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タイトル:公開特許公報(A)_金属フタロシアニン化合物の製造方法、及び金属フタロシアニン化合物
出願番号:2013052178
年次:2014
IPC分類:C09B 47/20,C07D 487/22


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藤江 賀彦 フォスター・クライブ・エドウィン パテル・プラカシュ ワトソン・グラハム・ミカエル JP 2014177549 公開特許公報(A) 20140925 2013052178 20130314 金属フタロシアニン化合物の製造方法、及び金属フタロシアニン化合物 富士フイルム株式会社 306037311 高松 猛 100115107 尾澤 俊之 100151194 長谷川 博道 100164758 藤江 賀彦 フォスター・クライブ・エドウィン パテル・プラカシュ ワトソン・グラハム・ミカエル C09B 47/20 20060101AFI20140829BHJP C07D 487/22 20060101ALI20140829BHJP JPC09B47/20C07D487/22 9 OL 35 4C050 4C050PA14 本発明は、金属フタロシアニン化合物の製造方法、及び金属フタロシアニン化合物に関し、より詳細には、工業的に安定して、高収率、高純度、操作性良好なα位スルホニル置換フタロシアニン化合物の製造方法に関する。 金属フタロシアニン化合物は、塗料、印刷インキ、着色剤、電子写真感光体、光ディスク用材料として有用な化合物であり、これまで非常に多くの化合物が合成・製造されてきている。金属フタロシアニン化合物の工業的生産は、非特許文献1に詳しく記載されている。これらの方法は、次の2通りに大別される。 (1)ワイラー法:無水フタル酸や無水フタル酸イミドを原料とし、尿素と金属塩を縮合剤存在下160℃〜180℃で反応させて製造する方法である。縮合剤としては古くは砒素系の無機塩を使用していたが、最近ではモリブデン酸塩を用いるのが一般的である。本方法には、固相法として尿素溶融物を溶媒の替わりとする方法があるが、発泡の危険性や、温度降下時の固化による欠点の他、低収率でかつ製品中の不純物率が高く、量産の方法としては好まれない。 一方、ニトロベンゼン、ポリハロゲン化ベンゼン等の不活性有機溶媒を用いる液相法では、固相法に比べると収率も高く、品質も安定しやすい傾向がある。現状のフタロシアニンの工業的製法の主流を占めていると考えられる。しかし、一方でこの液相法では反応溶媒の分離回収など煩雑な単位操作を必要とし、また、前述した安全性の面において、ニトロベンゼンは毒性の点から、ポリハロゲン化ベンゼンはハロゲン化ビフェニルなど少量の有害物質の副生などの問題点を有しており、適当な高沸点溶媒の選択もフタロシアニンの工業的製法のひとつの課題と言える。 (2)フタロニトリル法:本方法は出発原料として反応性の高いフタロニトリルを利用する。この方法では、固相法、もしくはベーキング法と呼ばれているフタロニトリルと金属塩の混合物を加熱したり、溶融尿素を溶媒とする方法と、適当な高沸点溶媒中で加熱縮合させる液相法がある。この場合には、キノリン等が塩基性溶媒の縮合促進作用から好んで使用される場合もあったが、現在では安全性の観点から工業的な利用は避けるべきで、本方法における溶媒の選択もまた、ワイラー法の液相法同様課題の一つと言える。無水フタル酸と比べるとフタロニトリルの価格はおおよそ10倍なので、本方法による原料原価を考慮するとワイラー法のそれと比べると相当高くなる欠点がある。しかし、近年の高付加価値を有する機能性フタロシアニンの生産には商品としての末端価格を考慮しても、製法上の種々のメリットを重視すれば本方法は最適の方法である。 また非特許文献2には本フタロニトリル法で塩基を使用した反応条件緩和法が開示されている。例えばエチレングリコール中フタロニトリルと塩化第一銅をアンモニアのバブリング下100℃ 程度の温度で反応すると高収率で銅フタロシアニンが得られることを示している。また塩基としてのアンモニアの替わりに2級あるいは3級アミン等の高沸点アミンを縮合剤として利用することで各種のフタロシアニンを工業的に生産している。特許文献1には無金属フタロシアニンの一般的な工業製造方法が開示してあり、縮合剤としてアルコラート類のほかに、アミン類として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−セン(DBU)又は1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)等の高沸点アミン類を用いている。 しかしながら、これらのような比較的強い塩基を用いるとフタロニトリルによっては分解が起こり、目的のフタロシアニン化合物の収率が悪化するという欠点を有する。例えば電子吸引性基が置換したフタロニトリルでは目的の縮合反応と、フタロニトリルへの水酸化物イオンなどの求核剤の攻撃による分解が協奏して起こるため金属フタロシアニン化合物の縮合率は向上しない。また、金属塩化物を使った金属フタロシアニン化合物の製造では縮合が進行するにつれ塩酸が発生し、それが縮合の触媒として働く求核種の攻撃を阻害するため、縮合反応が徐々に進行しなくなり、原料が残っていてもいずれ反応は停止する。こうなると、反応混合物から目的物だけを単離するには製造的に適性のある再結晶あるいは再沈殿法では困難となり、カラムクロマトグラフィーを使用するような生産性の悪い精製法が必要となる。そのため製造工程も長くなり、工業的な見地からはコスト高につながるという欠点を有している。 また、特許文献2には、高沸点アルコール(n−ブタノール等)溶媒でDBU等の強塩基共存下に反応を行う方法、もしくは特許文献3には、金属アルコキシドを用いる方法が良く知られているが、反応系が強塩基性になるため塩基性条件下で分解しやすい置換基を有する基質は用いることが出来ない。また反応基質や溶媒中に含まれる水分によって反応基質が分解し、収率が大幅に低下することもある。 また、特許文献4には、脱水剤の存在下に反応を行う方法や、特許文献5には、金属酸化物と併用してpKa7.0以下の酸の共存下で反応させる方法も知られているが、これらの使用で収率は向上するものの満足できるレベルに至っていないのが実情である。また、特許文献6には、アルカリ土類金属化合物の存在下でフタロシアニン化合物を製造する方法が開示されているが、収率および純度の点で問題があった。 上記の問題点を解決すべく、特許文献7および8には、反応性・純度を大幅に改良した合理的な製造方法が知られているが、さらなる収率向上と製造スケールでの操作性(反応時間短縮・晶析性・ろ過性等)改良方法が望まれている。 フタロシアニン化合物の中でも、α位に置換基を有するフタロシアニン化合物は、非会合体由来のシャープな吸収スペクトルを示し、機能性染料として有用な化合物であることが知られている(特許文献9)。 また、特許文献10には、反応液を取り出さずそのまま透析によって精製する反応性フタロシアニンの製造方法が記載されている。特許第2520476号明細書特開平11−269399号公報特開平11−209380号公報特開平11−116835号公報特開平11−263919号公報特開2000−169743号公報特開2005−41856号公報特許第4512543号特開2005−307189号公報特開平6−220349号公報白井汪芳・小林長夫著、「フタロシアニン−化学と機能−」、株式会社アイピーシー(1997年)P.J.Brach、S.J.Grammatica、O.A.OssannaおよびL.Weinberger、J.Heterocyclic Chem.7(1970)、第1403〜1405頁 しかしながら、α位に置換基を有するフタロシアニン化合物の製造は難しく、特にフタロシアニン環を形成する環化工程の収率に乏しいこと、溶解性が高いために反応液からの晶析性に乏しいこと、さらには構造異性体に由来する品質の安定化が難しく、その改良方法が望まれていた。 また特許文献10は、フタロシアニンスルホニルクロリドと、反応性を有するアミンとを反応させて得られる反応性フタロシアニン染料に関して、得られる反応混合物を水溶液中で膜処理するものであり、未反応のアミン及び無機塩を除去するに過ぎず、α位に置換基を有するフタロシアニン環化反応後の反応液において、未反応のフタロニトリル化合物、未反応の金属塩、反応副生物、反応溶媒、酸及び塩基による緩衝剤などの目的とするフタロシアニン染料以外の不要なものすべてを膜処理によって除去できることは知られていなかった。 本発明は、上記従来における金属フタロシアニン化合物の製造方法に関する上記従来の問題を解決し、下記目的を達成することを課題とする。すなわち一般式(1)で表される化合物と金属化合物を反応させて金属フタロシアニン化合物を得るための製造方法であって、工業的に安定して、高収率、高純度、操作性良好なα位置換フタロシアニン化合物の製造方法を提供することにある。 本発明者らは、温和な条件でかつ高い反応収率を与える製造方法、異性体比率を高めるための製造方法および工業的に負荷の小さい整合方法に関して詳細に検討した結果、脱水剤の共存下で緩衝液中で反応を行うこと、塩基性条件下で後処理することで異性体比率を高めること、晶析を行うことなく直接膜精製によって不純物などを取り除くことを適宜組み合わせることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば下記構成の製造方法が提供でき上記目的が達成された。[1] 金属フタロシアニン化合物を製造する方法であって、 (a)下記一般式(1)で表される化合物と金属化合物とを脱水剤の共存下、有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種と酸の緩衝液中で反応を行う工程、並びに、 上記工程(a)の後に、 (b)アルカリ処理によって異性体比率を向上させる工程、及び(c)透析法によって精製する工程の少なくとも一方を含む金属フタロシアニン化合物の製造方法。 (一般式(1)中、RおよびR1は各々独立に1価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。)[2] 上記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である[1]に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 (一般式(2)中、R1aはイオン性親水性基を置換基として有する1価の置換基を表す。)