タイトル: | 公開特許公報(A)_一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法、及びこれに用いる面方位測定装置 |
出願番号: | 2013069985 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 21/84,H01L 21/66 |
勝野 正和 藤本 辰雄 柘植 弘志 佐藤 信也 JP 2014194352 公開特許公報(A) 20141009 2013069985 20130328 一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法、及びこれに用いる面方位測定装置 新日鐵住金株式会社 000006655 佐々木 一也 100132230 成瀬 勝夫 100082739 中村 智廣 100087343 勝野 正和 藤本 辰雄 柘植 弘志 佐藤 信也 G01N 21/84 20060101AFI20140912BHJP H01L 21/66 20060101ALI20140912BHJP JPG01N21/84 ZH01L21/66 L 4 2 OL 12 (出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合技術開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト/研究開発項目(1)−1−2高品質・大口径SiC結晶成長技術開発(その2)」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 2G051 4M106 2G051AA51 2G051AB20 2G051BA10 2G051BA11 2G051BB07 2G051CC07 2G051DA08 2G051EA16 4M106AA01 4M106BA05 4M106BA06 4M106CB17 4M106DB14 本発明は、一軸結晶(uniaxial crystal)からなる単結晶基板の面方位を測定する方法、及びこれに用いる測定装置に関し、詳しくは、光学的手法によって、基板の法線方向に対する結晶主軸の傾斜角度、及び、結晶主軸の傾斜方向を特定する面方位測定方法、及び、これに用いる面方位測定装置に関する。 単結晶基板では、基板の法線方向に対する結晶主軸(炭化ケイ素ではc軸)の傾斜角度や、その向きに応じて、種々の物性値が異なる。前者の傾斜角度は「オフ角度」と呼ばれ、後者の向きは「オフ方向」と呼ばれる。単結晶基板の利用においては、基板特性を最大限発揮させるために、オフ角度やオフ方向を含めた最適な面方位を選択する必要がある。そのため、単結晶基板の品質項目の一つとして、この面方位に関する情報が提供されている。一般に、単結晶基板の面方位測定では、基板のオリフラに沿った方向が示す結晶方位(例えば炭化ケイ素では[11-20]方向となるように狙って加工したオリフラに沿った直線の方向)と結晶主軸を基板の表面に投影したベクトルとのなす角度で表される実際のオフ方向と、基板の法線に対する結晶主軸の傾斜角度で表されるオフ角度とを求める必要がある。特に、基板口径が6インチになった時点で、オリフラの設置方法が従来の大小2個(面方位判定が比較的容易)から単一オリフラに国際標準が変更され、単にオリフラ位置のみでは面方位特定が困難になっている。このため、オフ角度およびオフ方向を検出する方法が面方位チェックにおいて重要となってくる。 現在、単結晶基板の面方位測定には、主に、X線回折法が用いられている。例えば、単結晶サファイヤ基板の主面におけるオフ角度の大きさ測定したり(特許文献1の段落0048参照)、単結晶シリコン基板のオフ角方向を測定したり(特許文献2の段落0036参照)、単結晶GaN基板のオフ角度を測定したり(特許文献3の段落0060参照)など、様々な場面でX線回折法が利用されている。ところが、X線を使用するためには、X線作業主任者の配置やX線管理区域の指定が必要であることからも分るように、X線回折法は、誰でも簡単に使える手段であるとは言い難い。 そこで、特許文献4では、水晶薄膜における屈折率の異方性に着目して、X線を使わずに、水晶薄膜の法線(成長方向)と水晶薄膜の光学軸とのなす角度、及び、光学軸の傾斜方向を求める方法を提案している。