生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ゴムシール材の寿命評価方法
出願番号:2013175809
年次:2015
IPC分類:G01N 24/08


特許情報キャッシュ

沼田 香織 JP 2015045524 公開特許公報(A) 20150312 2013175809 20130827 ゴムシール材の寿命評価方法 東京瓦斯株式会社 000220262 重野 剛 100086911 沼田 香織 G01N 24/08 20060101AFI20150213BHJP JPG01N24/08 510PG01N24/08 510LG01N24/08 510S 7 2 OL 10 特許法第30条第2項適用申請有り 本発明はゴムシール材の寿命評価方法に係り、特にパルス法NMR(核磁気共鳴)を用いたゴムシール材の寿命評価方法に関する。 熱劣化が主となる環境下で使用されるゴムシール材の寿命評価にあたっては、複数温度環境下で定圧縮変位を負荷する温度加速試験が一般的に行われる。評価指標にはシール性能の経時変化と密接に関連する圧縮永久ひずみ(compression set)が多く用いられる。圧縮永久ひずみを評価指標とした場合には、圧縮永久ひずみが各加速温度において限界値に達する時間を推定し、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度において限界値に達する時間を寿命として推定する。しかしながら、対象部材が小さい場合や、長期の温度加速による部材の変形が生じる場合など、寸法測定誤差が増大した際には、圧縮永久ひずみの評価指標としての適用性が低下する。 また、予め機器に装着されたOリングやゴムシートにおいては、初期圧縮率が不明である場合も多い。この場合は初期に圧縮されていた寸法に対するひずみ量である圧縮永久ひずみは求められないため、同じように圧縮永久ひずみの評価指標としての適用性が低下する。 硬度や伸びなどの機械特性をゴムシール材の寿命の評価指標とすることもあるが、計測精度や、シール性能の低下との相関性の観点から、適切な評価指標とならないことが多い。同じく、ゴム構造の状態を示す架橋密度を評価指標とすることも可能であるが、ゴム材料は、油分、灰分、カーボンなどの複合材料となっているため、ゴム構造の把握だけではシール性能の劣化を把握できない場合がある。 ゴムの架橋状態を測定・評価する技術として、パルス法NMRでゴムのスピン−スピン緩和時間T2を測定し、得られたスピン−スピン緩和時間T2をもとに、平均緩和時間MT2を算出してゴムの架橋度を評価する方法(特許文献1:特開2002−71595号公報)や、パルス法NMRにより測定された平均緩和時間MT2と、ゴムベルトの走行試験結果から得られた耐久寿命との関係からゴムベルトの耐久寿命を推定する方法(特許文献2:特開2001−249091号公報)が提案されている。 パルス法NMR装置によりゴムの架橋構造、主にゴムの分子同士の架橋点やカーボンなどの補強材によって拘束されている(硬い)部分の状態を観測する場合、その観測結果は必ずしもゴムの架橋構造全体の状態を精度よく反映したものとはならない。 特許文献3(特開2011−38945)には、シーケンスとしてCarr−Purcell−Meiboom−Gill(CPMG)法を用いたパルス法NMR測定により得られるT2緩和曲線を緩和時間の異なる2成分に分離し、各々の緩和時間及び成分比率を重回帰分析してゴム物性を解析する手法が記載されている。 特許文献4(特開2012−173093)には、パルス法NMR装置を用いるゴム材料の検査方法であって、Carr−Purcell−Meiboom−Gill(CPMG)法によりゴムのスピン−スピン緩和時間T2を測定し、得られたT2緩和曲線(自由誘導減衰曲線)を、緩和時間の短いT2S成分と、緩和時間の長いT2L成分とに分割し、上記T2L成分の緩和時間から破断伸びEbを予測するゴム材料の検査方法が記載されている。特開2002−71595号公報特開2001−249091号公報特開2011−38945号公報特開2012−173093号公報 上記特許文献1〜4には、ゴムシール材の圧縮永久ひずみに代る寿命を評価する指標としての適用性について記載されていない。すなわち、特許文献1〜4によるパルス法NMRで測定されるT2緩和時間によるゴム材料の劣化評価は、架橋密度や硬度といった特定の計測項目と相関する物性値としての活用方法を提案したものであり、シール性の低下を捉える指標としての活用方法については記載されていない。架橋密度や硬度は、シール性の低下と相関する場合も多いが、架橋密度の経時変化がないにもかかわらずシール性が低下する場合も存在するため、シール性の評価に必要な物性変化を把握できない可能性がある。 