[3] 上記緩衝液に含まれる溶媒としてグリセリンおよび下記一般式(V)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種を用いる[1]又は[2]に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 (一般式(V)中、sおよびtは、各々独立に正の整数を表し、Xは水素原子またはメチル基を表す。)[4] 上記脱水剤が、オルトエステル化合物である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。[5] 上記有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種が、カルボン酸アンモニウム塩である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。[6] 上記酸として、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKaが7.0以下の酸を用いる[1]〜[5]のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。[7] 上記金属化合物が、Ni、Cu、又はZnを含む[1]〜[6]のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。[8] 反応時間が4時間未満である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法により得られる金属フタロシアニン化合物。 本発明の方法によれば、工業的に安定して、高収率、高純度な金属フタロシアニン化合物を操作性良く製造できる。実施例3で得られたフタロシアニン染料(アルカリ処理後)のNMRスペクトルである。 以下、本発明の詳細について説明する。 本発明の金属フタロシアニン化合物の製造方法は、 (a)下記一般式(1)で表される化合物と金属化合物とを脱水剤の共存下、有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種と酸の緩衝液中で反応を行う工程、並びに、 前記工程(a)の後に、 (b)アルカリ処理によって異性体比率を向上させる工程、及び(c)透析法によって精製する工程の少なくとも一方を含む。[工程(a)] まず、(a)一般式(1)で表される化合物と金属化合物とを脱水剤の共存下、有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種と酸の緩衝液中で反応(フタロシアニンの合成反応)を行う工程(工程(a))について詳細に説明する。<一般式(1)で表される化合物> 工程(a)では、下記一般式(1)で表される化合物を用いる。 (一般式(1)中、RおよびR1は各々独立に1価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。) 一般式(1)において、RおよびR1は各々独立に1価の置換基を表し、1価の置換基の具体例としてはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル、3−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)プロピル)、アラルキル基(好ましくは炭素7〜30の置換もしくは無置換のアラルキル基で、例えばベンジル、フェネチル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基で、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、アルケニル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルケニル基で、好ましくは炭素数2〜30であり、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基で、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、アルキニル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキニル基で、好ましくは炭素数2〜30であり、例えば、エチニル、プロパギル、トリメチルシリルエチニル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基で、例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基〔好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくは非芳香族、単環もしくは縮環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有するヘテロ環基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、さらには4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)が好ましい〕、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のスルホニルカルバモイル基、例えば、メタンスルホニルカルバモイル、オクタンスルホニルカルバモイル、ベンゼンスルホニルカルバモイル)、アシルカルバモイル基(好ましくは炭素数2〜30のアシルカルバモイル基で、例えば、ホルミルカルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル)、スルファモイルカルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30のスルファモイルカルバモイル基で、例えば、メチルスルファモイルカルバモイル、フェニルスルファモイルカルバモイル)、カルバゾイル基(好ましくは炭素数1〜30のカルバゾイル基で、例えば、カルバゾイル、3−エチルカルバゾイル、3,3−ジメチルカルバゾイル、2−エチル−3−フェニルカルバゾイル)、オキサリル基(好ましくは炭素数2〜30のオキサリル基で、例えば、メチルオキサリル、フェニルオキサリル、エトキシオキサリル、フェノキシオキサリル)、オキサモイル基(好ましくは炭素数2〜30のオキサモイル基で、例えば、オキサモイル、N−エチルオキサモイル、N−フェニルオキサモイル、N,N−ジエチルオキサモイル)、シアノ基、チオカルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30のチオカルバモイル基で、例えば、チオカルバモイル、N−エチルチオカルバモイル、N−フェニルチオカルバモイル)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含み、好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ、ヘキサデシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30の置換若しくは未置換のアリールオキシ基で、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(前述のヘテロ環基のヘテロ環オキシ基が好ましく、例えば、ピリジルオキシ、イミダオイルオキシ、ピペリジルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30のアシルオキシ基で、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30のアルコキシカルボニルオキシもしくは炭素数6〜30のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、メトキシカルボニルオキシ、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基で、カルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、フェニルカルバモイルオキシ)、スルホニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30のスルホニルオキシ基で、例えば、メタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ)、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基〔(好ましくは炭素数1〜30のアルキル,炭素数6〜30のアリール、前述のヘテロ環基におけるヘテロ環)アミノ基が好ましく、例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ、フェニルアミノ、ピリジルアミノ〕、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30のアシルアミノ基で、例えばホルミルアミノ、アセチルアミノ、べンゾイルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜30のスルホンアミド基で、例えばエタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30のウレイド基で、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド)、チオウレイド基(好ましくは炭素数1〜30のチオウレイド基で、例えば、メチルチオウレイド、フェニルチオウレイド)、イミド基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のイミド基で、例えばN−スクシンイミド、N−フタルイミド)、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノもしくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30のスルファモイルアミノ基で、例えば、メタンスルファモイルアミノ、ベンゼンスルファモイルアミノ)、セミカルバジド基(好ましくは炭素数1〜30のセミカルバジド基で、例えば、セミカルバジド、N−エチルセミカルバジド、N−フェニルセミカルバジド)、チオセミカルバジド基(好ましくは炭素数1〜30のチオセミカルバジド基で、例えば、チオセミカルバジド、N−ブチルチオセミカルバジド、N−フェニルチオセミカルバジド)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数1〜30のヒドラジノ基で、例えば、ヒドラジノ、エチルヒドラジノ、フェニルヒドラジノ)、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のオキサモイルアミノ基で、例えば、オキサモイル、エチルオキサモイル、フェニルオキサモイル)、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基(好ましくは炭素数2〜30のアルキルスルホニルウレイドもしくは炭素数7〜30のアリールスルホニルウレイド基で、例えば、メタンスルホニルウレイド、ベンゼンスルホニルウレイド)、アシルウレイド基(好ましくは炭素数2〜30のアシルウレイド基で、例えばホルミルウレイド、アセチルウレイド、ベンゾイルウレイド)、アシルスルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30のアシルスルファモイルアミノ基で、例えば、アセチルスルファモイルアミノ、ベンゾイルスルファモイルアミノ)、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基〔(好ましくは炭素数1〜30のアルキル、炭素数6〜30のアリール、前述のヘテロ環基におけるヘテロ環)チオ基で、例えば、メチルチオ、フェニルチオ、ピリジルチオ〕、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基〔(好ましくは炭素数1〜30のアルキル、炭素数6〜30のアリール、前述のヘテロ環基におけるヘテロ環)スルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル、ピリジルスルホニル〕、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基〔(好ましくは炭素数1〜30のアルキル、炭素数6〜30のアリール、前述のヘテロ環基におけるヘテロ環)スルフィニル基で、例えば、メチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、ピリジルスルフィニル〕、スルホ基またはその塩、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、エタンスルファモイル、ベンゼンスルファモイル)、アシルスルファモイル基(好ましくは炭素数1〜30のアシルスルファモイル基で、例えば、ホルミルスルファモイル、アセチルスルファモイル、ベンゾイルスルファモイル)、スルホニルスルファモイル基またはその塩(好ましくは炭素数0〜30で、例えばメタンスルホニルスルファモイル、ベンゼンスルホニルスルファモイル)、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基(好ましくは炭素数0〜30で、例えばリン酸アミド、メチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド、エトキシリン酸アミド、フェノキシリン酸アミド)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、シリル基(好ましくは炭素数1〜30のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)等が挙げられる。 Rで表される1価の置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、スルホニルオキシ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、メルカプト基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基が好ましい。より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基である。さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、オキサモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基、スルファモイル基である。 Rで表される1価の置換基として特に好ましくは、ハロゲン原子、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基である。 Rで表される1価の置換基はさらに置換されていてもよい。さらなる置換基としては特に限定されないが、カルボキシル基またはスルホ基、が好ましく、スルホ基がより好ましい。 R1で表される1価の置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、スルホニルオキシ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、メルカプト基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基である。より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基である。さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、オキサモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基、スルファモイル基である。 R1で表される1価の置換基として特に好ましくは、ハロゲン原子、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基であり、更に好ましくはカルバモイル基、スルファモイル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルフィニル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基であり、その中でもスルファモイル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基が特に好ましく、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基が最も好ましい。 R1で表される置換基はさらに置換されていてもよい。このような置換された置換基としては、どのような置換基で置換された置換基をも包含するが、好ましくはイオン性親水性基で置換された置換基である。具体的には、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、窒素の4級塩構造を有する基、リンの4級塩構造などのイオン性親水性基で置換されている場合も好ましい。 イオン性親水性基としてカルボキシル基、スルホ基、リン酸基を有している場合は、これらの基は必要に応じて対カチオンを有していてもよく、対カチオンとしては金属イオン、窒素の4級塩構造を有する基、リンの4級塩構造を有する基が挙げられる。イオン性親水性基として窒素の4級塩構造を有する基またはリンの4級塩構造を有している場合は、必要に応じて対アニオンを有していてもよく、対アニオンとしては例えばハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、シュウ酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルカンカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン等を挙げることができる。 イオン性親水性基として好ましくはカルボキシル基、スルホ基、リン酸基であり、より好ましくはカルボキシル基、スルホ基である。この場合、対カチオンとして、Li、Na、K、NH4の陽イオンが好ましく用いられ、より好ましくはLi、Naの陽イオンが用いられ、特に好ましくはNaの陽イオンが用いられる。 R1で表される1価の置換基が炭素原子を有する基である場合には、その総炭素数は1〜100が好ましく、より好ましくは1〜80であり、さらに好ましくは1〜50であり、特に好ましくは1〜20である。 nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。nとして好ましくは0〜2であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。 一般式(1)で表される化合物からフタロシアニン化合物を製造する場合には、1分子のフタロシアニン化合物を製造するのに化学量論的には4分子の一般式(1)で表される化合物が必要である。 ここで、一般式(1)で表される化合物は必要な4分子全て同じものである必要はなく、異なるRおよびR1を有する一般式(1)で表される化合物の複数種類を任意の割合で用いてもよい。本発明においては一般式(1)で表される化合物の4分子が全て同じものである場合が特に好ましい。 一般式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)で表される化合物であることが好ましい形態の1つである。 (一般式(2)中、R1aはイオン性親水性基を置換基として有する1価の置換基を表す。) 一般式(2)中、R1aはイオン性親水性基を置換基として有する1価の置換基を表す。 イオン性親水性基を置換基として有する1価の置換基として、好ましくはイオン性親水性基を置換基として有するアシル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールカルバモイル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールスルファモイル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールスルフィニル基、またはイオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールスルホニル基であり、より好ましくはイオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールスルファモイル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールスルホニル基であり、特に好ましくはイオン性親水性基を置換基として有するアルキルもしくはアリールスルホニル基である。 