち、室温まで空冷した。得られた黒紫色の溶液を、化合物2 3.3 g(7.1 mmol)をdry THF 45mL に溶かし、-78℃まで冷却した溶液へ滴下した後、-0℃まで昇温し10 分撹拌し、さらに室温まで昇温して3 時間撹拌した(化合物4)。4N HCl 10 mL を加え、60 で1 時間還流し、室温まで空冷した後、4N NaOH 水溶液 19 mL、飽和NaH2PO4 水溶液10 mL を加えpH が4 付近となっていることを確認した。THF を減圧除去した後、析出してきた結晶を吸引ろ過により回収した。この結晶をMeOHに加え90℃で還流し溶解させた後、室温にまで空冷し-30℃で一晩おいた。吸引ろ過により析出してきた結晶を回収し、赤色固体2.1 g (7.5 mmol 93%)を得た。同定は1H-NMR により行った。1H-NMR(CD3OD, 400 MHz) δ/ppm ; 7.16 (d, J=9.6 Hz, 2H), 7.04 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.89 (d,J=2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=8.0 Hz, J=2.4 Hz, 1H), 6.74-6.72 (m, 4H), 1.98 (s, 3H).[4-(6-hydroxy-3-oxo-3H-xanthen-9-yl)-3-methylphenoxy]acetic acid benzyl ester (6)の合成 窒素雰囲気下、化合物5 (2.4 g, 7.6 mmol)、炭酸セシウム 11.3 mg (34.8 mmol)をdry DMF 74 mLに溶かし、攪拌しながらブロモ酢酸ベンジル 1.2 mL (7.6 mmol)をdry DMF7.5 mL に溶かした溶液を滴下した。室温で12 時間撹拌した後、DMF を減圧除去し、AcOEtを加え、飽和NaHCO3水溶液で2回、5%クエン酸水溶液で3 回、飽和食塩水で1 回、順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH3Cl/MeOH=10/1)で精製し、黄褐色固体2.1 g(4.6 mmol, 60%)を得た。同定は1H-NMR およびMALDI-TOF-MS により行った。1H-NMR(CD3OD, 400 MHz) δ/ppm ; 7.16 (d, J=9.6 Hz, 2H), 7.04 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.89 (d,J=2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=8.0 Hz, J=2.4 Hz, 1H), 6.74-6.72 (m, 4H), 1.98 (s, 3H).[4-(6-trifluoromethanesulfonate-3-oxo-3H-xanthen-9-yl)-3-methylphenoxy]acetic acid benzyl ester (7)の合成 窒素雰囲気下、化合物6 (2.1 g、4.5 mmol)、N-フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)2.4 g (6.8 mmol)をdry DMF 90 mL に溶かし、攪拌しながらジイソプロピルエチルアミン 2.4 mL(13.8 mmol)を滴下した。室温で4 時間撹拌した後、DMF を減圧除去し、AcOEt 150 mL, ヘキサン75 mLを加え、5%クエン酸水溶液で3 回、蒸留水で2 回、飽和食塩水で1 回、順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/AcOEt=5/4)で精製し、黄褐色固体1.9 g (3.2 mmol, 70%)を得た。同定は1H-NMR およびMALDI-TOF-MS により行った。1H-NMR(CD3OD, 400 MHz) δ/ppm ; 7.16 (d, J=9.6 Hz, 2H), 7.04 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.89(d, J=2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=8.0 Hz, J=2.4 Hz, 1H), 6.74-6.72 (m, 4H), 1.98 (s, 3H).[4-(6-pinacolatoboron-3-oxo-3H-xanthen-9-yl)-3-methylphenoxy]acetic acid benzylester (8)の合成 アルゴン雰囲気下、化合物7(500 mg、0.85 mmol)、[1,1’‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(1:1) 205 mg (0.25 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン225 mg (0.9 mmol)、酢酸カリウム 245 mg (2.5 mmol)をdry toluene 150 mL に溶かし、110℃で2時間攪拌した。