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タイトル:公開特許公報(A)_口腔用組成物及びカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤
出願番号:2013157880
年次:2014
IPC分類:A61K 31/045,A61P 31/10,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

有田 卓矢 羽山 和美 JP 2014043441 公開特許公報(A) 20140313 2013157880 20130730 口腔用組成物及びカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤 サンスター株式会社 000106324 静岡県 590002389 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 有田 卓矢 羽山 和美 JP 2012168691 20120730 A61K 31/045 20060101AFI20140214BHJP A61P 31/10 20060101ALI20140214BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140214BHJP JPA61K31/045A61P31/10A61P43/00 121 5 OL 21 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA08 4C206CA13 4C206MA02 4C206MA04 4C206MA77 4C206NA05 4C206ZB35 4C206ZC75 本発明は、口腔用組成物及びカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤に関する。 口腔カンジダ症は、口腔粘膜疾患のひとつで、日和見感染菌であるカンジダ菌(主としてCandida albicans)が原因で発症する感染症である。主な臨床症状としては白苔や発赤、舌の疼痛や違和感、味覚異常等がある。日和見感染菌は、健常人に対しては無害な弱毒微生物、または非病原性微生物であるが、免疫力の低下した易感染性宿主に対して病原性を発揮する。口腔カンジダ症と関連する局所及び全身因子としては、唾液量の低下、義歯の装着、ステロイド薬の長期投与、抗菌薬の濫用、化学療法や放射線療法、栄養状態の低下、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)感染、内分泌障害等があり、これらによる宿主抵抗力の低下や菌交代現象が起因となる。 カンジダ菌は球形の酵母型と糸状の菌糸型とを可逆的に形態変換する二形性という特徴を有しており、酵母型から菌糸型への形態変換はバイオフィルム形成や組織への侵入等の病原性の一因と考えられている。口腔カンジダ症ハイリスク者(易感染性宿主)は、菌交代現象を生じやすく、唾液分泌低下等により口腔粘膜が脆弱になっている場合が多い。そのため、口腔カンジダ症の効果的な予防には、カンジダ菌の感染制御に加え、口腔内常在菌の菌叢バランスを乱さず、かつ粘膜細胞(生体)に対しても低刺激であることも求められる。その手段のひとつとして、カンジダ菌の菌糸型への形態変換やバイオフィルム形成を阻害することは、カンジダ菌の病原性を特異的に抑制できる効果的な予防法になると考えられる。 ゲラニオールは、ローズ、パルマローザ、ゼラニウム等の植物の精油中に含有される直鎖モノテルペンアルコールであり、カンジダ菌に対しての効果やバイオフィルム形成の抑制効果を示すという報告がなされている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、特許文献1では、ゲラニオールが口腔カンジダ症の発症予防や進行抑制に有効であることは具体的に示されていない。また、特許文献2では種々の菌に対してバイオフィルム形成の抑制効果があると示されているが、その濃度が0.1%と口腔には不適な濃度であり、さらに抑制効果も50%ほどで十分満足できる水準にはない。 一方、口腔用組成物において、ゲラニオールとメントールとの併用が示唆されている(特許文献3〜5参照)。特許文献3は、ゲラニオール、メントール等の苦味を有する配糖体と、N−置換−p−メンタン−3−カルボキサミド類とを含有し、メントール又はそれを含有する精油類に起因する異味及び異臭がマスキングされた口腔用組成物を開示する。特許文献4は、ゲラニオールとメントールとを含有し、使用者が誤飲することない程度の刺激や苦味を有し、使用感に優れた口腔用組成物を開示する。特許文献5は、甘味を有する基剤と、ゲラニオール、メントール等のテルペンアルコール系苦味物質とを含有し、甘味がマスキングされて、さっぱりとした後味を有する口腔用組成物を開示する。 しかしながら、特許文献3〜5には、ゲラニオールとメントールとを実際に併用した例は記載されていない。また、特許文献3〜5には、メントールの口腔カンジダ症を抑制する効果、及び、ゲラニオールとメントールとの併用による、口腔カンジダ症を抑制する効果の相乗的な向上について、記載されていない。特開2000−290176号公報特開2007−091706号公報特開平8−310930号公報特開2000−026260号公報特開2001−064136号公報 本発明の目的は、口腔カンジダ症の予防及び抑制に効果があり、安全性の高い口腔用組成物及びカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤を提供することである。 上述のように、Candida albicansの菌糸型への形態変換に関しては、一部の植物精油に抑制効果があることが報告されているが、十分満足できる水準の抑制効果を有する化合物は得られていない。