タイトル: | 公開特許公報(A)_ポルフィリンペプトイド複合体 |
出願番号: | 2013184961 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07K 7/08,C07K 7/06 |
ソ ジウォン カン ボヨン JP 2015051940 公開特許公報(A) 20150319 2013184961 20130906 ポルフィリンペプトイド複合体 クヮンジュ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー 507373508 須藤 浩 100114720 海田 浩明 100128749 ソ ジウォン カン ボヨン C07K 7/08 20060101AFI20150220BHJP C07K 7/06 20060101ALI20150220BHJP JPC07K7/08C07K7/06 1 OL 15 特許法第30条第2項適用申請有り 平成25年3月8日発行、オーガニック レターズ、第15巻、第7号、第1670〜1673頁 4H045 4H045AA10 4H045BA10 4H045BA15 4H045BA16 4H045FA33 4H045HA03 本発明は、ポルフィリンの、正確に定義された対面型(cofacial)、スリップ対面型(slipped-cofacial)及び非組織化(unstructured)配列を構成するためのスキャフォールディング材を含むポルフィリンペプトイド複合体(Porphyrin Peptoid Conjugates)を提供しようとする。 自然的に発生する色素類であるポルフィリンは、これらの興味深い光物理的及び化学的特性から活発に調査されてきた。ポルフィリンの適切な配列は、センサーから新しい光電子物質までの範囲に応用するための多数の興味深い分子となるので、定義されたオリゴマーポルフィリン配列を構成するための、特に天然光合成アンテナシステムを模倣するための多くの努力がなされた。自然は集光複合体(LHCs、light-harvesting complexes)から最適に組織化された色素を利用するので、ポルフィリン染料の配列に対する高いレベルの制御が、人工LHCsから所望の光電子特性を提供するために要求される。いくつかの人工LHCsは、配列でポルフィリンモノマー間の励起子相互作用の程度を反映する明確な視覚的な特性を示す。 今まで、ポルフィリン間の相互作用に対する殆どの研究は、直交方式で配列された2つのπ平面に集中した(すなわち、ポルフィリンは同一平面上にある)。対照的に、おそらく効果的なスキャフォールディング材(scaffolding material)及び合成可能性の不足により、ポルフィリンの対面配列はあまり調査されていなかった。ペプチド、核酸、ウイルス、オルガノゲル、合成ポリマー及びデンドリマーは、ポルフィリン染料を表出するためのスキャフォールドとして用いられたが、ポルフィリンの位置及び相対配向を正確に制御でき、ポルフィリンの対面配列を提供できるスキャフォールディング材を用いる研究は、まだなされていない。 本発明は、ポルフィリンの、正確に定義された対面型(cofacial)、スリップ対面型(slipped-cofacial)及び非組織化配列を構成するためのスキャフォールディング材を含むポルフィリンペプトイド複合体を提供しようとする。 距離、配向及び数が制御されたポルフィリンペプトイド複合体(PPCs)を効果的に合成した。ポルフィリンの対面型(1、2及び4)、スリップ対面型(3)及び非組織化(5)配列は、UV-vis及び円偏光二色性分光法によって特徴化された明確な視覚的及び電子的特性を提供する。また、ECCDスペクトラムによりペプトイドの螺旋方向を確認した。 本願発明者らは、ポルフィリンの、正確に定義された対面型、スリップ対面型及び非組織化配列を構成するためのスキャフォールディング材として、ペプトイド螺旋を使用した。J-凝集、色変化及びポルフィリン間の励起子結合の程度は、距離、配向及び数が制御されたポルフィリンペプトイド複合体によって調節することができる。また、分光及びメカニズム研究は現在の進行中であり、結局、本願発明者らは、本研究が人工光合成複合体の設計に新しい洞察力を提供できると予想する。距離、配向及び数が制御されたポルフィリンペプトイド複合体(PPCs)を示す図である。ポルフィリンペプトイド複合体の化学構造を示す図である。ポルフィリンペプトイド複合体(PPCs)の合成を示す図である。220nmにおいてUV検出による1〜5のHPLCクロマトグラムである。220nmにおいてUV検出による6〜9のHPLCクロマトグラムである。1〜5のUV-vis吸収スペクトラムである。ここで、TPP-ME(5-(4-メトキシカルボニルフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリンまたはテトラフェニルポルフィリンメチルエステル)は、ポルフィリンモノマー対照群として用いられる。