生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_薄層クロマトプレート及びその使用方法
出願番号:2013095178
年次:2014
IPC分類:G01N 21/65


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竹井 弘之 齋藤 淳一郎 JP 2014215266 公開特許公報(A) 20141117 2013095178 20130430 薄層クロマトプレート及びその使用方法 学校法人 東洋大学 501061319 三好 秀和 100083806 高橋 俊一 100101247 竹井 弘之 齋藤 淳一郎 G01N 21/65 20060101AFI20141021BHJP JPG01N21/65 7 1 OL 10 2G043 2G043AA01 2G043EA03 2G043KA01 2G043KA09 本発明は、ラマン分光法等と組み合わせて用いることができる薄層クロマトプレート及びその使用方法に関する。 ラマン分光は分子の同定に極めて有効な手法であるが、異物や夾雑物を含むサンプルにおいては分析が困難であるといった問題点を抱えている。このため、あらかじめ薄層クロマトグラフィー、電気泳動、液相クロマトグラフィー等で分離してから分析することが必要である。 一方、従来の薄層クロマトグラフィーは、サンプルを展開して乾燥させた後に、サンプル自体の発色体もしくはゲル担体に含まれる蛍光色素の消光によって、分離後のスポットの位置を確認するものである。 薄層クロマトグラフィーとラマン分光法を併用する場合、分離の最中もしくは直後に、そのままの状態で直接ラマン分光により分析できれば望ましいが、ラマン信号の散乱断面積は極めて低いことから、ラマン信号を感度良く測定することは、非常に困難である。 そこで、表面増強ラマン分光法(SERS)による信号増強と組み合わせることが検討されてきており、例えば、図9(a)に示されているように、サンプルをTLC基板(薄層クロマト基板)81で分離してから、表面増強ラマン分光に有効とされている銀ナノ粒子からなる貴金属コロイド82を滴下して、図9(b)に示すように、ラマン分光測定装置83で信号を測定する提案がされている(例えば、非特許文献1参照)。D. Li et al. Facile on-site detection of substituted aromatic pollutants in water using thin layer chromatography combined with surface-enhanced Raman spectroscopy, Environ. Sci. Technol. 2011, 45, 4046-4052. 上記従来の方法においては、サンプルの分離後に貴金属コロイドを添加しているので、銀ナノ粒子の吸着密度は不均一となりラマン信号は均一になりにくい。また、球状のコロイドを添加しているので、コロイドが分散されてしまい、増強効果が弱くなる。 さらに、上記のように、サンプルの展開後に貴金属コロイドを添加する方法では、貴金属コロイドの添加時にサンプルが再度展開してしまい、正確な測定が行えないという問題がある。 本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、クロマトグラフィーで分離されたサンプルの化学構造の分析に必要なラマン信号を、サンプルに影響を与えず、高感度で得られる薄層クロマトプレート及びその使用方法を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、本発明の薄層クロマトプレートは、貴金属ナノ粒子のサイズよりも小さい間隔で前記貴金属ナノ粒子が配置された表面増強層と試料を展開するための分離層が積層された積層体が、基板上に形成されたことを主要な特徴とする。 また、本発明の薄層クロマトプレートの使用方法は、基板と、試料を展開するための分離層と、貴金属ナノ粒子のサイズよりも小さい間隔で前記貴金属ナノ粒子が配置された表面増強層とが積層された積層体を含む薄層クロマトプレートを用いて、試料の展開中又は展開の終了時に、前記貴金属ナノ粒子と前記試料との相互作用による表面増強ラマン効果により、分子の化学構造に関する情報を得ることを主要な特徴とする。 また、本発明の薄層クロマトプレートの使用方法は、第1の基板上に試料を展開するための分離層が積層された第1の積層体において試料の展開中又は展開の終了時に、第2の基板上に貴金属ナノ粒子のサイズよりも小さい間隔で前記貴金属ナノ粒子が配置された表面増強層が積層された第2の積層体の前記表面増強層を前記分離層に接触させてラマン散乱光を測定することを特徴とする。 本発明によれば、薄層クロマトプレートにおいて貴金属ナノ粒子が高密度で配置された表面増強層と分離層が積層されているので、試料の展開中又は展開終了時に、分離されたスポット中に存在する分子の化学構造に関する情報を、試料に影響を与えず、そのままの状態の試料から高感度に得ることができる。