生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_間葉系幹細胞の分離方法
出願番号:2013170480
年次:2015
IPC分類:C12N 5/0775,C12Q 1/04


特許情報キャッシュ

薗田 精昭 松岡 由和 中塚 隆介 飯田 寛和 JP 2015039307 公開特許公報(A) 20150302 2013170480 20130820 間葉系幹細胞の分離方法 学校法人関西医科大学 500409219 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 薗田 精昭 松岡 由和 中塚 隆介 飯田 寛和 C12N 5/0775 20100101AFI20150203BHJP C12Q 1/04 20060101ALI20150203BHJP JPC12N5/00 202HC12Q1/04 7 OL 18 4B063 4B065 4B063QA18 4B063QQ08 4B063QQ79 4B063QR48 4B063QR77 4B063QS33 4B063QX01 4B065AA91X 4B065AC12 4B065BA25 4B065BD14 4B065BD39 4B065CA44 本発明は、間葉系幹細胞の分離方法、及び該分離方法によって得られた間葉系幹細胞に関する。 間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)は、間葉系組織の中に低い頻度で含まれており、頻度の違いはあるにしても全身の組織・臓器に存在すると考えられている。従来は、骨髄から得られた細胞を培養し、培養皿に付着した繊維芽細胞様の形態を示す細胞を、MSCとして同定していた(非特許文献1)。 本細胞が注目されるようになったのは、ヒトの骨髄から分離したMSCが、in vitroで骨、軟骨、及び脂肪細胞へ分化誘導可能なことが報告されたためである(非特許文献2)。その後、骨形成不全症の患者に同種骨髄由来の間葉系幹細胞を移植することにより、骨形成が促進されたことが報告された(非特許文献3)。さらに、神経細胞への分化(非特許文献4)、心筋細胞への分化(非特許文献5)、肝細胞への分化(非特許文献6)、血管細胞への分化(非特許文献7)、肺胞上皮細胞への分化(非特許文献8)などが相次いで報告されたことから、本細胞は再生医療における移植細胞の供給源として注目されている。 MSCを利用した再生医療としては、例えば、強度不足によりインプラント治療が困難な患者に対して、骨髄などから得られるMSCの移植により歯槽骨を再生させる治療が行われている。これに関連する動物実験では、骨髄から得られたMSCを多血小板血漿と共に欠損部に用いることにより、効果的に歯牙インプラントの骨性結合が増すことが報告されている(非特許文献9)。また、移植するMSCについても、骨髄由来細胞だけでなく脂肪由来細胞なども利用可能かどうか、研究が進められている(非特許文献10)。 一方、MSCを利用しない再生医療としては、例えば軟骨の再生医療が知られている。自家軟骨細胞移植の歴史として、まず1994年に、自己の軟骨片から軟骨細胞を単層培養し、これを浮遊状態としたものを骨膜で覆われた軟骨欠損部に移植するという方法が発表された(非特許文献11)。この方法は、1997年には米国FDAの認可を受けて、2007年までに世界中で2万例以上実施されることとなった。しかしながら、この方法は、自家軟骨を用いることで免疫反応などのリスクを軽減できるものの、軟骨の採取に伴う正常組織への侵襲という問題や、細胞を浮遊状態で用いるために細胞の組織への定着性が悪い点、及び軟骨細胞の増殖能が限られている点等から、軟骨形成が不完全であるという問題も存在する。近年、軟骨細胞とアテロコラーゲンを共培養した後に移植するという方法により、軟骨細胞の生着性が向上することが報告されたものの、このような問題点を解決するまでには至っていない。したがって、増殖・再生能力のより高いMSCを用いる方法の開発が求められている。 上記再生医療以外にも、MSCは、免疫制御や移植片対宿主病(graft versus host disease, GVHD)の治療に有用であることや(非特許文献12及び13)、造血幹細胞(HSC)の支持細胞として有用であること(非特許文献14〜16)が知られている。 このように、MSCは、再生医療、免疫制御、及びHSCの支持・増幅などの多様な分野で利用できることが知られている。現在の所、骨髄や臍帯血(非特許文献17)からMSCを分離できることが報告されているが、MSCの利用分野の多さに鑑みると、より効率的にMSCを分離する方法の開発が求められている。Friedenstein AJ, et al.: Fibroblast precursors in normal and irradiated mouse hematopoietic organs. 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Blood 109:1743-1751,2007. 