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タイトル:公開特許公報(A)_老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ
出願番号:2013073920
年次:2014
IPC分類:G01N 17/00


特許情報キャッシュ

坂井 豊英 河村 幸伸 JP 2014199188 公開特許公報(A) 20141023 2013073920 20130329 老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ 住友ゴム工業株式会社 000183233 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 坂井 豊英 河村 幸伸 G01N 17/00 20060101AFI20140926BHJP JPG01N17/00 7 OL 11 2G050 2G050AA05 2G050BA05 2G050CA04 2G050EA01 2G050EB07 2G050EC06本発明は、老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。ゴム製品の市場における劣化特性を調べる劣化試験として、一般的に、熱老化試験機で劣化させる促進老化試験(JIS−K6257)、オゾン劣化試験(JIS−K6259)、耐候性試験(JIS−K6266)、湿熱及び乾熱の複合試験(特許文献1)などがある。これらの劣化試験は主としてゴム材料自体の耐熱性、耐オゾン性、耐候性を評価するものであるが、試験時間を短縮するため、試験条件が市場で使用される場合よりも厳しく設定されており、実際の市場における評価との相間があまり高くないことが知られている。タイヤ用ゴム部材においては、市場においてゴム表面に生じたひび割れ(クラック)がクレーム対象となっている。ゴム表面のひび割れは、主にオゾンによってポリマーが切断されることで起こると考えられており、このオゾンからポリマーを守る配合薬品が老化防止剤である。老化防止剤を変量してオゾン劣化試験を実施すると、クラックの発生時間、程度(クラックの数や長さ)が大きく変わることから、オゾン劣化に対する老化防止剤の寄与が大きいことがわかっている。そのため、ゴム中の老化防止剤の量を実使用の状態に合わせる(減少させる)ことが、市場再現に非常に重要である。老化防止剤は、オイルやワックスと共にゴム内部を移行し、ゴム表面に析出すると考えられる。老化防止剤、オイル、ワックスのゴム表面への析出は、ゴムの内外に生じるこれらの物質の濃度差によるものと考えられる。市場においては、老化防止剤が平衡に至るまで析出してゴム表面を被覆することで、様々な老化因子からタイヤのゴム部材を守っているとされる。熱、紫外線、雨水、オゾンなどの様々な要因によってゴム表面の老化防止剤が消費され、ゴム表面の老化防止剤の濃度が平衡値から減少すると、ゴム内部との濃度差に起因して老化防止剤がゴム表面に移行する。その結果、ゴム内部の老化防止剤の濃度は時間と共に徐々に減少していくと推測される。以上のような老化防止剤の濃度減少メカニズムに基づくと、ゴム内部から老化防止剤を除去する有効な手段は、ゴム表面に析出した老化防止剤を効率的に取り除き、ゴム表面の老化防止剤の濃度をほぼ0に保つことであると考えられる。しかしながら、従来方法で劣化試験を行った場合、ゴム内部の老化防止剤はほとんど消費されておらず、この点が、従来方法の劣化試験と実際の市場における評価との相間が低いことの原因であると推測される。従って、実際の市場における評価との相関性が高い劣化試験を行うためには、ゴム中の老化防止剤を減少させ、実使用の状態を再現することが必要であると考えられる。特開2005−98754号公報本発明は、上記課題を解決し、老化防止剤を含有するゴムにおける老化防止剤の減少を短期間で再現可能な劣化試験方法を提供することを目的とする。本発明は、溶解度パラメーターが10〜13の有機溶剤に加硫ゴム組成物を浸漬させ、該加硫ゴム組成物中の老化防止剤を減少させることを特徴とする老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法に関する。上記有機溶剤がアセトン又はエタノールであることが好ましい。上記有機溶剤がアセトンであり、浸漬させる時間が6〜24時間であることが好ましい。上記有機溶剤がエタノールであり、浸漬させる時間が144〜288時間であることが好ましい。上記有機溶剤に上記加硫ゴム組成物を浸漬させた後、JIS−K6259:2004に基づき、静的ひずみ20%、試験温度40℃、オゾン濃度50pphm、試験時間8時間の条件で静的オゾン劣化試験を行うことが好ましい。本発明はまた、上記静的オゾン劣化試験の結果が、JIS−K6259:2004に準じた評点付けで、き裂の大きさ及び深さが1〜3であるゴム組成物に関する。本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。本発明によれば、溶解度パラメーターが10〜13の有機溶剤に加硫ゴム組成物を浸漬させ、該加硫ゴム組成物中の老化防止剤を減少させることにより、老化防止剤を含有するゴムにおける老化防止剤の減少を短期間で再現することができる。本発明は、溶解度パラメーターが10〜13の有機溶剤に加硫ゴム組成物を浸漬させ、該加硫ゴム組成物中の老化防止剤を減少させることを特徴とする老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法である。