タイトル: | 公開特許公報(A)_質量分析計を用いた生体試料中の蛋白質測定法 |
出願番号: | 2013121153 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 30/26,G01N 30/34,G01N 30/06,G01N 30/72,G01N 27/62 |
墳崎 靖子 千田 直人 JP 2014238338 公開特許公報(A) 20141218 2013121153 20130607 質量分析計を用いた生体試料中の蛋白質測定法 株式会社LSIメディエンス 591122956 川口 嘉之 100100549 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 墳崎 靖子 千田 直人 G01N 30/88 20060101AFI20141121BHJP G01N 30/26 20060101ALI20141121BHJP G01N 30/34 20060101ALI20141121BHJP G01N 30/06 20060101ALI20141121BHJP G01N 30/72 20060101ALI20141121BHJP G01N 27/62 20060101ALI20141121BHJP JPG01N30/88 JG01N30/26 AG01N30/34 EG01N30/06 ZG01N30/72 CG01N27/62 VG01N27/62 X 11 2 OL 21 2G041 2G041CA01 2G041DA02 2G041DA05 2G041DA09 2G041DA16 2G041DA18 2G041EA04 2G041EA12 2G041FA12 2G041GA03 2G041GA06 2G041GA08 2G041GA09 2G041GA10 2G041HA01 2G041KA01 2G041LA07 2G041LA08 本発明は、生体試料中に含まれる蛋白質を測定する方法に関する。 バソプレシン(vasopressin;VP)は、ヒトを含む多くの動物で見られる、9個のアミノ酸から構成されるペプチドホルモンである。VPは、1番目と6番目のシステインがジスルフィド結合した環状構造をとる。ヒトをはじめとした大部分の哺乳類では8番目のアミノ酸がアルギニンであるため、VPは、アルギニンバソプレシン(Arginine vasopressin;AVP)とも称される。 AVPの主な機能としては、腎尿細管における水の再吸収を促進し、尿量を調節する抗利尿作用や、血管を収縮させて血圧を上げる血圧上昇作用が知られており、その作用から、AVPは、抗利尿ホルモン(Antidiuretic hormone;ADH)や血圧上昇ホルモン(vasopressor hormone)などとも称される。 AVPが過剰に分泌されその抗利尿作用により体内水分量が増加すると、血清ナトリウム濃度が低下し、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone;SIADH)と呼ばれる低ナトリウム血症を引き起こす。一方、AVPが欠乏すると、多渇症や多尿をきたし、1日の尿量が3〜15リットルにも達する中枢性尿崩症(central diabetes insipidus;CDI)が引き起こされ、高ナトリウム血症などの症状を呈する場合がある。 デスモプレシン(1−デスアミノ−8−D−アルギニンバソプレシン、dDAVP(登録商標))は、バソプレシンの類似体である。dDAVPは、AVPと比べて抗利尿活性が高く、かつ、血圧上昇活性が低い。すなわち、dDAVPは、AVPとは異なり、血圧調節に有害な効果を及ぼさない。この薬理学的特性から、dDAVPは、血圧の有意な上昇を起こさない抗利尿剤として臨床的に使用されており、数ある適応症の中でも、中枢性尿崩症を含む、排尿延期、失禁、一次性夜間遺尿症(Primary nocturnal enuresis;PNE)、及び夜間頻尿症に対して一般的に処方される。 通常、脳視床下部の神経細胞で合成されたAVPは、神経繊維を通じて脳下垂体後葉に貯蔵され、血圧または血液の浸透圧のわずかな変化や血液量の減少などの刺激に応じて、血液中への分泌が調節される。 AVPの血液中への分泌量は非常に僅かであるため、高感度にAVP濃度を測定することが求められている。また、AVPの測定に当たっては、血漿浸透圧の上昇、水制限、立位等、変動要因が多様であることから、その正確な濃度測定が必要とされている。 これまでに知られているAVPおよびdDAVPの測定方法としては、AVP特異的抗体を使用し、放射性物質で標識したAVPを競合させてELISA等の免疫測定を実施するラジオイムノアッセイ法(非特許文献1)や、質量分析計を使用して測定する方法(非特許文献2)などが挙げられる。J Clin Invest. 52; 2340−2352, 1973Anal Bioanal Chem. 402(9); 2789−2796, 2012 dDAVPの投与はCDI及びPNE等の治療に有効ではあるが、標準的なdDAVP投与量が、高発生率の低ナトリウム血症を含む望ましくない副作用を引き起こすことがわかっている。しかし、より低い投与量で同一の所望する効果を生じさせられることが好ましいにも関わらず、現在の治療方針では、治療目的に対してdDAVPの投与量をより多くする趨勢である。 dDAVPの適切な投与量を決定するためには、血中(例えば、血漿または血清中)におけるAVPの濃度およびdDAVPの濃度をそれぞれ正確に把握する事が重要である。 ヒト血漿中のAVPの現行測定技術としては、抗体を用いたラジオイムノアッセイ法が主流である。しかしながら、同方法は、dDAVPが血漿中に共存する場合には、その定量性に著しい影響を与える。また、同方法には、測定に適した抗血清を得ることが困難な場合があることや、得られた抗血清の特性によっては血漿中のAVPをクロマトグラフィーなどで濃縮する工程が必要となる場合があることなど、煩雑さを伴うという問題もあった(非特許文献1)。 