アセトニトリル中の1〜5の濃度依存的に標準化されたUV-Vis吸収スペクトラムであり、ラインの色は実際の溶液色と一致させており、高濃度においてはソーレーバンド(Soret band)が計測器の最大吸収に到達した。固定された濃度(0.2mM)でのTPP-ME及び1〜5のUV-Vis吸収スペクトラムとして、PPC3ではソーレーバンドが計測器の最大吸収に到達した。(a)190〜260nm及び(b)350〜500nmにおいて残基当りのモル楕円率(deg cm2/dmol)としてあらわすアセトニトリル(50μM)中の1〜9の円偏光二色性(CD)スペクトラムであり、結果は常温で取得したものである。 ペプトイドは、オリゴ-N-置換グリシンバックボーンを基にするペプチド模倣ポリマー類である。ペプトイドの化学構造は、側鎖がR炭素の代わりにバックボーンアミド窒素に付着する点でペプチドの化学構造と異なる。バイオインスバイアード材料として、ペプトイドは単分散及びシーケンスが特異的であるから、鎖長、側鎖機能性及びモノマーシーケンスの正確な制御が可能である。一方、非自然発生的第3アミド結合は、これらの自然発生的対応物と比較して、これらを蛋白質分解に対抗して高い安定性を有するようにする。ペプトイドオリゴマーは、従来の固相ペプチド合成技術を利用して〜50モノマーまで容易に合成される。このようなペプトイドオリゴマーは、Rキラルの側鎖が含まれる場合、局所立体及び電子相互作用によって誘導される、正確に定義された螺旋形構造を形成することができる。このようなペプトイド螺旋形の立体配列は、およそ6.0Åのピッチの長さで1回転当り3つの残基(すなわち、螺旋回転は3つの残基ごとに繰り返される)の周期性を示す安定したポリプロリンタイプ-I-類似構造が特徴である。ペプトイドのこのような独特の構造的特性は、カチオン充電、金属バインダー、触媒的活性部位及びステロイドホルモンのような官能基の位置-特異的表出を可能にすることで、新しい機能的分子の生成に役立つことが立証された。 バイオミメティック分子設計接近法(biomimetic molecular design approach)を適用することで、本願発明者らの目的は、光増感剤の多様な配列に応じてエネルギー伝達現象を研究し、ペプトイド螺旋(peptoid helice)上に表出された光増感剤の配列を構成することにある。いずれは、本願発明者らはペプトイド螺旋上のポルフィリン対面配列に対する効果的な合成法を本願に提示する。 他の自然または合成ポリマーと異なって、ペプトイド螺旋は溶媒及び温度のような多様な条件において独特の安定性及び正確に定義された構造的特徴を示し、優れたスキャフォールディング材を提供する。図1に示されたように、本願発明者らは、ポルフィリン(1〜4)の正確に定義された距離、配向及び数を有する4つのポルフィリンペプトイド複合体(PPCs)を設計した。 距離依存性は、離れている2つのポルフィリン間の位置の1ピッチ(1)及び2ピッチ(2)を有するPPCsを比較してテストすることができる。さらに、変形された配向で2つのポルフィリン(3)、1つの面上に3つのポルフィリン(4)及び1つの非組織化類似体(5)を用意した。予備分光器を利用した研究、例えばUV-vis及び円偏光二色性(CD)分光器によって、PPCsの興味深い特性を明らかにした。構造的に正確に定義されたPPCsは、ポルフィリンの光電子的特性を理解し、かつ人工LHCを開発するための有用なプラットホームを提供するだろう。 CD分光研究用の5つのPPC(1〜5)及び対応する対照ペプトイド(6〜9)のシーケンス及び構造を図2及び表1に示した。 表1は、ポルフィリンペプトイド複合体(1〜5)及びこれらの対照ペプトイド(6〜9)のシーケンス及び構造を示す。 ペプトイドノナマー(nonamer)及びドデカマ(dodecamer)は、サブモノマープロトコルによるマイクロ波を用いた固相合成法で合成した。複合体1〜4において、α-キラル側鎖Nspe(または(S)-(-)-1-フェニルエチルアミン)は螺旋フォールド(helical fold)を誘導するために使用し、Nlys(または、1,4-ジアミノブタン)はポルフィリン複合位置に含まれた。5を得るために、Npm(または、ベンジルアミン)をNspeの代わりに使用した。所望のシーケンスに到達すると、N-末端アミンをアセチル化した後、メトキシトリチル(Mmt)基をジクロロメタン中の0.75%TFAの反復処理によって脱保護した(図3)。 テトラフェニルポルフィリン(TPP)カルボン酸(または、5-(4-カルボキシフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリン)は、Lindseyのプロトコル(Lindsey’ protocol)によって製造した。