生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤組成物
出願番号:2013157659
年次:2015
IPC分類:A61K 31/05,A61P 3/00,A61P 43/00,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

新家 康弘 來住 明宣 松川 泰治 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 JP 2015027959 公開特許公報(A) 20150212 2013157659 20130730 白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤組成物 ユーハ味覚糖株式会社 390020189 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 中川 正人 100163577 新家 康弘 來住 明宣 松川 泰治 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 A61K 31/05 20060101AFI20150116BHJP A61P 3/00 20060101ALI20150116BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150116BHJP A23L 1/30 20060101ALN20150116BHJP JPA61K31/05A61P3/00A61P43/00 105A23L1/30 BA23L1/30 Z 3 OL 21 4B018 4C206 4B018MD08 4B018MD52 4B018ME01 4B018ME14 4B018MF01 4B018MF04 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA19 4C206MA03 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZB21 4C206ZC21 4C206ZC54 本発明は、非常に簡便な方法によって得られるレスベラトロールの環化反応生成物を含有するエキスを用いることで、初めてヒトに対して応用可能となった白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤組成物に関するものである。 哺乳動物の脂肪組織を構成する脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の二種類が存在する。白色脂肪細胞は主にトリグリセリドの形で摂取したエネルギーを蓄積する役割を持ち、他方、褐色脂肪細胞は筋芽細胞を起源に発生し、細胞内部に多数のミトコンドリアを含むことで褐色に色づき、ミトコンドリア中に発現する脱共役タンパク質(Uncoupling protein 1;UCP1)の働きにより熱産生を行い、蓄積されたエネルギーを熱へと変換する役割を持っている脂肪細胞である(非特許文献1)。褐色脂肪細胞により構成される褐色脂肪組織は、幼児期に多数見受けられ、成長するに従いその組織量が減少する。従来、褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞とは由来する幹細胞が異なることから、白色脂肪細胞より褐色脂肪細胞へとは変化しないと考えられてきた。しかし、近年、白色脂肪組織中に褐色脂肪細胞と同様の応答を示す「褐色様脂肪細胞」の存在が明らかとなってきた(非特許文献2)。褐色様脂肪細胞は白色脂肪細胞由来ながらミトコンドリアの存在量が白色脂肪細胞と比較して格段に多く、蓄積された脂質エネルギーを効率よく熱エネルギーへと変換できる脂肪細胞である。この報告は、ヒト成人にも褐色様脂肪組織を増やすことができる可能性があることを明らかにし、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導が、肥満症や糖尿病の新たな、そして、根本的治療方法として、急速に注目が高まってきている。 しかしながら、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化を誘導することは難しく、確認されている方法は、長期間の寒冷刺激や、アドレナリンによる刺激(非特許文献1)、ペルオキソーム増殖剤応答性受容体(PPARγ)アゴニストの添加(非特許文献3)などのみであり、加えて、すべて、皮下脂肪細胞のみに分化誘導効果が限定される。また、特許文献1にてヒト内臓脂肪細胞に対しUCP1遺伝子の発現増幅効果のある化合物が報告されているが、白色脂肪細胞の褐色化は見られず、且つ、作用濃度が非常に高く、生体内での有効濃度の達成が難しいなど、白色脂肪細胞の褐色化は、現状、実現には至っていない。 加えて、線維芽細胞増殖因子(FGFs:Fibroblast growth factors)は、アミノ酸配列の相同性からヒトにおいて現在22種類存在することが明らかにされている(非特許文献4)。FGF‐21は、脂肪の分解促進と蓄積の抑制、高コレステロール血症、糖尿病(高血糖、インスリン抵抗性)及び肥満の改善に関わる可能性があることが報告されている(非特許文献6)。例えば、特許文献2にはFGF‐21の産生を促し、内臓脂肪量の減少効果のある化合物が記載されており、特許文献3にはFGF‐21とグルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、抗糖尿病薬、ジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤からなる2型糖尿病治療薬が有用であることが記載されている。あるいは、特許文献4にはFGF−21誘導体を用いFGF−21の半減期を延長することが代謝疾患の治療に有用であることが記載されている。このような中で、近年、寒冷刺激が血中のFGF−21濃度の上昇を促し、白色脂肪の褐色化を促す報告があり、FGF−21は白色脂肪の褐色化誘導因子の一つとして注目されている(非特許文献7)。しかしながら、これまでのところ、FGF‐21をターゲットとした報告は代謝障害の改善を目的とするもののみであり、白色脂肪細胞の褐色化への手段として具体的な提案はなされていない。 