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タイトル:公開特許公報(A)_胃瘻用半固形栄養組成物
出願番号:2013077340
年次:2014
IPC分類:A61K 47/36,A61P 3/02,A61K 9/06


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佐藤 宏樹 西谷 弘 JP 2014201532 公開特許公報(A) 20141027 2013077340 20130403 胃瘻用半固形栄養組成物 テルモ株式会社 000109543 佐藤 宏樹 西谷 弘 A61K 47/36 20060101AFI20140930BHJP A61P 3/02 20060101ALI20140930BHJP A61K 9/06 20060101ALI20140930BHJP JPA61K47/36A61P3/02A61K9/06 5 OL 19 4C076 4C076AA09 4C076AA95 4C076BB01 4C076BB04 4C076CC40 4C076EE30G 4C076FF17 本発明は、胃瘻用半固形栄養組成物に関する。 経腸栄養法は、消化管を経由する生理的な栄養投与経路であり、高カロリー輸液法の問題点を解決できるため、咀嚼・嚥下機能の著しい低下や意識障害などによって、食物の経口摂取が困難な患者向けの重要な栄養投与法である。 経管栄養法には、経鼻経管栄養法や胃瘻経管栄養投与法などがある。経鼻経管栄養法は鼻腔を経由して胃内に挿入した細くかつ長いチューブを介して経腸栄養組成物を投与するため、液状の経腸栄養組成物を用いる必要がある。そのため、結果として投与に数時間程度の長時間を要し、患者やその医療従事者、介護者等への負担が大きい。 また、経鼻経管栄養法により長期で経腸栄養を施行した場合では、液状栄養組成物の胃食道逆流に起因する誤嚥性肺炎などの合併症に悩まされる症例も少なくない。 一方、胃瘻経管栄養投与法とは、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy、PEG)を施行して胃に接続したPEGカテーテルにより体外から直接、胃内部へ栄養を投与する栄養管理法である。従来行われてきた経鼻経管栄養法と比較し、管理が容易であること、患者の苦痛が少ないこと、摂食・嚥下リハビリテーションが容易であることから最近では有用な経管栄養法の一つとして注目されている。 PEGにおいては、下記(1)〜(3)の点から経腸栄養組成物に粘度や保形性を付与する手法が検討されている。(1)液体の経腸栄養組成物を胃に急速に投与することにより胃食道逆流が生じ、誤嚥性肺炎が発症することを防ぐ。(2)液体の経腸栄養組成物を胃に急速に投与することにより胃から腸に一気に経腸栄養組成物が落下し、糖質が急速に吸収されて高血糖となったり、下痢の症状を引き起こすことを防止する。(3)液状の経腸栄養組成物は(2)に記載の症状を防止するために、患者に同一体位で長時間投与する必要があったが、経腸栄養組成物に粘度や保形性を付与した場合、短時間で投与が可能になる。結果として、褥瘡を防止したり、患者の負担を軽減し、患者のQOLの向上に貢献できる。 経腸栄養組成物に粘度を付与する方法としては、従来種々の方法が検討されてきた。例えば、特許文献1では、経腸栄養組成物に寒天を添加する方法が開示されている。また、寒天、キサンタンガムおよびカラギーナンを含むゲル状流動食(特許文献2)、タンパク質の等電点ゲルとペクチン、キサンタンガムなどのゲル化剤ゲルとの複合ゲルからなる嚥下障害者に適したゲル状組成物(特許文献3)などが開示されている。特開2003−201230号公報特開2008−237186号公報国際公開第99/34690号 しかし、寒天を用いて調製された半固形栄養組成物は、一度粉砕されると再結着しにくい性質を有する。そのため、容器やシリンジ等からPEGカテーテルに注入される段階で、ゲルが崩れ、小さなゲル状の破片の集まりとなっている状態のクラッシュゲルとなり、ゲル片がチューブ内に残るという問題点があった。また、寒天に他の化合物を配合した栄養組成物においても、粘度や保形性、PEGカテーテルへの付着性などの点で十分なものではなかった。特に、PEGカテーテルに栄養組成物が付着すると、確実な栄養補給がなされないばかりでなく、洗浄に長い時間を要し、医療従事者や介護者等の作業効率性が低下するという問題点がある。 一方で、栄養組成物を患者に投与する際、従来の半固形栄養組成物では、PEGカテーテルから栄養組成物を胃内へ投与する際の注入抵抗が高いため、栄養組成物を押し出す際に大きな力が必要となり、医療従事者や介護者等の身体的負担が大きい場合があった。 したがって、適度な粘度を有し、PEGカテーテルへの付着性が低く、また、医療従事者や介護者等が栄養組成物を投与する際に負担の少ない半固形栄養組成物が求められていた。 本発明の目的は、容器やシリンジ等から押し出した場合にも、PEGカテーテルへの付着性が低く、かつPEGカテーテルから押し出す際の抵抗が少ない半固形栄養組成物を提供することを目的とする。 本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天とタマリンドシードガムを特定の割合で併用することによって、前記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)に示したものである。 (1)たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含む栄養素と、寒天およびタマリンドシードガムを含む胃瘻用半固形栄養組成物であって、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天を0.02〜0.10質量%、前記タマリンドシードガムを0.05〜0.5質量%を含有し、熱量が1.25〜1.75kcal/gである胃瘻用半固形栄養組成物。 (2)25℃での粘度が15,000〜35,000mPa・sである前記(1)に記載の胃瘻用半固形栄養組成物。 (3)pHが3.0〜4.5である前記(1)または(2)に記載の胃瘻用半固形栄養組成物。 (4)シリンジから60mm/minの速度で排出する際の吐出圧力が15kPa以下である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の胃瘻用半固形栄養組成物。 (5)50gを投与したとき、胃瘻カテーテル(シリコーンゴム製、有効長21cm、外径20Fr.、内径4mm)内壁の残存物が10mLの水で洗浄が完了する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の胃瘻用半固形栄養組成物。 以上述べたように、本発明の胃瘻用半固形栄養組成物は、シリンジ等から押し出した場合にも、チューブへの付着性が低く、かつチューブから押し出す際の抵抗が少ない半固形栄養物である。