また、近年では、測定機器や技術の発達に伴い、質量分析計を使用したAVPとdDAVPの測定系などが報告されている。例えば、非特許文献2では、酢酸、トリフルオロ酢酸、及びアセトニトリルを組み合わせて分離溶液として使用した液体クロマトグラフィーにより血漿試料を分離し、次いで、質量分析計によるdDAVPの検出を行っている。しかしながら、AVPやdDAVPの臨床上の一般的な指標となる生体内の濃度は0.8−6.3pg/mLとされているのに対し、同測定系による検出限界は50pg/mLである。よって、同測定系は、血中に微量しか含まれないAVP等の検出に臨床的に利用するには感度が不十分である。また、本発明者らによる試験の結果、上記分離溶液を使用した液体クロマトグラフィー及び質量分析による測定では、AVPとdDAVPを分別して同時に測定することができなかった。以上の通り、同測定系は、AVP及びdDAVPの正確な血中濃度の把握という要求を満たすことができなかった。 本発明は、生体試料中の微量な蛋白質を測定する方法、特に、複数の蛋白質を分別して測定する方法、を提供することを課題とする。本発明は、具体的には、例えば、血中に存在するAVPの量を測定するのに十分な感度を有し、かつ、AVPとdDAVPを互いに区別して測定することを可能とする蛋白質の測定方法、を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、酢酸とメタノールを含有する移動相を用いた液体クロマトグラフィーによりサンプルを分離し、分離したサンプルを質量分析計で分析することにより、AVPとdDAVPを互いに区別して高感度かつ正確に定量できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下の通り例示できる。[1] 蛋白質を測定する方法であって、(i)酢酸およびメタノールを含有する移動相を用いた液体クロマトグラフィーにより生体試料に含まれる蛋白質を分離する工程、(ii)前記(i)の工程で分離された蛋白質を質量分析計で分析する工程、を含む方法。[2] 前記工程(i)が、移動相中でのメタノールの濃度を増大させる工程を含む、前記方法。[3] 前記工程(i)が、移動相中でのメタノールの濃度を第1のメタノール濃度から第2のメタノール濃度まで増大させる工程を含み、 前記第1のメタノール濃度が0%〜10%であり、 前記第2のメタノール濃度が40〜60%である、 前記方法。[4] 前記工程(i)が、移動相中での酢酸の濃度を減少させる工程を含む、前記方法。[5] 前記工程(i)が、移動相中での酢酸の濃度を第1の酢酸濃度から第2の酢酸濃度まで減少させる工程を含み、 前記第1の酢酸濃度が0.0048%〜0.04%であり、 前記第2の酢酸濃度が0.0023%〜0.022%であり、 前記第2の酢酸濃度は前記第1の酢酸濃度より小さい、 前記方法。[6] 前記生体試料が、前記工程(i)の前に固相抽出により前処理される、前記方法。[7] 前記質量分析計が、四重極型、四重極タンデム型、イオントラップ型、イオントラップ四重極ハイブリッド型、セクター型、飛行時間型、および四重極飛行時間ハイブリッド型からなる群より選択されるいずれかのタイプである、前記方法。[8] 検出された蛋白質のピーク面積値を内部標準物質のピーク面積値で除したピーク面積比に基づいて、前記蛋白質を定量する、前記方法。[9] 前記蛋白質の分子量が6000以下である、前記方法。[10] 前記蛋白質が、バソプレシン、デスモプレシン、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−36)Amide、オクトレオチド、ゴセレリン、アンジオテンシンI、およびアンジオテンシンIIからなる群より選択される、前記方法。[11] 2種またはそれ以上の蛋白質が同時に測定される、前記方法。 本発明によれば、生体試料中の微量の蛋白質を測定できる。本発明によれば、特に、生体試料中の複数の蛋白質を分別して測定できる。例えば、本発明の一実施形態によれば、血中に微量しか含まれないAVPを、AVPとdDAVPとを互いに区別して高感度かつ正確に定量することができ、AVP及びdDAVPの正確な血中濃度を把握することができる。また、本発明によれば、生体試料の取得から蛋白質の測定までに要する日数が大幅に短縮され、よって、本発明は、検査センター等で大量の検体を分析するのに有効である。従って、本発明は、例えば、種々の疾患について、的確な治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料を迅速に提供することができる。図1は、LC−MSシステムの一態様を示す概念図である。図2は、本発明の方法によるAVP測定結果とRIA法によるAVP測定結果との相関を示す図である。 以下において、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。 なお、本発明において、濃度を表す「%」は、特記しない限り、「%(v/v)」を意味する。 本発明の方法は、生体試料中に含まれる微量の蛋白質を測定する方法である。本発明の方法は、(i)酢酸およびメタノールを含有する移動相を用いた液体クロマトグラフィーにより生体試料に含まれる蛋白質を分離する工程、および(ii)前記工程で分離された蛋白質を質量分析計で分析する工程、を含む。工程(i)を、以下、「分離工程」ともいう。工程(ii)を、以下、「分析工程」ともいう。なお、本発明においては、「(蛋白質の)分析」、「(蛋白質の)測定」、および「(蛋白質の)定量」は、互いに同義であってよい。 本発明における「生体試料」とは、生体に由来する成分を含む試料をいう。生体試料としては、例えば、全血、血漿、血清、尿、便、唾液、喀痰、精液、涙、鼻汁;膣、鼻、直腸、咽頭、および尿道のスワブ、排出物、および分泌物;ならびにバイオプシー組織試料が挙げられる。 本発明においては、上記のような生体試料中に含まれる蛋白質を測定する。