また、従来のパルス法NMRを用いた劣化評価においては、パルス法NMRを用いて測定されたT2緩和曲線を波形分離において2成分に近似した際の運動性の高い成分と運動性の短い成分を共に用いる。この場合、運動性の異なる3つ以上の成分に分けられる材料については適用性が低くなる。また、2成分に近似できる場合でも、運動性によって緩和時間が大幅に異なる場合は、いずれかの成分についてT2緩和時間を測定する方法の適用性が低下し、これに伴って値の信頼性が低下する。 本発明は、パルス法NMRにより、ゴムシール材の寿命を高精度に評価することができるゴムシール材の寿命評価方法を提供することを目的とする。 本発明のゴムシール材の寿命評価方法は、パルス法NMRでゴムシール材のスピン−スピン緩和時間T2を測定し、得られたT2緩和曲線(自由誘導減衰曲線)を緩和時間の短いT2S成分と、緩和時間の長いT2L成分とに分割し、このT2Sに基づいてゴムシール材の寿命を評価することを特徴とするものである。 本発明では、熱劣化が支配的であると考えられる場合には、測定対象となるゴムシール材と同一組成の未使用ゴム材料の試験片に定圧縮変位を与えて加速温度条件下に置き、その後各試験片のT2緩和時間を測定して分子運動性の低い成分の緩和時間であるT2Sを求める。また、複数の試験片について圧縮永久ひずみを測定し、T2Sと圧縮永久ひずみの検量関係を求める。この検量関係に基づいてあらかじめ定められた圧縮永久ひずみの上限値に対応する評価対象のT2Sの限界値(下限値)を定める。そして、測定対象ゴムシール材について測定したT2Sが限界値に達する時間を求め、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度(例えば常温)において限界値に達する時間を寿命として推定することが好ましい。 本発明では、シール部分を有する機器類を供試体として評価することもできる。この場合は、シール材を装着した供試体を加速温度条件下に置き、その後、供試体に装着されたゴムシール材の圧縮永久ひずみとT2Sとを測定して同様の方法により寿命を推定することが可能である。 その際、初期圧縮率が不明の場合には、加速後の各供試体の気密試験を行ってシール性能を判定すると共に、各供試体に装着されたゴムシール材のT2緩和時間を測定してT2Sを求め、シール性能を維持できるT2Sの限界値(下限値)を定め、測定したT2Sがこの限界値に達する時間を推定し、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度において限界値に達する時間を機器類のシール材の寿命として推定することが好ましい。 前述のようにしてT2Sを求めた後に、圧縮永久ひずみとの検量関係やそれに基づく限界値の確定、シール性能が維持できる限界値の確定、限界値に到達する時間の推定、アレニウスプロットの直線外挿に基づく寿命推定等を行うに当たっては、T2Sそのものの値を用いるのではなく、各加速品と未加速品のT2Sの差を用いることも可能である。この場合、各加速品と未加速品のT2Sの差の限界値は下限値ではなく、上限値となる。 本発明は、ゴムシール材の劣化促進後に計測していた圧縮永久ひずみに代えて、パルス法NMR装置を用いてT2緩和時間を測定し、その経時変化データによって耐久性を評価するようにしたものである。本発明は、シール性と相関性の高い圧縮永久ひずみの代替としての機能をもつように開発した手法であり、シール性の経時変化に基づいて寿命を精度よく推定することができると共に、初期圧縮率が不明であるため圧縮永久ひずみが測定できない場合でもシール材の寿命評価を行うことが可能である。 本発明では、T2緩和時間の運動性の短い成分のみを対象とすることができ、材料に応じて最適なパルス印加方法を選択することにより、ゴムシール材の寿命を精度よく評価することができる。なお、パルス法NMRによる測定はサンプル形状による制約がないため、サンプルの形状、破損状態によらず測定が可能である。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例における測定結果を示すグラフである。実施例におけるアレニウスプロットである。 本発明のゴムシール材の寿命評価方法では、パルス法NMRによってゴムシール材のT2Sを求める。ゴムシール材のゴム材料としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(VMQ,FVMQ)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM),クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。ゴムシール材は、環状(円環状、楕円環状、三角環状、四角環状、五角以上の多角環状等)であってもよく、非環形のシート状などいずれの形状のものであってもよい。 