本発明により、市場で数年経過した際の老化防止剤の減少を、その減少メカニズムを保持したまま、1日〜12日に短縮することが可能となる。これにより、従来は数年を要していた耐クラック性能の評価を大幅に短縮し、人的コスト及び物的コストを削減することができる。ゴム中の老化防止剤を減少させる方法として、ゴムを水や水溶液で洗浄又は浸漬させる方法も考えられる。しかしながら、老化防止剤は有機溶剤への溶解度が高いため、有機溶剤を用いることで、水や水溶液を用いた場合と比較して、より短時間でゴム中の老化防止剤を減少させることができる。また、市場で使用されたタイヤはオイルなどの可塑剤も減少しており、この可塑剤も耐クラック性能に影響するため、老化防止剤だけでなく可塑剤の減少も再現することが好ましいが、水や水溶液を用いた方法では、可塑剤の減少を再現することはできなかった。これに対し、本発明では、有機溶剤を使用することで、ゴム中の可塑剤の減少も再現することができる。出願人の先の出願(特願2012−176337)には、「ゴム部材に用いられる一般的なゴム材料は、有機溶剤に対して速やかに溶解もしくは膨潤することが知られている。一般的に膨潤後に乾燥させたゴムは、膨潤時に生じた永久歪や可塑剤の流出により、膨潤前の物性と同等の物性を示すことはないとされている。したがって、一般的な有機溶剤は表面析出物の効率的な除去には向かないと考えられる。」との記述がある。しかしながら、膨潤時に生じた永久歪の耐クラック性能への影響は大きくないと考えられ、特に、SP値が10〜13程度の有機溶剤であるアセトンやエタノールを使用した場合、SP値が8程度であるゴムの膨潤による永久歪を抑えつつ、SP値が10程度である老化防止剤の溶解を速やかに行うことができる。これにより、実際の市場における評価との相関性が高い劣化試験を短時間で行うことができる。本発明では、溶解パラメーター(SP値)が10〜13の有機溶剤を使用する。一般的に使用される老化防止剤であるN−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン(6C)のSP値は10.4(計算値)であり、一般的に使用されるワックスである日本精蝋(株)製のオゾエース0355のSP値は7.5〜8(計算値)であるため、SP値が10に近い有機溶剤の方が老化防止剤を効率的に抽出でき、本発明に好適である。SP値が10〜13の有機溶剤としては、アセトン(SP値:10)、エタノール(SP値:12.7)などが挙げられる。ヘキサン(SP値:7.3)、シクロヘキサン(SP値:8.2)は、ゴム(ポリマー)との極性が近すぎるため、加硫ゴム組成物をこれらに浸漬させると、膨潤によるゴムの永久歪が大きくなり、ゴムの形状が大きく変化してしまうため、本発明には適さない。溶解パラメーター(SP値)とは、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義された値であり、以下の式で算出できる。δ:溶解パラメーター(単位:(cal/cm3)1/2)ΔH:モル蒸発熱R:気体定数V:モル体積T:絶対温度有機溶剤がアセトンの場合、加硫ゴム組成物を有機溶剤に浸漬させる時間(浸漬時間)は、6〜24時間であることが好ましい。また、有機溶剤がエタノールの場合、浸漬時間は、144〜288時間であることが好ましい。浸漬時間をこのように設定することで、ゴム中の老化防止剤量について、クラックの発生が問題となる市場投入後160週レベルから、老化防止剤量がほぼ0となる市場投入後300週レベルまで再現することができる。加硫ゴム組成物を有機溶剤に浸漬する際の温度(浸漬温度)は、理論上、有機溶剤の融点〜沸点であればよいが、タイヤの使用環境を考慮すると、−20〜60℃であることが好ましく、温度管理や抽出効率の面から、常温(5〜35℃)であることがより好ましい。対象とする老化防止剤としては、耐熱性老化防止剤、耐候性老化防止剤などとしてゴム組成物に通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ナフチルアミン系(フェニル−α−ナフチルアミンなど)、ジフェニルアミン系(オクチル化ジフェニルアミン、4,4´−ビス(α,α´−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなど)、フェニレンジアミン系(N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなど)などのアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのキノリン系老化防止剤;モノフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなど)、ビス、トリス、ポリフェノール系(テトラキス−[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなど)などのフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、アミン系老化防止剤(好ましくはフェニレンジアミン系)、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。加硫ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。