toluene を減圧除去し、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/AcOEt=1/3)で精製し、黄褐色固体240 mg (0.43 mmol, 50%)を得た。同定は1H-NMR およびMALDI-TOF-MS により行なった。1H-NMR(CD3OD, 400 MHz) δ/ppm ; 7.16 (d, J=9.6 Hz, 2H), 7.04 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.89 (d,J=2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=8.0 Hz, J=2.4 Hz, 1H), 6.74-6.72 (m, 4H), 1.98 (s, 3H).[4-(6-pinacolatoboron-3-oxo-3H-xanthen-9-yl)-3-methylphenoxy]acetic acid (9)の合成 窒素雰囲気下、化合物8 (270 mg、0.47 mmol)をAcOEt 20 mL に溶かし、パラジウム炭素を加えた後、水素雰囲気下にして、3 時間激しく撹拌した。吸引ろ過によりパラジウム炭素を除いた後、溶媒を減圧除去し、黄色固体210 mg (0.44 mmol, 93%)を得た。同定は1H-NMR およびMALDI-TOF-MS により行った。1H-NMR(CD3OD, 400 MHz) δ/ppm ; 7.16 (d, J=9.6 Hz, 2H), 7.04 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J=2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=8.0 Hz, J=2.4 Hz, 1H), 6.74-6.72 (m, 4H), 1.98 (s, 3H).[4-(6-pinacolatoboron-3-oxo-3H-xanthen-9-yl)-3-methylphenoxy]acetic acid N-Hydroxy succinimide ester (Peroxy Green-NHS ester) (10)の合成 窒素雰囲気下、化合物9 (56 mg, 88 μmol)、N-Hydroxy succinimide 30 mg (265 μmol)、Water Soluble Carbodiimide 51 mg (265 μmol)をdry DMF 10 mL に溶かし、室温で2.5 時間撹拌した。DMF を減圧除去し、AcOEt を加え、飽和NaHCO3 水溶液で2回、5%クエン酸水溶液で3 回、飽和食塩水で1 回、順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧除去し黄色固体38 mg (65 μmol 74%)を得た。同定は1H-NMR およびMALDI-TOF-MS により行った。1H-NMR(CD3OD, 400 MHz) δ/ppm ; 7.16 (d, J=9.6 Hz, 2H), 7.04 (d, J=8.0 Hz, 1H), 6.89 (d,J=2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J=8.0 Hz, J=2.4 Hz, 1H), 6.74-6.72 (m, 4H), 1.98 (s, 3H).Peroxy Green-AF647-Herceptin の作製 100 mM 炭酸-重炭酸緩衝液 1 mL にHerceptin 2 mg を溶かしてPeroxy Green-NHS エステル DMSO 溶液(17 mg/mL) 40 μL を加え、遮光して2 時間ローテーターで撹拌した。その後、8.4 mM Alexa Fluor 647-NHS ester DMSO 溶液を5 μL 加え、遮光して1 時間ローテーターで撹拌した。反応液をPD-10 column に通し、Peroxy Green-AF647-Herceptin が含まれる分画を回収した。(1 mL ずつ1.5 mL 遠心チューブに分取していき、2〜5 本目までを回収するのが目安)回収した溶液を限外濾過により濃縮し、濾液の色が薄くなるまでPBS を加えて濾過することを繰り返した。最後に、BCA 法により濃度を算出した。Peroxy Green-AF647-Herceptin の反応性の確認(SDS-PAGE) H2O2を加えて3 時間反応させたPeroxy Green-AF647-Herceptin と反応させていないPeroxy Green-AF647-Herceptin の蛍光強度をSDS-PAGE と蛍光イメージングにより、比較した。Peroxy Greenはゲルに含まれるAPSと反応してしまうので、APSの含有量をできるだけ減らした以下の組成によりゲルを作製した。