タイトル: | 公開特許公報(A)_ケトンの製造方法 |
出願番号: | 2013151011 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07D 319/14 |
澤 朋裕 JP 2015020983 公開特許公報(A) 20150202 2013151011 20130719 ケトンの製造方法 株式会社クレハ 000001100 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 110000338 澤 朋裕 C07D 319/14 20060101AFI20150106BHJP JPC07D319/14 13 OL 20 本発明はケトンの製造方法に関する。より詳細には、βケトエステル化合物の脱炭酸反応による対応するケトンの製造方法に関する。 βケトエステル化合物の脱炭酸反応として、酸または塩基を用いた加水分解脱炭酸反応が知られている。 また、加水分解脱炭酸反応と比較して、より広範な反応基質に適用可能な脱炭酸方法としては、塩化リチウムなどの塩を用いる方法がある(非特許文献1および2)。 また、工業的に脱炭酸反応に用いることのできる安価な塩としては塩化ナトリウムが挙げられる(非特許文献1および2)。A. P. Krapcho et. al.,Synthesis,p.805-821,1982A. P. Krapcho et. al.,Synthesis,p.893-914,1982 酸または塩基を用いた加水分解脱炭酸反応において、基質化合物が、目的の反応部位以外に加水分解される部位を有する化合物である場合は、加水分解脱炭酸反応中に当該部位が加水分解されることによって化合物の構造が壊れやすい。そのため、基質化合物として用いる化合物は加水分解に耐え得る頑健な構造を有するものである必要がある。従って、加水分解脱炭酸反応は、例えば、反応部位以外の部位にエステル構造または環状構造をもつ基質化合物に適用することは困難である。 また、塩化リチウムは高価であるため、塩化リチウムを用いる脱炭酸方法は、工業化に適した脱炭酸方法とはいえない。 また、塩化ナトリウムは有機溶媒への溶解性が低いため、反応性に乏しい。そのため、塩化リチウム以外の塩として、塩化ナトリウムを用いる脱炭酸方法の場合、脱炭酸反応が進行しにくい。そこで溶解性を高めるために水を添加して反応を促進させる手法が用いられるが、この場合には意図しない加水分解反応が生じてしまうことがある。 そこで、工業利用可能な安価な塩を用い、かつ非水系で脱炭酸反応を行うことにより、意図しない加水分解反応が抑制された、工業的に利用できるケトンの製造方法の開発が求められている。 そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記の要望に応える、βケトエステル化合物の脱炭酸反応による対応するケトンの製造方法を提供することにある。 本発明は、下記一般式(II)で表されるケトンの製造方法であって、 下記一般式(II)で表されるケトンの製造方法であって、(式(II)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または−CH2−O−Gを表しており、Gは保護基を表し、R1およびR2は互いに結合して環を形成していてもよく、R3およびR4はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表しており、R3およびR4は互いに結合して環を形成していてもよく、R5は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、またはベンジル基を表しており、当該フェニル基の1以上の水素原子および当該ベンジル基のフェニル部における1以上の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。) 下記一般式(I)で表されるβケトエステル化合物を、溶媒の非存在下または非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させる工程を含むことを特徴とする。(式(I)中、R1〜R5は上記式(II)におけるR1〜R5と同一である) また、本発明の製造方法において、上記第2族元素は、Mg、Ca、SrおよびBaから選択されることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、上記ハロゲンは、Cl、BrおよびIから選択されることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、上記塩は、CaCl2またはMgCl2であることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、上記工程における脱炭酸反応の反応温度は、50℃以上であることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、上記非プロトン性極性溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミドであることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、上記工程では、溶媒の非存在下で、上記βケトエステル化合物の加熱融解によって得られた液体に、第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることが好ましい。 