タイトル: | 公開特許公報(A)_欠陥検査装置及び欠陥検査方法 |
出願番号: | 2013086422 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 23/225 |
村川 勉 米倉 勲 JP 2014211314 公開特許公報(A) 20141113 2013086422 20130417 欠陥検査装置及び欠陥検査方法 株式会社アドバンテスト 390005175 凸版印刷株式会社 000003193 岡本 啓三 100091672 村川 勉 米倉 勲 G01N 23/225 20060101AFI20141017BHJP JPG01N23/225 12 1 OL 21 2G001 2G001AA03 2G001BA05 2G001BA07 2G001CA03 2G001GA01 2G001GA06 2G001HA07 2G001JA02 2G001JA07 2G001KA03 2G001KA05 2G001LA11 本発明は、試料表面の二次電子像に基づいて試料表面を検査する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。 半導体装置の微細化にともなって、波長の短い極端紫外光(EUV:Extreme Ultraviolet)を用いたEUV露光技術の開発が進められている。このEUV露光に用いられるEUVマスクは光反射型のマスクであり、光を反射する反射部と光を吸収する吸収部とによりパターンを形成している。 このEUVマスクの反射部の表面に数nm程度の凹凸による欠陥が存在すると、その部分で極端紫外光の位相がずれてしまうため、半導体ウェハ上に転写されるパターンの寸法や形状が変化するおそれがある。 このような微小な凹凸は、通常の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察ではノイズに埋もれてしまい検出が困難である。そのため、EUVマスクの検査には、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic force Microscope)が用いられている。特開2012−112927号公報 しかし、原子間力顕微鏡による観察は、プローブを機械的に走査させることから試料の観察に時間がかかるという問題がある。 そこで、本発明は微小な凹凸による欠陥の検査に好適な欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供することを目的とする。 下記開示の一観点によれば、電子ビームを試料の表面上で走査させる電子走査部と、前記電子ビームの光軸の周りに複数配置され、前記電子ビームの走査によって試料表面から放出された電子を検出する検出器と、前記検出器の検出信号に基づいて、前記試料の表面の画像データを生成する信号処理部と、前記画像データに基づいて前記試料の表面の凹凸による欠陥を検出する解析部と、前記試料の種類に応じて前記電子ビームの走査速度を制御する制御部と、を備えた欠陥検査装置が提供される。 上記観点の欠陥検査装置において、試料が導電材料によって形成された反射型のマスクの場合には電子ビームの走査速度を、試料が絶縁材料よりなる基板上にパターンが形成された透過型のマスクである場合の走査速度よりも遅くしても良い。 また、別の一観点によれば、試料表面に電子ビームを走査させる電子走査部と、前記電子ビームの光軸の周りに複数配置され前記電子ビームの照射によって試料表面から放出された電子を検出する検出器と、前記電子走査部を制御する制御部と、を備えた欠陥検査装置を用いた欠陥検査方法であって、前記試料の種類に応じて電子ビームの走査速度を決定するステップと、前記電子ビームを走査させ、前記検出器の検出信号に基づいて前記試料表面を異なる方向から写した複数の画像データを取得するステップと、前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの画像データの差分をとって差分画像を生成するステップと、前記差分画像から差分プロファイルを抽出し、該差分プロファイルに基づいて前記試料表面の凹凸を検出するステップと、を有する欠陥検査方法が提供される。 