生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_溶血性レンサ球菌診断イムノクロマト試薬、キット及び検出方法
出願番号:2013164819
年次:2015
IPC分類:G01N 33/569,G01N 33/543


特許情報キャッシュ

加藤 佑弥 岩本 久彦 JP 2015034719 公開特許公報(A) 20150219 2013164819 20130808 溶血性レンサ球菌診断イムノクロマト試薬、キット及び検出方法 田中貴金属工業株式会社 509352945 柿澤 紀世雄 100123423 加藤 佑弥 岩本 久彦 G01N 33/569 20060101AFI20150123BHJP G01N 33/543 20060101ALI20150123BHJP JPG01N33/569 CG01N33/543 521G01N33/543 501HG01N33/543 501D 19 1 OL 25 試料液中の被検出物(抗原等)としてグラム陽性菌、特に、溶血性レンサ球菌を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として重要性が高いイムノクロマトキット、それに用いる試薬組成物又は検体処理液および検出方法に関する。特に、溶連菌検査において必要な多糖体の抽出に必要な亜硝酸の調製をその都度用事調製によることなく検査デバイス上で生成させることにより検査効率および検査精度を向上させた検査方法に関する。 近年、イムノクロマトグラフ用ストリップ形式のイムノアッセイは、抗体の持つ特異的反応性を利用して、試料液中の被検出物(抗原等)を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として汎用性が高まっている。特に、最近では、インフルエンザウィルスや細菌といった病原体に対する感染の有無を検査するためのイムノクロマト法に基づく簡便な検査具についても関心が高まり、研究開発が進められてきた。 溶血性レンサ球菌(以下、「溶連菌」ともいう。)の診断は、群特異的である多糖体を抗原として検査することで行う。多糖体の抽出法としては、酵素やファージ、塩酸や次亜塩素酸などを用いた方法が知られているが、亜硝酸を用いる抽出法が最も一般的である。 亜硝酸による抽出法は、糖多糖体の高い抽出効率と亜硝酸が低価格で取り扱いが容易である点にメリットがあるが、亜硝酸自体が不安定で分解しやすい化合物であるため、抽出前に亜硝酸ナトリウムと酢酸などの有機酸と混合し、その都度亜硝酸を調製しなければならない点にデメリットがある。また、恒常的に診断を行う場合、その都度亜硝酸を調製することはお医者さん、検査技師さんの大きな負担となる。加えて、混合工程を含むため、試薬の混合間違いなどにより正しい安全な診断を行えない場合の可能性もある。 この問題点を克服するために、レンサ球菌からの多糖抗原を抽出する工程を簡易化するための簡便な検査具についても研究開発が進められてきた。 例えば、特許文献1では、生物(特に、連鎖球菌A群又はB群)からの多糖抗原を抽出する方法において、a.測定量の亜硝酸塩が滲み込ませて乾燥されている第1吸収性物質、b.測定量の中和塩基及び緩衝液が滲み込ませて乾燥されている第2吸収性物質、c.測定量の酸の水溶液、を組合わせたキットを用いた簡易化した抽出方法が提案されている(特許文献1参照)。また、連鎖球菌感染の診断に当っては、まず多糖抗原の抽出工程を行った後に、次いで得られた溶液を免疫アッセイ装置と接触させて抗原の検出工程を行うという面倒な処理工程が必要であるため、多糖抗原の抽出工程、及びマーカーの測定工程を含む試料中の生物を簡便に測定検査する方法やその為のキットの開発が課題になっている。 例えば、特許文献2においては、レンサ球菌科などの微生物/細菌性生物体に特徴的な炭水化物抗原を検出するための分析装置や方法が開示されている。この側方流動分析装置では、a.サンプル受領ゾーン、b.抽出ゾーン(抽出試薬;固定化又は吸収して乾燥させた酸および亜硝酸塩。)、c.中和剤(中和緩衝剤;TRIS)、d.検出ゾーン(捕捉/検出試薬)を有する基材を含む装置が提供されている(特許文献2参照。)。 さらに、連鎖球菌を含む複数の異なる生物を、同時に測定検査する方法やその為のキットの開発もなされている。例えば、特許文献3では、第1の生物がグラム陽性細菌、例えば、A,B,F,又はG群連鎖球菌、腸球菌細菌等であり、第2の生物がウイルス類やグラム陰性細菌類等であるような試料中の複数の異なる生物種を測定する方法やキットであり、1つ以上の容器内に、a.亜硝酸、又は乾燥状態になっている酸及び亜硝酸塩、b.界面活性剤、c.第1の生物から得られる第1のマーカーに結合する第1の結合試薬、d.第2の生物から得られる第2のマーカーに結合する第2の結合試薬、を備えたキットによる複数の検体の同時検出を可能にすることにより、検査効率の倍増と患者さんの検査に伴う苦痛の軽減を達成している(特許文献3参照。)。 レンサ球菌科などの微生物/細菌性生物体に特徴的な炭水化物抗原を検出するための分析装置や方法に関しては、既に上市販売されているものもあって、例えば、イムノクロマト試薬としては、クイックビュー DipStick StrepA(DSファーマバイオメディカル)やストレップAテストパック・プラスOBC(三和化学研究所)などがあり、また、スライドラテックス凝集法試薬としてはAストレプトAD「生研」(デンカ生研)などが知られている。 イムノクロマト試薬の市販品にあっては、一般的に検体の試験において陽性と判定されるためには、直接法では溶連菌濃度が1×106CFU/mL以上であることが必要とされている。その為、1×106CFU/mL未満の場合には、陽性であるにも拘らず陰性と判定されたり、また、不溶性担体で抗体を標識したイムノクロマト法検査薬は、一般的にEIAと比較して感度が低い為、陽性の場合に観察されるラインが明瞭でないという問題点や、さらには、試料液中に被検出物(抗原等)が存在しないにも拘らず、陽性と判定される、所謂、偽陽性が生じるという問題点があった。 かかる問題点を解決するために、展開溶媒に糖または水溶性高分子化合物を存在させる方法等が提案されている。例えば、抗体を結合した着色ラテックス粒子を用いるメンブレンアッセイ法において、ラテックス組成物中に糖類、例えば、単糖類、オリゴ糖並びにそれらの糖アルコール、や多価アルコールといった少なくとも1種の凝集防止剤と、タンパク質を添加すると共に塩基性の緩衝剤とを含み、そのpHが9.0〜9.8である免疫測定用ラテックス組成物を用いることにより、ラテックス粒子の自然凝集を防止して、比重、粘度、浸透圧の上昇を防いで高感度な免疫測定を可能にしている(特許文献4参照。)。 また、最近では、糖尿病の診断に適した指標として広く使用されている血中のヘモグロビンに糖が結合した糖化ヘモグロビン、特にヘモグロビンβ鎖のN末端バリン残基が糖化されたヘモグロビンA1c(「HbA1c」という。)の粒子イムノクロマト測定法において、(A)赤血球を含有する測定試料を、界面活性剤で処理してヘモグロビンβ鎖のN末端をタンパク質表面に露出させ、(B)得られた試料を水不溶性の状態にある環状多糖類(例えば、メンブレン等に化学結合により固定化。環状多糖類自体がポリマーを形成。多孔性樹脂に練りこまれている状態。)と接触させ、次いで、(C)得られた試料を、粒子で標識されたヘモグロビンのN末端を認識する抗体等と接触させて検出する方法が提案されている。こうすることにより、抗体どうしが凝集してメンブレン上を展開せず、正確な測定ができない原因である、環状多糖類が水と接触した際に、環状多糖類を構成する環状オリゴ糖分子又は環状多糖分子が水に溶解して拡散しない状態になるのを防止している(特許文献5参照。)。さらに、メンブレンアッセイ法を用いた検体の簡易な検査方法において、感度を保ちながら偽陽性や詰まりを防止できる検体試料のろ過法が提案されている。(特許文献6参照。)しかしながら、不溶性担体(金コロイド粒子、着色ラテックス粒子等)で抗体を標識したイムノクロマト法(「粒子イムノクロマト法」ともいう。)にあっては、測定試料とか測定環境、測定条件によっては、依然として該不溶性担体の凝集が起き、非特異反応が起きることがあり、展開速度が遅い等の問題点は解決できない場合がある。そのため、個々の測定試料とか測定環境、測定条件を採用した粒子イムノクロマト法において、不溶性担体の凝集が起きず、非特異反応が起きることがなく、展開速度が速い検査薬の探求が切望されていた。本発明の目的および課題は、イムノクロマト法によりグラム陽性菌、特に、溶連菌検査を行うに当り、試料抽出(希釈)液(「検体処理液」、「展開液」ともいう。)を改良することによって、従来技術に比して、展開系中の陰性検体での発色が低下し、陽性検体での発色が向上した、即ち、S/N比が高い、高感度なイムノクロマトグラフ用検査薬を提供することにある。また、本発明の目的は、イムノクロマト法により細菌検査を行うに当り、展開抽出条件を改良することによって、検体中もしくはイムノクロマトデバイス中に存在するタンパク成分が展開検査中に変性/析出(沈殿)を起こすことなく、高感度かつ展開速度の速い検査薬を提供することにある。