タイトル: | 公開特許公報(A)_脳血管性認知症の予防/改善のための組成物 |
出願番号: | 2013170684 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 36/53,A61K 36/00,A61P 25/28,A23L 1/30 |
森 隆治 JP 2015040178 公開特許公報(A) 20150302 2013170684 20130820 脳血管性認知症の予防/改善のための組成物 森 隆治 513210275 高島 一 100080791 土井 京子 100125070 鎌田 光宜 100136629 田村 弥栄子 100121212 山本 健二 100122688 村田 美由紀 100117743 小池 順造 100163658 當麻 博文 100174296 森 隆治 A61K 36/53 20060101AFI20150203BHJP A61K 36/00 20060101ALI20150203BHJP A61P 25/28 20060101ALI20150203BHJP A23L 1/30 20060101ALI20150203BHJP JPA61K35/78 QA61K35/78 BA61K35/78 WA61P25/28A23L1/30 B 9 OL 14 4B018 4C088 4B018MD48 4B018ME14 4B018MF01 4C088AB02 4C088AB38 4C088CA05 4C088MA07 4C088NA05 4C088NA14 4C088ZA15 4C088ZA16 本発明は、チョロギを含む認知症の予防/改善のための組成物に関する。認知症の中でも、特に脳血管性認知症の予防/改善等に関する。 高齢化社会を迎え、増加する認知症をどのように抑えていくかという課題が世界的な問題となっている。認知症は患者自身のみならず、家族への精神的、肉体的、経済的負担も大きく、深刻な社会的問題である。 認知症は、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症とに大別される。アルツハイマー型認知症は、老人斑、神経原線維変化、神経細胞の脱落と脳の萎縮等が生じるが、原因は未だ不明である。脳血管性認知症は、脳の血管障害、脳梗塞や脳出血により、脳の神経細胞に酸素や栄養が行き届かなくなり生じる。 日本で使用されているアルツハイマー型認知症治療薬としては、アリセプト、メマリー、レミニール、イクセロンが存在する。一方、脳血管性認知症そのものを治療する薬はなく、脳の血管障害、脳梗塞等の処置のために脳血流改善薬、脳血管拡張薬、脳代謝賦活薬等が使用されている。 近年、植物から抽出物を調製し、その脳機能改善効果についての報告がなされている。例えば、双子葉植物であるキンポウゲ科に属する多年性植物のオキナグサ抽出物に、β−アミロイドによる神経毒性の保護作用等があることが報告されている(特許文献1)。あるいは、シソ科の多年草植物であるクミスクチン抽出物に、認知力管理効果があることが報告されている(特許文献2)。 しかしながら、既存の薬では認知症に対する予防/治療が十分ではないのが現状であり、新たな脳血管性認知症の予防/改善のための有用な物質を提供することは急務である。特開2012−246311号公報特表2013−514972号公報 本発明は、チョロギ由来の脳血管性認知症の予防/改善のための有用な組成物を提供することを課題とする。 本発明者は、上記目的に鑑み鋭意検討を行った。その結果、40℃を超える水によるチョロギ抽出物を脳血管性認知症モデル動物に投与すると、学習記憶障害が改善されることを見出した。さらに、チョロギのみならず、イチョウ葉抽出物を当該モデル動物に投与した場合でも、学習記憶障害が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は下記のとおりである:[1] チョロギまたはその溶媒による抽出物を含む、脳血管性認知症の予防/改善のための組成物。[2] 溶媒が、40℃を超える水である、[1]に記載の組成物。[3] 抽出物が乾燥形態である、[1]または[2]に記載の組成物。[4] 抽出物が濃縮されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。[5] 水による抽出の温度が、80℃〜100℃である、[2]〜[4]のいずれかに記載の組成物。[6] イチョウ葉エキスをさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の組成物を含有する脳血管性認知症の予防/改善のための食品用配合剤。[8] [7]に記載の食品用配合剤が配合された食品。[9] 医薬である[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。 本発明のチョロギ抽出物により、脳血管性認知症を予防及び/又は改善することができる。