測定される蛋白質は特に制限されない。なお、ここにいう「蛋白質」には、ペプチド、オリゴペプチド、あるいはポリペプチドと呼ばれる態様も包含される。蛋白質の分子量は、例えば、好ましくは10,000以下であってよく、より好ましくは6,000以下であってよい。蛋白質は、生体由来の蛋白質であってもよく、生体外由来の蛋白質であってもよい。生体外由来の蛋白質としては、例えば、生体に投与された医薬品に含有される蛋白質成分やその代謝物が挙げられる。蛋白質はいずれの局在様式を示すものであってもよく、例えば、膜由来の蛋白質であってもよく、細胞質由来の蛋白質であってもよい。蛋白質として、具体的には、例えば、AVP、dDAVP、インクレチン関連ペプチド、オクトレオチド(Octreotide)、ゴセレリン(Goserelin)、アンジオテンシン(Angiotensin)I及びIIが挙げられる。インクレチン関連ペプチドとして、具体的には、例えば、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−36)Amideが挙げられる。蛋白質は、単独で測定されてもよく、2種またはそれ以上が同時に測定されてもよい。 生体試料は、本発明の方法による測定前に、適宜前処理に供されてもよい。前処理としては、例えば、希釈、濃縮、凍結、融解、加熱、乾燥、破砕、懸濁、滅菌、固形分の除去、固相抽出が挙げられる。前処理は、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。これらの前処理は、単独で行ってもよく、適宜組み合わせて行ってもよい。 これらの中では、固相抽出を行うのが好ましい。固相抽出に用いられる、樹脂(固相)の種類や洗浄用および溶出用溶媒の組成は、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。固相としては、例えば、Oasis(登録商標) WCX μElution plate(Waters社製)などの市販されている固相抽出キットが挙げられる。固相への吸着後、例えば、1%酢酸を含む5%アセトニトリル溶液、及び4%リン酸水溶液と5%アンモニア水溶液で順に洗浄し、次いで1%蟻酸を含む75%アセトニトリルで溶出を行う。溶出された溶液を、そのまま、あるいは適宜濃縮等して、生体試料として分析に供することができる。 生体試料を溶媒に溶解させる場合、生体試料に含まれる測定対象の蛋白質がポリプロピレン等へ吸着するのを防止できる組成の溶媒を用いるのが好ましい。測定対象の蛋白質の標準物質を溶媒に溶解させる場合も同様である。そのような溶媒組成は、測定対象の蛋白質の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。溶媒としては、例えば、酸を含有するアセトニトリル水溶液が挙げられる。酸としては、酢酸やギ酸が挙げられる。溶媒中の酸の濃度は、例えば、0.1%〜5%であってよく、具体的には1%であってよい。溶媒中のアセトニトリル濃度は、例えば、1〜75%、好ましくは5〜50%であってよい。具体的には、例えば、測定対象の蛋白質がAVPやdDAVPである場合は、溶媒として、1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液等を使用することができる。また、例えば、測定対象の蛋白質が糖尿病のマーカーであるインクレチン関連ペプチドである場合は、溶媒として、1%ギ酸含有50%アセトニトリル水溶液等を使用することができる。 本発明の方法は、液体クロマトグラフ(LC)装置と質量分析計(MS)を利用して実施することができる。液体クロマトグラフ装置と質量分析計は、互いに直列に接続されていてもよいし、それぞれ独立した装置であってもよい。本発明の方法に用いられる装置を、「本発明の装置」ともいう。本発明の装置としては、例えば、液体クロマトグラフ装置と質量分析計を直列につないで構成された、LC−MSシステムを用いることができる。LC−MSシステムの一態様を図1に示す。LC−MSシステムを用いることにより、液体クロマトグラフィーにより分離された成分を、続けて質量分析することができる。 液体クロマトグラフ装置は、生体試料に含まれる蛋白質を液体クロマトグラフィーにより分離できる装置であれば特に制限されないが、通常は、HPLC装置であるのが好ましい。HPLC装置は、分離カラム、および分離溶液を分離カラムに送り込むポンプを備える。HPLC装置は、それ以外の要素、例えば、オートサンプラー、ヒーター、分離された成分を検出する検出器等、を備えていてもよい。検出器としては、例えば、UV検出器や示差屈折率計が挙げられる。例えば、図1においては、検出器は、カラムとイオン源(イオン化部)の間に接続することができる。 液体クロマトグラフィーに用いられる分離溶液(移動相)は、酢酸およびメタノールを含有する溶液、例えば水溶液、である。酢酸を利用することにより、適度に、液体クロマトグラフィーによる蛋白質の分離を向上させつつ、質量分析の際の蛋白質のイオン化を促進できる。また、メタノールを利用することにより、液体クロマトグラフィーにおける蛋白質の溶出時間を調節でき、且つ、質量分析による蛋白質の検出感度を向上できる。分離溶液は、測定対象の蛋白質を測定できる限り、他の成分を含有していてもよい。 分離工程においては、生体試料中に含有される測定対象の蛋白質が他の成分と分離され、且つ、測定対象の蛋白質がカラムから溶出されるように、分離溶液の組成を適宜変化させることができる。すなわち、分離工程においては、分離溶液中の酢酸および/またはメタノールの濃度を変化させることができる。酢酸およびメタノールは、分離工程の全期間において分離溶液に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。変化は、連続的な変化(グラジエント)であってもよく、断続的な変化(ステップワイズ)であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。