さらに、本発明の目的は、イムノクロマト法により細菌検査を行うに当り、イムノクロマトキットの貼り合わせる部位の構成を改良することによって、従来技術に比して、迅速かつ高精度に試料(例えば、呼吸器疾患患者から採取される検体、特に、鼻汁、鼻腔拭い液または痰等)中の微生物若しくは微生物に由来する抗原又は抗体等(例えば、グラム陽性菌、特に溶血性レンサ球菌等々の細菌)、特に、溶連菌検査は亜硝酸による多糖体の抽出が必要であり、不安定な化合物である亜硝酸は、その検査の都度に、亜硝酸塩を酸性溶液と反応させる亜硝酸生成工程を設けるという煩雑な用時調製をする必要があったが、亜硝酸の調製をその都度用事調製をすることなく、検査デバイス上で環状オリゴ糖の存在下で亜硝酸を生成させることにより検査効率、検査精度および省力化を向上させることができる免疫測定用試薬、免疫測定法、イムノクロマト検出方法およびイムノクロマトキットを提供することにある。 さらに詳しくは、本発明の目的は、呼吸器系感染症の一つであるA群β溶血性レンサ球菌の迅速診断ができる簡便且つS/N比が高い高感度なイムノクロマト用試料抽出液(以下、「試料希釈液」ともいう。)、イムノクロマト用試薬、それを用いたイムノクロマトキットおよび検査方法を提供することにある。 本発明者等は、イムノクロマトグラフ法検査薬で細菌を検査するに当っては、使用する試料抽出液中に環状オリゴ糖及び/又は亜硝酸塩を含有させること、もしくは、イムノクロマトキットにおける有機酸を保持する試薬保持部の試料展開方向上流に位置する他の試薬保持部に環状オリゴ糖及び/又は亜硝酸塩を含有させることにより、試料抽出液である展開液が検査デバイス展開中に保持されている有機酸や生成してくる亜硝酸によってpH条件が変化しても、検体またはイムノクロマトデバイス中のタンパク成分等が変性・析出して、判定ラインに引掛かり、非特異的な反応を誘発することがなく、かつ、抗体固定粒子コロイドの凝集を起こすことがない、検査精度(以下「S/N比」という。)が高い展開速度の速い検査薬を提供することができることを初めて知見したものである。 本発明の検出系では、環状オリゴ糖を添加することで、抽出液および検体中の若しくはデバイス中のタンパク成分等を、試薬成分として有機酸を含有し、かつ亜硝酸が発生するような展開/抽出条件下でも析出させることなく検査できる免疫測定用試薬、免疫測定方法およびイムノクロマトキットなどを提供するものである。 本発明は、下記の(1)〜(19)に係るイムノクロマトグラフ法に使用する検体処理液、免疫測定用試薬、免疫測定法、イムノクロマト検出方法、イムノクロマトキット、およびそれを使用するイムノクロマト法を提供するものである。 本発明の免疫測定法としては、次のような特徴を有する。 (1)本発明の第1の特徴は、検体中の検出対象物の抗原を抽出剤により抽出して検出する免疫測定法において、環状オリゴ糖の存在下に行うことを特徴とする免疫測定法、にある。 (2)本発明の第2の特徴は、抽出剤が、有機酸と亜硝酸化合物の反応によりデバイス上で生成される亜硝酸であることを特徴とする免疫測定法、にある。 (3)本発明の第3の特徴は、環状オリゴ糖がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンおよびそれらの誘導体であることを特徴とする免疫測定法、にある。 (4)本発明の第4の特徴は、亜硝酸化合物が、亜硝酸塩であることを特徴とする免疫測定法、にある。 (5)本発明の第5の特徴は、有機酸が有機カルボン酸である請求項1〜4のいずれかに記載の免疫測定法、にある。 (6)本発明の第6の特徴は、抽出するpH条件が、6.8〜7.0である免疫測定法、にある。 (7)本発明の第7の特徴は、抗原が、多糖体である免疫測定法、にある。 (8)本発明の第8の特徴は、検出対象物が、グラム陽性菌である免疫測定法、にある。 (9)本発明の第9の特徴は、グラム陽性菌が、溶血性レンサ球菌である免疫測定法、にある。 本発明の免疫測定用試薬としては、次のような特徴を有する。 (10)本発明の第10の特徴は、上記のいずれかに記載の免疫測定法において使用する、環状オリゴ糖を含有する免疫測定用試薬、にある。 本発明の免疫測定用装置としては、次のような特徴を有する。 (11)本発明の第11の特徴は、上記のいずれかに記載の免疫測定法を行なうためのイムノクロマトグラフィー装置、にある。 本発明のイムノクロマトキットとしては、次のような特徴を有する。 (12)本発明の第12の特徴は、検体希釈液と、試料滴下部、抗原抽出部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体、および吸収部から構成されていて、かつ抗原抽出部に有機酸が保持されてなる検体中の検出対象物を検出するためのイムノクロマトキットであって、検体希釈液及び/又は試料滴下部のいずれか一方又は両方に、環状オリゴ糖、亜硝酸化合物又はそれらの混合物のうちのいずれか一つ以上を含有することにより、環状オリゴ糖および亜硝酸化合物を含有するようにしたことを特徴とするイムノクロマトキット、にある。 (13)本発明の第13の特徴は、環状オリゴ糖は、イムノクロマトキットの1キット当り含有量が0.1〜5μgであることを特徴とするイムノクロマトキット、にある。 (14)本発明の第14の特徴は、環状オリゴ糖がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの誘導体の1以上であることを特徴とするイムノクロマトキット、にある。 (15)本発明の第15の特徴は、有機酸と共に非イオン性界面活性剤を保持することを特徴とするイムノクロマトキット、にある。 (16)本発明の第16の特徴は、亜硝酸化合物が、亜硝酸塩であることを特徴とするイムノクロマトキット、にある。 (17)本発明の第17の特徴は、抗原抽出部に、クエン酸と共にクエン酸塩を保持することを特徴とするイムノクロマトキット、にある。 (18)本発明の第18の特徴は、検出対象物がグラム陽性菌である上記のいずれかに記載のイムノクロマトキット、にある。 本発明のイムノクロマト検出方法としては、次のような特徴を有する。(19)本発明の第19の特徴は、上記のいずれかに記載の免疫測定法を行なうために使用するイムノクロマトキット、にある。 本発明は以上のような特徴点を備えることにより、課題を達成することができたものである。 本発明では、予め測定量の亜硝酸化合物と有機酸との接触混合時に生成する亜硝酸を用いて、グラム陽性菌、特に、溶連菌(A群〜U群)の菌体表面に存在する、群特異的である多糖体を抽出し、その多糖体を抗原として検査を行なうものであるから、試薬の混合間違いやその都度亜硝酸を調整する必要がないという簡便且つ汎用性のある検査キットおよび検査方法である。そして、本発明のイムノクロマトキットを用いた溶連菌の検出系では、環状オリゴ糖を添加することで、抽出液および検体中のタンパク成分を抽出/展開条件下であっても析出させることがなく、高感度に、かつ迅速に検査できるものである。即ち、本発明では、環状オリゴ糖を含有するイムノクロマトグラフ用試料抽出液(「検体希釈液」ともいう。)を使用することにより、展開中にタンパク質の析出を生じることなく、且つ抗体固定金コロイド粒子の凝集を起こすことなく、正確に且つ、展開速度の速い検査薬を提供することができるものである。また、本発明では、他の試薬保持部〔2〕に環状オリゴ糖を含有することによって、例えば、呼吸器疾患患者から採取される検体(特に、鼻汁、鼻腔拭い液または痰等)である試料中の抗原(例えば、グラム陽性菌、特に、溶連菌等々の細菌)を、試薬保持部に酸が保持され、かつ、亜硝酸を生成するような条件下であっても変性や沈殿を起こすことなく、迅速、簡便および高感度に、結果の判定が可能である。 さらに、その検査の都度に、亜硝酸塩を酸性溶液と反応させる亜硝酸生成工程を設けるという煩雑な用時調製をすることなく、検査デバイス上で亜硝酸を生成させることにより検査の煩雑を省略し、検査効率および検査精度を向上させた検査方法を達成することができる。本願イムノクロマトキットを示す図 [図1](a)イムノクロマトキットの立体斜視図 [図1](b)イムノクロマトキットの平面図亜硝酸含有部に各種シクロデキストリン(CD)を含有した場合の、陰性検体および陽性検体の発色性の変化の挙動を示す図。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の実施形態は、各種検体中の被検出物質である検出対象物(抗原)に各種の標識をつけた特異的に結合する結合物質(抗体)を、クロマトグラフ媒体上で反応させる抗原−抗体反応により複合体を形成させ、イムノクロマトグラフ媒体上を吸収部位の方向へ展開させて、それを各種の検出手段により確認するという、イムノクロマトグラフ法またはそれを応用した検出法に基づくものである。その抗原と最も特異的に反応して結合する抗体としては、それと特異的に結合する、例えばモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体若しくはその他の公知の抗体を任意に使用することができる。 その標識としては、酵素、発色物質、蛍光物質、または放射性物質などを任意に使用することができるが、操作が簡単で、検定時間も短くするという、イムノクロマトグラフ法の特色を出す為や、抗体、抗原の種類を考慮して決めればよい。 