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タイトル:公開特許公報(A)_電気化学測定用ディスク電極の製作方法
出願番号:2013165078
年次:2015
IPC分類:G01N 27/30,H01M 4/88,H01M 8/04,H01M 8/10


特許情報キャッシュ

五十嵐 寛 中村 葉子 JP 2015034729 公開特許公報(A) 20150219 2013165078 20130808 電気化学測定用ディスク電極の製作方法 エヌ・イーケムキャット株式会社 000228198 牛木 護 100080089 五十嵐 寛 中村 葉子 G01N 27/30 20060101AFI20150123BHJP H01M 4/88 20060101ALI20150123BHJP H01M 8/04 20060101ALN20150123BHJP H01M 8/10 20060101ALN20150123BHJP JPG01N27/30 ZG01N27/30 BH01M4/88 KH01M8/04 ZH01M8/10 9 1 OL 19 5H018 5H026 5H027 5H018AA06 5H018AS01 5H018BB06 5H018BB08 5H018BB12 5H018HH00 5H018HH05 5H018HH08 5H018HH10 5H026AA06 5H027AA06 本発明は、電気化学測定用ディスク電極の製作方法に関する。更に詳しくは、触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを含有し、かつ一価アルコールを含まない触媒インクを用いた電気化学測定用ディスク電極の製作方法に関する。 いわゆる固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte FuelCell(以下、「PEFC」)は、動作温度が低温であること、軽量化が可能であること、発電のロスを少なくすることができること等の多くの利点を有している。このため、PEFCは、燃料電池自動車や家庭用コジェネレーションシステム等への応用が可能となっている。PEFCを広く普及させるためには、PEFCが高い発電能力を備えることが重要であり、その発電能力を生起させる電極触媒(電極上に薄層状に形成して使用される触媒)の触媒活性を精密に評価することが必要となる。 触媒活性評価は、固定電極法、回転電極法、チャンネルフロー電極法等の試験方法により得られるサイクリックボルタンメトリー(以下、「CV」)測定の結果に基づいて評価することができる。そして、触媒活性評価は、CV測定の結果から得られたサイクリックボルタモグラムを取得し、このサイクリックボルタモグラムの波形から酸化還元開始電位を測定することにより行われる。 回転電極法は、電極への反応物質の供給速度を制御することができることから、電気化学反応の解析に一般的に採用されている。回転電極法は、反応物質を溶解させた電解質溶液中において、電極を回転させることによって、反応物質を電極に供給し、電極表面で起こる化学反応により発生する電流値に基づいて、化学反応速度を測定する。回転電極の表面に触媒層を形成して測定した場合には、その触媒が関与する化学反応の速度すなわち触媒活性評価を行うことができる(例えば、非特許文献1)。 回転電極法の一つである回転ディスク電極法(以下、「RDE法」)は、触媒電極の形状をディスク形状とした回転ディスク電極を採用する。RDE法は、回転ディスク電極を回転させることによって、電解質溶液内に薄い拡散層を発生させる。RDE法は、薄い拡散層の存在により、電解質溶液における反応物質の移動を回転ディスク電極の回転速度によって規制することによって、良好な電流−電位曲線を得ることができる。 例えば、ガラス状炭素(グラッシーカーボン:GC)製の回転ディスク電極を用い、この回転ディスク電極の表面に触媒層を形成させた回転ディスク電極を作製する。この回転ディスク電極を回転させることにより、電解質溶液に含まれる反応物質が回転ディスク電極の表面に形成された触媒層に供給される。触媒層にて生起する反応物質の電極反応による反応速度が電流値として測定される。かかる電流値から触媒反応の速度を算出することにより、触媒活性評価を行うことができる。 また、回転電極法の一つである回転リングディスク電極法(以下、「RRDE法」)は、ディスク形状を有する回転ディスク電極と、この回転ディスク電極の周りに同心円状にリング形状のリング電極を備えた回転リングディスク電極を採用する。RRDE法は、ディスク電極で生成した反応物質又は生成物をリング電極にて酸化又は還元して検出することができる。 RDE法及びRRDE法のいずれの方法においても、より精度の高い触媒活性評価を行うためには、ディスク電極の表面に形成された触媒層がディスク電極の表面全体を被覆し、その厚さが均一であり、かつ平滑であることが必要となる。 ディスク電極の表面全体が触媒層によって被覆されていないディスク電極を使用した場合には、すなわちディスク電極の表面に触媒層が分布していない部分が存在する。触媒の機能は電解質溶液中の反応物質による電極反応を励起促進せしめるものであるから、ディスク電極の表面に触媒層が分布していない部分においては、電極反応が起こらない場合や目的とする電極反応とは異なる反応が起こる場合が生じる。このため、ディスク電極の表面全体が触媒層によって被覆されていないディスク電極を使用した場合には、電極が本来有する触媒活性を精密に評価することができないという不都合がある。 また、ディスク電極の表面に形成された触媒層が平滑でない場合には、電解質溶液中の反応物質が触媒層表面に到達するまでの距離が一定でなく、すなわち単位時間あたりに触媒層に供給される反応物質の量が一定とならない。