Peroxy Green-AF647-Herceptin の反応性の確認(N87 細胞上) ガラスボトムディッシュにN87 細胞を張り付かせ、PBS 中においてPeroxy Green-AF647-Herceptin 30 μg を処置して1 時間、37℃でインキュベートした。そこにH2O2を加えて(終濃度1 mM)、蛍光強度の変化を共焦点レーザー顕微鏡により観察した。マイクロアレイ法を用いたmRNA 発現量変化の網羅的解析 ヒト胃癌細胞であるN87 をヌードマウスに皮下投与し、担癌マウスを作成した。腫瘍が形成された後、Peroxy Green-AF647-Herceptin を尾静脈投与し12-17 時間後に腫瘍を摘出した。1 mg/ml Trypsin, 2 mg/ml collagenase IV を加えて37℃、5% CO2 条件下で1 時間インキュベーションした後、100 μm セルストレーナーを通すことにより腫瘍細胞混濁液を得た。得られた細胞混濁液をセルソーター(an EPICS Altra flow cytometer (Beckman Coulter))にかけることにより、AF647 シグナルがポジティブな細胞集団において、Peroxy Green シグナルがポジティブな細胞集団およびネガティブな細胞集団に分けた。その後、それぞれの細胞集団から全RNA を抽出し、Agilent Array 発現解析(タカラバイオ株式会社 遺伝子工学研究)に依頼することでマイクロアレイ解析を行った。結果と考察Peroxy Green-NHS エステルの合成 Peroxy Green タンパク質修飾に用いられるNHS エステルを導入したPeroxy Green-NHS エステルを設計し、以下の合成スキーム(図1)に従い合成した。 化合物1 は 2,2’,4,4’-tetrahydroxybenzophenone の脱水縮合により得た。化合物2 は化合物1にtert-butyldimethylsilylchloride を反応させることで得た。化合物3 は4-bromo-3-methylphenolにtert-butyldimethylsilylchloride を反応させることで得た。化合物3 に金属マグネシウムを作用させグリニャール試薬としたものを化合物2 と反応させ化合物4 を得た後、HCl を処置して脱保護し、化合物5 を得た。化合物5 にbenzyl bromoacetate を反応させ、化合物6 を得た。化合物6 にPhN(Tf)2 を反応させ、化合物7 を得た。化合物7 とpinacolatediboron の鈴木カップリングを経て化合物8 を合成した。化合物8 に水素添加して得た化合物9 をN-hydroxysuccinimide と縮合して化合物10 を得た。Peroxy Green-Herceptin のH2O2に対する反応性 Peroxy Green をHerceptin に修飾したPeroxy Green-Herceptin を作製した。作製したPeroxy Green-Herceptin にH2O2を加えて反応させた後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った(図2)。クマシー染色により、タンパク質を検出するとタンパク質はそろっているが、蛍光強度はH2O2と反応した時間依存的に増大した。また、ゲルを1 mM のH2O2に浸して一晩おくと、蛍光強度がそろった。これよりHerceptin に修飾した後もPeroxy Green のH2O2反応性は失われていないことが分かった。Peroxy Green-AF647-HerceptinによるH2O2レシオイメージング in vivo でのレシオイメージングを目指して、内部標準として蛍光色素であるAlexa Fluor647(以下AF647)をPeroxy Green-Herceptin に修飾しPeroxy Green-AF647-Herceptin を作製した(図3)。AF647の蛍光強度はH2O2によって変化しないため、AF647を基準としたPeroxy Greenの蛍光強度変化からH2O2のレシオイメージングが可能となる。AF647 を内部標準として採用したのはPeroxy Green とFRET を起こさない励起波長を選択したためである。 作製したPeroxy Green-AF647-Herceptin にH2O2を加えて反応させた後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。クマシー染色により、タンパク質を検出するとタンパク質はそろっているが、蛍光強度は反応させたH2O2の濃度依存的に増大した。また、ゲルを1 mM のH2O2に浸して一晩おくと、蛍光強度がそろった。AF647 の蛍光強度については反応させたH2O2の濃度に関係なく変化しなかった(図4)。