イオン性親水性基としてはカルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基、および4級アンモニウム基が挙げられる。イオン性親水性基としては、好ましくはカルボキシル基、ホスホノ基、またはスルホ基であり、より好ましくはカルボキシル基、またはスルホ基であり、特に好ましくはスルホ基である。 イオン性親水性基は、上記のとおり、対カチオン又は対アニオンを有していてもよく、対カチオン及び対アニオンの具体例及び好ましい範囲は上記のとおりである。 以下に本発明において用いられる一般式(1)で表される化合物の例示化合物(1)〜(20)を以下に示す。化合物例(1)〜(15)は一般式(2)で表される化合物の例示化合物でもある。なお本発明はこれらの例示化合物になんら限定されるものではない。<脱水剤> 次に脱水剤について説明する。 脱水剤としては、水分子を吸着するもの(Molecular sieves、Drierite(登録商標)、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等)、水と共沸し脱水効果を示すもの(ベンゼン、トルエン、キシレン、エタノール、メタノール、アセトニトリル等)、水と化学反応を起こすもの〔有機金属化合物(Grignard反応剤、有機リチウム反応剤、有機亜鉛反応剤等)、酸無水物(カルボン酸無水物、スルホン酸無水物、混合酸無水物を含む)、酸ハライド、ポリリン酸、5酸化2リン、オキシ塩化リン、5塩化リン、3塩化リン、オルトエステル化合物、アセタール化合物、アルケニルエーテル化合物、アルケニルエステル化合物、オキシラン化合物、オキセタン化合物等〕が挙げられる。 これらの脱水剤の中でも水と化学反応を起こすものが好ましく用いられる。より好ましくは、アセタール化合物、オルトエステル化合物、アルケニルエーテル化合物、アルケニルエステル化合物、エポキシド化合物、オキセタン化合物が用いられる。更に好ましくはアセタール化合物、オルトエステル化合物、アルケニルエーテル化合物が用いられる。最も好ましくはオルトエステル化合物が用いられる。ここで用いられる脱水剤が炭素原子を含む物質である場合には、好ましくは総炭素数は1〜50であり、より好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜20である。 以下に脱水剤として特に好ましいものを示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。 脱水剤は反応混合物中の水をフタロシアニン生成反応において影響ない程度にまで除くことができる量を添加することが好ましく、その必要量は反応混合物中の水分量と用いる脱水剤の脱水効率によって決まる。そのため、脱水剤の必要量はケースバイケースであり一律に規定することは出来ないが、前記一般式(1)で表される化合物に対し0.1〜500当量(モル当量)が好ましい。 脱水剤は反応の何れの段階で添加しても良いが、反応仕込み時に添加することが好ましい。また脱水剤の脱水効率を上げる補助的な操作として、加熱、減圧、あるいは不活性ガス気流下で反応を行うなどの操作が必要な場合は、これらの適当な操作を行っても良い。<塩基> 続いて塩基について説明する。 本発明における反応で使用できる塩基としては、無機塩基及び/又は有機塩基を用いることができる。 本発明においては、有機酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩も無機塩基と定義する。 無機塩基としては、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含む無機塩基が好ましく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、及びカルボン酸アンモニウム塩が好ましい。その中でも、カルボン酸アンモニウム塩が特に好ましい。本発明で使用するカルボン酸アンモニウム塩は、脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩、芳香族カルボン酸のアンモニウム塩、ヘテロ環カルボン酸のアンモニウム塩が好ましい。これらの塩におけるカルボン酸はモノカルボン酸であってもジカルボン酸以上の多カルボン酸であってもかまわないが、好ましくはモノカルボン酸である。 脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩としては、好ましくは炭素数1〜30(より好ましくは1〜10)の飽和もしくは不飽和で、直鎖、分岐もしくは環状の置換もしくは無置換の脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩であり、例えば、ギ酸アンモニウム、シュウ酸ジアンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、ブタン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、アクリル酸アンモニウム、シクロヘキサンカルボン酸アンモニウムが挙げられる。芳香族カルボン酸のアンモニウム塩としては、好ましくは炭素数7〜30の置換もしくは無置換の芳香族カルボン酸のアンモニウム塩であり、例えば、安息香酸アンモニウム、トルイル酸アンモニウム、フタル酸ジアンモニウムが挙げられる。ヘテロ環カルボン酸のアンモニウム塩としては、好ましくは炭素数1〜30(より好ましくは3〜10)の飽和または不飽和で、置換もしくは無置換のヘテロ環カルボン酸のアンモニウム塩であり、例えば、ニコチン酸アンモニウム、イソニコチン酸アンモニウム、1−ピロールカルボン酸アンモニウムが挙げられる。これらのカルボン酸アンモニウム塩のうち、好ましくは脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩または芳香族カルボン酸アンモニウム塩であり、より好ましくは、炭素数1〜6の飽和脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩、炭素数7〜10の芳香族カルボン酸のアンモニウム塩であり、さらに好ましくは酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウムまたは安息香酸アンモニウムであり、特に好ましくは酢酸アンモニウムまたは安息香酸アンモニウムである。 有機塩基としては、アミン(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等)を使用することが好ましい。さらに好ましくは下記一般式(VI)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種である。 式中、Y1、Y2およびY3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。 上記置換基の例としては、好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の直鎖状または分岐状鎖アルキル基、好ましくは炭素数7〜30(好ましくは7〜18)のアラルキル基、好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)炭素数の直鎖状または分岐鎖状アルキニル基、好ましくは側鎖を有していてもよい炭素数3〜30(好ましくは3〜12)のシクロアルキル基、好ましくは側鎖を有していてもよい炭素数3〜30(好ましくは3〜12)のシクロアルケニル基(上記基の具体的例として、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリール基、例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)等が挙げられる。また、Y1、Y2およびY3のうち2つ以上が環を形成しても良い。例えばピリジン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ピペリジン、モルホリン、アザクラウンが好ましく、ピリジン、イミダゾール、ピペリジン、モルホリンが好ましく、更に好ましくはピリジン、ピペリジン、モルホリンである。 Y1、Y2およびY3の好ましい基はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキル基である。また各々の基はさらに置換基を有していてもよい。その置換基の例としては、好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の直鎖状または分岐状鎖アルキル基、好ましくは炭素数7〜30(好ましくは7〜18)のアラルキル基、好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)炭素数の直鎖状または分岐鎖状アルキニル基、好ましくは側鎖を有していてもよい炭素数3〜30(好ましくは3〜12)のシクロアルキル基、好ましくは側鎖を有していてもよい炭素数3〜30(好ましくは3〜12)のシクロアルケニル基(上記基の具体的例として、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリール基、例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、ハロゲノ基(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子);アルキルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のウレイド基、例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0〜30(好ましくは0〜18)の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)の置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、オクタデカンスルホンアミド)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)の置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(好ましくは炭素数6〜30