グラジエントやステップワイズの条件は、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。具体的なグラジエントの条件としては、例えば、後述する実施例3に記載の条件が挙げられる。同条件は、特に、AVPおよび/またはdDAVPの測定に好適に用いることができる。なお、以下のグラジエントに関する説明は、ステップワイズにも準用できる。 なお、分離工程における分離は、質量分析により測定対象の蛋白質が測定できる程度に行われればよい。すなわち、単一の蛋白質を測定する場合には、分離工程においては、続く質量分析により当該蛋白質が測定できる程度に、当該蛋白質と夾雑物間で分離が行われればよい。また、複数の蛋白質を分別測定する場合には、分離工程においては、続く質量分析により当該複数の蛋白質が測定できる程度に、当該複数の蛋白質と夾雑物間で、および、当該複数の蛋白質同士で、分離が行われればよい。すなわち、例えば、複数の蛋白質が共存していても質量分析により分別測定できるのであれば、分離工程において当該複数の蛋白質同士が分離されなくてもよい。 具体的には、分離工程は、分離溶液中のメタノール濃度を増大させる工程を含んでいてよい。すなわち、例えば、分離溶液中のメタノール濃度(v/v)が第1の濃度(M1)から第2の濃度(M2)まで徐々に増大するよう、メタノール濃度にグラジエントをかけることができる。M1およびM2は、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。M1は、例えば、0%以上、1%以上、または3%以上であってよく、10%以下または7%以下であってよい。M2は、例えば、40%以上または45%以上であってよく、60%以下または55%以下であってよい。具体的には、例えば、分離溶液中のメタノール濃度(v/v)が5%から50%まで徐々に上昇するよう、メタノール濃度にグラジエントをかけてよい。メタノール濃度の変化速度は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。メタノール濃度は、M1からM2に変化するまでに、増減を繰り返してもよい。メタノール濃度は、M2に到達した後、さらに変化してもよい。例えば、メタノール濃度は、M2に到達した後、さらに増大してもよく、減少してもよく、増減を繰り返してもよい。例えば、メタノール濃度は、M2に到達した後、100%まで増大してもよい。 また、具体的には、分離工程は、分離溶液中の酢酸濃度を減少させる工程を含んでいてよい。すなわち、例えば、分離溶液中の酢酸濃度(v/v)がA1からA2まで徐々に減少するよう、酢酸濃度にグラジエントをかけることができる。A1およびA2は、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。A1は、例えば、0.0048%以上または0.0095%以上であってよく、0.04%以下、または0.02%以下であってよい。A2は、例えば、0.0023%以上または0.0045%以上であってよく、0.022%以下または0.011%以下であってよい(ただし、A1>A2)。具体的には、例えば、分離溶液中の酢酸濃度(v/v)が0.011%から0.0045%まで徐々に減少するよう、酢酸濃度にグラジエントをかけてよい。酢酸濃度の変化速度は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。酢酸濃度は、A1からA2に変化するまでに、増減を繰り返してもよい。酢酸濃度は、A2に到達した後、さらに変化してもよい。例えば、酢酸濃度は、A2に到達した後、さらに減少してもよく、増大してもよく、増減を繰り返してもよい。例えば、酢酸濃度は、M2に到達した後、0%まで減少してもよい。 濃度のグラジエントは、組成の異なる2種またはそれ以上の溶液を、混合比率を変化させながら混合することで、形成することができる。溶液の組み合わせは、所望のグラジエントが形成されるよう、適宜選択することができる。 グラジエントは、酢酸およびメタノールの濃度にまとめてかけてよい。例えば、酢酸を含有しメタノールを含有しない第1の溶液と、メタノールを含有し酢酸を含有しない第2の溶液とを、混合比率を変化させながら混合することで、酢酸およびメタノールの両濃度にグラジエントをかけることができる。第1の溶液としては、例えば、酢酸そのものや酢酸含有水溶液が挙げられる。第2の溶液としては、メタノールそのものやメタノール含有水溶液が挙げられる。 酢酸含有水溶液とメタノールとを混合して分離溶液として用いる場合の、望ましい操作の一例を以下に示す。すなわち、例えば、酢酸含有水溶液を95%〜100%、メタノールを0%〜5%の比率で混合して、3分間、HPLCの分離カラムに通液を行い、AVPやdDAVP等の測定対象の蛋白質を分離カラムに保持させることが望ましい。この時の酢酸濃度は、0.0095%〜0.02%であることが望ましい。3分間の保持後、メタノール濃度を、45%〜55%となるまで徐々に増加させ、測定対象の蛋白質を溶出させることが望ましい。この時の酢酸濃度は、0.0045%〜0.011%であることが望ましい。測定対象の蛋白質が溶出した後、メタノール濃度を速やかに100%とし酢酸濃度は0%とすることが望ましい。 2種またはそれ以上の溶液を混合して分離溶液を調製する場合、当該2種またはそれ以上の溶液中の酢酸およびメタノールの濃度は、混合後の分離溶液中の酢酸およびメタノールの濃度が上記例示した分離溶液中の酢酸およびメタノールの濃度となるよう、混合比率に応じて適宜設定することができる。例えば、酢酸含有水溶液とメタノールとを混合して分離溶液として用いる場合、酢酸含有水溶液中の酢酸濃度(v/v)は、0.005%以上または0.01%以上であってよく、0.04%以下または0.02%以下であってよい。同場合の酢酸含有水溶液中の酢酸濃度(v/v)は、具体的には、例えば、0.01%〜0.02%であってよい。 