すなわち、この特許文献4で提案する方法では、水晶薄膜の法線と水晶薄膜の光学軸とのなす角度をほぼ45°に設定した上で、分光器を出た光が偏光子、水晶薄膜、及び検光子を通過した後の光量を求め、検光子を回転させた際の透過光量の変化をフーリエ変換して算出した式と比較することで、水晶薄膜の法線と水晶薄膜の光学軸とのなす角度、及び、光学軸を水晶薄膜に投影した線と水晶薄膜の外形基準辺とのなす角度を求めるようにしている。しかしながら、この方法の適用にあたっては、位相差を利用した測定であることから、被測定物の厚さに制約がある。そのため、バルクの単結晶基板における面方位を測定するのに十分相応しい方法であるとは言えない。 また、特許文献5には、特定波長の光源と偏光板とを組み合わせることで、単結晶基板の面内における結晶方位を求める方法が開示されている。しかしながら、この方法では、結晶主軸(c軸)が基板の法線方向に対して傾いている場合には、その傾斜角度まで特定することはできず、現在、主流であるようなオフ角度を持った基板の面方位を測定するのには不適である。特開2007-181,007号公報特開平8-255,755号公報特開2009-18,983号公報特開2006-16,230号公報特開平5-340,878号公報 本発明は、上記のような従来技術を鑑みてなされたものであり、光学的手法によって、一軸結晶からなる単結晶基板の面方位を、正確かつ簡便に測定することができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記方法に用いる面方位測定装置を提供することを目的とする。 本発明者等は、バルク単結晶基板の面方位を測定するのに好適な手段について鋭意検討した結果、一軸結晶における光学的異方性を利用して、すなわち、一軸結晶からなる単結晶基板に任意の方向から光を入射させた際、光の屈折率が結晶主軸に固有な屈折率の合成値となって、光の入射方向の関数になることを利用することで、X線回折法によらずに、しかも、測定対象である基板の面方位や、その厚さに制約を受けることなく、正確かつ簡便に面方位を特定できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。 (1) 一軸結晶からなり、オリフラを備えた単結晶基板の面方位を測定する方法であって、 i)偏光子から取り出された直線偏光を測定光とし、該測定光が、検光子を介して、光検出器で検出される光量がゼロになるようにした状態で、 偏光子と検光子との間に測定対象の基板を配置すると共に、該基板の法線方向に沿って測定光が入射されるようにして、 光検出器側で検出される光量がゼロになるように、測定光の光軸を中心に基板を回転させて、オリフラが示す結晶方位と測定光の偏波面とのなす角を測定して、結晶主軸の傾斜方向を求め、 ii)次いで、基板を測定光の光路から外して、測定光の光軸を中心に偏光子と検光子とをそれぞれ同方向に0°超90°未満の範囲内の角度で回転させた上で、再度光検出器側で検出される光量がゼロになるように調整して、i)の測定後の回転角度を維持したまま基板を測定光の光路に再配置し、測定光の進行方向に対して該基板を前後に傾けて、基板からの出射光の偏波面が基板に入射される前の測定光の偏波面と揃う位置で、基板の法線と測定光の光軸とのなす角を測定して、結晶主軸の傾斜角度を求める、ことを特徴とする一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法。 (2) ii)の測定において測定光の光軸を中心に偏光子と検光子とを回転させる角度が45°である、(1)に記載の一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法。 (3) 一軸結晶からなる単結晶基板が、炭化ケイ素(SiC)単結晶基板であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法。 (4) (1)〜(3)のいずれかに記載の面方位測定方法に使用する装置であって、 (a)光源、(b)偏光子、(c)試料ステージ、(d)検光子、及び(e)光検出器を用いて、(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)の順に配置して装置構成が組まれることを特徴とする、一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定装置。 本発明によれば、光学的手法によって、一軸結晶からなる単結晶基板の面方位を正確に測定することができる。そのため、X線作業主任者の配置やX線管理区域の指定など、X線の安全利用にあたって細心の注意が求められるX線回折法に比べて、遥かに簡便に面方位を特定することができる。また、本発明によれば、測定対象の基板が特定の厚みに制限されたり、その面方位に制約を受けることがないため、一軸結晶からなる種々の単結晶基板に対して、広範囲に適用することができる。図1は、単結晶基板の面方位を説明する斜視模式図である。図2は、本発明における測定装置を示す側面模式図である。図3は、測定光の光軸に沿って光検出器側から光源を見た状態であって、単結晶基板の屈折率の方位依存性を表す楕円である。図4は、測定光の光軸方向から基板を見た状態であって、第一の測定段階において基板を回転させる様子を示す平面模式図である。図5は、第二の測定段階において基板を傾斜させる様子を示す側面模式図である。図6は、従来法のX線回折により面方位を測定する様子を示す側面模式図である。 以下、本発明について、図面を用いながら詳細に説明する。 本発明においては、一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定を、i)単結晶基板が備える結晶主軸Lを基板の表面に投影したベクトルが、基板のオリフラが示す結晶方位OF(以下、「オリフラ方位」と言う場合がある)に対して、どの程度の角度を有するのか測定する段階(第一の測定段階)と、ii)基板の法線nに対する結晶主軸の傾斜角度を測定する段階(第二の測定段階)との、2段階に分けて行う。このうち、i)の段階で求める角度は、図1に示すなす角Φ(ファイ)であり、これは、いわゆる「オフ方向」と呼ばれるものに相当する。一方、ii)の段階で求める角度は、図1に示すなす角θであり、これは、いわゆる「オフ角度」と呼ばれるものに相当する。 オフ方向は単結晶基板の素材によってそれぞれ特有の結晶方位になるように加工されるが、例えば炭化ケイ素(SiC)においては、一般にオフ方向として[11−20]方向を選ぶことに決まっている。炭化ケイ素は通常[0001]方向であるc軸が基板面に対して傾斜角度(オフ角度)が付くようにして加工するが、その場合、切断した基板には必ずC面とSi面が表裏になるような基板が切り出される。C面とSi面は物理的特性が異なるため、基板利用の際には必ず面方位が分かるようにする必要がある。SiCでは口径4インチまでの基板では、この面方位が確認できるように加工することになっていた。すなわち基板加工の際には、c軸が傾いている方向(オフ方向)を直線で表すために、オフ方向に平行に基板の端に直線部分を設けることになっている。この直線部分が「オリフラ」(オリエンテーション・フラットの略称)と呼ばれる部分である。SiCでは口径4インチまでの基板ではさらに面方位が分かるように、オフ方向を表すオリフラを大きく付け、それに対して基板の周方向に90°ずれた位置に長さがやや短い「小オリフラ」を付けていた。この「小オリフラ」が「大オリフラ」に対して周方向で「左に90°」の位置に見える面が必ず「Si面」となるように加工することが国際標準で決められていた。しかし、口径6インチSiC基板においてはSi大口径基板と同一仕様である、オリフラを1箇所のみ付ける「単一オリフラ」が国際標準仕様となり、このためにオリフラの位置のみでは面方位を特定することができなくなった。この場合、基板を正面から見た際にオリフラ位置が下になっている時に、従来と同じ仕様、すなわち小オリフラが大オリフラに対して周方向で左上90°に位置するときに、c軸が小オリフラの方向へ傾斜(オフ)している面が「Si面」となるように加工することが定められている。このため、単一オリフラでもオフ方向測定により面方位を特定することが可能となる。 このため、オリフラ方向および角度測定の際にはこのオリフラを特定の方位にセットして測定することが便利であり、本発明でもそのような手法を用いる。 