本発明者らは、上記課題を解決するための研究過程において、バラの精油中に高濃度で含まれるゲラニオールが、現在知られている化合物の中では上記形態変換を抑制する最も高い活性を有することを見出した。さらに本発明者らが研究を重ねた結果、このゲラニオールにメントールを組み合わせることにより、上記形態変換又は菌糸型のカンジダ菌の増殖を抑制し、バイオフィルムの形成を抑制する抗カンジダ効果が相乗的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。 (1)ゲラニオールとメントールとを含有し、ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比が3/97〜95/5である口腔用組成物。 (2)ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比が5/95〜95/5である上記(1)の口腔用組成物。 (3)ゲラニオール含有量が口腔用組成物全量の0.001質量%以上、1質量%未満である上記(1)又は(2)の口腔用組成物。 また、本発明は、下記のカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤を提供する。 (4)ゲラニオールとメントールとを含有し、ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が3/97〜95/5であるカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤。 (5)ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が5/95〜95/5である上記(4)のカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤。 本発明の口腔用組成物は、口腔カンジダ症の発症予防及び進行抑制に有効であると共に、高い安全性を有している。本発明のカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤は、カンジダ菌の菌糸型への形態変換又は菌糸型のカンジダ菌の増殖を抑制し、バイオフィルム形成を抑制する効果を有する。ゲラニオールとメントールとを各濃度で含有するカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤の存在下でのバイオフィルム形成率(%)を示すグラフである。ゲラニオール又はメントールの濃度と、バイオフィルム形成率(%)との関係を示すグラフである。ゲラニオール又はメントールの、酵母型のカンジダ菌に対する増殖抑制効果を示すグラフである。本発明の口腔用組成物による口腔カンジダ症の発症抑制効果を示すグラフである。試験例4における、供試製剤X処理群(a)、供試製剤Y処理群(b)及び感染のみ処理群(c)の各群のICRマウスの舌の外観を示す写真である。[口腔用組成物] 本発明の口腔用組成物は、ゲラニオールとメントールとを含有し、ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比が3/97〜95/5、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは15/85〜95/5、さらに好ましくは20/80〜95/5であることを特徴とする。このような特徴により、本発明の口腔用組成物は、口腔カンジダ症の発症予防及び進行抑制に有効である。 ゲラニオールは、ローズ、パルマローザ、ゼラニウム等の植物の精油中に含有される、化学式:C10H18Oで表わされる直鎖モノテルペンアルコールであり、バラの香りに似た芳香を有している。ゲラニオールは、口腔用組成物や各種化粧料、食品等の香料として広く使用され、安全性の高い物質として知られている。さらに、ゲラニオールは、カンジダ菌に対しての効果や種々の菌に対するバイオフィルム形成の抑制効果が報告されているが、十分満足できる水準にはない。 1−メントール(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール)は、ペパーミント等のハッカ属植物やハッカ油等に多く含まれる環式モノテルペンであり、古くから、食品や医薬品に添加され、最近では口腔用組成物や化粧料等にも多用されている。メントールもゲラニオールと同様に、高い安全性を有している。 本発明者らは、メントールが、口腔カンジダ症の発症予防や進行抑制等に効果を示すことを見出した。しかしながら、メントールを単独で使用しても、その効果は、ゲラニオールと同様に、十分満足できる水準にはない。なお、メントールを高濃度で使用した場合には、菌糸型の形態のカンジダ菌の増殖を抑制する効果が大きくなるが、メントールは強い刺激性を有するため、高濃度のメントールを含む口腔用組成物は口腔内で服用し辛くなる。 本発明の口腔用組成物では、ゲラニオールとメントールとを、質量基準の配合比で3/97〜95/5、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは15/85〜95/5、さらに好ましくは20/80〜95/5となるように使用する。このように、ゲラニオールとメントールとを所定の配合比で併用することにより、ゲラニオールの単独使用効果、メントールの単独使用効果、及び両者の単独使用効果を併せた効果(相加効果)よりも更に高い効果(相乗効果)が得られる。 ゲラニオールの配合比が3未満である場合(又はメントールの配合比が97を超える場合)は、両者の単独使用効果を併せた相加効果しか得られない。また、ゲラニオールの配合比が95を超える場合(又はメントールの配合比が5未満の場合)も、両者の単独使用効果を併せた相加効果しか得られない。 また、本発明では、ゲラニオールとメントールとを上記した所定の配合比で用いることにより、口腔用組成物におけるゲラニオール及びメントールの含有量を低減化することができる。