まず、TPPカルボン酸を樹脂結合された第一級アミンに結合させることを、HATU/DIEAシステムによって試みたが、収率が低く観察された。なお、本願発明者らがN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステル/DIEA結合法を利用したところ、成功的にポルフィリン複合体を得ることができた。TPP-NHS(または、5-(4-カルボキシフェニルスクシンイミジルエステル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリン)の構造を図3に示す。すべての未精製ペプトイドは予備逆相HPLCによって>97%の純度に精製し、モル質量はESI-MSによって確認した(表2)。 表2は、1〜9のESI-MSの結果を示す。 観察された質量は、断片ではなく二重電荷(2H+)または三重電荷(3H+)ピークであった。以下、詳しく説明する。 <方法> シリカゲル60(230〜400メッシュ、Merck,Darmstadt,Germany)にてフラッシュカラムクロマトグラフィーを行った。予めアルミニウムが背面にプレコートされたTLCシート(precoated aluminum-backed TLC sheets、シリカゲル60F254、EMD Millipore,Billerica,MA,USA)上で薄膜クロマトグラフィーを行った。化合物をUV/VISランプまたはニンヒドリンスプレー試薬(エタノール中のニンヒドリン2%(w/v))によって可視化した。すべての試薬及び溶媒は、Sigma-Aldrich、Novabiochem及びAcros Organicsで購入した。なお、特に限定がない限り、これらは追加精製なしに用いられた。ペプチド合成等級DMF及び無水DCM(>99.8%)を、それぞれペプトイド合成及び複合反応に使用した。N,N'-ジイソプロピルカルボジイミドは、Advanced ChemTech(KY,USA)で購入した。減圧下で標準回転式エバポレーターで溶媒を蒸発させ、ペプトイドの最終生成物は、2回の減圧下で凍結乾燥により残留TFAを除去した。 円偏光二色性スペクトラムは、25℃でJasco model-810分光偏光計(Jasco,Inc.,Easton,MD,USA)にて記録した。測定の前、試料を50μM濃度のCH3CN中に溶解させた。CDスペクトラムは、経路の長さが1mmの石英キュベット中で得られ、2秒の反応時間及び20nm/分の走査速度で1nmずつ増加させながら、ペプトイド(6〜9)用としては190〜260nmにより、またはポルフィリンペプトイド複合体(1〜5)用としては190〜500nmにより記録された。各試料に対し、3回の走査実施してその平均を出した。データは、ペプトイド中の1つの主鎖アミド当りで計算された残基当りのモル楕円率(deg cm2/dmol)で表示した。 UV/VisスペクトラムをUltrospec2100 pro UV/Vis 分光光度計(GE healthcare,Buckinghamshire,UK)にて観察した。経路の長さが1mmの石英キュベットを使用した。試料をCH3CN中に溶解し、CH3CNの吸光度をブランク(blank)として使用した。多様な濃度の試料を1.0mM保存溶液の連続希釈により用意した。より低い濃度の保存溶液(0.4mM)を4及び5用に使用した。吸光度の測定範囲は300〜700nmであった。 <ポルフィリンペプトイド複合体の合成> 5-(4-カルボキシフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリンN-ヒドロキシコハク酸イミドエステル(またはTPP-NHSエステル)の合成 まず、5-(4-カルボキシフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリンの合成をAdlerのプロトコル(Adler's protocol)により試みた。しかし、Fungoなどが注目したように、反応試案は収率を低下させる不溶性タールを発生させると共に、プロピオン酸を除去し難いことから取り扱いが厄介である。従って、本願発明者らは、より効果的であると確認されたLindsey法(Lindsey's method)を利用した。乾燥した丸底フラスコに、4-ホルミル安息香酸(1g、6.66mmol)、ベンズアルデヒド(2.03ml、19.98mmol)及びピロール(1.85ml、26.64mmol)を充填した後、CHCl3(0.75%エタノール280ml 、Sigma Aldrich製)を添加した。前記混合物に、BF3O(Et)2(0.818ml、6.66mmol)滴下しながら添加した。フラスコをゴム隔膜で密封し、混合物をN2雰囲気下、常温で1時間攪拌した。