生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ステロイド剤の副作用軽減剤
出願番号:2013121432
年次:2013
IPC分類:A61K 36/00,A61K 31/353,A61P 39/02


特許情報キャッシュ

中山 樹一郎 友澤 寛 鍔田 仁人 ▲高▼垣 欣也 JP 2013173799 公開特許公報(A) 20130905 2013121432 20130610 ステロイド剤の副作用軽減剤 株式会社東洋新薬 398028503 松井 茂 100086689 宮尾 武孝 100157772 西田 英世 100182040 中山 樹一郎 友澤 寛 鍔田 仁人 ▲高▼垣 欣也 A61K 36/00 20060101AFI20130809BHJP A61K 31/353 20060101ALI20130809BHJP A61P 39/02 20060101ALI20130809BHJP JPA61K35/78 BA61K35/78 XA61K31/353A61P39/02 1 2012038509 20120224 OL 14 4C086 4C088 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA08 4C086FA02 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA06 4C086ZB11 4C086ZB13 4C086ZB15 4C088AB03 4C088MA52 4C088NA06 4C088ZB11 4C088ZB13 4C088ZB15 本発明は、ステロイド剤の副作用軽減剤に関する。 デキサメサゾンやプレドニゾロンなどに代表されるステロイド剤は、抗炎症や免疫抑制の作用効果を有し、皮膚の炎症やかゆみの抑止、リウマチや膠原病の治療、臓器移植後の拒絶反応の抑制など各種疾患や症状の治療剤として利用されている。ステロイド剤は、医師による処方薬としてのみならず、一般市販薬としても広く利用され、その投与形態にも、内服、外用、点滴、吸入、点眼、座薬など各種のものがある。 一方、ステロイド剤には、免疫抑制作用による感染症の憎悪、消化性潰瘍、骨粗鬆症、皮膚萎縮等、各種の副作用も知られ、その副作用の軽減が求められている。例えば、下記特許文献1には、アトピー性皮膚炎治療用ステロイド外用剤の副作用を生じさせないために、ステロイドの含有量を副作用を生じない量に調整することが開示されている。また、下記特許文献2には、ビタミンEにより、ステロイド誘発性の眼圧上昇を抑制することが開示されている。特開2003−48835号公報特開2004−256524号公報 ステロイド剤の医薬や保健健康分野への応用を更に広げるためには、ステロイド剤に付随する副作用の軽減が望まれる。そこで本発明の目的は、ステロイド剤の副作用を軽減する効果に優れた新たな有効成分を含有するステロイド剤の副作用軽減剤を提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ステロイド剤の継続使用により、血管障害を引き起こし、松樹皮抽出物にはそれを抑える効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は以下の構成を有するステロイド剤の副作用軽減剤を提供する。[1]10質量%以上のオリゴメリック・プロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物を有効成分として含有することを特徴とする、ステロイド剤の副作用軽減剤。[2]経口用途で使用可能であることを特徴とする、請求項1記載のステロイド剤の副作用軽減剤。 本発明のステロイド剤の副作用軽減剤によれば、松樹皮抽出物を有効成分とするので、ステロイド剤の副作用を軽減する効果に優れている。特に、ステロイド剤投与による血管障害を軽減する効果に優れている。図1Aは試験例1の予備実験の実験スケジュールの概要を示す図表であり、図1Bは試験例2の色素注入による血管透過試験の実験スケジュールの概要を示す図表である。試験例1においてラットの体重推移を各試験群間で比較した結果を示す図表である。試験例2においてラットに色素を血管内投与し背部にクロロホルムによる刺激を終了してから色素発色が認められるまでの初発色時間を各試験群間で比較した結果を示す図表である。試験例2において色素の血管内投与後30分経過時の色素透過面積を各試験群間で比較した結果を示す図表である。各試験群のラットの背部における色素透過の様子の一例を示す写真である。 以下、本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。 本発明に用いる松樹皮抽出物の原料松としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダ等が挙げられる。中でも、フランス海岸松の樹皮抽出物が好ましい。 フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、フラボノイド類であるプロアントシアニジン(proanthocyanidin)を主要成分として含有する他に、有機酸ならびにその他の生理活性成分等を含有している。この主要成分であるプロアントシアニジンには、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。 松樹皮抽出物は、松の樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には温水、または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテン等の食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が好ましく用いられる。これらの水、有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等が好ましく用いられる。 