このため、反応物質の供給に依拠する電流値が変動し、ここから算出される電極反応速度も変動するという問題点がある。 さらに、ディスク電極の表面に形成された触媒層の厚さが均一でない場合は、触媒層が厚い部分は、触媒層自体の電気抵抗による測定電流の低下による測定誤差を生じる。また、触媒層の底部に存在する触媒粒子が反応物質と接触せず電極反応に全く関与しないこととなる。つまり、ディスク電極の上に形成された触媒層の表面層のみが電極反応に関与することとなり、単位触媒量当たりの活性が見かけ上、低く算出されてしまうという問題点が生じる。 ディスク電極の表面に触媒層を形成する方法は、非特許文献1(III−2−4 電極作製方法)に示されている方法が通常使用される。ここでは、触媒粉末を一価アルコールの水溶液に分散した後バインダーである固体電解質分散液を加えて調整した触媒インクをディスク電極上に滴下して恒温槽(60℃)内で15分程度乾燥することにより、ディスク電極の表面に触媒層を形成する。 また、気相プロセスによりバインダーを用いることなく触媒層を形成する電気化学測定用電極の製作方法が提案されている(例えば、特許文献1)。さらに、電極触媒、導電材、及びアニオン交換樹脂を含む組成物をディスク電極の表面に層状に形成して触媒層として用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。なお、本件特許出願人は、上記公知発明が記載された刊行物として、以下の刊行物を提示する。「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案」平成23年1月 燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)発行 資料特開2005−292097号公報特開2011−216247号公報 しかしながら、非特許文献1に示される方法においては、触媒インク調整過程でそこに含まれる一価アルコールと触媒粒子中の活性金属とが接触することにより発熱し、触媒粒子の凝集を促進する。また、昇温環境下で比較的短時間のうちに触媒インクを乾燥させる過程で液滴の凝集が起こる。これらの結果、触媒粒子の粒径や触媒層の厚さならびに触媒粒子の分布が不均一になり、触媒層表面の平滑さが損なわれたり触媒層に被覆されない部分を生じせしめる。一方、特許文献1に記載された電気化学測定用電極の製作方法では、気相堆積プロセスによりバインダーを含有しない触媒層を形成し触媒層の膜抵抗や過電圧を除去することはできるものの、触媒層と電極基材の間に十分に高い密着力を安定して確保することが難しく、測定途中での触媒層の剥離による反応面積の変化のため触媒の活性を精度よく再現性をもって測定するという目的が達せられない。また、特許文献2に記載された電解質材料は、触媒インク調製過程で一価アルコールを添加するため触媒粒子の凝集を抑える効果はなく、さらに、バインダーとしてアニオン交換樹脂電解質を使用するため、工業的に広く実用されている水素イオン伝導性(すなわち、カチオン交換樹脂)電解質を使用したPEFCとは異なる原理に基づく電極反応を測定することとなり、実用性能の指標として触媒活性を測定するという本来の目的を達せられない。 本発明は、かかる技術的事情に鑑みてなされたものであって、ディスク電極の表面全体を被覆し、均一かつ平滑な触媒層を形成させた電気化学測定用ディスク電極の製作方法を提供することを課題とする。また、本発明は、上記電気化学測定用ディスク電極の製作方法により、得られた電気化学測定用ディスク電極及び上記電気化学測定用ディスク電極を備えた電気化学測定装置を提供することを課題とする。 本件発明者等は、鋭意検討を行った結果、電気化学測定用ディスク電極の表面に触媒層を形成するために使用する触媒インクとして、触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを含有し、かつ一価アルコールを含まない触媒インクを採用することにより、触媒活性をきわめて精度良く評価することができるディスク電極を製作できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下の技術的事項から構成される。 (1) 電気化学測定用ディスク電極の製作方法であって、 (i)活性金属が担体に担持されてなる触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを含有し、一価アルコールを含まない触媒インクを調製する工程と、 (ii) 前記触媒インクをディスク電極表面上に滴下し、触媒インクからなる塗布層を形成する工程と、 (iii)前記触媒インクからなる塗布層を10〜30℃にて乾燥する工程と、を備えたことを特徴とする電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (2) 前記超純水の比抵抗Rが以下の一般式で表され、 前記比抵抗が3.0MΩ・cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。上記一般式において、Rは比抵抗を表し、ρはJIS規格試験法(JIS K0552)により測定される電気伝導率を表す。 (3) 前記触媒インクを調製する工程(i)は、 (ia) 前記触媒粒子と前記超純水とを混合して触媒粒子スラリーを調製し、 (ib) 前記水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを混合した水素イオン伝導性高分子電解質水溶液をあらかじめ調製し、 (ic) 前記水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を前記触媒粒子スラリーに添加して調製することを特徴とする(1)又は(2)に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (4) 前記工程(ia)で得られた前記触媒粒子スラリーに、 前記工程(ib)で得られた前記水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を1.0〜10.0ml/分の添加速度にて添加して、 前記触媒粒子が均一に分散された触媒インクを調製することを特徴とする(3)に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (5) 前記触媒粒子が、前記触媒インク100重量部に対して、0.05〜1.0重量部含有されていることを特徴とする(1)〜(4)いずれか1に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (6) 前記触媒インクからなる塗布層を乾燥させる工程は、温度を10〜30℃、かつ湿度を20〜80%RHに設定して行うことを特徴とする(1)〜(5)いずれか1に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (7) 前記触媒インクからなる塗布層を乾燥させる工程(iii)を2〜6時間行うことを特徴とする(1)〜(6)いずれか1に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (8) 前記電気化学測定用ディスク電極が回転ディスク電極であることを特徴とする(1)〜(7)いずれか1に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 (9) (1)〜(8)いずれか1に記載された製作方法により得られた電気化学測定用ディスク電極。 本発明によれば、ディスク電極の表面に形成された触媒層がディスク電極の表面全体を被覆し、触媒層の厚さが均一、かつ平滑であって、触媒層中の触媒粒子成分が均一に分散された電気化学測定用ディスク電極の製作方法が提供される。また、本発明によれば、PEFC等の触媒が本来有する触媒活性を精度良く測定することができる電気化学測定用ディスク電極の製作方法が提供される。電気化学測定用ディスク電極の製作方法の各工程を示したフローチャートである。回転ディスク電極の界面における触媒粒子の状態を示したイメージ図である 。回転ディスク電極を備えた回転ディスク電極測定装置の概略図である。比較例1に対する実施例1の回転ディスク電極の質量活性相対値(%)をグラフ化した図である。比較例2に対する実施例3の回転ディスク電極の質量活性相対値(%)をグラフ化した図である。<電気化学測定用ディスク電極の製作方法> 本発明の電気化学測定用ディスク電極の製作方法は、触媒インクを調製する工程と、当該触媒インクからなる塗布層を形成する工程と、当該触媒インクからなる塗布層を乾燥する工程とを備えている。図1に電気化学測定用ディスク電極の製作方法の各工程を示したフローチャートを示す。以下、各工程について詳細に説明する。(触媒インクを調製する工程(i)) 触媒インクを調製する工程は、触媒インクの触媒成分である触媒粒子と、水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを混合し、分散させて、これらの各成分が均一に分散された触媒インクを調製する工程である。[触媒粒子] 触媒粒子は、活性金属と担体をその成分とし、活性金属が担体に担持されることによって形成されている。触媒種、すなわち活性金属と担体は、目的とする電極反応に適したものを適宜採択することができ、特に制限されるものではない。例えば、PEFCの電極反応を測定する場合には、活性金属は、固体高分子形燃料電池の負極における水素ガスの酸化反応、及びその正極における酸素ガスの還元反応を十分に行うことができる金属を用いることができる。 一般的に触媒能を有する活性金属としては、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、又はこれらのいずれかの金属を組み合わせからなる合金を例示することができる。 活性金属の担持率は、目的とする電極反応の励起促進に適した担持率を採択すればよく、例えば、触媒粒子の重量全体に対して5〜80重量%であってもよい。 触媒粒子を構成する担体としては、活性金属との吸着性及び担体の表面積の観点から、例えば、グラッシーカーボン(GC)、ファインカーボン、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素系材料や酸化物等のガラス系あるいはセラミックス系材料などから適宜採択することができる。 触媒粒子は、含浸法や液相還元法、電気化学的析出反応等の公知の方法により、活性金属を担体に担持させることにより製作される。 触媒インクは、超純水を含有する。一般的には、超純水とは、きわめて純度の高く、有機物不純物を含有しない純水を意味する。本発明において、触媒インクに含有される超純水は、以下の一般式で表される比抵抗R(JIS規格試験法(JIS K0552)により測定される電気伝導率の逆数)が3.0MΩ・cm以上であることが好ましい。上記一般式において、Rは比抵抗を表し、ρはJIS規格試験法(JIS K0552)により測定される電気伝導率を表す。 比抵抗Rが3.0MΩ・cmに満たない純水を使用すると純水中に含まれる不純物が電極反応に関与することによる電流値が合わせて測定されるため、電極反応の本来の反応速度を精度よく測定できない。 比抵抗Rが高いほど不純物が少ないので好ましいが、3.0MΩ・cm以上20.0MΩ・cm以下であれば実用的に製造可能な範囲の比抵抗値を有する超純水を使用できる。このような触媒インクの調製に適した超純水は、例えばメルク株式会社メルクミリポア事業本部が販売する超純水製造装置「Milli-Qシリーズ」により製造できるが、これに限定されない。 