生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_新規ヌクレアーゼ及びその遺伝子
出願番号:2013101501
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12N 9/22


特許情報キャッシュ

大野 ふみ 渡辺 文昭 喜多 恵子 JP 2014221015 公開特許公報(A) 20141127 2013101501 20130513 新規ヌクレアーゼ及びその遺伝子 三菱レイヨン株式会社 000006035 大野 ふみ 渡辺 文昭 喜多 恵子 C12N 15/09 20060101AFI20141031BHJP C12N 1/15 20060101ALI20141031BHJP C12N 1/19 20060101ALI20141031BHJP C12N 1/21 20060101ALI20141031BHJP C12N 5/10 20060101ALI20141031BHJP C12N 9/22 20060101ALI20141031BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 101C12N9/22 8 OL 18 4B024 4B050 4B065 4B024AA20 4B024BA11 4B024CA03 4B024DA05 4B024DA06 4B024GA11 4B024HA19 4B050CC01 4B050CC03 4B050DD02 4B050FF01 4B050FF14E 4B050LL03 4B065AA26X 4B065AA45X 4B065AA45Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA01 4B065BD01 4B065BD14 4B065BD15 4B065CA31 4B065CA46 本発明は、遺伝子工学試薬として有用な新規ヌクレアーゼ、当該酵素タンパク質をコードする遺伝子及び当該酵素の製造方法に関する。 ヌクレアーゼ(Nuclease)は核酸の糖とリン酸の間のホスホジエステル結合を加水分解してヌクレオチドとする酵素である。分解の型式により、エンドヌクレアーゼとエキソヌクレアーゼに分類できる。 エキソヌクレアーゼ(Exonuclease)は、核酸配列の外側(exo−)から、すなわち核酸の5’端又は3’端から削るように分解する。一方、エンドヌクレアーゼ(Endonuclease)は核酸配列の内部(endo−)で核酸を切断する。 エンドヌクレアーゼとしては、制限酵素とニッキング酵素の2種類の酵素が知られており、制限酵素は、現在遺伝子工学技術において幅広く用いられている有用な酵素である。 ニッキング酵素(Nicking enzymeあるいはNicking endonuclease)は、二本鎖DNAのうち一方の鎖だけホスホジエステル結合が切断されたニックを生じさせるエンドヌクレアーゼである。ニッキング酵素によって生じる通常のニック(3’−ヒドロキシ、5’−リン酸)は、様々な酵素反応の基点となるため、ニッキング酵素はDNAの加工に用いられる。 例えば、ニッキング酵素を用いて二本鎖DNAの片方にニックを形成させ、生じたニックをプライミングサイトとして、鎖置換型DNAポリメラーゼにより15塩基程度の短い核酸を等温増幅する方法が知られている(非特許文献1)。また、当該方法の改良技術として、鎖置換型DNAポリメラーゼとニッキング酵素を用いて、21塩基以上の核酸を等温増幅する方法も開発されている(特許文献1)。これまでにニッキング酵素は1000種以上が報告されているが、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌においては11例の報告があるのみで、これらは全て推定的(putative)なものである(http://rebase.neb.com/)。 本発明者らは、これまでにロドコッカス ロドクロウスJ−1株から幾つかのヌクレアーゼを単離し、ミスマッチ配列を認識するニッキング酵素を見出している(特許文献2、特許文献3)。特開2008−136451号公報特開2007−259853号公報特開2013−005791号公報Jeffrey Van Ness,et al., (2003) “Isothermal reactions for the amplification of oligonucleotides” Proc.Natl.Acad.Sci.USA, Vol.100, No.8, 4504-4509 遺伝子工学の分野では様々な機能を有する酵素が求められており、これまで以上の多くの種類のニッキング活性を有する酵素が求められている。 本発明の主な目的は、遺伝子工学の分野で有用な新規なヌクレアーゼ及びその遺伝子を提供するとともに、当該ヌクレアーゼの製造方法を提供することにある。 発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ロドコッカス属に属する細菌:ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株より、新規なヌクレアーゼ(RrhJ1III)を単離した。 本発明は、下記の通りである。以下の(A)、(B)又は(C)のタンパク質。(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつニッキング酵素活性を有するタンパク質(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と相同性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつニッキング酵素活性を有するタンパク質 本発明により、遺伝子工学の分野で有用なニッキング酵素活性を有するエンドヌクレアーゼ及びこれをコードする遺伝子を提供することができる。本発明の新規ヌクレアーゼは、当該遺伝子を用いた組換え製造により、簡便かつ大量に生産することができる。 本発明の新規ヌクレアーゼは、ニッキング酵素活性を有するため、鎖置換型等温核酸増幅や、染色体DNAの蛍光標識による可視化、生体内遺伝子ターゲティングのための相同組換えを誘発するための一本鎖DNA切断反応などに利用できる。ロドコッカス属細菌の産生するエンドヌクレアーゼのホモロジー解析結果を示す図である。