また、いわゆる「フレンチパラドックス」と言われる赤ワインの有用な生理効果は、レスベラトロールの抗酸化能を始めとして各種の生理活性機能が一因であるとされている。レスベラトロールはブドウ果皮やピーナッツ赤皮に多く含まれるヒドロキシスチルベン類の一種で、サーチュインを介したカロリー制限効果をはじめ、抗真菌、抗細菌、抗炎症などさまざまな活性を有する植物由来化合物として知られている(非特許文献8)。レスベラトロールには、白色脂肪細胞に特異的に発現する脱共役タンパク質UCP2の遺伝子発現亢進効果について報告があるものの(特許文献5)、これまで、レスベラトロールについて、白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化効果について言及されたものは一切無い。 このように、今日に至るまで、食欲の抑制や脂肪吸収抑制ではなく、白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞へと脂肪細胞そのものの性質を変化させ、代謝を変化させることでメタボリックシンドロームを予防・治療する根本的な治療・予防剤の開発が望まれてきたが、これまでのところすべての白色脂肪細胞に対して十分な効果が認められるような物質は見つかっておらず、早期の開発が望まれている。特開2011−241195号公報国際公開第2011/037223号特公表2013−518035号公報特公表2012−515747号公報特開2010−24208号公報Cell Biosci. 2011 Oct 28;1:35Cell.2012 Jul 20;150(2):366−769Cell Metab.2012 Mar 7;5(3):395−404Genome Biol. 2001;2(3):REVIEWS3005Am J Clin Nutr. 2010 January; 91(1): 254S-257SGenes Dev. 2012 Feb 1;26(3):271−81レスベラトロールの基礎と応用、シーエムシー出版Nature.2004 June 17;429(6993):771Nature.2012 Sep 13;489(7415):318 本発明者らは、前記の状況を鑑みて、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を示す化合物の探索と、その製造方法を確立すべく鋭意検討した結果、レスベラトロールをアルカリ条件下で加熱処理するという簡便且つ安全な方法により、意外にも、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を示す組成物を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。 したがって、本発明の課題は、これまでレスベラトロールには見られない新しい効果である、優れた白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有し、且つ安全安価に作製することが可能な白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞の分化誘導剤組成物、ならびに該組成物を含有する医薬品及び医薬部外品を提供することにある。 即ち、本発明の要旨は、[1]レスベラトロールをアルカリ性条件下で加熱して得られることを特徴とする、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物、[2]式(1):、式(2):及び式(3):で示される3種類のレスベラトロール重合化合物を含有する前記[1]記載の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物、[3]前記[1]又は[2]記載の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物を含有する医薬品又は医薬部外品に関する。 本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、レスベラトロールをアルカリ性条件下で加熱することで安全安価に製造することができ、しかも、前駆物質であるレスベラトロールが持ち合わせない新しい作用である顕著に優れた白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有しているため、新規なメタボリックシンドローム治療及び予防に有用である。 また、本発明の組成物は、本件出願人が先に提出した特願2013−071836に記載しているような化合物の単離精製工程を行わなくても優れた白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有しているため、前記先願発明より生産性がよく、より安価に白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化誘導剤を提供することが可能である。 加えて、本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品に配合することで、新規なメタボリックシンドローム予防又は改善用の医薬品又は医薬部外品を提供することができる。図1は、実施例1で実施したレスベラトロールの反応溶液のクロマトグラムを示す。図2は、実施例2で実施した分化誘導直後の脂肪細胞中のFGF‐21、転写コアクチベーターであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ補助活性化因子1α(PGC−1α)、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるシトクロムcオキシダーゼポリペプチド7A1(Cox7a1)、褐色様脂肪細胞にて発現の亢進が観察される転写コアクチベーター、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ補助活性化因子1β(PGC−1β)の各遺伝子の相対発現量を示すグラフである。図3は、実施例3で実施した成熟化した脂肪細胞中のFGF‐21、PGC−1α、PGC−1β、褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子である細胞死誘導DFFA様エフェクターa(Cidea)、転写コアクチベーターであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ補助活性化因子1β(PGC−1β)の各遺伝子の相対発現量を示すグラフである。