又、検出手段は、操作が簡単で、比較的短時間で判定できると言う、イムノクロマトグラフ法の特色を表すためには、目視判定で、正確に判定できると言う性能を有することを特徴とするが、時間、精度などが要求される場合には、分光光度検出、放射線検出など、各種の検出手段を付帯させて、検出することができる。 本発明のイムノクロマトグラフ法に使用可能な検体希釈液(「検体処理液」ともいう。)、免疫測定用試薬、免疫測定法、イムノクロマト検出方法、イムノクロマトキットを実施するための最良の形態を順次説明をする。 本発明の、この免疫測定用試薬とは、免疫測定に際して使用する試薬であって、検体希釈液(「検体処理液」、「検体抽出液」ともいう。)中に含有させて用いるか、及び/又は、試料滴下部(2)(試薬保持部(2)ともいう。)に含有保持させて用いる試薬である。しかし、これに加えて試薬保持部(3)(「抗原抽出部」(3)ともいう。)、標識物質保持部(4)、及びクロマトグラフ媒体におけるこれらの1以上の部位に含有保持させても構わない。この試薬を検体希釈液中に、もしくは試料滴下部に含有させた場合には、有機酸含有抗原抽出部(試薬保持部(3))、標識物質保持部(4)、クロマトグラフ媒体、および吸収部(5)へと順次移動および展開する性質を備えたものである。 本発明の免疫測定用試薬としては、検体希釈液および試薬保持部(2)のいずれか一方にまたは両方に環状オリゴ糖および亜硝酸化合物のそれぞれを単独にまたは同時に含有させるものである。この免疫測定用試薬を形成する環状オリゴ糖および亜硝酸化合物を検体抽出液中に含むおよび試料滴下部(試薬保持部(2))に存在させる実施態様としては次のようなものが挙げられる。 本発明の亜硝酸化合物(「亜化」と略記する。)と環状オリゴ糖(「環オ」と略記する。)を含有する成分および構成部位に関する態様を詳細に具体的に例示すれば、以下のような態様が例示できる。検体希釈液(検体処理液)(6);試料滴下部(試薬保持部(2))にそれぞれ亜化、環オの化合物を含有する可能な各実施態様(パターン)を例示する。 パターン 検体処理液(抽出液)部(6) 試料滴下部(2) 1 無 亜化・環オ 2 亜化 環オ 3 環オ 亜化 4 亜化・環オ 無 5 亜化・環オ 亜化・環オ 6 亜化・環オ 亜化 7 亜化 亜化・環オ 8 環オ 亜化・環オ 9 亜化・環オ 環オ以上のような実施態様(パターン)に従って、本発明は実施できる。 なお、この試料滴下部(試薬保持部(2))の試薬状態は、溶液状のものや、凍結乾燥などにより滴下パッドに保持された状態のものを包含する。 本発明の免疫測定用試薬を構成する環状オリゴ糖の含有量は、イムノクロマトキットの1キット当り含有量が0.1〜5μg/試験である。 同様に、本発明の亜硝酸化合物とは、好ましくは、亜硝酸塩であり、酸と反応して亜硝酸を生成するものであって、検査デバイス系において検査に悪影響が及ばないものであれば無機亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム等が挙げられ、有機亜硝酸化合物、例えば、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸ブチル、亜硝酸アミル等々であっても良く何ら限定されるものではない。さらにはそれらを混合して使用することも可能である。好ましくは、無機亜硝酸塩であって、なかでも、亜硝酸のアルカリ金属塩が好ましく、亜硝酸ナトリウムが最も好ましい。 この免疫測定用試薬中に含有する亜硝酸化合物の含有量は、10〜100μmol/試験であり、好ましくは20〜80μmol/試験である。 本発明で使用する環状オリゴ糖としては、D−グルコースおよび/またはその誘導体がα(1→4)グルコシド結合により環状につながった構造を有するオリゴ糖であれば特に限定されるものではない。具体的には、シクロデキストリン類、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンおよび、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、スルホアルキル化シクロデキストリン、モノクロロトリアジニルシクロデキストリン、クラスターシクロデキストリン、修飾クラスターシクロデキストリン、などの(α−、β−又はγ−)シクロデキストリン誘導体や、約20〜50個のグルコースが環状に結合したシクロアミロース、ラウリル化シクロアミロース、シクロアミロースの派生産物である水溶性キシラン、などの環状グルカンを挙げることができる。これらシクロデキストリン類や環状グルカンの混合物を使用してもよい。中でも、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。(特開2012−188573号公報、特開2012−251789号公報を参照。) 環状オリゴ糖類は、一般に、その環状構造の外部が親水性を示し、その環状構造の内部が疎水性(親油性)を示すという特異的な構造を有している。上記の特異的な構造に由来して、環状オリゴ糖類は環状構造の内径より小さい親油性分子を包みこむように取り込み、複合化することができる。また前記環状構造の内径より大きい分子であっても、環状構造の内径より小さい親油性部分があれば、その部分が環状オリゴ糖類内部に取り込まれ、複合化することが知られている。本発明では、有機酸分子中の親油性部位である炭化水素官能基が環状オリゴ糖内に取り込まれ、試料中の被検出物質や他の生体物質由来のたんぱく質成分、あるいはイムノクロマトキット中の添加剤などに含まれるたんぱく質成分と、有機酸との複合体形成を抑制し、その複合体形成に起因する非特異的な反応や複合体の析出による展開速度の低下や展開しない等の展開不良を抑制することができる。 本発明の免疫測定用試薬に存在する環状オリゴ糖がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンおよびそれらの誘導体であることが特に好ましい。環状オリゴ糖は、一試験あたり0.02〜0.5μmol用いることが好ましい。 本発明における検査試料としては、厚いペプチドグリカン層を有するグラム陽性菌を含む試料において好ましく用いられる。例えば、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、かん菌、たんそ菌、セレウス菌、ジフテリア菌、リステリア、破傷風菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌などが挙げられる。本発明のキットは、中でも球菌類であるブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌を含む試料でより好ましく用いられ、最適には連鎖球菌で用いられる。グラム陽性菌を含む試料は、唾液、鼻汁、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、痰、咽頭拭い液、肺胞洗浄液、直腸拭い液、便懸濁液、尿、羊水等々といった生体試料のみならず、食品抽出液、上水、下廃水、培養液等々といった試料であることができ、特に限定されるものではない。これらの検体中に含まれ、原因となる菌がグラム陽性菌、特に、溶連菌を含む場合に有用である。環状オリゴ糖を添加することを特徴とする本発明の検出系では、生成する亜硝酸によって、細菌に特異な抗原多糖体が抽出されるような細菌であれば適用可能である。特に本発明のイムノクロマトキットにおける検出用グラム陽性菌とは、溶血性連鎖球菌である。 環状オリゴ糖を含有させた本発明のイムノクロマトグラフ検出を行えば、有機酸あるいは検出系中で生成する亜硝酸による鼻汁などの検体に含まれる高粘性タンパク質や検査デバイス上に存在するタンパク等の変性・析出が抑制され、クロマト材の孔の目詰まりによる展開速度の低下を生じず、更に、高粘性タンパク質などによる粘度の増大も抑制するため、感度の低下を伴わず高速の展開が可能となり迅速な検体検出を可能とする。 次に、本発明の免疫測定法としては、試料中の検出対象物の抗原を抽出試薬により抽出して検出するに於いて環状オリゴ糖の存在下に行うことを特徴とする免疫測定法を実施することにある。この免疫測定法の特徴は、抽出試薬が有機酸と亜硝酸化合物の反応により検査デバイス上で、特に有機酸含有抗原抽出部(試薬保持部(3))において生成される亜硝酸によるものである。この有機酸とは、有機カルボン酸であるあるが、有機酸と共に下記の非イオン性界面活性剤を保持することにより免疫測定法を実施することが好ましい。 そして、この抽出試薬が有機酸と亜硝酸化合物の反応により生成される亜硝酸によるものであって、下記の理由により、その抽出pHが6.8〜7であることを好ましい。 そのイムノクロマトグラフ法による溶連菌の検出においては、菌体表面に存在する群特異的である多糖体を抗原とするのが一般的であり、抗原抽出に当っては、亜硝酸による抽出が、各種酵素を含む抽出液に比べて格段に抽出効率が高いが、展開中に試薬保持部に保持されている酸や亜硝酸の生成に起因してpH条件が酸性となった場合に問題が生じる。即ち、イムノクロマトグラフ検出系中に存在する、例えば、カゼイン等々といったタンパク質、またはその塩や検体中に含まれる高粘性タンパク質などが析出してくるといった問題点が生じる。 