さらに、チョロギのみならず、イチョウ葉エキスを併用しても、脳血管性認知症を予防及び/又は改善することができる。本発明で使用したstep-through型受動的回避学習装置を示す。脳血管性認知症モデル動物での学習記憶障害が、10g/kg、20g/kgチョロギエキスの投与により改善されたことを示す。脳血管性認知症モデル動物での学習記憶障害が、400mg/kgイチョウ葉エキスの投与により改善されたことを示す。10g/kg、20g/kgチョロギエキス、400mg/kgイチョウ葉エキスの投与により、海馬の細胞死が抑制されたことを示す。スコポラミンによる認知機能障害を誘発させたモデルマウスでは、学習記憶障害が10g/kg、20g/kgチョロギエキス、400mg/kgイチョウ葉エキスの投与により改善されなかったことを示す。 以下に本発明の詳細を説明する。 本発明は、チョロギまたはその溶媒抽出物を含む、脳血管性認知症の予防及び/又は改善のための組成物を提供する。 一態様として、本発明で使用する原料はチョロギ(学名Stachys affinis又はStachys sieboldii)である。部位として、チョロギ塊茎部を使用することができる。生のチョロギを刻む、あるいは粉砕して使用してもよい。別の態様としては、乾燥したチョロギを粉砕して使用してもよい(以下、上記の粉砕物や乾燥物等を包括して単に「チョロギ」という場合がある)。また、チョロギは日本産、中国産等、産地を問わない。 本発明のチョロギ抽出物は、溶媒により抽出することができる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール類、並びにそれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは、水である。 抽出に使用する水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、常水(日本薬局方の規定による)等が挙げられるが、これらに限定されない。 溶媒の温度に特に制限はないが、溶媒が水の場合、40℃を超えることが好ましく、より好ましくは80℃〜100℃、さらに好ましくは90℃〜100℃であり、いっそう好ましくは93℃〜97℃、就中95℃である。以下、本明細書において「熱水」という語は、特に温度の指定がない限り、40℃を超える水をすべて包含する意味で使用される。 使用する溶媒の量は、原料であるチョロギの量に応じて適宜決定することができる。例えば、水の場合、原料の5〜15重量部、好ましくは、8〜10重量部である。 溶媒での1回の抽出反応時間は、溶媒の種類、原料となるチョロギの形態等に応じて適宜選択することができるが、例えば30分〜2時間、好ましくは50分〜1時間である。 本発明の抽出方法は、チョロギに上述の熱水などの溶媒を加えて、溶媒の温度を保持させながら、上述の時間、抽出反応を行うことができる。溶媒の温度を保持することができれば、どのような方法でもよく、例えば、マントルヒーターでの還流を行うことができる。また、一態様として、熱水での抽出操作を2回以上行ってもよい。 上述の方法で処理した抽出物は、さらにろ過、又は遠心分離等の手段により、残渣と抽出液とに分けることができる。ろ過のフィルターのサイズは、適宜選択すればよく、例えば、150メッシュ(mesh)のフィルターを使用することができるが、それに限定されない。抽出液は、減圧濃縮等を行い、濃縮液とすることができる。 濃縮液は、さらに加工処理を行い、チョロギエキスとすることができる。加工処理としては、例えば、滅菌(加熱滅菌等)、乾燥(スプレードライ等)、篩過(例えば、60メッシュ(mesh)等)等が挙げられるが、これらに限定されない。 また、前記抽出液あるいは濃縮液を、減圧乾燥や凍結乾燥等の一般的な手法により加工し、チョロギ抽出液乾燥物(粉末)、又はチョロギ濃縮液乾燥物(粉末)として使用することもできる。 一態様としては、チョロギ抽出液又はチョロギ濃縮液をさらに精製してもよい。精製法は自体公知の方法、例えば、向流分配法、カラムクロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、上記のいずれかの方法により分画した各画分を脳血管性認知症モデル動物に投与し、症状の改善が認められた画分を取得することにより、活性成分を精製することができる。また、本発明者らは、当該活性成分がNrf2−ARE経路を活性化することを確認しているので、Nrf2−ARE経路を活性化を指標に、当該活性を有する画分を取得し、前記精製法により精製を行ってもよい。当該精製処理により得られる各精製画分を、減圧乾燥や凍結乾燥等の通常の手段により乾燥して使用することもできる。 別の態様としては、チョロギ抽出物中に存在する活性物質を特定するため、自体公知の方法を適用することができる。方法は、クロマトグラフィー(シリカゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC、逆相HPLC等)による分離、その後マススペクトル等による分子量決定、NMR等での構造決定が挙げられるが、これらに限定されない。 