通常、燃料電池用触媒インクには、担体との湿潤性や水素イオン伝導性高分子電解質との相溶性を向上させるためにエチルアルコール等の一価アルコールをその成分として含有させることが多い。しかしながら、一価アルコールを含有する場合には、触媒インク調製過程での触媒粒子や超純水との混合分散工程において、あるいはディスク電極形成過程での触媒インクの塗布や触媒インクからなる塗布層の乾燥工程において、一価アルコールと活性金属とが接触することにより発熱し、触媒粒子の凝集を促進する。触媒粒子が凝集して粗大化し、凝集体の表面に位置する触媒粒子だけが電気化学測定の対象となり、その結果、ディスク電極中に存在する活性金属が有する本来の触媒活性を正確に評価することができない。[水素イオン伝導性高分子電解質] 触媒インクは、触媒粒子を分散させ、ディスク電極の触媒層とディスク電極基材との密着性を高めるためバインダー成分として、水素イオン導電性高分子電解質を含有する。触媒インクに含まれるバインダーは、触媒粒子を固着する機能があればよいが、本来の電極反応を阻害せず、また本来の目的とは異なる電極反応が生起することを回避するためには、水素イオン伝導性を備えていることが望ましい。また、触媒活性を正確に評価するためには測定中に触媒粒子が電極基材から剥離落下しないことが必要であるので、バインダーが触媒粒子の間にできるだけ均一に分散して存在することが望ましい。 水素イオン伝導性高分子電解質は、特に制限されるものではないが、公知のスルホン酸基、カルボン酸基を有するパーフルオロカーボン樹脂を例示することができる。容易に入手可能な水素イオン伝導性高分子電解質としては、ナフィオン(登録商標)を例示することができる。 水素イオン伝導性高分子電解質を具体的に例示すると、10%ナフィオン(登録商標)分散溶液DE1021CS type((株)ワコーケミカル製)、10%ナフィオン(登録商標)分散溶液DE1020 type((株)ワコーケミカル製)が挙げられる。 触媒インクは、上記説明した触媒粒子、超純水及び水素イオン伝導高分子電解質を混合し、粉砕、撹拌することにより調製することができる。触媒インクの調製は、超音波分散機、ボールミル分散機等の粉砕混合機を使用して行うことができる。超音波分散機を操作する際の粉砕条件及び撹拌条件は、触媒インクの態様に応じて適宜設定することができる。 触媒インクに含まれる触媒粒子、超純水、水素イオン伝導性高分子電解質の各成分の組成は、触媒粒子の分散状態が良好であり、ディスク電極の触媒層がディスク電極の表面全体を被覆し、均一かつ平滑な触媒層を形成させるように適宜設定することが必要である。 各成分の組成は、触媒粒子1重量部に対し、水素イオン伝導性高分子電解質0.03〜0.30重量部、超純水300〜1000重量部とすることが好ましい。さらに好ましくは、触媒粒子1重量部に対し水素イオン伝導性高分子電解質0.05〜0.10重量部、超純水500〜800重量部であることが好ましい。 各成分の組成が上記範囲内にあるとディスク電極の触媒インク層を形成する触媒インクからなる塗布膜が成膜時にディスク電極上で広がりすぎないため好ましく、上記触媒インクからなる塗布膜がディスク電極の表面全体を被覆し、平滑かつ均一な厚さの塗布膜を形成することができるため好ましい。なお、水素イオン伝導性高分子電解質の重量は乾燥状態の重量であり、超純水の重量は水素イオン電導性高分子電解質溶液中に含まれる超純水を含む重量である。 また、触媒インクを調製する工程(i)は、ディスク電極の表面全体を被覆し触媒粒子の分散状態が良好であり均一かつ平滑な触媒層を形成させる触媒インクを調製することができればよく、その調製工程は特に制限されるものではない。 例えば、触媒インクを調製する工程(i)を、さらに工程(ia)前記触媒粒子と前記超純水とを混合して触媒粒子スラリーを調製し、工程(ib)前記水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを混合した水素イオン伝導性高分子電解質水溶液をあらかじめ調製し、工程(ic)前記水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を前記触媒粒子スラリーに添加して調製する各工程から構成されていてもよい。 すなわち、工程(ia)において、触媒粒子と超純水からなる触媒スラリーを調製する。工程(ia)において調製した触媒スラリーとは別に、工程(ib)において、水素イオン伝導性高分子電解質と超純水からなる水素イオン伝導性高分子電解質水溶液をあらかじめ調製する。そして、工程(ic)は、工程(ib)において調製した水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を工程(ia)において調製した触媒スラリーに添加することによって、触媒インクを調製する。このように触媒インクを調製する工程(i)を工程(ia)〜(ic)からなる各工程に分けることによって、触媒インク中の触媒粒子の分散状態が良好になり、ディスク電極の触媒インク層に適した触媒インクを調製することができる。 さらに、工程(ia)で得られた触媒粒子スラリーに工程(ib)で得られた水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を一定の添加速度にて添加することも効果的である。触媒粒子スラリーに水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を一定の添加速度にて添加することにより、触媒インク中の触媒粒子との水素イオン伝導性高分子電解質の分散状態が良好に保持されつつ、触媒インクを調製することができるからである。具体的には、1.0〜10.0ml/分の添加速度にて添加して触媒インクを調製することが好ましい。