RrhJ1III発現プラスミドpRR03の構造を示す模式図である。RrhJ1IIIの酵素活性を示す図である。 (1)本発明の新規ヌクレアーゼ(RrhJ1IIIヌクレアーゼ) 本発明に係る新規ヌクレアーゼは、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株から、本発明者らにより初めて単離された。ロドコッカス ロドクロウスJ−1株(以下、「J1菌」ともいう)は、FERM BP−1478として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。 本発明者らは、このJ1菌由来の新規ヌクレアーゼを「RrhJ1III」と命名した。RrhJ1IIIヌクレアーゼは、pBR322のclosed circularをopen circularにするニッキング酵素活性を有する。本明細書では、このRrhJ1IIIヌクレアーゼが有するニッキング酵素活性を「RrhJ1IIIヌクレアーゼ活性」という。 本明細書において、「エンドヌクレアーゼ活性」とは、核酸配列の内部(endo−)で核酸を切断する酵素活性を意味し、「ニッキング酵素活性」とは、特定の配列を有する二本鎖DNAの片方の鎖のみを切断するエンドヌクレアーゼ活性を意味する。RrhJ1IIIヌクレアーゼによる認識部位と切断部位とは、同一でも異なっていてもどちらでもよい。 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼによって切断されるDNAが二本鎖DNAの場合は、その一方の鎖のみにニックを入れる。また、切断されるDNAは、認識部位と切断部位にミスマッチ構造(例えば、C/Tミスマッチ)を含んでいても含んでいなくてもよい。 ニッキング酵素活性は、RrhJ1IIIヌクレアーゼをDNAと接触させ、接触後のDNAの分子量又はDNA断片数を測定することにより評価することができる。接触前のDNAの分子量と接触後のDNAの分子量を比較したり、接触前のDNAの断片数と接触後のDNA断片数とを比較したりすることにより、ニッキング酵素活性を評価することができる。当業者であれば、基質となるDNA、接触時の酵素量、温度、溶液組成又は接触時間などの条件は適宜設定することができる。DNAの分子量は、例えばアガロース電気泳動によって測定することができる。 本発明者らは、J1菌由来のRrhJ1IIIヌクレアーゼが配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有することを同定した。しかしながら、本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼは、これらの配列を有するものに限定されるものではなく、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約85%以上、より好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性又は同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつニッキング酵素活性を有するタンパク質も、本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼに含まれる。 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼは、当該酵素をコードする遺伝子が2つの開始コドンを有するため、N末端近傍の3アミノ酸残基の有無のみが異なる2種のヌクレアーゼ(RrhJ1IIIヌクレアーゼ)が存在することが明らかになった。これら2種のヌクレアーゼはいずれも野生型ヌクレアーゼであるが、本明細書において両者を区別する場合は、最初の開始コドンから翻訳されたアミノ酸配列(配列番号2)からなるヌクレアーゼを「RrhJ1III(1st)」、2番目の開始コドン(次に登場するメチオニン)から翻訳されたアミノ酸配列(配列番号4)からなるヌクレアーゼを「RrhJ1III(2nd)」とする。 また、本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼタンパク質には、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつニッキング酵素活性を有するタンパク質も含まれる。 具体的には、(i)配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列において、数個、例えば1〜20個(好ましくは1〜10個、よろい好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列の数個、例えば1〜20個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、(iii)配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列に数個、例えば、1〜20個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(iv)配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列に数個、例えば1〜20個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(v)上記(i)〜(iv)のいずれかを組み合わせたアミノ酸配列が挙げられる。 アミノ酸の置換は、類似するアミノ酸残基間の保存的置換が好ましい。アミノ酸は、その側鎖の性質に基づいて、疎水性アミノ酸(A,I,L,M,F,P,W,Y,V)、親水性アミノ酸(R,D,N,C,E,Q,G,H,K,S,T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G,A,V,L,I,P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S,T,Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C,M),カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D,N,E,Q),塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R,K,H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H,F,Y,W)に分類される。