Peroxy Green-AF647-Herceptin によるN87細胞上でのH2O2レシオイメージング 作製したPeroxy Green-AF647-HerceptinをHER2を高発現しているヒト胃癌細胞であるN87細胞に処置した後、1mMのH2O2を加え、Peroxy Green-AF647-Herceptin の蛍光強度の変化を共焦点レーザー顕微鏡により観察した (図5)。その結果、顕著なPeroxy Green シグナルの増大およびratio 変化が観察された。Peroxy Green-Herceptin による腫瘍周辺のin vivo H2O2イメージング Peroxy Green-AF647-Herceptin がin vivo でH2O2を検出できるかどうかを検証した。まずヌードマウスにHER2を高発現しているN87細胞を皮下投与し、担癌マウスを作製した。腫瘍が形成されたのち、Peroxy Green-AF647-Herceptin を尾静脈投与し、12〜17 時間後に腫瘍を摘出し、凍結切片を作製した後、速やかに腫瘍組織を共焦点レーザー顕微鏡で観察した (図6)。 また、Peroxy Green-AF647-Herceptin を尾静脈投与してから腫瘍を摘出するまでの時間については1 時間、3 時間、6 時間と条件を変えて検討した。その結果、1 時間、3 時間ではPeroxy Green-AF647-Herceptin の集積が不十分であり、6 時間後にはPeroxy Green-AF647-Herceptin が十分集積していることが分かった (図7)。これにより、Peroxy Green-AF647-Herceptin を尾静脈投与してから腫瘍を摘出するまでの時間はH2O2との反応時間も考慮して12〜17 時間とした。 Peroxy Green-AF647-Herceptin を尾静脈投与した担癌マウスからN87 細胞由来の腫瘍組織を摘出し、凍結切片を作成した後コンフォーカル顕微鏡にて観察した (図8)。赤で示すAF647の蛍光はPeroxy Green-AF647-Herceptin の分布を示しており、腫瘍の広範でシグナルが観察された。一方、緑で示すPeroxy Green のシグナルは腫瘍の局所領域でのみ観察されたことから、腫瘍組織内にH2O2の濃度分布が存在することが明らかとなった。このことは、ratio の画像において、H2O2の高い産生量を示す黄色〜赤色の擬似カラーでも同様に見てとれた。以上により、腫瘍周辺におけるH2O2産生は、腫瘍組織中の極めて局所で起きていることが示された。これは本イメージング技術により得られた新知見であり、腫瘍周辺の炎症性微小環境を研究する上で重要な指標となる。このような局所的なH2O2産生は、癌細胞が正常組織への浸潤能、転移能、血管新生といった悪性度に関わる特性を獲得する過程と深く関わっている可能性が挙げられる。H2O2に曝されている腫瘍細胞集団の遺伝子発現変動解析 Peroxy Green-AF647-Herceptin を尾静脈投与した担癌マウスからN87 細胞由来の腫瘍組織を摘出し、Trypsin およびcollagenase IV 処置することにより、腫瘍細胞混濁液を得た。得られた細胞混濁液をセルソーター(an EPICS Altra flow cytometer (Beckman Coulter))にかけることにより、AF647 シグナルがポジティブな腫瘍細胞集団において、Peroxy Green シグナルがポジティブな細胞集団およびネガティブな細胞集団に分けた。その後、それぞれの細胞集団から全RNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、Peroxy Green のシグナルが高い細胞集団ではROS 産生に関わる遺伝子群、抗酸化関連遺伝子群、腫瘍組織の成熟に関わる遺伝子群の発現が増大していることを見出した (図9)。即ち、ROS は腫瘍の成熟に関連することが示唆された。 本イメージング技術はHER2 を高発現した癌細胞の中でも特に癌の成長と深く関わっている(H2O2に曝されている)癌細胞を可視化することができるため、新たな癌の診断・治療法に応用できることが期待される。また、今回は腫瘍に集積させるためにHER2 を用いたが、他の抗体を用いることにより様々な組織・病態部位への集積させることも可能である。このように、本技術は適応拡大にも富んだものであると言える。H2O2反応性蛍光色素と細胞特異的抗体を結合してなる、複合体。さらに内部標準となる蛍光色素を結合してなる、請求項1に記載の複合体。抗体がハーセプチンである、請求項1又は2に記載の複合体。請求項1〜3のいずれかに記載の複合体のH2O2産生部位を検出するための使用。H2O2産生部位が炎症部位である。請求項4に記載の使用。請求項1〜3のいずれかに記載の複合体からなる過酸化水素プローブ。請求項1〜3のいずれかに記載の複合体を含む、H2O2産生部位を検出するためのキット。 【課題】炎症部位を可視化する技術を提供する。【解決手段】H2O2反応性蛍光色素と細胞特異的抗体を結合してなる、複合体。【選択図】なし


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