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タイトル:公開特許公報(A)_セバシン酸の製造方法
出願番号:2013079143
年次:2014
IPC分類:C07C 51/235,C07C 55/20,C07C 51/43,C07C 59/147,C07C 51/353


特許情報キャッシュ

坂見 敏 河村 健司 山田 勝成 平松 紳吾 小川 順 岸野 重信 JP 2014201554 公開特許公報(A) 20141027 2013079143 20130405 セバシン酸の製造方法 東レ株式会社 000003159 坂見 敏 河村 健司 山田 勝成 平松 紳吾 小川 順 岸野 重信 C07C 51/235 20060101AFI20140930BHJP C07C 55/20 20060101ALI20140930BHJP C07C 51/43 20060101ALI20140930BHJP C07C 59/147 20060101ALN20140930BHJP C07C 51/353 20060101ALN20140930BHJP JPC07C51/235C07C55/20C07C51/43C07C59/147C07C51/353 4 OL 13 (出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発/化学品原料の転換・多様化を可能とする革新グリーン技術の開発/非可食性植物由来原料からのグリーンポリマー製造基盤技術に関する研究(微生物機能を用いたポリマー原料製造基盤技術の研究開発)」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4H006 4H006AA02 4H006AC45 4H006AC46 4H006AD10 4H006BQ10 4H006BS10 本発明は、バイオマス資源由来物質を原料としてセバシン酸を製造する方法に関する。 近年、化石資源から発生する二酸化炭素等の温室効果ガスによる地球温暖化問題や、化石資源の枯渇の問題が深刻化している。このため、地球温暖化を阻止し、持続可能な循環型社会に転換する必要性が高まっている。化学産業では、再生可能資源であるバイオマス資源に由来する物質から、各種化学品を製造する技術の構築が急務となっている。 セバシン酸は10個の炭素原子からなるジカルボン酸であり、ナイロン610等のポリアミドの原料として用いられる他、ポリエステル、ウレタン、可塑剤、合成潤滑油、塗料等の原料としても用いられる基幹化学品である。セバシン酸は、工業的にはトウゴマから採取されるヒマシ油をアルカリと共に加熱溶融して酸化分解することにより製造されている(非特許文献1)。また、石油化学製品であるアジピン酸モノメチルから製造する方法(特許文献1)、あるいは同じく石油化学製品であるナフタレンから製造する方法(特許文献2)が開示されている。 このように、セバシン酸はバイオマス資源由来物質であるヒマシ油から製造することができるため、セバシン酸の誘導品は再生可能資源由来製品として注目を集めている。セバシン酸をヒマシ油から製造する方法としては、具体的には、ヒマシ油を多量のアルカリと高温で反応させて分解し、得られたセバシン酸のアルカリ塩を硫酸で解塩してセバシン酸を得る方法が開示されている(特許文献3、非特許文献2)。特開昭54−36211号公報特開昭62−48645号公報特表2001−511809号公報黒崎富裕、八木和久著、「油脂化学入門」、産業図書、2006年6月20日発行、p.112.油化学、7巻、3号、p.133−137(1958). 上述したように、現在行われているバイオマス資源由来物質を利用するセバシン酸の製造方法は、ヒマシ油を原料として用いる方法であるが、以下のような課題を有している。 その製造過程において、生成するセバシン酸に対し大過剰のアルカリを添加する必要がある。また、反応液からセバシン酸を分離する際には、アルカリを中和し、セバシン酸のアルカリ塩を解塩するために多量の硫酸を要する。その結果、セバシン酸を製造する過程において多量の硫酸アルカリ塩が副生する。例えば、非特許文献2に開示されている方法では、セバシン酸1kgを製造する際、0.9kgの水酸化ナトリウム及び0.39kgの水酸化カリウムが必要であり、その結果、1.6kgの硫酸ナトリウム及び0.6kgの硫酸カリウムが副生すると算出される。このように、目的物であるセバシン酸より遙かに多い量の硫酸アルカリ塩が副生するが、硫酸アルカリ塩の有効利用には限界があるため大部分は廃棄されることになり、地球環境保全の観点で問題が非常に大きい。 以上のように、セバシン酸はバイオマス資源由来物質から製造されているが、その製造過程で多量のアルカリを使用する必要があり、その結果、多量の硫酸アルカリ塩が副生する。そこで、多量のアルカリを使用する等の地球環境保全上の問題を改善した方法によって、バイオマス資源由来物質からセバシン酸を製造する方法が切望されている。本発明は、バイオマス資源由来物質を原料とし、上記のような課題を解決した新規なセバシン酸の製造方法を提供する。