加硫ゴム組成物に使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ジエン系合成ゴム(イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)など)などが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NR、BR、SBRが好ましく、NR、BRがより好ましい。ゴム成分100質量%中、NRの含有量は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは40〜60質量%であり、BRの含有量は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは40〜60質量%である加硫ゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、補強用充填剤、シランカップリング剤、可塑剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。ワックスとしては、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられる。石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられ、パラフィンワックスが好ましい。また、天然系ワックスとしては、キャンデリラワックス、ライスワックスなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシンなどの鉱物系ワックス;ヒマシ硬化油、大豆硬化油などの天然油脂系硬化油;及びこれらの精製物などが挙げられ、ライスワックスが好ましく、精製ライスワックスがより好ましい。加硫ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜6質量部、より好ましくは1〜4質量部である。可塑剤としては、オイルであれば、アロマオイル、プロセスオイル、パラフィンオイルなどの鉱物油が挙げられ、アロマオイルが好ましい。加硫ゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。補強用充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、マイカなどが挙げられる。補強用充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10〜150質量部、より好ましくは30〜90質量部である。加硫ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。有機溶剤への浸漬後に行う試験としては、クラックを発生させることができる試験であれば特に限定されないが、クラック発生の主原因がオゾンと考えられるため、JIS−K6259:2004で規定されるオゾン劣化試験が好ましく、静的ひずみ20%、試験温度40℃、オゾン濃度50pphm、試験時間(オゾン照射時間)8時間の条件を満たす静的オゾン劣化試験がより好ましい。耐クラック性能は、加硫ゴム組成物における老化防止剤、ワックス及び可塑剤の残存量だけでなく、加硫ゴム組成物の配合内容の影響も受けるため、配合内容ごとに耐クラック性能を評価する必要がある。しかしながら、オゾン量が多すぎる試験では、配合内容が異なる場合でも同レベルのクラックが生じてしまい、配合内容による耐クラック性能の差を評価することができないおそれがある。そこで、オゾン量を抑えた上記の条件を満たす試験を行うことで、配合内容による耐クラック性能の差についても評価することが可能となる。上記の条件を満たす試験の結果が、JIS−K6259:2004に準じた評点付けで、き裂の大きさ及び深さが1〜3であるゴム組成物(加硫ゴム組成物)を用いることで、耐クラック性能に優れた空気入りタイヤを製造することができる。このゴム組成物は、サイドウォール、トレッドに好適である。本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのサイドウォールなどの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを製造できる。本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤとして好適に用いることができる。実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。以下に、製造例1で用いた各種薬品について説明する。NR:TSR20BR:宇部興産(株)製のBR150Bカーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351(N2SA:71m2/g)オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140(アロマオイル)フェニレンジアミン系老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)(老化防止剤6C)ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺Rステアリン酸:日油(株)製の椿粉末硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)(製造例1)(実施例1〜6及び比較例1〜3で使用する試験片の作製)ゴム成分(NR50質量部、BR50質量部)100質量部に対して、カーボンブラック60質量部、オイル5質量部、フェニレンジアミン系老化防止剤2質量部、ワックス2質量部、酸化亜鉛5質量部、及びステアリン酸3質量部を混練り配合し、混練物を得た。