上記観点の欠陥検査装置及び欠陥検査方法では、試料の種類に応じて電子ビームの走査速度を制御する。例えば、試料が導電材料によって形成され、チャージアップしにくい反射型のマスクの場合には、走査速度を遅くすることでノイズが抑制される。 これにより、反射型のマスクの表面に形成された微小な凹凸を検出できる。図1は、実施形態に係る走査型電子顕微鏡(欠陥検査装置)のブロック図である。図2は、図1の検出器の配置を示す斜視図である。図3(a)は、透過型のマスクの構造を示す断面図であり、図3(b)はEUV露光に用いられる反射型のマスクの構造を示す断面図である。図4(a)は反射型マスクの表面のSEM画像(全加算画像)を示す図であり、図4(b)は図4(a)のSEM画像の生成に用いた各検出器のSEM画像を示す図であり、図4(c)は左画像から右画像の差分をとった差分画像を示す図である。図5は、低い凸部が形成された試料表面のSEM画像(差分画像)を示す図である。図6(a)は、高さが2nmの凸部のラインプロファイルの一例を示す図であり、図6(b)は高さが1nmの凸部のラインプロファイルの一例を示す図である。図7は、電子ビームの走査速度を低下させて取得した試料表面のSEM画像(差分画像)を示す図である。図8(a)、(b)は、電子ビームの走査速度を低下させて取得したSEM画像から求めたラインプロファイルを示す図であり、図8(a)は高さが2nmの凸部のラインプロファイルを示す図であり、図8(b)は高さが1nmの凸部のラインプロファイルを示す図である。図9は実施形態に係る欠陥検査方法を示すフローチャートである。図10(a)〜(c)は積分プロファイルの算出方法を示す図である。図11は、図10(b)の積分プロファイルから図10(c)の積分プロファイルを減算して求めた積分プロファイルを示す図である。図12は、補正係数の決定方法を示すフローチャートである。図13は、欠陥のない部分のSEM画像から平均面粗さの求め方を示す図である。図14は、積分プロファイルからパターン幅及びパターン高さ(深さ)を求める方法を示す図である。図15(a)、(b)は、通常スキャン及びスロースキャンで検出可能な欠陥の高さ(深さ)を調べた結果を示すグラフである。 図1は、実施形態に係る欠陥検査装置のブロック図である。 図1に示す欠陥検査装置(走査型電子顕微鏡)100は、電子ビーム3aを照射する電子走査部1と、試料8を保持するチャンバー2と、電子走査部1の各部を制御する制御部10とを有する。 このうち、電子走査部1は電子銃3を備え、この電子銃3から所定の加速電圧で電子が放出される。電子銃3から放出された電子はコンデンサレンズ4で収束されて1次電子ビーム3aとなり、その電子ビーム3aは偏向コイル5で偏向された後、対物レンズ6によって焦点合わせされて試料8の表面に照射される。 電子走査部1は、偏向コイル5で電子ビーム3aを偏向させることで電子ビーム3aを試料8の表面の観察領域内で走査させる。 一次電子ビーム3aの照射によって、試料8の表面からは二次電子が放出され、放出された二次電子は試料ステージ7の上方に設けられた複数の検出器9a〜9dによって検出される。 図2は、検出器9a〜9dの配置を示す斜視図である。 ここでは、図2に示すように、4台の検出器9a〜9dが電子ビーム3aの光軸の周りに互いに均等な角度(90°)を開けて配置されている。特に限定されないが、ここでは各検出器9a〜9dが矩形状の観察領域8aの対角方向にそれぞれ配置されているものとする。なお、検出器の数は特に4台に限定されるものではない。 各検出器9a〜9dは、検出した二次電子の量を、それぞれ検出信号ch1〜ch4として信号処理部11(図1参照)に出力する。 図1の信号処理部11は、検出器9a〜9dが検出した二次電子の量をAD変換器でデジタル量に変換する。そして、二次電子の量と偏向コイル5による一次電子ビーム3aの偏向位置とを対応付けて2次元配列上に並べて画像データ(SEM画像)を生成する。 