本発明は、簡便且つ効率的に間葉系幹細胞を分離する方法を提供することを目的とする。より具体的には、間葉系幹細胞を利用した治療や該細胞に関する研究に必要とされる大量の間葉系幹細胞を、容易に調製する方法を提供することを目的とする。さらには、特定の組織に分化する(或いは特定の組織に分化しない)間葉系幹細胞を提供することをも目的とする。 本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、間葉系幹細胞や造血幹細胞等の幹細胞が含まれることがよく知られている骨髄に比べて、骨質により多くの間葉系幹細胞が含まれていることを見出した。そして、骨質を材料とすることにより、簡便且つ効率的に大量の間葉系幹細胞を分離できることを見出した。さらに、特定の細胞表面マーカー(SSEA-4やCD271)を指標として分離された間葉系幹細胞は、特定の組織に分化する(或いは特定の組織に分化しない)性質を有することをも見出した。これらの知見に基づき、さらに研究を進めた結果、本発明が完成した。 即ち、本発明は、下記の態様を包含する。 項1.骨質を材料として間葉系幹細胞を分離することを特徴とする、間葉系幹細胞の分離方法。 項2.CD271陰性であることを指標として間葉系幹細胞を分離する、項1に記載の分離方法。 項3.SSEA-4陰性且つCD271陽性であることを指標として間葉系幹細胞を分離する、項1に記載の分離方法。 項4.さらに、血球系細胞マーカー陰性、アポトーシスマーカー陰性、及び死細胞マーカー陰性よりなる群から選択される少なくとも1種を指標として間葉系幹細胞を分離する、項1〜3のいずれかに記載の方法。 項5.項1〜4のいずれかに記載の分離方法によって分離された間葉系幹細胞。 項6.(a)骨質由来であり、(b)血球系細胞マーカー陰性であり、(c)アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカー陰性であり、且つ(d)CD271陰性である、間葉系幹細胞。 項7.(a)骨質由来であり、(b)血球系細胞マーカー陰性であり、(c)アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカー陰性であり、(e)SSEA-4陰性であり、且つ(f)CD271陽性である、間葉系幹細胞。 本発明によれば、間葉系幹細胞を効率的に分離することができるため、容易に大量の間葉系幹細胞を調製することができる。また、材料である骨質は、有用部分である骨髄を除いた後に残る部分であり、通常廃棄される。したがって、骨質を材料とする本発明の分離方法は、材料を容易に且つ大量に、しかも低コストで準備できる点でも、極めて優れている。また、CD271陰性であることを指標として分離することにより、軟骨への分化能は示すが、骨への分化能を示さない間葉系幹細胞を得ることができ、SSEA-4陰性且つCD271陽性であることを指標として分離することにより、骨への分化能は示すが、軟骨への分化能を示さない間葉系幹細胞を得ることができる。このような細胞は、例えば軟骨組織又は骨組織のみを再生させるための、非常に有用なツールとなる。実施例1のFACSによる分離結果を示す。比較例1のFACSによる分離結果を示す。実施例2のFACSによる分画結果を示す。実施例2のCFU-Fアッセイ結果を示す。実施例2の前方散乱光の測定結果を示す。比較例2のFACSによる分画結果を示す。比較例2の間葉系幹細胞樹立試験の結果である細胞像を示す。試験例1の、骨質由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞の分離効率を示す。試験例2の、骨質由来間葉系幹細胞及び骨質由来微小幹細胞の前方散乱光の測定結果を示す。試験例3の、骨質由来間葉系幹細胞及び骨質由来微小幹細胞の増殖特性を示す。試験例4の、骨質由来間葉系幹細胞の骨分化能を示す。試験例4の、骨質由来間葉系幹細胞の脂肪分化能を示す。試験例4の、骨質由来間葉系幹細胞の軟骨分化能を示す。試験例4の、骨髄由来間葉系幹細胞の、骨分化能、脂肪分化能、及び軟骨分化能を示す。 1.間葉系幹細胞の分離方法 本発明は、骨質を材料として間葉系幹細胞を分離することを特徴とする、間葉系幹細胞の分離方法に関する。 骨質とは骨基質を主成分とする骨組織部分であり骨髄とは区別される組織である。本発明において、骨質は、骨(硬骨の場合、通常、骨膜、骨質、及び骨髄からなる)の骨髄以外の部分である限り特に限定されない。具体的に、骨質としては、例えば硬骨における骨膜及び骨質からなる部分が挙げられ、好ましくは硬骨における骨膜を含まない骨質部分(緻密骨及び海綿骨からなる)が挙げられ、より好ましくは硬骨における骨皮質(緻密骨部分)が挙げられる。材料となる骨質は1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 骨質の由来生物は、骨を有する生物である限り特に限定されない。