また、本発明の製造方法において、上記加熱融解の融解温度は50℃以上であることが好ましい。 また、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。(式(III)中、R1、R2およびR5は、それぞれ上記式(I)におけるR1、R2およびR5と同一であり、nは1または2を表している。) また、上記一般式(III)で表される化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物であることが好ましい。(式(IV)中、R1およびR2は、それぞれ上記式(III)におけるR1およびR2と同一であり、X’は水素またはハロゲン原子を表している。) また、上記一般式(IV)で表される化合物は、下記一般式(V)で表される化合物であることが好ましい。(式(V)中、G1およびG2は保護基を表し、G1およびG2は互いに同一でも異なっていてもよく、G1およびG2は互いに結合して環を形成していてもよく、X’は上記式(IV)におけるX’と同一である。) また、上記一般式(V)で表される化合物は、下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。(式(VI)中、R6およびR7は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよく、X’は上記式(V)におけるX’と同一である。) 本発明によれば、意図しない加水分解反応が抑制された、工業的に利用できるケトンの製造方法を提供することができる。 以下、本発明の一実施形態について説明する。 〔1.ケトン〕 本実施形態に係るケトンの製造方法では、下記一般式(II)で表されるケトン(以下、「ケトン(II)」と称する)を製造する。 ケトン(II)は、下記一般式(I)で表されるβケトエステル化合物(以下「βケトエステル(I)」と称する。以降、一般式(III)〜(VI)で表されるβケトエステル化合物についても同様である)を原料として製造される。なお、βケトエステル(I)、(III)〜(VI)については、〔2.βケトエステル化合物〕において後述する。 式(II)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または−CH2−O−Gを表しており、Gは保護基を表している。また、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基または−CH2−O−Gであることがより好ましく、−CH2−O−Gであることが特に好ましい。 また、R1およびR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。 −CH2−O−Gにおいて、Gは保護基を表す。保護基は特に限定されないが、例えば、メトキシメチル基およびエトキシメチル基等のアルコキシメチル基、t−ブチル基およびメチル基等の低級アルキル基、置換または無置換のベンジル基、置換または無置換テトラヒドロピラニル基、置換または無置換テトラヒドロフラニル基、ならびにアリル基等を挙げることができる。R1およびR2の何れもが−CH2−O−Gである場合、2つのGは互いに結合して環を形成していてもよい。 2つのGが互いに結合して環を形成している場合の保護基としては、例えば、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、t−ブチルメチリデンケタール、1−t−ブチルエチリデンケタール、1−フェニルエチリデンケタール、アクロレインアセタール、イソプロピリデンケタール(アセトナイド)、シクロペンチリデンケタール、シクロヘキシリデンケタール、シクロヘプチリデンケタール、ベンジリデンアセタール、p−メトキシベンジリデンアセタール、2,4−ジメトキシベンジリデンケタール、3,4−ジメトキシベンジリデンケタール、2−ニトロベンジリデンアセタール、4−ニトロベンジリデンアセタール、メシチレンアセタール、1−ナフトアルデヒドアセタール、ベンゾフェノンケタール、カンファーケタール、メントン、メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、ジメトキシメチレンオルトエステル、1−メトキシエチリデンオルトエステル、1−エトキシエチリデンオルトエステル、メチリデンオルトエステル、フタリドオルトエステル、1,2−ジメトキシエチリデンオルトエステル、α−メトキシベンジリデンオルトエステル、2−オキサシクロペンチリデンオルトエステル、ブタン−2,3−ビスアセタール、シクロヘキサン−1,2−ジアセタール、ビスジヒドロピランケタール、ジ−t−ブチルシリレン、1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシリオキサニリデン、および1,1,3,3−テトラ−t−ブトキシジシロキサニリデン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 上記の保護基のうち、特にイソプロピリデンケタール(アセトナイド)であることが好ましい。 