信号処理部11は、異なる方向に配置された検出器9a〜9dの検出信号ch1〜ch4に基づく画像をそれぞれ生成する。これらの画像は各検出器9a〜9dの方向に放出された二次電子の量を反映しており、試料7の表面に形成されたパターンのエッジの向きによって輝度値が異なる。 すなわち、検出器の方に向いたエッジの輝度値はより高い輝度で表示され、検出器から離れた方向を向いたエッジの輝度値はより低い輝度で表示される。 また、信号処理部11は、隣接する検出器の信号同士を加算することで、各検出器9a〜9bの中間方向の画像データ(SEM画像)を生成する。例えば、図2の検出信号ch1と検出信号ch2とを等しい重み付けで加算することで、検出器9aと検出器9bの中間方向(図2の左方向)に配置された検出器の検出信号に基づく画像データを仮想的に生成する。同様にして、信号処理部11は図2の観察領域8aの上、右、下の各方向から写した画像データを生成する。 さらに、信号処理部11は、全ての検出信号ch1〜ch4を加算して全加算画像を生成する。この全加算画像は、検出器を1つのみ備えた一般的な走査型電子顕微鏡によるSEM画像と同様の画像であり、エッジの向きによる輝度の差がほとんど現れない。 信号処理部11で生成された画像データは、図1に示す記憶部14に格納されるとともに、一部の画像は表示部13で表示される。 制御部10は、電子走査部1に制御信号を送出し、電子走査部1の電子ビーム3aの加速電圧、電流値及び走査速度を制御する。 制御部10には、信号処理部11に加えて、解析部12が設けられている。 解析部12は、観察領域8aを様々な方向から写した画像データを抽出し、その画像データから差分画像を生成する。また、差分画像から所定の方向の輝度値の分布(ラインプロファイル)を求め、そのラインプロファイルを積分して試料表面の高さを反映した積分プロファイルを求める。そして、その積分プロファイルに基づいて観察領域8aの凹凸(欠陥)の検出並びに欠陥の幅及び高さ(深さ)の測定を行う。 次に、図1の欠陥検査装置100を用いたフォトリソグラフィー用のマスクの観察方法について説明する。 図3(a)は、透過型マスクの断面図である。 図3(a)に示す透過型マスク50は、石英ガラス等の透明な基板51の上に、クロムなどよりなるパターン52を備えている。このマスクは、可視光や紫外光を用いた露光に用いられるものであり、パターン52が形成されていない部分の基板51を通過した紫外光により電子回路のパターンを転写する。 このような透過型マスク50を欠陥検査装置100を用いて観察する場合には、絶縁材料よりなる基板51の表面の帯電を防ぐために電子ビームの照射量を抑制する必要がある。そのため、透過型マスク50の観察では、電子ビームを例えば20MHz程度と比較的高速に走査させている。 一方、図3(b)はEUV露光に用いられる反射型マスクの断面図である。 図3(b)のEUV露光に用いられる反射型マスク60は、基板61の上に複数層の反射膜62aが積層されてなる多層反射膜62を備え、その多層反射膜62の上に極端紫外光を吸収する材料よりなるパターン63が形成されている。 多層反射膜62を構成する各反射膜62aは、極端紫外光の波長(例えば、13nm程度)の数分の1程度の薄い膜であり、基板表面の凹部64や異物65、67があると、その上方に凹状のピット欠陥64aや凸状のバンプ欠陥65a、67aが残ってしまう。 高さ(又は深さ)が数nm程度の微小なピット欠陥64aやバンプ欠陥65a、67aがあると、部分で反射された極端紫外光の位相がずれてしまい、転写されたパターンの変形や線幅の誤差が生じるおそれがある。 そこで、本実施形態では、パターンの立体形状の測定が可能な図1の欠陥検査装置100を用いて反射型マスクの欠陥の検査を行う。 図4(a)は反射型マスクの表面のSEM画像(全加算画像)を示す図であり、図4(b)は図4(a)のSEM画像の生成に用いた各検出器のSEM画像を示す図であり、図4(c)は左画像から右画像の差分をとった差分画像を示す図である。 