タイトル: | 公開特許公報(A)_液状組成物およびその製造方法 |
出願番号: | 2013030555 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 36/07,A61K 36/06,A61K 36/18,A61K 36/02,A61P 7/02,A61P 43/00,A61P 29/00,A61P 9/12,A61P 3/04,A23L 1/30,C12N 9/99 |
江口 文陽 吉本 博明 林田 勝昭 林田 博昭 JP 2014159387 公開特許公報(A) 20140904 2013030555 20130220 液状組成物およびその製造方法 暁酵素産業株式会社 301007641 岩橋 祐司 100092901 江口 文陽 吉本 博明 林田 勝昭 林田 博昭 5518223 20140611 A61K 36/07 20060101AFI20140808BHJP A61K 36/06 20060101ALI20140808BHJP A61K 36/18 20060101ALI20140808BHJP A61K 36/02 20060101ALI20140808BHJP A61P 7/02 20060101ALI20140808BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140808BHJP A61P 29/00 20060101ALI20140808BHJP A61P 9/12 20060101ALI20140808BHJP A61P 3/04 20060101ALI20140808BHJP A23L 1/30 20060101ALI20140808BHJP C12N 9/99 20060101ALI20140808BHJP JPA61K35/84 AA61K35/72A61K35/78 CA61K35/80 ZA61P7/02A61P43/00 111A61P29/00A61P43/00 116A61P9/12A61P3/04A23L1/30 BC12N9/99 6 1 OL 18 特許法第30条第2項適用申請有り 〔発行者名〕 山中 勝次 〔刊行物名〕 日本きのこ学会第16回大会講演要旨集(東京大会) 〔発行年月日〕 平成24年 8月25日 「刊行物等」 〔集会名〕 日本きのこ学会第16回大会(東京大会) 〔開催日〕 平成24年 9月 6日 4B018 4C087 4C088 4B018MD49 4B018MD52 4B018MD53 4B018MD67 4B018MD81 4B018MD82 4B018ME01 4B018ME04 4B018MF01 4B018MF02 4B018MF13 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BC03 4C087BC11 4C087CA10 4C087MA16 4C087NA14 4C087ZA42 4C087ZA54 4C087ZA70 4C087ZB11 4C087ZC20 4C088AA05 4C088AA06 4C088AA12 4C088AB11 4C088AC01 4C088AC16 4C088CA25 4C088MA07 4C088MA16 4C088NA14 4C088ZA42 4C088ZA54 4C088ZA70 4C088ZB11 4C088ZC20 本発明は、液状組成物とその製造方法に関し、特に詳しくは、酵母発酵物にマンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加し熟成させることで得られ、血小板凝集抑制、ケモカイン遺伝子発現抑制、アンジオテンシン変換酵素阻害、およびリパーゼ阻害効果に優れる液状組成物に関する。 近年、食生活および生活習慣の多様化やストレス過多から、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症、アトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患、高血圧症、および肥満などが急増している。そして、それぞれの疾患に対して種々の薬剤が開発・使用されているが、副作用が問題となるものも少なくない。 