分離溶液のpHは、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。分離溶液のpHは、例えば、好ましくは4〜6.5、より好ましくは5〜6であってよい。 分離溶液の組成及びpHの好ましい範囲は、液体クロマトグラフィーに続いて実施される質量分析において測定対象の蛋白質のイオン化効率が高くなるように設定することができる。すなわち、具体的には、測定対象の蛋白質がカラムから溶出される時点の分離溶液の組成及びpHが、質量分析において測定対象の蛋白質のイオン化効率が高くなるように設定されるのが好ましい。イオン化効率は、例えば、イオン化された割合を示すイオンカウントを使用して評価することができる。具体的には、例えば、100nmol/Lの蛋白質をイオン化した場合にイオンカウントが2×106カウント/秒以上となるように、分離溶液の組成及びpHを設定することができる。 液体クロマトグラフィーにおける分離溶液の流速は、分離カラムの内径等の諸条件に応じて適宜選択できる。分離溶液の流速は、分離工程を通じて一定であってもよく、そうでなくてもよい。分離溶液の流速は、例えば、0.2〜0.6mL/minであってよい。また、液体クロマトグラフィーにおけるカラム温度は、測定対象の蛋白質の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。カラム温度は、例えば、40〜70℃であってよく、具体的には55℃であってよい。 液体クロマトグラフィーに用いられる分離カラムは、特に制限されず、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。分離カラムとしては、逆相カラムを用いることができる。逆相カラムとしては、例えば、オクタデシルシリル化シリカゲル充填剤を充填したカラム(ODSカラム)、C8カラム、C2カラム、これらにイオン交換樹脂を配合したカラムが挙げられる。これらの中では、ODSカラムが好ましい。 質量分析計は、公知の質量分析計が使用できるが、特にLC装置に直列に接続することが可能なものは簡便に使用できるので好ましい。用いられる質量分析計は、1つであってもよく、2つまたはそれ以上であってもよい。2つまたはそれ以上の質量分析計は、直列に接続して用いることができる。すなわち、LC−MSシステムは、例えば、直列に接続された2つまたはそれ以上の質量分析計を備える、LC−MS/MSやLC−MS/MS/MSであってよい。LC−MS/MSとして、具体的には、例えば、QTRAP5500(AB Sciex社製)が挙げられる。 質量分析計における検出方式としては、例えば、イオントラップ型、四重極型、四重極タンデム型、イオントラップ四重極ハイブリッド型、セクター型、飛行時間型、および四重極飛行時間ハイブリッド型が挙げられる。質量分析計におけるイオン化法としては、エレクトロスプレー法(ESI)、大気圧化学イオン化法(APCI)、高速原子衝撃法(FAB)、光イオン化法(APPI)、および音速イオン化法(SSI)が挙げられる。検出方式やイオン化法は、測定対象の蛋白質の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。 タンデム四重極型質量分析計(MS/MS、MS/MS/MSなど)は、マスフィルターとして機能する四重極(Q1)、衝突(コリジョン)セルとして機能する四重極(Q2)、およびマスフィルターとして機能する四重極(Q3)を直列に配置した質量分析計である。タンデム四重極型質量分析計によれば、診断検査に必要な感度を得るため、イオン透過の最適化を行うこともできる。すなわち、Q1およびQ3は、高周波電圧と直流電圧をかけることでマスフィルター(質量分離器)として機能し、電圧および振動数を調節することで、特定の質量範囲にあるイオンだけを通過させることができる。 具体的には、例えば、四重極(Q1)において、イオン化により生じた複数のイオンから、イオンの質量電荷比(m/z)に基づいて、必要とする感度に到達可能な特定の親イオン(プリカーサーイオン)を選択する。次いで、選択された親イオン(プリカーサーイオン)を、コリジョンセル(Q2)内でアルゴン等の不活性ガスと衝突させることで、娘イオン(プロダクトイオン)を生成させる(衝突誘起解離:CID)。次いで、特定の質量電荷比(m/z)を有する娘イオン(プロダクトイオン)を、四重極(Q3)で選択的に検出する。検出されたプロダクトイオンとプリカーサーイオンとの質量の差等から分析対象の構造情報を引き出すことができる。 従って、タンデム四重極型質量分析計を使用する場合、プリカーサーイオンならびにプロダクトイオンの選択を繰り返すことにより、生体試料中に含まれる夾雑物と測定対象の蛋白質を分離しつつ、測定対象の蛋白質を高感度に測定することができる。 また、MS/MS/MSのようなタイプの質量分析計を使用する場合、選択したプロダクトイオンがさらに開裂して生成する二次開裂イオン(セカンドプロダクトイオン)を選択的に検出することにより、測定対象物質をさらに絞り込み、測定感度を向上させることもできる。 質量分析により得られるイオンの検出比率(イオン比)は物質固有の値であるため、標準品の分析により得られたイオン比と生体試料の分析により得られたイオン比を比較して、生体試料に含まれる蛋白質を同定することができる。 また、Q1および/またはQ3において、2種またはそれ以上のイオンを別チャンネルで選択して通過させることにより、生体試料中に含まれる2種またはそれ以上の蛋白質をまとめて分析することができる。具体的には、例えば、コリジョンセル(Q2)内で生成した2種またはそれ以上のプロダクトイオンをQ3にて別チャンネルで選択的に検出することにより、AVPとdDAVPのような、イオン化の際に同一の質量電荷比(m/z)のプリカーサーイオンを生成する2種またはそれ以上の蛋白質をまとめて分析することができる。 質量分析の結果に基づき、測定対象の蛋白質を定量することができる。蛋白質の定量は、常法により行うことができる。