図4(a)に示すSEM画像は、各検出器9a〜9dの検出信号を加算した全加算画像であり、一つの検出器を備えた一般的な走査型電子顕微鏡で得られるSEM画像と同様の画像である。図示のSEM画像に対応する部分には深さが14nm程度の凹状のピット欠陥が存在しているが、SEM画像にはピット欠陥は現れていない。この結果から、一般的な走査型電子顕微鏡では反射型マスクの微細な欠陥の検出が困難であることがわかる。 図4(b)は、欠陥検査装置100の各検出器9a〜9dの検出信号ch1〜ch4によるSEM画像を示す図である。 図4(b)に示すSEM画像では、ピット欠陥の段差部分で輝度値の変化が現れている。そこで、ピット欠陥の凹凸を更に強調した画像を得るべく、検出信号ch1と検出信号ch2とを加算して得られる左画像と、検出信号ch3と検出信号ch4とを加算して得られる右画像との差分をとって差分画像を求めた。 図4(c)は、左画像と右画像との差分をとった差分画像を示す図である。 図4(c)に示すように、差分画像では、全加算画像には現れないピット欠陥が現れる。このように、欠陥検査装置100により求めた差分画像では、微小な凹凸による欠陥の検出に好適である。 そこで、図1の欠陥検査装置100を用いてさらに薄い欠陥の観察を行った。 図5は、凸状のバンプ欠陥が形成された試料表面の差分画像を示す図である。 ここでは、高さが約2nmの凸状のバンプ欠陥を有する試料及び高さが約1nmの凸状のバンプ欠陥を有する試料について観察を行った。なお、図5の差分画像は、電子ビームの加速電圧を900V、電流値を5pA、画像解像度を1024pixel、平均数回数を64、スキャン速度を20MHzで撮像したSEM画像から生成した。 図5に示すように、高さが約2nmのバンプ欠陥については、差分画像でもバンプ欠陥が現れない結果となった。そこで、差分画像からバンプ欠陥を横切る領域L1のラインプロファイルを抽出した。 図6(a)は、高さが2nmの凸部を横切るラインプロファイルの一例を示す図であり、図6(b)は高さが1nmの凸部を横切るラインプロファイルの一例を示す図である。 図6(a)及び図6(b)に示すように、欠陥の高さ又は深さが2nm程度と小さくなると、欠陥の段差部分のピークがノイズ成分に埋もれてしまい、欠陥の検出が困難になる。 そこで、本実施形態では、EUVマスク60の多層反射膜62が金属等の導電材料よりなり、チャージアップを起こしにくいことに着目して、電子ビームの走査速度を低下させて試料表面の観察を行うこととした。 図7は、電子ビームの走査速度を低下させて取得した試料表面のSEM画像(差分画像)を示す図である。なお、図7の差分画像は、電子ビームの加速電圧が900V、電流値が5pA、画像解像度が1024pixel、平均回数1回、及びスキャン速度を7kHzの条件で撮像したSEM画像に基づく。 図7に示すように、電子ビームの走査速度を図5の測定での走査速度の1/1000以下にすると、差分画像のノイズが減少し、凸状のバンプ欠陥の段差部分の輝度の変化が現れる。そこで、バンプ欠陥を含む領域L2のラインプロファイルを抽出した。 図8(a)は、高さが約2nmのバンプ欠陥のラインプロファイルを示す図であり、図8(b)は高さが約1nmのバンプ欠陥のラインプロファイルを示す図である。 図8(a)及び図8(b)に示すように、電子ビームの走査速度を7kHzに低下させた場合には、図6(a)及び図6(b)に比べてノイズ成分が減少し、1〜2nmのバンプ欠陥を検出できる。 このように、本実施形態では、EUVマスクが導電材料で覆われており照射される電子数が増大しても電荷を効率よく外部に除去できることに着目し、電子ビームのスキャン速度を7kHzとした。これにより、試料表面に照射される電子数が増加して、凹凸による欠陥のコントラストが改善され、微小な凹凸による欠陥を検出できる。 なお、本実施形態による観察方法はEUVマスクの観察に限定されるものではなく導電材料によって覆われた試料表面の微小な凹凸の観察にも用いることができる。 