添加速度が上記範囲にあると、触媒インク中の触媒粒子の分散状態が保持されつつ、ディスク電極上に触媒インクからなる塗布膜が均一に形成されるため好ましい。(触媒インクからなる塗布層を形成する工程 (ii)) 触媒インクからなる塗布層を形成する工程は、上記工程(i)にて調製した触媒インクの適当量を分取してディスク電極表面に滴下して、触媒インクからなる塗布層を形成するステップである。 触媒インクをディスク電極の表面に滴下する方法は、一定の滴下速度にて、工程(i)にて調製した一定量の触媒インクをディスク電極上に滴下することができれば、特に制限されるものではない。手動ピペット、電動ピペット、電子制御等により滴下できる滴下装置であってもよい。また、触媒インクの滴下量に応じて、ピペット等滴下装置の種類や容量を適宜選択できる。ディスク電極上に所定の触媒インクを滴下し、触媒インクからなる塗布層が形成された状態にて、静置する。 なお、触媒インクからなる塗布層を形成する工程は、触媒インク中の触媒粒子の分散状態をできるだけ良好に保持しつつ行うことが好ましい。このためには例えば、触媒インクをピペット等滴下装置に分取する作業において、触媒インク容器を超音波振動装置に設置して超音波照射により触媒インクが分散している状態を保持した状態でピペット等滴下装置に触媒インクを分取することが好ましい。(触媒インク層を乾燥する工程(iii)) 触媒インク層を乾燥する工程(iii)は、上記触媒インクからなる塗布層を乾燥させて、ディスク電極上に触媒インク層を形成させる工程である。 触媒インク層を乾燥する工程(iii)においては、触媒インクが触媒粒子、超純水、水素イオン伝導性高分子電解質を含んだ触媒インクを採用しているので、ディスク電極上の触媒インクからなる塗布膜が乾燥する際にも、一価アルコールと触媒粒子が接触することによる触媒粒子の凝集が起こらない。このため、ディスク電極上の表面全体を被覆し、均一かつ平滑な触媒インクからなる塗布層を形成することができる。 触媒インク層を乾燥する工程(iii)は、触媒インクからなる塗布膜の乾燥条件である乾燥温度、乾燥時間、湿度を設定することにより行われる。触媒インク層を乾燥する工程(iii)において、乾燥温度は、10〜30℃にて行う。すなわち、触媒インク層を乾燥する工程(iii)は、触媒インクからなる塗布膜の乾燥を室温の範囲にて乾燥を行うことができる。例えば、空調管理がされている室内であれば、乾燥温度は、20〜25℃である。乾燥温度が10℃より低いと、触媒インクの溶媒である水分が塗布膜から蒸発揮散する速度が遅いため実用上好ましくない。一方、30℃以上であると、触媒インク中の水分が塗布膜から揮散する速度が速いために水分の蒸発揮散に連れて触媒粒子が凝集する傾向が強くなり、その結果、触媒粒子の粗大化や触媒粒子の凝集が起こるため好ましくない。かかる乾燥温度は、従来技術であるディスク電極の製作方法における触媒インク層からなる塗布層の乾燥温度である60℃よりもはるかに低い温度となっている。 また、触媒インク層を乾燥する工程(iii)において、その湿度は、20〜80%RHにて行う。湿度は、触媒インクからなる塗布膜の乾燥速度に影響する。湿度が上記範囲内であれば、ディスク電極上の表面全体を被覆し、均一かつ平滑な触媒インクからなる塗布層を形成することができる。 触媒インク層を乾燥する工程(iii)における乾燥時間は、乾燥温度及び湿度との関係を考慮しつつ、適宜設定することが必要である。乾燥時間は、乾燥温度を10〜30℃、かつ湿度を20〜80%RHに設定した場合においては、2.0〜6.0時間行うことが好ましく、さらに好ましくは、製作時間の効率化の観点から、2.5〜3.5時間行うことが好ましい。乾燥時間が2.0時間以上であると触媒インク層に含まれる超純水が蒸発し、ディスク電極上の表面全体を被覆し、均一かつ平滑な触媒層を形成することができるため好ましい。乾燥時間が6.0時間を越えると触媒層とディスク電極基材との固着状態が劣化するおそれがあり、また作業効率が低下するので好ましくない。<電気化学測定用ディスク電極>ディスク電極は、ディスク電極基材と、触媒反応が起こる界面である底面に触媒インク層を備えている。ディスク電極基材としては、グラッシーカーボン(GC)のほか白金、金、タングステン等の化学的に安定な材料を所定の形状に成形してディスク電極基材とすることができる。触媒インク層は、測定の対象となる触媒粒子を適宜採択して、ディスク電極基材上に形成される。 ディスク電極は、ディスク電極基材と測定装置セルに固定されて電解液と接触する底面に触媒インク層を有する。 図2は、本発明の電気化学測定用ディスク電極の製作方法により得られた回転ディスク電極表面における触媒粒子の状態を模式的に示した図である。 図2(a)は、従来技術による触媒インクを用いた場合のディスク電極基材42の界面における触媒粒子44の状態を示した模式図である。図2(a)において、触媒インク中に一価アルコールを含有するため触媒粒子44が凝集し、また凝集体や粗大化した粒子および急速な乾燥により電極表面上での触媒粒子44の分布状態も不均一になっていると思われる。このため、ディスク電極基材42が備える触媒層の表面は凹凸を有して平滑なものとなっておらず、また、触媒層Xの厚みは一定ではないと思われる。 図2(b)は、本発明の電気化学測定用ディスク電極の製作方法により得られたディスク電極基材42の界面における触媒粒子44の状態を示した模式図である。一価アルコールを含有しない触媒インクから調製したことにより触媒粒子44の凝集がなく、さらに、適切な乾燥条件を採用することにより、ディスク電極基材が備える触媒層Xの表面は凹凸が少なく平滑で、電極表面上に均一に分布しているものと思われる。<電気化学測定用ディスク電極による触媒活性の測定> 回転ディスク電極法(RDE法)に従って、電気化学測定用ディスク電極の酸素還元電流(ORR電流)測定値(i)及び限界拡散電流測定値(iL)を測定する。