図4は、実施例4で実施した正常皮下脂肪分化誘導後の脂肪細胞中のPGC−1β、UCP1、COX7a1、褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子であるCBP/p300‐インターアクティングトランスアクチベーター(CITED1)の各遺伝子の相対発現量を示すグラフである。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の組成物で原料化合物として使用されるレスベラトロールは、天然由来のものであっても、化学合成された純度の高い化成品であってもよい。天然由来の原料化合物としては、完全に精製されたものである必要はなく、他の化合物を含む混合物も使用できる。 ただし、加熱による反応効率を高める観点からは、前記レスベラトロールとしては、レスベラトロール換算で、合計5重量%以上含有されたものが原料として望ましい。このような原料としては、例えばブドウ果皮、ワイン、ワイン濃縮パウダー、メリンジョ、リンゴンベリー、ピーナッツ果皮、イタドリ等の原料からの抽出物や該抽出物の凍結乾燥品等を使用してもよい。 本発明では、レスベラトロールを適切な溶媒に溶解させる。この際、溶媒が水のみであると、レスベラトロールの水への溶解度がいずれも低いために、水と有機溶媒の混合液や、有機溶媒のみに溶解させることが好ましい。水と有機溶媒の配合比や、有機溶媒の種類については特に制限はなく、レスベラトロールが十分に溶解すればよい。中でも、メタノールやエタノールのみの溶媒や、水とメタノール、水とエタノール等の混合液を使用することが、安全性やコスト面から好ましい。前記の加熱反応後に得られる組成物に最終的な精製を十分に適用せず、その組成物を医薬品、医薬部外品等に使用する場合には、安全性や法規面から溶媒としてエタノールや水、含水エタノールを使用することが望ましい。 前記のようにレスベラトロールを溶媒に溶解して得られる混合溶液(以下、レスべラトロール含有溶液ともいう。)中のレスベラトロールの濃度については、特に制限はないが、レスべラトロールの濃度が高いほど、溶媒使用量が少なくてすむ等のメリットもあるため、レスベラトロールの濃度は各々の溶媒に対しレスベラトロールがそれぞれ飽和する濃度近くに調整することが好ましい。 次に、前記レスベラトロール含有溶液のpHをアルカリ性となるように調整する。調整方法として、例えば、レスベラトロール含有溶液を調製した後にアルカリ化剤を添加しpHを調整してもよいし、前述のレスベラトロール含有溶液の調製時に前もって溶媒のpHを調整しておいてもよい。レスベラトロール含有溶液の加熱反応開始時のpHは8.0以上であれば、効率的に後述のように複数の有用なレスベラトロール重合化合物を生成する反応が進むので好ましく、pH13.0を越えると反応と同時に、他の反応や目的化合物の分解も一方で生じるために最終的なレスベラトロール重合化合物群の回収量が低下する傾向がある。したがって、反応開始時のpHは8.0〜13.0が望ましい。 前記アルカリ化剤としては、特に制限はないが、安全性、効率及びコスト面からは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが望ましい。反応時のpH変化を極力抑える場合が生じた際には、緩衝溶液を用いてもよいが、必ずしも必要な手法ではない。 次に、アルカリ性に調整されたレスベラトロール含有溶液を加熱する。この加熱により、レスベラトロールどうしを環化反応させることで、有用な化合物が生成する。このような有用な化合物としては、式(1)、式(2):及び式(3):で示される3種類のレスベラトロール重合化合物が挙げられる。 前記レスベラトロール重合体化合物において、炭素−炭素2重結合は、トランス又はシスであ ってよく、シス体とトランス体との混合物を含む。 前記レスベラトロール重合化合物としては、その薬学的に許容可能な塩であってもよい。 前記レスベラトロール重合化合物の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩; アルミニウム塩;アルミニウムヒドロキシド塩等の金属ヒドロキシド塩; アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、アルキレンジアミン塩、シクロアルキルアミン塩、アリールアミン塩、アラルキルアミン塩、複素環式アミン塩等のアミン塩; α−アミノ酸塩、ω−アミノ酸塩等のアミノ酸塩;ペプチド塩又はそれらから誘導される第1級、第2級、第3級若しくは第4級アミン塩等が挙げられる。これらの薬理的に許容し得る塩は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。 本発明において前記レスベラトロール重合体化合物を形成するための環化反応とは、レスベラトロールどうしが重合反応することで6員環を形成する反応をいう。 前記環化反応を効率的に進ませるために、レスベラトロール含有溶液の加熱温度は110℃以上に調整することが好ましい。また、使用する溶媒の沸点から考え、加圧加熱が望ましい。例えば、開放容器にレスベラトロール含有溶液を入れ、溶媒の沸点を超える高温で前記容器を加熱する、密閉容器にレスベラトロール含有溶液を入れ、前記容器を加熱する、レトルト装置やオートクレーブを用いて加圧加熱する、超臨界装置やプレッシャークッカー等の装置を用い加圧加熱する等、少なくとも部分的にレスベラトロール含有溶液の温度が110℃以上に達するように加熱することが好ましい。前記レスべラトロール重合化合物などの回収効率面から、レスベラトロール含有溶液の温度が均一に120℃〜180℃になることが、さらに好ましい。加熱時間も加熱温度と同様に限られたものではなく、効率的に目的の反応が進行する時間条件とすればよい。特に、加熱時間は加熱温度との兼ね合いによるものであり、加熱温度に応じた加熱時間にすることが望ましい。例えば、130℃付近で加熱する場合は、10分〜120分の加熱時間が望ましい。また、加熱は、一度でもよいし、複数回に分けて繰り返し加熱してもよい。