松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法は特に制限はないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法等が用いられる。 超臨界流体抽出法とは、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)等が用いられるが、二酸化炭素が好ましく用いられる。 超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。 また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。 超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能であるため、脱溶媒工程等が省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。 また、松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法は、上述の抽出法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法等の方法によって行ってもよい。 松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。 松樹皮からの抽出物は、限外濾過、あるいは吸着性担体(ダイヤイオンHP−20、Sephadex−LH20、キチン等)を用いたカラム法またはバッチ法などにより、精製を行うことが安全性の面から好ましい。また、必要に応じて、減圧濃縮、凍結乾燥などの方法により濃縮または乾燥して、液状、ペースト状、または粉末(抽出物粉末)としてもよい。 本発明に用いられる松樹皮抽出物は、主な成分の一つとして、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果実の皮および種に集中的に含まれている。なお、このプロアントシアニジンは、ヒトの体内では生成することができない物質である。 松樹皮抽出物に含有するプロアントシアニジンとしては、特に、重合度が低い縮重合体が多く含まれるプロアントシアニジンが好ましい。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに好ましい。重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)のプロアントシアニジンは、特に体内に吸収されやすい。本明細書では、重合度が2〜4の重合体を、オリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin、以下「OPC」と称する)という。 本発明に用いられる松樹皮抽出物は、OPCを10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上の割合で含有する抽出物であることが望ましい。 松樹皮抽出物を得るための松樹皮からの抽出方法について、更に具体的に好ましい態様を挙げれば、フランス海岸松の樹皮を用いて以下のような方法が一例として挙げられる。ただしこの方法に限定されるものではない。 フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mLで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。 次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mLを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1の量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。この沈殿物を酢酸エチル100mLに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、OPCを20質量%以上含有する松樹皮抽出物を得ることができる。 本発明のステロイド剤の副作用軽減剤は、上記に説明した松樹皮抽出物を有効成分として含有するものである。 本発明のステロイド剤の副作用軽減剤においては、上記有効成分以外に、他の素材を配合することに特に制限はなく、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、例えばハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、液剤、粉末剤、ゼリー状剤、飴状剤、ペースト状剤等の形態にして、これを経口剤として利用することができる。また、軟膏剤、クリーム剤、ジェル、ローション、乳液、パック、湿布剤、浴用剤、点眼剤、点鼻剤等の形態にして、これを外用剤として利用することができる。更に、松樹皮やその粉砕加工物をティーバッグ状に分包し、お湯に成分を浸出させてから飲むようにしてもよい。また、その服用形態としては、水、お湯、牛乳などに溶いて飲むようにしたり、飲食品等に添加して摂取したりしてもよい。 本発明のステロイド剤の副作用軽減剤においては、上記有効成分以外に、他の素材として、栄養成分を配合することもできる。栄養成分としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、リボフラビン、β-カロテン、葉酸、ビオチンなどのビタミン類;カルシウム、マグネシウム、セレン、鉄などのミネラル類;タウリン、ニンニクなどに含まれる含硫化合物;ヘスペリジン、ケルセチンなどのフラバノイド類やフラボノイド類;難消化性デキストリン、アルギン酸、キチン、キトサン、グアーガムなどの食物繊維;大豆蛋白、コラーゲンなどのタンパク質;ペプチド;アミノ酸;乳脂肪、ラード、牛脂、魚油などの動物性油脂;大豆油、菜種油などの植物性油脂;オレンジ、レモン、グレープフルーツ、いちごなどの果実およびその果汁;ローヤルゼリー、プロポリス、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖アルコール、液糖、調味料などが挙げられる。 