また、本発明により、例えば、環境モニタリング等で採取される夾雑物や異物を含むサンプルにおいても、分離および分析を簡便に行うことができる。本発明の薄層クロマトプレートの構造を示す断面図である。本発明の薄層クロマトプレートの構造を示す断面図である。サンプルの展開方法と測定方法を示す図である。薄層クロマトプレートの表面増強層によるラマン信号の増強効果を示す図である。薄層クロマトプレートにより得られたMBとBPEのラマンスペクトルを示す図である。薄層クロマトプレートにより分離された夾雑物からのラマンスペクトルを示す図である。薄層クロマトプレートの他の構成例を示す図である。薄層クロマトプレートの一部の領域に貴金属ナノ粒子が形成された構成例を示す図である。従来における薄層クロマトグラフィーと表面増強ラマン分光を組み合わせた測定方法を示す図である。 以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。構造に関する図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。 本発明の薄層クロマトプレートは、図1に示されている様に、複数の貴金属ナノ粒子からなる表面増強層2を組み込んでいる。図1の実施形態では、基板1の表面に貴金属ナノ粒子5からなる表面増強層2を積層し、表面増強層2の表面に分離層3を積層した。 このように、表面増強層2と分離層3が接して積層された積層体が基板1上に形成される。図1では、積層体の表面増強層2側が基板1の表面上に接するように配置されているが、後述するように、積層体の分離層3側が基板1の表面上に接するように配置しても良い。 また、貴金属ナノ粒子5は、基礎となるナノ粒子2b上に帽子形状の貴金属層2aが被覆されている。貴金属ナノ粒子5は、図1(b)の例では、隣り合う貴金属層2aが接触するように2次元状又は1次元状に配列されており、これら配列された複数の貴金属ナノ粒子5により表面増強層2が構成される。 基板1は、ガラス、石英、シリコン、プラスティック等の材料が用いられる。また、ナノ粒子2bには、シリカ、ポリスチレン、酸化チタン等の誘電体によるナノオーダーの粒径の粒子が用いられる。貴金属層2aは、金や銀、白金等の貴金属が用いられる。 分離層3は、固定相とも呼ばれるもので、従来の薄層クロマトグラフィーと同じ材料が用いられる。例えば、分離層3は、シリカゲル、アルミナ、セルロース等により構成される。 具体的には、次の方法により形成することができる。例えば、基板1としてスライドガラスを用い、表面増強層2に配置される貴金属ナノ粒子5の基礎となるナノ粒子2bとしてシリカナノ粒子を用いた場合を説明する。 スライドガラス表面を3−アミノプロピルメトキシシラン等で処理し、スライドガラス表面のシラノール基とシリカナノ粒子表面の水酸基間の結合により、粒径20nmから1000nmのシリカナノ粒子をスライドガラス表面に吸着する。 次に、真空蒸着ないしはスパッタリングにより厚さ20nmから200nmの金ないしは銀を堆積させることにより、シリカナノ粒子の上に帽子状の貴金属層2aを形成する。この方法により、基板1表面に強固に結合された単層の貴金属ナノ粒子5からなる表面増強層2が得られる。これらのナノ粒子はお互いに高密度で接していることから、増強効果に有効であるホットスポットが多く形成され、増強に有効である。 表面増強層2を形成後、吸着剤、担体、充填剤などと呼ばれる材料を表面増強層2の表面にコーティングして乾燥させ、分離層3を形成する。 上記のように、ナノ粒子2bを単層で均一の厚さに形成することにより、図1(b)に示される構造が得られる。試料を分離層3に添加すると、試料のサンプル分子10は、分離層3を破線の矢印で示す方向に移動し、試料中のサンプル分子10が、分離層粒子3aによる吸着作用又は分配作用等によって、展開、分離される。このサンプル分子10は、表面増強層2に存在する貴金属ナノ粒子5と接触するので、増強されたラマン信号の測定が可能となる。 図1(b)に示されるように、上記の製造方法では、隣接する貴金属層2aが接するように、貴金属ナノ粒子5を最密に配置することができる。しかし、最密に配置しなくても、図2に示されるように、高密に配置した構造であっても良い。図2は、表面増強層2を構成する貴金属ナノ粒子5は基板1上に吸着されているのは、図1と同じである。しかし、隣の貴金属層2a同士は接触しておらず、少し隙間が開いていている。 図2では、隣り合う貴金属ナノ粒子5の間隔tが、貴金属ナノ粒子5のサイズDよりも小さくなるように配置されている。ここで、サイズDは、帽子状の貴金属層2aの横方向の長さである。 (実施例) 基板1として、スライドガラス等の平坦のガラス基板を、ナノ粒子2bとしてシリカ粒子を用意する。