したがって、投与された患者が胃食道逆流を起こすことなく、確実に安心かつ容易に栄養を摂取することが可能となる。 以下、本発明の胃瘻用半固形栄養組成物を詳細に説明する。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物は、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天およびタマリンドシードガムを用いる。ゼリー強度が650〜850g/cm2である高ゼリー強度の寒天およびタマリンドシードガムを組み合わせることによって、詳細なメカニズムは不明であるが、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天およびタマリンドシードガムを併用しない場合と比較して、PEGカテーテルへの付着性が抑制されるという効果を有する。特に、タマリンドシードガムを組み合わせることによって、PEGカテーテルへの付着性が抑制され、医療従事者や介護者等の負担が軽減される。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用する高ゼリー強度の寒天のゼリー強度が650g/cm2より小さいと、タマリンドシードと組み合わせることによる付着性に対する効果が発揮されないため、好ましくない。ゼリー強度が850g/cm2を超えると、胃瘻用半固形栄養組成物の粘度が上昇して、胃瘻用半固形栄養組成物をPEGカテーテルから投与する際の注入抵抗が高くなるため、好ましくない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用することのできるゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天としては、具体的に、伊那寒天カリコリカン(ゼリー強度:750g/cm2、伊那食品工業株式会社)などがあげられる。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用するゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天の配合量は、胃瘻用半固形栄養組成物の全量に対して0.02〜0.10質量%であり、好ましくは0.04〜0.08質量%である。ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天の配合量が0.02質量%より少ないと、胃瘻用半固形栄養組成物の粘度が低下するため、好ましくない。ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天の配合量が0.10質量%を超えると、胃瘻用半固形栄養組成物の粘度が上昇して、胃瘻用半固形栄養組成物をPEGカテーテルから投与する際の注入抵抗が高くなるため、好ましくない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用する寒天は、ゼリー強度以外は特に制限されず、従来の方法によって製造されるものが使用できる。一般的に、寒天は、テングサ、オゴノリ等の紅藻類の粘液質を凍結・乾燥したものであり、アガロースやアガロペクチン等の多糖類を主成分として含む。前記アガロースやアガロペクチンは、ガラクトースおよび3,6−アンデヒドロガラクトースが交互に重合した構造を有する。寒天は、アガロースやアガロペクチンの重合度や分子量、寒天中の硫酸基およびピルビン酸基の配合量等によって性状が異なる場合があるが、本発明の胃瘻用半固形栄養組成物においては、特に制限されず、いずれのものを用いてもよい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物の主旨を逸脱しない範囲において、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天以外のゼリー強度である寒天の使用は、特に制限されない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用される寒天のゼリー強度は、以下の方法により測定した値を採用する。寒天0.8%水溶液を20℃で15時間放置し、凝固させたゲルの固さを日寒水式ゼリー強度計で測定し、寒天ゲルの表面1cm2あたり20秒間耐えるときの最大重量(g)をゼリー強度とする。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用するタマリンドシードガムは、マメ科のタマリンド(Tamarindus indica Linne)、和名「チョウセンモダマ」の木の種子の内胚乳から得られる多糖類であり、種子の胚乳部分を温水または熱水もしくはアルカリ性水溶液で抽出してえられたもの、または酵素(β−ガラクトシダーゼ、ラクターゼ)処理したものが利用できる。また、通常市販されているものを用いることもできる。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用することのできる具体的なタマリンドシードガムとしては、具体的に、グリロイド2A、グリロイド3S、グリロイド6C、グリロイドTG(DSP五協フード&ケミカル株式会社)、ビストップD−2032(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などが挙げられる。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用するタマリンドシードガムの配合量は、胃瘻用半固形栄養組成物の全量に対して0.05〜0.5質量%であり、好ましくは0.1〜0.4質量%である。タマリンドシードガムの配合量が0.05質量%より少ないと、胃瘻用半固形栄養組成物の保形性が低下するため、好ましくない。タマリンドシードガムの配合量が0.5質量%を超えると、胃瘻用半固形栄養組成物のPEGカテーテルへの付着性が増すため、好ましくない。 なお、本発明の胃瘻用半固形栄養組成物の主旨を逸脱しない範囲において、寒天およびタマリンドシードガム以外の従来より栄養組成物で利用されてきている公知の食物繊維は特に制限されない。具体的に、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、不溶性ペクチン、キチン、キトサン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアガム分解物、サイリウム種皮、低分子化アルギン酸ナトリウム等の不溶性食物繊維;水溶性ペクチン、グアガム、コンニャクマンナン、グルコマンナン、アルギン酸、寒天、化学修飾多糖類、ポリデキストロース、難消化性オリゴ糖、マルチトール、イヌリン、カラギナン、小麦ふすま、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維等が挙げられる。