各群に分類されたアミノ酸は、相互に置換したときに、当該ポリペプチドの活性が維持される可能性が高いことが知られており、そのようなアミノ酸相互の置換が好ましい。例えば、グリシンとプロリン、グリシンとアラニン又はバリン、ロイシンとイソロイシン、グルタミン酸とグルタミン、アスパラギン酸とアスパラギン、システインとスレオニン、スレオニンとセリン又はアラニン、リジンとアルギニン間での置換を挙げることができる。 (2)本発明の新規ヌクレアーゼ遺伝子(RrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子) 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子は、上述したRrhJ1IIIヌクレアーゼタンパク質をコードする遺伝子である。本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子は、配列番号1又は3に示される塩基配列からなるDNAを含む。配列番号1に示される塩基配列はRrhJ1III(1st)をコードする遺伝子であり、配列番号3に示される塩基配列はRrhJ1III(2nd)をコードする遺伝子である。 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子は上記配列に限定されるものではなく、配列番号1又は3に示される塩基配列と約80%以上、好ましくは約85%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有するDNAも、それがRrhJ1IIIヌクレアーゼとしての機能(ニッキング酵素活性)を有するタンパク質をコードする限り、本発明の遺伝子に含まれる。 また、前述したアミノ酸配列の欠失、置換又は付加に対応して、配列番号1又は3記載の塩基配列において、数個の塩基に欠失、置換又は付加等の変異が生じた塩基配列も、それが本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼとしての機能(ニッキング酵素活性)を有するタンパク質をコードする限り、本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子に含まれる。なお、欠失、置換又は付加される塩基の個数は、30個以下、好ましくは15個以下、特に好ましくは6個以下である。 さらに、配列番号1又は3に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、これがニッキング酵素活性を有するタンパク質をコードする限り、本発明の遺伝子に含まれる。 ここで、ストリンジェントな条件としては、例えば、DNAを固定したナイロン膜を、6×SSC(1×SSCは、塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶かしたもの)、1%SDS、100μg/mLサケ精子DNA、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコールを含む溶液(本明細書において、「%」は「w/v」を意味する。)中で65℃にて20時間プローブとともに保温してハイブリダイゼーションを行う条件を挙げることができる。しかし、この条件に限定されず、当業者であれば、このような緩衝液の塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ハイブリダイゼーションの条件を設定することができる。 ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))等を参照することができる。 以下に、ハイブリダイゼーションによりRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子を得る方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されない。 まず、適当な遺伝子源から得たDNAを定法に従ってプラスミドやファージベクターに接続してDNAライブラリを作製する。このライブラリを適当な宿主に導入して得られる形質転換体をプレート上で培養し、生育したコロニー又はプラークをニトロセルロースやナイロンの膜にうつしとり、変性処理の後にDNAを膜に固定する。この膜をあらかじめ32P等で標識したプローブを含む上記の組成の溶液中、上記のストリンジェントな条件で保温し、ハイブリダイゼーションを行う。プローブとしては、配列番号1又は3に記載したアミノ酸配列の全部又は一部をコードするポリヌクレオチドを使用することができる。 ハイブリダイゼーションの終了後、非特異的に吸着したプローブを洗い流し、オートラジオグラフィ等によりプローブとハイブリッドを形成したクローンを同定する。この操作をハイブリッド形成クローンが単離できるまで繰り返す。最後に、得られたクローンの中から、目的の酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を選択する。遺伝子の単離は、アルカリ法等の公知のポリヌクレオチド抽出法により実施できる。 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子は、当該酵素を発現する微生物から単離することもできる。例えば、ロドコッカス ロドクロウスJ−1株由来のゲノムDNAを鋳型として、既知のアミノ酸配列情報から遺伝子の縮重を考慮して設計したプライマーもしくはプローブ又は既知の塩基配列情報に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いたPCR又はハイブリダイゼーション法により、前記微生物のゲノムから目的の遺伝子を単離することができる。 このように種々のDNAが本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子の範囲内に含まれるのは、コドンの縮重に由来する。すなわち、遺伝子上でアミノ酸を指定するコドン(3つの塩基の組み合わせ)は、アミノ酸の種類ごとに1〜6種類存在することが知られている。