例えば、血栓症の原因である血栓形成においては、血小板活性化物質(血小板活性化因子(PAF)、アデノシン2リン酸(ADP)等)が血小板膜上の受容体に結合することで惹起される血小板凝集反応が中心的な役割を担う。そのため、血栓症の治療には、ADP受容体であるP2Y12受容体の特異的阻害剤であるチクロピジン(登録商標)やクロピドグレル(登録商標)等が汎用されているが、これらの薬剤の使用は出血性合併症のリスクを増加させるだけでなく、日本人に対しては肝機能障害を引き起こすことが知られている(非特許文献1)。 また、炎症性腸疾患では、腸管免疫をつかさどる腸管上皮細胞のケモカイン産生によって好中球が浸潤・集積し、それゆえ腸管上皮が障害されると考えられている(非特許文献2)。そのため、炎症性腸疾患の治療には、通常アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイド剤といった抗炎症剤、および/または免疫抑制剤が用いられるが、これらの薬剤は副作用が強く継続的投与ができないため、患者は発症と寛解を繰り返すことになる。 そして、高血圧症患者に対しては、通常、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin−converting enzyme、ACEと略記)阻害薬が用いられるが、やはり副作用の問題が指摘されている。 また、肥満に対する治療薬としては、国内では、食欲抑制剤のマジンドール(登録商標)が唯一承認されているが、口渇、便秘、胃部不快感、悪心・嘔吐等の副作用が報告されている。そして、海外においては、リパーゼの活性阻害により腸管からの脂肪吸収を抑制し得るゼニカル(登録商標)が肥満改善薬として市販されているが、脂肪便、排便数の増加、軟便、下痢、腹痛等の副作用が報告され、必ずしも安全とは言いがたい(非特許文献3)。 このような事情から、患者においては、前記疾患に対する改善効果を、副作用を生じる可能性が低い自然食品や健康食品(機能性食品を含む)に求める声が非常に高まっている。さらに、前記疾患を患っていない人においても、予防意識の高まりから、当該疾患の予防効果に優れる自然食品や健康食品を望む声が強く聞かれる。 このような要望に応えるために、本発明者は、野菜、果物、海草、および/または穀物に糖類を添加して作製した酵母発酵物でありながら、高血圧症、高脂血症、肥満症改善予防効果に優れる液状組成物を開発した(特許文献1)。現在、この液状組成物は、「暁酵素」の商品名(商標登録番号1502412号)で提供している。 そして、この液状組成物に対し、さらに血栓症や慢性炎症疾患に対する予防・改善効果を期待して、血小板凝集やケモカイン遺伝子発現に対する効果を解析した。しかしながら、これらについては十分な抑制効果があるとはいえず、改良の余地があることが明らかとなった。特許3806009号公報特開2009−201438号公報特許4044599号公報堀正二編「循環器病の診断と治療に関するガイドライン」日本循環器学会、2008年度合同研究班報告、8−10頁(2009年)International Journal of Immunopharmacology、第17巻、103−108頁(1995年)Lancet、第352巻、167−172頁(1998年)Biochemical Pharmacology、第20巻、1637−1648頁(1971年) 本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、副作用を生じる可能性が低く、且つ、血栓形成や炎症反応の抑制効果に優れる液状組成物、及びその製造方法を提供することである。さらに、高血圧症、肥満症の予防・改善効果についても、従来の液状組成物よりも優れた液状組成物を提供することを目的とする。 前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、野菜、果物、海草、および/または穀物に糖類を添加して作製した酵母発酵物(すなわち、暁酵素)に、さらに特定のキノコの子実体を添加し熟成させることによって、血小板凝集抑制、ケモカイン遺伝子発現抑制、ACE阻害、およびリパーゼ阻害効果に非常に優れる液状組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明によって、野菜、果物、海草、および/または穀物に糖類を添加し寄託番号FERM P−18540の酵母により発酵させた酵母発酵物に、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加し熟成させて得られることを特徴とする液状組成物が提供される。 