これらの食物繊維は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用する食物繊維の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用するたんぱく質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。 アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン等の必須アミノ酸;およびグリシン、アラニン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン等の非必須アミノ酸が挙げられる。これらの他、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、γ−カルボキシグルタミン酸、O−ホスホセリン、O−ホスホチロシン、N−アセチルセリン、Nω−メチルアルギニン、ピログルタミン酸、M−ホルミルメチオニン等の修飾アミノ酸;オルニチン、シトルリン、γ−アミノ酪酸(GABA)、チロキシン、S−アデニルメチオニン等の特殊アミノ酸も包含されうる。また、前記アミノ酸は、それぞれ立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)であっても、位置異性体であってもよく、これらの混合物であってもよい。さらに、前記アミノ酸は、無機酸塩(塩酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩等)、生体内で加水分解可能なエステル体(メチルエステル等)の形態であってもよい。 ペプチドとしては、前記アミノ酸の2以上がペプチド結合(アミド結合)を介して重合したものが用いられうる。当該ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド(アミノ酸が約10個程度のもの)、ポリペプチド(アミノ酸が数十〜数百個のもの)のいずれであってもよい。前記ポリペプチドは、植物たんぱく質や動物性たんぱく質等のたんぱく質を含む。なお、一部のオリゴペプチド、例えば、ラクトトリペプチド、カゼインドデカペプチド、バリルチロシン配合サーデンペプチド等は降圧作用等の保健機能を有しうる。 植物たんぱく質としては、米等の穀類、大豆、豆腐等の豆類等に含まれるたんぱく質が挙げられる。なお、大豆たんぱく質については、胆汁酸と結合してコレステロールの排泄を促進する等の保健機能を有しうる。 動物性たんぱく質としては、卵、肉類、魚介類、牛乳等に含まれるたんぱく質が挙げられる。 これらのうち、牛乳(乳清)を原料とするホエイたんぱく質、牛乳に含まれるカゼインたんぱく質、大豆たんぱく質を用いることが好ましく、ホエイたんぱく質を用いることがより好ましい。当該ホエイたんぱく質としては、ホエイプロテインコンセントレート(WPC)、ホエイプロテインアイソレート(WPI)、加水分解ホエイペプチド(WPH)等が挙げられる。WPCやWPI、大豆たんぱく等は市販されているものを用いてもよく、市販品としては、WPC392(Fonterra社製)、WPC80(Fonterra社製)、WPC7009(Fonterra社製)、WPC164(Fonterra社製)、WPC162(Fonterra社製)、WPC132(Fonterra社製)、WPC472(Fonterra社製)、WPI8855(Fonterra社製)、WPI8899(Fonterra社製)、WPI895(Fonterra社製)、プロリーナ900(不二製油株式会社製)、ニューフジプロ3000(不二製油株式会社製)、ニューフジプロ1700N(不二製油株式会社製)等が挙げられる。 前記のたんぱく質、アミノ酸またはペプチドは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物中のたんぱく質、アミノ酸またはペプチドの配合量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、胃瘻用半固形栄養組成物全量に対して3〜15質量%であることが好ましい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に配合する脂質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。アマニ油、エゴマ油、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、シソ油、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、胚芽油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油等の植物性油脂、魚油、乳脂等の動物性油脂、中鎖脂肪酸、高度不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、その他にDHA、EPA、ジアシルグリセロールなどの加工製剤も添加することができる。 胃瘻用半固形栄養組成物中の脂質の配合量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、胃瘻用半固形栄養組成物全量に対して1〜8質量%であることが好ましい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用する糖質は、従来より栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。例えば、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等の単糖類、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース等の二糖類、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、デキストリン等の多糖類や水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖など)、粉飴、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトールなど)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物中の糖質の配合量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、胃瘻用半固形栄養組成物全量に対して5〜30質量%であることが好ましい。 また、従来公知もしくは将来知られうる甘味成分も糖類の代わりに用いることができる。