以下、本実施形態の欠陥検査方法による凹凸による欠陥の検出から欠陥の幅及び深さの測定の手順について説明する。 図9は、実施形態に係る欠陥検査方法を示すフローチャートである。 まず、図9のステップS10において、欠陥検査装置100の制御部10(図1参照)は、電子ビームの加速電圧、電流値、走査速度の初期設定を行う。 本実施形態では、微細な凹凸を検出するために、加速電圧はできるだけ低いことが好ましい。例えば、加速電圧を1kV以下とすると好適である。また、ノイズ成分を抑制する観点から、導電材料によって覆われた試料の場合には、電子ビームの照射量を増加させることが好ましい。例えば、電子ビームの電流値は5pA以上とし、電子ビームの走査速度は20kHz以下とすると好適である。 次に、ステップS20において、欠陥検査装置100により試料表面のSEM画像を取得する。 ここでは、信号処理部11は各検出器9a〜9dからの検出信号ch1〜ch4のそれぞれのSEM画像と、検出信号ch1及びch2を加算した左画像と、検出信号ch3及びch4を加算した右画像とを生成する。 次に、ステップS30において、欠陥検査装置100の解析部12が左画像と右画像との差分をとって差分画像を生成する。この差分画像の輝度は、試料表面の勾配に応じた値となるため、凹凸の段差の一方が平坦な部分よりも高い輝度で現れ、段差の他方の部分では平坦な部分よりも低い輝度で暗く現れる。 次に、ステップS40において、解析部12が差分画像の輝度値が所定の閾値以上に変化する部分の有無に基づいて凹凸(欠陥)の位置を検出する。 次に、ステップS50において、解析部12が差分画像のラインプロファイル(差分プロファイル)を抽出する。なお、差分プロファイルは差分をとった方向と平行なラインにそって抽出すると好適である。 次いで、その差分プロファイルを積算してゆくことで積算値の分布である積分プロファイルを求める。このように、試料表面の傾斜の分布を表す差分プロファイルを積算した積分プロファイルは試料表面のパターンや欠陥の高さ分布を再現したものとなる。 ただし、本実施形態では電子ビームの走査速度を低速とするため、照射される電子量が多く、走査を行なっている間に試料表面の電位が変化しやすい傾向がある。そのため、取得したSEM画像(差分画像)に輝度ムラが生じてしまい、画像の位置によって輝度値の変化してしまう現象が見られる。 その結果、差分信号を積算した積分プロファイルに大きな歪が生じ、実際のパターンや欠陥の形状とは全く異なってしまうという不具合が生じる場合がある。 そこで、本実施形態では以下の方法により積分プロファイルの補正を行う。 図10(a)〜(c)は積分プロファイルの算出方法を示す図である。 図10(a)は電子ビームを低速で走査させて取得したSEM画像から生成した差分画像を示している。図示のように、差分画像の輝度ムラにより左端側で輝度が高く(明るく)なっており、右端側で輝度が低く(暗く)なっている。このように、帯電による輝度ムラの分布は電子ビームの走査方向であるX方向にのみ変化し、電子ビームの操作方向に垂直な方向であるY方向にはほぼ一定である。 そこで、まず図10(a)の差分画像において、欠陥を横切る領域L3(欠陥部)での輝度値のラインプロファイルを抽出する。そして、このラインプロファイルを積算してゆくことで欠陥部の積分プロファイルを求める。 図10(b)は、図10(a)の欠陥部(領域L3)の積分プロファイルを示す図である。図示のように、欠陥部の積分プロファイルは全体として上に凸に歪んでいる。 次に、図10(a)の差分画像から、領域L3とX方向の位置が同じで、欠陥と重ならない領域L4(背景部)から輝度値のラインプロファイルを抽出する。そして、このラインプロファイルを積算してゆくことで背景部の積分プロファイルを求める。 図10(c)は、図10(c)は背景部(領域L4)の積分プロファイルを示す図である。図示のように背景部の積分プロファイルも全体として上に凸に歪んでいる。 次に、欠陥部の積分プロファイルから背景部の積分プロファイルを減算する。 