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、バイオマス資源由来物質である10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を原料として用いることにより、大量のアルカリを使用することのない、現行法における地球環境保全上の問題を改善したセバシン酸の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、セバシン酸(1,8−オクタンジカルボン酸)の製造方法であって、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を原料として用いる製造方法を提供する。 本発明の一つの態様では、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸から10−オキソデカン酸を製造する熱分解工程が含まれる。 本発明の一つの態様では、10−オキソデカン酸からセバシン酸を製造する酸化工程が含まれる。 本発明の一つの態様では、10−オキソデカン酸からセバシン酸を製造する酸化工程の反応液から、生成したセバシン酸を固液分離により単離する工程が含まれる。 本発明の一つの態様であって、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸から10−オキソデカン酸を製造する熱分解工程及び10−オキソデカン酸からセバシン酸を製造する酸化工程を含む態様は、下記の反応式によって記述することができる。 本発明により、バイオマス資源由来物質を原料として、セバシン酸を、多量のアルカリを使用することなく、地球環境保全上の問題を改善した方法により製造することができる。熱分解工程に用いる連続式反応器の一例を示す図である。 本発明において、バイオマス資源とは、再生可能な生物由来の有機性資源を意味し、植物が太陽エネルギーを用いて二酸化炭素を固定化して生成した有機物を起源とする資源を指す。具体的には、アマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油、落花生油、綿実油、ゴマ油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマシ油、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動植物油脂の他、トウモロコシ、サトウキビ、イモ類、小麦、米、大豆、パルプ、ケナフ、稲藁、麦藁、バガス、コーンストーバー、スイッチグラス、雑草、木材、古紙、木炭、天然ゴム、綿花等が挙げられる。 本発明において、バイオマス資源に由来する物質(バイオマス資源由来物質)とは、上記のバイオマス資源から発酵や化学変換等により誘導される物質、誘導され得る物質又は誘導された物質を意味する。 本発明の原料である10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸は、バイオマス資源由来のものを入手することができる。例えば、「Biochemical and Biophysical Research Communications、416巻、188−193ページ(2011年)」に開示されているように、下記の反応式で示すとおり、リノール酸の9位二重結合を微生物変換によって水和することで、バイオマス資源由来の10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を製造することができる。 ここで原料として用いるリノール酸は、リノール酸を含有する油脂を加水分解することにより製造することができる。リノール酸を含有する油脂としては、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油等が挙げられる。 リノール酸は、リノール酸を含有する油脂を生産する微生物又はその培養液から製造することもできる。微生物としては、炭酸ガスを原料とした光合成を行う藻類細胞、糖を原料とした油脂発酵を行う油性酵母や真菌類等が用いられる。藻類細胞の例として、クロレラ・フスカ(Chlorella fusca)、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella prorothecoides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・サッカロフィア(Chlorella saccaharophila)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・エリプソイデア(Chlorella ellipsoidea)、シゾキトリウム(Schizochytrium sp.)等が挙げられる。