具体的には、例えば、検出された測定対象の蛋白質のピーク面積値を濃度既知の内部標準物質のピーク面積値で除したピーク面積比に基づいて、測定対象の蛋白質を定量することができる。 LC装置、質量分析計、それらに備わる各種要素は、上記例示した分析条件を参照して、測定対象の蛋白質の種類や夾雑物の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。 次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、下記実施例は本発明について具体的な認識を得る一助としてのみ挙げたものであり、これによって本発明の範囲が何ら制限されるものではない。実施例1;標準溶液の調製(1)材料 バソプレシン(AVP)、デスモプレシン(dDAVP)は、それぞれ、株式会社ペプチド研究所、SIGMA−ALDRICHから購入したものを使用した。また、NH2−CY(F)*QNCP−(D−Arg)−G−CONH2(bio SYNTHESIS社製、以下「3H10−AVP」と略す)をAVPの、mercaptopropionyl−Y(F)*QNCP−(D−Arg)−G−CONH2(bio SYNTHESIS社製、以下「3H10−dDAVP」と略す)をdDAVPの内部標準物質とした。(2)溶媒の調製 分離用溶媒の調製には、酢酸(関東化学社製、特級)、ギ酸(関東化学社製、特級)、メタノール(和光純薬工業社製、LC/MS用)、アセトニトリル(和光純薬工業社製、LC/MS用)を使用した。(i)0.01%酢酸水溶液の調製 1000mLのメスフラスコにMilli−Q水を適当量入れ、これに酢酸を0.1mL加えた後、Milli−Q水で定容した。(ii)1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液の調製 アセトニトリルの5mLにMilli−Q水を95mL加え、5%アセトニトリル水溶液を100mL調製した。100mLのメスフラスコに1mLの酢酸を量り取り、5%アセトニトリル水溶液で定容した。(iii)1%ギ酸含有75%アセトニトリル水溶液の調製 アセトニトリルの75mLにMilli−Q水を25mL加え、75%アセトニトリル水溶液を100mL調製した。100mLのメスフラスコに1mLのギ酸を量り取り、75%アセトニトリル水溶液で定容した。(3)標準溶液の調製 AVP、dDAVP、および内部標準物質は、1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液に溶解した。この溶媒組成は、これらの化合物のポリプロピレンへの吸着を防止するために好ましい。 AVPをインティジェンス電天秤(ME215S,ザルトリウス、読取限界0.01mg)で正確に0.5mg量り取り、これに1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液を0.92mL加えて完全に溶解し、500μmol/Lの濃度に調製し、これをAVP標準溶液とした。dDAVPについても同様に500μmol/L濃度に調製し、これをdDAVP標準溶液とした。 上記各標準溶液を、1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液で5倍に希釈し、イオン化の最適条件の設定および測定するイオンの選択に使用するチューニング溶液とした。 上記各標準溶液を、1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液で希釈し、500nmol/L AVP希釈液および1000nmol/L dDAVP希釈液を調製した。AVP希釈液10μLとdDAVP希釈液50μLを合わせ、1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液を940μL加えて、5nmol/L AVPおよび50nmol/L dDAVPを含有するAVP・dDAVP混合液を調製した。この混合液を順次段階希釈し、AVPの濃度がそれぞれ800、400、200、40、20、4、2pmol/Lであり、且つ、dDAVPの濃度がそれぞれ8000、4000、2000、400、200、40、20pmol/Lである、検量線用混合標準溶液を調製した。実施例2;質量分析条件の決定(感度の調整) 上記各標準溶液を用いて、高感度にAVP及びdDAVPを測定可能な質量分析条件を、以下の手順で決定した。 図1のコネクターを二方から三方に切り替え、シリンジポンプを用いて標準溶液をイオン源に導入した。その際、HPLCポンプ(Prominence LC−20A、島津製作所社製)を用いて混合した移動相を標準溶液と共にイオン源に導入した。 定量に使用するプリカーサーイオン(親イオン)を確認しながら、このイオン強度が最高となるように質量分析計(QTRAP 5500、AB SCIEX)のイオン源(ESI、Turbo V Spray、AB SCIEX)の噴霧位置を調整した。 噴霧位置の調整完了後、デクラスタリングポテンシャル(オリフィス電圧;DP)、イオンを引き込む電圧(EP)、印加する高電圧(イオンスプレー電圧;IS)、GS1及びGS2のガス圧力(GS1、GS2)、ならびに温度(TEM)を調整した。 次いでプリカーサーイオン(親イオン)からプロダクトイオン(娘イオン)を検索し、そのイオン強度が最大となるように分析管を調整した。調整したパラメーターは、衝突開裂に関与するエネルギー電圧(CE、AF2)と衝突するガス量(CAD)である。 LC−MS/MS測定(MRM)を行う場合の分析条件の設定は、以上で完了とした。 LC−MS/MS/MS測定を行う場合は、さらに、選択したプロダクトイオンをプリカーサーイオン(親イオン)として設定し、イオントラップの条件設定を行った。設定したイオントラップの条件は、イオンをトラップフィールド内に留める電圧と時間、およびトラップ内で衝突開裂するためのイオン振幅に関わる電圧である。 