R3およびR4はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表しており、R3およびR4は互いに結合して環を形成していてもよい。また、R3およびR4はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1または2のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1のアルキル基であることがさらに好ましく、R3およびR4が互いに結合し、R3が結合している炭素原子、R4が結合している炭素原子、およびカルボニル炭素原子とともに、シクロペンタン環を形成していることが特に好ましい。 R5は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、またはベンジル基を表しており、当該フェニル基の1以上の水素原子および当該ベンジル基のフェニル部における1以上の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R5はベンジル基であることが好ましく、当該ベンジル基のフェニル部における1以上の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていることがより好ましい。ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。なかでも、フッ素原子および塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。置換される位置は特に限定されないが、4−置換ベンジルとなる位置が好ましい。 R1〜R5における炭素数1〜4のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基およびt-ブチル基が挙げられる。このうち、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素数1または2のアルキル基がより好ましく、炭素数1のアルキル基であることがさらに好ましい。 またR1〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよい。 なかでも、R3およびR4が互いに結合して環を形成している場合には、ケトン(II)は、下記一般式(IIa)で表されるケトン(IIa)であることが好ましい。 式(IIa)中、R1、R2およびR5は、それぞれ上記式(II)におけるR1、R2およびR5と同一である。 nは、1または2を表している。nは1であることが好ましい。 ケトン(IIa)は、後述するβケトエステル(III)を原料として製造される。 また、nが1である場合、ケトン(IIa)は、下記一般式(IIb)で表されるケトン(IIb)であることが好ましい。 式(IIb)中、R1およびR2は、それぞれ上記式(IIa)におけるR1およびR2と同一である。 X’は、水素またはハロゲン原子を表している。X’は、ハロゲン原子であることが好ましい。X’におけるハロゲン原子の具体例は、式(II)におけるベンジル基のフェニル部において置換されるハロゲン原子と同一である。 X’の結合位置は特に限定されないが、4−置換ベンジルとなる位置が好ましい。 ケトン(IIb)は、後述するβケトエステル(IV)を原料として製造される。 また、ケトン(IIb)は、下記一般式(IIc)で表されるケトン(IIc)であることが好ましい。 式(IIc)中、G1およびG2は保護基を表している。G1およびG2はヒドロキシ基を保護している保護基である。G1およびG2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのGが互いに結合して環を形成してもよい。G1およびG2の具体例は、式(II)におけるGと同一である。また、X’は、上記式(IIb)におけるX’と同一である。 ケトン(IIc)は、後述するβケトエステル(V)を原料として製造される。 また、G1およびG2が結合している場合、化合物(IIc)は下記一般式(IId)で表されるケトン(IId)である。 式(VI)中、R6およびR7は炭素数1〜3のアルキル基を表している。炭素数1〜3のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。このうち、炭素数1または2のアルキル基であることが好ましく、炭素数1のアルキル基であることがさらに好ましい。また、R6およびR7は同一でも異なっていてもよい。R6およびR7が何れもメチル基であることが特に好ましい。 X’は、上記式(IIc)におけるX’と同一である。 ケトン(IId)は、後述するβケトエステル(VI)を原料として製造される。 ケトン(IId)の好適な例として、例えば下記一般式(2)で示されるケトン(2)を挙げることができるが、これに限定されるものではない。 ケトン(2)は、後述するβケトエステル(1)を原料として製造される。 なお、ケトン(II)は、例えば、農園芸用病害防除剤および工業用材料保護剤の有効成分であるアゾール誘導体を製造する工程において好適に利用され得る化合物である。 次に、原料であるβケトエステルについて説明する。 〔2.