そこで、本発明は、共通抽出液[1)酵素、2)添加塩、3)界面活性剤、4)イオン液体、5)(亜硝酸生成)触媒 6)亜硝酸]の仕様の抽出液で、1)酵素の挙動に着目して、多面的に検討した結果、やはり、1)〜5)の抽出液系では、 6)亜硝酸に比べて、抗原抽出効率が低いことを確認することができた。このため、抗原抽出の為には、亜硝酸が必要であり、亜硝酸は、酸性条件で生成するが、酸性条件では共通抽出液中のタンパク質のカゼインが析出するために、併用が非常に難しい。そこで、本発明はカゼインが析出しない程度の酸性条件で亜硝酸を生成する条件を模索した。 [共通抽出液と亜硝酸併用系の挙動] pH 6 6.5 6.8 7 8 気泡(亜硝酸) 有 有 やや有 無 無 沈殿(カゼイン) 有 やや有 無 無 無この解析結果から、亜硝酸と共通抽出液との併用可能な条件を、pH=6.5〜7程度にすれば、対応できることが判明した。このように、本発明は、抗原抽出効率の向上の為に、共通抽出液の面からの対策と、以下に示す、キットの構成の面という、両面からの改良を検討したものである。 これらの問題点について更なる検討、研究を重ねた結果、本発明にあっては、亜硝酸が生成するpH条件であって、かつ、カゼイン等々といったタンパク質や検体中に含まれる高粘性タンパク質などが析出してこないpH条件としては、pHが 7.0未満〜6.5、好ましくは 7.0未満〜6.6、最も好ましくは7.0未満〜6.8 である。pH条件が7以上では亜硝酸生成が少なく、抗原の抽出効率が低いため、検出感度が低くなる。逆に、亜硝酸生成によるpH条件が6.5以下の酸性条件では抗原の抽出効率は良いが、カゼイン等々といったタンパク質や検体中に含まれる高粘性タンパク質などが析出してくるため、検出ができなくなる。 本発明のイムノクロマトキットは、亜硝酸を生成するために中性から弱酸性条件で検体を展開する設計になっている。また、他の呼吸器感染症で既に使用されている抽出液での検査を行なえる設計となっている。しかし、抽出液に含まれる成分(カゼイン)が弱酸性条件で析出してしまうため、展開が不均一になるという問題があり、この問題を解決する為に、本発明者等は、種々の化合物を加えて、成分の析出を抑える検討を行った。その結果、検出系中に、例えば、亜硝酸塩含有部中にあるいは検体希釈液中に、環状オリゴ糖を含有させることで、成分の析出を抑えることができ、展開の均一性を向上させることができることを知見したものである。 本発明を適正に実施する為に、本発明では、亜硝酸を生成する条件として、中性から弱酸性条件(pH=6.8)で展開することが好ましいことを確認することができたが、これは呼吸器感染症で既に使用されている抽出液での検査にも対応できる設計条件である。 しかし、抽出液に含まれる成分(カゼイン)は弱酸性条件では、析出してしまう為に、展開が不均一になる問題を抱えている。この成分の析出を抑える為に、種々の化合物を加えて、成分の析出を抑えることを検討した結果、シクロデキシトリン(CD)として、特に、代表的なβ−シクロデキシトリン(β−CD)を含有することで成分の析出を抑えることができ、展開の均一性が向上することを知見したものであり、その傾向を以下に示す。注.BSA:牛血清アルブミン、PEG;ポリエチレングリコール(PEG20000)、TH;トレハロースを示す。 無添加 BSA PEG TH β−CD 展開均一性 やや不均一 不均一 不均一 やや不均一 均一 これらの傾向は、環状オリゴ糖に包含される各種のCDに於いて、同様の傾向を示すことを確認することができる。 本発明に使用する抗原抽出液、即ち、試料抽出(検体希釈)液や展開抽出液としての役割を果たすものである該抽出液の共通成分としては、亜硝酸化合物(亜硝酸塩等)、中和塩基(水酸化ナトリウム等々)又は緩衝液(TRIS、等々)を含有させることができ、その他に、生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、疎水結合や電気的相互作用を打ち消す効果のある物質、例えば界面活性剤、アンモニウム塩、糖類、pH緩衝剤、さらに非特異反応を抑制するために種々の添加剤、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異反応の抑制のための蛋白質、高分子化合物等々を含有させることができる。 この環状オリゴ糖の範疇に属する各種化合物の展開液に与える影響およびその挙動を解析したのが図2である。図2の実験の実施条件は、環状オリゴ糖の代表的な一つであるシクロデキシトリン(CD)を、亜硝酸を含有させた部位(2;試薬保持部〔2〕)に各CDを0.75μg/testとなるように保持させて、各CDを含ませた検査デバイスの陰性・陽性検体での評価を行った。β−シクロデキシトリン(「β−CD」と略す。)、アミノ−β−シクロデキシトリン(「Amino−β−CD」と略す。)、6−0−α−D−マルトシル−β−シクロデキシトリン;分子量 1459(「mβ−CD」と略す。)、γ−シクロデキシトリン(「γ−CD」と略す。)の各CDについて評価した。その結果は図2に示すとおりである。また、比較のために、CDを含まない検査デバイスを作成して、対比評価したものを図2に示した。 β−CD、γ−CDを亜硝酸を含有させた部位に保持することで、陰性検体での発色が低下し、陽性検体での発色が向上することが確認できる。このようにβ−CD類により感度の向上が容易に確認することができる。しかし、非特異反応の抑制が達成できるかは、これだけのデーターだけでは確認することができない。亜硝酸を検査デバイス上で生成させることで、検査効率の向上を指向する一方で、問題点として、展開液が検査デバイス展開中に酸性となる為に、検体中の蛋白質成分が変性、析出して、判定ラインに引っかかり、非特異的反応を誘発することが予測される。そこで、本発明は、抽出液および検体中のタンパク成分を酸性条件下でも析出することなく検査することができることを目的として、各種のオリゴ糖を添加するという試行錯誤を繰り返すことにより、環状オリゴ糖の一種であるCDを含有させることで、S/N比の改善が見られるという結果を達成したものである。というのも、シクロデキシトリン(CD)は、環状オリゴ糖の一種であるから、内部が疎水性である構造を有する為、様々な疎水性化合物を包接する機能を有していることに起因していることが予測される。 本発明の有機酸含有抗原抽出部(試薬保持部(3))に保持させる抽出液系に使用する酸としては、亜硝酸化合物と反応して亜硝酸を生成するものであって、検査デバイス系において存在するタンパク等を変性・析出させないものであれば有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、イタコン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、グリコール酸、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸等々が挙げられる。また、固定化した酸、例えば、ポリスルホン酸、ポリカルボン酸、ポリスチレン、ポリアクリル酸等々であっても良く何ら限定されるものではない。好ましくは、有機酸であって、酒石酸、イタコン酸、クエン酸が好ましく、クエン酸が最も好ましい。これらを混合して使用することも可能である。 酸と亜硝酸塩の使用割合は、モル比で0.1〜4:10〜100の範囲である。クエン酸は、一試験あたり0.1〜4μmol用いることが好ましく、0.1〜3μmol用いることがより好ましい。亜硝酸塩は、一試験あたり10〜100μmol用いることが好ましい。 本発明で使用する環状オリゴ糖は、イムノクロマトグラフ用試料抽出液(以下、「展開抽出液」ともいう。)または検体希釈液(以下、「検体処理液」ともいう。)中に含有させても良く、イムノクロマトキットにおける他の試薬保持部〔2〕に含有させても良く、またはそれら両方に含有させても良く、環状オリゴ糖の機能が発揮できる限り、何処に含有させても良いが、展開初期段階である検体処理液あるいは展開上流部に含有させるのが、機能上好ましい。 本発明のイムノクロマトキットを用いて検体中のグラム陽性菌を検出するためのイムノクロマト検出方法としては、(i)検体を緩衝液および界面活性剤を含む検体希釈液と接触混合して検体希釈液混合物を作成する工程、(ii)検体処理液混合物を試料滴下部に供給する工程、(iii)検体処理液混合物をイムノクロマト媒体上で展開して、抗原抽出部に存在する有機酸と亜硝酸化合物の反応によって媒体上で生成される亜硝酸によりグラム陽性菌中の抗原を抽出する工程、(iv)標識物質保持部において抗原を標識化する工程、および(v)クロマトグラフ媒体上を移動して検出部において標識化抗原を検出する工程、(vi)検体処理液混合物が、吸収部により吸収される工程、からなるイムノクロマト検出方法により達成することができる。 本発明のイムノクロマトグラフ用検体希釈液もしくはイムノクロマトキットの試薬中に使用できる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。また、悪影響を及ぼさない範囲内において非イオン性界面活性剤以外のイオン性界面活性剤などを配合して使用することも可能である。特に、本発明のイムノクロマトキットにおける有機酸含有抗原抽出部には、展開を均一にするために界面活性剤が必要であるが、界面活性剤を含ませることによって抗原抽出部の保存安定性が悪くなることが分かっている。