そして、前記液状組成物においては、前記酵母発酵物1000mlに、前記子実体を乾燥重量にして45〜55g添加することが好適である。 さらに、本発明により、前記液状組成物からなる血小板凝集抑制剤が提供される。 また、前記液状組成物からなるケモカイン遺伝子発現抑制剤が提供される。 そして、前記液状組成物からなるアンジオテンシン変換酵素阻害剤、および、前記液状組成物からなるリパーゼ阻害剤が提供される。 さらに、本発明により、下記(A)〜(D)工程を含むことを特徴とする液状組成物の製造方法が提供される。(A)野菜、果物、海草、および/または穀物に寄託番号FERM P−18540の酵母を添加する工程(B)前記(A)工程後、糖類を添加し、原液を抽出する工程(C)前記(B)工程後、糖類を添加し、原液を発酵・熟成させる工程(D)前記(C)工程後、濾過した濾液に、マンネンタケまたはカワラタケの乾燥子実体を添加して、室温で5日間熟成させる工程 本発明により、副作用を生じる可能性が低く、且つ、血小板凝集抑制、ケモカイン遺伝子発現抑制、ACE阻害、およびリパーゼ阻害効果に非常に優れる液状組成物、及びその製造方法を提供することができる。本発明にかかる液状組成物の製造方法を示すフローチャートである。本発明にかかる液状組成物(試験例1)のヒト血小板に対する凝集抑制効果を示すグラフである。凝集惹起物質としてADP、PAFいずれを用いた場合にも、血小板凝集が効果的に抑制されることを示す。本発明にかかる液状組成物(試験例1)のケモカイン遺伝子発現抑制効果を示すグラフである。ヒト皮膚線維芽細胞において、腫瘍壊死因子TNF‐αによって誘導される代表的なケモカイン(IL−8とRANTES)の転写が効果的に抑制されることを示す。本発明にかかる液状組成物(試験例1)のACE阻害効果を示すグラフである。本発明にかかる液状組成物(試験例1)のリパーゼ阻害効果を示すグラフである。 以下に、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。まず、本発明にかかる液状組成物の材料について説明する。<材料>・原材料 本発明の液状組成物の原材料としては、特許文献1に記載した従来の液状組成物の原材料を用いることができる。具体的には、旬の物を中心とした野菜、果物、海草、および穀物等である。 例えば、キャベツ、ホウレンソウ、ニンジン、パセリ、ナス、ピーマン、トマト、キュウリ、カブ、大根、春菊、小松菜、モロヘイヤ、蓮根、サツマイモ、ジャガイモ、ショウガ、リンゴ、ミカン、レモン、カキ、モモ、スイカ、ブドウ、ナシ、イチゴ、パイナップル、キウイ、バナナ、米、麦等を好適に用いることができる。 本発明に用いるキノコ子実体は、硬質菌キノコの子実体であり、特に好ましくはマンネンタケまたはカワラタケの子実体である。子実体は、生または乾燥させた子実体のいずれも使用できるが、取扱いと保存性の良さから乾燥子実体を用いることが好ましい。・マンネンタケ子実体 マンネンタケ(学名:Ganoderma lucidum(Leyss.:Fr.)Karst.,)は、マンネンタケ科マンネンタケ属に属するキノコで、霊芝(レイシ)とも呼ばれ、古来より漢方薬として用いられてきたものである。その効果効能としては、肝機能改善作用、抗炎症作用、抗高血圧作用、抗腫瘍作用、抗高脂血症作用などが知られている。 本発明に用いるマンネンタケとしては、野生のもの、栽培されたもののいずれも用いることができる。・カワラタケ子実体 カワラタケ(学名:Trametes versicolor(L.:Fr.)Pilat)は、サルノコシカケ科カワラタケ属に属するキノコで、雲芝(ウンシ)とも呼ばれ、古来より漢方薬として用いられてきたものである。その効果効能としては、抗腫瘍作用、抗高血圧作用、免疫賦活作用などが知られている。 本発明に用いるカワラタケとしては、野生のもの、栽培されたもののいずれを用いてもよいが、最も好適には、本発明者の一人である江口文陽によって独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された、受託番号FERM BP−10633のカワラタケ株である(特許文献3)。