複数回に分けて加熱する場合、溶媒を新たに追加して行うことが好ましい。 前記加熱による前記式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物などの生成反応の終了は、例えば、HPLCによる成分分析により生成量を確認して判断すればよい。 なお、前記式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物の生成量については、本発明の組成物中に多いほど白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用が強くなるので好ましいが、具体的には、それぞれの総量が本発明の組成物中に1重量%以上であればよい。 また、式(1)、式(2)、式(3)で表されるレスベラトロール重合化合物のそれぞれの含有比率については特に限定はない。 また、風味の改良やさらなる高機能化を望む場合は、前記反応物を濃縮して式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物の濃度を高める、あるいは前記反応物を脱塩精製し、式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物の濃度を高めたものを得ることができる。前記濃縮や精製は、公知の方法で実施可能である。例えば、クロロホルム、酢酸エチル、エタノール、メタノール等の溶媒抽出法や炭酸ガスによる超臨界抽出法等で抽出して式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物を濃縮できる。また、カラムクロマトグラフィーを利用して濃縮や精製を施すことも可能である。また、前記濃縮や精製には、再結晶法や限外ろ過膜等の膜処理法も使用できる。 中でも、合成吸着剤を用いることで、前記式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物を吸着させ、その後、溶出することで容易に濃縮、精製ができる。前記合成吸着剤としては、例えば、三菱化学株式会社製のダイヤイオン(登録商標)HPシリーズ、セパビーズ(登録商標)SPシリーズなどの芳香族系合成吸着剤、オルガノ株式会社製のアンバーライト(登録商標)XADシリーズなどのスチレン系合成吸着剤などが挙げられる。 また、前記濃縮物や精製物を、必要に応じて、減圧乾燥や凍結乾燥して溶媒を除去することで、粉末状の固形物を得ることができる。 以上のようにして得られる式(1)〜(3)で表されるレスベラトロール重合化合物を含む本発明の組成物は、原料であるレスベラトロールには見られない、強力な白色脂肪細胞からの褐色様脂肪細胞への分化を誘導する作用を有しており、この褐色様脂肪細胞分化誘導作用により、メタボリックシンドロームの予防、治療を図ることができることから、本発明の組成物は、新規のメタボリックシンドローム予防剤及び/又は治療に有用である。 本発明の組成物の投与量としては、患者の性別、年齢、生理的状態、病態(肥満の進み具合等)、製剤形態、投与経路、投与回数、薬剤における有効成分濃度等に応じて広い範囲から適宜選択できるが、例えば、成人1日当たり、本発明の組成物の含有量が固形分として0.01〜500mg/kg程度、好ましくは0.1〜100mg/kg程度であればよい。投与は、例えば、1日当たり1回又は数回に分けてもよい。 本発明の組成物は、医薬品として製剤化してもよい。この製剤形態としては特に限定されず、例えば、注射剤、坐剤、点眼剤、軟膏剤、エアゾール剤等の非経口剤、錠剤、被覆錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、トローチ剤、チュアブル錠、シロップ剤等の経口剤等が挙げられる。製剤化の際には、薬学的に許容される担体、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤等が用いられる。 担体や賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マルトース、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、イノシトール、デキストラン、ソルビトール、アルブミン、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム及びこれらの混合物等が挙げられる。 滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられる。 結合剤としては、例えば、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、水、エタノール、リン酸カリウム及びこれらの混合物等が挙げられる。 崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖及びこれらの混合物等が挙げられる。 希釈剤としては、例えば、水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類及びこれらの混合物等が挙げられる。 安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、チオ乳酸及びこれらの混合物等が挙げられる。 等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ホウ酸、ブドウ糖、グリセリン及びこれらの混合物等が挙げられる。 pH調整剤及び緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム及びこれらの混合物等が挙げられる。 さらに本発明の組成物は、増量剤、可溶化剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、抗酸化剤、細菌抑制剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を含んでいてもよい。 また、本発明の組成物を医薬部外品の形態に製剤化してもよい。医薬部外品としては特に限定されないが、例えば、ドリンク剤等の栄養補助医薬部外品が好ましい。この場合、有効成分であるエキスの医薬部外品における含有量は、固形分として0.001〜30重量%程度であればよい。 