油性酵母の例として、クリプトコッカス・クルバツス(Cryptococcus curvatus)、クリプトコッカス・テリコルス(Cryptococcus terricolus)、カンジダ属の種(Candida sp.)、リポマイセス・スタルケィ(Lipomyces starkeyi)、リポマイセス・リポファ(Lipomyces lipofer)、エンドマイコプシス・バルナリス(Endomycopsis vernalis)、ロドトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・グラシリス(Rhodotorula gracilis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)等が挙げられる。真菌類の例として、モルティエレラ(Mortierella)属の一種モルティエレラ・ビナセア(Mortierella vinacea)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、モルティエレラ・イサベリナ(Mortierella isabellina)、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)、フィシウム・デバリアヌム(Pythium debaryanum)、ケカビ属シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochracerus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、ペネシリウム・イイラシヌム(Pennicillium iilacinum)、ヘンセヌロ(Hensenulo)属真菌、カエトミウム(Chaetomium)属真菌、クラドスポリウム(Cladospoiium)属真菌、マルブランシェア(Malbranchea)属真菌、リゾプス(Rhizopus)属真菌、フィシウム(Pythium)属真菌、クニンガメラ(Cunninghamella)属真菌、タンジニウム(Thamnidium)属真菌、サプロレグニア(Saprolegnia)属真菌、エントモルフトラ(Entomophthora)属真菌、ブラストクラジエラ(Blastocladiella)属真菌、コニディオボラス(Conidiobolus)属真菌等が挙げられる。好ましくはモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)が用いられる。 微生物による油脂発酵に用いられる糖は、デンプン由来グルコース、セルロース由来グルコース、ショ糖、糖蜜、ブドウ糖、ガラクトース、キシロース、フルクトース、アラビノース、マンノース等、油脂発酵する微生物が利用できる糖であればよい。また、グリセロールを油脂発酵に用いても良い。 本発明の一つの態様では、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸から10−オキソデカン酸を製造する熱分解工程が含まれる。本熱分解工程はバッチ式反応又は連続式反応のいずれによっても進行させることができるが、連続式反応が生成物の分解を抑制することができるため好ましく用いられる。例えば、「Journal of the American Chemical Society、81巻、6443ページ(1959年)」に記載の方法により、連続式反応による熱分解を行うことができる。 連続式反応は、管状の反応管を有する連続式反応器に、反応原料(本発明では10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸)を流通させて反応させる反応形式である。連続式反応器としては、例えば図1に例示する装置を用いることができる。図1の装置は、原料導入口1、キャリアーガス導入口2、反応管3、管状炉4、担体5、反応液捕集容器(冷却器)6によって構成されている。原料は、原料導入口1から反応管3に流通させることができ、キャリアーガスを導入口2より導入することにより、原料をキャリアーガスと共に反応管3に流通させることもできる。管状炉4によって反応管3を所望の温度に加熱することができる。生成物は、反応液捕集容器6に液体として捕集するか、ガス開放口7からガスとして捕集することができる。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の連続式反応による熱分解工程では、反応管を移動する原料を一定時間高温状態に保持するために、図1に示すように、反応管に担体5を固定しても良い。担体としては、反応条件で影響を受けない素材が好ましく、例えば、石英ウール、石英ビーズ等が好ましく用いられる。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の連続式反応による熱分解工程では、反応器内の圧力は0.001MPa以上、0.5MPa以下が好ましく、減圧又は加圧用の装置や操作が不要な大気圧下において簡便に行うことができる。