1時間後、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ、4.54g、19.98mmol)を添加し、酸化反応を1時間維持した。反応は、トリエチルアミン(1.39ml、9.99mmol)を徐々に添加して終わらせ、反応混合物をさらに30分間攪拌した。混合物を減圧下で濃縮し、得られたブドウ色の残留物を短いシリカゲルプラグによって精製して5-(4-カルボキシフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリン(DCM:MeOH=20:1、Rf=0.3)とした。テトラフェニルポルフィリンのモノカルボキシレートの形態は、単一シリカゲルクロマトグラフィーによっては完璧に純粋な形態で得られなかった。反復精製の代わりに、本願発明者らは次の工程によりシリカゲルクロマトグラフィーで容易に精製できるエステルを提供した。 乾燥した丸底フラスコに、N-ヒドロキシコハク酸イミド(56.7mg、0.493mmol)、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(101.7mg、0.493mmol)及び精製された5-(4-カルボキシフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリン(およそ130mg)を添加し、それからジクロロメタン(6mL)を添加した。その後、ピリジン(0.040ml、0.493mmol)及び数個の4-ジメチルアミノピリジンをフラスコに添加した。混合物を常温で一夜攪拌した。その後、混合物を回転式エバポレーターにより蒸発させ、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM100%、Rf=0.35)にて精製した。TPP-NHSエステルを2ステップにかけておよそ15%収率の紫色フィルムとして得られた。スペクトラムの結果は上記記録されたものと一致した。 <ペプトイドの合成手順> 手動合成(manual synthesis)及びマイクロ波加熱により、ペプトイドモノマー及びドデカマを樹脂ビーズ上で固相サブモノマー法により合成した。光ファイバー温度計及び電磁撹拌機が装着されたCEM MARSマルチモードマイクロ波反応器を利用した(CEM Corp.,Matthews,NC,USA)。光ファイバー温度計を反応混合物に配置し、溶液を攪拌しながら、以下のような異なる反応条件で調査した。すべてのマイクロ波反応は大気圧で行った。Fmoc-RinkアミドMBHA樹脂(0.59mmol/g、Novabiochem、San Diego、CA、USA)を用いてC末端アミドペプトイドを生成した。Fmoc脱保護の後、モノマーはそれぞれ、一連のブロモアセチル化及び第一級アミンによる臭化物の置換よって添加した。所望のペプトイドシーケンスが得られるまで、適切な第一級アミンを用いてこのような2ステップを繰り返した。ペプトイドオリゴマーのN-末端のアセチル化は、DMF中の超過量無水酢酸(50当量)及びピリジン(55当量)を添加して行った。通常的に0.25mmol反応規模を用いた(樹脂0.42g)。Fmoc脱保護において、Fmoc-Rinkアミド樹脂は常温で60秒の間、及び80℃(マイルロ波、600W max power、ランプ2分)で2分間、DMF(各5mL)中の20%(v/v)のピペリジンで2回処理した。ブロモアセチル化において、ブロモ酢酸(4.18mL、DMF中の1.2M、5mmol)及びN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(0.78mL、5mmol)を添加し、反応混合物を攪拌して、35℃(マイクロ波、400W15%のパワー、ランプ0.5分)で2分間調査した。置換ステップにおいて、(S)-N-(1-フェニルエチル)グリシン(Nspe、5mL、NMP中の2.0M、10mmol)、ベンジルアミン(Npm、5mL、NMP中の2.0M、10mmol)あるいはモノ-Mmt保護1,4-ジアミノブタン(NLys(Mmt)、5mL、NMP中の1.0M、5mmol)を所望のペプトイドシーケンスによる第一級アミンとして使用した。混合物を攪拌し、95℃(マイクロ波、400W75%のパワー、ランプ2分)で1.5分間調査した。各ステップの間に、DMF及びDCMより樹脂を完全に洗浄した。N-末端アセチル化は無水酢酸(1.2mL、12.5mmol)及びピリジン(1.1mL、13.7mmol)を、DMF(1.5mL)中の樹脂結合ペプトイドに添加して行った。反応は常温で2時間維持した。 <ポルフィリンペプトイド複合体の合成> ポルフィリン複合反応の前に、Mmt脱保護を0.75%TFA(DCM:TIS:TFA=94.25:5:0.75)で樹脂結合ペプトイドを処理して実施した。樹脂に0.75%のTFA溶液(6ml)を添加し、常温で2分間連続攪拌した。