タイトル: | 公開特許公報(A)_魚類の鰓から軟骨を単離する方法 |
出願番号: | 2013116857 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A23L 1/327,A61K 35/60 |
清水 克彦 JP 2014011993 公開特許公報(A) 20140123 2013116857 20130603 魚類の鰓から軟骨を単離する方法 国立大学法人鳥取大学 504150461 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 澤本 真奈美 100170520 清水 克彦 JP 2012129022 20120606 A23L 1/327 20060101AFI20131220BHJP A61K 35/60 20060101ALN20131220BHJP JPA23L1/327A61K35/60 6 OL 8 4B042 4C087 4B042AC10 4B042AG12 4B042AH04 4B042AK04 4C087AA03 4C087BB29 本発明は、魚類の鰓から軟骨を単離する方法に関する。 軟骨組織は食品として利用可能である他、II型コラーゲンやコンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなど医薬品、健康補助食品の原料として産業上の利用価値が高い。従来、ウシやブタなどの哺乳類またはニワトリ由来の軟骨が利用されてきたが、人畜共通の感染症に対する懸念から、近年ではサケの鼻軟骨やサメの軟骨に注目が集まってきた。例えば、特許文献1〜3には、魚類頭部から鼻軟骨を分離するための装置が開示されている。しかしながら、これらの軟骨の入手可能な量は限られており、新たな原料が求められている現状がある。 魚類の鰓には軟骨組織が含まれており、鰓の重量はクロマグロ場合、内臓の1/3を占める。しかしながら、鰓軟骨は、血管、上皮組織やその他の結合組織に取り囲まれて存在していることから、単離が容易ではなく、これまで利用されてこなかった。 軟骨組織をII型コラーゲンやコンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどの有用物質の原料として利用するためには、不要な部位や不純物を含まない状態で軟骨組織を動物組織から単離・精製することが望ましい。例えば、特許文献4には、魚類の鼻柱骨または軟骨魚類のひれなどの軟骨を含有する動物組織に高圧水流を噴射することを特徴とする原料軟骨の精製方法が開示されている。しかしながら、これまでに、魚類の鰓から軟骨を単離する方法は開示されていない。特開平11−206311号公報特開2007−49964号公報特開2008−154480号公報特開2001−112419号公報 本発明は、魚類の鰓から簡便、安価かつ食用として安全な方法で軟骨組織を単離する技術を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、驚くべきことに、魚類の鰓を有機酸に浸漬するという非常に簡便な方法によって魚類の軟骨を単離できることを見出した。かかる方法は、簡便であるだけでなく、あまり費用もかからず、かつ食用としても安全である。 すなわち、本発明は、(1)魚類の鰓を有機酸水溶液に浸漬することを特徴とする鰓軟骨の単離方法、(2)魚類が硬骨魚類である、上記(1)記載の方法、(3)鰓が鰓から分離した鰓弁である、上記(1)または(2)記載の方法、(4)有機酸が炭素数2〜6の低級カルボン酸である、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法、(5)有機酸が酢酸またはクエン酸である、上記(4)記載の方法、および(6)有機酸水溶液の濃度が1%以上である、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法を提供する。 本発明によれば、魚類の鰓から簡便、安価かつ食用として安全な方法で軟骨組織を単離することができる。本発明の方法によって得られた軟骨組織は、食品として利用可能であるだけでなく、該軟骨組織からII型コラーゲンやコンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどの有用物質を得ることができ、医薬品、健康補助食品の原料として利用することができる。本発明の方法によって単離された鰓軟骨の写真を示す。本発明の方法によって単離された鰓軟骨および使用された鰓の写真を示す。本発明の方法によって単離された鰓軟骨および使用された鰓の写真を示す。ニワトリII型コラーゲン抗体によるII型コラーゲンの検出結果を示す。本発明の方法によって単離された鰓軟骨および使用された鰓の写真を示す。 本発明において、魚類としては、好ましくは硬骨魚類の魚が用いられ、例えば、スズキ目(例えば、アジ科、サバ科など)、カレイ目(例えば、ヒラメ科など)、コイ目(例えば、コイ科など)、サケ目(例えば、サケ科など)、タラ目(例えば、タラ科など)などの魚が挙げられる。例えば、限定するものではないが、ヒラマサ、ヒラメ、およびマグロ類(例えば、クロマグロ)、ブリ、カツオ、タイ、アジ、コイ、サケ、タラなどを用いることができる。 本発明において、魚類の鰓は、鰓全体であってもよく、または鰓から鰓弓を除去して鰓弁のみを用いてもよい。1体の魚から、左右4対の鰓弁を得ることができる。魚体から鰓を切り離した後、またはさらに鰓弁を切り離した後、適宜、血液等を除去するために流水などにより洗浄してもよい。 本発明において使用される有機酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸などの低級カルボン酸、ならびにその異性体およびラセミ体が挙げられる。好ましくは、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などの炭素数2〜6個の低級カルボン酸、ならびにその異性体およびラセミ体が用いられ、さらに好ましくは、酢酸またはクエン酸が用いられる。本発明において使用される有機酸水溶液の濃度は、有機酸の種類にもよるが、例えば、0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、または6%以上である。