βケトエステル化合物〕 本実施形態に係るケトンの製造方法において原料として用いられるβケトエステル化合物は、下記一般式(I)で示される化合物である。 式(I)中、R1〜R5はケトン(II)におけるR1〜R5と同一である。 なかでも、R3およびR4が互いに結合して環を形成している場合には、βケトエステル(I)は、下記一般式(III)で表されるβケトエステル(III)であることが好ましい。 式(III)中、R1、R2およびR5は、それぞれ上記式(I)におけるR1、R2およびR5と同一である。 nは、1または2を表している。nは1であることが好ましい。 また、nが1である場合、βケトエステル(III)は、下記一般式(IV)で表されるβケトエステル(IV)であることが好ましい。 式(IV)中、R1およびR2は、それぞれ上記式(III)におけるR1およびR2と同一である。 X’は、水素またはハロゲン原子を表している。X’は、ハロゲン原子であることが好ましい。X’におけるハロゲン原子の具体例は、式(II)のR5におけるベンジル基のフェニル部において置換されるハロゲン原子と同一である。 X’の結合位置は特に限定されないが、4−置換ベンジルとなる位置が好ましい。 また、βケトエステル(IV)は、下記一般式(V)で表されるβケトエステル(V)であることが好ましい。 式(V)中、G1およびG2は保護基を表している。G1およびG2はヒドロキシ基を保護している保護基である。G1およびG2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのGが互いに結合して環を形成してもよい。G1およびG2の具体例は、ケトン(II)におけるGと同一である。また、X’は、上記式(IV)におけるX’と同一である。 また、G1およびG2が結合している場合、化合物(V)は下記一般式(VI)で表されるβケトエステル(VI)である。 式(VI)中、R6およびR7はそれぞれ上記式(IId)におけるR6およびR7と同一である。 X’は、上記式(V)におけるX’と同一である。 βケトエステル(VI)の好適な例として、例えば下記一般式(1)で示されるβケトエステルを挙げることができるが、これに限定されるものではない。 〔3.ケトン(II)の製造方法〕 本発明に係るケトン(II)の製造方法は、上述のβケトエステル(I)を、溶媒の非存在下または非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させる工程(以下、「脱炭酸工程」と称する)を含む方法である。以下、本実施形態では、脱炭酸工程が、非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させる工程である場合について説明する。 本実施形態に係るケトン(II)の製造方法の反応スキームを、下記反応スキーム1として示す。 (反応スキーム1) 本実施形態に係るケトン(II)の好ましい製造方法において、脱炭酸工程は、複数の段階を含んでいてもよい。以下、化合物(II)の製造方法の一実施形態における、脱炭酸工程について、段階(i)〜(iii)を含む場合を例に挙げて説明する。 <製造方法の詳細> (脱炭酸工程) 本実施形態において、脱炭酸工程は、非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させる工程である。本実施形態における脱炭酸工程は、例えば、以下の段階(i)〜(iii)を含む。(i)βケトエステル(I)を非プロトン性極性溶媒に溶解し、βケトエステル化合物溶液とする段階(ii)(i)で得られた溶液に、第2族元素とハロゲンとを含む塩を添加し、反応混合溶液とする段階(iii)(ii)で得られた反応混合溶液を、好適な反応温度まで加熱し、好適な時間攪拌する段階 なお、脱炭酸工程は、上記段階を含むものに限定されるものではなく、例えば、あらかじめ好適な反応温度まで加熱した非プロトン性極性溶媒に、第2族元素とハロゲンとを含む塩の添加およびβケトエステル(I)の溶解を行い、反応混合溶液としてもよい。また、当該塩の添加およびβケトエステル(I)の溶解のいずれを先に行ってもよく、または同時に行ってもよい。 また、本実施形態に係る製造方法は、脱炭酸工程に続いて、反応混合溶液を室温下で放冷した後、反応混合溶液からケトンを分離および抽出する工程(以下、「分離抽出工程」と称する)を含んでいてもよい。 以下、各段階について説明する。 (段階(i)) 段階(i)は、βケトエステル(I)を非プロトン性極性溶媒に溶解し、βケトエステル化合物溶液とする段階である。 βケトエステル(I)は、公知の方法によって製造されたものを用いればよい。 まず、βケトエステル(I)を非プロトン性極性溶媒に溶解する。このとき、βケトエステル(I)に対する非プロトン性極性溶媒の量は、βケトエステル(I)1gに対し、0.5〜20mLが好ましく、8〜12mLであることがより好ましい。例えばβケトエステル(I)1gに対し、10mLである。 非プロトン性極性溶媒 本実施形態において用いられる非プロトン性極性溶媒は、プロトン供与性を有しない極性溶媒であって、原料となるβケトエステル化合物を溶解可能な溶媒が適宜選択される。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトンおよびテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。