タイトル: | 公開特許公報(A)_口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物 |
出願番号: | 2013149292 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 8/34,A61K 8/66,A61K 8/46,A61Q 11/00 |
丸山 真達 堤 康太 JP 2015020970 公開特許公報(A) 20150202 2013149292 20130718 口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物 ライオン株式会社 000006769 小島 隆司 100079304 重松 沙織 100114513 小林 克成 100120721 石川 武史 100124590 正木 克彦 100157831 丸山 真達 堤 康太 A61K 8/34 20060101AFI20150106BHJP A61K 8/66 20060101ALI20150106BHJP A61K 8/46 20060101ALI20150106BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20150106BHJP JPA61K8/34A61K8/66A61K8/46A61Q11/00 11 OL 18 4C083 4C083AB172 4C083AB242 4C083AB472 4C083AC122 4C083AC131 4C083AC132 4C083AC181 4C083AC182 4C083AC402 4C083AC431 4C083AC432 4C083AC781 4C083AC782 4C083AC791 4C083AC792 4C083AC862 4C083AD272 4C083AD352 4C083AD471 4C083AD472 4C083CC41 4C083EE06 4C083EE07 4C083EE36 本発明は、う蝕の原因となるバイオフィルムを化学的に除去する効果の高い口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物に関する。 口腔疾患は病原菌が原因で発症するが、この病原菌は歯面にプラーク(歯垢)を形成して口腔内に定着し病原性を発揮する。そこで、口腔疾患の予防にはプラークコントロールが非常に重要である。プラークコントロール手段としては、プラークの形成抑制や殺菌などがあるが、中でも重要なのがプラークの除去である。口腔内のプラークを除去するには、物理的作用、化学的作用を利用した方法があるが、プラーク除去の基本であるブラッシング等の物理的作用による方法は、物理的な力の及ぶ範囲が限られるため除去効果に限界があった。 更に、近年では、プラークは単なる細菌の汚れという認識から、細菌凝集体と細菌外代謝物などからなるバイオフィルムであると考えられるようになった。即ち、プラークを化学的に除去するには、グルカンやタンパクといった細菌外代謝物だけではなく、細菌凝集体、更には細菌凝集体と菌体外代謝物とで複合的に構成されたバイオフィルム構造物を効果的に除去することが重要である。 また、界面活性剤は洗浄作用を有することが一般に知られ、口腔用組成物においても、ラウリル硫酸ナトリウムやラウロイルサルコシンナトリウムをはじめとする各種界面活性剤が用いられ、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムは、アニオン界面活性剤特有の刺激がない界面活性剤として知られている(特許文献1;特開平6−72836号公報)。しかし、これら界面活性剤は、一般的にその乳化分散作用を期待して用いられ、特に細菌凝集体をターゲットとしているものではない。界面活性剤は、その浸透作用、界面清掃化作用の点から、わずかではあるが歯垢除去効果を有すると認識されていたが、細菌凝集体及び細菌凝集体と菌体外代謝物とで複合的に構成されたバイオフィルム構造物に対する作用は十分ではなく、更なる改善の余地がある。 なお、特許文献2(特表2008−519043号公報)には、スルホ酢酸アルキルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩と水溶性亜鉛塩とを併用することが開示されているが、スルホ酢酸アルキル塩は亜鉛塩の収斂性を低減するために用いられているもので、バイオフィルム除去効果については示されていない。更に、特許文献3(特開平9−508120号公報)は、口腔粘膜に対する刺激が軽減された口腔用組成物としてラウリルスルホ酢酸ナトリウムを含む練り歯磨きが開示されているが、バイオフィルム除去効果については言及されていない。 一方、化学的なプラーク除去方法として、プラーク中のグルカンやタンパクを分解する、グルカナーゼやプロテアーゼといった酵素を用いる方法が開発されている(特許文献4〜7;特開昭60−38327号公報、特開昭61−277632号公報、特開昭62−195320号公報、特開2002−187829号公報)。しかし、その効果は未だ改善の余地があり、平成23年度歯科疾患実態調査結果によると依然としてう蝕、歯周病ともに非常に高い罹患率を維持している状況である。なお、特許文献4〜7には、口腔バイオフィルムの分散除去について言及されていない。特開平6−72836号公報特表2008−519043号公報特開平9−508120号公報特開昭60−38327号公報特開昭61−277632号公報特開昭62−195320号公報特開2002−187829号公報 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、う蝕の原因となるバイオフィルムを化学的に除去する効果の高い口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)親水基がスルホン酸塩からなるアニオン界面活性剤のα−オレフィンスルホン酸塩(A−1)又はアルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコールとを組み合わせると、口腔バイオフィルムの除去効果が格段に向上することを見出した。