具体的に、骨質の由来生物としては、例えばヒト、マウス、アカゲザル、ウサギ、若しくはラット等の哺乳類;ニワトリ等の鳥類;アフリカツメガエル等の両生類;又はゼブラフィッシュ、メダカ、若しくはトラフグ等の魚類が挙げられ、好ましくはヒト、マウス、アカゲザル、ウサギ、又はラット等の哺乳類が挙げられ、より好ましくはヒト、マウス、又はラットが挙げられ、さらに好ましくはヒトが挙げられる。骨質の由来生物は1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 骨質の原料である骨の種類は、特に限定されず、種々の種類のものを採用することができる。具体的に、骨質が由来する骨の種類としては、例えば上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、若しくは腓骨等の長骨;手根骨、若しくは足根骨等の短骨;頭頂骨、後頭骨、肋骨、若しくは胸骨等の扁平骨;又は上顎骨等の含気骨が挙げられ、好ましくは上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、又は腓骨等の長骨が挙げられ、より好ましくは大腿骨、又は脛骨が挙げられる。骨質の原料は1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 骨質は、骨髄を含有する骨を原料とする場合は、例えば骨を切断し、骨の内腔に存在する骨髄を除去することにより得ることができる。骨髄の除去は、公知の方法により行うことができる。例えば、PBSなどの緩衝液を洗浄液として、骨の内腔を洗い流すという方法が挙げられる。また、骨髄を含有しない骨を原料とする場合は、骨をそのまま骨質として用いることができる。なお、原料である骨としては、例えば骨頭置換術等の手術で取り除かれた骨頭を採用することができる。 得られた骨質は、そのまま材料として用いてもよいが、公知の方法により破砕又は粉砕してから用いる方が好ましい。破砕又は粉砕方法としては、例えば乳鉢上ですりつぶす方法や、各種破砕機又は粉砕機を用いる方法が挙げられる。 間葉系幹細胞の分離は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、材料である骨質から細胞を抽出し、抽出した細胞から、間葉系幹細胞の性質として公知の性質を指標として細胞を分離する方法が挙げられる。 細胞の抽出は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、細胞抽出に使用される公知のタンパク質分解酵素で、骨質を処理することにより行われる。この処理により、骨質中の骨基質を構成するコラーゲンなどのタンパク質が分解され、骨基質中に埋め込まれて存在する細胞が抽出される。 タンパク質分解酵素は、骨基質を構成するタンパク質を分解する活性を有する酵素であれば特に限定されない。タンパク質分解酵素としては、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、又はプロナーゼが挙げられ、好ましくはコラゲナーゼ又はディスパーゼが挙げられ、より好ましくはコラゲナーゼとディスパーゼの混合物が挙げられる。コラゲナーゼとディスパーゼの混合物としては、重量比(コラゲナーゼ重量:ディスパーゼ重量)が、例えば1.0:0.1〜10、好ましくは1.0:0.5〜4、より好ましくは1.0:1.0〜1.5である混合物が挙げられる。タンパク質分解酵素は1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 タンパク質分解酵素による処理は、公知の酵素処理方法、具体的には、例えばタンパク質分解酵素が含まれた溶媒中で、骨質(好ましくは骨質粉砕物)を反応させることにより行われる。 溶媒は、タンパク質分解酵素が失活せず、且つ細胞が変性しない限り特に限定されない。溶媒としては、例えばPBSなどの緩衝液、又はα培地等の細胞培養培地を用いることができる。 タンパク質分解酵素の濃度は、タンパク質分解酵素が活性を発揮する限り特に限定されず、タンパク質分解酵素の種類に応じて適宜設定することができる。タンパク質分解酵素の濃度としては、例えば0.1〜10 mg/mL、好ましくは1.0〜6.0 mg/mL、より好ましくは2.5〜4.0 mg/mLが挙げられる。 反応温度は、タンパク質分解酵素が失活せず、且つ細胞が変性しない限り特に限定されず、タンパク質分解酵素の種類に応じて適宜設定することができる。反応温度としては、例えば20〜50℃、好ましくは30〜40℃が挙げられる。 処理時間は、タンパク質分解酵素が活性を発揮することができる限り特に限定されない。処理時間としては、例えば0.5〜4時間、好ましくは1〜2時間が挙げられる。 なお、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等により活性が阻害されるタンパク質分解酵素(例えば下記のトリプシン等)を使用する場合は、さらにEDTAやEGTA等のキレート剤を、例えば0.5〜1.5 mMの濃度になるようにさらに加えるとよい。