<製造方法> 次に、本発明にかかる液状組成物の製造方法について説明する。 図1に示したように、本発明の液状組成物は、濾液を得る工程までは特許文献1に記載した従来の液状組成物と同じ工程を経ることができる。以下、全工程について詳しく説明する。・洗浄・水切り 初めに原材料となる野菜、果物、海草、及び穀物等を水で洗浄し、水切りする。この時使用する水は、清浄なものであれば特に限定されないが、塩素の含有量の少ない地下水等を使用することが好ましい。また、洗浄時には洗剤等を使用しないことが好ましい。・仕込み・酵母添加 次に、水切りした原材料を適当な大きさに刻んで容器に入れ、酵母を添加する。容器は、発酵に適するものであれば特に制限されないが、木桶を使用することが好適である。また、原材料を刻む方法は、特に限定されないが、栄養素の破壊を防止するために刃物の使用を最小限にすることが好ましい。そして、加熱に強い抽出物を得るために、寄託番号FERM P−18540の酵母(平成13年9月20日付で、FERM P−18540として工業技術院生命工学工業技術研究所に受託)を使用する。酵母の添加量は、原材料1g当たり106〜107個程度であることが好適である。 本発明にかかる酵母(FERM P−18540)は、識別のための表示をFCE Shizosaccharomyces sp.といい、科学的性質等は以下の通りである。(1)科学的性質:炭素源と窒素源を含む栄養培地下において、白色〜クリーム色のコロニーを形成する。光学顕微鏡下において、細胞の中央に隔壁を生じて分裂する形態が観察される。母細胞と娘細胞の区別はできない。(2)分類学上の位置:酵母菌、食用酵母(3)培養条件 ・培地名:SMYA培地(S:サッカロース、M:マルトエキストラクト、Y:イーストエキストラクト、A:寒天) ・培地の組成:培地1000ml当たり、1%サッカロース 10g、1%マルトエキストラクト 10g、0.4%イーストエキストラクト 4g、2%寒天 20g ・培地のpH:5.0〜7.0(最適pH5.5) ・培地の殺菌条件:121℃で20分間 ・培地温度:32℃ ・培養期間:10日間 ・酸素要求性:好気性(4)保管条件 凍結法にて保管できる。 ・凍結条件:−80℃ ・保護剤:10〜20%グリセリン水溶液(最適は20%) ・凍結後の復元率:1年で100%、3年で99%(5)生存試験の条件 ・微生物の復元:40℃ ・接種・培養・確認方法:培養条件と同一条件による。・糖添加および原液抽出 次に、糖を添加し、浸透圧による細胞膨圧作用によって、細胞内の栄養素を破壊することなく抽出する。この抽出工程によって得られる液状組成物を原液と呼ぶ。原液の抽出操作は常温・常圧下で行うことが好ましいが、1〜5気圧、60〜150℃の加圧、加熱下で抽出してもよい。添加する糖は、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、ショ糖、蜂蜜、エリスリトール等が好適である。添加量は、糖度が30〜40%となるようにすることが好適である。糖度が30%より少ないと腐敗する恐れがあり、40%より多いと酵母の発酵を妨げてしまうからである。・糖添加 原液にさらに糖を添加する。加える糖は、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、ショ糖、蜂蜜、エリスリトール等が好適である。添加量は、抽出物に対して50〜60質量%であることが好適である。50質量%より少ないと腐敗する恐れがあり、60質量%より多いと糖度が高すぎて本発明の効果が損なわれてしまう恐れがある。 以下の工程においては、糖度が50%未満とならないように調製することが好ましい。・発酵 前記工程を経た原液を、15〜40℃、特に好ましくは20〜35℃の温度範囲で処理することで発酵させる。発酵に要する時間は、1〜7時間、特に好ましくは2〜5時間である。15℃より低い温度、あるいは1時間より発酵期間が短いと本発明の効果が十分に得られず、40℃を越える温度、あるいは5時間より長く発酵させても、本発明の効果がより向上することは期待できない。・熟成 さらに原液を熟成させる。熟成の条件としては、2〜20℃、特に好ましくは5〜12℃の温度範囲で、15〜30時間、特に好ましくは18〜25時間処理することが好ましい。