従って、あるアミノ酸配列をコードする遺伝子は多数存在しうる。 遺伝子は自然界において安定に存在しているものではなく、その塩基配列に変異が起こることは稀ではない。遺伝子上に起こった変異によっては、コードされるアミノ酸配列に変化を与えない変異(サイレント変異と呼ばれる)もあり、この場合には同じアミノ酸配列をコードする、異なる遺伝子が生じたと言える。従って、ある特定のアミノ酸配列をコードする遺伝子が単離されても、それを含有する生物が継代されていくうちに同じアミノ酸配列をコードする多種類の遺伝子ができて行く可能性は否定できない。 さらに、同じアミノ酸配列をコードする多種類の遺伝子を人為的に作製することは、種々の遺伝子工学的手法を用いれば困難なことではない。例えば、遺伝子工学的なタンパク質の生産において、目的のタンパク質をコードする本来の遺伝子上で使用されているコドンが宿主中では使用頻度の低いものであった場合には、タンパク質の発現量が低いことがある。このような場合にはコードされているアミノ酸配列に変化を与えることなく、コドンを宿主で繁用されているものに人為的に変換することにより、目的タンパク質の高発現を図ることが行われている。 このように、特定のアミノ酸配列をコードする多種類の遺伝子は人為的に作製可能なことは言うまでもなく、自然界においても生成されうるものである。従って、本発明中に開示された塩基配列と同一の遺伝子ではなくても、RrhJ1IIIと同等の活性を示すタンパク質をコードするDNAである限り、本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子に含まれる。 遺伝子に変異を導入し、人為的にアミノ酸配列を改変する方法としては、Kunkel法やGapped duplex法等の公知の手法や、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入キット、例えば、QuikChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K,Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社)等を用いることができる。 DNAの塩基配列の確認は、慣用の方法により配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。 塩基配列の決定は、プラスミドベクターを用いて作製された形質転換体の場合、宿主がエシェリヒア コリ(Escherichia coli)であれば試験管等で培養を行い、定法に従ってプラスミドを調製する。得られたプラスミドをそのまま鋳型とするか、あるいは挿入断片を取り出してM13ファージベクター等にサブクローニングした後に、ジデオキシ法により塩基配列を決定する。ファージベクターで作製された形質転換体の場合も基本的に同様な操作により塩基配列を決定することができる。これら培養から塩基配列決定までの基本的な実験法については、例えば前述のT.ManiatisらのMolecular Cloning, A Laboratory Manual等に記載されている。 得られた遺伝子が目的のRrhJ1IIIヌクレアーゼをコードする遺伝子であるかどうかの確認は、決定された塩基配列を配列番号1又は3に記載の塩基配列と比較して行うことができる。あるいは決定された塩基配列より推定されるアミノ酸配列を配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と比較して行うことができる。 (3)本発明の新規ヌクレアーゼ遺伝子を含む組換えベクター 本発明は、RrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子を含む組換えベクターも提供する。本発明の組換えベクターは、上記酵素をコードする遺伝子の上流に転写プロモーター、場合によっては下流にターミネーターを挿入して発現カセットを構築し、このカセットを発現ベクターに挿入することにより作製することができる。あるいは、発現ベクターに転写プロモーター及び/又はターミネーターがすでに存在する場合には、発現カセットを構築することなく、ベクター中のプロモーター及び/又はターミネーターを利用して、その間に当該酵素をコードする遺伝子を挿入すればよい。 本明細書において、プロモーターは、例えば、trcプロモーター、lacプロモーターなどをあげることができるが、これに限定されるわけではない。本明細書において、ターミネーターは、例えば、trpオペロンターミネータを挙げることができるが、これに限定されるわけではない。 ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、制限酵素を用いる方法、トポイソメラーゼを用いる方法等を利用することができる。また、挿入の際に必要であれば、適当なリンカーを付加してもよい。また、アミノ酸への翻訳にとって重要な塩基配列として、SD配列やKozak配列などのリボソーム結合配列が知られており、これらの配列を遺伝子の上流に挿入することもできる。挿入にともない、遺伝子がコードするアミノ酸配列の一部を置換してもよい。 本発明において使用されるベクターは、本発明の遺伝子を保持するものであれば特に限定されず、それぞれの宿主に適したベクターを用いることができる。ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。例えば、大腸菌を宿主とする場合には、pTrc99A(GEヘルスケア バイオサイエンス)、pACYC184(ニッポンジーン)、pMW118(ニッポンジーン)などを挙げることができる。また、必要に応じて、これらのベクターを改変したものを用いることもできる。 (4)本発明のベクターを導入した形質転換体 本発明の組換えベクターを宿主に導入することで、本発明の形質転換体を作製することができる。 形質転換体に使用する宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的の制限酵素又は修飾酵素を発現することができる限り、特に限定されるものではない。