また、反応中は、反応溶液中の骨質が沈澱しないように、穏やかに撹拌するとよい。 抽出した細胞からの、間葉系幹細胞の公知の性質を指標とした細胞の分離は、公知の方法に従って行うことができる。 間葉系幹細胞の公知の性質としては、例えば、非特許文献1等に記載されているように、培養すると培養皿に付着し、線維芽細胞様の形態を示すことが知られている。したがって、例えば、培養皿で培養すると培養皿に付着して線維芽細胞様の形態を示すことを指標として、間葉系幹細胞を分離することができる。 間葉系幹細胞の公知の性質としては、例えば、非特許文献18〜24に記載されているように、特定の細胞表面マーカーが陽性又は陰性であること知られている。非特許文献18には、間葉系幹細胞は、接着分子(CD44、CD50、CD54、CD58、CD56、CD62L、CD106、及びCD166等)、サイトカイン受容体(CD71、CDw119、CD120a,b、CD121a,b、CD123、CD124、CD126、CD127、及びCD140a等)、インテグリンファミリー(CD29、CD49a、CD49b、CD49c、CD49e、CD49f、CD61、及びCD104等)、並びにその他のマーカー(CD9、CD73、CD90、CD105、CD146、及びCD157)等が陽性であることが記載されている。非特許文献19及び20には、マウス骨髄細胞からCD45陰性、TER119陰性、PDGFRα陽性、且つSca-1陽性である細胞を間葉系幹細胞として分離できることが記載されている。非特許文献21には、CD271が間葉系幹細胞の効率的な分離に有用であることが記載されている。非特許文献22には、CD146 (MUC18)が間葉系幹細胞の効率的な分離に有用であることが記載されている。非特許文献23には、CD271陽性且つCD56陽性であること、又はMSCA-1陽性且つCD56陽性であることを指標として、間葉系幹細胞を分離できることが記載されている。非特許文献24には、これまでES細胞マーカーと考えられていたSSEA-4が間葉系幹細胞の効率的な分離に有用であることが記載されている。したがって、これらのマーカーの陽性又は陰性を指標として、間葉系幹細胞を分離することができる。 間葉系幹細胞の公知の性質としては、例えば、血球系細胞マーカーが陰性であることが知られている。したがって、血球系細胞マーカーが陰性であることを指標の一つとしてもよい。血球系細胞マーカーとしては、血球系細胞、例えば好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、若しくはマクロファージ等の白血球、赤血球、血小板、肥満細胞、又は樹状細胞等のマーカーとして公知のマーカーである限り特に限定されない。具体的には、例えばB220、CD11b、Ly6G、TcRαβ、TcRγδ、Ter119、CD2、CD3、CD4、CD14、CD19、CD24、CD41、CD56、CD66c、CD235a、又はCD45等を挙げることができる。なお、好ましくは、マウスの場合はB220、CD11b、Ly6G、TcRαβ、TcRγδ、及びTer119全てをLineageマーカーとして用い、ヒトの場合はCD2、CD3、CD4、CD14、CD19、CD24、CD41、CD56、CD66c、及びCD235a全てをLineageマーカーとして用い得る。血球系細胞マーカーは1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 また、アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカーが陰性であることを指標にして分離することにより、抽出した細胞中のアポトーシス細胞や死細胞を予め除いてもよい。アポトーシスマーカーとしては、例えばAnnexinV、TUNEL、JC-1、cytochrome C、Rhodamine 123、又はTMRE/TMRM等が挙げられ、好ましくはAnnexinVが挙げられる。死細胞マーカーとしては、例えば7ADD、PI、又はHoechst 33258等が挙げられ、好ましくは7ADDが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 本発明の1態様として、CD271陰性であることを指標とすることが好ましく挙げられる。これを指標とすることにより、軟骨への分化能は示すが、骨への分化能は示さない間葉系幹細胞を分離することができる。本発明の別の1態様として、SSEA-4陰性且つCD271陽性であることを指標とすることが好ましく挙げられる。これを指標とすることにより、骨への分化能は示すが、軟骨への分化能は示さない間葉系幹細胞を分離することができる。 再生医療においては、例えば欠損した軟骨を再生すべく間葉系幹細胞を注入すると、軟骨に加えて骨までもが該欠損部に形成されるという危険性が問題となる。したがって、上記のように軟骨への分化能は示すが、骨への分化能は示さない間葉系幹細胞、或いは骨への分化能は示すが、軟骨への分化能は示さない間葉系幹細胞は、このような問題を解決するために非常に有用である。 