以上の操作を選択するイオンのそれぞれについて行い、決定した条件を各イオンの測定条件として質量分析計の制御PCに保存した。このような分析条件の決定は、AVP及びdDAVPの分析に限られず、インクレチン等の他の蛋白質の分析の際にも同様に行うことができる。 また、内部標準物質は一定量が添加されるものであり測定結果が大きく変化することが無いため、LC−MS/MS(MRM)モードでの測定用に測定条件の設定を行った。 上記方法により決定した、質量分析条件を表1〜5に示す。AVPおよびdDAVPに共通のイオン化条件を表1に示す。AVP測定の際の、LC−MS/MS/MSの分析条件を表2に、内部標準物質をLC−MS/MS(MRM)で測定する条件を表3に示した。dDAVP測定の際の、LC−MS/MS/MSの分析条件を表4に、内部標準物質をLC−MS/MS(MRM)で測定する条件を表5に示した。実施例3;HPLC条件の設定 実施例1において作製した検量線用混合標準溶液を用いて、AVPとdDAVPを分離できるHPLC条件を検討した。 HPLC装置としては、Prominence LC−20A(株式会社島津製作所社製)を使用し、HPLCカラムとしては、XBridge(商標) BEH300 C18 column(粒子径3.5μm、内径2.1mm x長さ50mm;Waters社製)を使用した。 分離溶液としては、水系移動相として0.01%酢酸水溶液を、有機溶媒系移動相としてメタノールを、ポンプで混合して使用した。 AVPとdDAVPを分離できるHPLC条件の一例を表6に示した。このようにしてAVPとdDAVPを分離することにより、質量分析計においてAVPとdDAVPとを区別して測定することができる。実施例4;抽出条件の設定 質量分析計による分析を実施する前に、生体試料を固相抽出による前処理に供した。 検量線用サンプルとしては、コンセーラ(精度管理用凍結乾燥プール血清、日水製薬株式会社)350μLに、検量線用混合標準溶液を35μL、内部標準混合溶液(1400pmol/L 3H5−AVPと14000pmol/L 3H5−dDAVPの混合液)を15μL添加したものを使用した。対照サンプルとしては、コンセーラ350μLに、1%酢酸含有5%アセトニトリル溶液を35μL、内部標準混合溶液を15μL添加したものを使用した。 次いで、各サンプルに、4%リン酸水溶液を350μL加え、毎分10,000回転で10分間、4℃に設定して遠心分離(CF16RXII、日立工機)を行った。 次いで、以下の手順で固相抽出を行った。固相抽出にはOASIS(登録商標) WCX μElution Plate (Waters社製)を使用した。OASIS(登録商標) WCX μElution Plateは、500μLのアセトニトリルで洗浄後、同量のMilli Q水(MilliQ Synthesis、日本ミリポア社製)で平衡化を行った。平衡化後の固相に遠心分離した各サンプルの上清を全量添加した後、500μLの5%アンモニア水と500μLの75%アセトニトリル水溶液で洗浄した。洗浄後、200μLの1%ギ酸含有75%アセトニトリル水溶液を用いて固相からAVPおよびdDAVPを溶出した。 溶出液は、遠心エバポレータを用いて、50℃、90分間の乾燥を行い、残渣に1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液を100μL加えて溶解し、測定用サンプルとした。実施例5;検出下限および定量下限の検討 実施例2〜4に従って決定した生体試料の前処理法、HPLCの条件、質量分析の条件に従って、本願発明の分析法によるAVP及びdDAVPの検出および定量可能な下限値の検討を行った。 AVPを1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液に溶解し、0.200、0.400、2.00、4.00、20.0、40.0、80.0pmol/LのAVP溶液を調製した。なお、0.200、0.400、2.00、4.00、20.0、40.0、80.0pmol/Lは、それぞれ、0.217、0.434、2.17、4.34、21.7、43.4、86.7pg/mLに相当する。 dDAVPを1%酢酸含有5%アセトニトリル水溶液に溶解し、2.00、4.00、20.0、40.0、200、400、800pmol/LのdDAVP溶液を調製した。 調製した各溶液をサンプルとして前記条件で3回測定し、得られた定量値から検出及び定量可能な下限値を検討した。測定結果を表7及び8に示す。表に示した通り、AVPは0.200〜80.0pmol/Lの全範囲で、dDAVPは2.00〜800pmol/Lの全範囲で直線性が保たれ、定量可能であることが示された。また、AVPの検出および定量下限は0.200pmol/L、dDAVPの検出および定量下限は2.00pmol/Lであった。 一方、分離溶液の成分として、酢酸に代えてギ酸を用いて同様の実験を行ったところ、酢酸を用いた場合と比較して、検出感度の著しい低下が認められた。また、分離溶液の成分として、メタノールに代えてアセトニトリルを用いて同様の実験を行ったところ、メタノールを用いた場合と比較して、検出感度の著しい低下が認められた。 一般的に、ギ酸は酢酸よりもイオン化し易く、アセトニトリルはメタノールよりも溶解性が高いことが知られている。よって、液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた分析方法の分離溶媒として、酢酸とメタノールの組み合わせの方が効果が高いことは意外であった。実施例6;実検体を使用したAVPおよびdDAVPの測定 実施例1〜4によって決定した生体試料の前処理法、HPLCの条件、質量分析の条件を使用して、実検体25件の血漿中のAVP及びdDAVPの測定を実施した。測定結果を表9に示した。なお、表中、「BLQ」の表記は、定量範囲以下(Below LLOQ;below lower limit of quantitation)であることを示す。