具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末などの甘味成分を用いてもよいが、前述の脂質およびたんぱく質のエネルギー%に関する記載から明らかな通り、これら甘味成分の配合には糖質のエネルギー%に留意して配合する必要がある。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に配合するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。ビタミンとして、ビタミン誘導体を使用してもよい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物中のビタミンの配合量は、胃瘻用半固形栄養組成物100gあたり下記の範囲が適当である。 ビタミンA:好ましくは0〜3000μg、より好ましくは20〜200μg ビタミンD:好ましくは0.1〜50μg、より好ましくは0.1〜5.0μg ビタミンE:好ましくは1〜800mg、より好ましくは0.2〜10mg ビタミンK:好ましくは0.5〜1000μg、より好ましくは2〜50μg ビタミンB1:好ましくは0.01〜40mg、より好ましくは0.1〜10mg ビタミンB2:好ましくは0.01〜20mg、より好ましくは0.05〜10mg ナイアシン:好ましくは0.1〜300mgNE、より好ましくは0.5〜60mgNE パントテン酸:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは0.2〜30mg ビタミンB6:好ましくは0.01〜60mg、より好ましくは0.1〜30mg ビオチン:好ましくは0.1〜1000μg、より好ましくは1〜100μg 葉酸:好ましくは1〜1000μg、より好ましくは10〜200μg ビタミンB12:好ましくは0.01〜100μg、より好ましくは0.2〜60μg ビタミンC:好ましくは1〜2000mg、より好ましくは5〜1000mg 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物に使用するミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素、クロムおよびモリブデンなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。これらは、無機電解質成分として配合されていてもよいし、有機電解質成分、として配合されていてもよい。無機電解質成分としては、例えば、塩化物、硫酸化物、炭酸化物、リン酸化物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩類が挙げられる。また、有機電解質成分としては、有機酸、例えばクエン酸、乳酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、アルギン酸、リンゴ酸またはグルコン酸と、無機塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩類が挙げられる。例えば、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、未焼成カルシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸銅、硫酸銅などが挙げられる。また、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、マンガンなどは、高濃度の微量元素化合物を含有する培地内で培養して得られる微量元素蓄積性を有する微生物由来の微量元素含有微生物菌体を用いてもよい。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物中のミネラルの配合量は、下記の範囲が適当である。 ナトリウム:好ましくは5〜6000mg、より好ましくは10〜3500mg カリウム:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1800mg カルシウム:好ましくは10〜2300mg、より好ましくは30〜300mg リン:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1500mg マグネシウム:好ましくは1〜740mg、より好ましくは10〜150mg 鉄:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは1〜10mg 亜鉛:好ましくは0.1〜30mg、より好ましくは1〜15mg 銅:好ましくは0.01〜10mg、より好ましくは0.06〜6mg ヨウ素:好ましくは0.1〜3000μg、より好ましくは1〜150μg マンガン:好ましくは0.01〜11mg、より好ましくは0.1〜4mg セレン:好ましくは0.1〜450μg、より好ましくは1〜35μg クロム:好ましくは0.1〜40μg、より好ましくは1〜35μg モリブデン:好ましくは0.1〜320μg、より好ましくは1〜25μg 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物の水分は、50〜80g/100kcalであり、好ましくは55〜75g/100kcalである。水分が50g/100kcalより少ないと、水分不足となり、患者等が脱水状態となる可能性があるため、好ましくない。水分が80g/100kcalを超えると、水分過剰となり、患者等が溢水状態となる可能性があるため、好ましくない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は、1.25〜1.75kcal/gであり、好ましくは1.35〜1.65kcal/gである。熱量が1.25kcal/gより少ないと、胃瘻用半固形栄養組成物に含まれる濃縮した栄養素をPEGカテーテルから短時間で投与することができないため、好ましくない。熱量1.75kcal/gを超えると、胃瘻用半固形栄養組成物の水分が非常に少なくなり、PEGカテーテルから水分を追加して投与する回数が多くなり、細菌感染のリスクが大きくなるため、好ましくない。 なお、熱量は、糖質、脂質、たんぱく質、および食物繊維等の添加量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、「熱量」とは、Atwaterのエネルギー換算係数を参考にして算出された値である。具体的には、熱量=(4kcal×糖質含量)+(9kcal×脂質含量)+(4kcal×たんぱく質含量)+(2kcal×食物繊維含量)として計算し、試料g当たりのkcalとして示す。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物は、さらにその他の公知の成分、例えば、機能性添加物、食品添加物、増粘剤等を含んでいてもよい。 保健機能成分とは、摂取することによって生体に対し一定の機能を発揮する成分である。