この問題を解決する為に、種々の界面活性剤を含有させた抗原抽出部を有する試薬を作製して、過酷試験(80℃、12時間)を行った結果、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、例えば、ポリオキシエチレン(10)−p−t−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100(商品名)、HLB=13.5)、「TritonX−114」(商品名)(HLB=12.4)、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)が好ましいことが分かった。最も好ましくは、ポリオキシエチレン(10)−p−t−オクチルフェニルエーテル(TritonX−100(商品名))である。 本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフ用試薬中に使用する非イオン性界面活性剤の含有量としては、0.01〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.05〜5重量%の範囲でイムノクロマトグラフ用試薬に含有させることができる。0.01重量%未満では、例えば0.005重量%では正確な判定が行えない。0.05重量%未満では、非特異的反応を抑制できず正確な判定がやや難しくなる傾向を示す。10重量%以上、例えば12重量%、18重量%となると、必要以上の濃度となり、非特異的反応の抑制には好ましい影響を与えることがないばかりか、技術的に無意味になり、経済的でなく無駄となる。 本発明の抽出展開液、検体処理液などのイムノクロマトグラフ用試薬中に使用される塩としては、代表的なものとしては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等々が挙げられる。好ましくは塩化ナトリウムである。 本発明の抽出展開液などのイムノクロマトグラフ用試薬中に使用される塩の濃度としては、1mM〜500mMの範囲であり、5mM〜200mMの範囲が好ましく、10mM〜50mMの範囲がより好ましい。濃度が1mMより低くなると、例えば0.1mMと少なくなるとタンパク質の抽出作用が不十分になる。500mM以上では、例えば、1M、2Mと多くなれば、技術的に無意味な量であり、必要以上の濃度となり経済的でなく無駄となる。 本発明のイムノクロマトグラフ用試薬中に使用される塩としては、1種のみならず2種以上配合して使用することもできる。 本発明の抽出展開液中に使用する緩衝剤としては、試料の添加や試料の蒸発や希釈による濃度の変化、外部からの多少の異物の混入によっても致命的な影響を生じない作用(緩衝作用)を持つものであれば特に制限はない。 本発明において、緩衝剤としては、リン酸緩衝液(リン酸+リン酸ナトリウム)、酢酸緩衝液(酢酸+酢酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン+塩酸)、TE緩衝液(トリス+エチレンジアミン四酢酸)、TAE緩衝液(トリス+酢酸+エチレンジアミン四酢酸)、TBE緩衝液(トリス+ホウ酸+エチレンジアミン四酢酸)又はHEPES緩衝液(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルフォン酸)、Bicine緩衝液(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン緩衝剤)等が挙げられる。好ましくは、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、などであり、より好ましくは、トリス塩酸緩衝液である。本発明のイムノクロマト検出系においては、悪影響を及ぼさない範囲内であれば2種以上の緩衝剤を用いることも可能であって、何ら制限されない。 本発明で使用する緩衝剤の濃度としては、10〜500mMの範囲が好ましく、10〜300mMの範囲がより好ましく、30〜100mMの範囲がさらに好ましい。濃度が10mMより低くなると緩衝作用が不十分になり、タンパク成分の析出抑制や標識粒子の凝集抑制も不十分となる。500mM以上では、必要以上の濃度となり経済的でなく無駄となる。また、緩衝液として、pH範囲7.1〜9.8のものを作るのが最適である。 本発明のイムノクロマトグラフ用試薬には、生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、非特異的反応を抑制することが公知の添加剤、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質(例えば、牛血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン等)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストラン等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸等)、あるいは抗菌剤等々の1種もしくは2種以上を添加して使用することも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。また、これらの抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質、高分子化合物、イオン性界面活性剤又はポリアニオン、あるいは、抗菌剤等々の1種もしくは2種以上を、固定相を構成するクロマトグラフ媒体上の、移動相の移動経路上に保持させておくことも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。 本発明のイムノクロマトグラフ用試薬組成物中に含有させる上記添加剤の濃度としては、0.01〜20重量%の範囲が好ましく、0.1〜10重量%の範囲がより好ましく、0.5〜5重量%の範囲がさらに好ましい。0.01重量%未満では、非特異的反応を抑制できず正確な判定が行なえない。20重量%以上では、必要以上の濃度となり経済的でなく無駄となる。 本発明のイムノクロマトグラフ用試薬の使用方法としては、展開液として最適に用いることができるものであり、また、検体試料の希釈液としても好適に使用することができるものである。さらに、上記の使用方法に限定されるものではなく、イムノクロマトグラフ用試薬の成分をイムノクロマトグラフ媒体上の、移動相の移動経路上に設ける態様で使用することもできる。展開液や希釈液として用いる場合には、通常、溶媒として水を用い、これに緩衝液、蛋白質、塩および非イオン界面活性剤を加える。加える順序は特に特定されず、同時に加えても差支えない。展開液や希釈液として用いる場合には、検出する試料(検体)と該液を予め混合したものを、サンプルパッド(試料滴下部)上に供給・滴下して展開させることもできるし、先に試料(検体)をサンプルパッド(試料滴下部)上に供給・滴下して後、展開液をサンプルパッド(試料滴下部分)上に供給・滴下して展開させてもよい。 本発明のイムノクロマトグラフ用試薬をイムノクロマトグラフ媒体上の、移動相の移動経路上に設けて使用する場合には、その方法としては、例えば、イムノクロマトグラフ装置におけるサンプルパッド(試料滴下部位)中へ塗布又は含浸させた後、乾燥させる方法により、サンプルパッド中へ担持または保持させる態様とすることができる。本発明のイムノクロマトグラフ用試薬をイムノクロマトグラフ媒体上に保持または担持させる他の態様としては、試料滴下部の端部と吸収部との間の任意の場所に、添加剤(試薬)保持部を設けて、そこに保持させる態様とすることができる。例えば、試料滴下部、標識物質保持部やイムノクロマトグラフ媒体上とすることもできる。 本発明の検出対象物としては、それと特異的に結合する、例えば、抗原−抗体反応のように特異的に結合する物質が存在するもしくは製造できるものであればよく、特に限定されない。検出対象物が完全抗原といったそれ自体が抗原性を有するものであっても、もしくはハプテン(不完全抗原)といったそれ自体が抗原性を有しなくても化学的変成物とすることにより抗原性を持つに至るものであってもよい。これらの検出対象物と特異的に結合する物質が存在するもしくは製造できるものであればよく、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体とすることができる。本発明の検出対象物としては、生成する亜硝酸により抽出が可能であるような検出対象物に特異な多糖体抗原である。例示すれば、厚いペプチドグリカン層を有するグラム陽性菌が挙げられ、なかでも、球菌類が好ましく、特に好ましいものとしては、溶連菌抗原等の細菌抗原が挙げられる。 本発明の最適な検体は、鼻汁、鼻腔拭い液、咽頭拭い液又は痰である。これらの検体を本発明の検体希釈液を使用して予め希釈処理し、検査デバイス上に供給して抽出することにより、呼吸器疾患患者等々から採取される溶連菌抗原を被検出物質として的確に検出することができる。 