本発明の組成物は、チョロギまたは上述の方法で得られるチョロギ抽出物若しくはチョロギエキスに加えて、イチョウ葉エキスを含むことができる。 本発明で使用されるイチョウ葉エキスは、イチョウ(ginkgo)の葉から自体公知の方法により抽出することができる。原料となるイチョウは、日本産、中国産等、産地を問わない。また、市販のイチョウ葉エキス(丸善製薬製等)を使用することができる。 本発明の組成物は、脳血管性認知症を予防及び/又は改善するために、使用することができる。さらに、該組成物は、食品(健康食品、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク)、特定保健用食品等)、医薬品(医療用医薬品、一般用医薬品又は医薬部外品)等に使用することができる。 本発明の組成物が食品であれば、食品に配合された態様が挙げられ、かかる食品としては、パン、そば、うどん、そうめん、ひやむぎ、ラーメン、スパゲティ、パン、はるさめ、中華まんじゅう、炊き込みご飯の素、カレー粉、シチュウの素、はやしライスの素、スープの素、ビーフン、かまぼこ、ちくわ、コロッケ、寒天、豆腐、厚揚げ、油揚げ、ソーセージ、こんにゃく、ハム、コンンビーフ、シュウマイ、ギョーザ、ふりかけ、まんじゅう、羊かん、あられ、せんべい、飴、ケーキ、ゼリー、クッキー、カステラ、プリン、チョコレート、スナック菓子、ババロア、ムース、シュークリーム、味噌、しょう油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、みりん、食用油、ジャム、ジュース、コーヒー、ヨーグルト、茶、ワイン、ビール、酒、ワイン、牛乳、ココア等が挙げられる。 また、本発明の組成物は脳血管性認知症を予防及び/又は改善するための食品配合剤の形態とし、用時に食品に配合することができる。 配合対象とされる商品としては、ジュース、ごはん、味噌汁、カレー、シチュウ、グラタン、紅茶、コーヒー、ヨーグルト、ミルク、煮もの、炒め物、和え物等が挙げられる。 医薬品の形態としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、これらに限定されない。また、液体の医薬品、医薬部外品としては、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の形態が挙げられるが、これらに限定されない。 本発明の組成物は、添加物を含むことができる。添加物としては、賦形剤、結合剤、着色剤、矯味剤、滑沢剤、可溶化剤、安定化剤、溶解補助剤、防腐剤、増粘剤等が挙げられるが、これらに限定されない。これら添加物は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。また、これら添加物は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。 さらに、食品に一般的に使用される保存料、発色剤、香料、安定化剤、酸味料等を添加することもできる。例えば、エチルバニリン、バニリン、グリセリン脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。また、これら添加剤は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。 賦形剤としては、マルチトール、マルトール、エリスリトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、精製白糖、白糖、果糖、ブドウ糖、粉末還元麦芽糖水アメ、乳糖等が挙げられるが、これらに限定されない。 結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、マクロゴール、アラビアゴム、アラビアゴム末、ゼラチン等が挙げられるが、これらに限定されない。 矯味剤としては、甘味剤、清涼化剤、香料等として用いられるものであればよい。例えば、ヨーグルトフレーバー、バニラフレーバー、アスパルテーム、アマチャ末、サッカリン、カラメル、ケイヒ末、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、パイン油、1−メントール、フルーツフレーバー、チョコレートフレーバーなどが挙げられるが、これらに限定されない。 滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されない。 可溶化剤としては、L−アスパラギン酸、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、精製大豆レシチン、ダイズ油、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリソルベート、マクロゴール、マレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。 