本発明者による実験の結果、T2Sは、各種ゴムシール材の圧縮永久ひずみと良好な相関関係を有していることが認められた。圧縮永久ひずみはゴムシール材の寿命評価に有効な指標であり、圧縮永久ひずみが各加速温度において上限値に達する時間を推定し、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度において上限値に達する時間を寿命として精度よく推定することができる。 ところが、ゴムシール材のサイズが小さい場合や、長期の温度加速による部材の変形が生じる場合など、寸法測定誤差が増大した際には、圧縮永久ひずみの評価指標としての適用性が低下する。 また、予め機器に装着されたOリングやゴムシートにおいては、初期圧縮率が不明である場合も多い。この場合も同じように圧縮永久ひずみの評価指標としての適用性が低下する課題があった。 本発明では、圧縮永久ひずみと良好な相関関係を有するT2Sを評価指標とするため、ゴムシール材のサイズが小さい場合や、長期の温度加速による部材の変形が生じる場合などであっても、ゴムシール材の寿命を精度よく評価することができる。また、初期圧縮率が不明であっても、ゴムシール材の寿命を評価することができる。 本発明において、パルス法NMRによるスピン−スピン緩和時間T2の測定は、ソリッドエコー(Solid Ecoh)法で行うのが好ましい。 パルス法NMRにより得られたT2緩和曲線からT2Sを求めるには、緩和曲線を下記式(1)にカーブフィッティングし、 F(t)=A2Sexp(−t/T2S)m + A2Lexp(−t/T2L)m …(1)T2Sを求める。なお、(1)式中A2Sは緩和時間の短い成分のt=0時の強度、A2Lは緩和時間の長い成分のt=0時の強度、tは観測時間である。また、mは対象によって異なるが、ゴムの場合は1となることが多い。 熱劣化が支配的である環境下で使用されるゴムシール材の寿命を評価するには、評価対象となるゴムシール材と同一ゴム組成を有する未使用の複数のゴム試験片ついて所定の圧縮率の定圧縮変位を与え、これを加速温度(3段階以上、例えば60,80,100℃)に所定時間(複数段階)静置する。そして、所定の経過時間毎に各サンプルについてT2緩和時間を測定し、T2Sを求める。加えて、複数の異なる経過時間の試験片について圧縮永久ひずみを測定する。この結果に基づいて、圧縮永久ひずみとT2Sとの検量関係(例えば、図2(a)に示されるグラフ)を求める。さらに、この検量関係に基づいて、予め定められた圧縮永久ひずみの上限値に対応するT2Sの限界値を求める。 シール材を有する機器類を供試体として評価する場合は、供試体を加速温度条件下に置き、その後、供試体に装着されたゴムシール材のT2緩和時間を測定してT2Sを求め、複数の異なる経過時間の試験片について測定した圧縮永久ひずみとT2Sの検量関係(例えば、図2(a)に示されるグラフ)を求め、さらにこの検量関係に基づいて予め定められた圧縮永久ひずみの上限値に対応するT2Sの限界値を求める。 その際、初期圧縮率が不明の場合には、温度加速後の各供試体の気密試験を行ってシール性能を判定すると共に、各供試体についてT2緩和時間を測定してT2Sを求め、シール性能を維持できるT2Sの限界値(下限値)を定める。 T2Sを求めた後に、圧縮永久ひずみとの検量関係やそれに基づく限界値の確定、シール性能が維持できる限界値の確定を行うに当たっては、T2Sそのものの値を用いるのではなく、各加速品と未加速品のT2Sの差を用いることも可能である。この場合、各加速品と未加速品のT2Sの差の限界値は下限値ではなく、上限値となる。 評価対象とするゴムシール材についてパルス法NMRによってT2緩和時間を測定し、T2Sを求める。この求めたT2Sあるいは各加速品(加速温度条件下においた試験片)と未加速品(加速温度条件下におかなかった試験片)のT2Sの差が限界値に達する時間を求め、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度において限界値に達する時間を機器類のゴムシール材の寿命として推定し、ゴムシール材の寿命を評価する。[実施例1] 高ニトリルNBRをベースポリマーとした外径199.5mmの未使用のリングパッキンから切り出した39mm×19mm×厚さ6.5mmの平板試験片について、パルス法NMRを用いてT2S及びT2L(JMN−MU25、Solid Echo法、90°pulse2.0μsec、繰り返し時間4sec、積算回数8回)を測定した。また、この平板試験片について、膨潤量(トルエン、37℃)、アセトン可溶分(ソックスレー抽出、8時間)を測定した。[実施例2] 実施例1と同一の平板試験片に、圧縮率が10%となるようなスペーサーを用いて定圧縮変位を与え、これを加速温度(60,80,100℃)に設定した空気恒温槽に各試験時間(約1000〜12800時間)が経過するまで静置した。 