好ましくは、1%以上の濃度の有機酸水溶液が用いられる。 本発明においては、上記魚類の鰓を上記有機酸溶液に浸漬する。浸漬時間は、特に限定されず、軟骨組織が結合組織、上皮組織などの他の組織から分離されるのに十分な時間浸漬すればよい。例えば、数時間〜数十時間、例えば、一晩または二晩浸漬してもよい。浸漬温度もまた、特に限定されず、例えば常温であってもよい。好ましくは、雑菌繁殖防止などの衛生上の観点から、4℃程度の低温で浸漬する。 浸漬方法としては、特に限定されず、鰓を有機酸溶液中に入れた後、静置してもよく、あるいは該有機酸溶液を攪拌または循環させてもよい。有機酸溶液を攪拌または循環させると、軟骨組織の他の組織からの分離が促進される。浸漬期間中、有機酸溶液を適宜交換してもよい。また、限定するものではないが、鰓全体または鰓弁をその形状を崩さない状態で浸漬すると、軟骨組織の単離がより良好である。 本発明にしたがって魚類の鰓を有機酸に浸漬すると、軟骨組織から上皮組織および結合組織などの他の組織が分離し、他の不要な組織を実質的に含まない状態で軟骨組織を単離することができる。単離された軟骨組織は、適宜、ろ過などの常法によって有機酸溶液中から回収することができる。 本発明の方法によれば、他の不要な組織を実質的に含まない純度の高い軟骨組織を得ることができる。したがって、本発明の方法によって単離された鰓軟骨は、II型コラーゲン、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどの有用物質の抽出原料として適している。また、本発明の方法によって単離された鰓軟骨は、さらに精製することなく、II型コラーゲン、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどの有用物質の抽出や、医薬品、健康補助食品などの製造に用いることができる。 以下、実施例を示して本発明をさらに説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。 実施例1 クロマグロの鰓軟骨の単離 クロマグロから鰓部分を切り離し、さらに鰓弓を切り離して左右4対の鰓弁を得た。得られた鰓弁を1時間流水に曝した。鰓弁を5%クエン酸水溶液中に浸漬し、攪拌しながら4℃で一晩維持した。この間、5%クエン酸水溶液を3回交換した。その結果、上皮組織および結合組織が除去され、軟骨を単離することができた。得られた軟骨組織を図1に示す。 実施例2 他の有機酸溶液による鰓軟骨の単離 実施例1に記載の方法にしたがって、クロマグロの鰓弁を得、5%クエン酸水溶液、1%クエン酸水溶液、0.2%クエン酸水溶液、0.5M酢酸水溶液、または10mM塩酸水溶液中に浸漬した。4℃で一晩、攪拌しながら浸漬し、各有機酸溶液を3回交換した。 軟骨単離の結果を表1に示す。表1中、◎は非常に良く単離されたこと、○は良好に単離されたこと、×は単離不良を示す。 実施例3 ヒラマサおよびヒラメの鰓軟骨の単離 実施例1の記載と同様に、ヒラマサおよびヒラメの鰓弁を得、5%クエン酸水溶液中に浸漬し、攪拌しながら4℃で一晩維持した。この間、5%クエン酸水溶液を3回交換した。その結果、実施例1のクロマグロと同様に、軟骨組織を単離することができた。ヒラマサの鰓および単離された軟骨の写真を図2に示す。ヒラメの鰓および単離された軟骨の写真を図3に示す。 実施例4 クロマグロII型コラーゲンの抽出および精製 常法にしたがって、実施例1で得られたクロマグロの鰓軟骨からコラーゲンを抽出し、精製した。簡単に言うと、実施例1の方法によってクロマグロから鰓軟骨を単離し、該鰓軟骨を0.5M酢酸水溶液中に浸漬し、該溶液にペプシンを添加し、4℃で二晩攪拌してII型コラーゲンを抽出した。固液分離によりコラーゲン溶液を回収した。当該操作を繰り返し計2回の抽出を行い、これらを合わせ、塩析・透析によりコラーゲンを精製した。さらに、対照として、クロマグロの鰓全体および胃を出発材料として、同様にコラーゲンを抽出、精製した。コラーゲンの精製をSDS−PAGEで確認し、得られたサンプル中のII型コラーゲンの存在を、ニワトリII型コラーゲン抗体を用いて確認した。なお、クロマグロ鰓軟骨の単離は、ロット1および2で行った。 結果を図4に示す。II型コラーゲンは、一般に、出発材料の純度が高くなければ回収できないことが知られている。SDS−PAGEでは、いずれの組織からもコラーゲンが精製されていることが示されている。図4のドットブロット結果から明らかなように、実施例1で得られた鰓軟骨を出発材料としたサンプルにおいてII型コラーゲンが検出された(ドット4および5)。一方、鰓全体を出発材料としたサンプルではII型コラーゲンが検出されなかった(ドット3)。 実施例5 ギンザケの鰓軟骨の単離 実施例1の記載と同様に、ギンザケの鰓弁を得、5%クエン酸水溶液中に浸漬し、攪拌しながら4℃で一晩維持した。この間、5%クエン酸水溶液を3回交換した。その結果、実施例1のクロマグロと同様に、軟骨組織を単離することができた。ギンザケの鰓および単離された軟骨の写真を図5に示す。 本発明によれば、魚類の鰓から簡便、安価かつ食用として安全な方法で軟骨組織を単離することができる。本発明の方法によって得られた軟骨組織は、食品として利用可能であるだけでなく、該軟骨組織からII型コラーゲンやコンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどの有用物質を得ることができ、医薬品、健康補助食品の原料として利用することができる。 魚類の鰓を有機酸水溶液に浸漬することを特徴とする鰓軟骨の単離方法。 魚類が硬骨魚類である、請求項1記載の方法。 鰓が鰓から分離した鰓弁である、請求項1または2記載の方法。 有機酸が炭素数2〜6の低級カルボン酸である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 有機酸が酢酸またはクエン酸である、請求項4記載の方法。 有機酸水溶液の濃度が1%以上である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。 【課題】魚類の鰓から簡便、安価かつ食用として安全な方法で軟骨組織を単離する技術を提供すること。【解決手段】本発明は、魚類の鰓を有機酸水溶液に浸漬することを特徴とする鰓軟骨の単離方法を提供する。【選択図】なし