これにより、口腔カンジダ症の発症予防及び進行抑制に有効であり、かつ、刺激性が低く、口腔内に服用し易い口腔用組成物が得られる。また、ゲラニオール及びメントールは共に高い安全性を有しているため、安全性の高い口腔用組成物が得られる。 本発明の口腔用組成物における、ゲラニオールの含有量は特に限定されないが、口腔用組成物の口腔内への服用のし易さ、唾液等での希釈による効力低下等の観点から、好ましくは口腔用組成物全量の0.001質量%以上、1質量%未満であり、更に好ましくは口腔用組成物全量の0.005質量%〜0.1質量%である。 ゲラニオールの含有量が0.001質量%未満では、ゲラニオールとメントールとの配合比が上記所定範囲の中に入っていても、口腔用組成物の口腔カンジダ症に対する発症予防及び進行抑制の効果が不十分になるおそれがある。一方、ゲラニオールの含有量が1質量%以上では、口腔カンジダ症に対する発症予防及び進行抑制の効果は得られるものの、ゲラニオール及びメントールはいずれも強い香気を有しているため、口腔用組成物の刺激性が強くなり過ぎ、口腔用組成物を口腔内に服用し辛くなるおそれがある。 本発明の口腔用組成物は、種々の形態に製剤化することができる。本発明の口腔用組成物の製剤形態としては、特に限定されないが、例えば、練歯磨剤、ペースト剤(クリーム状製材)、液体歯磨剤、洗口剤、口腔用保湿剤、液剤、ジェル剤、パスタ剤、軟膏剤、スプレー剤、ガム剤等が挙げられる。これらの中でも、洗口剤、液体歯磨剤、スプレー剤、液剤、軟ペースト剤(クリーム状製剤)等の液体又は液状の形態が好ましく、洗口剤、液体歯磨剤、スプレー剤、液剤等がより好ましく、洗口剤がさらに好ましい。 本発明の口腔用組成物は、例えば、製剤形態等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を任意成分として含むことができる。添加剤としては、従来から口腔用組成物に使用されている添加剤であれば特に限定されないが、例えば、界面活性剤、香料、増粘剤、甘味料、湿潤剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、薬効成分、基剤、研磨剤等が挙げられる。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。 ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン付加係数が4〜15、アルキル基の炭素数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレンラノリン、ポリエチレンステロール、ポリエチレンラノリンアルコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。 アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。 両性イオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤、N−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤、N−ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。 界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 香料としては、例えば、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油等が挙げられる。香料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース化合物、キサンタンガム、ジェランガム等の微生物産生高分子化合物、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン等の天然高分子化合物又は天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子化合物、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性増粘剤等が挙げられる。増粘剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 甘味剤としては、例えば、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール等が挙げられる。甘味剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。湿潤剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩等が挙げられる。防腐剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルクロン酸、フマル酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびこれらの塩や、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。pH調整剤は1種を単独で又は2種以上を組合せて使用できる。なお、本発明の口腔用組成物のpHは、口腔内で使用可能な範囲であれば特に制限されないが、通常、pH5.5〜9.5、好ましくはpH5.8〜8.0、より好ましくは6.0〜7.5である。 