上記指標は、1種又は2種以上を組み合わせて採用してもよい。 マーカーを指標とした分離は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、細胞を染色し、染色された細胞が発する蛍光量に基づき陽性又は陰性を判断し、陽性又は陰性の細胞を分取することにより行われる。具体的には、これら一連の作業は、例えば細胞分取機能を有するフローサイトメーターを用いて行うことができる。 細胞の染色は、例えばマーカーが細胞内在性のタンパク質である場合は、マーカーに対する標識抗体を用いて細胞を免疫染色することにより行うことができ、マーカーがタンパク質以外の細胞内在性因子(例えば細胞表面のフォスファチジルセリン等)に結合する非標識物(例えばAnnexinV(アポトーシスマーカー))である場合は、該マーカーを標識したものを用いて細胞を染色することにより行うことができ、マーカーがタンパク質以外の細胞内在性因子(例えばDNA等)に結合する標識物(蛍光物質)(例えば7ADD(死細胞マーカー))である場合は、該マーカーを用いて細胞を染色することにより行うことができる。 マーカーに対する標識抗体や、標識されたマーカーは、各種市販されたものを用いることができる。或いは、公知の方法に従って、マーカーに対する抗体やマーカーを細胞に結合させた後、該抗体や該マーカーに対して標識物をさらに結合させてもよい。標識物の種類としては、FITC、PE、Pacific Blue、APC、PE-Cy7、PE-Cy5、PerCP、Brilliant Violet 570、又はBrilliant Violet421が挙げられる。標識物の選択は、使用するマーカー間で、標識物の蛍光励起波長や蛍光波長のピークができるだけ重ならないものを選択する方が好ましい。 陽性又は陰性の判断は、公知の方法に従って、染色された細胞が発する蛍光量に基づいて行われる。この判断は、公知の手法に従って行うことができる。例えば、ネガティブコントロール細胞(具体的には、例えばアイソタイプコントロール抗体で染色された細胞)が発する蛍光量をバックグラウンドの蛍光量とし、バックグラウンドに対して十分に高い蛍光量を基準に、該基準よりも蛍光量が低い細胞を陰性細胞と判断し、該基準よりも蛍光量が高い細胞を陽性細胞と判断する。 陽性又は陰性の細胞の分取は、公知の方法に従って、例えば液滴荷電方式、又はセルキャプチャー方式等により行うことができる。 斯かる本発明の方法により、間葉系幹細胞を、簡便且つ効率的に分離することができ、これにより大量の間葉系幹細胞を容易に調製することができる。また、材料である骨質は通常廃棄される部分であるため、骨質を材料とした上記分離方法は、原材料コストが非常に低い点、及び原材料調達が容易である点で優れている。得られた間葉系幹細胞は、軟骨や骨などの再生医療、免疫制御、移植片対宿主病の治療、及び造血幹細胞(HSC)の支持・増幅等の多様な分野で利用することができる。 2.骨質由来間葉系幹細胞 本発明は、上記「1.間葉系幹細胞の分離方法」に記載の方法により分離された間葉系幹細胞に関する(以下、「本発明の間葉系幹細胞」と示す)。本発明の間葉系幹細胞は、骨質由来であるが故に、従来知られている骨髄や臍帯血由来の間葉系幹細胞とは性質が異なっている。したがって、本発明の間葉系幹細胞は、従来の間葉系幹細胞とは異なる新規の細胞であり、新たな研究材料として提供されるものである。 本発明の間葉系幹細胞の好ましい1態様としては、(a)骨質由来であり、(b)血球系細胞マーカー陰性であり、(c)アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカー陰性であり、且つ(d)CD271陰性である、間葉系幹細胞が挙げられる。この細胞は、軟骨への分化能は示すが、骨への分化能は示さない。したがって、例えば、軟骨組織の再生医療に有用である。 本発明の間葉系幹細胞の別の好ましい1態様としては、(a)骨質由来であり、(b)血球系細胞マーカー陰性であり、(c)アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカー陰性であり、(e)SSEA-4陰性であり、且つ(f)CD271陽性である、間葉系幹細胞が挙げられる。この細胞は、骨への分化能は示すが、軟骨への分化能は示さない。したがって、例えば、骨組織の再生医療に有用である。 以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 実施例1:マウス骨質由来間葉系幹細胞の分離 骨髄由来間葉系幹細胞を分離する指標として既に知られている、Lineage及びCD45が陰性であり且つSca-1及びPDGFRαが陽性であるという指標(非特許文献19及び20)に基づき、マウス骨質を材料として間葉系幹細胞を分離した。具体的には次のように行った。 [細胞液の調製] 3匹の8週齢雌C57BL/6マウスより、合計6本の脛骨(tibia)を採取した。脛骨の骨端を切除し、脛骨内腔に存在する骨髄を、PBS+2%FCSで洗い流した。