(好ましくは6〜18)の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30(好ましくは2〜12)の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜30(好ましくは7〜18)の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20(好ましくは3〜12)のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30(好ましくは7〜18)の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30(好ましくは2〜12)の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30(好ましくは1〜12)の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30(好ましくは6〜18)の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30(好ましくは7〜18)の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30(好ましくは2〜12)の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30(好ましくは7〜18)の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30(好ましくは4〜12)の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基、および4級アンモニウム基)、その他シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。好ましい置換基としては、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、イオン性親水性基、ヒドロキシル基、アミノ基が好ましく、より好ましくは、ヘテロ環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、イオン性親水性基、ヒドロキシル基、アミノ基であり、更に好ましくはアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、イオン性親水性基、ヒドロキシル基、アミノ基である。 Y1、Y2およびY3としては、好ましい置換基を有するアルキル基またはシクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基である。その他、金属に対するキレート能を有するアミンが好ましい。 有機塩基としての最も好ましい例は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オキシン、エチレンジアミン、トリエチレントリアミン、グリシン、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸が挙げられる。更に好ましくはトリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オキシン、エチレンジアミン、トリエチレントリアミン、グリシン、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸であり、最も好ましくはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレントリアミン、エチレンジアミン四酢酸である。 本発明において、これら有機塩基と無機塩基を単独で使用してもよいし、併用してもよいが、これら塩基は反応溶媒に溶解することで緩衝液として働くため、溶解性の高い塩基が好ましい。上記観点からは、カルボン酸アンモニウム塩、及び有機塩基がより好ましく、特に、カルボン酸アンモニウム塩が更に好ましい。カルボン酸アンモニウム塩の中でも、特に脂肪族アンモニウム塩、芳香族アンモニウム塩が好ましく、芳香族アンモニウム塩が最も好ましい。 本発明で使用する塩基の使用量としては上記一般式(1)で示される化合物の使用量に対して0.05〜30.0当量(モル当量)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15.0当量である。 前述したように、一般式(1)で表される化合物と金属化合物から金属フタロシアニン化合物を製造する工程において、フタロシアニンの縮合の触媒として塩基を使用することで反応を効率的に進行させることが可能と考えられる。<緩衝液> 次に緩衝液について説明する。 緩衝液とは、溶液中のある成分濃度の変化に対する緩衝作用が大きい溶液をいう。例えば酢酸など弱酸(AH)とその共役塩基(A−)の混合溶液は,少量のH+またはOH−を添加しても、pH変化をわずかに抑えることができる。弱塩基(B)と共役酸(BH+)を含む系も同様な作用を示す。実用的なpH緩衝液としては多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、長倉三郎編「理化学辞典」第5版(1999年 岩波書店)に詳しい。<酸> 続いて本発明に用いられる酸について説明する。本発明に用いられる酸は、特に制限されるものではないが、25℃における水溶液中の解離指数pKaが7.0以下のものであれば有機化合物および無機化合物のいずれでも好ましい。pKaは酸解離定数の逆数の対数値を表し、イオン強度0.1、25℃で求められた値である。このpKa0.0〜7.0の酸としては、リン酸などの無機酸や酢酸、マロン酸、クエン酸等の有機酸のいずれであってもよいが、上記の改良により効果を示すpKa0.0〜7.0の酸は有機酸である。また、有機酸にあってもカルボキシル基を有する有機酸が最も好ましい。pKaが0.0〜7.0の有機酸は一塩基性有機酸であっても多塩基性有機酸であってもよい。多塩基性有機酸の場合、そのpKaが上記0.0〜7.0の範囲にあれば金属塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩)やアンモニウム塩として使用できる。また、pKa0.0〜7.0の有機酸は2種以上混合使用することもできる。 本発明に使用するpKa0.0〜7.0の有機酸の好ましい具体例を挙げると、ギ酸、酢酸、モノクロル酢酸、モノブロモ酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、モノクロルプロピオン酸、乳酸、ピルビン酸、アクリル酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、アミノ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸などの脂肪族系一塩基性有機酸;アスパラギン、アラニン、アルギニン、エチオニン、グリシン、グルタミン、システイン、セリン、メチオニン、ロイシンなどのアミノ酸系化合物;安息香酸及びクロロ、ヒドロキシ等のモノ置換安息香酸、ニコチン酸等の芳香族系一塩基性有機酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、オキサロ酢酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族系二塩基性有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、シスチン、アスコルビン酸等のアミノ酸系二塩基性有機酸;フタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基性有機酸;クエン酸などの三塩基性有機酸など各種有機酸を列挙することができる。 本発明で好ましく使用される酸はカルボン酸である。 カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヘテロ環カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸はモノカルボン酸であってもジカルボン酸以上の多カルボン酸であってもかまわないが、好ましくはモノカルボン酸である。 脂肪族カルボン酸としては、好ましくは炭素数1〜30(より好ましくは1〜10)の飽和もしくは不飽和で、直鎖、分岐もしくは環状の置換もしくは無置換の脂肪族カルボン酸で、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、酪酸、アクリル酸、シクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、好ましくは炭素数7〜30の置換もしくは無置換の芳香族カルボン酸で、例えば、安息香酸、トルイル酸、フタル酸が挙げられる。ヘテロ環カルボン酸としては、好ましくは炭素数1〜30(より好ましくは3〜10)の飽和または不飽和で、置換もしくは無置換のヘテロ環カルボン酸のアンモニウム塩で、例えば、ニコチン酸、イソニコチン酸、1−ピロールカルボン酸が挙げられる。 これらのカルボン酸のうち、好ましくは脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸であり、より好ましくは、炭素数1〜6の飽和脂肪族カルボン酸、炭素数7〜10の芳香族カルボン酸であり、さらに好ましくは炭素数1〜6の飽和脂肪族カルボン酸である。 本発明においては、有機酸の中でも、脂肪族系一塩基性有機酸が好ましくギ酸、酢酸、プロピオン酸が最も好ましい。 当該pKaが7.0以下の化合物(酸)の使用量は、一般式(1)で示される化合物の全使用量に対して0.05〜20当量(モル当量)であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10当量を仕込むことで一般式(1)で示される化合物の分解抑制作用が得られる。pKaが7.0以下の酸の使用量が、一般式(1)で示される化合物の全使用量に対して0.05当量以上であれば、一般式(1)で示される化合物の分解を抑えることができるため好ましい。一方、pKaが7.0以下の酸の使用量が、一般式(1)で示される化合物の全使用量に対して20当量以下であれば、反応系が酸性側に偏らないため反応が進行しやすくなり、好ましい。また緩衝液になるまでに要する塩基の量が少量でよく、酸と塩基の塩が結晶として生じにくいため好ましい。 