また、本発明の組成物は、ヒトに対してだけでなく、非ヒト動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類等の治療剤又は飼料に配合してもよい。飼料としては、例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、イヌ、ネコ、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。 次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。(実施例1:レスベラトロール重合化合物を含有する組成物の作製及び精製) レスベラトロール重合化合物を含有する組成物の作製、及び精製を以下の手順で行った。トランス−レスベラトロール((株)TECNO SCIENCE社製)1gをエタノール10mLに溶解し、10%炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液を10mL加えて、レスベラトロール含有溶液(pH9.9)を得た。このレスベラトロール含有溶液をオートクレーブ(三洋電機製、「SANYO LABO AUTOCLAVE」、以下同じ)にて130℃、90分間加熱し、レスベラトロール重合化合物含有溶液を作製した。 次いで、レスベラトロール重合化合物含有溶液を蒸留水1Lで希釈・溶解させ、400gの合成吸着剤ダイヤイオン(登録商標)HP−20(三菱化学株式会社製)に全量供した。蒸留水1Lで洗浄後、100%エタノール1Lで溶出させた。減圧乾燥にて溶媒を除去し、レスベラトロール重合化合物含有組成物(以下、誘導体含有組成物という。)200mgを得た。得られた重合化合物組成物を2mg/mLの濃度でメタノールに溶解させ、そのうち10μLをHPLCにより分析した。 HPLC分析は下記の条件にて行った。カラム:CAPCELL PAK UG80カラム(4.6mmI.D.×250mm、資生堂株式会社製)移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA、和光純薬株式会社製)/H2O移動相B:0.1%TFA/アセトニトリル(和光純薬株式会社製)勾配(容量%):100%A/0%Bから0%A/100%Bまで33分、0%A/100%Bを7分(すべて直線)得られたクロマトグラムを図1に示す。得られた反応溶液をHPLCで分析したところ、レスべラトロールのピークとは異なる複数のピークが検出できたことから、生成された複数の化合物を含む組成物が取得できた。 次に、得られた反応物のうち、図1の(1)、(2)、(3)に示されるピークに含まれる化合物を分取HPLCにより単離し、常法により乾燥したところ、(1)、(2)に示されるピークに含まれる化合物は淡褐色粉末状の物質、式(3)に示されるピークに含まれる化合物は褐色粉末状の物質となった。 次いで、前記3種類の化合物の分子量を、特開2011−251914号公報の実施例2に記載の方法に従って、高分解能Negative−FAB−MS(Fast Atom Bombardment−Mass Spectrometry)にて測定し、核磁気共鳴(NMR)測定を行った結果、(1)のピークに含まれる化合物は、前記式(1)で表される化合物(以下、UHA4002という。)、(2)のピークに含まれる化合物は前記式(2)で表される化合物(以下、UHA4003という。)であることがわかった。 一方、(3)のピークに含まれる化合物は、今までに報告されていない新規化合物であった。 すなわち、高分解能Negative−FAB−MSによる測定値は647.2144であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。理論値C42H31O7(M−H-):647.2148分子式C42H32O7 そして、核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記(3)のピークに含まれる化合物が前記式(3)で表される構造を有する新規化合物(以下、UHA4022という。)であることを確認した。 なお、前記NMR測定値については、UHA4022をとして、その1H核磁気共鳴スペクトル、13C核磁気共鳴スペクトルを表1に示す。値はδ、ppmで、溶媒はDMSO−d6で測定した。 また、UHA4022の物理化学的性状は、以下のようになった。(性状)褐色粉末(溶解性)水:難溶メタノール:溶解エタノール:溶解DMSO:溶解クロロホルム:難溶酢酸エチル:難溶 なお、誘導体含有組成物中に含まれるUHA4002については、本発明者らはこれまでに抗癌、抗菌作用(特開2011−251914号公報)、サーチュイン発現促進作用(特開2012−246242号公報)、APMK活性阻害活性(特開2013−112656号公報)、糖吸収抑制作用(特開2013−136547号公報)、ApoB分泌抑制作用(特願2012−256369号公報)、LDLコレステロール代謝促進作用(特願2012−256378号公報)を、UHA4003について、これまでに抗癌作用(特開2011−251914号公報)、レプチン抵抗性改善作用(特開2013−28560)、成熟脂肪細胞肥大化抑制作用(特開2013−95693号公報)、抗炎症作用(特願2012−041755)、成熟脂肪細胞のUCP−2発現促進作用(特願2012−218619)等を有することを確認しているが、白色脂肪細胞より褐色様脂肪細胞への分化誘導に対する効果については、一般的にも未だ知られていない。(実施例2:誘導体含有組成物の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用指標遺伝子発現の検証) 白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用を評価するために、3T3−L1細胞(マウス由来前駆脂肪細胞)を用いて評価を行った。3T3−L1前駆脂肪細胞は通常、分化誘導過程を経て、白色脂肪細胞へと分化、成熟する。しかし、褐色様脂肪細胞へと分化誘導されることで白色脂肪細胞ではほとんど観察されないCidea遺伝子の発現や、褐色脂肪細胞及び褐色様脂肪細胞にて発現が亢進する転写コアクチベーターPGC−1β、ミトコンドリアに発現するCox7a1遺伝子の発現量の増加、及びUCP1遺伝子の発現亢進が観察されるようになる。