生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アンチセンスBDNFとその用途
出願番号:2013184264
年次:2015
IPC分類:C12N 15/113,C12Q 1/68,A61K 31/712,A61K 31/7125,A61K 48/00,A61P 25/28,A61P 25/16,A61P 25/14,A61P 21/02,A61P 25/24,A61P 25/18,A61P 25/22,A61P 25/20,A61P 25/26,A61P 25/30


特許情報キャッシュ

小島 正己 熊ノ郷 晴子 水井 利幸 JP 2015050950 公開特許公報(A) 20150319 2013184264 20130905 アンチセンスBDNFとその用途 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 小島 正己 熊ノ郷 晴子 水井 利幸 C12N 15/113 20100101AFI20150220BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20150220BHJP A61K 31/712 20060101ALI20150220BHJP A61K 31/7125 20060101ALI20150220BHJP A61K 48/00 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/28 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/16 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/14 20060101ALI20150220BHJP A61P 21/02 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/24 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/18 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/22 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/20 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/26 20060101ALI20150220BHJP A61P 25/30 20060101ALI20150220BHJP JPC12N15/00 GC12Q1/68 AA61K31/712A61K31/7125A61K48/00A61P25/28A61P25/16A61P25/14A61P21/02A61P25/24A61P25/18A61P25/22A61P25/20A61P25/26A61P25/30 10 1 OL 11 (出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(チーム型研究(CREST))、「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」、「BDNF 機能障害の分子病態の解明と難治性うつ病の診断・治療法の開発」受託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4B024 4B063 4C084 4C086 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA01 4B024GA11 4B024HA17 4B063QA05 4B063QA19 4B063QQ08 4B063QQ53 4B063QR08 4B063QR41 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS26 4B063QS34 4B063QX02 4C084AA13 4C084NA14 4C084ZA022 4C084ZA052 4C084ZA112 4C084ZA122 4C084ZA152 4C084ZA162 4C084ZA182 4C084ZA222 4C084ZA252 4C084ZA262 4C084ZA942 4C084ZC392 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086EA16 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZA11 4C086ZA12 4C086ZA15 4C086ZA16 4C086ZA18 4C086ZA22 4C086ZA25 4C086ZA26 4C086ZA94 4C086ZC39 本発明は、アンチセンスBDNFとその用途に関し、詳しくはアンチセンスヒトBDNFとBDNFの発現増強剤、活性化剤、BDNFに起因する疾患の予防または治療薬、BDNFに起因する疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法に関する。 