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の連続式反応による熱分解工程では、反応器内に反応原料と共にキャリアーガスを流通させることもできる。キャリアーガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスが好ましく用いられるが、これら不活性ガスに水蒸気、空気、酸素、水素等が混入していても良い。キャリアーガスの供給速度は適宜選択することができる。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の連続式反応による熱分解工程では、原料の供給速度は適宜選択することができる。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の連続式反応による熱分解工程では、反応温度は400℃〜600℃が好ましく、450℃〜550℃がより好ましい。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解工程では、1−オクテンが生成しうるが、1−オクテンは、10−オキソデカン酸とは沸点に大きな差異があるため、1−オクテンを蒸発させることにより、簡便に10−オキソデカン酸と分離することができる。また、生成した1−オクテンは、10−オキソデカン酸と分離することなく、10−オキソデカン酸の酸化工程の溶媒として利用することもできる。 本発明の一つの態様では、10−オキソデカン酸からセバシン酸を製造する酸化工程が含まれる。本酸化工程は10−オキソデカン酸のアルデヒド基を酸化剤によってカルボキシル基に変換する反応である。 本酸化工程で用いられる酸化剤としては、一般の化学反応において使用される酸化剤を使用することができるが、好ましい例として、酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、二クロム酸ナトリウム等のクロム酸塩、tert−ブチルヒドロペルオキシド等の有機過酸化物、2−ヨードキシ安息香酸、デスマーチンペルヨージナン(1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンゾヨードキソール−3−(1H)−オン)、2,3−ジシアノ−5,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。より好ましい例として、酸化剤と生成物との分離が容易な、酸素、オゾン、過酸化水素が挙げられる。また、これら酸化剤は1種であっても2種以上であってもよい。 本酸化工程において酸素を酸化剤として用いる場合は、酸素又は酸素を含む混合気体を用いることができる。酸素を含む混合気体としては、空気が入手容易であるため好ましく用いられる。また、本酸化工程において酸素を酸化剤として用いる場合は、酸化反応を促進するための触媒が存在していても良い。酸化反応を促進するための触媒としては、金属又は金属酸化物を含む触媒等が挙げられる。 本酸化工程において酸素を酸化剤として用いる場合の反応温度としては、0℃以上140℃以下が好ましく、40℃以上100℃以下がより好ましい。 本酸化工程は溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、本酸化工程の反応基質である10−オキソデカン酸及び/又は酸化剤を溶解しうるものを適宜使用することができる。例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等のアルカン、1−オクテン等のアルケン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、水等が好ましく用いられる。また、溶媒は1種であっても2種以上を混合して用いても良い。 本酸化工程において酸素を酸化剤として用いる場合は、酸素又は酸素を含む混合気体を反応液に接触させて反応を進行させる。酸素又は酸素を含む混合気体を反応液に接触させる方法としては、反応容器を密閉し反応容器内に酸素又は酸素を含む混合気体を充填して接触させる方法、反応容器を密閉せず、反応容器内に酸素又は酸素を含む混合気体を流通させて接触させる方法、反応容器を密閉せず、反応液内に酸素又は酸素を含む混合気体を流通させて接触させる方法等が挙げられる。酸素又は酸素を含む混合気体を流通する場合における、気体の流通量としては、酸化反応における酸素の消費量に応じて適宜選択することができる。 本酸化工程の原料である10−オキソデカン酸は、精製品でもよく、未精製品でもよい。10−オキソデカン酸の製造工程で得られる反応液から10−オキソデカン酸を単離することなく本酸化工程を行うと、10−オキソデカン酸の精製が省ける点で操作が簡便となる。 本発明の一つの態様では、10−オキソデカン酸からセバシン酸を製造する酸化工程の反応液から、生成したセバシン酸を固液分離により単離する工程が含まれる。本単離工程は、固体成分としてセバシン酸を、液体成分として他の成分を分離する工程である。固液分離は、ろ過、遠心分離等により行うことができ、ろ過は、ろ紙、ろ布、メンブレンフィルタ等により行うことができる。