本発明のステロイド剤の副作用軽減剤は、後述する実施例で示すように、ステロイド剤投与による血管障害を軽減する効果に特に優れており、ステロイド剤が投与されるときに併用して摂取することによりその副作用を軽減することができる。例えば、血管が脆くなり出血するステロイド紫斑等の症状を予防し、又は軽減することができる。投与形態は、特に制限されるものではなく、体の中から作用させるため経口的に摂取してもよく、あるいは皮膚に塗布して用いてもよい。また点眼や点鼻、吸引などによってその他の器官に適用することもできる。また、必ずしもステロイド剤と同時に摂取する必要はなく、摂取経路がステロイド剤と異なっていてもよい。 ステロイド剤の種類に特に制限はないが、例えばデキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プロゲステロン、ハイドロコルチゾン、フルオロメトロン、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、フルオノシノロン、ハルシノニド、アムシノニド、フルオシノニド、ジフルプレドナート、ジフロラゾン、クロベタゾール、モタメタゾン、アクロメタゾン、クロベタゾン、フルメタゾン、ジフルコルトロン、デプロドン、アセトニド、フルドロキシコルチドなどが挙げられ、より好適にはデキサメタゾン、プレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、トリアムシノロン、クロベタゾン、フルメタゾンなどが挙げられる。 本発明のステロイド剤の副作用軽減剤において、上記に説明した松樹皮抽出物の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜定めればよく、特に制限されるものではない。例えば、典型的に経口的に摂取する場合には、成人1日当りの上記松樹皮抽出物の摂取量が1〜1000mgであることが好ましく、より好ましくは10〜500mgとなるように松樹皮抽出物を摂取することが望ましい。上記松樹皮抽出物の摂取量が1mg未満であると、ステロイドの副作用に対する効果が望めない。一方、上記松樹皮抽出物の摂取量が1000mgより多い高用量となると、独特の苦味があるため経口投与には適さない。また、経皮や経粘膜投与の場合は、局所的な投与となるため、所定濃度であることが好ましく、具体的には、上記松樹皮抽出物を、本発明のステロイド剤の副作用軽減剤中に、好ましくは0.00001質量%〜60質量%、より好ましくは0.0001質量%〜30質量%、さらに好ましくは0.001質量%〜15質量%の割合で含有され得る。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。 (実験動物) 実験動物には、日本チャールスリバー株式会社において生産された雄性ラット(SPF、Wistar系)を使用し、各試験において4〜6匹の雄性ラットを用いた。動物の週齢は、被検物質の投与開始時に6週齢となるように実験スケジュールを調整した。 (馴化期間の飼育) ラットを飼育環境に馴らすため、被検物質の投与開始前に5日間以上の馴化期間を設けた。この期間中、ポリカーボネート製平底ケージ(W220×L320×H135mm、日本クレア株式会社)に木材チップを敷いて1ケージに2または3匹のラットを収容し、飼料として、「固形飼料MF」(オリエンタル酵母株式会社)を自由摂取させた。 (制限給餌期間の飼育) 馴化期間後には、表1に示す組成の餌(以下、「12%カゼイン食」と称す。)を、摂取時間を10:30〜18:30に制限して自由摂取させ、制限給餌を行った。この制限給餌によりラットの皮膚が薄くなり、後述の色素注入血管透過試験の結果を皮膚を透してよく観察できる。 (被検物質投与期間の飼育) 被検物質投与期間には、ラットをステンレス製5連ケージ(W150×D210×H150mm、トキワ株式会社)に移し、その1区画に1匹を収容した。なお、この期間中も上記12%カゼイン食による制限給餌を行った。 (被検物質の調製と投与方法) 12%カゼイン食の毎日の給餌開始前に、次のように被検物質の投与を行った。・松樹皮抽出物(商品名「フラバンジェノール」(登録商標)、株式会社東洋新薬、OPC10%以上)は、蒸留水を溶媒として、10mg/mLおよび100mg/mLとなるように溶解した。これを、ラットに強制経口投与した。・デキサメタゾン(シグマ アルドリッチジャパン株式会社)(以下、「DEX」と称する。)は、エタノールが60v/v%となるように調製したリン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS60%EtOH」と称する。)を溶媒として、0.2mg/mLとなるように懸濁した。これを、上記松樹皮抽出物強制経口投与後に、ラットの頸部に皮下投与した。・コントロール群には、蒸留水をラットに強制経口投与し、その後、PBS60%EtOHをラットの頸部に皮下投与した。 (試験群) 馴化期間終了後のラットを、体重がほぼ均一となるように4群に分け、表2に示すとおりの試験群とし、表3に示す被検物質を投与した。 <試験例1>(予備実験) ラットの試験環境への適応状態を把握するため、図1Aに示すスケジュールで飼育したラットの体重推移を観察した。具体的には、ラットを5日間以上馴化した後、上記表2の4群に分け、12%カゼイン食による制限給餌を開始し、さらに制限給餌開始から3日目に被検物質の投与を開始し、制限給餌開始から7日目(被検物質の投与開始から5日目)まで各ラットの体重を毎日測定して、各試験群における体重推移を観察した。 その結果、図2に示すように、制限給餌開始初日から2日目にかけて、飼料が普通餌から12%カゼイン食に変わったことが原因とみられる体重減少が、全群でみられた。