成長因子の1つであるBDNFはBDNF前駆体として産生され、成熟型BDNFとなるときにプロペプチド部分が切断される。 特許文献1は、BDNFのプロペプチドは、成熟型成長因子と結合することにより、或いはそれ自身でBDNFの阻害作用を有することを記載する。 特許文献2は、BDNFのアンチセンス転写物を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンス発現ベクターを使用して天然アンチセンス転写物の作用を抑制することを記載する。 さらに、BDNFまたはアンチセンスの関連文献として、非特許文献1,2が挙げられる。特開2011-246420特開2007-306899Dissecting the human BDNF locus: Bidirectional transcription, complex splicing, and multiple promoters. Genomics 90 (2007) 397-406Inhibition of natural antisense transcripts in vivo results in gene-specific transcriptional upregulation. Nature Biotechnology 30 (2012) 453-459 本発明は、BDNFの発現を増強し、BDNFの発現低下に伴う疾患の予防または治療薬を提供することを目的とする。 本発明者は、以下のアンチセンスBDNF及びBDNFの発現増強剤、活性化剤、神経保護剤、BDNFに起因する疾患の治療薬、BDNFに起因する疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法を提供するものである。項1. 非コーディングエキソン及び3'コーディングエキソンからなる群から選ばれるいずれかのエキソン又はその一部のアンチセンス配列を含む、アンチセンスBDNF。項2. 非コーディングエキソンIIのA,B,Cのいずれかの配列を含む項1に記載のアンチセンスBDNF 。項3. BDNFのコーディング領域又はその一部のアンチセンス配列をさらに含む、項1又は2に記載のアンチセンスBDNF。項4. 前記アンチセンス配列が、少なくとも1つの修飾された糖部分、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドおよびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の修飾を含む、項1〜3のいずれかに記載のアンチセンスBDNF。項5. 前記修飾が2'-O-メトキシエチル修飾糖部分、2'-メトキシ修飾糖部分、2'-O-アルキル修飾糖部分、二環性糖部分およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾された糖部分を含む、項4に記載のアンチセンスBDNF。項6. 前記修飾がホスホロチオエート、2'-O-メトキシエチル(MOE)、2'-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミデート、カルバミン酸、炭酸、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合を含む、項4に記載のアンチセンスBDNF。項7. 前記修飾が、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、アラビノ核酸(FANA)、それらの類似体、誘導体および組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含む、項4に記載のアンチセンスBDNF。項8. 項1〜7のいずれかに記載のアンチセンスBDNFを有効成分とするBDNFの発現増強剤、活性化剤、BDNFに起因する疾患の予防または治療薬。項9. BDNFに起因する疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、うつ病、統合失調症、パニック障害、恐怖症、強迫神経症、双極性障害、不安障害、多発性硬化症、記憶喪失、記憶障害、健忘症、幼児期学習障害、注意欠陥障害、脳障害、ナルコレプシー、睡眠障害、薬物乱用障害から選択されるいずれかの疾患である、項8に記載のBDNFに起因する疾患の予防又は治療薬。項10. 神経細胞の培養液に薬物候補物質を作用させ、項1〜7のいずれかに記載のアンチセンスBDNFの発現を検出することを特徴とする、BDNFに起因する疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法。 本発明によれば、BDNFの発現を増強するアンチセンスBDNFが得られる。 アンチセンスBDNFは、通常mRNAまたはタンパク質の発現を低下させるものであるが、本発明は、アンチセンスBDNFによりBDNFの発現量を増強できることを初めて見出した。 本発明は、BDNF機能低下に伴う疾患の予防又は治療薬だけでなく、BDNFアンチセンスRNAの発現を増強する新たな治療薬のスクリーニングにも応用可能である。BDNFアンチセンスRNAを模式的に示す。(a)ラットBDNF遺伝子座の構造。ボックスはエクソン、線はイントロンを示す。黒ボックスはコーディング領域、灰色ボックスは非コード領域。