また、(A)成分のアニオン界面活性剤特有の苦味を抑制し、更に適度な泡立ちを付与し得ることを見出した。 本発明(第一発明)においては、(A)成分のα−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコールとを併用し、特に(C)成分の含有量が組成物全体の5〜35質量%となるように口腔用組成物に配合すると、(A−1)成分と(B)成分とが特異的かつ相乗的に作用し、口腔バイオフィルムを分散除去する作用が増強する。また、(A−1)成分に由来する苦味を抑え、(A−1)成分による適度な泡立ちを与えることができる。 即ち、後述する実施例及び比較例に示したように、(A)成分のα−オレフィンスルホン酸塩(A−1)(テトラデセンスルホン酸ナトリウム)の単独使用では、作製したバイオフィルムの除去率は70%未満にとどまる。また、(B)成分のデキストラナーゼによるバイオフィルム除去率は50%に満たないものであり、バイオフィルム除去効果がかなり低く、これを界面活性剤と併用してもバイオフィルム除去効果を向上させるものとは考えられないにもかかわらず、(A−1)成分と(B)成分と(C)成分とを併用し、特に(C)成分の含有量が適切量であると、意外にも(A−1)成分、(B)成分が特異的に相互作用し、十分なバイオフィルム除去効果が得られることを知見した。またこの場合、ラウリル硫酸ナトリウムとデキストラナーゼとを併用しても、十分なバイオフィルム除去効果が得られず、バイオフィルム除去効果は(A−1)成分と(B)成分とを併用した場合の特異的な作用効果であることを知見した。更に、α−オレフィンスルホン酸塩は苦味があり、従来、文献的にはその使用が開示されているものの、実際にはその使用が忌避されていたものであったが、(A−1)成分と(B)成分と(C)成分とを併用すると、バイオフィルム除去効果が向上するだけでなく(A−1)成分に由来する苦味が抑制され、良好な使用感を与え、また(A−1)成分による適度な泡立ちが維持され、実使用に耐えるものとなることを知見し、本発明をなすに至った。 また、本発明(第二発明)においては、(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを併用すると、(A−2)成分と(B)成分とが特異的かつ相乗的に作用し、口腔バイオフィルムを分散除去する作用が増強する。また、(A−2)成分に由来する苦味を抑え、(A−2)成分による適度な泡立ちを与えることができる。 即ち、後述する実施例及び比較例に示したように、(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩(A−2)(ラウリルスルホ酢酸ナトリウム)の単独使用では、作製したバイオフィルムの除去率は70%未満にとどまる。また、(B)成分のデキストラナーゼによるバイオフィルム除去率は50%に満たないものであり、バイオフィルム除去効果がかなり低く、これを界面活性剤と併用してもバイオフィルム除去効果を向上させるものとは考えられないにもかかわらず、(A−2)成分と(B)成分とを併用すると、意外にもこれら成分が特異的に相互作用し、十分なバイオフィルム除去効果が得られることを知見した。またこの場合、ラウリル硫酸ナトリウムとデキストラナーゼとを併用しても、十分なバイオフィルム除去効果が得られず、バイオフィルム除去効果は(A−2)成分と(B)成分とを併用した場合の特異的な作用効果であることを知見した。更に、アルキルスルホ酢酸塩は苦味が強く、従来、文献的にはその使用が開示されているものの、実際にはその使用が忌避されていたものであったが、(A−2)成分と(B)成分とを併用すると、バイオフィルム除去効果が向上するだけでなく(A−2)成分に由来する苦味が抑制され、良好な使用感を与え、また(A−2)成分による適度な泡立ちが維持され、実使用に耐えるものとなることを知見し、本発明をなすに至った。 なお、特許文献4〜7は口腔バイオフィルムの分散除去についての言及がない。特許文献7には、デキストラナーゼとα−オレフィンスルフォン酸ナトリウムとを含む組成が実施例に記載されているが、これはデキストラナーゼの口腔内滞留性をカチオン性ポリマー及び特定香料成分で向上した技術であり、かかる特許文献4〜7から、(A)、(B)成分の併用系による口腔バイオフィルムの分散除去は予測できない。 本発明、特に第一発明においては、更に(D)ノニオン界面活性剤、とりわけポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合すると、優れたバイオフィルム除去効果を付与しつつ苦味をより抑制し、適度な泡立ちを与えることができる。 従って、本発明は、下記の口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物を提供する。〔1〕(A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとからなる口腔バイオフィルム除去剤。〔2〕(A)/(B)が質量比として0.65〜130である〔1〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。〔3〕(A−1)成分のα−オレフィンスルホン酸塩が、炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩である〔1〕又は〔2〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。〔4〕(A−2)成分のアルキルスルホ酢酸塩が、ラウリルスルホ酢酸塩である〔1〕又は〔2〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。