酸素還元電流(ORR電流)測定値(i)及び限界拡散電流測定値(iL)の測定結果に基づいて、電極上に存在する触媒の活性を評価した。(RDE法測定装置) 図3にRDE法測定装置Dの模式図を示した。図4に示すように、RDE法測定装置Dは、測定装置セル10と参照電極(RE)20、対極(CE)30及び作用電極となる回転ディスク電極40を備えている。対極(CE)30は、回転ディスク電極40の底面に形成された触媒インク層Xと対向して、位置している。 RDE法測定装置Dを構成する参照電極(RE)20、対極(CE)30、回転ディスク電極40、及び電解液60は、特に制限されるものではないが、例えば、参照電極(RE)20として、銀/塩化銀電極(Ag/AgCl)、対極(CE)30として、白金(Pt)を採用することができる。回転ディスク電極40のディスク電極基材42として、グラッシーカーボン(GC)等の炭素材料を採用することができる。電解液60としては、RDE法に用いることができる公知の電解液を採用することができる。 回転ディスク電極40は、固定台50によって測定装置セル10の上部に固定されている。さらに、測定装置セル10と固定台50及び回転ディスク電極40を支持する支持部52の隙間は、オイルシール54によって密閉されている。 回転ディスク電極40は、駆動装置(図示せず)と連結しており、駆動装置(図示せず)によって測定装置セル10の底面に対向して水平となる方向に回転する。測定装置セル10及び参照電極(RE)用セル22は、電解液60によって満たされている。さらに、測定装置セル10の側面下方部には、ガス導入口12が設けられており、ガス導入口12を通じて、アルゴンガス又は酸素ガスが、測定装置セル10内へ導入される。(触媒活性(ik)の算出) 回転ディスク電極の評価は、クリーンアップ、サイクルリックボルタグラム(CV)測定、測定前の電気化学表面(ECSA)の測定、測定後の電気化学表面(ECSA)の測定をそれぞれ行い、上記測定値によって、得られる酸素還元電流(ORR電流)測定値(i)及び限界拡散電流測定値(iL)を用いて、下記一般式(1)で表されるNernst の拡散層モデルに基づく物質移動の補正式により、触媒活性(ik)を算出した。(上記一般式(1)中、iは、酸素還元電流(ORR電流)測定値、iLは、限界拡散電流測定値、ikは、触媒活性を表す。) すなわち、Nernstの拡散層モデルに基づく物質移動の補正式によれば、1/i=1/ik + 1/L が成立する。これを変形し、触媒活性(ik)について、解いて上記一般式(1)が得られる。酸素還元電流(ORR電流)測定値(i)及び限界拡散電流測定値(iL)により、触媒活性(ik)を算出することができる。(質量活性(Mass Act)の算出) さらに、上記算出された触媒活性(ik)をディスク電極の触媒インク層における活性金属(白金等)の質量(μg)で除した値を電極触媒の質量活性とした。すなわち、電極表面に存在する活性金属(白金等)の質量あたりの触媒活性を「質量活性(Mass Act)」として、電極触媒の触媒活性の指標とした。 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。<実施例1> 本発明の電気化学測定用ディスク電極の製作方法により、回転ディスク電極を製作した。(触媒インクの製造) 触媒粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製 Pt担持カーボン触媒:商品名「SA50BK」:製造ロットA:Pt含有率50.7wt%)を8.3mgを秤取し、超純水2.5mlとともにサンプル瓶に入れて、触媒粉末と超純水からなる触媒粉スラリーを作製した。なお、触媒粉末溶液の作製は、触媒粉末溶液中の触媒粉末の分散状態を良好に保持するために超音波を照射して行った。 次に、あらかじめ用意した別の容器に超純水10mlと10wt%ナフィオン水溶液((株)ワコーケミカル製、商品名「DE1020CS」)20μlを加え、ナフィオン−超純水溶液を作製した。このナフィオン−超純水溶液から2.5mlを秤量し、これを触媒粉末溶液の入ったサンプル瓶におよそ一分間かけてゆっくり投入した。その後、室温にて15分間、超音波を照射し、十分に撹拌して、触媒インクとした。(電気化学測定用ディスク電極の製作) 上記で作製したサンプル瓶中の触媒インクを触媒粉末の分散状態を良好に保持しつつ、マイクロピペットを使って10μl分取した。清浄な回転電極(GC:グラッシーカーボン製、径5mmφ、面積19.6mm2)を準備し、その表面にマイクロピペットを使って分取した上記触媒インクを滴下した。その後、回転ディスク電極の表面にこの触媒インクを均一かつ一定の厚みとなるように行き渡らせた。そして、回転ディスク電極の表面に触媒インクからなる塗布膜を形成させた。この触媒インクからなる塗布膜を静置した。その後、触媒インクからなる塗布膜を温度23℃、湿度50%RHにて、2.5時間乾燥させた。乾燥後の触媒インクからなる塗布膜を備えたディスク電極を本発明の電気化学測定用ディスク電極とした。 実施例1の電気化学測定用ディスク電極は、表1に示したように、回転ディスク電極上の触媒インク層中の触媒量が7.44μg、白金(Pt)の質量が3.77μgであった。導入された触媒インク量と回転ディスク電極上に滴下された触媒インク量から算出した。触媒インク層中の白金(Pt)の質量は、触媒粒子の白金とカーボンの組成より算出した。<実施例2〜4> 実施例2においては、実施例1で製造した触媒インクを使用して、回転ディスク電極上に滴下する触媒インクの量を変更した以外は、実施例1と同様にして回転ディスク電極を作製した。