宿主としては、例えば、大腸菌(エシェリヒア コリ)、枯草菌(バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis))、ロドコッカス菌(Rhodococcus)、放線菌などの細菌、酵母(サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、カビ、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが挙げられる。本発明において、宿主は好ましくは大腸菌である。 本発明において、大腸菌は、例えば、大腸菌K12株やB株、あるいはそれらの野生株由来の派生株であるJM109株、XL1−Blue株(例えば、XL1−Blue MRF’)、K802株、C600株などを挙げることができる。 宿主への組換えベクターの導入方法としては、宿主に適した方法であれば特に限定されるものではなく、当業者であれば公知技術から適宜選択することができる。このような方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。 (5)本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼの製造方法 (5−1)細胞系による製造 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼは、形質転換体を培養して、培養物中よりRrhJ1IIIヌクレアーゼの特徴(例えば、ニッキング酵素活性)を有する活性を有するタンパク質を採取することにより、RrhJ1IIIヌクレアーゼを製造することができる。 本発明において「培養物」とは、菌体、培養液、無細胞抽出液、細胞膜などの培養により得られるものを意味する。無細胞抽出液は、培養後の菌体を、例えばリン酸ナトリウム緩衝液を加えてホモジナイザーなどで物理的に破砕した後、遠心(15,000rpm、10min、4℃)し、破砕できない菌体(細胞)が存在しないように上清を回収して得ることができる。細胞膜は、上記遠心で得られたペレットとして得ることができ、また、ペレットを溶解バッファで懸濁することにより得ることもできる。 本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼは、培養物をそのまま用いてもよいし、透析や硫安沈殿などの公知の方法、あるいは公知の方法を単独又は適宜組み合わせることによって、培養物から濃縮、精製したものを用いてもよい。この場合、酵素活性、分子量、等電点などを指標に濃縮、精製することができる。 たとえば、形質転換体の培養物からRrhJ1IIIヌクレアーゼ及びその修飾酵素を採取するにあたっては、培養物より菌体を集菌後、超音波破砕、超遠心分離等により酵素を抽出し、ついで除核酸法、塩析法、アフィニティクロマトグラフィ法、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィ法等を組み合わせて精製すればよい。この方法により、RrhJ1IIIヌクレアーゼを大量に得ることができる。 用いる発現系によっては、形質転換体中で発現された酵素タンパク質が不溶物[封入体(inclusionbody)]として蓄積される場合がある。この場合にはこの不溶物を回収し、穏和な変性条件、たとえば尿素等の変性剤存在下で可溶化した後に変性剤を除くことによって活性型のタンパク質を得ることができる。さらに上記のようなクロマトグラフィ操作を行って目的とする酵素タンパク質を精製することができる。 (5−2)無細胞タンパク質合成系による製造 本発明においては、無細胞タンパク質合成系を用いて、本発明のRrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子又は本発明のベクターから、RrhJ1IIIヌクレアーゼを製造することも可能である。 無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内でタンパク質を合成する系である。すなわち、無細胞タンパク質合成系は、生物を用いた組換えタンパク質発現とは異なり、細胞を使用せずに試験管内で転写・翻訳という一連のタンパク質合成の流れを行う合成系であるため、細胞にとって毒性となるタンパク質を生産できるという利点がある。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系にはDNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。 無細胞タンパク質合成系の細胞抽出液としては、真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、例えば小麦胚芽、大腸菌等の抽出液を使用することができる。これらの細胞抽出液は濃縮されたものであっても濃縮されていないものであってもよい。 細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。さらに本発明において、無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG−MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ ダイアグノスティクス)等が挙げられる。 こうした細胞抽出液に代えて、タンパク質合成に関与するすべての因子を精製し、それらをリボソーム、ATP、tRNA、アミノ酸などとともに再構成して作成された「再構成された無細胞タンパク質合成系」を用いることもできる。 通常の無細胞タンパク質合成系に用いられる細胞抽出液には、ATPを加水分解する酵素などの混在によりタンパク質合成以外に無駄に消費されるエネルギー量が多く、エネルギー効率が低く、また細胞抽出液中に存在するプロテアーゼやヌクレアーゼなどの阻害因子によりンパク質合成の効率が低下する場合がある。 「再構成された無細胞タンパク質合成系」は、こうした阻害的要因の問題がなく、また構成成分を自由に操作することができるため、目的や標的タンパク質に応じた自由なシステム設計が可能である。また系の自由度が高く、反応系を微小化したり、自動化装置と組み合わせてハイスループットにすることも可能である。 「再構成された無細胞タンパク質合成系」の一例としてPURESYSTEM(登録商標)を挙げることができる。PURESYSTEM(登録商標)は大腸菌から再構成されているが、無細胞タンパク質合成系で用いられる他の公知の細胞、昆虫細胞、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球のいずれを用いても、同様の系は構成可能である。 