本発明における測定に際しては、図2に示すような装置構成からなる測定装置を用いるようにする。すなわち、光源1、偏光子3、検光子6、及び光検出器7を用いるようにして、偏光子3を通して、光源1からの光を直線偏光にして測定光8とし、この測定光8が、検光子6を介して、光検出器7で検出される光量がゼロになるように、測定装置を構成する。ここで、光源1については、例えば、Hgランプ、ハロゲンランプ等の自然光を用いることもでき、He−Neレーザー等のレーザー光を用いることもできる。但し、自然光を用いる場合には、バンドパスフィルター等の分光器2で単色化して、偏光子3に入射させるようにするのが好ましい。また、偏光子3及び検光子6については、公知の偏光板等を用いることができ、光検出器7については、例えば、光量を信号強度として検出することができるような公知のものが使用可能である。なお、光検出器7で検出される光量がゼロになるようにするとは、偏光子3の偏光方向と検光子6の偏光方向とが直交する状態を意味する。 先ず、i)の測定段階では、図2に示す装置構成にした測定装置において、偏光子3と検光子6との間に、試料ステージ5を用いて測定対象の基板4を配置する。その際、基板4のオリフラ4aが鉛直線に沿うように位置決めする。すなわち、図4(a)に示すように、紙面の上下方向を鉛直線とすれば、それにオリフラ4aが沿うようにする。このとき、オリフラ4aは左右どちらの位置にあっても構わない。次に、基板4の法線方向nに沿って測定光8が入射されるように、測定光8の進行方向(光軸8a)を基板4の法線方向nに揃えるようにする。ここで、試料ステージ5は、測定光に対して上記のような位置関係で基板を保持して、基板に入射した測定光を検光子側に透過させることができるものであれば良く、公知のものを使用することができる。また、後述するように、測定光の光軸を中心に基板を回転させることができる回転機構や、第二の測定段階で測定光の進行方向前後に基板を傾斜させることができる傾斜機構を備えたものを使用するのが好適である。 基板4の法線方向nに沿って入射された測定光8は、一軸結晶からなる単結晶基板の屈折率の方位依存性により、検光子6側には楕円偏光状態で出射される。そこで、図4(a)に示すように、基板4の光学主軸に対して、測定光9である直線偏光の偏波面8bが平行に入射されるように、測定光8の光軸8aを中心に基板4を回転させて(図中の両矢印方向)、光検出器側で検出される光量が再びゼロになる位置を探す。すなわち、図3に示したように、楕円偏光状態をベクトル表記した際の楕円9の短軸方向9a又は長軸方向9bは、基板の光学主軸に対応し、この長軸又は短軸方向と基板に入射される測定光の偏波面8bとが一致すると、基板から出射する光は直線偏光になるため、検光子を透過することができなくなる。そのため、図4(b)に示すように、光検出器側で検出される光量がゼロになった位置で、基板4のオリフラ方位OFと、基板4に入射された測定光の偏波面8bとのなす角αを測定すれば、このなす角αは、先に説明した図1に示したなす角Φに該当するため、基板の表面における結晶主軸の傾斜方向を特定することができる。 次に、ii)の測定段階では、なす角Φを求めた基板の回転位置のまま、すなわち回転機構を有した試料ステージごと、いったん測定光8の光路から外し、次に、i)の測定の設定に対して、測定光8の光軸を中心に偏光子3及び検光子6を最初の設定に対して0°超90°未満の範囲内でそれぞれ同じ方向に回転させ、その位置で再度調整して、偏光子3を通して光源1からの光を直線偏光にした測定光8が、検光子6を介して、光検出器7で検出される光量がゼロになるように、測定装置を構成する。この時の回転させる角度については当初の角度から前記したように0°超90°未満の範囲内であれば(いずれの方向でも)任意の角度で良いが、次回測定において調整時にもっとも検出光の変化が大きくなり判別がより容易となる点において45°に設定することがより好適である。 この調整を行った後、再度i)で回転角度を決定したままの角度を維持した状態で試料ステージごと基板を光路に戻す。この時点で、i)の測定時には基板から出射された光が光検出器7で検出される光量ゼロとなっていた状態が、偏光子の設定を変えたことにより再び検出されるようになっている。 