生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞の培養方法及びタンパクの製造方法
出願番号:2013154684
年次:2015
IPC分類:C12N 5/07


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武藤 悠 松葉 隆雄 JP 2015023816 公開特許公報(A) 20150205 2013154684 20130725 細胞の培養方法及びタンパクの製造方法 東ソー株式会社 000003300 武藤 悠 松葉 隆雄 C12N 5/07 20100101AFI20150109BHJP JPC12N5/00 202 6 1 OL 6 4B065 4B065AA90X 4B065AC14 4B065BA01 4B065BA08 4B065BB04 4B065BB40 4B065BC01 4B065BC22 4B065BC41 4B065BD26 4B065CA24 4B065CA25 4B065CA44 4B065CA46 本発明は細胞の培養方法及びタンパクの製造方法に関するものである。 細胞によるタンパク質の生産にはスピナーフラスコ、培養バッグ、ホローファイバーなどのバイオリアクターが利用される。ホローファイバーは、中空糸膜により、培養スペースが細胞が成育する中空糸外側スペース(ECS)と新鮮培地が循環する中空糸内側スペース(ICS)の2つに分けられることにより、生産された高分子タンパク質をECS中に濃縮状態で集めることができる点で他のバイオリアクターより優れている(特許文献1)。特開2007−222064号公報 ホローファイバー培養装置は、ICS中を培地が循環している点や中空糸膜の素材が限られていることが要因となり、静置状態で成育していた細胞が必ずしも培養できる訳ではない。 本発明の目的は、培養環境の変化によるダメージを低減し、ホローファイバー中での細胞培養および、細胞からのタンパク質生産を行うことである。 上記課題に鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する。(1)タンパク質を生産しうる細胞を、ホローファイバーを用いて培養する際に、培地中に界面活性剤を共存させて培養することを特徴とする、細胞の培養方法。(2)上述(1)に記載の方法で細胞を培養し、生産されたタンパク質を回収することを特徴とする、タンパク質の製造方法。(3)タンパク質を生産しうる細胞が、CHO−K1細胞である、上述(1)または(2)に記載の方法。(4)ホローファイバーの中空糸膜がポリスルホン系の膜である、上述(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。(5)タンパク質がウサギモノクローナル抗体である、上述(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。(6)タンパク質が抗トリヨードサイロニンウサギモノクローナル抗体である、上述(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。 以下、本発明を詳細に説明する。 (1)タンパク質生産細胞 タンパク質を生産しうる細胞は、目的タンパク質を生産しうる細胞であればよく、特に限定されない。浮遊性の細胞でも、付着性の細胞でもよい。ハイブリドーマのように、目的タンパク質を産生する細胞を不死化した細胞でもよいし、発現ベクターの形質導入によりタンパク質生産能を持たせた細胞でもよい。具体的にはSP2/0細胞、YB2/0細胞、CHO−K1細胞、CHO−S細胞などがあげられる。目的タンパク質としては特に限定はないが、例えばモノクローナル抗体等の抗体があげられ、具体的にはウサギモノクローナル抗体、中でも抗トリヨードサイロニンウサギモノクローナル抗体があげられる。 (2)ホローファイバー培養装置 ホローファイバー培養装置は、中空糸膜によって、ECSとICSの2つの培養スペースに分割されている。中空糸膜は老廃物と栄養素を常時交換しているため、ECS中の細胞は、新鮮培地が流れるICSから栄養素の供給を常に受けることができる。また、中空糸は半透過性であるため、細胞から生産された高分子のタンパク質はECS中に留まる。結果として、ホローファイバー培養装置を用いた培養により、細胞の生産する高分子のタンパク質をECS中に濃縮状態で集めることが可能となる。中空糸膜の種類は、培養を行う細胞の特性に合わせて選択すればよく、特に限定されない。CHO−K1細胞を培養する際は、ポリスルホン系の中空糸膜が好ましい。 (3)界面活性剤 界面活性剤は、ホローファイバー培養装置による細胞へのダメージを低減する界面活性剤であればよく、特に限定されない。好ましくは非イオン界面活性剤、さらに好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば商品名;pluronic F68(ライフテクノロジーズ社製))、または、ソルビタン系の界面活性剤(例えば商品名;TWEEN 20(シグマ社製))等である。