図11は、図10(b)の積分プロファイルから図10(c)の積分プロファイルを減算した結果を示す図である。 これにより、欠陥部の積分プロファイルの歪みが取り除かれた積分プロファイルが求まる。このようにして補正された積分プロファイルでは、輝度ムラの影響が相殺され、欠陥の高さ分布を正しく再現できる。 次に、図9のステップS60において、解析部12(図1参照)が積分プロファイルから欠陥の高さ(深さ)を決定するための補正係数を決定する。 上記のステップS50で求めた積分プロファイルの値は輝度値であり、この輝度値からパターンや欠陥の高さを求めるためには、差分画像のスケール値と何らかの補正係数を乗算して長さの値に変換する必要がある。この補正係数は、電子ビームを照射する試料の材料に関係した二次電子の放出特性に依存するため、測定するEUVマスクの材質及び構造が同じであれば一定となる。 しかしながら、二次電子の信号強度は欠陥検査装置100の電子ビームの加速電圧、電流値、スキャン回数、画像のコントラストによっても変化するため、補正係数は測定条件によっても変化する。 そこで、本実施形態では以下の手法により補正係数を決定する。 図12は、実施形態に係る補正係数の決定方法を示すフローチャートである。 まず、図12のステップS61において、欠陥検査装置100により、試料において欠陥のない部分に観察領域を設定してSEM画像を取得する。このSEM画像は、欠陥を観察するときと同じ電子ビームの加速電圧、電流値、走査回数及び走査速度で撮像する。 次に、ステップS62において、解析部12は、ステップS61で取得したSEM画像か差分画像を生成し、その輝度のラインプロファイルを積算して積分プロファイルを取得する。 図13(a)は、欠陥のない部分の差分画像の一例である。図13の場合には、例えばY方向の中央付近の領域L5のラインプロファイルから積分プロファイルを求める。 これにより、欠陥のない部分の高さの分布が再現されたことになる。 次に、図11のステップS63において、解析部12は、ステップS62で取得した積分プロファイルの輝度値に差分画像のスケールを乗算したデータを求める。そして、積分プロファイルに差分画像のスケールを乗算したデータから、SEM画像での表面粗さ(RMS:Root Mean Square)を求める。 図13(b)は、図13(a)から取得した積分プロファイルに差分画像のスケールを乗算したデータを示すグラフである。 図13(b)の場合には、図13(a)の試料の表面粗さが167.8と求まる。 次に、図11のステップS64において、解析部12は、ステップS61で設定した観察領域について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて予め測定しておいた試料表面の表面粗さ(RMS)を取得する。 なお、試料が製品として市販されているEUVマスクの場合には、その表面粗さ(RMS)は製造業者及びその製品グレードによって決まる。そのため、同一製品の場合には、その都度原子間力顕微鏡による測定を行う必要はなく、予め測定しておいた表面粗さ(RMS)の値を利用すれば良い。 次に、ステップS65において、SEM画像での表面粗さと、AFMで求めた表面粗さとが一致するように補正係数Kを求める。すなわち、補正係数Kは、AFMでの表面粗さ(RMS)をSEM画像での表面粗さ(RMS)で除算した値として求まる。 図13(a)の試料の場合には、AFMによる表面粗さ(RMS)が0.3(nm)であるため、この試料での補正係数Kは0.3/167.8=0.001788となる。 以上により、積分プロファイルの輝度値から欠陥の高さ(深さ)を求めるための補正係数が求まる。 次に、図9のステップS70において、解析部12(図1参照)は積分プロファイルに基づいて欠陥の高さ(又は深さ)と欠陥の幅を求める。 図14は、積分プロファイルからパターン幅及びパターン高さ(深さ)を求める方法を示す図である。 欠陥の高さ(深さ)及び幅は以下のようにして求める。 まず、図14の積分プロファイルに示すように、欠陥のピーク以外の平坦な部分の輝度値の平均値(0%)と、欠陥のピーク(100%)の輝度値との差分Aを求める。 