ガラス基板の表面にシリカ粒子を単層となるように吸着させるため、3−アミノプロピルメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の水溶液ないしはエタノールもしくはメタノール溶液に、1分から1時間浸漬する。次に精製水で洗浄し、10分ほど乾燥させることにより、ガラス表面上にシラノール基を形成させる。 次に、シリカのナノ粒子懸濁液を加え、1分から10分ほど静置することにより、シリカナノ粒子の単層が形成される。最後に、金、銀等の貴金属を真空蒸着することにより、表面増強ラマン分光に適した帽子状の貴金属層2aが積層された貴金属ナノ粒子5が形成され、表面増強層2が形成される。 分離層3の形成については、ガラス基板上に薄層を形成する従来の方法を用いる。例えば、メルク社のTLC−シリカゲル(GF60254)を蒸留水に懸濁して5mg/mlの濃度にし、表面増強層2上に塗布し、室温で3時間乾燥、もしくはホットプレートで加熱して乾燥する。 以上により、図1の薄層クロマトプレートが完成する。測定に際しては、図3(a)に示すように、薄層クロマトプレートに試料20を滴下し、展開用の有機溶媒22を含むシャーレ21に薄層クロマトプレートの末端を漬け、密閉された容器23中に静置する。そうすると、試料20が矢印11の方向に展開される。次に、図3(b)に示すように、基板1の下方から励起光31を照射すると、表面増強層2の貴金属ナノ粒子5によって増強されたラマン散乱光32が展開された試料から放射され、高感度のラマン信号が得られる。なお、ラマン信号の測定は、試料の展開中もしくは展開終了後に測定してもよい。 図4には、薄層クロマトプレートに滴下されたトランス−1、2−ビス(4−ピリジル)エチレン(BPE)のラマンスペクトルを示す。図4(a)は表面増強層を有していない従来の薄層クロマトグラフィーから得られたスペクトルであり、図4(b)は表面増強層を有する本発明における薄層クロマトプレートを用いたスペクトルである。 励起波長は785nm(オーシャンオプティクスレーザー785nm)であり、同社製のUSB4000にて測定した。図4(a)及び(b)ともに、縦軸はカウント値、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。図4(a)では、領域Aにラマン信号を確認することはできないが、図4(b)では、領域Bにラマン信号のピークを確認することができる。このように、本発明の薄層クロマトプレートは、信号増強に有効であることがわかる。 次は、本発明の薄層クロマトプレートが分離能および増強能を同時に備えていることを示す。図5は、BPEとメチレンブルー(MB)をそれぞれ単独で測定したラマンスペクトルを示す。図5(a)は、メチレンブルー(MB)の分子構造式を示し、図5(b)は本発明の薄層クロマトプレートにMBを滴下して測定したラマンスペクトルを示す。一方、図5(c)は、BPEの分子構造式を示し、図5(d)は本発明の薄層クロマトプレートにBPEを滴下して測定したラマンスペクトルを示す。また、図5(b)及び(d)ともに、縦軸はカウント値、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す。 図6は、本発明の薄層クロマトプレートで、BPEとMBの混合物を分離した後に測定したラマンスペクトルを示している。図6(a)は、BPE(0.1ミリモル)とMB(1ミリモル)を混合して、薄層クロマトプレートに滴下し、15分間展開した後の状態を示す写真である。展開溶媒はメタノールとトルエンとの割合が6:4となるように混合した。 BPEとMBの混合物は、原点Xに滴下しており、展開後には、スポットY、スポットZに分離された物質が残っている。図6(a)に示されるように、スポットYの中心からスポットZの中心までの距離は1cmである。図6(b)は分離層で展開する前の混合物のラマンスペクトルである。なお、図6(b)〜(e)は、いずれも、縦軸はカウント値、横軸はラマンシフト(cm−1)を示す 図6(c)〜(d)は、15分間展開した後に得られたラマンスペクトルを示す。図6(a)において混合物が滴下された原点Xのラマンスペクトルが図6(c)に示されている。図6(a)のスポットZのラマンスペクトルが図6(d)、図6(a)のスポットYのラマンスペクトルが図6(e)である。 図6(a)の展開後の原点Xから最も遠い位置に展開されたスポットYに対応する図6(d)のラマンスペクトルでは、図5(d)に示されるBPEのラマンスペクトルのみが単独で観察できるので、混合物が分離されて夾雑物を含むサンプル中の被検体を検出できたことがわかる。 薄層クロマトプレートにおいて表面増強層を基板上に形成する以外の方法を図7に示す。図7(a)は、図1で説明したのと同様、基板1上に表面増強層2を形成し、表面増強層2上に分離層3を設けたものである。