加えて、非特許文献6に言及があるように、褐色様脂肪細胞への分化を促す因子の一つとしてFGF−21が知られており、FGF−21の発現亢進がもたらすいくつかの効果の一つとして、PGC−1αの発現亢進を促し、白色脂肪細胞が褐色用脂肪細胞へと誘導されると考えられている。そこで、FGF−21、PGC−1α及びCox7a1の各遺伝子の発現量を指標に、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導を確認した。 試料にはPPARγの合成アゴニストであるロシグリタゾン(Rosiglitazone)及び実施例1にて作成した組成物の2種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)社製)に0.2mM、20mg/mLの濃度で溶解させて試験に使用した。 培養は、10%ウシ胎児血清(Foetal Bovine Serum:FBS Biological industries社製)、1%アンチバイオティック−アンチマイコティック(「Antibiotic−Antimycotic」、ギブコ(GIBCO)社製)を含む「Dulbecco’s modified Eagle medium」(DMEM、商品名、Sigma社製)を用いていった。試験に使用する脂肪細胞は定法に従って調製した。 試験は以下のように行った。細胞培養用12wellディッシュ(コーニング社製)に3T3−L1細胞を5×104cells/mLの濃度で1mL播種して37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。24時間後、DMEM培地を組成物濃度が終濃度20μg/mL、又はロシグリタゾンが終濃度1μMとなるように調整したDMEM培地に交換し培養を続け、100%コンフルエントとし、さらに48時間培養した。次に、培地を「AdipoInducer Reagent」(商品名、タカラバイオ(株)社製)付属のインスリン、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチンをそれぞれ1%、0.5%、0.1%添加した分化用DMEM1mLに、各試料を終濃度20μg/mL、1μMとなるように添加、交換し、37℃、5%CO2条件下で48時間分化誘導した。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをコントロールとした。 培養終了後、細胞よりRNA抽出キット(商品名:TRIzol(登録商標)、life technologies社製)を用いて全量RNAを抽出・精製した。得られたRNAを2ステップリアルタイムRT−PCR用逆転写試薬(商品名:PrimeScript(登録商標)RTMaster Mix、タカラバイオ(株)製)の取扱説明書に準じて逆転写反応を行った。 つまり5×(Primescript RT Master Mix)2μL及び全量RNA 500ngを混合し、RNase Free dH2Oで全量を10μLにした。PCR用サーマルサイクラー(商品名:GeneAmp(登録商標)PCR System 9700、Applied Biosystem社製)を使用して1サイクルが「37℃×15分→85℃×5秒」であるプログラムにて逆転写反応を行った。逆転写反応液をリアルタイムRT−PCR用希釈試薬(商品名:EASY Dilution、タカラバイオ(株)製)にて5倍希釈した希釈液をリアルタイムRT−PCR解析に使用した。 リアルタイムRT−PCR解析は定法に従って行った。解析には、「ECO Realtime RT―PCR system」(商品名、イルミナ(株)製)を使用した。プライマーには、FGF−21フォワードプライマー(プライマーID:MA−126886−F)、FGF−21リバースプライマー(プライマーID:MA−126886−R)、PGC−1αフォワードプライマー(プライマーID:MA−114509−F)、PGC−1αリバースプライマー(プライマーID:MA−114509−R)、Cox7a1フォワードプライマー(プライマーID:MA106801−F)及びCox7a1リバースプライマー(プライマーID:MA106801−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー(プライマーID:MA050368−F)及びACTBリバースプライマー(プライマーID:MA050368−R)(前記8種のプライマーはいずれもタカラバイオ(株)製)を使用した。 反応にはリアルタイムRT−PCR試薬(商品名:SYBR(登録商標)Select Master Mix、life technologies社製)を使用した。反応液は48ウェルPCRプレート(イルミナ(株)製)中に、2×(SYBR Select Master Mix)5μL、フォワードプライマー(50μM)0.08μL、リバースプライマー(50μM)0.08μL、逆転写反応液2μL及びdH2O 2.84μL(総量10μL)を混合して『50℃×2分→95℃×2分→「95℃×15秒→60℃×1分」×40サイクル→95℃×15秒→55℃×15秒→95℃×15秒』のプログラムにてPCR反応を行った。 得られた各細胞中のβ−アクチンとFGF−21、PGC−1α及びCox7a1のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からFGF−21、PGC−1α及びCox7a1の各遺伝子発現量の相対値を算出した。結果を図2に示した。 その結果、ロシグリタゾン添加時と同様に、褐色様脂肪細胞の誘導因子の一つであるFGF−21遺伝子、及びFGF−21遺伝子の発現に伴いPGC−1α遺伝子の発現量が誘導体含有組成物添加時に有意に増大していることが見いだされ、さらに、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるCox7a1の発現量が有意に増大していることが明らかになった。ロシグリタゾンは合成アゴニストであり、その効果は誘導体含有組成物と比較すると強い。しかし、ロシグリタゾンを始めとするチアゾリジン系化合物はヒトに対して浮腫・心不全などの副作用が強く、安全性に問題のある化合物である。