薬効成分としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性殺菌剤;ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤;イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン等の非イオン殺菌剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム等のグリチルリチン酸塩である抗炎症剤;ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール等の血行促進剤;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸等の抗プラスミン剤;アスコルビン酸等の出血改善剤;アラントイン等の組織修復剤;フッ化ナトリウム等のフッ素化合物等の再石灰化剤;水溶性溶媒で抽出された植物抽出物、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、塩化亜鉛、ヒノキチオール等が挙げられる。薬効成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 基剤としては、例えば、アルコール、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクロスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。基剤は1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。 研磨剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。研磨剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。 本発明の口腔用組成物は、例えば、ゲラニオール及びメントールの所定量を、製剤形態に応じて、上記添加剤の1種又は2種以上と混合することにより得ることができる。また、ゲラニオール及びメントールの所定量を水に溶解し、得られた水溶液に、必要に応じて、上記添加剤の1種又は2種以上を混合することによっても、本発明の口腔用組成物を得ることができる。 本発明の口腔用組成物の使用方法は特に限定されないが、例えば、うがい、口腔内粘膜、舌表面や歯茎等への貼付又は塗布、歯ブラシを用いたブラッシング等の使用方法が挙げられる。[カンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤] 本発明のカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤(以下「本発明のバイオフィルム形成抑制剤」とすることがある)は、ガンジダ菌の酵母型から菌糸型への形態変化又は菌糸型のカンジダ菌の増殖を抑制し、カンジダ菌の菌体とその分泌物とからなるバイオフィルムの形成量を著しく低減化することができる。このような効果により、本発明のバイオフィルム形成抑制剤は、口腔内においてカンジダ菌が引き起こす口腔内カンジダ症の発症予防、進行抑制及び治療に有効であると考えられる。 本発明のバイオフィルム形成抑制剤が有効なカンジダ菌としては、例えば、カンジダ・シフェリ(Candida ciferrii)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)、カンジダ・ランビカ(Candida lambica)、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ノルベゲンシス(Candida norvegensis)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・ビスワナチ(Candida viswanathii)、カンジダ・ゼイラノイデス(Candida zeylanoides)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・ケフィア(Candida kefyr)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)等が挙げられる。これらのカンジダ菌の中でも、特に、カンジダ・アルビカンスに対して有効である。 本発明のバイオフィルム形成抑制剤は、ゲラニオールとメントールとを、これらの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が3/97〜95/5、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは15/85〜95/5、さらに好ましくは20/80〜95/5となるように含有することを特徴とする。ゲラニオールとメントールとを前記配合比で含有することにより、口腔カンジダ症に対する効果が、ゲラニオール単独の効果とメントール単独の効果とを合わせた相加的な効果よりもさらに大きくなる。前記配合比の範囲外では、前記した相加的な効果しか得られず、口腔カンジダ症に対する発症予防及び治療効果は不十分になる。 本発明のバイオフィルム形成抑制剤におけるゲラニオールの含有量は特に限定されないが、口腔カンジダ症に対する効力、製剤化や服用のし易さ、唾液等での希釈による効力低下等の観点から、好ましくはバイオフィルム形成抑制剤全量の0.001質量%以上、1質量%未満、更に好ましくはバイオフィルム形成抑制剤全量の0.005質量%〜0.1質量%である。ゲラニオールの含有量が0.001質量%未満では、ゲラニオールとメントールとの配合比が上記所定の範囲内であっても、口腔カンジダ症に対する発症予防及び進行抑制の効力が低下する傾向がある。一方、ゲラニオールの含有量が1質量%以上では、口腔カンジダ症に対する効力は大きくなるが、製剤化や服用が困難になる傾向がある。 本発明のバイオフィルム形成抑制剤におけるメントールの含有量は、ゲラニオールの含有量に応じて、上記ゲラニオールとメントールとの配合比が所定の範囲に収まるように、適宜選択すればよい。 