次に、この輝度値の差分Aに、ステップS60で求めた補正係数を乗ずる。これにより、欠陥の高さが求まる。 また、欠陥の幅は、平坦な部分の輝度値(0%)と欠陥のピーク(100%)との中間の50%の輝度値に閾値を設定し、この閾値と積分プロファイルとが交差する部分を欠陥の端部として検出する。このようにして検出された欠陥の端部間の距離Bから欠陥の幅が求まる。 以上のように実施形態に係る欠陥検査方法によれば、電子ビームを低速で走査させることにより、微細な凹凸よりなる欠陥を検出でき、さらにその高さ(深さ)及び幅を正確に測定できる。 (実験例) 以下、様々な高さ(深さ)及び幅を有するバンプ欠陥及びピット欠陥が形成されたEUVマスクを用意し、検出可能な欠陥の高さ(深さ)の評価を行った結果について説明する。 図15(a)は、実施形態の実験例1に係る欠陥の検出結果を示すグラフである。 実験例1では、電子ビームの加速電圧を900Vとし、電流値を5pAとし、スキャン回数を1回とした条件の下でSEM画像を撮像した。なお、通常スキャンは、電子ビームのスキャン速度を20MHzとした条件であり、スロースキャンは電子ビームのスキャン速度を7kHzとした条件である。 図15(a)に示すように、スロースキャンでSEM画像を撮像することで、通常スキャンでは検出が困難な高さが2nm程度までの範囲の欠陥を検出できることが確認できた。 図15(b)は、実施形態の実験例2に係る欠陥の検出結果を示すグラフである。 実験例2では、電子ビームの加速電圧を500Vとし、電流値を12pAとし、スキャン回数を1回とした条件の下でSEM画像を取得した。なお、通常スキャンでは、スキャン速度を20MHzとしてSEM画像を取得し、スロースキャンではスキャン速度を7kHzとしてSEM画像を取得した。 図15(b)に示すように、加速電圧を下げるとともに、電子ビームの電流値を増加させたことにより、さらに微小な凹凸による欠陥を検出できることが確認できた。 図示のようにスロースキャンを行うことで、通常スキャンでの検出が困難な1nm〜2nm程度の凹凸による欠陥を検出できることが確認できた。 1…電子走査部、2…チャンバー、3…電子銃、3a…電子ビーム、4…コンデンサレンズ、5…偏向コイル、6…対物レンズ、7…試料ステージ、8…試料、8a…観察領域、9a〜9d…検出器、10…制御部、11…信号処理部、12…解析部、13…表示部、14…記憶部、50…透過型マスク、51、61…基板、52、63…パターン、62…多層反射膜、62a…反射膜、64…凹部(ピット)、65、67…異物、64a…ピット欠陥、65a、67a…バンプ欠陥、100…欠陥検査装置。 電子ビームを試料の表面上で走査させる電子走査部と、 前記電子ビームの光軸の周りに複数配置され、前記電子ビームの走査によって試料表面から放出された電子を検出する検出器と、 前記検出器の検出信号に基づいて、前記試料の表面の画像データを生成する信号処理部と、 前記画像データに基づいて前記試料の表面の凹凸による欠陥を検出する解析部と、 前記試料の種類に応じて前記電子ビームの走査速度を制御する制御部と、 を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。 前記制御部は、前記試料が導電材料によって形成された反射型のマスクの場合には、前記電子ビームの走査速度を、前記試料が絶縁材料よりなる基板の上にパターンが形成された透過型のマスクである場合の走査速度よりも遅くすることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。 前記信号処理部は、前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向の画像データの差分をとった差分画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。 前記解析部は前記差分画像の輝度値に基づいて前記試料表面の凹凸を検出することを特徴とする請求項3に記載の欠陥検査装置。 