また、被検物質の投与開始2日目から試験最終日まで、コントロール群に対し、その他の3群(DEX群、DEX+松樹皮抽出物100群、および、DEX+松樹皮抽出物1000群)では、日を追うごとに体重の減少が認められた。特に、被検物質の投与開始から5日目には、コントロール群とその他の3群とで20%以上の体重差が出た。動物愛護の観点から、人道的エンドポイント(実験動物を激しい苦痛から解放するための、実験を打ち切るタイミング)としては、体重差20%と推奨されており、被検物質の投与期間は、投与開始から4日目までが限度であることが確認できた。 なお、制限給餌開始から3日目までの間には体重の増加はみられなかったため、人道的エンドポイントを鑑みると、被検物質の投与開始前に制限給餌期間を設けると、試験終了までに十分な日数が確保できないことが予想された。一方、被検物質の投与開始と同時に制限給餌を開始しても、制限給餌による効果(ラットの皮膚が薄くなり、後述の色素注入血管透過試験の結果を皮膚を透してよく観察できる効果)は十分に得られると予想された。そのため、以下の試験例2では、被検物質の投与開始前には制限給餌を行わないこととした。 <試験例2>(色素注入血管透過試験) 上記試験例1の予備実験により、被検物質の投与期間の限度が4日であることが確認できた。一方、DEX投与開始の3〜5日目で血中の酸化ストレスマーカーがピークとなるとの報告があったため、DEX投与による症状が確認可能と予想される期間内で、且つ試験動物への負担軽減も考慮し、被検物質の投与を3日間と設定した。そのため、図1Bに示すスケジュールで飼育した後、色素注入血管透過試験を行った。具体的には、ラットを5日間以上馴化した後、上記表2の4群に分け、12%カゼイン食による制限給餌と被検物質の投与を開始し、被検物質の投与開始から4日目に色素としてトリパンブルーの血管内投与を行い、色素の血管透過性試験を、下記の方法で実施した。・初発色時間 ラット背部の毛をバリカンで刈り、麻酔下で0.4%トリパンブルー液を尾静脈から投与した。投与の1分後にクロロホルムをしみ込ませた脱脂綿を背部に静かに押し当て1分間刺激した。1分間の刺激後からトリパンブルーの色素が背部表面に認められるまでの時間を測定した。・色素透過面積 上記初発色時間の測定に続けて、トリパンブルー投与から30分後に、デジタルカメラを用いてラットの背部、特に上記クロロホルムによる刺激範囲を撮影した。そのデータを画像解析ソフト「Image J」(フリーソフト)に供し、クロロホルム刺激面積に対する色素透過面積の比を測定した。・統計処理 各群で平均値および標準偏差を算出し、DEX群とその他の被験物質群間の差の検定は、対応のあるt検定により行った。有意水準は5%および1%とした。 その結果、ラットにトリパンブルーを投与し背部にクロロホルムによる刺激を終了してから色素発色が認められるまでの初発色時間は、図3に示すように、DEX群ではコントロール群と比較して有意に時間が短縮していた。そのため、DEX群では血管障害により、血管透過性が高まっていると推測できた。それに対してDEX+松樹皮抽出物100群ではDEX群と比較して有意に時間が遅延していた。また、DEX+1000群でも、DEX群と比較して統計的有意差は得られなかったものの、遅延を示した。 また、トリパンブルー投与後30分経過時の色素透過面積では、図4に示すように、DEX群では、コントロール群と比較して、統計的有意差は得られなかったものの、色素透過面積の相対比が増加していた。それに対して、DEX+松樹皮抽出物100およびDEX+松樹皮抽出物1000の2群ではDEX群と比較して色素透過面積の相対比は有意に減少していた。なお、図5は各試験群のラットの背部における色素透過の様子の一例を示す写真である。この写真から、DEX群は上記クロロホルム刺激範囲全体に青色の透過が認められたのに対し、コントロール群、DEX+松樹皮抽出物100群およびDEX+松樹皮抽出物1000群では、クロロホルム刺激範囲内に肌色の部分が残っていることが確認できる。また、本実施例では、血管外への血漿成分等の浸潤を視覚化するために、液体に溶解する色素としてトリパンブルーを用いたが、液体に溶解する色素であればトリパンブルーに限定されるものではなく、エバンスブルー、ポンタミンスカイブルーなどを用いてもよい。さらに、血管透過性を確認できる方法であれば必ずしも色素を用いる必要もない。 以上から、DEXの投与は血管障害を引き起こすことにより、血管透過性を強めているものと考えられた。これに対し松樹皮抽出物を投与すると血管透過性が抑制された。よって、松樹皮抽出物により、DEXに起因する血管障害の症状を軽減できることが明らかとなった。 10質量%以上のオリゴメリック・プロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物を有効成分として含有することを特徴とする、ステロイド剤の副作用軽減剤。経口用途で使用可能であることを特徴とする、請求項1記載のステロイド剤の副作用軽減剤。 【課題】ステロイド剤の副作用を軽減する効果に優れた新たな有効成分を含有するステロイド剤の副作用軽減剤を提供する。【解決手段】松樹皮抽出物をステロイド剤の副作用軽減剤の有効成分として用いる。このステロイド剤の副作用軽減剤は、特に、ステロイド剤投与による血管障害を軽減するために好適に用いられる。【選択図】 なし20130627A16333全文3 松樹皮抽出物を有効成分として含有し、経口用途であることを特徴とする、ステロイド剤の副作用軽減剤。A1633000073 即ち、本発明は以下の構成を有するステロイド剤の副作用軽減剤を提供する。[1]松樹皮抽出物を有効成分として含有し、経口用途であることを特徴とする、ステロイド剤の副作用軽減剤。[2]前記松樹皮抽出物が10質量%以上のオリゴメリック・プロアントシアニジンを含む、請求項1記載のステロイド剤の副作用軽減剤。


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