数字はエクソンの長さ、斜体の数字はイントロンの長さを示す(参考文献Genomics 90 (2007) 397-406)。(b) ラットBDNF 2a, 2b, 2c mRNAのゲノム上での位置。青ボックスはエクソン、線はスプライシングされるイントロン領域を示す。左側が5’端、右側が3’端である。図では長鎖3’UTRを持つものを示している(参考文献Genomics 90 (2007) 397-406)。 (c) ラットBDNF antisense RNAのゲノム上での位置。桃色ボックスはエクソン、線はスプライシングされるイントロン領域を示す。右側が5’端、左側が3’端である。実施例1の結果を示す。実施例2の結果を示す。 本明細書において、アンチセンスBDNFはアンチセンスDNAとアンチセンスRNAの両方を含む。アンチセンスBDNFは、BDNF遺伝子の非コーディングエキソン及び3'コーディングエキソンからなる群から選ばれるいずれかのエキソン又はその一部のアンチセンス配列を必須の構成要素として含み、好ましい実施形態ではBDNFのコーディング領域を含む。BDNFのコーディング領域はproBDNF又はその一部であってもよい。proBDNFの一部は成熟BDNFであってもよく、シグナルペプチドを含んでいてもよいproBDNFであってもよい。proBDNFは、furinやtissue plasminogen activator (tPA)により切断されて成熟型BDNF(129-247)とBDNFプロペプチド(19-128)に分かれる。1-18は、シグナルペプチドである。 ヒトproBDNFにアクセッション番号は、CAA62632である。 非コーディングエキソンは、齧歯類ではI〜VIIIの8個が存在し、ヒトではI〜V, Vh, VI〜VIII、VIIIhの10個が存在する(ここでVhとVIIIhはヒト特異的エクソンである)。アンチセンスBDNFの対象がヒトの場合、アンチセンスヒトBDNFが好ましく、対象が齧歯類の場合、アンチセンス齧歯類BDNFが好ましい。 1つの好ましい実施形態において、齧歯類BDNFの非コーディングエキソンIIはA,B,Cの3つが存在し、これらのいずれであってもよい。 本明細書において、BDNF、proBDNFなどの遺伝子、遺伝子名および遺伝子産物は、哺乳動物(ヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコなど)、魚類、両生類、は虫類および鳥類を含む他の動物由来の相同なおよび/またはオルソロガスな遺伝子および遺伝子産物を包含する。好ましい実施形態においてBDNF、proBDNFなどの遺伝子または核酸配列はヒト由来である。 アンチセンスBDNFは、RNAまたはDNA(標的RNA、DNA)に結合するRNAまたはDNA分子が意味される。例えばRNAポリヌクレオチドの場合、それは他のRNA標的にRNA-RNA相互作用の手段によって結合し、標的RNAの活性を変化させ得る。アンチセンスBDNFは、BDNFの発現および/または機能を上方あるいは下方制御できる。そのような分子として、例えばアンチセンスRNAまたはDNA分子、アンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。アンチセンスBDNFは、1本鎖、2本鎖、部分的な1本鎖の形態であり得る。 本明細書において、「アンチセンスBDNF」はリボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣物のポリマーまたはオリゴマーを包含する。「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、それらの置換型およびアルファ-アノマー型、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエート、メチルホスホネートなどを含んで天然および/または修飾されたものを含む。 本明細書において使用される「BDNF」は、全てのファミリーのメンバー、変異体、対立遺伝子、断片、全ての動物種由来のもの、コード配列および非コード配列、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。 用語「ヌクレオチド」は、天然に存在するヌクレオチドならびに天然に存在しないヌクレオチドを含む。「ヌクレオチド」は、公知のプリンおよびピリミジン複素環含有分子だけでなく、複素環類似体およびその互変異性体も含む。他の種類のヌクレオチドの例示的実例は、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、プリン、キサンチン、ジアミノプリン、8-oxo-N6-メチルアデニン、7-デアザキサンチン、7-デアザグアニン、N4,N4-エタノシトシン、N6,N6-エタノ-2,6-ジアミノプリン、5-メチルシトシン、5-(C3-C6)-アルキニルシトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、シュードイソシトシン(pseudoisocytosine)、2-ヒドロキシ-5-メチル-4-トリアゾロピリジン(2-hydroxy-5-methyl-4-triazolopyridin)、イソシトシン、イソグアニン、イノシンである。