また、実施例3及び4においては、製造ロットの異なる、したがって白金含有率の異なる触媒粉末として、エヌ・イー ケムキャット株式会社製Pt担持カーボン触媒製造:商品名「SA50BK」(ロット「B」:Pt含有率43.6wt%)を使用したほかは、実施例1と同様に回転ディスク電極を作製した。<比較例1、2> 本発明の電気化学測定用ディスク電極の製作方法に代えて、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が推奨する電気化学測定用ディスク電極の製作方法(以下、「FCCJ法」)を採用して、回転ディスク電極を製作した。なお、FCCJが推奨する電気化学測定用ディスク電極の製作方法は、触媒インクに一価アルコールが含有されている点と、触媒インク層の乾燥条件が本発明の電気化学測定用ディスク電極の製作方法と相違している。 触媒粉末として用いたエヌ・イー ケムキャット株式会社製Pt担持カーボン触媒(商品名「SA50BK」の製造ロットAを使用したものを比較例1、製造ロットBを使用したものを比較例2とした。<比較例3> 実施例2の電気化学測定用ディスク電極の製作方法において、触媒インク層を乾燥する工程において、乾燥時間を16時間とした以外は、実施例2と同様にして、回転ディスク電極を製作した。(触媒活性の評価方法) 実施例1〜4、比較例1〜3で製作された電気化学測定用ディスク電極を用いて触媒活性の評価を以下のように行った。回転ディスク電極の評価は、電解液として0.1MのHCl04、参照電極(RE)としてAg/AgCl飽和電極(RHE)、対極としてPt黒付Ptメッシュを備えた回転ディスク電極測定装置(北斗電工株式会社製、モデルHSV110に同社製の回転電極制御駆動装置を付設)を用いた。[クリーンアップ] 上記回転ディスク電極測定装置内において、HCl04電解液に上記回転ディスク電極を浸したのち、電解液をアルゴンガスで30分以上パージした。その後、走査電位を85〜1085mVvsRHE、走査速度50mV/secの条件にて20サイクル、電位走査を行った。[測定前の電気化学表面(ECSA)の評価] その後、走査電位を 50〜1085mV vsRHE、走査速度20mV/secの条件にて 3サイクル、電位走査を行った。[酸素還元(ORR)電流測定] 電解液を酸素ガスで15分以上パージした後、走査電位を135〜1085mV vsRHE、走査速度10mV/secの条件にて10サイクル、回転ディスク電極の回転速度を1600rpmの条件でサイクルリックボルタグラム(CV)測定を行った。電位900mV vsRHEにおける電流値を記録した。 さらに、回転ディスク電極の回転速度をそれぞれ400rpm、625rpm、900rpm、1225rpm、2025rpm、2500rpm、3025rpmに設定して、1サイクルごとにORR測定を行った。[測定後の電気化学表面(ECSA)の評価] 最後に走査電位を50〜1085mVvs RHE、走査速度20mV/secの条件にて、サイクル数を3サイクルの条件にて、サイクルリックボルタグラム(CV)測定を行った。 上記で得られた酸素還元電流値(i)及びサイクルリックボルタグラム(CV)から測定された限界電流値(iL)と、下記一般式(1)で表されるNernst の拡散層モデルに基づく物質移動の補正式に基づいて、触媒活性を算出した。(上記一般式(1)中、iは、酸素還元電流(ORR電流)測定値、iLは、限界拡散電流測定値、ikは、触媒活性を表す。) さらに、算出された触媒活性(mA)の値及びディスク電極上のPt量の値より、質量活性(Mass Act)の算出を算出した。以下、表1に実施例及び比較例のディスク電極の製作条件、触媒活性の測定結果及び質量活性の算出結果を示す。 なお、表1に示した実施例及び比較例において、ディスク電極上の触媒インク量(μg)は、ピペット等の採取容器によりディスク電極に滴下した触媒インク量を使用した。さらに、ディスク電極上のPt(白金)量(μg)は、各触媒粒子(製造ロット「A」又は製造ロット「B」)中のPt(白金)含有率により算出した。また、表1において、触媒粉末として用いたPt担持カーボン触媒の製造ロットAを使用した実施例1、2及び比較例1をグループAとし、製造ロットBを使用した実施例3、4及び比較例3、4をグループBとした。 表1において、触媒活性を示す質量活性(Mass Act)の相対値は、「FCCJ法」により製作したディスク触媒(比較例1及び2)の質量活性(Mass Act)を基準(100%)として算出した。 図4は、比較例1の回転ディスク電極の質量活性の基準(100)とした場合における、実施例1で得られた回転ディスク電極の質量活性の相対値(%)を示したグラフである。図5は、比較例2の回転ディスク電極の質量活性の基準(100)とした場合における、実施例3で得られた回転ディスク電極の質量活性の相対値(%)を示したグラフである。 表1によれば、実施例1の回転ディスク電極は、比較例1の回転ディスク電極に比べて、酸化還元電流(ORR電流)測定値(i)及び限界拡散電流値(iL)が比較例1の回転ディスク電極よりも大きくなっていることが判明した。そして、実施例1及び比較例1において、回転ディスク電極の酸化還元電流(ORR電流)測定値(i)及び限界拡散電流値(iL)から算出される実施例1の質量活性は、比較例1の質量活性の約1.6倍となっていることが明らかとなった。すなわち、比較例1の回転ディスク電極を基準とした実施例1の相対値(質量活性)は、160%となっている。 このことから、本発明の電気化学的ディスク電極の製作方法を採用し、その製作条件を設定することによって、触媒電極の触媒活性を精密に測定することができることが明瞭に理解される。 同様に、実施例3及び比較例2の回転ディスク電極において、ディスク電極上のPt(白金)量がほぼ等しいにも関わらず、実施例3のディスク電極の触媒活性(ik)及び質量活性は、比較例2の回転ディスクの値の約2.5倍となっている。