骨髄が除去された骨質部分を乳鉢で粉砕し、得られた粉砕物をPBS+2%FCSで洗浄した。洗浄後に残った粉砕物をビーカーに入れ、該粉砕物が十分に浸る程度にcollagenase-dispase液を加えた。該ビーカーを37℃の恒温器中の振盪プレート上におき、ビーカー内の液を穏やかに撹拌しながら1時間処理した。得られた処理液を細胞液とした。なお、上記調製で用いるcollagenase-dispase液(計20 ml)は、PBSを用いてCollagenase type I(Invitrogen社)溶液(10 mg/ml)、及びDispase(Invitrogen社)溶液(10 mg/ml)をそれぞれ別々に調製した後、millipore filterで滅菌し、滅菌済みCollagenase溶液3 mlと滅菌済みDispase溶液4 mlとを混合し、さらに20%FCSを含むα培地13 mlを混合して調製した。 [免疫染色] 細胞液中の細胞等を、FITC標識されたLineageマーカー(B220、CD11b、Ly6G、TcRαβ、TcRγδ、Ter119)抗体、PE標識されたCD45抗体、Pacific Blue標識されたSca-1抗体、APC標識されたPDGFRα抗体、7ADD、及びFITC標識されたAnnexinVを用いて、定法に従って免疫染色した。 [FACS解析] FACS(FACS Aria(BD Bioscience))により、細胞等が免疫染色された細胞液から、Lineage及びCD45が陰性であり、且つSca-1及びPDGFRαが陽性である細胞を間葉系幹細胞として分離した。なお、陽性であるか陰性であるかの境界の設定は、定法に従って行った。FACSによる分離結果を図1に示す。 比較例1:マウス骨髄由来間葉系幹細胞の分離 細胞液として、実施例1の[細胞液の調製]において除去された骨髄を用いた以外は、実施例1と同様に行った。FACSによる分離結果を図2に示す。 実施例2:ヒト骨質由来間葉系幹細胞の分離 ヒト骨質を材料として、間葉系幹細胞を分離した。具体的には次のように行った。 [細胞液の調製] 関西医科大学倫理委員会の承認(関医倫第1114号)の下に、大腿骨の人工骨頭置換術の際に切除された大腿骨骨端部の骨皮質ブロック(1〜2cm角)の提供を受けた。なお、該人工骨頭置換術の患者より文書による同意を得た。骨皮質ブロックを、生理食塩水で数回洗浄した後、collagenase-dispase-DNase液中に分散し、37℃で1時間震盪処理した。震盪処理後、骨皮質ブロックはスポンジ状となり、骨皮質細胞浮遊液が得られた。その後、70μmのセルストレーナーを通して骨片や細胞集塊を除去した。さらに溶血操作を行って赤血球を除去し、骨質由来細胞液を得た。 [免疫染色] 得られた細胞液中の細胞等を、FITC標識されたLineageマーカー(CD2、CD3、CD4、CD14、CD16、CD19、CD24、CD41、CD56、CD66c、CD235a)抗体、BV510標識されたCD45抗体、PE標識されたCD271抗体、APC標識されたSSEA-4抗体、7-AAD、及びFITC標識されたAnnexinVを用いて、定法に従って免疫染色した。 [FACS解析] FACSを用いて、細胞等が免疫染色された細胞液から、FSC/SSCゲートでdoubletを除去した。さらに7-ADD(死細胞マーカー)、AnnexinV(アポトーシスマーカー)、Lineage(血球系細胞マーカー)、及びCD45(血球系細胞マーカー)陰性である細胞を分取した。これを、さらに4つ(SSEA-4陰性且つCD271陰性である分画(DN(Double Negative))、SSEA-4陽性且つCD271陰性である分画(SSEA-4 SP(Single Positive))、SSEA-4陰性且つCD271陽性である分画(CD271 SP(Single Positive))、及びSSEA-4陽性且つCD271陽性である分画(DP(Double Positive)))に亜分画した。FACSによる分画結果を図3に示す。 [CFU-Fアッセイ] FACSにより得られた4つの分画の細胞を培地(10%FCS含有α-MEM)に懸濁し、該細胞懸濁液を10 cm2プラスチックディッシュに播種して、定法に従って培養した。培養開始から12日後に、間葉系幹細胞の有無の指標となるCFU-F形成の有無を、倒立位相差顕微鏡で観察した。CFU-Fアッセイの結果を図4に示す。 [細胞の大きさの測定] FACSにより得られた4つの分画の細胞それぞれについて、細胞の大きさを示す前方散乱光(FSC)を測定した。前方散乱光の測定結果を図5に示す。 [結果] 図3より、各々の分画細胞の割合は、DP分画が6.9%、CD271 SP分画が14.8%、SSEA-4 SP分画が2.5%、DN分画が61.5%であった。図4より、4つの分画全て、CFU-Fを形成することが確認された。このことから、4つの分画全てに間葉系幹細胞が含まれていることが示された。図5より、細胞の大きさの分布のパターンを見ると、4つの分画は、FSC250〜600付近で同様のピークを示すものの、FSC800〜2000付近では分布のパターンが異なっていた。 