この加速温度処理後の試験片について圧縮永久ひずみを測定すると共に、実施例1と同一の測定を行った。[結果・考察] 図1に加速温度処理に供した試験片の圧縮永久ひずみの経時変化を示す。60,80,100℃のいずれの加速温度の場合も、経時に伴い圧縮永久ひずみが増大していることが認められる。 同試験片について、パルス法NMRを用いて20℃において測定したT2緩和曲線を波形分離にて2成分に近似した。 図2(a)にT2Sと圧縮永久ひずみとの関係を示し、図2(b)にT2Lと圧縮永久ひずみとの関係を示す。図2(a),(b)の通り、圧縮永久ひずみの増大とともにT2S、T2Lが小さくなる良い相関が見られる。 図3(a),(b)にアセトン可溶分とT2S、T2Lとの関係を示す。図3(a),(b)の通り、アセトン可溶分の減少とともにT2S、T2Lが小さくなる相関が見られる。 図4(a),(b)に実施例2において加速温度処理に供した試験片の20℃測定におけるT2S、T2Lと、同一条件で加速温度処理した試験片について測定したトルエン膨潤量の関係を示す。20℃測定におけるT2S、T2Lとトルエン膨潤量との間には相関は見られない。 T2S、T2Lと膨潤量に相関が見られないのに対し、T2S、T2Lとアセトン可溶分については一定の相関が認められる理由については、膨潤量は架橋密度に関連することから、本試験片においては架橋密度の経時変化が小さかったためにT2S、T2Lと膨潤量に相関が見られなかったものと考えられる。これに対し、アセトン可溶分の変化は可塑剤残存量の変化に関連することから、本試験片においては、主として可塑剤の揮発により分子鎖の運動性、すなわちT2S、T2Lが減少したものと推察される。 図5に、実施例1において未加速の試験片について、アセトン抽出およびトルエンによる膨潤を行っていない状態の試料を測定した結果のパルス法NMRの測定温度とT2S及びT2Lの成分比の関係を示す。温度上昇に伴ってT2Sの成分比が減少し70℃でほぼ消滅することが確認できる。 また、図5に、同試験片についてアセトン可溶分の抽出およびトルエンによる膨潤を行った後に20℃において測定したT2SとT2Lの成分比を合わせて示した。図5の通り、トルエン膨潤後にT2Sはほぼ消滅している。 以上より、T2Sは分子鎖における絡み合い点や架橋点近傍の分子運動性が低い部分の緩和時間、T2Lは絡み合い等の影響が小さい部分の緩和時間を捉えたものと推定でき、実施例1,2の試験片において、20℃のT2Sは、絡み合い点近傍における分子鎖の運動性を主に捉えているものと考えられる。[実施例3,4] 前記リングパッキンから切り出した平板試験片の代わりに、高ニトリルNBRゴムをベースポリマーとしたOリング付きダイヤフラムを装着した圧力調整器の該Oリングについて、該圧力調整器に装着したままの状態で実施例1,2と同様の測定を行い、結果を図6〜8に示した。図6〜8の(a)図はT2Sと圧縮永久ひずみ、アセトン可溶分及び膨潤量の関係を示し、図6〜8の(b)図はT2Lと圧縮永久ひずみ、アセトン可溶分及び膨潤量の関係を示す。 図6〜8の通り、T2Sは圧縮永久ひずみ、アセトン可溶分及び膨潤量と良好な相関を示す。本試験片については、架橋密度と可塑剤残存量共に経時変化があったため、双方とも一定の相関が認められたものと推察される。これに対し、このサンプルの場合、T2Lと圧縮永久ひずみ、アセトン可溶分及び膨潤量との相関は低い。 これらの結果より、熱劣化が支配的である環境下に置かれるゴムシール材のT2Sの経時変化は材料の形状、配合や、劣化メカニズムによらず、圧縮永久ひずみと良好な相関を示し、寿命評価指標として信頼性が高いことが認められた。また、本試験で対象としたシール材において、20℃にて測定されたT2Sと圧縮永久ひずみの相関が確認された。[実施例5] 実施例1で用いたものと同一の未使用の複数個の平板ゴム試験片について実施例2と同じくスペーサーを用いて圧縮率10%の定圧縮変位を与え、これを加速温度60℃、80℃、又は100℃に設定した空気恒温槽内に静置した。そして、1000hr、1500hr、3000hr、5000hr、7000hr(100℃のみ)、又は12800hr(60、80℃)経過毎に各試験片について実施例2と同様にしてT2緩和時間を測定し、T2Sを求めると共に、圧縮永久ひずみを測定した。この結果に基づいて、加速温度毎の処理時間とT2Sとの関係を図9に示した。また、圧縮永久ひずみとT2Sとの検量関係を求めた。この検量関係は、前述の図2(a)の通りである。 この検量関係に基づいて,予め定められた圧縮永久ひずみの上限値(この実施例では80%)に対応するT2Sを求めたところ、81μsecであった。そこで、この81μsecをT2Sの限界値とすることとした。 各加速温度に保持された試験片がこのT2S限界値(81μsec)に達するまでの経過時間を図9より読み取ったところ、 100℃の場合2820hr 80℃の場合8329hr 60℃の場合28431hrであった。