比較例1;抗体を使用したAVPの免疫学的測定 比較例として、従来AVPの測定に使用されている放射免疫測定(RIA)法によるAVPの測定を行った。測定キットとしてアルギニンバソプレッシンキットAVP RIA「ミツビシ」(三菱化学メディエンス社製)を使用した。実施例6において使用した実検体25件を使用し、前記測定キットに同梱されている説明書に従って血漿中のAVPの測定を実施した。測定結果を表10に示す。 また、実施例6において測定された質量分析計によるAVP測定結果と比較例1において測定されたRIA法によるAVP測定結果との相関図を図2に示した。質量分析計によるAVP測定結果とRIA法によるAVP測定結果は強く相関しており、質量分析計によりAVPが正確に測定できることが明らかとなった。 以上の通り、本発明の方法によれば、生体試料中に含まれるAVPとdDAVPを同時に且つ高感度に測定することが可能であり、測定に要する時間を大幅に短縮することが可能である。実施例7;インクレチン関連ペプチドの測定 本実施例では、インクレチン関連ペプチドであるGLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−36)Amideについて、質量分析計による測定を試みた。 HPLC装置及びHPLCカラムには、実施例2〜5と同じものを使用した。分離溶液には、水系移動相として0.01%酢酸水溶液、有機溶媒系移動相としてメタノールを使用し、実施例3と同様に分離条件を設定した。また、質量分析条件の検討も実施例2〜4と同様にして行った。その結果、本発明の方法によれば、互いに類似した4種類のインクレチン関連ペプチドを分別して同時に測定可能であることが示された。 一方、分離溶液の成分として、酢酸に代えてギ酸を用いて同様の実験を行ったところ、酢酸を用いた場合と比較して、検出感度の著しい低下が認められた。また、分離溶液の成分として、メタノールに代えてアセトニトリルを用いて同様の実験を行ったところ、メタノールを用いた場合と比較して、検出感度の著しい低下が認められた。 本発明によれば、生体試料中の微量の蛋白質を測定できる。本発明によれば、特に、生体試料中の複数の蛋白質を分別して測定できる。例えば、本発明の一実施形態によれば、血中に微量しか含まれないAVPを、AVPとdDAVPとを互いに区別して高感度かつ正確に定量することができ、AVP及びdDAVPの正確な血中濃度を把握することができる。また、本発明によれば、生体試料の取得から蛋白質の測定までに要する日数が大幅に短縮され、よって、本発明は、検査センター等で大量の検体を分析するのに有効である。従って、本発明は、例えば、種々の疾患について、的確な治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料を迅速に提供することができる。 蛋白質を測定する方法であって、(i)酢酸およびメタノールを含有する移動相を用いた液体クロマトグラフィーにより生体試料に含まれる蛋白質を分離する工程、(ii)前記(i)の工程で分離された蛋白質を質量分析計で分析する工程、を含む方法。 前記工程(i)が、移動相中でのメタノールの濃度を増大させる工程を含む、請求項1に記載の方法。 前記工程(i)が、移動相中でのメタノールの濃度を第1のメタノール濃度から第2のメタノール濃度まで増大させる工程を含み、 前記第1のメタノール濃度が0%〜10%であり、 前記第2のメタノール濃度が40%〜60%である、 請求項2に記載の方法。 前記工程(i)が、移動相中での酢酸の濃度を減少させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 前記工程(i)が、移動相中での酢酸の濃度を第1の酢酸濃度から第2の酢酸濃度まで減少させる工程を含み、 前記第1の酢酸濃度が0.0048%〜0.04%であり、 前記第2の酢酸濃度が0.0023%〜0.022%であり、 前記第2の酢酸濃度は前記第1の酢酸濃度より小さい、 請求項4に記載の方法。 前記生体試料が、前記工程(i)の前に固相抽出により前処理される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 前記質量分析計が、四重極型、四重極タンデム型、イオントラップ型、イオントラップ四重極ハイブリッド型、セクター型、飛行時間型、および四重極飛行時間ハイブリッド型からなる群より選択されるいずれかのタイプである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 検出された蛋白質のピーク面積値を内部標準物質のピーク面積値で除したピーク面積比に基づいて、前記蛋白質を定量する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 前記蛋白質の分子量が6000以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 前記蛋白質が、バソプレシン、デスモプレシン、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−36)Amide、オクトレオチド、ゴセレリン、アンジオテンシンI、およびアンジオテンシンIIからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 2種またはそれ以上の蛋白質が同時に測定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。 【課題】生体試料中の蛋白質を測定する方法、例えば、血中に存在するAVPの量を測定するのに十分な感度を有し、かつ、AVPとdDAVPを互いに区別して測定することを可能とする蛋白質の測定方法、を提供する【解決手段】(i)酢酸およびメタノールを含有する移動相を用いた液体クロマトグラフィーにより生体試料に含まれる蛋白質を分離する工程、および(ii)前記工程で分離された蛋白質を質量分析計で分析する工程、を含む方法により蛋白質を測定する。【選択図】図2