本発明のバイオフィルム形成抑制剤は、例えば、経口投与等により投与される。本発明のバイオフィルム形成抑制剤の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、製剤形態等に応じて適宜選択されるが、例えば成人(60kg)の場合、1日当たりゲラニオールとメントールとの合計量として好ましくは0.1mg〜1000mg、より好ましくは1mg〜100mgである。投与は、例えば、1日当たり1回又は2〜4回に分けてもよい。 本発明のバイオフィルム形成抑制剤の製剤形態としては特に限定されず、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末、丸剤、トローチ剤、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、フィルム製剤等の固形剤、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液剤、パッチ製剤等が挙げられる。この製剤化の際には、薬理的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、増量剤、可溶化剤等が用いられる。さらに、結合剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いても良い。 さらに、本発明のバイオフィルム形成抑制剤は、上記した口腔用組成物の形態に製剤化でき、更に、チューイングガム、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ等の製菓の形態に製剤化してもよい。 以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下特に断らない限り、「%」及び「部」は質量基準とする。(試験例1) ゲラニオールとメントールとを含むバイオフィルム形成抑制剤の、口腔カンジダ症の原因菌であるカンジダ菌に対する効果を調べるため、以下の試験を実施した。本試験例において使用した供試菌、装置、器具、試薬及び培地は、具体的には次の通りである。[供試菌] カンジダ・アルビカンス(C. albicans)NBRC1594。このカンジダ菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターより入手可能である。[装置・器具] 蛍光マイクロプレートリーダ:商品名;Gemini XPS、モレキュラーデバイスジャパン(株)製 分光光度計:商品名;UV−1600、(株)島津製作所製) 96ウェルプレート:住友ベークライト(株)製[試薬] ゲラニオール:和光純薬(株)製 l−メントール:長岡香料(株)製 アラマーブルー(AlamarBlue(商標名)):細胞染色用試薬、商品名;invitrogen(商標名)、ライフテクノロジーズジャパン(株)製 リン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」とする):大日本住友製薬(株)製 エタノール:和光純薬(株)製[培地] YPD液体培地:日本ペクトンディッキンソン(株)製 R10液体培地:RPMI1640培地(商品名、シグマアルドリッチジャパン(株)製)に10%のFBS(ウシ胎児血清、バイオウエスト社製)を溶解して調製。 R10液体培地は菌糸型のカンジダ菌の培養用培地として使用し、YPD液体培地は酵母型のカンジダ菌の培養用培地として使用した。(1)カンジダ菌液の調製 YPD液体培地10mlにカンジダ菌を接種し、28℃で24時間振盪培養した。カンジダ菌は、酵母型の形態で培養した。得られた培養液を3000Gで5分間遠心分離した。得られたカンジダ菌の菌体をPBSで1回洗浄した後、R10液体培地に懸濁し、吸光光度計で測定した660nmにおける濁度(OD660、マクファーランド比濁法)がおよそ1.0になるように調整し、カンジダ菌液を得た。得られたカンジダ菌液は、1ml当たり約1.0×106個のカンジダ菌を含んでいた。(2)供試製剤液の調製 ゲラニオール及びメントールをそれぞれエタノールにて200mg/mlに希釈し、さらに、R10液体培地にて400倍希釈し、ゲラニオール及びメントールがそれぞれ500μg/mlになるように調整した調整液を作製した。このとき、溶媒は、0.25%のエタノールを含有するR10液体培地となる。この溶媒にてゲラニオール及びメントールの各調整液を希釈し、100、50、25、12.5、6.25、3.13及び1.56(μg/ml)の各濃度の希釈液を得た。 ゲラニオールの各濃度の希釈液50μlとメントールの各濃度の希釈液50μlとを混合し、供試製剤液を得た。この供試製剤液においては、ゲラニオール及びメントールの濃度は2倍に薄められているので、50、12.5、6.25、3.13、1.56及び0.78になる。また、比較のために、ゲラニオールの各濃度の希釈液又はメントールの各濃度の希釈液50μlと、上記した希釈用液体50μlとを混合し、ゲラニオール又はメントールを単独で含有する比較用供試製剤液を得た。(3)培養 得られた供試製剤液及び比較用供試製剤液を96ウェルプレートの各ウェルに100μlずつ供給し、さらに上記で得られたカンジダ菌液10μlずつ添加し、各ウェルにおける供試製剤液(又は比較用供試製剤液)とカンジダ菌液との混合液の菌濃度がOD660=0.1になるように調整した。なお、96ウェルプレートの1つのウェルには、エタノールを0.25%の割合で含有するR10液体培地100μlとカンジダ菌液10μlとを供給し、ネガティブコントロールとした。 この96ウェルプレートを恒温槽に入れ、37℃で90分間の精置培養を行なった。この培養により、混合液中のカンジダ菌を96ウェルプレートに付着させるとともに、酵母型から菌糸型に形態変換させた。引き続き、37℃で24時間の振盪培養を行ない、カンジダ菌のバイオフィルムを形成させた。