中でもDMAcであることが好ましい。また、必要に応じて複数の溶媒を混合して用いてもよい。 (段階(ii)) 段階(ii)は、上述の段階(i)で得られたβケトエステル化合物溶液に第2族元素とハロゲンとを含む塩を添加する段階である。 このとき、第2族元素は、Mg、Ca、SrおよびBaから選択されることが好ましく、MgまたはCaから選択されることがより好ましい。 また、上記ハロゲンは、Cl、BrおよびIから選択されることが好ましく、ClまたはBrから選択されることがより好ましく、Clであることがさらに好ましい。 さらに、第2族元素とハロゲンとを含む塩は、例えばMgBr2、CaBr2、MgCl2またはCaCl2などの第2族元素およびハロゲンのみからなる塩であり、MgCl2またはCaCl2であることがより好ましい。 また、意図しない加水分解反応を抑制する観点からは、上記いずれの塩においても、水和水が生じない無水物であることが好ましい。 添加する塩の量としては、βケトエステル(I)に対して、1倍モル〜5倍モルであることが好ましく、1倍モル〜2倍モルであることがより好ましい。 (段階(iii)) 段階(iii)は、好適な反応温度まで反応混合溶液を加熱し、好適な時間攪拌する段階である。 反応温度および反応時間は、用いられる非プロトン性極性溶媒、βケトエステル(I)および塩の種類等によって適宜設定することができる。 反応温度は、例えば50℃以上であり、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、135℃以上がさらに好ましい。 例えば塩としてCaCl2を用いる場合、反応温度は100℃以上であることが好ましい。また、目的物であるケトンの収率を高め、反応時間を短縮させ、かつ副生成物の発生を抑制する観点からは、反応温度は120℃以上であることが好ましい。 また、例えば、塩としてMgCl2無水物を用いる場合、反応温度は、反応温度は120℃以上であることが好ましい。また目的物であるケトンの収率を高め、反応時間を短縮させ、かつ副生成物の発生を抑制する観点からは、120℃よりも高いことが好ましく、例えば135℃以上である。 また、反応時間は、例えば1時間〜数日であり、好適には2時間〜48時間であり、副生成物の発生を抑制する観点から24時間以内であることが好ましい。 (分離抽出工程) 分離抽出工程は、脱炭酸工程に続いて、反応混合溶液を室温下で放冷した後、ケトン(II)を分離および抽出する工程である。 段階(iii)が完了したときの反応混合溶液中には、反応によって生じたケトン(II)と、未反応のβケトエステル、塩および溶媒とが混合している。したがって、分離抽出工程において、反応混合溶液からケトン(II)を分離および抽出する。ケトン(II)の分離方法としては、有機溶媒による抽出などが挙げられ、抽出溶媒としては、例えば酢酸エチル、トルエン、クロロホルムおよびジエチルエーテルなどが用いられる。 また、不純物の除去のために、セライト等を用いて溶液の濾過を行ってもよい。 ケトン(II)の分離方法としては、順相カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、および再結晶等の極性の違いを利用して分離する公知の技術を挙げることができる。 また、複数の分離方法を組み合わせて行ってもよく、例えば、カラムクロマトグラフィーにより分離した後、さらに再結晶による分離および精製を行ってもよい。 また、得られたケトン(II)は、抽出後に水および塩化ナトリウムの飽和水溶液によって洗浄してもよい。また、必要に応じて水分の除去および乾燥を行ってもよい。例えば無水硫酸ナトリウム等を添加することによって乾燥させることができる。 以上のように、本発明に係る製造方法では、安価かつ安全性の高い塩を用いるために、工業的な利用に好適である。さらに、水を添加することなく当該塩をβケトエステル化合物に作用させて脱炭酸反応を行うことができるため、意図しない加水分解反応を抑制することができる。 〔4.その他の実施形態〕 その他の実施形態に係るケトン(II)の製造方法は、上述のβケトエステル(I)を、溶媒の非存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させる工程を含む方法である。当該実施形態において、溶媒の非存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させる方法としては、溶媒の非存在下で、βケトエステル化合物の加熱融解によって得られた液体に、第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させる方法が挙げられる。加熱融解する場合、融解温度は例えば50℃以上であり、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。 本実施形態において用いられる、第2族元素とハロゲンとを含む塩の種類および使用量は、非プロトン性極性溶媒を使用する上述の実施形態における、塩の種類および使用量と同様である。 本実施形態に係るケトン(II)の製造方法においても、水を添加することなく塩をβケトエステル化合物に作用させて脱炭酸反応を行うことができるため、意図しない加水分解反応を抑制することができる。 