使用濃度は培養培地に対して、好ましくは0.05%以上0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以上0.2%以下である。 (4)界面活性剤共存の時期 細胞培養培地へ界面活性剤を共存させる時期は、ホローファイバー培養装置に細胞を播種する時と同時またはそれ以前が好ましいが、特に限定されない。好ましくは播種前の拡大培養時から培地中に共存させ、引き続き界面活性剤含有培地でホローファイバーを用いて培養する。さらに好ましくは、拡大培養前に細胞を界面活性剤含有培地で培養し、馴化した後に、界面活性剤含有培地で拡大培養を行い、引き続き界面活性剤含有培地でホローファイバーを用いて培養する。 (5)タンパク質の回収方法 目的タンパク質の回収方法は、ホローファイバー培養装置のECS中の培養上清から回収するか、細胞を破砕して回収すればよく、特に限定されない。回収したタンパク溶液の精製は、例えば、疎水性カラムを用いたタンパク精製を行ってもよいし、イオン交換カラム、アフィニティーカラムを用いた精製を行ってもよい。目的タンパク質が抗体の場合には、プロテインAカラムを用いたアフィニティー精製が好ましい。 本発明はホローファイバー培養装置で細胞を生育する際の培養培地中に、界面活性剤を共存させることを特徴としている。ホローファイバー培養装置では、静置培養と培養環境が異なるため、生育が進まない細胞が存在した。本発明では、培地中に界面活性剤を共存させることで、浮遊性の細胞はもちろん、付着性の細胞であっても、それまでホローファイバー培養装置中での生育が困難であった細胞を培養し、またタンパク質を回収することができる。実施例1でポリスルホン膜のホローファイバーを用い、培地中に界面活性剤を添加した培養培地中のグルコース濃度の変化を示す図である。比較例1でセルロース膜のホローファイバーを用いた培養培地中のグルコース濃度の変化を示す図である。比較例2でポリスルホン膜のホローファイバーを用いた培養培地中のグルコース濃度の変化を示す図である。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、細胞として特開2009−240300号公報に記載の方法により取得した抗トリヨードサイロニン(T3)ウサギモノクローナル抗体生産CHO−K1細胞、界面活性剤として、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(商品名pluronic F68、ライフテクノロジーズ社製)、ホローファイバー培養装置としてCellmax Duo(スペクトラムラボラトリーズ株式会社製)を用いた。 細胞成育の評価及びECS中の抗体濃度の測定は以下に示す方法で行った。 (1)細胞成育の評価 細胞の生育の評価は、培地中のグルコース濃度をモニターすることで行った。グルコース濃度の測定には、GlucCellグルコースモニター(ワケンビーテック株式会社製)を用いて評価した。 (2)目的タンパク濃度(抗体濃度)の測定 抗体の生産量は以下に示す反応系のEnzyme−Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)により評価した。(2−1)抗ウサギ抗体(0.5μg/mL)をELISAプレートに固定化後、1%スキムミルクでブロッキングした。(2−2)濃度既知の抗T3ウサギモノクローナル抗体溶液の希釈系列を作製し、プレートに固定化された抗体と反応させた。固定化した抗ウサギ抗体に結合した抗T3ウサギモノクローナル抗体は、アルカリフォスファターゼ標識抗ウサギ抗体と結合させ、未反応の酵素標識抗体をB/F分離後、酵素基質である4−メチルウンベリフェリルリン酸(4−MUP)を分注し、蛍光強度を測定することで、標準曲線を作成した。一方、測定対象の抗体溶液について同様の方法で反応を行い、前述の標準曲線から抗体濃度を測定した。 [実施例1] ポリスルホン膜のホローファイバーと界面活性剤を用いた細胞培養 ポリスルホン膜と界面活性剤を用いた細胞培養は、抗T3ウサギモノクローナル抗体産生CHO−K1細胞を、シャーレを用いた静置培養により界面活性剤を含む培地に馴化させた後、拡大培養し、3×107cellsをECSに播種することで開始した。培養培地は10%のウシ血清(FCS)を含んだE−RDF培地(極東製薬工業株式会社製)を用いた。界面活性剤はPluronic F68(ライフテクノロジーズ社製)を、培地に対して0.1%になるよう添加した。 培養経過中のグルコース濃度変化を図1に示す。縦軸に培地中のグルコース濃度、横軸に培養開始からの経過日数をプロットした。図中の点線矢印は培地交換を行った日数を、実線矢印は培地中に炭酸水素ナトリウムを添加しpH調整を行った日数を示す。また点線矢印の上の数字はICS中の総培地量(mL)を示す。ポリスルホン膜と界面活性剤を用いたホローファイバーでの培養では、培養開始から日数が経過しても、グルコース消費の速度が減少することはなかった。