〔5〕(C)成分の糖アルコールが、キシリトール又はエリスリトールである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の口腔バイオフィルム除去剤。〔6〕更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の口バイオフィルム除去剤。〔7〕(A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを含有してなり、(C)糖アルコールの含有量が組成物全体の5〜35質量%であることを特徴とする口腔用組成物。〔8〕(A)/(B)が質量比として0.65〜130である〔7〕に記載の口腔用組成物。〔9〕(A)成分の含有量が0.1〜3質量%、(B)成分の含有量が1〜200単位/gである〔7〕又は〔8〕に記載の口腔用組成物。〔10〕更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。〔11〕口腔バイオフィルム除去用である〔7〕〜〔10〕のいずれかに記載の口腔用組成物。 本発明の口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物は、う蝕の原因となる口腔バイオフィルムの化学的除去効果に優れる。また、苦味が抑制され良好な使用感を与え、かつ適度な泡立ちを与える。 以下、本発明につき更に詳述すると、本発明の口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物は、(A)親水基がスルホン酸塩からなるアニオン界面活性剤と、(B)デキストラナーゼとを併用することを特徴とし、第一発明は、(A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコールとを併用してなり、第二発明は、(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを併用してなる。 (A)親水基がスルホン酸塩からなるアニオン界面活性剤としては、α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)、アルキルスルホ酢酸塩(A−2)を用いる。(A)成分のアニオン界面活性剤は、(B)成分と併用することで、バイオフィルム除去効果が格段に向上し、また、(A)成分の苦味が抑えられ、泡立ち性を適度に付与することもできる。 α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)としては、炭素数が14〜16のα−オレフィンスルホン酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩を用いることができ、好ましくは炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩(テトラデセンスルホン酸塩として市販)である。これらは市販品を使用することができる。なお、α−オレフィンスルホン酸塩は、副生物としてヒドロキシアルキルスルホン酸塩を含むことがあり、その割合は特に限定されるものではないが通常20質量%以下であるが、このようなα−オレフィンスルホン酸塩を本発明では用いることができる。 アルキルスルホ酢酸塩(A−2)としては、アルキル基の炭素数が10〜20のアルキルスルホ酢酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩を用いることができ、市販品を使用することができる。好ましくはラウリルスルホ酢酸塩である。 なお、本発明においては、(A)成分としてα−オレフィンスルホン酸塩(A−1)又はアルキルスルホ酢酸塩(A−2)を用いるが、(A−1)成分及び(A−2)成分を用いてもよい。 (B)デキストラナーゼは、(A)成分と併用することで、バイオフィルム除去効果を格段に増強させることができ、また、(A)成分のアニオン界面活性剤の苦味を抑制し、適度な泡立ち性を与える。 (B)デキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生産菌より公知の方法により得られるデキストラナーゼを好適に使用できるが、他の微生物より生産されたデキストラナーゼも使用することができる。市販品としては、第一三共プロファーマ(株)製デキストラナーゼなどを用いることができる。 本発明において、(A)成分と(B)成分との配合比率が適切範囲であると、バイオフィルム除去効果がより向上する。この場合、(A)成分と(B)成分との配合比率は、(B)成分として13,000単位/gのデキストラナーゼを使用した場合、(A)/(B)が質量比として0.65〜130、特に0.65〜65が好ましく、より好ましくは2〜20である。上記比率範囲内であると、バイオフィルム除去効果がより優れる。また、泡立ちを良好に維持し、苦味を抑えるには130以下であることがより好適である。 (C)糖アルコールとしては、キシリトール、エリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を配合できるが、中でもキシリトール、エリスリトール、ソルビトール、特にキシリトール、エリスリトールを用いることが、バイオフィルム除去効果、苦味抑制効果の点から好ましい。 本発明、特に第一発明において、(A)成分と(C)成分の配合比率((A)/(C))は特に限定されないが、質量比として好ましくは0.005〜0.2、より好ましくは0.025〜0.15である。この範囲内であると、優れたバイオフィルム除去効果を与え、苦味を抑制し適度な泡立ちも与えることができる。 なお、第二発明にも(C)成分を同様に配合することができ、(C)成分を配合することで同様の効果を得ることができる。 本発明、特に第一発明では、更に(D)ノニオン界面活性剤を配合すると、苦味抑制により好適である。