これに対し、誘導体含有組成物は遥かに簡便な方法で得られるメリットのある組成物であり、且つ、その前駆化合物であるレスベラトロールは自然界に広く分布し、安全性の極めて高い化合物である上、レスベラトロールを始めとするヒドロキシスチルベン類は重合物を含め自然界に広く分布していることから食経験も豊富な化合物である。故に、本発明品は安全性が高い上に、ロシグリタゾン同様極めて強い白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有する可能性が高い、有用な組成物であることが示された。(実施例3:誘導体含有組成物の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用指標遺伝子発現の検証) 実施例2では誘導体含有組成物が褐色様脂肪細胞へと白色脂肪細胞を分化誘導することを分化誘導直後の細胞を持ち評価したので、実施例3では該誘導細胞が成熟後も褐色様脂肪細胞の形質を維持していることを、成熟脂肪細胞を用い評価した。評価は、FGF−21、PGC−1α及び褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子である細胞死誘導DFFA様エフェクターa(Cidea)の各遺伝子の発現量、加えて、褐色様脂肪細胞はアドレナリンによる刺激に応答し、UCP1遺伝子の発現量を亢進することから成熟化後の脂肪細胞にアドレナリンを添加した場合のUCP1遺伝子の発現量を指標に、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導を確認した。 実施例2と同様の方法で評価組成物及び化合物を添加し、3T3−L1前駆脂肪細胞の分化誘導を行った。48時間の分化誘導後、インスリンを1%添加した維持培養用DMEM2mLに交換し、さらに1週間培養を行い、脂肪細胞の成熟化を行った。アドレナリンによる刺激は、成熟化を行った細胞に対し、L−アドレナリン(和光純薬工業(株)社製)を1μM添加した維持培養用DMEM2mLに交換し、2時間培養を行い、応答を検証した。 1週間の成熟化後、又は、アドレナリン刺激後、実施例2と同様の方法で全量RNAを抽出、精製し、逆転写反応を行いリアルタイムRT−PCR解析を実施した。解析に使用したプライマーは、FGF−21、PGC−1α、ACTBの各遺伝子については実施例2と同じものを使用し、PGC−1β遺伝子については、PGC−1βフォワードプライマー(プライマーID:MA125505−F)、PGC−1βリバースプライマー(プライマーID:MA125505−R)、Cidea遺伝子については、Cideaフォワードプライマー(プライマーID:MA104629−F)、Cideaリバースプライマー(プライマーID:MA104629−R)UCP1遺伝子については、UCP1フォワードプライマー(プライマーID:MA027561−F)及びUCP1リバースプライマー(プライマーID:MA027561−R)(いずれも、タカラバイオ(株)製)を使用した。 得られた各細胞中のβ−アクチンとFGF−21、PGC−1α、PGC−1β、Cidea及びUCP1のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からFGF−21、PGC−1β、PGC−1α、Cidea及びUCP1の各遺伝子発現量の相対値を算出した。結果を図3に示した。 その結果、ロシグリタゾン添加時と同様に、褐色様脂肪細胞の誘導因子の一つであるFGF−21遺伝子、及びFGF−21遺伝子の発現に伴いPGC−1α遺伝子の発現量が有意に増大していることが見いだされ、さらに、褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子であるCideaの発現量や、褐色脂肪細胞にて発現が亢進されるPGC−1βの発現量が有意に増大していることが明らかになった。くわえて、アドレナリン添加によるUCP1遺伝子の発現亢進効果は、アドレナリン添加有無を比較すると、コントロールがアドレナリンの添加により3.1倍となるのに対し、ロシグリタゾンは6.2倍、本発明品である誘導体含有組成物を添加した場合は6.7倍と大きくその発現量を亢進し、褐色様脂肪細胞のみに見られる特徴が観察された。つまり、本発明の組成物を添加することで、3T3−L1前駆脂肪細胞は褐色様脂肪細胞へと分化誘導され、成熟化後も褐色様脂肪細胞の形質を維持していることが明らかとなり、本発明の組成物が、極めて強い白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有する可能性が高いことが示された。(実施例4:誘導体含有組成物の正常ヒト皮下脂肪に対する褐色様脂肪細胞分化誘導作用指標遺伝子発現の検証) 3T3−L1細胞を用いて見られた、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用を評価するために、ヒト皮下脂肪由来正常前駆脂肪細胞(ロンザ・ジャパン社)を用いて評価を行った。正常前駆脂肪細胞は通常白色脂肪細胞へと分化するが、褐色様脂肪細胞へと分化誘導されることで白色脂肪細胞ではほとんど観察されないUCP−1遺伝子の発現や、ミトコンドリアに発現するCox7a1遺伝子の発現量の増加、褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるPGC−1β及び褐色様脂肪細胞特異的に発現するCBP/p300‐interacting transactivator(CITED1)遺伝子の発現亢進が観察されるようになる。そこで、CITED1、Cox7a1及びUCP1の各遺伝子の発現量を指標に、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導を確認した。 試料にはPPARγアゴニストであるロシグリタゾン及び誘導体含有組成物の2種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)社製)に適当な濃度で溶解させて試験に使用した。 皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞(ロンザ・ジャパン社製)を 10%のFBSと2mMグ ルタミン、及びGA−1000を前駆脂肪細胞基本培地(Preadipocyte Basal Medium−2;PMB−2培地 ロンザ・ジャパン社製)に添加した前駆脂肪細胞培養培地(PGM−2)で4日間前培養後、細胞をEDTA−トリプシン液で回収し、PGM−2培地に8x104cells/mlの 割合で懸濁し、細胞培養用12−wellプ レートに0.5mlづ つ植え込んだ。