すなわち、比較例2の回転ディスク電極を基準とした実施例3の相対値(質量活性)は、254%となっていることが判明した。 比較例3は、触媒インクからなる塗布層の乾燥する工程(iii)のうち、その乾燥時間を除いて、実施例4とほぼ同様の条件にて、ディスク電極を製造している。実施例4及び比較例3の回転ディスク電極において、ディスク電極上のPt(白金)量がほぼ等しいにも関わらず、比較例3のディスク電極の質量活性は、実施例4の質量活性の比較例3の質量活性を基準とする相対値は、82%となっている。実施例4及び比較例3を考慮すると、本発明の電気化学測定用ディスク電極の製造方法を採用した場合であっても、触媒インクからなる塗布層の乾燥する工程のうち、乾燥時間を10時間超とすると、触媒電極の触媒活性を精密に測定することができないことが判明した。 本発明の電気化学測定用ディスク電極の製造方法は、触媒電極の表面に形成された触媒層が触媒電極の全面が被覆され、触媒層の厚さが均一であり、かつその表面が平滑であって、触媒層中の触媒粒子成分が均一に分散された電気化学測定用ディスク電極を提供することができるので、触媒電極が本来有する触媒活性評価を精密に行うことができる。この結果、本発明の電気化学測定用ディスク電極の製造方法は、燃料電池自動車、携帯モバイル等の電機機器産業のみならず、エネファーム、コジェネレーションシステム等に適用することができる触媒電極の触媒活性評価を精密に行うことができる技術標準となり得るものであり、エネルギー産業の発達に寄与する。 D 回転ディスク電極法(RDE法)測定装置 10 測定装置用セル 12 ガス導入口 20 参照電極(RE) 22 参照電極(RE)用セル 30 対極(CE) 40 回転ディスク電極 42 電極基材 44 触媒粒子 X 触媒インク層 50 固体台 52 支持部 54 オイルシール 60 電解液 電気化学測定用ディスク電極の製造方法であって、 (i)活性金属が担体に担持されてなる触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを含有し、1価アルコールを含まない触媒インクを調製する工程と、 (ii)前記触媒インクをディスク電極表面上に滴下し、触媒インクからなる塗布層を形成する工程と、 (iii)前記触媒インクからなる塗布層を10〜30℃にて乾燥する工程と、を備えたことを特徴とする電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 前記超純水の比抵抗Rが以下の一般式で表され、 前記比抵抗が3.0MΩ・cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。上記一般式において、Rは比抵抗を表し、ρはJIS規格試験法(JIS K0552)により測定される電気伝導率を表す。 前記触媒インクを調製する工程(i)は、 (ia) 前記触媒粒子と前記超純水とを混合して触媒粒子スラリーを調製し、 (ib) 前記水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを混合した水素イオン伝導性高分子電解質水溶液をあらかじめ調製し、 (ic) 前記水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を前記触媒粒子スラリーに添加して調製することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 前記(ia)工程で得られた前記触媒粒子スラリーに、 前記 (ib)工程で得られた前記水素イオン伝導性高分子電解質水溶液を1.0〜10.0ml/分の添加速度にて添加して、 前記触媒粒子が均一に分散された触媒インクを調製することを特徴とする請求項3に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 前記触媒粒子が、前記触媒インク100重量部に対して、0.05〜1.0重量部含有されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 前記触媒インク層を乾燥させる工程は、温度を10〜30℃、かつ湿度を20〜80%RHに設定して行うことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 前記触媒インク層を乾燥させる工程(iii)を2〜6時間行うことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 前記電気化学的測定用ディスク電極が回転ディスク電極であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の電気化学測定用ディスク電極の製作方法。 請求項1〜8いずれか1項に記載された製作方法により、得られた電気化学測定用ディスク電極。 【課題】電気化学測定用ディスク電極の表面全体を被覆し、均一かつ平滑な触媒インク層を形成させ、触媒インク層中に触媒粒子が均一に保持された電気化学測定用ディスク電極の製作方法を提供すること。【解決手段】電気化学測定用ディスク電極の製作方法は、(i)活性金属が担体に担持されてなる触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質と超純水とを含有し、1価アルコールを含まない触媒インクを調製する工程と、(ii)前記触媒インクをディスク電極表面上に滴下し、触媒インクからなる塗布層を形成する工程と、(iii)前記触媒インクからなる塗布層を10〜30℃にて乾燥する工程とを備えたことを特徴とする。【選択図】図1


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