例えば、難消化性オリゴ糖、糖アルコール、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)およびカゼインホスホペプチド(CPP)、キトサン、L−アラビノース、グァバ葉ポリフェノール、小麦アルブミン、豆鼓エキス、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロール植物性ステロール、大豆イソフラボン、乳塩基性たんぱく質等が挙げられる。 難消化性オリゴ糖とは、単糖類がグリコシド結合によって結合した化合物のうち、多糖類ほどは分子量が大きくない(300〜3000程度)糖類である。前記難消化性オリゴ糖はヒトの消化酵素では分解されず、ヒトの消化酵素で分解されるものについては、前記の糖質に包含されうる。難消化性オリゴ糖を摂取することにより、整腸効果が得られうる。 難消化性オリゴ糖としては、特に制限されないが、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。これらの難消化性オリゴ糖は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 胃瘻用半固形栄養組成物中の難消化性オリゴ糖の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 糖アルコールとは、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成する糖の一種であり、小腸から体内への吸収が悪くカロリーになりにくいものである。糖アルコールは、口内細菌によって酸に代謝されにくく、歯垢の形成を防止しうる。当該糖アルコールは、低カロリー甘味料として用いられうる。 糖アルコールとしては、エリトリトール、マルチトール、パラチノース等が挙げられる。これらの糖アルコールは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 胃瘻用半固形栄養組成物中の糖アルコールの配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 CCMおよびCPPは、カルシウムの吸収を促進し、骨形成を促進しうる。当該CCMおよびCPPは、単独で用いても、混合して用いてもよい。また、CCMおよびCPPは、カルシウムと併用することが好ましい。 胃瘻用半固形栄養組成物中のCCMおよびCPPの配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 食品添加物は、食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、湿潤その他の方法によって使用するものである。食品添加物としては、栄養強化の目的以外にも、例えば、グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅、アスコルビン酸2−グルコシド、並びにシクロデキストリン、保存料、防かび剤、酸化防止剤、着色料、甘味料、pH調整剤、酸味剤、乳化剤、香料等が挙げられる。 グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅は、グルコン酸の重金属イオンとの高いキレート能を利用したグルコン酸塩である。グルコン酸塩の形態とすると吸収されやすくなることから、亜鉛や銅を効果的に吸収することができる。当該グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅は、単独で用いても、混合して用いてもよい。 胃瘻用半固形栄養組成物中のグルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 シクロデキストリンとは、グルコースがグルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖である。6個のグルコースからなるものをα−シクロデキストリン、7個のグルコースからなるものをβ−シクロデキストリン、8個のグルコースからなるものをγ−シクロデキストリンという。シクロデキストリンは、アレルギー抑制効果、血糖値上昇抑制効果、乳化作用等の機能を有しうる。当該シクロデキストリンは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 胃瘻用半固形栄養組成物中のシクロデキストリンの配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 酸化防止剤は、胃瘻用半固形栄養組成物の酸化による変質を防止する機能を有する。 酸化防止剤としては、特に制限されないが、アスコルビン酸およびそのナトリウム塩、エリソルビン酸およびそのナトリウム塩等が用いられうる。これらの酸化防止剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 着色料は、胃瘻用半固形栄養組成物を美しくする機能を有する。 着色料としては、特に制限されないが、食用タール色素(食用赤色2号、3号、40号、102号、104号、105号、および106号、食用青色1号および2号、食用黄色4号および5号、食用緑色3号等)、β−カロテン、水溶性アナトー、クロロフィル誘導体(クロロフィルa、クロルフィルb、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム等)、リボフラビン、三二酸化鉄、二酸化チタン、ベニバナ黄色素、コチニール色素、クチナシ黄色素、ウコン色素、赤キャベツ色素、ビートレッド、ブドウ果皮色素、パプリカ色素、カラメル等が用いられうる。これらの着色料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 甘味料は、胃瘻用半固形栄養組成物に甘味を付与する機能を有する。 甘味料としては、特に制限されないが、サッカリンおよびそのナトリウム塩、キシリトール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ズルチン、チクロ(サイクラミン酸)、ネオテーム、トレハロース、エリスリトール、マルチトース、パラ地ノース、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア加工の甘味料、ソーマチン、クルクリン、リチルリチン酸二ナトリウム等が用いられうる。これらの甘味料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 pH調整剤は、胃瘻用半固形栄養組成物のpHを調整する機能を有する。 pH調整剤としては、特に制限されないが、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アジピン酸等が用いられうる。