この処理温度と経過時間をアレニウスプロットし、図10に示すアレニウス線図を得た。図10の縦軸は経過時間hの逆数の自然対数値1n(1/h)である。横軸は処理温度(絶対温度)Kの逆数の1000倍値1000/Kである。 図10において、得られた直線に対し使用環境温度20℃(その絶対温度の逆数1000/Kは、1000/(273+20)=3.41)保持下での限界値に達するまでの経過時間を求めたところ、次の通り537663hr(約61年)であった。 すなわち、図10において3.41の横軸値に対応する縦軸値は−13.195である。 e−13.195=1/h より、h=1/e−13.195 =1/1.8599×10−6 =537663hr 従って、このOリングの20℃保持下での寿命は約61年であると評価された。 パルス法NMRでゴムシール材のスピン−スピン緩和時間T2を測定し、 得られたT2緩和曲線(自由誘導減衰曲線)を緩和時間の短いT2S成分と、緩和時間の長いT2L成分とに分割し、 このT2Sに基づいてゴムシール材の寿命を評価することを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 請求項1において、 評価対象となるゴムシール材と同一組成の未使用試験片に定圧縮変位を与えて加速温度条件下に置き、その後複数の試験片の圧縮永久ひずみを測定する工程と、前記各試験片のT2Sを測定してT2Sと圧縮永久ひずみの検量関係を求める工程と、 この検量関係に基づいてあらかじめ定められた圧縮永久ひずみの上限値に対応する評価対象のT2Sの限界値を求める工程と、 評価対象ゴムシール材について測定したT2Sとこの限界値に基づいて評価対象ゴムシール材の寿命を評価する工程とを有することを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 請求項2において、前記T2Sと圧縮永久ひずみの検量関係を求める際に、前記加速温度条件下においた試験片(以下、加速品という。)と前記加速温度条件下におかなかった試験片(以下、未加速品)のT2Sの差と圧縮永久ひずみの検量関係を求めることを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 請求項1において、ゴムシール材を装着した機器類を供試体として加速温度条件下に置き、その後、各供試体の気密試験を行ってシール性能を判定すると共に、供試体に装着されたゴムシール材のT2緩和時間を測定してT2Sを求め、シール性能を維持できるT2Sの限界値を求めることを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 請求項4において、前記加速温度条件下においた供試体の試験片(以下、加速品という。)と前記加速温度条件下におかなかった供試体の試験片(以下、未加速品)という。)とについて前記T2Sを求め、前記シール性能を維持できるT2Sの限界値を定める際に、シール性能を維持できる各加速品と未加速品のT2Sの差について、前記限界値を求めることを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 請求項2ないし5のいずれか1項において、評価対象ゴムシール材について、測定したT2Sが前記限界値に達する時間を求め、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度において限界値に達する時間を機器類のゴムシール材の寿命として推定することを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 請求項3又は5において、前記加速温度条件下においた試験片(以下、加速品という。)と、加速温度条件下におかなかった試験片(以下、未加速品という。)のT2Sの差の限界値を定め、各加速品と未加速品のT2Sの差がこの限界値に達する時間を推定し、更にそのアレニウスプロットの直線外挿により使用環境温度において限界値に達する時間を機器類のシール部の寿命として推定することを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。 【課題】パルス法NMRにより、ゴムシール材の寿命を高精度に評価することができるゴムシール材の寿命評価方法を提供する。【解決手段】パルス法NMRでゴムシール材のスピン−スピン緩和時間T2を測定し、得られたT2緩和曲線(自由誘導減衰曲線)を緩和時間の短いT2S成分と、緩和時間の長いT2L成分とに分割し、このT2Sに基づいてゴムシール材の寿命を評価することを特徴とするゴムシール材の寿命評価方法。【選択図】図2


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