安定化剤としては、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、DL−アラニン、L−アルギニン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルブミン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エタノール、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸システイン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、クエン酸、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、グリシン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、酒石酸、精製ゼラチン、セスキオレイン酸ソルビタン、デキストラン、乳酸、乳糖、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸メチル、パントテン酸カルシウム、プロピレングリコール、ベントナイト、ホウ酸、没食子酸プロピル、ポビドン、ポリアクリル酸部分中和物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール等が挙げられるが、これらに限定されない。 溶解補助剤としては、アジピン酸、安息香酸ナトリウム、カプリン酸、クエン酸、酒石酸、ヒマシ油、ポビドン等が挙げられるが、これらに限定されない。 防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、エデト酸ナトリウム、カンテン、dl−カンフル、クエン酸、クエン酸ナトリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、2−ナフトール、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル等が挙げられるが、これらに限定されない。 増粘剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、レシチン等が挙げられるが、これらに限定されない。 また、カフェイン、各種アミノ酸、甘味料、香料、pH調整剤等通常の液剤に用いられる成分を添加してもよい。さらに、チョロギやイチョウ以外のエキス、生薬等も適宜配合することができる。 本発明の組成物は、チョロギ抽出物の乾重量として、約0.1g/kg体重〜約50g/kg体重、好ましくは約10g/kg体重〜約20g/kg体重を、1日1回〜数回に分けて投与することができる。また、本発明の組成物がイチョウ葉エキスをさらに含む場合、イチョウ葉エキスの乾重量として、約100mg/kg体重〜約1g/kg体重、好ましくは約300mg/kg体重〜約500mg/kg体重を、1日1回〜数回に分けて投与することができる。 投与する対象としては、ヒトが挙げられるが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)にも適用することができる。 本発明の組成物が脳血管性認知症の予防/改善に有効であることは、脳血管性認知症モデル動物を使用して、確認することができる。当該動物の一例として、後述の実施例に記載の両側総頸動脈結紮による全脳虚血動物が挙げられるが、これらに限定されない。 本発明において、チョロギ抽出物又はチョロギエキス等の薬理活性は、自体公知の方法により、確認することができる。一例として、in vitro アッセイ系による、Nrf2−ARE経路活性化の測定法(例えば、キノンオキシドレダクターゼ(NQO1)等のNrf2の標的遺伝子中のARE配列を含むプロモーターの下流にルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を連結して、Nrf2を発現する動物細胞に導入し、チョロギ抽出物又はチョロギエキスを当該細胞に接触させてレポーター遺伝子の発現増加を調べる方法等)が挙げられるが、それに限定されない。マウス、ラット等の動物に投与し、in vivoでの効果を確認することもできる。 以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。 全脳虚血モデルマウスの学習記憶障害に対する評価 両側総頸動脈結紮による全脳虚血処置3日後に、偽手術群に比較して有意に学習・記憶障害が発現することが確立されている手法(両側総頸動脈結紮法; BCAO)をddY系雄性マウス(SLC)に適用し(J. Pharm. Pharmacol., 2013)、全脳虚血モデルマウスを作製した。 vehicle群及びチョロギ群、並びに、vehicle群及びイチョウ葉群の2グループで実験を行った。