本発明のイムノクロマトキットとしては、検体処理液と、試料滴下部、抗原抽出部、標識物質保持部、検出部および吸収部を有するイムノクロマトグラフ媒体から構成される、試料中のグラム陽性菌を検出するためのイムノクロマトグラフ媒体よりなるキットであって、検体処理液および/又は試料滴下部のいずれか一方にまたは両方に環状オリゴ糖および亜硝酸化合物のそれぞれを単独にまたは同時に含有させることにより、環状オリゴ糖および亜硝酸化合物を含むものであり、かつ該亜硝酸化合物と抗原抽出部に保持されている有機酸との反応によって亜硝酸を生成する抗原抽出部位を備えたイムノクロマトキット、にある。 このイムノクロマトキットは、環状オリゴ糖をイムノクロマトキットの1キット当り含有量が0.1〜5μgであることが好ましい。このキットを構成する試料滴下部(2)および抗原抽出部(3)が、標識物質保持部(4)の試薬展開方向上流に位置するように配置されたイムノクロマトキットである。有機酸含有抗原抽出部(試薬保持部(3))は、クエン酸と共にクエン酸塩を保持することが好ましい。 検体中の被検出物質を検出するためのイムノクロマト法に用いる検査キット(以下、「イムノクロマトキット」と略す。)は、その構造およびその動作・検出手法は、公知である。 従来のイムノクロマトキットのサンプルパッド中へ、本発明の検体処理液を使用して予め検体を希釈処理して得られた検体試料を滴下して、イムノクロマトグラフ媒体上を吸収部位の方向へ展開させて展開中に検体中の抗原を抽出し、抗原抗体反応により検体中の被検出物質の同定・定量等の検査をすることができる。 イムノクロマトキットについて、以下に説明をする。 通常、イムノクロマトキットは、クロマトグラフ媒体(1)(「検出部(判定部)」を有する。)、試料滴下部(2)(「サンプルパッド」ともいう、「試薬保持部(2)」ともいう。)、有機酸含有抗原抽出部(3)(「試薬保持部(3)」ともいう。)、標識物質保持部(4)、吸収部(5)(「展開速度コントロール部」ともいう。)およびバッキングシート(7)、試料抽出液(6)から構成されている。 イムノクロマトグラフィー装置について、以下に説明をする。 本発明のイムノクロマトグラフ用試薬の成分をイムノクロマトグラフ媒体上で実施する、いわゆるイムノクロマトグラフ検出法を適正に実施するに於いて、特に抗原抽出効率の向上のために工夫したキットの構造を示すのが図1(a)、(b)である。この図1(a)、(b)に基づいて説明をする。 図1に示すキットの構造の構成要素は、1;クロマトグラフィー媒体〔1〕であり、2;試薬保持部〔2〕であり(サンプルパッドと総称することもできる。)、3;試薬保持部〔3〕であり(有機酸含有抗原抽出部(3)と総称することができる。)、4;標識物質保持部〔4〕であり(コンジュゲートパッドと総称できる。)、5;吸収部〔5〕、および7;バッキングシートより構成される。本発明は、少なくともこの1〜5の各要素から構成される構造を有するイムノクロマトキットである。 本発明は、このような構成要素の配列順序が性能に影響することを知見したものであり、この構造を構成する要素の並びと、展開の作用を、下記の二点で順次比較して例示すれば、 本発明の構造(1) 2 3 4 1 5 展開良好 比較対象構造(2) 3 2 4 1 5 展開不良というように、この1〜5の構成要素の順位を任意に変えれば、特に展開作用のような挙動に影響を与えることになり、それらの構成要素の組み合わせにおいて、本発明の図1(a)、(b)に見るような要素の組み合わせの展開順序が、最も好ましい態様であり、若干展開性などを問題にしない場合には、構成要素の順序を変えた構造にすることも可能である。 一方、図1(a)、(b)のイムノクロマトキットは、基本的には、図1に示す構成要素からなる検査具であるが、特に「3;試薬保持部〔3〕」の要素部分を省略すれば、この場合に、亜硝酸の用事調製が複雑であり、円滑な検査に支障となる。 このように、本発明の図1に見るようなキットは、検査の性能や検査上の取り扱いにおいて格別の機能を果たすことを本発明者等は知見したものである。 試料滴下部(2)及び試薬保持部(3)は、試料が迅速に吸収されるが、保持力は弱く、速やかに反応部へと試料が移動していくような性質の、ガラス濾紙等の多孔質シートで構成されている。 試料滴下部(2)には、抗原抽出部(3)に含有されている有機酸と反応して亜硝酸を生成する亜硝酸塩を含有することができるが、亜硝酸塩はここに含有する代わりに試料抽出液(6)中に含有しても良く、またはそれら両方に含有させても良い。亜硝酸塩は、有効に機能するためには、有機酸を含有する部位より展開上流部位であれば含有させることができる。 試料抽出液(6)には、環状オリゴ糖を含有することができるが、環状オリゴ糖はここに含有する代わりに試料滴下部(2)中に含有しても良く、またはそれら両方に含有させても良い。亜硝酸塩は、有効に機能するためには、有機酸を含有する部位より展開上流部位であれば含有させることができる。 抗原抽出部(3)は、抗原抽出部としての機能を果たすものであるから、有機酸を含有しており、また展開を均一にするために非イオン性界面活性剤のTritonX−100(商品名)やTritonX−114(商品名)を含有させた。保存安定性も向上した。 標識物質保持部(4)には、標識成分によって試薬成分を標識した標識試薬を保持させてなる。標識成分としては、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、酵素、蛍光化合物等々があり、なかでも金属コロイド粒子が最適である。試薬成分としては、分析物を認識する能力を有する粒子又は分子であり、好ましくはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントである(第二試薬)。 金属コロイド粒子とは、銀、白金、ゲルマニウム、ロジウム、パラジウムのような貴金属の単粒子、複合粒子が任意に好ましく使用できる。特に金が色相の変化に敏感であり、最も適している。金属コロイド粒子の状態を見れば、平均粒径は1〜500nm、好ましくは10〜250nm、より好ましくは35〜100nm程度であり、媒体に対して、0.0001〜0.08重量%、好ましくは0.002〜0.06重量%程度の濃度で含むものが好適に使用される。本発明の金ナノ粒子とは、このような平均粒径を有する、金のナノ径の各種金コロイド粒子をさす。免疫学的測定においては、この金コロイドの粒径、粒度分布、色調などを考慮して、金コロイド粒子の表面に白金コロイド粒子を担持させた、金コロイド複合粒子とすることにより、免疫学的測定用の標識とすること、蛋白質の染色剤としての有用性を高める為に使用することができる。さらに、金属粒子表面に結合できる官能基と抗体と結合できる反応基を有するコロイド状金標識増幅剤のような、いわゆる増感剤を使用すれば測定感度を高めることができる。 クロマトグラフ媒体(1)は、膜担体上に検出部位を作成したものである。膜担体としては、毛細管現象により試料検体を吸収し移動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。 検出部位には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメント(第一試薬)が、ニトロセルロースのシート上に担持固定されている。 吸収部位(5)には、過剰の試料を迅速に吸収する能力を有する材料であるガラス繊維、セルロース繊維等からなる濾紙が汎用されているが、さらに吸収した液体が逆流しないように保持する能力を有する材料を用いればより好ましい。(特開2012−189346号公報) バッキングシート(7)は、基材である。片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより片面が粘着性を有し、該粘着面上に、試料添加部位(2)、抗原抽出部(3)、標識物質保持部位(4)、検出部位を有するクロマトグラフ媒体(1)、および吸収部位(5)の一部または全部が密着して設けられている。バッキングシート(7)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性、非透湿性となるようなものであれば、基材としては、特に限定されない。 検出部位に用いる試薬成分(第一試薬)および標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)は、その一方又は両方がモノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であっても良い。 モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントは、公知であり、入手可能であり、公知の方法により調整することができる。抗体産生動物種としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等々である。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでも良い。 本発明の実施例においては、標識試薬(4)に用いる試薬成分(第二試薬)および検出部位に用いる試薬成分(第一試薬)の両方に、ウサギ由来抗溶連菌ポリクローナル抗体を用いた場合を記載しているが、これに限定されるものではない。 典型的なキット構成における判定の原理を概説すると、1.検体(試料)を検体希釈液(6)で希釈処理した検体希釈液混合物を、サンプルパッド(2)上に、所定量(通常、0.1〜2ml)滴下する。