本単離工程における、単離操作時の反応液の温度は、−30℃以上120℃以下が好ましく、0℃以上100℃以下がより好ましい。 以下に、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 以下の実施例において示される原料回収率及び収率は、それぞれ下記の計算式(式1)、(式2)によって算出した。 (式1)原料回収率(%)=(反応後の原料の物質量/供給原料の物質量)×100 (式2)収率(%)=(生成物の物質量)/供給原料の物質量)×100。 実施例1及び2では、図1に示す連続式反応器を用いた。内径6mm、全長300mmの石英製反応管3を備え、反応管の上部には、キャリアーガス導入口2と原料導入口3があり、下端には、ガス開放口7を有する反応液捕集容器(冷却器)6を有するものを用いた。反応管の中央部に担体5として石英ウールを充填し、反応管をセラミックス電気管状炉4(アサヒ理化製作所、ARF−20KC、炉内長200mm)で加熱した。反応中、反応液捕集容器6を氷浴で冷却し、反応液を捕集した。捕集された反応液の全重量を測定し、反応液の一部をメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供した。10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸、10−オキソデカン酸及び1−オクテンの含有量を、各化合物のピーク面積値と各化合物の基準試料を用いて作成した検量線から算出した。 参考例1 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の製造 「Biochemical and Biophysical Research Communications、416巻、188−193ページ(2011年)」に記載の手法に基づき、リノール酸から10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を製造した。具体的には、リノール酸水和酵素(CLA−HY)を発現させた大腸菌を用い、リノール酸を含む原料の水和反応により行った。CLA−HYを発現する大腸菌は、以下の手法により作出した。CLA−HY遺伝子(GeneBank ID:AB671230)を発現用ベクターpET101/D−TOPOに連結し、大腸菌RosettaTM (DE3)に導入した。LB培地で37℃にて1時間培養後、1mM IPTGを加え、20℃で6時間誘導した。CLA−HYを発現した大腸菌を洗浄後、リン酸バッファー(pH6.5)に懸濁し、リノール酸を含む原料の水和反応に用いた。 水和反応は、以下の手法により行った。リノール酸 2.8%、BSA 0.6%、NADH 5mM及びFAD 0.1mMを含む20mMリン酸バッファー(pH6.5)に、大腸菌懸濁液を5%容量加え、嫌気条件下で37℃20時間振盪し反応させた。リノール酸の10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸への変換率は76%、未反応のリノール酸は23%であった。反応系からの脂肪酸の単離はBligh−Dyer法により行った。 未反応のリノール酸と10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸との分離は、以下の手法により行った。反応粗液から回収した脂肪酸をヘキサン:ジエチルエーテル(8:2)の混合溶媒下でワコーゲル(登録商標)C−100に通し、同混合溶媒で洗浄、未反応のリノール酸を除去した。ヘキサン:ジエチルエーテル(3:7)の混合溶媒でHYAを溶出後、溶媒を除去し、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を得た。ガスクロマトグラムから求めた10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の精製純度は99%であった。 参考例2 10−オキソデカン酸の製造市販の10−ウンデセン酸(30.4g)をイオン交換水(0.4L)と1,4−ジオキサン(1.2L)の混合液に溶解させ、2,6−ルチジン(35.3g)を添加した。オスミウム(IV)酸カリウム・二水和物(1.2g)を添加後、12℃〜13℃で過ヨウ素酸ナトリウム(349g)を3分間かけて添加し、11℃〜31℃で5時間撹拌した。反応液をイオン交換水(2L)に加え、ジクロロメタン(2L)で2回抽出した。有機層を1mol/L塩酸(840mL)で2回洗浄後、水(840mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)により精製して、10−オキソデカン酸のカラム精製品26.5gを得た。同様の方法で10−ウンデセン酸(5.38g)から10−オキソデカン酸のカラム精製品4.44gを得た。カラム精製品を合わせてジエチルエーテル:ヘキサン(1:4)の混合溶媒に加熱溶解後、氷冷し、析出物をろ過により単離し、減圧下乾燥して10−オキソデカン酸の晶析品24.4gを得た。 