次いで、基板に入射した測定光の偏波面に対して基板を傾けるようにして、すなわち、図5に示すように、最初の測定において確認した「オフ方向」に沿った方向を維持したままで、測定光8の光軸8aに対して基板を回転させずに、測定光の光軸8aと基板との交点を通り、図5での紙面に垂直に向かう回転軸pを中心にして、光軸を通る基板の法線方向のベクトルnの先端が上下するように、基板4の上端と下端を測定光の進行方向前後に傾斜させるようにして、基板4から出射する光の偏波面が、基板に入射する測定光8の偏波面と一致する位置を求める。 ここで、基板4からの出射光の偏波面が測定光の偏波面と揃う位置で屈折率の異方性が消失していれば(すなわち屈折率が等方的となれば)、一軸結晶からなる基板の光学主軸と平行に測定光の偏波面が入射する状態に相当していることになる。そのため、このときの基板の法線nと、測定光の光軸8aとのなす角βを測定すれば、このなす角βが、先に説明した図1に示したなす角θに該当するため、基板の法線nに対する結晶主軸の傾斜角度を特定することができる。 基板から出射した光が直線偏光であることを確認するためには、例えば、偏光子3を交換して、これまで使用した測定光とは別の任意の直線偏光を基板に入射させるようにし、基板からの出射光の偏波面が、任意の直線偏光の偏波面と揃うことを確認する(つまり、前に使用した直線偏光の時と同様に、光検出器8での光量がゼロになる)ようにしても良い。 また、ii)の測定においては、図2の装置構成における基板4と検光子6との間に、「1/4波長板」を配置すると共に、この1/4波長板の光学主軸が、測定光8の偏波面に対して平行又は垂直になるようにして、測定装置を構成する手法も適用可能である。この手法は、セナルモン法に準拠するものであり、1/4波長板は公知のものを使用することができる。この場合は試料ステージとして、基板を任意の角度に回転させた際、その回転角度を固定したままで回転した位置において前記した測定手法と同様に基板が前後方向に傾斜させられるようなステージ構成としておく必要がある。 この1/4波長板を使用する時は、i)の測定を行った後に、その角度から測定光の光軸を中心に基板を45°さらに回転させる。こうすることでi)の測定にて光検出器7にて検出できる光量がゼロとなっていたのが再び検出されるような配置となる。このような配置にした上で上記したように1/4波長板を配置し、それから測定光の進行方向に対して基板を前後させると、やはり基板の持つ光学主軸が測定光8の光軸8aが完全に一致した場合のみ、再び光検出器7にて検出できる光量がゼロとなる。ここで同じように基板の法線nと、測定光の光軸8aとのなす角βを測定すれば、このなす角βが、先に説明した図1に示したなす角θに該当するため、基板の法線nに対する結晶主軸の傾斜角度を特定することができる。 この場合の利点は基板をセットした試料ステージを光路から外すという作業を省けることであるが、その代わりに試料ステージとしてxyz座標のいずれにも独立して可動できるような機構にすることが必要であり、その点では先に示した手法の方が簡便となることもあり得る。いずれの手法も適用可能であり、便宜を考えて選択することができる。 本発明の方法は、一軸結晶(uniaxial crystal)からなる単結晶基板であれば、特に制約なく面方位を測定することができ、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等をはじめとする種々の単結晶基板の表面における結晶主軸の傾斜方向、及び、基板の法線nに対する結晶主軸の傾斜角度を特定することができる。 以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の内容に制限されるものではない。[実施例1] 一軸結晶である炭化珪素(SiC)単結晶基板に対して、本発明の面方位測定方法により、結晶主軸の傾斜方向、及び基板の法線に対する結晶主軸の傾斜角度を求めた。測定対象のSiC単結晶基板は、4H型のポリタイプを有して、その表面(主面)は(0001)であり(すなわち結晶主軸は<0001>であり)、口径は3インチ、厚さは300μmである。