ヌクレオチドは、天然の2'-デオキシ糖および2'-ヒドロキシ糖ならびにそれらの類似体を含む。 アンチセンスBDNFの配列は、特異的にハイブリダイズできるその標的核酸(BDNF)のそれに100%相補的である必要はなく、介在するまたは隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与せずに(例えばループ構造、ミスマッチもしくはヘアピン構造)1つまたは複数のセグメントにわたってハイブリダイズできる。本発明のアンチセンスBDNFは、少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性をそれらが標的化するBDNF核酸配列中の標的領域に対して含む。 アンチセンスBDNFは、化学的修飾(例えば水素のアルキル、アシルまたはアミノ基での置換)に供された核酸を含む。アンチセンスBDNFの誘導体は、修飾された糖部分または糖間結合などの天然に存在しない部分を含みうる。これらにおける例は、ホスホロチオエートである。アンチセンスBDNFは、放射性ヌクレオチド、酵素、蛍光物質、化学発光剤、発色剤、磁性粒子などの標識を有していてもよい。 他の好ましい実施形態においてアンチセンスBDNFは、PCR、ハイブリダイゼーションなどを使用して同定および増幅されるものであり、例えば配列番号23〜25に記載の核酸配列を含む。これらのオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾されたヌクレオチド、より短いまたはより長い断片、修飾された結合などを含みうる。修飾された結合またはヌクレオチド間結合の例は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなどを含む。他の好ましい実施形態においてヌクレオチドは、リン誘導体を含む。本発明の修飾されたアンチセンスBDNF中の糖部分または糖類似成分に結合できるリン誘導体(または修飾されたリン酸基)は、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、アルキルリン酸塩、アルカンリン酸塩、ホスホロチオエートなどでありうる。 アンチセンスBDNF配列は、少なくとも1つの修飾された糖部分、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドおよびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の修飾を含み得る。 修飾されたアンチセンスBDNFは、2'-O-メトキシエチル修飾糖部分、2'-メトキシ修飾糖部分、2'-O-アルキル修飾糖部分、二環性糖部分およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾された糖部分を含むことができる。このような修飾としては、ホスホロチオエート、2'-O-メトキシエチル(MOE)、2'-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミデート、カルバミン酸、炭酸、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合を含むものが挙げられる。 本発明の実施形態においてアンチセンスBDNFは、標的BDNF関連核酸分子に結合し、BDNFの発現および/または機能を増強する。増強される機能は、例えば複製および転写を含み、例えばタンパク質翻訳部位へのmRNAの移行、mRNAからのタンパク質の翻訳、1つまたは複数のmRNA種を得るためのRNAのスプライシングを含む。 本発明によるアンチセンスBDNFは、長さ約5〜約5000ヌクレオチド(すなわち約5〜約5000個連結したヌクレオシド)由来のアンチセンス部分を含みうる。これは、アンチセンス化合物のアンチセンス鎖または一部分の長さを意味する。アンチセンスBDNFは2本鎖アンチセンスBDNF(例えばdsRNAなど)であってもよい。本発明の1本鎖アンチセンス化合物の長さの下限は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90または100であり、上限は、5000、4500、4000、3500、3000、2500、2000、1500、1200、1000、900、800、700、600、500、400、300、200または150である。 本発明のアンチセンスBDNFは、適切な細胞(特に神経細胞)への導入剤に内包あるいは複合体化されて哺乳動物、特にヒトに投与し、BDNF関連疾患とすることができる。 本発明は、さらに細胞、特に神経細胞におけるアンチセンスBDNFの産生を促進する薬物候補物質のスクリーニング方法に関する。薬物候補物質は、細胞、特に神経細胞の培養液に添加することができる。産生されるアンチセンスBDNF(特にアンチセンスRNA)は、ノーザンブロッティング、リアルタイムPCRなどにより検出、定量できる。細胞は、ヒト細胞が特に好ましい。 以下、実施例を用いて詳細を説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。 (実施例1) カイニン酸投与によるbdnf mRNA発現量増加時にbdnf antisense 2の発現量も増加した。 