実施例1 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解(1) 反応管に石英ウール(2mg)を充填し、管状炉を500℃に加熱し、キャリアーガス導入口から窒素を10mL/minの流速で流通した。参考例1で得られた10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸(1.83g、6.13mmol)を、シリンジポンプにて0.1mL/minの流量で原料導入口から反応管に供給した。供給終了後の捕集容器に捕集された反応液の重量は1.72gであった。HPLC分析により原料回収率、各化合物の収率を算出した。結果を表1に示す。 実施例2 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解(2) 管状炉の温度を500℃の代わりに550℃として、実施例1と同様な方法により反応を行った。HPLC分析により原料回収率、各化合物の収率を算出した。結果を表1に示す。 実施例3 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解(3) 管状炉の温度を500℃の代わりに450℃として、実施例1と同様な方法により反応を行った。HPLC分析により原料回収率、各化合物の収率を算出した。結果を表1に示す。 実施例4 10−オキソデカン酸の酸化及びセバシン酸の単離(1) 反応容器に参考例2で製造した10−オキソデカン酸(931mg、4.8mmol)と1−オクテン(3.7mL)を加え、反応容器を解放して、反応液にガラス管を通じて空気を10mL/minの流量で供給した。70℃に加熱し、マグネチックスターラーで撹拌した。6時間後、反応液を25℃まで冷却した。析出した固体をろ過により単離し、減圧下乾燥することによりセバシン酸を白色固体として得た(収量681mg)。収率及びHPLC分析により求めた純度を表2に示す。 実施例5 10−オキソデカン酸の酸化及びセバシン酸の単離(2) 反応容器に参考例2で製造した10−オキソデカン酸(931mg、4.8mmol)とトルエン(5.0mL)を加え、反応容器を解放して、反応液面上部にガラス管を通じて空気を10mL/minの流量で供給した。70℃に加熱し、マグネチックスターラーで撹拌した。18時間後、反応液を25℃まで冷却した。析出した固体をろ過により単離し、減圧下乾燥することによりセバシン酸を白色固体として得た(収量750mg)。収率及びHPLC分析により求めた純度を表2に示す。 実施例6 10−オキソデカン酸の酸化及びセバシン酸の単離(3) 反応容器に参考例2で製造した10−オキソデカン酸(4.65g、24mmol)とトルエン(25mL)を加え、反応容器内の気体を酸素で置換した。反応容器に酸素を充填した風船を装着し、密閉した状態で70℃に加熱し、マグネチックスターラーで撹拌した。13時間後、25℃まで冷却した。析出した固体をろ過により単離し、減圧下乾燥することによりセバシン酸を白色固体として得た(収量4.30g)。収率及びHPLC分析により求めた純度を表2に示す。 実施例7 熱分解工程反応粗液中の10−オキソデカン酸の酸化(1) 実施例1で得られた反応液の化合物組成に合わせ、参考例1で製造した10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸(0.206g、0.690mmol)、参考例2で製造した10−オキソデカン酸(0.751g、3.87mmol)、1−オクテン(0.464g、4.13mmol)の混合物を調製した。この混合物に1−オクテン(1.28mL)を追加し、反応容器内の気体を酸素で置換した。反応容器に酸素を充填した風船を装着し、密閉した状態で70℃に加熱し、マグネチックスターラーで撹拌した。14時間後、25℃まで冷却し、反応液の全量をメタノールで100mLにメスアップした。これをHPLC分析に供し、10−オキソデカン酸及びセバシン酸の含有量を、各化合物のピーク面積値と各化合物の基準試料を用いて作成した検量線から算出した。10−オキソデカン酸の含有量は0.36mmol(原料回収率9%)、セバシン酸の含有量は2.14mmol(収率55%)であった。 実施例8 熱分解工程反応粗液中の10−オキソデカン酸の酸化(2) 実施例1で得られた反応液の化合物組成に合わせ、参考例1で製造した10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸(0.206g、0.690mmol)、参考例2で製造した10−オキソデカン酸(0.751g、3.87mmol)、1−オクテン(0.464g、4.13mmol)の混合物を調製した。この混合物から1−オクテンを減圧下で留去した。これにトルエン(1.94mL)を加え、反応容器内の気体を酸素で置換した。反応容器に酸素を充填した風船を装着し、密閉した状態で70℃に加熱し、マグネチックスターラーで撹拌した。