上記のように無細胞タンパク質合成系によって得られる本発明のヌクレアーゼは前述のように適宜クロマトグラフィを選択して、濃縮、精製することができる。 (6)RrhJ1IIIヌクレアーゼ活性の解析 RrhJ1IIIヌクレアーゼ酵素活性を調べるために、まずJ1菌を培養し、培養した菌体を集めて超音波処理にて破砕した後、超遠心分離を行って上清を集め、これを活性測定用の試料とする。また、上述したように細胞系による製造又は無細胞系タンパク質合成系により得られたものも試料とすることができる。 この試料の適当量を、基質であるclosed circular pBR322 DNA(pBR322)とともに37℃でインキュベートした後、基質DNAの分解をアガロースゲル電気泳動により確認する。 当該方法を用いてJ1菌のRrhJ1IIIヌクレアーゼ酵素活性を調べると、当該酵素活性は、pBR322を切断してopen circularにする活性として検出される。種々のプラスミドを基質DNAとして使用してRrhJ1IIIヌクレアーゼによる切断パターンを解析すると、RrhJ1IIIヌクレアーゼの認識配列を決定することができる。 以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。本明細書において「%」とは「w/v」を意味するものとする。 [実施例1] J1菌染色体DNAの調製 ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株を100mLのMYKG培地中、30℃にて72時間振盪培養した。 培養後、集菌し、集菌された菌体をSaline−EDTA溶液(0.1M EDTA、0.15M NaCl(pH8.0))4mLに懸濁した。懸濁液にリゾチーム40mgを加えて37℃で1〜2時間振盪した後、−20℃で凍結した。 次に、10mLのTris−SDS液(1%SDS、0.1M NaCl、0.1M Tris−HCl(pH9.0))を穏やかに振盪しながら加え、さらにプロテイナーゼK(メルク社)(10mg/mL)を10μL加えて37℃で1時間振盪した。 次に、等量のTE(10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0))飽和フェノールを加え、攪拌後、遠心した。上層を採取し、2倍量のエタノールを加えた後、ガラス棒でDNAを巻き取り、90%、80%、70%のエタノールで順次フェノールを取り除いた。 次に、DNAを3mLのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃、15分間の加熱処理済)を10μg/mLになるように加え、37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼKを加え37℃で30分間振盪した後、等量のTE飽和フェノールを加えて遠心し、上層と下層に分離させた。 上層についてこの操作を2回繰り返した後、同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加え、同様の抽出操作を繰り返した。その後、上層に2倍量のエタノールを加え、ガラス棒でDNAを巻き取り回収し、染色体DNA標品を得た。 [実施例2] RrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子のPCR RrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子をPCRで増幅するためのプライマーを以下の方法で設計した。 図1はロドコッカス属細菌の産生する推定ヌクレアーゼのアミノ酸ホモロジー解析結果を示す。図1中でホモロジー解析を行ったヌクレアーゼとその由来は以下のとおりである。 A:HNH endonuclease family protein(Rhodococcus sp.JVH1) B:hypothetical protein W59_10709(Rhodococcus imtechensis RKJ300) C:hypothetical protein RHA1_ro03393(Rhodococcus jostii RHA1) D:hypothetical protein AK37_14191(Rhodococcus pyridinivorans AK37) 図1中、特に保存されている2つの領域を選んで配列番号5及び配列番号6のデジェネレイトプライマーを設計し、実施例1で調製したJ1菌ゲノムDNAを鋳型としてデジェネレイトPCRを以下の条件で実施した。その結果、約280bのバンドの増幅が確認された。反応液組成 鋳型DNA(J1菌染色体DNA,実施例1) 1μL 10×Ex Buffer(タカラバイオ社) 10μL 150μMプライマーDG−01(配列番号5) 1μL 150μMプライマーDG−02(配列番号6) 1μL 2.5mM dNTP 8μL DMSO 10μL 滅菌水 18μL ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社) 1μL 総量 50μL温度サイクル:94℃:30秒、65℃:30秒及び72℃:1分の反応を30サイクルプライマーDG−01:5’−GGIAG(A/G)TGCTT(A/G)TGGTG(C/T)GGIAGG−3’(配列番号5)DG−02:5’−CCT(T/C)AACTGICCGCT(T/C)AAGTA−3’(配列番号6)。 次に、増幅された配列のダイレクトシークエンシングをPCRで使用したプライマーを用いて実施した。その結果、配列番号7に示す配列が得られ、ホモロジー検索の結果、前述のエンドヌクレアーゼとの相同性が認められた。 [実施例3] RrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子のクローニング(1)ゲノミックサザンハイブリダイゼーション ApaLI、BamHI、ClaI、Eco52I、EcoT14I、KpnI、MluI、NcoI、NotI、PvuII、SalI、XbaIそれぞれで消化したJ1菌ゲノムDNAに対し、後述の方法で調製したRrhJ1IIIのプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、BamHIで消化した断片から、約1.6kbの単一シグナルが得られた。 