本発明の金属フタロシアニン化合物の製造方法では、上記一般式(1)で表される化合物と上記金属化合物を上記の塩基及び上記pKaが7.0以下の酸との存在下で反応させるのが望ましいものであるが、この際の反応条件としては、反応温度が好ましくは30〜220℃、より好ましくは40〜200℃、更に好ましくは50〜180℃である。上記反応温度が30℃以上であれば、反応速度が遅くなりくく、製造に要する時間が短いため経済的であり、また220℃以下であれば、副生成物の生成量が少なくなるため好ましい。<金属化合物> 本発明における反応に添加する金属化合物としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物のほか、金属塩化物、金属酢酸塩、また錯体としては金属のアコ錯体、アンミン錯体を用いることができる。導入可能な金属または金属酸化物としては、VO、TiO、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Cd、Mn等を挙げることができ、これらの中でもFe、Ni、Cu、Znが好ましく、更に好ましくはNi、Cu、Znである。塩の状態として好ましいものは塩化銅、酢酸銅、グルコン酸銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛が好ましく、塩化銅、酢酸銅、グルコン酸銅がより好ましく、特に塩化銅、酢酸銅が最も好ましい。 金属化合物の使用量としては、上記一般式(1)で表される化合物の全使用量に対して、0.01〜10当量(モル当量)が好ましく、更に0.05〜5当量が好ましく、特に好ましくは0.1〜3当量である。 また、本発明における反応では触媒を用いてもよい。触媒としては通常金属フタロシアニン化合物の製造に用いられるすべての触媒を使用することができ、その例としてはモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン等のモリブデン化合物、タンクステン酸アンモニウム、リンタングステン酸アンモニウム等のタングステン化合物、ヒ素バナジウム化合物、ホウ酸、またはチタン、スズ、アンチモンのハロゲン化物あるいはオキシハロゲン化物が有り、中でもモリブデン酸アンモニウムが優れている。 本発明における緩衝液に含まれる溶媒は、一般的な有機溶媒を使用することができる。中でもヒドロキシル基を有する有機溶媒や、極性溶媒(例、アセトニトリル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、プロピレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルドデカンアミド)が好ましい。より好ましいアルコールの例としては、メタノール、エタノール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニスアルコールが挙げられる。またモノ−のみならずオリゴ−(特にジ−及びトリ−)及びポリ−C2〜C4−アルキレングリコール(簡単にいうと「グリコール」)並びにこれらのモノ−C1〜C8−アルキル−及びモノアリールエーテル(簡単にいうと「グリコールモノエーテル」)も好適である。またエチレンを基礎とする化合物も有利である。例として、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコール、ジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコール、ポリエチレン−及びポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル−、−モノエチル−、−モノプロピル−、−モノブチル−及び−モノヘキシルエーテル及びプロピレングリコールモノメチル−、−モノエチル−、−モノプロピル−、−モノブチル−及び−モノヘキシルエーテル、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールモノメチル−、−モノエチル−及び−モノブチルエーテル及びジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコールモノメチル−、−モノエチル−及び−モノブチルエーテル並びにエチレン−及びプロピレングリコールモノフェニルエーテルが挙げられる。また本発明では、工業的に使用される不活性溶媒を使用することもできる。例としてニトロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、メチルナフタレン、ナフタレン、アルキルベンゼン、パラフィン、ナフテン、ケロシンが挙げられる。 これらは1種もしくは互いに影響しない組み合わせであれば2種以上を適当に混合していて用いても良い。溶媒の使用量は、好ましくは上記一般式(1)で表される化合物の全使用量の1〜100質量倍、より好ましくは1〜20質量倍であり、更に好ましくは1〜5質量倍である。 更に好ましい溶媒は、グリセリンおよび下記一般式(V)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種であり、もしくは互いに影響しない組み合わせであれば前項で説明したヒドロキシル基を有する有機溶媒や極性溶媒を適当に混合した溶媒である。 (一般式(V)中、sおよびtは、各々独立に正の整数を表し、Xは水素原子またはメチル基を表す。) 式中s、tはそれぞれ独立に正の整数を示すが、好ましくはs、tはそれぞれ1〜10であり、より好ましくは1〜5である。Xは水素原子またはメチル基を表す。 一般式(V)で表される化合物の好ましい例としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールとジエチレングリコールの1:2(v/v)の混合溶媒、プロピレングリコールとトリエチレングリコールの3:1(v/v)、メタノールとトリエチレングリコールの1:5(v/v)の混合溶媒が挙げられる。 溶媒の使用量は上記一般式(1)で表される化合物の全使用量の1〜100質量倍、好ましくは1〜20質量倍であり、更に好ましくは1〜5質量倍である。<反応時間> 本発明では、反応を長時間行うことは、目的物の安定性や副反応の発生が懸念され、また不経済である。反応時間として好ましくは10時間未満であり、更に好ましくは5時間未満であり、更に好ましくは4時間未満である。 以上をまとめると、本発明の金属フタロシアニン化合物の製造方法における工程(a)は、下記(イ)〜(ト)の組み合わせからなることが好ましい。 (イ)本発明で使用する酸としては、特に制限されるものではないが、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKaが7.0以下のものであれば有機化合物および無機化合物のいずれでも好ましい。中でもpKa0.0〜7.0の酸である有機酸が好ましく、カルボキシル基を有する有機酸が最も好ましい。有機酸の中でも、脂肪族系一塩基性有機酸が好ましくギ酸、酢酸、プロピオン酸が最も好ましい。 (ロ)塩基としてはアルカリ金属からなる無機塩基あるいは有機塩基を使用することができ、無機塩基としては、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等の無機塩基を、及びカルボン酸塩、有機塩基としては前記一般式(VI)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、特に好ましい例は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンである。他に酢酸リチウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩等の有機酸塩である。 本発明において、これら有機塩基と無機塩基を単独または併用すること、どちらでも可能であるが、これら塩基は反応溶媒に溶解することで緩衝液として働くため、溶解性の高い塩基が好ましく、無機塩基の中でもカルボン酸アンモニウム塩、及び有機塩基がより好ましく、特に、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオンをカチオンとする有機酸塩が更に好ましい。 カルボン酸アンモニウム塩の中でも、特に脂肪族アンモニウム塩、芳香族アンモニウム塩が好ましく、芳香族アンモニウム塩が最も好ましい。その中でも特に、安息香酸アンモニウムがもっとも好ましい。 (ハ)反応条件としては、反応温度30〜220℃、好ましくは40〜200℃、特に好ましくは50〜180℃である。 (ニ)導入可能な金属または金属酸化物としては、VO、TiO、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Cd、Mg等を挙げることができ、これらの中でもNi、Cu、Znが好ましい。また、塩の状態として特に好ましいものは塩化物(例えば、塩化銅)、酢酸塩である。使用量としては、上記一般式(1)で表される化合物の全使用量に対して、0.1〜3倍当量が特に好ましい。 (ホ)溶媒として最も好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールとジエチレングリコールが1:2(v/v)の混合溶媒、プロピレングリコールとトリエチレングリコールが4:1(v/v)の混合溶媒であり、使用量として特に好ましい量は上記一般式(1)で表される化合物の全使用量の1〜5質量倍である。 (ヘ)反応時間としては4時間未満が特に好ましい。 (ト)前記一般式(1)で表される化合物中でも上記一般式(2)で表される化合物が好ましい。一般式(2)においてR1aは、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールスルフィニル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールスルホニル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールスルファモイル基、イオン性親水性基を置換基として有するアシル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールカルバモイル基のいずれかを表し、より好ましくは、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールスルホニル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールスルファモイル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールカルバモイル基であり、さらに好ましくはイオン性親水性基を置換基として有するアルキルまたはアリールスルホニル基であり、スルホ基またはカルボキシル基を置換基として有するアルキルスルホニル基が特に好ましい。 