用量はチョロギエキス(熱水抽出エキス、以下同様)1、5、10、20 g/kg/day(n=6、11、11、11)、イチョウ葉エキス(丸善製薬、以下同様)100、200、400 mg/kg/day(n=6〜8)となるように1日1回、脳虚血モデル(BCAO)作製前の5日間経口投与した。偽手術群には、vehicleを投与した。投与時間は、9:00-12:00の間とした。 学習・記憶障害の評価には、一試行性step-through型受動的回避学習装置(大原、東京、日本)を使用した。当該装置を図1に示す。当該装置は明室と暗室からなり、動物を明室に入れ、暗室(動物が暗い場所を好む習性を利用)に移行した場合、電気ショックを与える仕組みである。そして、電気ショックを経験したマウスは、その後、明室へ入れられても、暗室へ移動しようとしなくなる場合、学習・記憶したと判断する。細胞障害(梗塞巣形成)の評価には、ヘマトキシリンエオジン(hematoxylin eosin)染色を行った。自発運動量の評価には、オープンフィールド試験を使用した。 結果を図2、3に示す。BCAO 3日後における学習記憶障害に対し、チョロギエキス及びイチョウ葉エキスを投与したマウスでは用量依存的に抑制し、チョロギエキス10 g/kg及び20 g/kg、イチョウ葉エキス400 mg/kgの用量で有意であった。BCAO 3日後における核濃縮型細胞死の発現に対しても同様の効果を示した。なお、チョロギエキス、イチョウ葉エキス共に、体重及び自発運動量には影響を及ぼさないこと、つまり、使用したマウスの状態に問題がないことも確認した。 さらに、チョロギエキス10 g/kg及び20 g/kg、イチョウ葉エキス400 mg/kgをBCAOに投与した場合の、海馬における神経細胞死についても確認した。結果を図4に示す。チョロギエキス10 g/kg及び20 g/kg、イチョウ葉エキス400 mg/kgの投与により、神経細胞死が抑制された。 スコポラミン誘導性学習記憶障害に対する評価 スコポラミンはムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬であり、動物やヒトにおいて記憶障害を引き起こすことが知られている。そこで、ddY系雄性マウス(SLC)にスコポラミンを投与し、認知機能障害を誘発させたモデルを作製した。スコポラミンは、step-throughの訓練を行う30分前に、0.5又は1 mg/kgを単回腹腔内投与した(0.1 ml/10 g)。 vehicle群、チョロギ群、及びイチョウ葉群の3グループで実験を行った。用量はチョロギエキス5、10、20 g/kg/day、イチョウ葉エキス400 mg/kg/dayとなるように1日1回、スコポラミン投与前の5日間経口投与した。偽手術群には、vehicleを投与した。 学習・記憶障害の評価には、一試行性step-through型受動的回避学習装置(大原、東京、日本)を使用した。 スコポラミン投与による学習記憶障害は、vehicle群に比較して有意に発現した。しかし、当該障害に対し、チョロギエキス及びイチョウ葉エキス共に、改善を示さなかった。スコポラミン1 mg/kg投与の場合の結果を図5に示す。 本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明である。 ここで述べられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。 本発明により、チョロギの水などの溶媒による抽出物、さらにイチョウ葉エキスを含む組成物は、脳血管性認知症の予防/改善のために使用することができる。本発明の組成物は、食品や医薬品などとして有用である。 チョロギまたはその溶媒による抽出物を含む、脳血管性認知症の予防/改善のための組成物。 溶媒が、40℃を超える水である、請求項1に記載の組成物。 抽出物が乾燥形態である、請求項1または2に記載の組成物。 抽出物が濃縮されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。 水による抽出の温度が、80℃〜100℃である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の組成物。 イチョウ葉エキスをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含有する脳血管性認知症の予防/改善のための食品用配合剤。 請求項7に記載の食品用配合剤が配合された食品。 医薬である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。 【課題】チョロギの水などの溶媒による抽出物等を含む、脳血管性認知症の予防/改善のための組成物を提供する。【解決手段】本発明は、チョロギの水などの溶媒による抽出物を含む、脳血管性認知症の予防/改善のための組成物を提供する。また、本発明はチョロギの水などの溶媒による抽出物及びイチョウ葉エキスを含む、脳血管性認知症の予防/改善のための組成物を提供する。【選択図】なし