前記解析部は、前記差分画像において凹凸を含む欠陥部と、凹凸が検出されない背景部とについてそれぞれ差分プロファイルを求め、前記欠陥部の差分プロファイルを積算した積分プロファイルから、前記背景部の差分プロファイルを積算した積分プロファイルを減算した積分プロファイルを求めることを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査装置。 前記解析部は、前記積分プロファイルから求めた表面粗さの値と、原子間力顕微鏡によって求めた前記試料の表面粗さの値との関係に基づいて、前記積分プロファイルの輝度値から前記欠陥の高さを求めることを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査装置。 前記制御部は、前記試料が導電材料によって形成された反射型のマスクの場合には、前記電子ビームの走査速度を、前記試料が絶縁材料よりなる基板の上にパターンが形成された透過型のマスクである場合の走査速度の1/1000以下にすることを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。 試料表面に電子ビームを走査させる電子走査部と、前記電子ビームの光軸の周りに複数配置され前記電子ビームの照射によって試料表面から放出された電子を検出する検出器と、前記電子走査部を制御する制御部と、を備えた欠陥検査装置を用いた欠陥検査方法であって、 前記試料の種類に応じて電子ビームの走査速度を決定するステップと、 前記電子ビームを走査させ、前記検出器の検出信号に基づいて前記試料表面を異なる方向から写した複数の画像データを取得するステップと、 前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの画像データの差分をとって差分画像を生成するステップと、 前記差分画像から差分プロファイルを抽出し、該差分プロファイルに基づいて前記試料表面の凹凸を検出するステップと、 を有することを特徴とする欠陥検査方法。 前記試料が導電材料によって形成された反射型のマスクの場合には、前記電子ビームの走査速度を、前記試料が絶縁材料よりなる基板の上にパターンが形成された透過型のマスクである場合の走査速度よりも遅くすることを特徴とする請求項8に記載の欠陥検査方法。 前記差分画像において凹凸を含む欠陥部と、凹凸が検出されない背景部とについてそれぞれ差分プロファイルを求め、前記凹凸を含む部分の差分プロファイルを積算した積分プロファイルから、前記背景部の差分プロファイルを積算した積分プロファイルを減算した積分プロファイルを求めるステップを有することを特徴とする請求項9に記載の欠陥検査装置。 前記積分プロファイルから求めた表面粗さの値と、原子間力顕微鏡によって求めた前記試料の表面粗さの値との関係に基づいて、前記積分プロファイルの輝度値から前記欠陥の高さを求めるステップを有することを特徴とする請求項10に記載の欠陥検査方法。 前記試料が導電材料によって形成された反射型のマスクの場合には、前記電子ビームの走査速度を、前記試料が絶縁材料よりなる基板の上にパターンが形成された透過型のマスクである場合の走査速度の1/1000以下にすることを特徴とする請求項9に記載の欠陥検査方法。 【課題】微細な凹凸による欠陥の検査に好適な欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供する。【解決手段】電子ビーム3aを試料8の表面上で走査させる電子走査部1と、電子ビーム3aの光軸の周りに複数配置され、電子ビーム3aの走査によって試料8の表面から放出された電子を検出する検出器9a〜9dと、検出器9a〜9dの検出信号に基づいて、試料8の表面の画像データを生成する信号処理部11と、画像データに基づいて試料8の表面の凹凸による欠陥を検出する解析部12と、試料8の種類に応じて電子ビーム3aの走査速度を制御する制御部10と、を備えた欠陥検査装置100による。【選択図】図1