これらの好ましい組み合わせについては、これらの少なくとも1つが前述した好ましい条件であることが好ましく、より多くの前述した好ましい条件であることが好ましく、全てが前述した好ましい条件であることが最も好ましい。 本発明の製造方法により製造される金属フタロシアニン化合物は、原理的に下記一般式(P1)〜一般式(P4)で表される4つの異性体からなる混合物である。 一般式(P1)〜(P4)中、R、R1及びnは、前記一般式(1)におけるR、R1、nと同じであり、好ましい例も同じである。Mは金属原子を表し、安定な錯体を形成するものであれば金属はいかなるものでも良く、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。また金属原子が酸化物、水酸化物、ハロゲン化物の状態でフタロシアニン化合物と錯体を形成していても良い。酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が挙げられる。ハロゲン化物としては、AlCl、SNCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。金属原子として好ましくはMg、Ca、Co、Zn、Pd、Cuが用いられ、より好ましくはCo、Pd、Zn、Cuが用いられ、特に好ましくはCuが用いられる。 一般式(P1)〜一般式(P4)の異性体の存在は、例えばHPLCなどで4本のピークとして確認することができる。但しそれぞれのピークがどの異性体に対応するかを同定することは極めて難しい。 一般式(P1)は、化学的な見地からR1が互いにぶつかり合わない位置関係であるために、最も安定な異性体であると考えられる。 一方で、一般式(P2)及び一般式(P3)はR1同士がぶつかり合う位置関係にある箇所が1箇所あるために、一般式(P1)と比較して不安定な異性体であると考えられる。また、一般式(P4)はR1同士がぶつかりあう位置関係にある箇所が2箇所あるために、これらの異性体の中で最も不安定な異性体であると考えられる。 したがって一般式(P1)〜一般式(P4)は、物理的及び化学的な性能が異なることが予想され、その存在比率によって金属フタロシアニン化合物の性能に差があることが容易に予想される。工業的な見地からこれら存在比率のばらつきは、品質のばらつきとなるため、繰り返し製造における性能の均一化の観点からこの比率をきちんと制御できることが好ましく、一般式(P1)で表されるような安定な形態のものを選択的に製造できることがより好ましい。 本発明において異性体比率を高め、品質の安定化を図ることも重要な目的のひとつである。本発明において異性体比率を高める方法としては、(a)フタロシアニン環化工程における条件を最適化し、特定異性体の環化収率を上げること、(b)環化反応後の異性体混合物をアルカリ条件下で処理することによって不安定な異性体を分解し、特定異性体の比率を高めること、の2つの手法を用いることで、これを達成できる。 本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物を用いてα位に置換基を有するフタロシアニンを製造する環化工程において、以下の条件(i)〜(iii)によって、特定異性体の選択性を高めることに成功した。従って以下の条件(i)〜(iii)の少なくともひとつ以上、好ましくは2つ以上、特に好ましくは全ての条件を満たすことが、特定異性体の選択的環化に有効である。(i)脱水剤(好ましくは、オルト酢酸エステルなどのオルトエステル)を用いて系内の水分を可能な限り除去すること。(ii)有機塩基と酸の緩衝剤としては、カルボン酸アンモニウム塩(好ましくは、安息香酸アンモニウムもしくは酢酸アンモニウム)を用いること。(iii)中心金属となる金属化合物(好ましくは、塩化銅もしくは酢酸銅)は当量関係(一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物4に対して1)よりも過剰に使用すること(好ましくは1.1〜1.5当量)。 作用機構は不明であるが、それぞれ以下の(i)〜(iii)のように推察している。(i)脱水剤を用いることで反応系内の水を除去し、フタロニトリル化合物およびフタロシアニン環化中間体(イミノイソインドリンなど)の加水分解反応を抑制できたことで環化反応自身の収率が向上したと考えられる。(ii)緩衝剤としてカルボン酸アンモニウムを用いることで系内を適度なpHに保つとともに、アンモニウムがアミン源として機能することでフタロニトリル化合物が反応活性のイミノイソインドリン中間体を形成させること、及び金属化合物が金属化合物のアンミン錯体を形成することによってフタロシアニン環形成におけるテンプレート効果を抑制することによって、ランダムな環化を抑制して、熱的に安定な異性体を優先的に形成させることができたと考えられる。(iii)金属化合物を過剰量用いることで、フタロシアニン環形成におけるテンプレート効果を抑制することによって、ランダムな環化を抑制して、熱的に安定な異性体を優先的に形成させることができたと考えられる。 上記条件を工程(a)に適用することで高い異性体比率を実現可能であるが、一般式(1)で表される化合物や金属化合物の基質依存性による異性体比率のばらつき、スケールアップに伴う異性体比率のばらつきが生じることがあった。本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、異性体混合物を以下のようなアルカリによって処理することによって、熱的に不安定な異性体を分解可能であることを見出した。これにより熱的に安定な異性体比率を劇的に向上させることに成功した。[工程(b)] 次に(b)アルカリ処理によって異性体比率を向上させる工程(工程(b))に関して詳細に説明する。ここでいうアルカリ処理とは、異性体混合物である一般式(1)から製造されるフタロシアニン化合物を、水もしくは水混和溶媒中において、高温下でアルカリを用いて処理することで、フタロシアニンの不安定な異性体を選択的に分解して、安定な異性体の比率を高める処理をいう。 ここで用いられる一般式(1)から製造されるフタロシアニンの異性体混合物の異性体比率は前述の方法によって、特定の安定な異性体比率が高いものを用いることが、収率の観点で好ましいが、4つの異性体が同程度量含まれるような異性体比率の極めて低いものに関しても当該処理は有効である。 ここで用いられる溶媒は、水もしくは水混和溶媒である。水混和溶媒として、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)や、グリコール系溶媒(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコールなど)、ケトン溶媒(例えばアセトンなど)、アミド系溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)が挙げられる。 好ましくは、水、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒及びその混合溶媒である。ここで用いられる溶媒の量としては、一般式(1)から製造されるフタロシアニン1質量部に対して、2〜200質量部であり、好ましくは3〜100質量部、より好ましくは5〜75質量部、特に好ましくは5〜50質量部である。 ここで用いられるアルカリは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウムなどであり、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムであり、より好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウムであり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。ここで用いられるアルカリの量はフタロシアニンの種類、アルカリの種類、溶媒の種類、処理温度によって異なるが、一般的に系のpHが9以上14未満となる量のアルカリを添加する。好ましくはpHが10〜14であり、より好ましくはpHが10〜13であり、特に好ましくはpHが11〜12である。 ここでの処理温度は、フタロシアニンの種類、アルカリの種類、溶媒の種類によって異なるが、不安定な異性体を分解するのに必要な温度であれば特に制限はなく、一般的に好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは60〜140℃であり、特に好ましくは80〜120℃である。 作用機構は以下のように考えられる。 上述のように、一般式(P1)で表される異性体が安定な異性体である。他の異性体である一般式(P2)、一般式(P3)及び一般式(P4)で表される異性体は不安定な異性体である。隣接するR1同士が少なくとも1箇所以上ぶつかり合う位置関係にあり、フタロシアニン環平面に歪みがあるためである。これらの異性体は、この歪みによって熱的に不安定であり、アルカリ処理によってイミン結合(C−N=C)が加水分解を受けて分解する。これによって不安定なフタロシアニン異性体(一般式(P2)、一般式(P3)及び一般式(P4)の異性体)を選択的に分解し、目的とする安定なフタロシアニン異性体である一般式(P1)を選択的に得ることができたと考えている。[工程(c)] 最後に(c)透析法によって精製する工程(工程(c))に関して説明する。一般式(1)で表される化合物から製造されるフタロシアニンの中でも特にα位に置換基を有し、かつイオン性親水性基を有するフタロシアニンに対して有用な手段である。このようなフタロシアニンはその構造的特徴から高い溶解性を有しており、環化工程、(必要に応じてアルカリ処理工程)の後に、フタロシアニン染料を晶析することは難しく、また多くのロスを生じるといった問題があった。工業的な見地から晶析工程は作業負荷が大きく、また晶析によって生じるロスはコストアップに繋がるため好ましくない。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、晶析することなく透析法によって精製することで、フタロシアニン染料のロスが少なく、簡便に不純物を除去できることを見出した。 