(4)生存菌数の測定 96ウェルプレートの各ウェル中の培養液の培養上清を捨て、各ウェル内のバイオフィルムを200μlのPBSで3回洗浄した後、アラマーブルーの10倍希釈液を各ウェルに100μlずつ供給し、37℃で180分間発色反応させた。アラマーブルーは代謝活性により酸化還元型の色素となり、蛍光発色するため、バイオフィルムの形成量に応じて蛍光強度が強くなる。発色反応後の検体の蛍光強度を、蛍光マイクロプレートリーダにより、励起波長Ex:560及び蛍光波長Em:590にて測定した。この試験を3回実施して、蛍光強度の平均値を求めた。 ネガティブコントロールでのバイオフィルム形成量(蛍光強度)を100として、各供試製剤液の濃度におけるバイオフィルム形成量をネガティブコントロールに対する相対値(バイオフィルム形成率、%)として示した。結果を表1に示す。なお、表1に記載の数値は、小数点第3位を四捨五入した値である。また、表1に記載のデータを、図1に示すようにグラフ化した。図1は、ゲラニオールとメントールとを各濃度で含有するバイオフィルム形成抑制剤の存在下でのバイオフィルム形成率(%)を示すグラフである。 ゲラニオール及びメントールの濃度がそれぞれ0μg/mlであるネガティブコントロールでは、カンジダ菌のほぼ全てが生菌の状態で存在するため、標準的なバイオフィルム形成量になっていると考えられる。このネガティブコントロールでのバイオフィルム生成量を100とした場合に、ゲラニオールとメントールを含むバイオフィルム形成抑制剤が存在する系では、バイオフィルム生成量が100よりも小さくなることが、表1から判る。また、太線で囲んだ部分のバイオフィルム形成抑制剤は、バイオフィルム形成率がいずれも20%未満であり、優れた効果を有することが、表1から判る。 このことから、ゲラニオールとメントールとを含むバイオフィルム形成抑制剤が、菌糸型の形態にあるカンジダ菌の増殖を抑制し、口腔カンジダ症の原因になると考えられるバイオフィルムの形成を抑制し、口腔カンジダ症の発症予防、進行抑制及び治療に有効であると考えられる。(試験例2) 同じ薬効を示す2つの薬剤(薬剤1及び薬剤2)を併用した場合に、相乗効果又は相加効果のいずれを示すかの客観的指標が、2つの非特許文献(TING-CHAO CHOU, Academic, San Diego,pp.61-102及びTING-CHAO CHOU, et al. Trends Pharmacol Sci. 1983;4:450-454)に記載されている。これらの非特許文献によれば、薬剤1と薬剤2の作用が同一又は類似の形態を有する相互に排他的な薬剤(mutually exclusive drugs)の場合、この2つの薬剤の相乗性効果の指標になるCIAは、下記式(A)により表わされる。 CIA=[(D)1/(Dx)1]+[(D)2/(Dx)2] (A)〔式中、(D)1は、薬剤1と薬剤2とを併用した場合に、x%の抑制効果が得られる薬剤1の濃度(μg/ml)を示す。(Dx)1は、薬剤1単独でx%の抑制効果が得られる薬剤1の濃度(μg/ml)を示す。(D)2は、薬剤1と薬剤2とを併用した場合に、x%の抑制効果が得られる薬剤2の濃度(μg/ml)を示す。(Dx)2は、薬剤2単独でx%の抑制効果が得られる薬剤2の濃度(μg/ml)を示す。〕 また、薬剤1と薬剤2の作用が完全に独立した形態を有する相互に非排他的な薬剤(mutually non-exclusive drugs)の場合、この2つの薬剤の相乗効果の指標になるCIBは、下記式(B)により表わされる。 CIB=[(D)1/(Dx)1]+[(D)2/(Dx)2]+[(D)1(D)2/(Dx)1(Dx)2] (B)〔式中、(D)1、(D)2、(Dx)1及び(Dx)2は上記に同じ。〕 本試験例では、ゲラニオールとメントールとの併用系が、カンジダ菌のバイオフィルム形成抑制に対して、相乗効果を及ぼすかどうかを検討するため、また、そのメカニズムが排他的か非排他的か不明であるため、上記式(A)及び(B)から、CIA及びCIBの数値を求め、以下の基準で評価した。この評価基準は、上記式(A)及び(B)の計算値の評価基準として、上記2つの非特許文献に記載されているものである。[評価基準] 0.1 非常に強い相乗作用がある。 0.1〜0.3 強い相乗作用がある。 0.3〜0.7 相乗作用がある。 0.7〜0.9 わずかに相乗作用がある。 0.9〜1.1 ほぼ相加的作用である。 1.1〜1.45 わずかに拮抗作用がある。 1.45〜3.3 拮抗作用がある。 >3.3 非常に強い拮抗作用がある。 試験例1と同様の試験方法により、ゲラニオール単独、メントール単独、及び、ゲラニオールとメントールとの併用系において、バイオフィルムの形成を80%阻害する各薬剤濃度(IC80、μg/ml)を求め、式(A)及び式(B)から、CIA及びCIBの値を求め、上記評価基準に基づいて、相乗効果又は相加効果のいずれであるかを判定した。結果を下記表2に示す。 上記表2において、ゲラニオール(薬剤1)とメントール(薬剤2)との質量比が16:1である場合の計算例を示す。ゲラニオールとメントールとの質量比が16:1である場合、IC80に必要な濃度はゲラニオールとメントールとの合計量として13.28μg/mlになるので、(D80)1=13.28×16÷17、(D80)2=13.28×1÷17となる。 また、試験例1と同様にして、ゲラニオール単独の各濃度の供試製剤液及びメントール単独の各濃度の供試製剤液を調製し、これを用いて、各濃度におけるバイオフィルム形成率(%)を求めた。但し、供試製剤液におけるゲラニオール又はメントールの濃度は、それぞれ、500、250、125、62.5、31.25、15.63、7.813(μg/ml)とした。ここでのバイオフィルム形成率も、ゲラニオール及びメントールを含まないネガティブコントロールにおけるバイオフィルム形成量(蛍光強度)を100とした場合の相対値(バイオフィルム形成率、%)とした。