比較例2:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の分離 ヒト骨髄を材料として、間葉系幹細胞を分離した。具体的には次のように行った。 [細胞液の調製] 血縁者間同種骨髄移植又は非血縁者間同種骨髄移植に際して、通常は廃棄されるフィルターバッグに残存する細胞を回収し、PBS-を用いて数回洗浄した。洗浄後の細胞から、Ficoll-Paque比重遠心法により単核球分画を回収した。回収した単核球分画から、免疫磁気ビーズでlineage陽性細胞を除去したものを細胞液とした。なお、血縁者間同種骨髄移植のフィルターバッグの使用については、関西医科大学倫理委員会の承認(関医倫第611号)を得た上で、該骨随移植の健常人ドナーより文書による同意を得た。また、非血縁者間同種骨髄移植のフィルターバッグの使用については、財団法人骨髄移植推進財団データ・試料管理委員会の承認(平成18年12月19日)を得て、該骨髄移植の健常人ドナーより文書による同意を得た。 [FACS解析] 細胞液を、実施例2と同様に、4つ(SSEA-4陰性且つCD271陰性である分画(DN(Double Negative))、SSEA-4陽性且つCD271陰性である分画(SSEA-4 SP(Single Positive))、SSEA-4陰性且つCD271陽性である分画(CD271 SP(Single Positive))、及びSSEA-4陽性且つCD271陽性である分画(DP(Double Positive)))に亜分画した。分画は、細胞液を変えて複数回行った。FACSによる分画結果の1つを図6に示す。 [間葉系幹細胞樹立試験] FACSにより得られた4つの分画の細胞を培地(10%FCS含有α-MEM)に懸濁し、該細胞懸濁液を10 cm2プラスチックディッシュに播種して、定法に従って培養を開始した。培養開始後、ディッシュ上の細胞がコンフルエントになったらその一部を新たなディッシュに継代するという工程を繰り返した。4継代目(培養開始から約1ヶ月)に、細胞の増殖の有無、及び細胞形態を観察し、間葉系幹細胞が樹立できたか否かを評価した。細胞形態の観察結果を図7に示す。 [結果] FACS解析の結果、細胞液の細胞数に対する各分画の細胞数の割合は、DP分画が0.1〜3.1%、CD271 SP分画が0.1〜6.8%、SSEA-4 SP分画が3.3〜42.5%、DN分画が50.7〜93.4%であった。また、図7に示されるように、SSEA-4 SP分画以外の3分画(DN、CD271 SP、DP)で間葉系幹細胞の樹立に成功した。 比較例3:マウス骨質由来微小幹細胞の分離 実施例1の[FACS解析]において、Lineage(血球系細胞マーカー)、CD45(血球系細胞マーカー)、及びPDGFRα(幹細胞マーカー)が陰性であり、且つSca-1が陽性である細胞を微小幹細胞として分離した。 試験例1:骨質由来間葉系幹細胞の分離効率 骨質から間葉系幹細胞を分離する場合(実施例1)と、骨髄から間葉系幹細胞を分離する場合(比較例1)とで、分離効率(細胞液中の細胞1×106当たりの、間葉系幹細胞の数)を比較した。比較結果を図8に示す。図8より、骨髄よりも骨質を材料とする方が約1000倍も効率的に間葉系幹細胞を分離できることが示された。 試験例2:骨質由来間葉系幹細胞の大きさ 骨質由来間葉系幹細胞(実施例1)と、骨質由来微小幹細胞(比較例3)とで、細胞の大きさを比較した。具体的には、細胞の大きさを示す前方散乱光(FSC)を測定して、該測定値を比較した。比較結果を図9に示す。図9中、aが骨質由来間葉系幹細胞の大きさの分布を示し、bが骨質由来微小幹細胞の大きさの分布を示す。図9より、両細胞のピークは大きく異なり(間葉系幹細胞:FSC 550付近、微小幹細胞:FSC 50付近)、また分布パターンも異なることから、両者は明確に区別される異なる細胞であることが示唆された。 試験例3:骨質由来間葉系幹細胞の増殖特性 骨質由来間葉系幹細胞(実施例1)と、骨質由来微小幹細胞(比較例3)とで、増殖特性を比較した。具体的には、それぞれの細胞を培地(20%FCS含有α‐MEM)中で2週間、定法に従って培養した。培養中の細胞を倒立位相差顕微鏡で観察した。観察結果を図10に示す。間葉系幹細胞(MSCs)は分裂増殖してクラスターを形成した。さらに、脂肪滴の蓄積も観察された。一方、骨質由来微小幹細胞は分裂・増殖が観察されなかった。このように、両細胞は増殖特性が異なることから、明確に区別される異なる細胞であることが示唆された。 試験例4:骨質由来間葉系幹細胞の分化能の解析 骨質由来間葉系幹細胞(実施例2)及び骨髄由来間葉系幹細胞(比較例2)について、骨、脂肪、及び軟骨細胞への分化能を解析した。具体的には次の様に行った。 [骨質由来間葉系幹細胞の分化能の解析] 骨質由来間葉系幹細胞の4つの分画(DP、CD271 SP、SSEA-4 SP分画、及びDN分画)それぞれを、骨分化誘導キット、脂肪分化誘導キット、又は軟骨分化誘導キット(いずれもR & D社、Mesenchymal Stem Cell Functional Identification Kit)で分化誘導させ、誘導から21日目の細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。骨分化誘導させたサンプルについては、4%PFAで固定したサンプルを、定法に従ってアルカリ性ホスファターゼ染色し、染色像を観察した(CKX41, オリンパス社)(図11)。脂肪分化誘導させたサンプルについては、4%PFAで固定したサンプルを、定法に従ってズダンII染色(Oil Red O染色)し、染色像を観察した(CKX41, オリンパス社)(図12)。軟骨分化誘導させたサンプルについては、4%PFAで固定した細胞塊から凍結切片を作成し、該切片を定法に従ってAlcian Blueにより染色し、染色像を観察した(CKX41, オリンパス社)(図13)。 [骨質由来間葉系幹細胞の分化能の解析結果] 図11〜13に示すように、全骨質細胞(whole bone)由来有核細胞より樹立した間葉系幹細胞は、骨、脂肪、及び軟骨の3系統の細胞に分化誘導可能であった。DP分画の間葉系幹細胞は、対照と同様に、骨、脂肪、及び軟骨の3系統の細胞に分化誘導可能であった。一方、DN分画の間葉系幹細胞は、脂肪、及び軟骨の2系統の細胞に分化誘導可能であったが、骨への分化誘導はできなかった。同様に、SSEA-4 SP分画の間葉系幹細胞も、脂肪、及び軟骨の2系統の細胞に分化誘導可能であったが、骨への分化誘導はできなかった。CD271 SP分画の間葉系幹細胞は、骨、及び脂肪の2系統の細胞に分化誘導可能であったが、軟骨への分化誘導はできなかった。各分画の間葉系幹細胞が分化する組織を表1にまとめる。以上より、骨質由来の細胞液を、SSEA-4及びCD271を指標として分画することにより、特定の組織にのみ分化する(或いは特定の組織に分化しない)間葉系幹細胞を分離できることが示唆された。 [骨髄由来間葉系幹細胞の分化能の解析] 骨髄由来間葉系幹細胞の4つの分画(DP、CD271 SP、SSEA-4 SP分画、及びDN分画)それぞれを、骨分化誘導キット、脂肪分化誘導キット、又は軟骨分化誘導キット(いずれもR & D社、Mesenchymal Stem Cell Functional Identification Kit)で分化誘導させ、誘導から21日目に細胞を4%PFAで固定した。骨分化誘導させたサンプルについては、4%PFAで固定したサンプルを、一次抗体として抗osteocalcin抗体(骨分化誘導キットに添付)を用いて免疫染色し、染色像を蛍光顕微鏡(BX50、オリンパス社)で観察した。脂肪分化誘導させたサンプルについては、4%PFAで固定したサンプルを、一次抗体として抗FABP-4抗体(脂肪分化誘導キットに添付)を用いて免疫染色し、染色像を蛍光顕微鏡(BX50、オリンパス社)で観察した。軟骨分化誘導させたサンプルについては、4%PFAで固定した細胞塊から凍結切片を作成し、該切片を、一次抗体として抗Aggrecan抗体(軟骨分化誘導キットに添付)を用いて免疫染色し、染色像を蛍光顕微鏡(BX50、オリンパス社)で観察した。観察像を図14に示す。 [骨髄由来間葉系幹細胞の分化能の解析結果] 図14に示すように、DP分画以外の間葉系幹細胞は、骨、脂肪、及び軟骨の3系統の細胞に分化誘導可能であった。一方、DP分画の間葉系幹細胞は、骨、及び軟骨の3系統の細胞に分化誘導可能であったが、脂肪への分化誘導はできなかった。骨質を材料として間葉系幹細胞を分離することを特徴とする、間葉系幹細胞の分離方法。CD271陰性であることを指標として間葉系幹細胞を分離する、請求項1に記載の分離方法。SSEA-4陰性且つCD271陽性であることを指標として間葉系幹細胞を分離する、請求項1に記載の分離方法。さらに、血球系細胞マーカー陰性、アポトーシスマーカー陰性、及び死細胞マーカー陰性よりなる群から選択される少なくとも1種を指標として間葉系幹細胞を分離する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。請求項1〜4のいずれかに記載の分離方法によって分離された間葉系幹細胞。(a)骨質由来であり、(b)血球系細胞マーカー陰性であり、(c)アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカー陰性であり、且つ(d)CD271陰性である、間葉系幹細胞。(a)骨質由来であり、(b)血球系細胞マーカー陰性であり、(c)アポトーシスマーカー及び/又は死細胞マーカー陰性であり、(e)SSEA-4陰性であり、且つ(f)CD271陽性である、間葉系幹細胞。 【課題】簡便且つ効率的に間葉系幹細胞を分離する方法を提供すること。【解決手段】骨質を材料として間葉系幹細胞を分離することを特徴とする、間葉系幹細胞の分離方法。【選択図】なし


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