ノニオン界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられるが、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適である。なお、ノニオン界面活性剤を併用すると(A)成分由来のバイオフィルム除去効果が減弱して十分な効果を付与できない場合があるが、本発明においては、特に(D)成分としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合すると、(A)成分由来のバイオフィルム除去効果が減弱することなく苦味抑制効果がより向上する。 なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油においては、効果発現の点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数が好ましくは10〜100、より好ましくは20〜60である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいては、効果発現の点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数が好ましくは2〜50、より好ましくは2〜10である。 本発明、特に第一発明において、(D)成分を配合する場合、(A)成分と(D)成分の配合比率((A)/(D))は特に限定されないが、質量比として好ましくは0.2〜10、より好ましくは0.5〜5である。この範囲内では、バイオフィルム除去効果が減弱することなく苦味を抑制し適度な泡立ちも与えることができる。 なお、第二発明にも(D)成分を同様に配合することができ、(D)成分を配合することで同様の効果を得ることができる。 本発明の口腔バイオフィルム除去剤は、口腔用組成物に好適に配合される。この場合、口腔用組成物において、(A)成分の配合量は、組成物全体の0.1〜3%(質量%、以下同様。)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5%である。0.1%以上であると、十分なバイオフィルム除去効果を付与することができる。また、良好な泡立ち性を付与することができる。3%以下であると、苦味が強くなることがなく、使用上好ましい。 また、(B)成分の配合量は、合計で組成物中1〜200単位/g(U/g)、特に2〜50単位/gとなる範囲が好ましい。1単位/g以上であると、十分なバイオフィルム除去効果を得ることができる。200単位/g以下であると、泡立ちへの影響が少なく、使用上好ましい。 なお、デキストラナーゼとしては、通常10,000〜14,000単位/gのものが使用され、13,000単位/gのデキストラナーゼを使用すると、その配合量は組成物全体の0.0077〜1.54%、特に0.015〜0.38%が好適である。0.0077%以上であると、十分なバイオフィルム除去効果が得られ、1.54%以下であると、泡立ちへの影響が少なく、使用上好ましい。 ここで、デキストラナーゼ1単位とは、デキストランを基質として酵素反応を行った場合に、1分間あたりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じるデキストラナーゼの量である。 (C)糖アルコールの配合量は、組成物全体の5〜35%が好ましく、とりわけ10〜30%が好ましい。5%以上であると、十分なバイオフィルム除去効果が得られ、また苦味を抑制し、適度な泡立ちを付与することができ、35%以下であると、バイオフィルム分解除去効果へ影響が生じることがないことから好適である。 なお、本発明、特に第一発明の口腔バイオフィルム除去剤は、とりわけ(C)成分の配合量が上記範囲内になるように口腔用組成物に配合することが好ましく、これにより口腔バイオフィルム除去効果が向上し、また、苦味が抑制され良好な使用感を与え、かつ適度な泡立ちを付与することができる。 (D)成分のノニオン界面活性剤を配合する場合、その配合量は組成物全体の0.1〜5%、とりわけ0.2〜3%が好ましい。0.1%以上であると、十分な苦味抑制効果を得ることができ、5%以下であると、バイオフィルム分解除去効果への影響が生じることがないことから好適である。 本発明の口腔用組成物は、液体、液状、ペースト状などの形態として調製され、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、洗口剤などとして調製でき、これらは通常の方法で調製することができる。 本発明の口腔用組成物は、上記必須成分に加えて、必要によりその剤型に応じたその他の任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。具体的には、上記成分に加えて、歯磨剤の場合は、例えば、研磨剤、粘結剤、糖アルコール以外の粘稠剤、(A)、(D)成分以外の界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、色素、デキストラナーゼ以外の各種有効成分、水等の溶剤、pH調整剤などを配合し得る。また、洗口剤の場合は、例えば、糖アルコール以外の湿潤剤、(A)、(D)成分以外の界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、殺菌剤、香料、甘味剤、色素、デキストラナーゼ以外の各種有効成分などを配合し得る。 以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の組成物に配合可能な成分はこれらに制限されるものではない。 研磨剤としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。これらの研磨剤は、通常、歯磨剤の場合、組成物全体の5〜70%、特に10〜50%配合することができる。 