成獣マウス(系統B6、♂)にカイニン酸(KA)を腹腔内投与(KA: 20 mg/kg)し、1時間後に海馬組織を摘出した。total RNAを調製Oligo dTプライマーまたはbdnf antisense2(a, b, c すべてを認識しうる)特異的プライマーで逆転写後、bdnf mRNA, bdnf antisense 2の発現量を定量PCRで測定した。 その結果、カイニン酸(KA)投与マウスでは、bdnf mRNA, bdnf antisense 2の両方が同時に発現上昇することがわかった(図2)。実験方法:サンプルの調製カイニン酸投与マウス由来海馬total RNAは文献に従って調整されたものである (Activity-dependent regulation of BRINP family genes. Biochemical and Biophysical Research Communications 352 (2007) 623-629)。成獣マウスにカイニン酸(KA)を腹腔内投与(KA: 20 mg/kg)し、1時間後に海馬組織を摘出し、海馬組織よりTrizol reagent (Invitrogen)を用いて調製されたtotal RNAを譲渡された(コントロール、KA処理海馬、各4サンプル)。譲渡されたtotal RNAはRNeasy plus mini kit (QIAGEN)を用いて精製した。精製total RNAを鋳型にSuperScript III (Invitrogen)、オリゴ(dT)20プライマー(bdnf mRNA測定用)またはAS2-3Rプライマー(配列 CCGAGGTGGTAGTACTTCATCC, BDNF antisense 2測定用)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成した。リアルタイムPCR転写産物の測定は7300 Real-Time PCR system (ABI)を用いた。スタンダードはduplicate, 各サンプルはtriplicateで測定した。PCR反応は1/2希釈したcDNA溶液1.5 ul (最終希釈度1/20)、特異的PCRプライマーセット(各50 nM) 、Power SYBR Green PCR Master Mix (ABI)を用いて全容量15 μLで行った。PCR反応は50℃・2分、95℃・10分の後、95℃・15 秒、60℃・1分の2ステップを40サイクル行った。 全ての転写産物量はgapdh mRNA量で標準化した。定量PCRのプライマーセットとその配列は以下である。bdnf mRNA測定には、BDrt-1(配列 TGTGTGACAAGTATTAGCGAGTGG)と BDrt-2 (配列ATGGGATTACACTTGGTCTCGT), BDNF antisense 2測定にはBDrt-3(配列 ACTCTGGAGAGCGTGAATG)とBDrt-4 (配列 AGGCTCCAAAGGCACTTGAC), gapdh mRNA測定にはGAPDH-F (配列 TGCACCACCAACTGCTTAGC)とGAPDH-R (配列 GGCATGGACTGTGGTCATGAG) を用いた。得られた測定結果はgapdh mRNA発現量で標準化した後、無処置マウスの海馬サンプル値を1として算出した。 (実施例2) Bdnf antisense(AS)2cの強制発現によりbdnfmRNA, BDNFタンパクの発現量が増加した。(1)概要(a) 培養7日目の低密度海馬初代培養ニューロンにbdnfAS2c発現ベクターとGFP発現ベクターを導入した。48時間後RNAを回収し、目的遺伝子特異的プライマーで逆転写、bdnf, bdnf exon1,2,4,6,9a(図1のラットBDNF遺伝子座を参照), NGF, NT3、as2の発現量を定量PCRで測定した。グラフはコントロールベクター導入細胞の数値との比で示している。Bdnf mRNAが特異的に増加し、神経成長因子ファミリーのngf, nt3は変動が見られなった。更にbdnf mRNAのsplicing variantではexon2-bdnf mRNAが増加していた。(b) (a)と同様にベクターを導入した細胞におけるbdnf mRNAの発現をin situhybridizationで比較した。AS2c発現ベクターが導入された細胞では(下段、白矢尻)、隣接する非導入細胞よりもbdnf mRNAのシグナルが強くなっていた。Barは100 um.(c) 大脳皮質初代培養ニューロンにbdnf AS2c発現ベクター(コントロールはpcDNA3.1ベクター)を導入後、細胞を培養した。培養14日目に細胞からライセートを調製しBDNF-ELISAキット (BDNF ELISA kit, R & D)でBDNFタンパク量を測定した。グラフはライセート総タンパク量当たりのBDNF量を示す。bdnf AS2c導入細胞をではコントロール細胞に比べて、BDNFタンパク量が約1.5倍に増加した。 (a)〜(c)の結果を図3に示す。(2)詳細な実験方法細胞培養 胎生18日目のWistarラット(Charles River)胎児の海馬を用い、Bankerにより開発された培養方法(Takahashi et al., 2003)で低密度海馬初代培養ニューロンを作製した。