なお、RrhJ1IIIのプローブは以下のようにして調製した。 実施例2で調製したPCR産物をGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて精製した。精製したPCR産物に対してAlkPhos Direct Labeling kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用い、添付のマニュアルにしたがってラベリングを行い、RrhJ1IIIのプローブとした。 (2)コロニーハイブリダイゼーション J1菌ゲノムDNAを制限酵素BamHIで分解して0.7%アガロースゲル電気泳動で分離し、ゲルからGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を使用して約1.6kbの断片を回収した。得られた断片は、pBluescriptII SK(+)ベクター(Stratagene社製)にDNA ligation kit<Mighty mix>(タカラバイオ社製)を用いて連結した。反応条件は以下の通りである。反応液組成: ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μL J1菌ゲノムDNA/BamHI切断断片 4μL pBluescriptII SK(+)/BamHI切断断片 1μL 総量 10μL反応:16℃、1時間。 上記ライゲーション産物の全量を、後述の方法で調製した大腸菌JM109株コンピテントセル200μLに加え、0℃で30分放置した。続いて、前述コンピテントセルに42℃で45秒間ヒートショックを与え、0℃で2分間冷却した。その後、SOC培地(20 mMグルコース、2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、1mM MgSO4、1mM MgCl2)を1mL添加し、37℃にて1時間振盪培養した。 培養後の培養液を200μLずつ、LB AIXプレート(100μg/Lアンピシリン、100μM IPTG、50μg/L X−galを含むLB寒天培地)に塗布し、37℃で一晩放置した。 プレート上に生育した白色の組換コロニーを新しいLB AIXプレートに、プレート1枚に付き94個、プレート10枚分単離した。各プレートにはインサートを含まないpBluescriptII SK(+)で形質転換したJM109株を2コロニー/プレート植菌した。 コロニー単離したプレートを37℃で一晩放置した後、Hybond−N+(GEヘルスケア バイオサイエンス社)膜にコロニーを写し取り、実施例3(1)で調製したRrhJ1IIIのプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションを行った。 検出されたコロニーを培養して得られた培養液を集菌後、QIAprep miniprep kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを回収した。キャピラリーDNAシーケンサーCEQ2000(ベックマン・コールター社製)を用いて、添付のマニュアルに従って、プラスミド中にクローニングされているゲノムDNA断片の塩基配列を解析した。 その結果、配列番号8に示される塩基配列が得られた。配列番号8に示される塩基配列中に、配列番号1に示す393bpのオープンリーディングフレーム(ORF1)、及び配列番号3に示す384bpのオープンリーディングフレーム(ORF2)を見出した。このORF1及びORF2のコードするアミノ酸配列は、図1中に示したA〜Dのロドコッカス属細菌由来エンドヌクレアーゼに対して68%〜94%の相同性を持っていることから、ORF1及びORF2はエンドヌクレアーゼをコードしていることが推定されたため、ORF1及びORF2のコードするエンドヌクレアーゼをそれぞれRrhJ1IIIヌクレアーゼ(1st)及びRrhJ1IIIヌクレアーゼ(2nd)と命名した。また、本実施例3(2)で得られたORF1及びORF2を含むプラスミドをpBRrhJ1IIIと命名した。 なお、大腸菌JM109株のコンピテントセルは以下の方法で調製した。 大腸菌 JM109株をLB培地1mLに接種し、37℃で5時間好気的に前培養した。次に、前培養液0.4mLをSOB培地40mL(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、1mM MgSO4、1mM MgCl2)に加え、18℃で20時間培養した。得られた培養物を遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液(20mM PIPES−KOH(pH6.0)、200mM KCl、10mM CaCl2、40mM MnCl2)を13mL加え、0℃で10分間放置し、再度遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)して上清を除いた。得られた大腸菌菌体を冷TF溶液3.2mLに懸濁し、0.22mLのジメチルスルホキシドを加え、0℃で10分間放置した後、液体窒素を用いて凍結したものをコンピテントセルとした。 [実施例4] 大腸菌組換体によるRrhJ1IIIヌクレアーゼの生産 (1)RrhJ1IIIヌクレアーゼ発現プラスミドの構築 RrhJ1IIIヌクレアーゼを得るために、実施例1で得られたJ1菌染色体DNAを鋳型として使用し、以下に示す反応液組成及びプライマーを用いてPCRを行った。この際、RrhJ1IIIヌクレアーゼをHis−tag融合タンパクとして発現させるため、RrhJ1IIIヌクレアーゼ遺伝子上流にSD配列とHis−tag配列を付加した。反応液組成 鋳型DNA(J1菌染色体DNA) 3μL 2×PrimeSTAR MaxDNA Polymerase(タカラバイオ社)25μL 10μMプライマーN(配列番号9) 2μL 10μMプライマーC(配列番号10) 2μL 総量 50μL温度サイクル:98℃:10秒、55℃:5秒及び72℃:5秒の反応を30サイクルプライマーN:5’−GCGAATTCAAGGAGATATAGATATGCGTCACGATCGGAGGATG−3’(配列番号9)C:5’−GTAAGCTTTCAATGGTGATGGTGATGATGTCCCCACGACGGTCGCCGCAACCGCC−3’(配列番号10)。 