次に、使用した培地1Lあたりの抗体生産量を表1に示す。培養開始から12日が経過しても、抗体生産量が大きく低下することはなかった。また2週間以上の培養を続けても、抗体生産量が大きく低下することはなかった。 ECS中の抗体は、ECS中の培地を回収し、遠心により細胞を沈殿させ、上清をフィルターろ過した後、プロテインAカラムによるアフィニティー精製を行うことで回収した。培養開始後14日、16日、18日目に回収したECS中の培地を合わせて抗体精製を行うことで、約1.0mgの抗T3ウサギモノクローナル抗体を得た。 [比較例1] セルロース膜のホローファイバーを用いた細胞培養 セルロース膜のホローファイバーでの培養は、シャーレを用いた静置培養により抗T3ウサギモノクローナル抗体産生CHO−K1細胞を拡大培養し、3×107cellsをECSに播種することで開始した。培養培地は10%のウシ血清(FCS)を含んだE−RDF培地(極東製薬工業株式会社製)を用いた。 培養経過中のグルコース濃度変化を図2に示す。縦軸に培地中のグルコース濃度、横軸に培養開始からの経過日数をプロットした。図中の点線矢印は培地交換を行った日数を、実線矢印は培地中に炭酸水素ナトリウムを添加しpH調整を行った日数を示す。また点線矢印の上の数字はICS中の総培地量(mL)を示す。セルロース膜のホローファイバーを用いた培養では、培地中のグルコース濃度が約200mg/dLになったところでグルコースの消費がストップした。また、培養開始初期からグルコース消費速度が遅く、培地交換を繰り返すごとに、グルコース消費速度が低下していった。この結果から、ECS中の生細胞数が減少していることが示唆された。 [比較例2] ポリスルホン膜のホローファイバーを用いた細胞培養 ポリスルホン膜での細胞培養も、比較例1と同様に、シャーレを用いた静置培養により抗T3ウサギモノクローナル抗体産生CHO−K1細胞を拡大培養し、3×107cellsをECSに播種することで開始した。培養培地は10%のウシ血清(FCS)を含んだE−RDF培地(極東製薬工業株式会社製)を用いた。 培養経過中のグルコース濃度変化を図3に示す。縦軸に培地中のグルコース濃度、横軸に培養開始からの経過日数をプロットした。図中の点線矢印は培地交換を行った日数を、実線矢印は培地中に炭酸水素ナトリウムを添加しpH調整を行った日数を示す。また点線矢印の上の数字はICS中の総培地量(mL)を示す。ポリスルホン膜のホローファイバーを用いた培養では、培養開始から25日までは、日数が経過してもグルコース消費の速度が減少することはなかった。次に、使用した培地1Lあたりの抗体生産量を表2に示す。培養開始から14日が経過すると抗体生産量は大幅に低下(80μg/L)し、18日が経過すると抗体生産は5μg/mL未満へと低下した。以上の結果から、ポリスルホン膜のホローファイバーを用いた細胞培養では、細胞の生育は可能であるが、抗体の生産は連続的に行えないことが考えられる。 以上の結果から、ホローファイバーを用いたCHO細胞の培養において、比較例のような通常条件では生育困難な細胞でも、界面活性剤の添加により継続した培養が可能となり、かつ目的タンパク質を連続して生産可能となることがわかる。タンパク質を生産しうる細胞を、ホローファイバーを用いて培養する際に、培地中に界面活性剤を共存させて培養することを特徴とする、細胞の培養方法。請求項1に記載の方法で細胞を培養し、生産されたタンパク質を回収することを特徴とする、タンパク質の製造方法。タンパク質を生産しうる細胞が、CHO−K1細胞である、請求項1または2に記載の方法。ホローファイバーの中空糸膜がポリスルホン系の膜である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。タンパク質がウサギモノクローナル抗体である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。タンパク質が抗トリヨードサイロニンウサギモノクローナル抗体である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。 【課題】ホローファイバー培養装置は、ICS中を培地が循環している点や中空糸膜の素材が限られていることが要因となり、静置状態で成育していた細胞が必ずしも培養できる訳ではないため、培養環境の変化による細胞のダメージを低減し、ホローファイバー中で細胞培養および細胞からのタンパク質生産を行う方法を提供する。【解決手段】タンパク質を生産しうる細胞(例えば抗トリヨードサイロニンウサギモノクローナル抗体を産生するCHO−K1細胞)を、ポリスルホン系等の中空糸膜を用いたホローファイバーで培養する際に、培地中に界面活性剤を共存させて培養し、生産されたタンパク質を回収することにより、タンパク質を製造する。【選択図】図1


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