次に、この混練物に、粉末硫黄1.25質量部及び加硫促進剤0.35質量部を混練り配合し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、厚さ2mmの加硫ゴムシート(加硫ゴム組成物)を得た。得られた加硫ゴムシートから15mm×120mmの長方形状に切り出したものを試験片とした。(実施例1〜6及び比較例1〜3で使用する有機溶剤)アセトン:和光純薬工業(株)製の特級アセトン(SP値:10)エタノール:和光純薬工業(株)製の特級エタノール(SP値:12.7)ヘキサン:和光純薬工業(株)製の特級ヘキサン(SP値:7.3)シクロヘキサン:和光純薬工業(株)製の特級シクロヘキサン(SP値:8.2)(実施例1〜6、比較例1、2)試験片を密閉蓋付きのバット内に置き、試験片質量の5倍相当のアセトン(実施例1)、エタノール(実施例2)、ヘキサン(比較例1)、シクロヘキサン(比較例2)を試験片が浸かる(深さ2mm以上)ように加えた後、蓋を閉じた。その後、試験片入りのバットを、23℃の条件下で、アセトン(実施例1)は6時間、エタノール(実施例2)は72時間、ヘキサン(比較例1)、シクロヘキサン(比較例2)は24時間放置した。また、実施例1において浸漬時間を24時間に変更したものを実施例3とし、実施例2において浸漬時間を168時間に変更したものを実施例4とし、実施例1において浸漬時間を3時間に変更したものを実施例5とし、実施例2において浸漬時間を48時間に変更したものを実施例6とした。(試験片の永久歪の確認)有機溶剤への浸漬による膨潤で試験片に永久歪が生じていないかを目視で確認したところ、実施例1〜6では試験片の形状及び大きさの変化は確認できず、耐クラック性能に影響を与える永久歪は生じていないと判断した。一方、比較例1、2では、ゴムが膨潤しすぎてサンプルが変形したため、永久歪が生じたと判断した。従って、実施例1〜6の試験片の老化防止剤量及び可塑剤量が、市場のタイヤの状態を再現できていれば、耐クラック性能も再現できていると考えられる。そこで、以下では、アセトン、エタノールを用いた実施例1〜6について検討した。(比較例3)比較例3として、有機溶剤への浸漬を行わない通常の熱劣化試験を実施した。用いた試験片は実施例1〜6と同じである。予め80℃に加熱した加熱オーブン内に試験片を直接置き、72時間放置した。(残存老化防止剤濃度の計測)実施例1〜6及び比較例3の試験後の試験片について、以下の手法に基づき試験片内部の老化防止剤の濃度を計測した。試験片から1mm角の立方体形状に切り出したものを50mg準備し、アセトン(和光純薬工業(株)製の特級アセトン)にて試験片内部の老化防止剤などを抽出した。得られた抽出物を、ガスクロマトグラフィー装置((株)島津製作所製)を用いて成分分析を行った。溶離剤として窒素ガス((株)島津製作所製、純度99.9%)を用い、毎分50mL、50℃の条件で分離した後、概物質の溶出ピークの面積を用いて、概物質の重量分率を見積もった。また、経過週数が判明している市場古品(中古タイヤ)の老化防止剤濃度を同一の手法を用いて分析し、判定基準とした。市場でクラックが問題視され始めるのが経過年数3年(市場投入後160週)ごろであることから、製造初期(0週)の老化防止剤濃度を100とし、経過週数に対する老化防止剤の減少量を直線近似することで得られた直線から160週経過後の指数値を見積もり、目標値とした。目標値は20であった。同様に、各実施例、比較例について、抽出前の老化防止剤濃度を100として抽出後の老化防止剤の残存濃度を指数化し、20に近いかどうかを確認した。結果を表1に示す。(アセトン可溶分量(AE量)の計測)ゴム中の可塑剤量の目安であるアセトン可溶分量(AE量)を上記と同じようにアセトン抽出物量(オイル成分)より見積もり、製造初期(0週)を100として160週経過後の指数値を見積もった。目標値は85であった。同様に、各実施例、比較例について、抽出前のAE量を100として抽出後のAE量を指数化し、85に近いかどうかを確認した。結果を表1に示す。なお、表1において、試験時間は、実施例1〜6の場合は試験片を有機溶剤に浸漬させた時間を、比較例3の場合は試験片を加熱オーブン内に放置した時間を意味する。表1より、有機溶剤としてアセトンを使用した場合、実施例1のように6時間で市場投入後160週経過レベルの残存老化防止剤量、残存可塑剤量を再現できることが分かった。また、表1の実施例1、3、5から近似曲線を求めることにより、有機溶剤としてアセトンを使用した場合、24時間で残存老化防止剤量がほぼ0になる市場投入後300週経過レベルの残存老化防止剤量、残存可塑剤量を再現できることが分かった。また、表1の実施例2、4、6から近似曲線を求めることにより、有機溶剤としてエタノールを使用した場合、実施例4と実施例6との間の時間である144時間で市場投入後160週経過レベルの残存老化防止剤量を再現できることが分かった。また、表1の実施例2、4、6から近似曲線を求めることにより、有機溶剤としてエタノールを使用した場合、288時間で残存老化防止剤量がほぼ0になる市場投入後300週経過レベルの残存老化防止剤量、残存可塑剤量を再現できることが分かった。表1から、有機溶剤としてアセトンやエタノールを使用することで、市場において数年経過後の残存老化防止剤量、可塑剤量を充分に短い試験時間で再現可能であることが分かった。また、アセトンを使用した場合、試験時間をより短くすることができることが分かった。