オレンジ色の溶液を排水した後、樹脂をDCMで洗浄した。各ステップを5回繰り返した。その後、脱保護アミンを、上記製造したTPP-NHSエステルを用いてテトラフェニルポルフィリン(TPP)と結合させた。通常的に、1つのアミン当りに1.5当量のTPP-NHSエステルを使用した。樹脂結合及びMmt脱保護ペプトイド(0.0625mmol)を、初めてDCM(4mL)及びDIEA(0.15mL)溶液により1分間洗浄して残留TFAを除去した。樹脂にDCM(7mL)中のTPP-NHSエステル(150mg、0.20mmol)を添加した後、DIEA(0.07mL、0.40mmol)を添加した。カートリッジを密封し、反応はN2雰囲気下で一夜攪拌した。反応混合物を排水し、樹脂をDMF及びDCMで完全に洗浄した。樹脂からの分裂は、分裂液(cleavage solution)(DCM:TFA:triisopropylsilane:H2O=50:45:2.5:2.5)により常温で10分間実施した。分裂反応の後、溶液を20μの疎水性ポリエチレンフリット(Applied separations,Allentown,PA,USA)を備えた固相抽出(SPE)カートリッジでろ過した。ろ過溶液を凍結乾燥し、未精製ペプトイドをCH3CN中に溶解させ、分析用HPLC及びESI-MSにより分析した。 <HPLC条件> 図4は220nmにおいてUV検出による1〜5のHPLCクロマトグラムであり、図5は220nmにおいてUV検出による6〜9のHPLCクロマトグラムである。 分析用HPLCは、C18カラム(SunFire C18、4.6×250mm、5μM)のウォーターズHPLCシステム(Waters 2489 UV/Visble Detector, Waters 1525 Binary HPLC Pump, Waters 2707 Autosampler, and Waters 5CH column oven)上で行った。カラムオーブン温度を40℃に設定した。移動相を以下のように使用した。 (A:水+0.1%TFA;B:CH3CN+0.1%TFA) 5分間B30%使用、20分間100%Bへの線形勾配、及び次は15分にかけて100%B維持した。流速は1mL/分とした。試料純度を220nmでの吸光度でモニタリングした。ペプトイドを、流速14mL/分、C18カラム(SunFire C18、19×150mm、5μM)を有する予備HPLCシステム(Waters prepLC system、Waters2489UV/Visible Detector、Waters fraction collector III)によて精製した。試料の溶出は、吸光度によって220及び254nmでモニタリングした。生成物画分(product fraction)の純度を分析用HPLCによって確認した。各画分は、Agilent6130シングル四重極形質量分析計(QMS;Applied Biosystems)上で実施するLC/MSによってさらに分析した。純粋な生成物(>97%純度)を含有する画分物を集め、凍結乾燥して-80℃に保管した。 図6は、1〜5のUV-vis吸収スペクトラムである。TPP-ME(5-(4-メトキシカルボニルフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリンまたはテトラフェニルポルフィリンメチルエステル)をポルフィリンモノマー対照群として使用する。(a)アセトニトリル中の100μM。(b)アセトニトリル中の1の濃度の増加に伴いQ-バンドが増加する。(c)濃度は1の色変化に応じて変化する。 TPP-MEのようなポルフィリンモノマーに類似して、全てのPPCsのUV vis吸収スペクトラムは、λmax410〜415nmで強いソーレーバンド及びλmax645〜650nmでQ-バンドを示す(図6a)。1〜4のソーレーバンドは著しく広い。特に400及び700nmの間のノンゼロ(nonzero)吸収係数は4で観察され、広いスペクトラム域にわたり集光性が有利となる。2を除いたすべての複合体は、略438nmで長波長側の移動(赤色移動)を示し、このような移動は複合体溶液の濃度の増加とともにより強くなった(図7参照)。Q-バンド域において、略640〜660nmでより強い吸収が、濃度の増加とともにPPC1で観察された(図6b)。長波長側の移動に依存する濃度は、溶液中のポルフィリンJ-凝集体の通常的証拠を提供し、発色団の遷移双極子モーメントの励起子結合だけでなく端相互作用(edge-to-edge interaction)による自己集合種(self-assembled species)の存在を提示する。興味深いことに、高濃度(1.0mMまで)においても、TTP-MEはそうではないが、PPC2は赤色移動吸収を示さなかった(図7及び8参照)。 