本発明の透析法は、限外濾過、逆浸透又は電気透析のような方法を包含する。本発明においては限外濾過がより好ましい。 膜分離技法は、自体公知である。例えば、Angew.Chem.、Int.第21版、660頁、1982年;ストラスマン(H.Strathmann)、トレンヌング・フォン・モレキュラーレン・ミッシュンゲン・ミット・ヒルフェ・シンテティシャー・メンブラーネン(Trennung von molekularen Mischungen mit Hilfe Synthetischer Membranen)、スタインコフ・フェアラグ(Steinkopf Verlag)、ダルムスタット、1979年、76〜86頁;フレット(D.S.Flett)、イオン・エクスチェンジ・メンブランセス(Ion Exchange Membranes)、エリス・ホーウッド(Ellis Horwood)、チチェスター、1983年、179〜191頁;又はスタウデ(E.Staude)、メンブラーネン・ウント・メンブランプロゼッセ(Membranen und Membranprozesse)、VCHフェアラグス(Verlags)GmbH、バインハイム、1992年などが挙げられる。 本発明において好適な透析膜物質は、例えば酢酸セルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ケトン、ポリスルホン、再生セルロース又はスルホン化物質である。 本発明における透析処理は、反応混合物を巻状モジュール又は管状モジュール、有利に後者の形の、1個又は数個の膜を有する装置中に、ポンプで押し出すことによって、有利に実施される。 透析膜の呼称分子量限界(排除限界)は、一般に300〜50000である。 透析の際の温度は、好ましくは10〜90℃であり、より好ましくは10〜60℃であり、特に好ましくは20〜40℃である。 最初のパスから得られるフタロシアニン染料は、好ましくは2〜100バール、より好ましくは5〜40バール、特に好ましくは20〜40バールの使用圧力下で、2〜48時間、連続的に再循環されて、濃縮された形のフタロシアニン染料よりなる水溶液と、その他不純物(未反応原料、反応副生成物、無機塩、溶媒など)よりなる水性透過物に分離される。 以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例1:(a)フタロシアニン環化工程 +(b)アルカリ処理工程の実施例 ジエチレングリコール37.5gに、室温にてフタロニトリル化合物(1)8.85g、酢酸0.17g、およびオルト酢酸トリエチル8.00gを混合し50℃で30分間撹拌加熱した。ここへ安息香酸アンモニウム12.8gおよび塩化銅0.95gを加え、120℃で5時間反応させた。次に、内温を50℃まで冷却し、濃塩酸8.4mLを滴下し、続いてアセトン50mL、イソプロパノール50mLを滴下し晶析した。引き続き内温50度で撹拌した後に、析出物を吸引ろ過し、アセトン150mLでかけ洗いを行った。収量8.7g(収率99%)。HPLC分析によって3つの異性体が検出され、一般式(P1)に相当する上記主成分の異性体の異性体比率は、93%であった。得られた銅フタロシアニン化合物5.0gを水100mLに溶解させた後に、2N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11に調整し90〜100℃で5時間加熱した。反応液をアセトニトリル100mLイソプロパノール100mL混合溶媒で晶析した後に、析出した結晶を減圧ろ過し、イソプロパノール150mLでかけ洗いした。ろ取した結晶を水300mLに溶解させ、透析チューブを用いて20μS以下になるまで精製し、GF/Fフィルター(ワットマン社製)で除塵ろ過したのちに凍結乾燥を行った。収量4.2g(収率84%)。HPLC分析によって単一の異性体として検出された。一般式(P1)に相当する上記主成分の異性体の異性体比率は100%であった。MSスペクトルより、スルホン酸が4つともフリー体(‐SO3H)である[M−1]−=1318、スルホン酸が3つフリー体1つがナトリウム塩である[M−1]−=1340が主ピークとして観測された。 原理的には4種類の異性体が存在するはずであるが、本実施例と以下の実施例・比較例の多くが主として3種類の異性体が観測されるものがほとんどであった。最も不安定な一般式(P4)で表される異性体が著しく生成しにくい、もしくは生成したのちに分解するためだと推定している。実施例2〜12、比較例1〜2: 以下、表1に記載のように一般式(1)で表される化合物、反応溶媒、金属化合物、塩基、及び脱水剤を変更した以外は実施例1と同様にして実験を行った。結果を表2に示す。実施例13:(a)フタロシアニン環化工程 +(c)透析工程 ジエチレングリコール37.5gに、室温にてフタロニトリル化合物(1)8.85g、酢酸0.17g、およびオルト酢酸トリエチル8.00gを混合し50℃で30分間撹拌加熱した。ここへ安息香酸アンモニウム12.8gおよび塩化銅0.95gを加え、120℃で5時間反応させた。次に内温を80℃まで冷却し、水300mLを加えた後に80℃で1時間加熱撹拌した。続いて室温まで冷却し、再生フィルター5YM1(アミコン社製、分画分子量1000、圧力25バール)で10μS以下になるまで加水しつつ精製し、フタロシアニン化合物を含む水溶液402gを得た。この染料水溶液における染料の含有濃度は11.2%であることを、吸光度より見積もった。収量402g(染料含有濃度11.2%、染料含有量45.0g、収率90%、異性体比率94%)。MSスペクトルより、スルホン酸が4つともフリー体(‐SO3H)である[M−1]−=1318、スルホン酸が3つフリー体1つがナトリウム塩である[M−1]−=1340が主ピークとして観測された。実施例14:(a)フタロシアニン環化工程 +(b)アルカリ処理工程 +(c)透析工程 ジエチレングリコール37.5gに、室温にてフタロニトリル化合物(1)8.85g、酢酸0.17g、およびオルト酢酸トリエチル8.00gを混合し50℃で30分間撹拌加熱した。ここへ安息香酸アンモニウム12.8gおよび塩化銅0.95gを加え、120℃で5時間反応させた。次に内温を80℃まで冷却し、水300mLを加えた後に、2N水酸化ナトリウムでpHを11に調整したのちに90〜100℃で5時間加熱撹拌した。続いて室温まで冷却し、多層膜MPT30フィルター(メンブラン社製、分画分子量400、圧力40バール)で10μS以下になるまで加水しつつ精製し、フタロシアニン化合物を含む水溶液442gを得た。この染料水溶液における染料の含有濃度は10.0%であることを、吸光度より見積もった。収量442g(染料含有濃度10.0%、染料含有量44.2g、収率88.4%、一般式(P1)に相当する異性体の異性体比率100%)。MSスペクトルより、スルホン酸が4つともフリー体(‐SO3H)である[M−1]−=1318、スルホン酸が3つフリー体1つがナトリウム塩である[M−1]−=1340が主ピークとして観測された。 図1は実施例3で得られたフタロシアニン染料(アルカリ処理後)のNMRスペクトルである。 金属フタロシアニン化合物を製造する方法であって、 (a)下記一般式(1)で表される化合物と金属化合物とを脱水剤の共存下、有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種と酸の緩衝液中で反応を行う工程、並びに、 前記工程(a)の後に、 (b)アルカリ処理によって異性体比率を向上させる工程、及び(c)透析法によって精製する工程の少なくとも一方を含む金属フタロシアニン化合物の製造方法。 (一般式(1)中、RおよびR1は各々独立に1価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。) 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。(一般式(2)中、R1aはイオン性親水性基を置換基として有する1価の置換基を表す。) 前記緩衝液に含まれる溶媒としてグリセリンおよび下記一般式(V)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一種を用いる請求項1又は2に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。(一般式(V)中、sおよびtは、各々独立に正の整数を表し、Xは水素原子またはメチル基を表す。) 前記脱水剤が、オルトエステル化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 前記有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種が、カルボン酸アンモニウム塩である請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 前記酸として、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKaが7.0以下の酸を用いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 前記金属化合物が、Ni、Cu、又はZnを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 反応時間が4時間未満である請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法。 請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属フタロシアニン化合物の製造方法により得られる金属フタロシアニン化合物。 【課題】工業的に安定して、高収率、高純度、操作性良好なα位置換フタロシアニン化合物の製造方法を提供すること。【解決手段】金属フタロシアニン化合物を製造する方法であって、 (a)下記一般式(1)で表される化合物と金属化合物とを脱水剤の共存下、有機塩基及び無機塩基から選ばれる少なくとも一種と酸の緩衝液中で反応を行う工程、並びに、前記工程(a)の後に、(b)アルカリ処理によって異性体比率を向上させる工程、及び(c)透析法によって精製する工程の少なくとも一方を含む金属フタロシアニン化合物の製造方法。(一般式(1)中、RおよびR1は各々独立に1価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。)【選択図】なし


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