以下に、製造例2で用いた各種薬品について説明する。NR:TSR20BR:宇部興産(株)製BR150Bカーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351(N2SA:71m2/g) オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140(アロマオイル)老化防止剤6C(フェニレンジアミン系老化防止剤):大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)老化防止剤RD(キノリン系老化防止剤):大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355ライスワックス:横関油脂工業(株)製の精製ライスワックスS−100酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺Rステアリン酸:日本油脂(株)製の椿硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)(製造例2)(実施例7〜13で使用する試験片の作製)表2に示す配合処方に従い、粉末硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練り配合し、混練物を得た。次に、この混練物に、粉末硫黄及び加硫促進剤を混練り配合し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、厚さ2mmの加硫ゴムシート(加硫ゴム組成物)を得た。得られた加硫ゴムシートから15mm×120mmの長方形状に切り出したものを試験片とした。(実施例7〜13で使用する有機溶剤)アセトン:和光純薬工業(株)製の特級アセトン(SP値:10)(実施例7〜13)試験片を密閉蓋付きのバット内に置き、試験片質量の5倍相当のアセトンを試験片が浸かる(深さ2mm以上)ように加えた後、蓋を閉じた。その後、試験片入りのバットを、23℃の条件下で6時間放置した。実施例1で示されたように、この条件により、市場投入後160週経過後の残存老防量、可塑剤量を再現できる。(オゾン劣化試験による耐クラック性能の評価)JIS−K6259:2004に基づき、静的ひずみ20%、試験温度40℃、オゾン濃度50pphm、試験時間8時間の条件で静的オゾン劣化試験を行った。その後、試験片に生じたクラックを10倍ルーペで目視観察し、評点付けを行った。評点付けは、JIS−K6259:2004に準拠し、き裂の数をA、B、Cのアルファベットで、き裂の大きさ及び深さを1、2、3、4、5の数字で評価した。(実車走行テストによる耐クラック性の評価)各加硫ゴム組成物をサイドウォールに用いたタイヤで実車走行テストを実施し、15000km走行後のサイドウォール表面に発生したクラックを目視観察した。結果は、クラックがクレームレベルであれば×、クレームとならないレベルであれば○とした。表2より、実施例7〜13に使用した試験片は、耐クラック性能にバラつきがあることが分かった。有機溶剤への浸漬時間、浸漬温度は同一であることから、この耐クラック性能のバラつきは、ゴム組成物の配合による差であると考えられる。また、表2より、オゾン劣化試験後の評点で、き裂の大きさ及び深さが3以下のゴム組成物は、実車走行テストでもクレームレベルのクラックが発生しないことが分かった。溶解度パラメーターが10〜13の有機溶剤に加硫ゴム組成物を浸漬させ、該加硫ゴム組成物中の老化防止剤を減少させることを特徴とする老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法。前記有機溶剤がアセトン又はエタノールである請求項1記載の老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法。前記有機溶剤がアセトンであり、浸漬させる時間が6〜24時間である請求項1又は2記載の老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法。前記有機溶剤がエタノールであり、浸漬させる時間が144〜288時間である請求項1又は2記載の老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法。前記有機溶剤に前記加硫ゴム組成物を浸漬させた後、JIS−K6259:2004に基づき、静的ひずみ20%、試験温度40℃、オゾン濃度50pphm、試験時間8時間の条件で静的オゾン劣化試験を行う請求項1〜4のいずれかに記載の老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法。請求項5記載の方法により行った静的オゾン劣化試験の結果が、JIS−K6259:2004に準じた評点付けで、き裂の大きさ及び深さが1〜3であるゴム組成物。請求項6に記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。 【課題】老化防止剤を含有するゴムにおける老化防止剤の減少を短期間で再現可能な劣化試験方法を提供する。【解決手段】溶解度パラメーターが10〜13の有機溶剤に加硫ゴム組成物を浸漬させ、該加硫ゴム組成物中の老化防止剤を減少させることを特徴とする老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法に関する。【選択図】なし


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