粘結剤としては、例えばプルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これら粘結剤は、通常、組成物全体の0〜10%、特に0.1〜5質量%配合できる。 粘稠剤(湿潤剤)としては、例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これら粘稠剤の配合量は、通常、組成物全体の0〜70%、特に3〜50%である。 界面活性剤としては、(A)成分以外のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤を配合できる。例えば、アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩などが挙げられる。これら界面活性剤は、1種又は2種以上使用でき、通常、組成物全体の0〜10%、特に0.1〜5%配合することができる。 また、(A)成分以外のアニオン界面活性剤は配合しなくてもよく0%でもよいが、配合する場合は0.1〜1.5%、特に0.1〜1.0%が好ましい。 甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン等が挙げられる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステルなどが配合できる。 香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、l−メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料など、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。 色素としては、目的の色調により口腔用組成物に使用可能な色素を使用できる。食用色素としては、例えばブリリアントブルー、タートラジンなど、顔料としては酸化チタンなどが挙げられる。 有効成分(薬用成分)としては、例えば、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩類、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等の抗炎症剤、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤、ムタナーゼ、塩化リゾチーム等の酵素剤、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等のビタミン類、塩化ナトリウム等の収斂剤、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物などを、薬剤学的に許容できる範囲で有効量使用できる。 また、溶剤としてエタノール、水等を配合し得る。 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。[実施例、比較例] 表1〜6に示す組成の歯磨剤組成物を、下記に示す方法で調製し、下記方法で評価した。なお、歯磨剤組成物の共通組成は下記の通りである。結果を表に併記する。 歯磨剤組成物の調製方法; まず、プロピレングリコール等の湿潤剤を含む精製水中に、所用の(B)成分、更には(C)成分などの水溶性成分を常温で混合後、更に粘結剤などを混合し、ディスパーで分散させた。ニーダー中に(A)成分、更には(D)成分、分散液、研磨剤などを入れて混合後、香料、界面活性剤を加えた。ニーダー内を約5kPaまで減圧して脱泡を行い、更に混合を続けて歯磨剤を得た。なお、比較例の組成物は上記方法に準じて調製した。<口腔バイオフィルム除去効果の評価方法>(1)モデルバイオフィルムの作製方法 直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学社製)を0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものをモデルバイオフィルム作製の担体に用い、培養液には、ベイサルメディウムムチン培養液(BMM)*1を用いた。モデルバイオフィルムを作製するために使用した菌株は、American Type Culture Collectionより購入したアクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146、ベイヨネラ パルビュラ(Veillonella parvula)ATCC17745、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)ATCC10557、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC25175を用いた。これら5菌株は予めBMM3,000mLを入れたRotating Disk Reactor(培養槽)にそれぞれ1×107cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気的条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で24時間培養した。その後、同条件でBMM培地を置換率5vol%/時間の割合で連続的に供給し10日間培養を行い、HA表面に5菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。(2)モデルバイオフィルムの除去効果 形成させたモデルバイオフィルムは、24穴マルチプレート(住友ベークライト社製)に移し、調製した歯磨剤組成物(健常人より採取した唾液による3倍希釈液の遠心上清(10,000rpm、10分))を2mL加え、3分間浸漬した。その後、PBS(和光純薬工業社製)1mLで6回洗浄し、同バッファー2mLを添加した試験管(直径13mm×100mm)内で超音波処理(200μA、10秒間)により分散した。