検体希釈液混合物が滴下されると、検体希釈液混合物はサンプルパッド(2)に迅速に吸収されるが、速やかに移動を始める。また、サンプルパッド(2)中に乾燥・保持されていた亜硝酸塩及びシクロデキストリンを含む試薬組成物は、検体希釈液混合物の水分に溶解し、検体(試料)と共に移動を始める。2.亜硝酸塩を溶解含有した検体希釈液混合物は、まず抗原抽出部(3)へと移動する。ここで抗原抽出部(3)中に乾燥・保持されていた有機酸は、移動してきた検体希釈液混合物中に溶解している亜硝酸塩と接触反応して亜硝酸を生成する。この亜硝酸は検体(試料)中に溶連菌が存在する場合に、該菌体表面の多糖体を抽出する。3.次いで、亜硝酸を生成含有する検体希釈液混合物は、標識物質保持部(4)へと均一且つスムーズに移動する。ここを検体希釈液混合物が通過する際、標識物質保持部(4)に保持されていた標識試薬(第二試薬)が検体希釈液混合物の水分に溶解し、検体(試料)と共に移動する。4.ついで、検体希釈液混合物の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフ媒体(1)上の検出部位を通過する。ここでは、検体希釈液混合物中に溶解しているイムノクロマトグラフ用試薬組成物により非特異的結合反応は抑制され、抗原・抗体の特異的結合反応により、検体希釈液混合物中に被検出物質(例えば、多糖体)が存在する場合には、検出部位に担持固定されている抗体と標識試薬とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合して、検出部が着色する。検体試料中に被検出物質(例えば、多糖体)が存在しない場合には、検体希釈液混合物の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフ媒体(1)上の検出部を通過しても特異的結合反応が起こらないので、検出部位が着色しない。5.最後に、検体希釈液混合物の水分は、吸収部位(5)へと移動する。このように、検体(試料)中の被検出物質(例えば、多糖体)の有無を正確に判定することができる。 以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、亜硝酸ナトリウムを含む検体滴下部(2)とクエン酸を含む抗原抽出部(3)を有し、抽出効率を最適化するための展開速度コントロール部材(吸水量80−200mg/cm2)からなる展開速度コントロール部(5)を有するイムノクロマトキットである。 [実施例1](1)クロマトグラフ媒体〔1〕上への判定部の作製 メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120、250mm×25mm)を用いた。5質量%のイソプロパノールを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるようにウサギ由来抗溶連菌ポリクローナル抗体(第一抗体)を希釈し、その希釈された溶液150μLを抗体塗布機(BioDot社製)によりメンブレン上に1mmの幅で塗布し、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体〔1〕上に判定部を作製した。(2)標識物質溶液の作製 金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:平均粒子径40nm)0.5mLに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈したウサギ由来抗溶連菌ポリクローナル抗体(第二抗体)抗体0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10質量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液を作製した。(3)亜硝酸ナトリウムおよび環状オリゴ糖を含む試薬保持部〔2〕の作製 12×100mmのグラスファイバーコンジュゲートパッド(メルク社製)に、1mmolの亜硝酸ナトリウムを含む2μmolのβ−シクロデキストリンを含む水溶液0.6mLを塗布し、凍結乾燥させ、試薬保持部〔2〕を作製した。(4)クエン酸を含む試薬保持部〔3〕の作製12×100mmのグラスファイバーコンジュゲートパッド(メルク社製)に、50μmolのクエン酸を含む1.7質量%の非イオン性界面活性剤Triton-X100水溶液0.6mLを塗布し、凍結乾燥させ、抗原抽出部位を作製した。(5)イムノクロマトグラフ用試験片の作製 上記作製した標識物質溶液200μlに100μlの25質量%トレハロース水溶液と80μlの5質量%のカゼイン(終濃度:1質量%)を含むリン酸緩衝液(pH9.0)を加えたものを12×100mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識保持部〔4〕を作製した。次に、バッキングシートから成る基材に、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収パッド(吸収部)〔5〕、上記作製した判定部を有するクロマトグラフ媒体〔1〕、標識物質保持部〔4〕、試薬保持部〔2〕、試薬保持部〔3〕、をイムノクロマトグラフ展開方向上流から表1に示す順(展開方向は右から左)に貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフ用試験片とした。(6)検体希釈液の作製 0.5質量%のTween20、0.6質量%ポリビニルピロリドン(平均分子量36万)、1質量%の牛血清アルブミンと150mM塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝溶液(pH8.0)から成る検体を希釈しイムノクロマトグラフ試験片へ添加し展開するための検体希釈液とした。(7)測定 上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片および検体希釈液を用いて、以下の方法で検体中の抗原である溶連菌の存在の有無を測定した。即ち、抗原を加えない検体希釈液を陰性検体試料とし、また、陰性検体試料に、不活化したA群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)を2×106org/mLとなるように加えたものを陽性検体試料とした。 陰性検体試料、陽性検体試料とも150μLをイムノクロマトグラフィー用試験片の展開方向の最上流部、具体的には、実施例1、2では、試薬保持部〔2〕上に、比較例1、2では、試薬保持部〔3〕上に、比較例3及び実施例3では、標識物質保持部〔4〕上に添加し展開させ、15分後に目視判定をした。テストラインの赤い線を確認できるものを「+」、鮮明に確認できるものを「++」、赤い線は確認できるが、非常に色が薄いものを「±」、赤い線を確認できないものを「−」とした。展開性の評価は、展開液がクロマトグラフィー媒体上へ流れなかったもの、展開液はクロマトグラフィー媒体上で展開されるが金ナノ粒子標識試薬が流れなかったもの、クロマトグラフィー媒体上での展開中の液の先端流形にムラが生じたもの、を展開不良と判定し、不良がなかったものを良好と判定した。表1に結果を示す。 同様に、上記実施例1のクロマトグラフキットの構成において、試薬保持部〔2〕に含有させるβ−シクロデキストリン(以下、「β−CD」と略す。)に替えてγ−シクロデキストリン、Amino−β−シクロデキストリン、mβ−シクロデキストリン、シクロデキストリン無添加の各場合について検査デバイスの陰性・陽性検体での評価を行った。亜硝酸含有部に各CDを0.75μg/testとなるように保持した。比較のため、CDを含まない検査デバイスも作成し、合わせて評価を行った。その結果を図2に示す。下記の検査条件で実施した。 Positive:4×105org/mL溶連菌(判定時間8分) Negative:展開液(判定時間30分) 図2の結果から明らかなように、β−CD、γ−CDを亜硝酸含有部に保持することで、陰性検体での発色が低下し、陽性検体での発色が向上した。β−CD誘導体では感度の向上は見られるものの、陰性検体での発色がβ−CD、γ−CDを用いた場合より高くなっているため、S/N比がβ−CD、γ−CDを用いた場合より小さくなっている。表中、1〜5の数字は、1;クロマトグラフ媒体(1)、2;試薬保持部(2)、3;試薬保持部(3)、4;標識物質保持部(4)、5;吸収部(5)を表わす。 これらの結果から、実施例1〜3は、クエン酸を含む試薬保持部〔3〕が試薬保持部〔2〕の展開方向下流になっているため、試料中のタンパク成分が酸の影響を受けず展開性は良好であった。比較例1〜3では、展開性は不良であった。これらの場合は、クエン酸を含む試薬保持部〔3〕が試薬保持部〔2〕の展開方向上流になっているため、試料中のタンパク成分が酸により析出し、目詰まりを起こすなどの理由が推察される。上記の試験結果から、試薬保持部〔2〕は、試薬保持部〔3〕の展開方向上流であることが必須条件である。[実施例4〜16] 一試験(test)あたりの亜硝酸ナトリウム、環状シクロデキストリン、クエン酸を表2に記載の各種量とし、実施例1と同じ手順態様で実施した。陽性検体は、不活性溶連菌を一試験(test)あたり濃度が2×106org/mLのものを150μL用いた。