結果を図2に示す。 図2は、ゲラニオール又はメントールの濃度と、バイオフィルム形成率(%)との関係を示す折れ線グラフである。図2において、バイオフィルム形成率20%の位置が、バイオフィルムの形成を80%阻害する薬剤濃度になる。したがって、図2から、ゲラニオールがバイオフィルムの形成を80%阻害する濃度:(D)1=25μg/mlであり、メントールがバイオフィルムの形成を80%阻害する濃度:(D)2=62.50μg/mlである。これらの数値を式(A)及び式(B)に代入して計算することにより、CIA及びCIBの値が求められる。 表2から、ゲラニオールとメントールとの質量比が16:1〜1:32の範囲で、ゲラニオールとメントールとを併用することによる相乗効果が得られることが明らかである。(試験例3) 培養液中に浮遊状態で存在する酵母型のカンジダ菌に対するゲラニオール及びメントールの効果を調べるため、下記の試験を実施した。なお、供試菌、装置・器具、試薬及び培地に関しては、蛍光マイクロプレートリーダ(Gemini XPS)に代えて吸光プレートリーダ(商品名:VersaMaxリーダ、モレキュラー・デバイス社製)を用いる以外は、試験例1と同じものを用いた。(1)カンジダ菌液の調製 YPD液体培地10mlにカンジダ菌を接種し、28℃で24時間振盪培養し、酵母型のカンジダ菌を増殖させた。得られた培養液を3000Gで5分間遠心分離し、得られたカンジダ菌の菌体をPBSで1回洗浄した後、YPD液体培地に懸濁し、吸光光度計で測定した660nmにおける濁度(OD660、マクファーランド比濁法)がおよそ1.0になるように調整し、カンジダ菌液を得た。(2)供試製剤液 ゲラニオール及びメントールをそれぞれエタノールにて200mg/mlに希釈し、さらに、YPD液体培地にて400倍希釈し、ゲラニオール及びメントールがそれぞれ500μg/mlになるように調整した調整液を作製した。このとき、溶媒は、0.25%のエタノールを含有するYPD液体培地となる。この溶媒にてゲラニオール及びメントールの各調整液を希釈し、100、50、25、12.5、6.25、3.13及び1.56(μg/ml)の各濃度の供試製剤液を得た。(3)培養 ゲラニオール及びメントールのそれぞれの供試製剤液100μlを96ウェルプレートのウェルに供給し、ここに上記で得られたカンジダ菌液10μlを添加した。 なお、ネガティブコントロールとして、エタノールを0.25%含有するYPD液体培地100μlをウェルに供給し、これにカンジダ菌液10μlを添加した。また、ブランクとして、エタノールを0.25%含有するYPD液体培地100μlをウェルに供給し、これにYPD液体培地10μlを添加した。この96ウェルプレートを恒温槽に入れ、28℃で24時間の精置培養を行なった。 培養終了後、各ウェル中の培養液の吸光度(OD660)を、吸光プレートリーダ(商品名:VersaMaxリーダ)を用いて測定した。それぞれの測定値からブランクの測定値を減じた値を算出し、結果(薬剤濃度と吸光度との関係)を図3に示す。図3は、ゲラニオール又はメントールの、酵母型のカンジダ菌に対する増殖抑制効果を示すグラフである。 図3から、ゲラニオール及びメントールは、いずれも、酵母型のカンジダ菌に対する増殖抑制効果が非常に低いことが明らかである。実際、酵母型のカンジダ菌に対するゲラニオールのMIC(最少発育阻止濃度)は500μg/mlであり、メントールは500μg/mlの濃度までは増殖抑制効果が見出せなかった。 このように、浮遊状態にある酵母型のカンジダ菌に対しては十分な増殖抑制効果が得られなかったことから、図2に示すカンジダ菌のバイオフィルム形成抑制に対する効果は、単にカンジダ菌の増殖を抑制したのではなく、カンジダ菌がバイオフィルム形成に必要な反応である酵母型から菌糸型への形態変換、又は菌糸型になったカンジダ菌の増殖を抑制するという作用により、IC80がゲラニオールでは22.5μg/ml、メントールでは62.5μg/mlという低濃度で効果が示されたと考えられる。本発明におけるゲラニオールとメントールとの組み合わせによる効果も、この作用が相乗的に向上することにより得られたと考えられる。(試験例4)(1)目的 口腔カンジダ症マウスモデルを用いた供試製剤の口腔カンジダ症の発症予防効果を検討した。(2)試験動物 試験動物として、Crj:CD1(ICR)系SPFマウス(日本チャールスリバー(株)製6週齢、雌性)を用いた。以下、試験動物を「ICRマウス」と呼ぶ。(3)供試菌株 供試カンジダ菌株として、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)TIMM1768を用いた。なお、このカンジダ菌株は、帝京大学医真菌研究センターより入手可能である。(4)供試製剤 下記表3に示す、供試製剤X(ゲラニオール0.01質量%、及びメントール0.005質量%を配合した口腔用保湿剤)、及び供試製剤Y(ゲラニオール0.02質量%、及びメントール0.005質量%を配合した口腔用保湿剤)を作製し、試験に供した。 供試製剤Xは、後述の感染処理を施した9体のICRマウスの処理群に用いた。この処理群を、以下、「供試製剤X処理群」と呼ぶ。 供試製剤Yは、後述の感染処理を施した8体のICRマウスの処理群に用いた。この処理群を、以下、「供試製剤Y処理群」と呼ぶ。 比較のため、供試製剤X及びYをいずれも用いることなく、後述の感染処理のみを施した6体のICRマウスの処理群(以下、「感染のみ処理群」とする。)を作製した。(5)試験方法 1.C.albicans TIMM1768接種前日、ICRマウスにプレドニゾロンを100mg/kg皮下注射した。なお接種前日より塩酸テトラサイクリン4.13mg/mlを含有した水道水をICRマウスに自由摂取させた。 2.次に、クロルプロマジン塩酸塩20mg/kgを筋肉内注射し、安静状態にしたICRマウスの口腔内に、C.albicans TIMM1768の懸濁液を綿棒で塗布し、C.albicans TIMM1768を接種した。