これらのpH調整剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 酸味料は、栄養組成物への酸味の付与、食品の酸化の防止、およびpHの調整等の機能を有する。 酸味料としては、特に制限されないが、酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸等が用いられうる。これらの酸味料は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 乳化剤は、脂質等の油溶性成分の水への溶解性の向上等の機能を有する。 乳化剤としては、特に制限されないが、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の天然乳化剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 香料は、胃瘻用半固形栄養組成物を着香・嬌臭する機能を有する。 香料としては、特に制限されないが、アセトフェノン、α−アミルシンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、デカナール、デカノール、アセト酢酸エチル、ケイ皮酸エチル、デカン酸エチル、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、dl−メントール、l−メントール、サリチル酸メチル、ピペロナール、プロピオン酸、テルピネオール、バニリン、d−ボルネオール等が挙げられる。これらの香料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。 その他の添加物としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、トレハロース生成酵素、トレハロース遊離酵素、グルタミナーゼ等の酵素や酵母等が用いられうる。 胃瘻用半固形栄養組成物中の前記食品添加物の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。 増粘剤は、胃瘻用半固形栄養組成物に粘度を付与する機能を有する。 増粘剤としては、寒天およびタマリンドシードガム以外天、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、キサンタンガム、カラギナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、タラガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、カードラン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、カラヤガム、ビーガム等が挙げられる。 胃瘻用半固形栄養組成物中の増粘剤の配合量は、粘度等を考慮して適宜調節されうる。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物の粘度は、25℃で15,000〜35,000mPa・s、好ましくは15,000 〜30,000mPa・sである。胃瘻用半固形栄養組成物の粘度が15,000mPa・sより小さいと、胃食道逆流や誤嚥性肺炎等が生じるため、好ましくない。一方、胃瘻用半固形栄養組成物の粘度が35,000mPa・sを越えるとと、胃瘻用半固形栄養組成物を胃瘻カテーテルから注入する際に抵抗が大きくなり、投与しにくくなるため、好ましくない。 本明細書において、粘度は、第8版食品添加物公定書「B.一般試験法、28.粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に記載された方法に準じて測定される。例えば、B型回転粘度計DV‐II+Pro(Brookfield社)、RB80L(東機産業株式会社)などを用いて測定した値をいう。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物のpHは、3.0〜4.5であり、好ましくは3.5〜4.0である。pHが3.0より低いと、酸性が強くなり、清涼感が得られないため、好ましくない。pHが4.5を超えると、栄養組成物使用時のPEGカテーテル内の細菌の増殖を抑制しづらくなるため、好ましくない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物のpHは、pH調整剤や酸味料等の添加量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、pHは、第8版食品添加物公定書「B.一般試験法、31.pH測定法」に記載された方法に準じて測定された値である。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物のシリンジから60mm/minの速度で排出する際の吐出圧力は、15kPa以下であることが好ましくい。吐出圧力が15kPaを越えると、医療従事者や介護者への身体的負担が大幅に大きくなるため、好ましくない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物50gを投与したとき、胃瘻カテーテル(シリコーンゴム製、有効長22cm、外径20Fr.、内径4mm)内壁の残存物は、10mLの水で洗浄が完了することが好ましい。10mLを超えると、医療従事者や介護者等の作業効率性が低下するため、好ましくない。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物は、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天とタマリンドシードガムにより適切な粘度に調整され且つ必要な栄養源をバランスよく配合されているため、加齢に伴い胃が縮小した高齢者、脳血管障害、神経筋障害などにより嚥下・咀嚼能力が低下した患者、意識障害などにより経口摂取が困難である患者、術後の患者等の胃腸管機能の治療用、低栄養状態の治療用、逆流性食道炎予防・治療用、誤嚥性肺炎予防・治療用に適している。投与では下痢や胃食道逆流の恐れがあることから長時間投与を余儀なくされているが、本発明の胃瘻用半固形栄養組成物の使用により、短時間且つ容易に注入することができ、患者のQOL向上及び介護・看護現場における作業効率性上昇に非常に役立つことが期待される。 本発明の胃瘻用半固形栄養組成物は、公知の方法によって製造することができる。例えば、加温した水に栄養素、寒天、ペクチン、およびその他所望とする成分を添加し、撹拌することにより製造することができる。また、加温した水に寒天を溶解した溶液と、水にペクチンを溶解した溶液とを準備し、栄養素およびその他所望とする成分をいずれかに添加して、2つの溶液を混合、撹拌することで製造することができる。 得られた胃瘻用半固形栄養組成物は、例えば、連続殺菌した後に容器に充填して、製品化することができる。