図3(b)で説明したように、基板1側から励起光を照射するが、基板1の高さは一定なので、励起光が基板1から表面増強層2に到達するまでの距離は、励起光の入射位置によって変わらず、試料と貴金属ナノ粒子との相互作用による表面増強効果による測定を正確に行うことができる。 図7(b)は、基板1上に分離層3を形成し、分離層3上に表面増強層2を形成している。このように、表面増強層2と分離層3が積層された積層体が基板1上に形成されているが、積層体の分離層3側が基板1の表面上に接するように配置される。 図7(b)の構造では、基板1の上方から励起光を照射してラマン散乱光の測定を行う。図7(b)の構造は、図7(a)の構造ほど、ラマン信号は強くならないが、既に調製された市販の薄層クロマトグラフィーを構成材料として利用できる利点がある。 また、図7(c)に示されるように、基板15上に分離層16が積層された従来の薄層クロマトグラフィーで試料を展開中又は展開した後に、基板8上に表面増強層7が形成された積層体の表面増強層7を、従来の薄層クロマトグラフィーの分離層16に密着させて測定することもできる。手間が増えるが、市販の薄層クロマトグラフィーがそのまま利用できる利点がある。なお、表面増強層7は、図1、2で述べたのと同様、貴金属ナノ粒子5が高密度に配置された層で、貴金属ナノ粒子5は、基礎となるナノ粒子2b上に帽子形状の貴金属層2aが被覆された構造となっている。 ところで、薄層クロマトプレートで展開する分子が貴金属と特異的に反応することが懸念される場合には、貴金属ナノ粒子5の吸着面積を極力抑制して展開に対する悪影響を抑制することも可能である。 例えば、図8のように、スポット41から実線の矢印で示される試料の展開方向に対して、表面増強層2の一部の領域又は薄層クロマトプレートの一部の領域に貴金属ナノ粒子5を配置し、試料の展開領域と重なるよう構成することができる。 図8(a)では、貴金属ナノ粒子5を小さな円形状の領域42に形成している。図8(b)は、展開方向に沿って細い線状の領域43を、図8(c)は、展開方向に対して直角方向に矩形状の領域44を形成している。さらに、図8(d)のように、展開方向に対して斜め方向の矩形状の領域45を形成しても良い。 本発明の薄層クロマトプレート及びその使用方法は、ラマン分光法を用いて、異物や夾雑物を含むサンプルを分析できるので、例えば、環境モニタリング、品質管理等の分野に適用することができる。1 基板2 表面増強層2a 貴金属層2b ナノ粒子3 分離層3a 分離層粒子5 貴金属ナノ粒子7 表面増強層8 基板10 サンプル分子15 基板16 分離層 貴金属ナノ粒子のサイズよりも小さい間隔で前記貴金属ナノ粒子が配置された表面増強層と試料を展開するための分離層が積層された積層体が、基板上に形成されたことを特徴とする薄層クロマトプレート。 前記貴金属ナノ粒子は、誘電体ナノ粒子の表面を貴金属で被覆した構造であることを特徴とする請求項1に記載の薄層クロマトプレート。 前記誘電体ナノ粒子における前記貴金属の被覆は、真空蒸着又はスパッタリングによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の薄層クロマトプレート。 前記表面増強層において前記貴金属ナノ粒子が配置される領域は、前記試料の展開領域と重なるように、前記薄層クロマトプレートの一部の領域に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の薄層クロマトプレート。 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の薄層クロマトプレートを用いて、試料の展開中又は展開の終了時に、前記貴金属ナノ粒子と前記試料との相互作用による表面増強ラマン効果により、分子の化学構造に関する情報を得ることを特徴とする薄層クロマトプレートの使用方法。 前記基板側から励起光を照射してラマン散乱光を測定することを特徴とする請求項5に記載の薄層クロマトプレートの使用方法。 第1の基板上に試料を展開するための分離層が積層された第1の積層体において試料の展開中又は展開の終了時に、第2の基板上に貴金属ナノ粒子のサイズよりも小さい間隔で前記貴金属ナノ粒子が配置された表面増強層が積層された第2の積層体の前記表面増強層を前記分離層に接触させてラマン散乱光を測定することを特徴とする薄層クロマトプレートの使用方法。 【課題】クロマトグラフィーで分離されたサンプルの化学構造の分析に必要なラマン信号を、サンプルに影響を与えず、高感度で得られる薄層クロマトプレート及びその使用方法を提供する。【解決手段】表面増強層2と分離層3が積層された積層体が基板1上に形成される。例えば、基板1の表面に貴金属ナノ粒子5からなる表面増強層2が形成され、表面増強層2の表面に分離層3が形成される。これにより、サンプルに影響を与えず、ラマン信号を高感度で得られる。【選択図】 図1


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