以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。 <2−(4−クロロベンジル)−8,8−ジメチル−7,9−ジオキサスピロ[4.5]デカン−1−オン(ケトン(2))の合成> 以下、本発明のケトンの製造方法に係るケトンの製造例について、以下に実施例1〜5および比較例1〜3を示す。すべての実施例および比較例は、下記反応スキーム2により、βケトエステル(1)(R6=CH3、R7=CH3およびX’=Clであるβケトエステル(VI))からケトン(2)を製造するものである。 (反応スキーム2) なお、目的のケトン(2)以外に、下記の脱保護体(3)および(4)が副生成物として生じる。 〔実施例1:塩化カルシウムを用いる方法〕(反応スキーム3) βケトエステル(1)1.00gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)10mL溶液に、塩化カルシウム333mgを加え、100℃において9時間撹拌した。溶液を室温下で放冷した後、水を加えてから、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を水および飽和食塩水によって洗浄し、続いて無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を留去して得られた粗生成物1.09gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的となるケトン(2)を632mg得た。 〔実施例2:塩化カルシウムを用いる方法〕 (反応スキーム4) βケトエステル(1)1.00gのジメチルアセトアミド10mL溶液に、塩化カルシウム333mgを加え、120℃において4時間撹拌した。溶液を室温下で放冷した後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、トルエンを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水によって洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を留去して得られた粗生成物1.08gをHPLC(日立高速液体クロマトグラフLachrom Elite(L-2000シリーズ))を用いて分析し、粗生成物全量を100%として、粗生成物は目的のケトン(2)を74.9%含有することを確認した。 〔実施例3:塩化マグネシウム六水和物を用いる方法〕(反応スキーム5) βケトエステル(1)2.01gのジメチルアセトアミド20mL溶液に、塩化マグネシウム六水和物1.22gを加え、120℃において10.5時間撹拌した。溶液を室温下で放冷した後、トルエンを用いて抽出した。有機層を水および飽和食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を留去して得られた粗生成物1.836gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的となるケトン(2)を623.6mg得た。 〔実施例4:塩化マグネシウムを用いる方法〕(反応スキーム6) βケトエステル(1)2.02gのジメチルアセトアミド20mL溶液に、塩化マグネシウム571mgを加え、135℃において6時間撹拌した。溶液を室温下で放冷した後、水およびトルエンを加えたのちセライトを用いて濾過した。濾液の有機層を分離したのち、水および飽和食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を留去して得られた粗生成物1.7356gをHPLC(日立高速液体クロマトグラフLachromElite(L-2000シリーズ))を用いて分析し、該粗生成物は、目的のケトン(2)を76.0%含有することを確認した。 塩としてMgCl2(無水物)を用いた場合には、塩としてCaCl2を用いた場合(実施例2)より反応温度を高温とすることにより、実施例2と同等の収率で目的のケトン(2)が得られた。 〔実施例5:塩化マグネシウムを用いる方法〕(反応スキーム7) βケトエステル(1)2.00gのジメチルアセトアミド20mL溶液に、塩化マグネシウム571mgを加え、120℃において24時間撹拌した。溶液を室温下で放冷した後、トルエンを用いて抽出した。有機層を水および飽和食塩水によって洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を留去して得られた粗生成物1.7259gをHPLC(日立高速液体クロマトグラフLachrom Elite(L-2000シリーズ))によって分析し、該粗生成物は、粗生成物全量を100%として、目的のケトン(2)を68.9%含有することを確認した。 〔比較例1:塩化ナトリウムを用いる方法〕(反応スキーム9) βケトエステル(1)367mgのジメチルアセトアミド1mL溶液に、塩化ナトリウム117mgを加え、100℃にて7時間撹拌した。反応溶液をHPLCにて分析し、反応が進行していないことを確認した。 塩としてNaClを用いた場合、水なしでは反応が進行しなかった。 〔比較例2:塩化ナトリウムおよび水溶媒を用いる方法〕(反応スキーム10) βケトエステル(1)367mgのジメチルアセトアミド1mL/水1.2mL溶液に、塩化ナトリウム117mgを加え、100℃において8時間撹拌した。