酵素処理で分散させた細胞をPoly-L-lysine(SIGMA, 1mg/ml)でコートしたカバーガラス(18 mm丸型, MATSUNAMI)上に5,000個/cm2の細胞密度で接着させ、大脳皮質由来のグリア細胞のフィーダーと共培養した。培養液は2% B27 supplement (Invitrogen)を含んだMinimun essential medium (MEM, Invitrogen)を使用し、培地交換は培養7日目に1度実施した。 胎生18日目のWistarラット(Charles River)胎児の大脳皮質を用い、大脳皮質初代培養ニューロンを作製した。酵素処理で分散させた細胞をPoly-L-lysine(SIGMA, 1mg/ml)でコートした6well培養プレート(Nunc)に2X106個/wellの細胞密度で接着させ培養した。培養液は2% B27 supplement (Invitrogen)を含んだNeurobasal medium (Invitrogen)を使用し、培地交換は週に1度実施した。発現ベクター構築 海馬培養ニューロンtotal RNAからRACE法によりBDNF antisense 2cをクローニングし、配列のシークエンシングを行った。クローニングしたラットBDNF antisense 2cをpcDNA3.1(-)(Invitrogen)に導入し、BDNF antisense 2c発現ベクターを構築した。発現ベクターの導入 培養7日目の海馬培養ニューロンへ、リン酸カルシウム法で発現ベクターを導入した。カバーガラス一枚当たり1.25 ugのBDNF antisense 2c/pcDNA3.1(-)またはpcDNA3.1(-)ベクターと、1.25 ugのpEGFP-N1(Clontech)を培養液で調製し、1時間、37℃で炭酸ガスインキュベーターにてインキュベートした。Hank’s Balanced salt solution(HBSS)で洗浄後、2日間培養を維持した。 大脳皮質初代培養ニューロンへの発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法を利用した。培養開始前に、4X106個の分散細胞あたり2.5 ugのBDNF antisense 2c/pcDNA3.1(-)またはpcDNA3.1(-)ベクターと、0.5 ugのpEGFP-N1(Clontech)をHBSSでキュベット中に調製した。Nucleofector (Lonza)を用いてO-003プログラムでエレクトロポレーションを実施し、14日まで培養した。リアルタイムPCRによる各遺伝子発現の定量実施例1と異なる箇所だけ記載する。細胞のtotal RNA調製はRNeasy plus mini kitで調製した。得られた測定結果はgfp mRNA発現量で標準化した後、コントロールベクター導入サンプル値を1として算出した。各遺伝子定量のために用いた逆転写プライマーとPCRプライマーセットを以下に示す。逆転写プライマーは、ngf, nt3, bdnf exonIXa, gfpはオリゴ(dT)20プライマー、exonI, II,VIはBD5ATGR1 (配列ATCACTCTTCTCACCTGGTGGA)、exonIII,IVは BD5ATGR2 (配列ACTCTTCTCACCTGGTGGAA)を用いた。PCRプライマーを以下に示す(()内は配列)。NGF, mNGF-3 (GATGGCATGCTGGACCCAAG), mNGF-4 (CAACATGGACATTACGCTATGCAC)NT3, mNT3-1 (GGGATTGATGACAAACACTGG), NT3-2(ACAAGGCACACACACAGGAA)GFP, GFP-F (GCACAAGCTGGAGTACAACTACAA), GFP-R(GATGTTGTGGCGGATCTTGAAGTTCA)exonI, rmBD-EX1F (GACACTGAGTCTCCAGGACAG), BD5ATGR1exonII, rmBDex2F (TGGTATACTGGGTTAACTTTGGGAAA), BD5ATGR1exonIII, rAS3-R2(TGAGACTGCGCTCCACTCCCTG), BD5ATGR2exonIV, rBDex4F(GCTGCCTTGATGTTTACTTTGA), BD5ATGR2exonVI, rmBDex6F (GCTTTGTGTGGACCCTGAGTTC), BD5ATGR1exonIXa rmBDEX-9aF1 (TGCTGCTGACTTGAAAGGAA), rmBDEX-9aR (CGCTGTCACCAGAAACACA)実験は3回行い、結果は平均値±平均値の標準誤差(SEM)を示した。細胞のbdnf in situ hybridizationとGFP免疫染色細胞を4% パラホルムアルデヒド/PBSで室温、15分固定後、PBSで洗浄した。-20℃の100 % エタノール中で15分透過処理後PBSに戻した。 FITC標識bdnf コード領域配列のアンチセンスプローブ/ハイブリダイゼーションバッファー(50%ホルムアミド、5 x SSC、10mM EDTA、100 ug/ml ヘパリン、250 ug/ml yeast tRNA)で55℃, 16時間処理した。