この分散液の波長550nmでの濁度(OD)を測定しバイオフィルム残存量を測定した。 試験組成物のバイオフィルム除去効果は、下式によりコントロールに対する除去率を求め、この除去率から、下記基準に則り口腔バイオフィルム除去効果を判定した。バイオフィルム除去率(%)= (コントロールの濁度−試験組成物処置の濁度)/コントロールの濁度×100 バイオフィルム除去効果の判定基準 ◎◎:バイオフィルム除去率が95%以上 ◎ :バイオフィルム除去率が90%以上95%未満 ○ :バイオフィルム除去率が80%以上90%未満 △ :バイオフィルム除去率が70%以上80%未満 × :バイオフィルム除去率が50%以上70%未満 ××:バイオフィルム除去率が50%未満*1 BMMの組成:1リットル中の質量で表す。 プロテオースペプトン(Becton and Dickinson社製):4g/L トリプトン(Becton and Dickinson社製):2g/L イーストエキス(Becton and Dickinson社製):2g/L ムチン(Sigma社製):5g/L ヘミン(Sigma社製):2.5mg/L ビタミンK(和光純薬工業社製):0.5mg/L KCl(和光純薬工業社製):1g/L システイン(和光純薬工業社製):0.2g/L 蒸留水:残 (全量が1Lになるようにメスアップし、121℃で20分間オートクレーブした。)<苦味のなさ及び泡立ちのよさの評価方法> 表に示す歯磨剤組成物の苦味のなさ及び泡立ちのよさを、下記方法で官能評価した。 歯磨剤組成物1gを歯ブラシにとり、3分間ブラッシングすることで下記評点基準により評価した。苦味のなさ及び泡立ちのよさは、評価者6名の平均から下記評価基準に基づき評価した。苦味のなさ 評点基準 5:苦味を感じない 4:殆ど苦味を感じない 3:やや苦味を感じる 2:苦味を感じる 1:強い苦味を感じる 評価基準 ◎:平均値が4点以上5点以下 ○:平均値が3点以上4点未満 △:平均値が2点以上3点未満 ×:平均値が1点以上2点未満泡立ちのよさ 評点基準 5:泡立ちがとてもよい 4:泡立ちがややよい 3:普通の泡立ちである 2:泡立ちがやや悪い 1:泡立ちがとても悪い 評価基準 ◎:平均値が4点以上5点以下 ○:平均値が3点以上4点未満 △:平均値が2点以上3点未満 ×:平均値が1点以上2点未満 使用原料の詳細を下記に示す。(A)成分(A−1)テトラデセンスルホン酸ナトリウム;ライオン(株)製(A−2)ラウリルスルホ酢酸ナトリウム;日光ケミカルズ(株)製(B)デキストラナーゼ;第一三共プロファーマ(株)製、13,000単位(unit)/g品を使用(C);キシリトール;ロケットジャパン(株)製(C);エリスリトール;三菱化学フーズ(株)製(C);ソルビトール;東和化成工業(株)製、D−ソルビトール70%水溶液を使用(各例中の配合量は純分換算値)(D);HCO−40、60; 日光ケミカルズ(株)製、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、数値の40、60はそれぞれエチレンオキサイドの平均付加モル数。(D);POEラウリルエーテル;日光ケミカルズ(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレンオキサイドの付加モル数2(D);POEステアリルルエーテル;日光ケミカルズ(株)製、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数2 (A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとからなる口腔バイオフィルム除去剤。 (A)/(B)が質量比として0.65〜130である請求項1記載の口腔バイオフィルム除去剤。 (A−1)成分のα−オレフィンスルホン酸塩が、炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩である請求項1又は2記載の口腔バイオフィルム除去剤。 (A−2)成分のアルキルスルホ酢酸塩が、ラウリルスルホ酢酸塩である請求項1又は2記載の口腔バイオフィルム除去剤。 (C)成分の糖アルコールが、キシリトール又はエリスリトールである請求項1乃至4のいずれか1項記載の口腔バイオフィルム除去剤。 更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む請求項1乃至5のいずれか1項記載の口腔バイオフィルム除去剤。 (A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを含有してなり、(C)糖アルコールの含有量が組成物全体の5〜35質量%であることを特徴とする口腔用組成物。 (A)/(B)が質量比として0.65〜130である請求項7記載の口腔用組成物。 (A)成分の含有量が0.1〜3質量%、(B)成分の含有量が1〜200単位/gである請求項7又は8記載の口腔用組成物。 更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する請求項7乃至9のいずれか1項記載の口腔用組成物。 口腔バイオフィルム除去用である請求項7乃至10のいずれか1項記載の口腔用組成物。 【課題】う蝕の原因となるバイオフィルムを化学的に除去する効果の高い口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物を提供する。【解決手段】(A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとからなる口腔バイオフィルム除去剤。 (A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを含有してなり、(C)糖アルコールの含有量が組成物全体の5〜35質量%であることを特徴とする口腔用組成物。【選択図】なし