溶液を室温下で放冷した後、水を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を、飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を留去して得られた粗生成物283.3mgをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。以上の結果、脱保護の進行した脱保護体(3)256.8mgを得た。 塩としてNaClを使用し、溶媒に水を添加した場合、目的のケトン(2)は得られず脱保護が進行した脱保護体(3)のみが得られた。 以上の実施例1〜5および比較例1および2の結果を表1にまとめた。 本発明は、ケトンの製造方法に利用することができる。 下記一般式(II)で表されるケトンの製造方法であって、(式(II)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または−CH2−O−Gを表しており、Gは保護基を表し、R1およびR2は互いに結合して環を形成していてもよく、R3およびR4はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表しており、R3およびR4は互いに結合して環を形成していてもよく、R5は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、またはベンジル基を表しており、当該フェニル基の1以上の水素原子および当該ベンジル基のフェニル部における1以上の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。) 下記一般式(I)で表されるβケトエステル化合物を、溶媒の非存在下または非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させる工程を含むことを特徴とするケトンの製造方法。(式(I)中、R1〜R5は上記式(II)におけるR1〜R5と同一である) 上記第2族元素は、Mg、Ca、SrおよびBaから選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 上記ハロゲンは、Cl、BrおよびIから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。 上記塩は、CaCl2またはMgCl2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。 上記工程における脱炭酸反応の反応温度は、50℃以上であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。 上記工程では、非プロトン性極性溶媒の存在下で第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。 上記非プロトン性極性溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。 上記工程では、溶媒の非存在下で、上記βケトエステル化合物の加熱融解によって得られた液体に、第2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。 上記加熱融解の融解温度は50℃以上であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。 上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。(式(III)中、R1、R2およびR5は、それぞれ上記式(I)におけるR1、R2およびR5と同一であり、nは1または2を表している。) 上記一般式(III)で表される化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。(式(IV)中、R1およびR2は、それぞれ上記式(III)におけるR1およびR2と同一であり、X’は水素またはハロゲン原子を表している。) 上記一般式(IV)で表される化合物は、下記一般式(V)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。(式(V)中、G1およびG2は保護基を表し、G1およびG2は互いに同一でも異なっていてもよく、G1およびG2は互いに結合して環を形成していてもよく、X’は上記式(IV)におけるX’と同一である。) 上記一般式(V)で表される化合物は、下記一般式(VI)で表される化合物であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。(式(VI)中、R6およびR7は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよく、X’は上記式(V)におけるX’と同一である。) 【課題】βケトエステル化合物の脱炭酸反応によるケトンの製造方法を提供する。【解決手段】下記一般式(I)で表されるβケトエステル化合物に、2族元素とハロゲンとを含む塩を作用させることによって、脱炭酸反応させて、下記一般式(II)で表されるケトンを得る。【化1】【化2】【選択図】なし