この基板は、以下のようにして、窒素ドープによりn型化したインゴットから切り出されたものであり、マルチワイヤソーを用いたスライス化では、ワイヤーは必ずしも正確に真っ直ぐに進むとは限らないため、研磨完了後、個々の基板について、基板の法線方向に対する結晶方位を確認する必要がある。 先ず、X線回折装置を用いて、インゴットをスライスする際の切り出し方位が[11−20]方向に4.0°、[1−100]方向に0.0°(意図的なオフ化なし)となるように基準面を研削した。次いで、X線回折装置を用いて方位を定め、[11−20]方向に沿うオリフラの研削を行った。これらの外形加工を行った後、マルチワイヤソーを用いてインゴットを切断し、スライス化した。これをダイヤモンド砥粒の粒度を順次細かくしながら、粗LAP、仕上げLAP、鏡面研磨の順に加工し、表面を鏡面化した。研磨後は、エチルアルコール、アセトン、イソプロピルアルコールの順に、超音波洗浄機を用いて研磨砥粒の残さを除去した。次いで、N2ガンのブローによって乾燥させ、SiC単結晶基板を得た。 本発明に係る実施例1の測定では、先ず、図2に示した測定装置を用いて、上記で得られたSiC単結晶基板について、オリフラ方位に対する結晶主軸の傾斜方位を測定した。この測定装置では、光源1としてHgランプ(ウシオ社製;低圧UVランプ ULO-6DQ)を用い、バンドパスフィルター2で波長546.1nmの輝線を取り出し、偏光子3(メレスグリオ社製;バンドパス干渉フィルタ F10-546.1-4-25.0M)に入射させて測定光8とした。SiC単結晶基板4を試料ステージ5(中央精機社製;透過型微動回転ステージ RS-211Tおよび傾斜ステージ (±8°) TS-C611)に設置する前に、偏光子3から取り出された測定光が、検光子6(メレスグリオ社製;バンドパス干渉フィルタ F10-546.1-4-25.0M)を介して、光検出器7(浜松ホトニクス社製;フォトダイオードモジュール C10439-03)で検出される光強度がゼロになることを確認した。 そして、SiC単結晶基板4の法線方向nに沿って測定光8が入射されるように、試料ステージ5にSiC単結晶基板4のオリフラ4aが鉛直線に沿うように(図4(a)に示したように、基板4を正面から見てオリフラ4aが左に円の角度で90°の位置となるように)取り付けたところ、光学異方性により、光検出器8で検出される光強度はゼロでない有限値となった。次いで、SiC単結晶基板4を載せた試料ステージ5ごと、測定光8の光軸8aの回りに回転させて、光検出器7で検出される光強度がゼロとなるようにした。このとき、試料ステージ5の角度目盛を用いてオリフラと測定光8の偏波面8bとのなす角を測定したところ0.1°であり、基板4を回転させた向きから、オリフラ([11-20])は、オリフラを左に位置させた際に上となる方向([1-100]方向に相当)に0.1°ずれていることが分った。 次に、SiC単結晶基板4の法線nに対する結晶主軸の傾斜角度を測定した。オリフラ方向測定時に回転させた基板4の回転角度はそのままで基板4を試料ステージごと(基板はステージにセットしたままで外さない)測定光の光路から外した。次に偏光子3と検光子6を同方向に45°回転させた上で、再度光検出器側で検出される光量がゼロになるように調整した。その後、先に試料ステージごと外していた基板4をそのまま試料ステージごと再び光路に再配置した。 そして、図5に示したように、測定光の光軸8aと基板4との交点を通り、紙面に対して垂直である回転軸pを中心にして、光軸を通る基板の法線方向のベクトルnの先端が上下するように、基板4の上端と下端を測定光8の進行方向前後に傾斜させるようにして、基板4を透過した測定光8の偏波面の回転状況を調べた。ある傾斜角度のところで、基板4を透過した測定光8の偏波面が、基板4に入射する測定光8の偏波面と一致して回転がない状態となった。 その結果として、測定光8の進行方向が一軸結晶であるSiC単結晶基板4の光学軸と一致したことにより、検出器7で検出される光量がゼロとなった。この状態での基板4の法線nと測定光8の光軸とのなす角を測定したところ4.1°であり、基板4を傾斜させた向きから、このSiC単結晶基板4の結晶主軸は、測定光が基板に入射する方向(すなわち光軸)に沿って、つまり光源からの位置から基板平面を見た際にオリフラ位置が左に90°となる配置において、基板の法線方向nからオリフラとほぼ平行の[11−20]方向に、上方へ4.1°傾いていることが分った。