当該連続殺菌の方法としては、特に制限されないが、超高温短時間(UHT)殺菌、熱水殺菌、バッチ式殺菌、およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記殺菌は、短時間で行うことが好ましい。短時間で殺菌を行うことにより、胃瘻用半固形栄養組成物に含まれる成分の劣化を抑制することができる。 胃瘻用半固形栄養組成物を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。当該容器としては、テトラパック、カート缶、ガラス容器、金属缶、アルミパウチ、プラスチック容器等が挙げられる。これらのうち、プラスチック容器を用いることが好ましい。 前記プラスチック容器の原料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリフルオロカーボン、ポリイミド等を用いることが好ましい。 前記プラスチック容器には、さらにポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等を含むガスバリア性樹脂層;アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、酸化ケイ素皮膜、酸化アルミ被膜等のガスバリア性無機層を適宜組み合わせて用いてもよい。当該ガスバリア層を設けることによって、酸素や水蒸気等による胃瘻用半固形栄養組成物の劣化を防止しうる。 また、前記容器はさらに遮光されていてもよい。当該遮光によって、例えば、胃瘻用半固形栄養組成物に配合されうるビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンK等の光による劣化が抑制されうる。 前記の容器は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソフトパウチ(株式会社フジシール)、ボトルドパウチ(凸版印刷株式会社)、スパウチ(大日本印刷株式会社)、チアーパック(株式会社細川洋行)等が用いられうる。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1) 以下に2500g仕込み時の調合方法を記す。各原料の配合量は、表1に示す通りである。5Lのステンレスビーカーに調合水700gを計量し、湯浴にて80℃以上に加温した。次いで、寒天(ウルトラ寒天イーナ、伊那食品工業株式会社)、ゼリー強度が750g/cm2である寒天(伊那寒天カリコリカン、伊那食品工業株式会社)、タマリンドシードガム(ビストップD−2032、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を加え、十分に溶解させた後に65℃まで冷却し、乳清たんぱく(アラセン392、Fonterra社)、大豆たんぱく(プロリーナ900、不二製油株式会社)、上白糖、デキストリン(TK−16、松谷化学工業株式会社)を添加した。当該溶液に植物混合油、グリセリン脂肪酸エステルを70℃で混合した分散液を混合した。さらに、ビタミンとして、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1塩酸塩、ビタミンB2、ニコチン酸アミド、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ビタミンC、ミネラルとして精製塩、昆布抽出物、リン酸二水素ナトリウム、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸三カリウム、塩化カリウム、クエン酸鉄、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、セレン酵母、モリブデン酵母、クロム酵母、マンガン酵母、大豆食物繊維、乳酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、香料を適宜添加して攪拌した。全量が2500gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。得られた溶液は、均質化し、1個当たり200gとなるように口栓付きのアルミパウチに充填後、90℃10分間の殺菌処理を行った。前記殺菌処理の後、冷却することで、胃瘻用半固形栄養組成物を製造した。このとき、ゼリー強度が750g/cm2である寒天の配合量は1.5g(0.06質量%)、タマリンドシードガムの配合量は5.0g(0.2質量%)であった。 得られた胃瘻用半固形栄養組成物について性状を観察し、各種物性を評価した。評価方法は以下の通りである。 (1)pH:胃瘻用半固形栄養組成物を25℃で24時静置後、pH測定器METTLER TOLEDO MP220(METTLER TOLEDO社)を用いてpHを測定した。 (2)粘度:胃瘻用半固形栄養組成物を25℃で24時静置後、B型回転粘度計(メーカー:BROOKFIELD、型式:DV‐II+Pro、測定条件:回転速度6rpm、測定時間1分、ローターNo.64)を用いて測定した。 (3)注入抵抗(kPa)(シリンジから60mm/minの速度で排出する際の吐出圧力):試料約50gを50mlカテーテルチップシリンジ(テルモ株式会社製)に充填し、外径20Fr.、内径4mmのバード ガストロストミーチューブ(C.R.Bard社)をシリンジに装着後、オートグラフ(AGS−J:島津製作所社製)を用いて60mm/minの速度でシリンジから排出した際の押出し力を測定した(測定温度:室温25℃)。なお、ガストロストミーチューブはシリコーンゴム製であり、その基端(コネクタ部)から先端開口部までの長さは22cmであり、基端(コネクタ部)にカテーテルチップシリンジのを挿入し、その挿入されたカテーテルチップシリンジの先端からガストロストミーチューブの先端開口部までの長さ(「有効長」とする。)は21cmである。 (4)付着性:試料約50gを50mlカテーテルチップシリンジ(テルモ株式会社)に充填し、(3)に記載のガストロストミーチューブをシリンジに装着後、チューブ内を試料で満たし3分間静置する。その後、水10mLを1、2、3、4、5回に渡り、通過させ、水が通過した後のチューブ内における試料の付着状況を目視で確認し、以下の評価によって評価した。 ◎:10mLの水でチューブ内の洗浄が完了する。 ○:20mLの水でチューブ内の洗浄が完了する。 △:40mLの水でチューブ内の洗浄が完了する。 ×:40mLの水で洗浄してもチューブ内に胃瘻用半固形栄養組成物が残存する。 得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.82、粘度は21,600mPa・s、吐出抵抗は9.6kPa、付着性は「◎」であった。結果を表2に示す。 (実施例2) 実施例1において、ゼリー強度が750g/cm2である寒天の配合量を1.0g(0.04質量%)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.83、粘度は18,800mPa・s、吐出抵抗は9.4kPa、付着性は「◎」であった。結果を表2に示す。 (実施例3) 実施例1において、ゼリー強度が750g/cm2である寒天の配合量を2.0g(0.08質量%)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.81、粘度は23,000mPa・s、吐出抵抗は9.8kPa、付着性は「◎」であった。結果を表2に示す。 (実施例4) 実施例1において、タマリンドシードガムの配合量を2.5g(0.1質量%)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.82、粘度は19,500mPa・s、吐出抵抗は9.4kPa、付着性は「◎」であった。結果を表2に示す。 (実施例5) 実施例1において、タマリンドシードガムの配合量を10.0g(0.4質量%)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.84、粘度は22,200mPa・s、吐出抵抗は9.6kPa、付着性は「◎」であった。結果を表2に示す。 (比較例1) 実施例1において、ゼリー強度が750g/cm2である寒天を配合しなかった以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.83、粘度は13,800mPa・s、吐出抵抗は8.8kPa、付着性は「×」であった。結果を表3に示す。 (比較例2) 実施例1において、タマリンドシードガムを配合しなかった以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.82、粘度は14,800mPa・s、吐出抵抗は9.0kPa、付着性は「×」であった。結果を表3に示す。 (比較例3) 実施例1において、ゼリー強度が750g/cm2である寒天の配合量を3.0g(0.12質量%)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.84、粘度は35,600mPa・s、吐出抵抗は17.8kPa、付着性は「◎」であった。結果を表3に示す。 (比較例4) 実施例1において、ゼリー強度が750g/cm2である寒天をゼリー強度が380g/cm2である寒天(伊那寒天S−7、伊那食品工業株式会社)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.82、粘度は12,800mPa・s、吐出抵抗は9.0kPa、付着性は「×」であった。結果を表3に示す。 (比較例5) 実施例1において、タマリンドシードガムの配合量を15.0g(0.6質量%)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.81、粘度は18,300mPa・s、吐出抵抗は10.5kPa、付着性は「△」であった。結果を表3に示す。 (比較例6) 実施例1において、タマリンドシードガムをペクチン(GENUペクチン type YM−115−LJ、 三晶株式会社)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.83、粘度は18,300mPa・s、吐出抵抗は10.1kPa、付着性は「×」であった。結果を表4に示す。 (比較例7) 実施例1において、タマリンドシードガムをローカストビンガム(GENUガム type RL−200−J、 三晶株式会社)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.81、粘度は33,400mPa・s、吐出抵抗は15.2kPa、付着性は「×」であった。結果を表4に示す。 (比較例8) 実施例1において、タマリンドシードガムをグァーガム(GRINDSTED GUAR 175、三晶株式会社)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.82、粘度は39,600mPa・s、吐出抵抗は17.1kPa、付着性は「×」であった。結果を表4に示す。 (比較例9) 実施例1において、タマリンドシードガムをタラガム(イナゲル タラガムA、伊那食品工業株式会社)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.84、粘度は41,900mPa・s、吐出抵抗は18.4kPa、付着性は「×」であった。結果を表4に示す。 (比較例10) 実施例1において、タマリンドシードガムをアラビアガム(イナゲル アラビアガムA、伊那食品工業株式会社)に変えた以外は、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して胃瘻用半固形栄養組成物を得た。得られた胃瘻用半固形栄養組成物の熱量は1.5kcal/g、pHは3.81、粘度は10,300mPa・s、吐出抵抗は8.4kPa、付着性は「×」であった。結果を表4に示す。たんぱく質、脂質、糖質を含む栄養素と、寒天およびタマリンドシードガムを含む胃瘻用半固形栄養組成物であって、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天を0.02〜0.10質量%、前記タマリンドシードガムを0.05〜0.5質量%を含有し、熱量が1.25〜1.75kcal/gである胃瘻用半固形栄養組成物。25℃での粘度が15,000〜35,000mPa・sである請求項1に記載の胃瘻用半固形栄養組成物。pHが3.0〜4.5である請求項1または2に記載の胃瘻用半固形栄養組成物。シリンジから60mm/minの速度で排出する際の吐出圧力が15kPa以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の胃瘻用半固形栄養組成物。50gを投与したとき、胃瘻カテーテル(シリコーンゴム製、有効長21cm、外径20Fr.、内径4mm)内壁の残存物が10mLの水で洗浄が完了する請求項1〜4のいずれかに記載の胃瘻用半固形栄養組成物。 【課題】シリンジ等から押し出した場合にも、PEGカテーテルへの付着性が低く、かつPEGカテーテルから押し出す際の抵抗が少ない胃瘻用半固形栄養組成物を提供すること。【解決手段】たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含む栄養素と、寒天およびタマリンドシードガムを含む胃瘻用半固形栄養組成物であって、ゼリー強度が650〜850g/cm2である寒天を0.02〜0.10質量%、前記タマリンドシードガムを0.05〜0.5質量%を含有し、熱量が1.25〜1.75kcal/gである胃瘻用半固形栄養組成物。【選択図】なし


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