Wash 1液(50% ホルムアミド、2xSSC、0.1% Tween20) で55℃、30分、2回、wash 2液(0.05xSSC、0.1% Tween20)で55℃、30分、2回、TBST(20 mM Tris-HCl, pH7.4、140 mM NaCl、0.05% Tween20)で室温、5分洗浄した。0.5 % Blocking reagent (Roche)/TBSTで1時間ブロッキングした後、HRP標識抗FITC抗体(1/5000希釈、Jackson ImmunoReseach)、抗GFP抗体(1/1000希釈、Invitrogen)で4℃、一晩処理した。TBSTで10分、3回洗浄した後、TSA-Plus(DNP)HRPキット(Parkin Elmer)でキット添付のプロトコールで処理後、TBSTで5分、3回洗浄した。Alexa488標識抗DNP抗体、Alexa555標識抗ヤギIgG抗体、1ug/ml DAPIで2次抗体反応を行い、TBSTで洗浄後封入した。蛍光画像は共焦点レーザー顕微鏡システムC1、倒立顕微鏡エクリプスTi-E、20X Plan Apo, NA 0.75レンズ (Nikon)を用いて取得した。ELISA法によるBDNFの測定大脳皮質初代培養ニューロンにbdnf AS2c発現ベクター(コントロールはpcDNA3.1ベクター)を導入後、細胞を培養した。培養14日目に細胞を回収し、可溶化液(20 mM Tris-HCl, pH7.4, 300 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1% Triton-X100, 0.1% SDS, protease inhibitor cocktail (Roche))に懸濁後遠心(10,000 x g, 15 分)し上清を回収した。回収した上清のBDNF-ELISAキット (BDNF ELISA kit, R & D)でBDNFタンパク量を測定した。非コーディングエキソン及び3'コーディングエキソンからなる群から選ばれるいずれかのエキソン又はその一部のアンチセンス配列を含む、アンチセンスBDNF。非コーディングエキソンIIのA,B,C(図1)のいずれかの配列を含む請求項1に記載のアンチセンスBDNF 。BDNFのコーディング領域又はその一部のアンチセンス配列をさらに含む、請求項1又は2に記載のアンチセンスBDNF。前記アンチセンス配列が、少なくとも1つの修飾された糖部分、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドおよびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の修飾を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のアンチセンスBDNF。前記修飾が2'-O-メトキシエチル修飾糖部分、2'-メトキシ修飾糖部分、2'-O-アルキル修飾糖部分、二環性糖部分およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾された糖部分を含む、請求項4に記載のアンチセンスBDNF。前記修飾がホスホロチオエート、2'-O-メトキシエチル(MOE)、2'-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミデート、カルバミン酸、炭酸、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合を含む、請求項4に記載のアンチセンスBDNF。前記修飾が、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、アラビノ核酸(FANA)、それらの類似体、誘導体および組み合わせから選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含む、請求項4に記載のアンチセンスBDNF。請求項1〜7のいずれかに記載のアンチセンスBDNFを有効成分とするBDNFの発現増強剤、活性化剤、BDNFに起因する疾患の予防または治療薬。BDNFに起因する疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、うつ病、統合失調症、パニック障害、恐怖症、強迫神経症、双極性障害、不安障害、多発性硬化症、記憶喪失、記憶障害、健忘症、幼児期学習障害、注意欠陥障害、脳障害、ナルコレプシー、睡眠障害、薬物乱用障害から選択されるいずれかの疾患である、請求項8に記載のBDNFに起因する疾患の予防又は治療薬。神経細胞の培養液に薬物候補物質を作用させ、請求項1〜7のいずれかに記載のアンチセンスBDNFの発現を検出することを特徴とする、BDNFに起因する疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法。 【課題】BDNFの発現を増強し、BDNFの発現低下に伴う疾患の予防または治療薬を提供する。【解決手段】非コーディングエキソン及び3'コーディングエキソンからなる群から選ばれるいずれかのエキソン又はその一部のアンチセンス配列を含む、アンチセンスBDNF。【選択図】図1配列表


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