これにより、光源から見てオリフラが左に見える面が「シリコン面」であることが確認できた。 この実施例1におけるSiC単結晶基板4の面方位測定結果を表1にまとめて示す。[比較例1] 実施例1と同じSiC単結晶基板を、従来法であるX線回折法により面方位を測定した。この比較例1で用いたX線回折装置を図6に示す。X線源10はMoターゲットを有する管球線源であり、X線として、Mo Kα1特性X線を用いた。線源から発せられたX線は、線源から十分離れたところに設置したスリット11で平行光に近い成分のみを取り出し、SiC単結晶基板4に入射した。基板4に入射したX線13は、格子面でブラッグ反射され、回折X線14がX線検出器12で検出される。ブラッグ反射は任意の入射角度では起こらないため、基板4の向きを変えながら、ブラッグ反射の起こる位置を探したところ、表2に示したような結晶方位が測定された。その結果、本発明に係る実施例1の光学的な測定方法とほぼ同じ測定結果が得られることが確認された。1 :光源2 :分光器3 :偏光子4 :単結晶基板、4a:オリフラ5 :試料ステージ6 :検光子7 :光検出器8 :測定光、8a:光軸、8b:偏波面9 :屈折率の方位依存性による楕円、9a:短軸方向、9b:長軸方向10:X線源11:スリット12:X線検出器13:入射X線14:回折X線 一軸結晶からなり、オリフラを備えた単結晶基板の面方位を測定する方法であって、 i)偏光子から取り出された直線偏光を測定光とし、該測定光が、検光子を介して、光検出器で検出される光量がゼロになるようにした状態で、 偏光子と検光子との間に測定対象の基板を配置すると共に、該基板の法線方向に沿って測定光が入射されるようにして、 光検出器側で検出される光量がゼロになるように、測定光の光軸を中心に基板を回転させて、オリフラが示す結晶方位と測定光の偏波面とのなす角を測定して、結晶主軸の傾斜方向を求め、 ii)次いで、基板を測定光の光路から外して、測定光の光軸を中心に偏光子と検光子とをそれぞれ同方向に0°超90°未満の範囲内の角度で回転させた上で、再度光検出器側で検出される光量がゼロになるように調整して、i)の測定後の回転角度を維持したまま基板を測定光の光路に再配置し、測定光の進行方向に対して該基板を前後に傾けて、基板からの出射光の偏波面が基板に入射される前の測定光の偏波面と揃う位置で、基板の法線と測定光の光軸とのなす角を測定して、結晶主軸の傾斜角度を求める、ことを特徴とする一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法。 ii)の測定において測定光の光軸を中心に偏光子と検光子とを回転させる角度が45°である、請求項1に記載の一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法。 一軸結晶からなる単結晶基板が、炭化ケイ素(SiC)単結晶基板であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法。 請求項1〜3のいずれかに記載の面方位測定方法に使用する装置であって、 (a)光源、(b)偏光子、(c)試料ステージ、(d)検光子、及び(e)光検出器を用いて、(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)の順に配置して装置構成が組まれることを特徴とする、一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定装置。 【課題】X線回折法によらずに、光学的手法によって、一軸結晶からなる単結晶基板の面方位を正確かつ簡便に測定することができ、しかも、基板の厚みや、その面方位に制約を受けずに測定できる方法を提供する。【解決手段】一軸結晶からなる単結晶基板に任意の方向から光を入射させた際、光の屈折率が結晶主軸に固有な屈折率の合成値となって、光の入射方向の関数になることを利用して、基板のオリフラ方位に対する結晶主軸の傾斜方位の測定と、基板の法線方向に対する結晶主軸の傾斜角度の測定とを2段階に分けて行うことを特徴とする一軸結晶からなる単結晶基板の面方位測定方法である。【選択図】図2