14時間後、25℃まで冷却し、反応液の全量をメタノールで100mLにメスアップした。これをHPLC分析に供し、10−オキソデカン酸及びセバシン酸の含有量を、各化合物のピーク面積値と各化合物の基準試料を用いて作成した検量線から算出した。10−オキソデカン酸の含有量は0.18mmol(原料回収率5%)、セバシン酸の含有量は2.95mmol(収率76%)であった。 実施例9 セバシン酸の単離 実施例8の反応液の組成に合わせ、参考例1で製造した10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸(0.206g、0.690mmol)、参考例2で製造した10−オキソデカン酸(35mg、0.18mmol)、セバシン酸(597mg、2.95mmol)、トルエン(1.94mL)の混合物を調製した。マグネチックスターラーで撹拌し、70℃まで加熱した。10分後、25℃まで冷却し、10分間撹拌した。固体をろ過に分離し、減圧下乾燥することによりセバシン酸584mgを白色固体として得た(回収率98%)。HPLC分析により求めたセバシン酸の純度は100%であった。 実施例1乃至3から、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解により10−オキソデカン酸が製造可能であることが示された。また、1−オクテンが副生することが示された。また、反応温度によっては原料が多く回収される場合があることが示された。この場合には、原料を回収、再利用すれば10−オキソデカン酸の収量を増加させることが可能である。 実施例4乃至6から、10−オキソデカン酸の酸化によりセバシン酸が高い収率で製造可能であることが示された。また、酸化工程の反応粗液を固液分離することにより、高純度のセバシン酸が単離可能であることが示された。また、酸素を酸化剤として用いる場合には、反応容器内の気体は酸素でも酸素を含む混合気体でもよいことが示され、また、溶媒は、熱分解工程で副生する1−オクテンの他、多様な溶媒が適用可能であることが示された。 実施例7及び8から、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解で得られる反応液から10−オキソデカン酸を単離することなく酸化工程を行うことにより、セバシン酸が製造可能であることが示された。 実施例9から、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸の熱分解で得られる反応液から、10−オキソデカン酸を単離することなく酸化工程を行い、その結果得られる反応液を固液分離することにより、セバシン酸を高い純度、高い回収率で単離可能であることが示された。 実施例1乃至9から、バイオマス資源由来物質である10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を原料として、セバシン酸を多量のアルカリを使用することなく製造可能であることが示された。 本発明により、バイオマス資源由来物質を原料として、セバシン酸を多量のアルカリを用いることなく製造することができる。また、本発明により、セバシン酸を多量のアルカリ塩の副生を伴うことなく製造することができる。セバシン酸はポリアミド、ウレタン等の原料となる基幹化学品であるため、本発明は産業上極めて有用である。1 原料導入口2 キャリアーガス導入口3 反応管4 管状炉5 担体6 反応液捕集容器(冷却器)7 ガス開放口 セバシン酸の製造方法であって、10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を原料として用いる製造方法。 10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸から10−オキソデカン酸を製造する熱分解工程を含む、請求項1に記載の製造方法。 10−オキソデカン酸からセバシン酸を製造する酸化工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。 酸化工程の反応液から、生成したセバシン酸を固液分離により単離する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。 【課題】バイオマス資源由来物質を原料として、セバシン酸を多量のアルカリを使用することなく製造する方法を提供する。【解決手段】10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸を原料としてセバシン酸を製造する方法。一つの態様を、下記の反応式によって記述する。10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸はリノール酸から製造され、リノール酸はバイオマスから得られるリノール酸を含む油脂を加水分解することにより得られる。【選択図】なし


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