なお、該懸濁液としては、C.albicans TIMM1768を2.5%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640培地に2×108cells/mlとなるよう懸濁させたものを用いた。 3.C.albicans TIMM1768接種5分後、3時間後、24時間後および27時間後に各供試製剤50μlを、胃ゾンデを用いてICRマウスの口腔内の舌背に滴下して投与した。 4.感染のみ処理群は、プレドニゾロン、テトラサイクリンおよびクロルプロマジンを投与後、C.albicans TIMM1768を上記と同様に接種し、試験期間内飼育した。 5.接種2日後にICRマウスを安楽死させたのち、供試製剤X処理群、供試製剤Y処理群、及び感染のみ処理群の各ICRマウスの舌の外観を下記の評価スコアに従って評価した。なお、この評価スコアは、高倉らの評価スコア(Takakura N, Sato Y, Ishibashi H, Oshima H, Uchida K, Yamaguchi H, Abe S. ; Microbiol Immunol. 2003;47(5):321-6."、特許第3860775号公報など)に準ずるものである。結果を表4、及び図4〜5に示す。(6)評価スコア 0点:異常が認められない。 1点:舌表面の5%未満の範囲で赤い炎症又は白苔様の白い異物が認められる。 2点:舌表面の5%以上90%未満の範囲で白苔様の白い異物が認められる。なお舌表面に陥没又は隆起などの面構造の異常は認められない。 3点:舌表面の5%以上90%未満の範囲で白苔様の白い異物が認められる。更に舌表面に陥没又は隆起などの面構造の異常が認められる。 4点:舌表面の90%以上の範囲で白苔様の白い異物が認められる。その白苔を取ると舌表面に陥没又は隆起などの面構造の異常が認められる。(7)評価結果(供試製剤による口腔カンジダ症の発症抑制効果) 各処理群の評価スコアは、すべて平均値±標準偏差(mean±SD)で表示した。比較検定にはスチューデントのt検定(Student’s t-test)を用いた。いずれにおいても危険率5%以下(p<0.05)を統計学的に有意と考えた。 まず、評価結果は下記表4に示す通りであった。図4は、表4に示す評価結果を棒グラフ化して供試製剤による口腔カンジダ症の発症抑制効果を示したものである。また、図5は、供試製剤X処理群(a)、供試製剤Y処理群(b)、及び感染のみ処理群(c)の各群における代表的なICRマウスの舌の外観を示す写真である。 表4及び図4から、感染のみ処理群は評価スコアが3.0±0.63であるのに対し、供試製剤X処理群は評価スコア1.7(小数点第2位を四捨五入)±0.50、供試製剤Y処理群は評価スコア1.0±0.76と、感染のみ処理群に比べて顕著に低く、両群とも口腔カンジダ症の発症に対し、有意な予防効果が認められた(p<0.05,t−test)。また、図5からも、感染のみ処理群(c)のICRマウスには供試カンジダ菌由来の白苔様の白い異物が広い範囲にわたって観察されたのに対し、供試製剤X処理群(a)及び供試製剤Y処理群(b)のICRマウスには、供試カンジダ菌由来の白苔様の白い異物の範囲が顕著に小さく、供試製剤X処理群(a)及び供試製剤Y処理群(b)と感染のみ処理群(c)との間に、口腔カンジダ症の発症に対する有意な差があることが明白であった。 以上のことから、ゲラニオールとメントールとを所定の配合比率で組み合わせて口腔用組成物として適用することで、口腔カンジダ症の予防を実現できることが証明された。(製剤例1〜8) 表5〜12に示す各成分を表5〜12に示す割合でそれぞれ用い、製剤例1〜8の各製剤を得た。なお、製剤例2及び3の洗口剤については、pH調整剤を用いて、pHを5.5〜7.0の範囲に調整した。 ゲラニオールとメントールとを含有し、ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が3/97〜95/5である口腔用組成物。 ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が5/95〜95/5である請求項1に記載の口腔用組成物。 ゲラニオール含有量が口腔用組成物全量の0.001質量%以上、1質量%未満である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。 ゲラニオールとメントールとを含有し、ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が3/97〜95/5であるカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤。 ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が5/95〜95/5である請求項4に記載のカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤。 【課題】口腔内に存在するカンジダ菌の酵母型から菌糸型に形態変換又は菌糸型のカンジダ菌の増殖により形成されるバイオフィルムが原因となって発症する、口腔内粘膜や舌に炎症が起こる口腔内カンジダ症の予防及び抑制に有効であり、安全性の高い口腔用組成物及びカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤を提供する。【解決手段】ゲラニオールとメントールとを含有し、ゲラニオールとメントールとの質量基準の配合比(ゲラニオール/メントール)が3/97〜95/5である口腔用組成物及びカンジダ菌バイオフィルム形成抑制剤。【選択図】なし


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