反応終了後、反応液5μLを1%アガロースゲルにおける電気泳動に供し、約0.4kbのPCR産物の検出を行った。PCR産物を確認した後、反応液からPCR産物をDNA/RNA extactionKit(VIOGENE社)で精製した。 得られたPCR産物を、制限酵素EcoRIとHindIIIで切断した。制限酵素処理を行ったPCR産物を1%アガロースゲルにおける電気泳動に供し、約0.5kb付近のバンドを回収した。回収したPCR産物をベクターpUC18のEcoRI−HindIII部位に連結し、プラスミドを作製した。得られたプラスミドをpRR03と名づけた。図2はプラスミドpRR03の構造を示す模式図である。 このプラスミドで大腸菌JM109を形質転換し、100μg/mLアンピシリン、1mM IPTG、50μg/mL X−galを含むLB寒天培地上でコロニーを形成させた。得られた白色のコロニーを100μg/mLアンピシリンを含むLB液体培地に植菌し、37℃で一晩培養した後Plasmid DNA Extraction Miniprep Syste(Viogene社)を使用してプラスミドを回収し、シークエンス解析を行って目的のDNA断片が挿入されていることを確認した。 (2)ヌクレアーゼ活性の確認 (1)で作製したRrhJ1IIIヌクレアーゼ発現ベクターを含む大腸菌組換体(JM109/pRR03)を、100μg/mLアンピシリンを含むLB液体培地10mLで37℃、5時間培養した後、1mLを100μg/mLアンピシリン、1mM IPTGを含むLB液体培地200mL×1本に植菌し、25℃、150rpm、20時間培養した。 培養液を遠心分離によって回収し、回収した菌体を破砕用緩衝液(組成:20 mM Potassium phosphate(pH7.4)、500 mM NaCl)に懸濁した後4℃で30分間超音波による破砕(Insonator(KUBOTA社)200W)を行った。破砕液を遠心分離し、得られた上清を無細胞抽出液とした。 無細胞抽出液からHisTrap カラム(Amersham Biosciences)を用いて目的タンパク質を部分精製し、0.5μg の基質DNA を含む20μl の反応液中、37℃で酵素反応を行った。酵素処理したプラスミドDNAをアガロースゲル電気泳動で分離した結果、閉環状pBR322 が開環状へ変化していることが示された(図3)。 本発明の新規ヌクレアーゼ及びその遺伝子は、遺伝子工学の分野で有用であり、鎖置換型恒温核酸増幅や、染色体DNAの蛍光標識による可視化、生体内遺伝子ターゲティングのための相同組換えを誘発するための一本鎖DNA切断反応などに利用できる。配列番号5:プライマーDG−01配列番号6:プライマーDG−02配列番号7:His−tagプライマーHIS配列番号8:Strept−tagプライマーSTREP配列番号9:転写開始シグナルプライマー(フォワード)NH配列番号10:転写開始シグナルプライマー(リバース)CS 以下の(A)、(B)又は(C)のタンパク質。(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含む、タンパク質(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列との相同性が80%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質 以下の(D)、(E)又は(F)のタンパク質。(D)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質(E)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含む、タンパク質(F)配列番号4に示されるアミノ酸配列と相同性が80%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質 以下の(a)から(d)のいずれかのDNAを含む遺伝子。(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA(b)配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNAとの相同性が80%以上の塩基配列からなるDNA(d)配列番号1に示される塩基配列に1又は数個の塩基の置換、欠失又は付加されたDNA 以下の(e)から(h)のいずれかのDNAを含む遺伝子。(e)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA(f)配列番号3に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA(g)配列番号3に示される塩基配列からなるDNAと相同性が80%以上の塩基配列からなるDNA(h)配列番号3に示される塩基配列に1又は数個の塩基の置換、欠失又は付加されたDNA 請求項3又は4記載の遺伝子を含む組換ベクター。 請求項5記載の組換ベクターを含む形質転換体。 請求項6記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からニッキング酵素活性を有するタンパク質を採取する工程を含む、タンパク質の製造方法。 請求項1又は2記載のニッキング酵素活性を有するタンパク質を、無細胞タンパク質合成法を用いて合成し、反応液より当該ニッキング酵素活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、タンパク質の製造方法。 【課題】遺伝子工学の分野で有用な新規なヌクレアーゼ、当該ヌクレアーゼをコードする遺伝子及び当該ヌクレアーゼの製造方法を提供する。【解決手段】以下の(A)、(B)又は(C)のタンパク質;(A)特定のアミノ酸配列を含むタンパク質、(B)特定のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつニッキング酵素活性を有するタンパク質、(C)特定のアミノ酸配列と相同性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつニッキング酵素活性を有するタンパク質。【選択図】なし配列表


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