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表2に示す。[実施例13] 試薬保持部〔3〕へクエン酸の代わりに酒石酸を含有させたこと以外は、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表2に示す。[実施例14] 試薬保持部〔2〕へ亜硝酸ナトリウムを含有させず、検体希釈液中に50μmol/testの亜硝酸カリウムを加えたこと以外は、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表2に示す。[実施例15] 試薬保持部〔2〕へβ−シクロデキストリンを含有させず、検体希釈液中に0.1μmolのβ−シクロデキストリンを加え、試薬保持部〔3〕へクエン酸の代わりにイタコン酸を含有させたこと以外は、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表2に示す。実施例14及び15は、亜硝酸塩または環状オリゴ糖を検体希釈液に保持させた形態です。[実施例16] 試薬保持部〔2〕へβ−シクロデキストリン及び亜硝酸ナトリウムを含有させず、検体希釈液中に50μmolの亜硝酸ナトリウム及び0.1μmolのβ−シクロデキストリンを加えたこと以外は、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表2に示す。実施例16は亜硝酸塩及び環状オリゴ糖を検体希釈液に保持させた形態です。注1. 陽性検体は、不活化溶連菌を一試験あたり濃度が2×106org/mLのものを150μL用いた。注2. Amino−β−シクロデキストリン: 3A−アミノ−3A−デオキシ-(2AS,3AS)−β−シクロデキストリン水和物注3. mβ−シクロデキストリン: 6−0−α−D−マルトシル−β−シクロデキストリン (分子量 1459)注4. クエン酸の代わりに酒石酸を用いた。注5. 亜硝酸ナトリウムの代わりに亜硝酸カリウムを用いた。注6. クエン酸の代わりにイタコン酸を用いた。 亜硝酸ナトリウムは、一試験当り10〜100μmol用いることが好ましい。[実施例17〜21]クエン酸をクエン酸とクエン酸3ナトリウムの混合物として表3に記載の各種比率で用いたこと以外は、実施例4と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表3に示す。 この結果から、イムノクロマトグラフ法による溶連菌検査を行うにおいて、クエン酸は、クエン酸とクエン酸のアルカリ金属塩との混合物として用いることが好ましく、その比率が5:1〜1:3で用いることがより好ましく、4:1〜2:3で用いることが最適であることが明らかとなった。また、これら態様で用いれば、タンパク成分の析出もなく、抗体感作金コロイドの凝集が起きず、展開速度も速く保ったまま、S/N比が向上し正確な判定ができる。[実施例22] 検体希釈液の作製において、牛血清アルブミンの代わりにカゼインを1質量%用いたこと以外は、実施例4と同様に試験を行った。結果は、陰性検体での偽陽性は見られず、カゼインの亜硝酸との反応による析出に由来する展開不良も確認されず、陽性検体で実施例4と同等の検出感度が得られた(5回の繰り返し試験で、陽性検体は全て+以上の判定)。 これらの結果から、イムノクロマトグラフ法による溶連菌検査を行うにおいて、亜硝酸Naは、一試験あたり10〜100μmol用いることが好ましく、クエン酸は、一試験あたり0.1〜4μmol用いることが好ましく、0.1〜3μmol用いることがより好ましいこと、また、環状オリゴ糖は、一試験あたり0.02〜0.5μmol用いることが好ましく、この範囲内で用いれば、タンパク成分の析出がなく、抗体感作金コロイドの凝集が起きず、展開速度も速く、S/N比が高い正確な判定ができるという顕著な効果を奏することが明らかとなった。 本発明は、呼吸器系感染症の一つであるグラム陽性菌、特に、A群β溶血性レンサ球菌の迅速且つ簡便な検査、診断に使用することができるという優れた利点を有するため、病院、クリニックのみならず格別な技能を有しない個人であっても、高感度で迅速な臨床検査が可能であり、感染者の早期診断や治療に繋がるという利用可能性を有する。さらに、 不安定な化合物である亜硝酸は、その検査の都度に、亜硝酸塩を酸性溶液と反応させる亜硝酸生成工程を設けるという煩雑な用時調製をする必要がないので、本発明のキットの取り扱い、検査効率および検査精度を上げるばかりでなく、検査の効率化、省力化も向上するので、検査機関に係わる産業分野、医療分野に係わる産業分野の発展に著しく寄与するものである。 1.クロマトグラフ媒体〔1〕 2.試料滴下部〔2〕(試薬保持部(2)) 3.抗原抽出部〔3〕(試薬保持部(3)) 4.標識物質保持部〔4〕 5.吸収部〔5〕 6.検体処理液(抽出液)(6)特表平7−503543号公報特表2008−509384号公報特表2006−518990号公報(特許第4667874号公報)特開2007−315883号公報特開2012−251789号公報特開2009−36781号公報 検体中の検出対象物の抗原を抽出剤により抽出して検出する免疫測定法において、環状オリゴ糖の存在下に行うことを特徴とする免疫測定法。 抽出剤が、有機酸と亜硝酸化合物の反応によりデバイス上で生成される亜硝酸であることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定法。 環状オリゴ糖がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免疫測定法。 亜硝酸化合物が、亜硝酸塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の免疫測定法。 有機酸が有機カルボン酸である請求項1〜4のいずれかに記載の免疫測定法。 抽出するpH条件が、6.8〜7.0である請求項1〜5のいずれかに記載の免疫測定法。 抗原が、多糖体である請求項1〜6のいずれかに記載の免疫測定法。 検出対象物が、グラム陽性菌である請求項1〜7のいずれかに記載の免疫測定法。 グラム陽性菌が、溶血性連鎖球菌である請求項1〜8のいずれかに記載の免疫測定法。請求項1〜9のいずれかに記載の免疫測定法において使用する、環状オリゴ糖を含有する免疫測定用試薬。請求項1〜9のいずれかに記載の免疫測定法を行なうためのイムノクロマトグラフィー装置。検体希釈液と、試料滴下部、抗原抽出部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体、および吸収部から構成されていて、かつ抗原抽出部に有機酸が保持されてなる検体中の検出対象物を検出するためのイムノクロマトキットであって、検体希釈液及び/又は試料滴下部のいずれか一方又は両方に、環状オリゴ糖、亜硝酸化合物又はそれらの混合物のうちのいずれか一つ以上を含有することにより、環状オリゴ糖および亜硝酸化合物を含有するようにしたことを特徴とするイムノクロマトキット。 環状オリゴ糖は、イムノクロマトキットの1キット当り含有量が0.1〜5μgであることを特徴とする請求項12に記載のイムノクロマトキット。 環状オリゴ糖がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又はそれらの誘導体の1以上であることを特徴とする請求項12又は13に記載のイムノクロマトキット。 有機酸と共に非イオン性界面活性剤を保持することを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載のイムノクロマトキット。 亜硝酸化合物が、亜硝酸塩であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のイムノクロマトキット。 抗原抽出部に、クエン酸と共にクエン酸塩を保持することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載のイムノクロマトキット。検出対象物がグラム陽性菌である請求項12〜17のいずれかに記載のイムノクロマトキット。 請求項1〜9のいずれかに記載の免疫測定法を行なうために使用する請求項12〜18のいずれかに記載のイムノクロマトキット。 【課題】イムノクロマトグラフィー装置を用いて検出対象物である溶連菌の検出技術において、非特異的反応を抑制して、タンパク成分の析出・沈殿が起こらず、抗体固定粒子コロイドの凝集が起こらず、かつ展開速度の速い、高感度なイムノクロマトグラフ用試薬ならびに検出キットを提供する。【解決手段】環状オリゴ糖の存在下に行う免疫測定法であって、検体希釈液と、試料滴下部、抗原抽出部、標識物質保持部、検出部を有するイムノクロマトグラフ媒体、および吸収部から構成されていて、かつ抗原抽出部に有機酸が保持されてなる検体中のグラム陽性菌を検出するためのイムノクロマトキットであって、検体希釈液および/又は試料滴下部のいずれか一方または両方に環状オリゴ糖、亜硝酸化合物及びそれらの混合物のうちのいずれか一つ以上を含有することにより、環状オリゴ糖および亜硝酸化合物を含有するようにしたイムノクロマトキットを用いる。【選択図】図1


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る