1及び3を含有する溶液を稀釈する際に、本願発明者らは緑色から明るい紫色への著しい色変化に気づき(図6c)、これは濃度依存的赤色移動吸収及びJ-凝集体形成に対する可視的証拠を提供する。対照的に、2を含有する溶液は、本発明者が使用したすべての濃度(1.0mMまで)において明るい紫色を維持した。分裂構造(4)及び組織化されていないペプトイドスキャフォールド(5)を有するPPCs(図9a)は、アセトニトリル中で難溶性を示し、さらに低い濃度での4及び5の明るい紫色溶液は、濃度が0.2mM以上に増加すると沈殿物を形成した。 CDスペクトラムは、190〜260nmで測定し、ペプトイドバックボーンカルボニルn→π*(〜220nm)及びn→π*(〜192及び202nm)移転をモニタリングした(図9a)。予想通りに、ポルフィリン(6〜9)がないペプトイドは、202及び220nmで2つの負のコットン効果を有するCDシグネチャのような通常のポリプロリンタイプ-I(PPI)を示し、100%アキラ側鎖を用いたPPC5はネットCD信号(net CDsignal)を示さなかった。螺旋フォールドの維持は、ポルフィリン複合の後1及び3で観察された。特に3のCDスペクトラムは、トランスアミド含有コンフォーマー(conformer)(202nm)からの寄与の減少及びシスアミド含有コンフォーマー(220nm)からの寄与の増加を示し、これはスリップ対面型ポルフィリン配列が、PPIタイプ螺旋コンフォーマーが増加した集団を提供することを示す。ノナマーと異なり、ドデカマPPCs(2及び4)の構造的分裂程度は、ポルフィリンの数を2つから3つに増加させることで作用することになるポルフィリン複合時に分裂された螺旋形の完全な状態を示した。ポルフィリン分子量は1、3及び4の全体PPCの分子量の略50%を占めることが興味深い事実であるが、4は単に深刻な構造的分裂を示した。 キラル環境のポルフィリンの空間を貫通する結合(through-space coupling)によって、ポルフィリンのソーレー域でbisignate CDシグネチャ(bisignate CD signature)によって確認された励起子結合円偏光二色性(ECCD)が生じる。図9bに示されたように、このようなECCDスペクトラムは、スプリットコットン効果の強い信号としてPPCs1及び3において観察された。このようなカプレットは、相互作用ポルフィリンの遷移双極子モーメント間のキラリティーを反映する。3つのPPCsは、ECCDが少ないか、または無かった。(1)遠く離れて位置する2つのポルフィリンを有するドデカマPPC2(〜12Å)。(2)ひどく分裂したペプトイド二次構造を有するドデカマPPC4。(3)組織化されていないペプトイドスキャフォールドを有するノナマーPPC5。 ペプトイドの螺旋方向(handedness)は、PPCsのECCDによって確認することができる。これらのポルフィリン表出螺旋形ポリイソシアニドで記録されるTakeiなどとして、正のCDカプレット(正のパターン対負のパターンは、より長い方からより短い波長に進行する)は右向き螺旋(right-handed helix)を示す。これらの結論は、Nspeサブモノマーからなっているペプトイド螺旋が、ECCDスペクトラムによって確認された右向き螺旋を形成することを発見した、本願発明者らのペプトイドに関する初期研究と完ぺきに一致する。 要約すると、本願発明者らは、ポルフィリンの、正確に定義された対面型、スリップ対面型及び非組織化配列を構成するためのスキャフォールディング材として、ペプトイド螺旋を使用した。J-凝集、色変化及びポルフィリン間の励起子結合の程度は、距離、配向及び数が制御されたポルフィリンペプトイド複合体によって調節することができる。また、分光及びメカニズム研究は現在の進行中であり、結局、本願発明者らは、本研究が人工光合成複合体の設計に新しい洞察力を提供できると予想する。 ポルフィリンの、正確に定義された対面型(cofacial)、スリップ対面型(slipped-cofacial)及び非組織化(unstructured)配列を構成するためのスキャフォールディング材(scaffolding material)を含むポルフィリンペプトイド複合体(Porphyrin Peptoid Conjugates)。 【課題】ポルフィリンの、正確に定義された対面型(cofacial)、スリップ対面型(slipped-cofacial)及び非組織化配列を構成するためのスキャフォールディング材を含むポルフィリンペプトイド複合体の提供。【解決手段】距離、配向及び数が制御されたポルフィリンペプトイド複合体(PPCs)を効果的に合成した。ポルフィリンの対面型、スリップ対面型及び非組織化配列は、UV-vis及び円偏光二色性分光法によって特徴化された明確な視覚的及び電子的特性を提供する。また、ECCDスペクトラムによりペプトイドの螺旋方向を確認した。【選択図】なし