5%の CO2存 在下、37℃で24培養後、ロシグリタゾンを終濃度2μM、又はUHA4003を終濃度40μMとなるようにPGM−2培地に添加し、0.5mlづつ加えさらに48時間培養した。培養後、PGM−2本分化培地(PGM−2培地に、キット付属の各種添加因子(ヒトインスリン、IBMX、デキサメタゾン、インドメタシン)を添加したもの)に、さらにロシグリタゾンを終濃度1μM、又は誘導体含有組成物を終濃度20μg/mLとなるように添加した分化用培地を1ml追添加し、脂肪細胞の分化、成熟化を行った。追添加後10日間培養を行ったものを試験に使用した。コントロールには溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものを使用した。 実施例2と同様の方法でRNAを抽出、精製し、逆転写反応、リアルタイムRT−PCRを行った。プライマーには、CITED1フォワードプライマー(プライマーID:HA204404−F)、CITED1リバースプライマー(プライマーID:HA204404−R)、PGC‐1βフォワードプライマー(プライマーID:HA172103−F)、PGC‐1βリバースプライマー(プライマーID:HA172103−R)、COX7A1フォワードプライマー(プライマーID:HA133646−F)及びCOX7A1リバースプライマー(プライマーID:HA133646−R)、UCP1フォワードプライマー(プライマーID:HA158451−F)及びUCP1リバースプライマー(プライマーID:HA158451−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー(プライマーID:HA067803−F)及びACTBリバースプライマー(プライマーID:HA067803−R)(前記10種のプライマーはいずれもタカラバイオ(株)製)を使用した。 得られた各細胞中のβ−アクチンとCITED1、PGC‐1β、COX7A1及びUCP1のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からCITED1及びPGC‐1β、COX7A1、UCP1の各遺伝子発現量の相対値を算出した。結果を図4に示した。 その結果、ロシグリタゾン添加時と同様に、褐色様脂肪細胞のマーカー遺伝子であるCITED1遺伝子発現量が誘導体含有組成物添加時に有意に増大していることが見いだされ、さらに、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるCOX7A1の発現量が有意に増大していることが明らかになった。また、UCP1遺伝子、PGC‐1βの各遺伝子の発現量も有意に増加していることが明らかになった。つまり、本来白色脂肪細胞へと分化するヒト皮下脂肪由来正常前駆脂肪細胞が誘導体含有組成物存在下で褐色様脂肪細胞へと分化したことを示す。即ち、本発明の誘導体含有組成物に極めて強い白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有することが示された。 以上の実施例2、3、4の結果から、誘導体含有組成物を添加することで、細胞内のミトコンドリア量が有意に増加し、白色脂肪細胞からの褐色様脂肪細胞への分化が顕著に誘導されていることから、誘導体含有組成物は、褐色様脂肪細胞への分化誘導効果が優れていることが示された。 また、誘導体含有組成物は、製造コストがかかる合成アゴニストであるロシグリタゾンと比べて、ワンステップで、食品成分から安価に調製することが可能である点でも優れていることがわかる。(実施例5:本発明の組成物を含有する医薬品) 実施例1と同様にして得られた誘導体含有組成物1gをエタノールに溶解し、得られた溶液を微結晶セルロースに吸着させて、減圧乾燥した。本発明品吸着体10部、コーンスターチ23部、乳糖12部、カルボキシメチルセルロース8部、微結晶セルロース32部、ポリビニルピロリドン4部、ステアリン酸マグネシウム3部、タルク8部を混合し打錠することで、本発明品を含む打錠剤を得た。(実施例6:本発明の組成物を含有する医薬部外品) 実施例1と同様にして得られた誘導体含有組成物1.2gをエタノールに溶解させて得られたエタノール溶液10mL、タウリン20g、ビタミンB1硝酸塩0.12g、安息香酸ナトリウム0.6g、クエン酸4g、砂糖60g及びポリビニルピロリドン10gを精製水に溶解し、全量を1000mLにメスアップした。なお、pHは、希塩酸を用いて3.2に調整した。得られた溶液1000mLのうち50mLをガラス瓶に充填し、80℃で30分間滅菌して、医薬部外品であるドリンク剤を得た。 レスベラトロールをアルカリ性条件下で加熱して得られることを特徴とする、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物。 式(1):、式(2):及び式(3):で示される3種類のレスベラトロール重合化合物を含有する請求項1記載の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物。 請求項1又は2記載の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤組成物を含有する医薬品又は医薬部外品。 【課題】これまでレスベラトロールには見られない新しい効果である、優れた白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有し、且つ安全安価に作製することが可能な白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞の分化誘導剤組成物、ならびに該組成物を含有する医薬品及び医薬部外品を提供すること。【解決手段】レスベラトロールをアルカリ性条件下で加熱することを特徴とする白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤、該組成物を含有する医薬品及び医薬部外品。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る