熟成にかける時間が15時間より短いと本発明の効果が十分に発揮されず、25時間より長くしても本発明の効果がより向上することは期待されない。また、20℃を越える温度で熟成させると品質を損なう恐れがある。・濾過 原液を濾過して濾液を得る。従来の液状組成物(=暁酵素)の製造方法では濾過後直ちに滅菌工程を行うが、本願組成物の製造方法では、次の熟成工程を行う。・マンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加して熟成 前記工程で得られた濾液1000mlに、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を乾燥重量にして45〜55g分(=液状組成物全体に対して約4.8質量%)を添加・浸漬させ、熟成させる。前記子実体は、生のもの、乾燥したもののいずれでもよく、いずれの場合にも5mm角程度に細片化することが好ましい。6時間ごとに5分間程度攪拌を行い、室温で5日間熟成させる。 この熟成工程により、子実体から浸出した成分が濾液中の成分と化学反応を起こして種々の有益な成分が生成する。・滅菌 最後の工程として滅菌を行う。滅菌の条件は、温度90〜130℃で1秒間〜5分間処理することが好適である。90℃未満または1秒間未満であると雑菌の死滅が不完全である場合があり、130℃を越える温度または5分より長時間処理すると、本発明の効果が薄れてしまう恐れがある。 滅菌には通常の滅菌機を用いることができ、例えばプレート式滅菌機、チューブラー式滅菌機、ジャケット付きタンク等を使用することができる。 滅菌後は、通常の冷却機を用いて液状組成物の冷却を行うことが好ましい。このような冷却器としては、例えば、熱交換プレート、チューブラー式冷却機、ジャケット付きタンク等を使用することができる。 上記工程を経た液状組成物は、殺菌処理した瓶等の容器に充填・打栓し、再度殺菌を行うことで長期保存が可能である。 本発明の液状組成物には、本発明の趣旨に反しない公知の賦形剤や添加剤を必要に応じて適宜加えることができる。さらに、常法により加工して錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等の製剤とすることができる。 また、必要に応じて着色剤、芳香剤、矯味剤等を加えてもよい。 本発明の液状組成物からなる血小板凝集抑制剤、ケモカイン遺伝子発現抑制剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、およびリパーゼ阻害剤は、成人(体重60kg)1日当たり1〜15ml、好適には6〜9ml摂取することが好ましい。1mlより少ないと所望の効果を奏することが難しくなり、15mlを越えて摂取してもさらなる効果は認められない場合がある。 以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。試験例1:液状組成物の製造例 原材料(キャベツ、ホウレンソウ、ニンジン、大根、イモ、ショウガ、リンゴ、ミカン、パイナップル、キウイ、バナナ、米、麦等)5kgを洗浄し、水切りした。水切りした原材料を適当な大きさに刻み、木桶に入れ、酵母(寄託番号FERM P−18540の酵母)を添加した。次に、ショ糖および麦芽糖を糖度30〜40%となるよう添加し、常温・常圧下で原液を抽出した。さらに、麦芽糖を糖度50%となるよう添加し、15℃で5時間発酵させた後、さらに12℃で25時間熟成させた。これを濾過した濾液(1000ml)に対し、マンネンタケまたはカワラタケの乾燥子実体(50g)を5mm角に細片化したものを添加して、室温で5日間熟成させた(6時間ごとに5分間程度攪拌)。熟成後に滅菌を行い、「本願の液状組成物」とした。 なお、前記濾過工程の後直ちに滅菌を行った液状組成物を、「従来の液状組成物(=暁酵素)」とした。さらに、前記「本願の液状組成物」の製造工程において、マンネンタケまたはカワラタケの代わりに、シイタケまたはブナシメジの乾燥子実体(50g)を添加して得られた液状組成物を、比較例として用いた。試験例2:本願液状組成物の成分分析 試験例1で得られた本願の液状組成物の成分分析を行った。結果を表1〜3に示す。 一般成分分析(表1)の結果より、本願の液状組成物は、従来の液状組成物に比べて、タンパク質の含有量が11.5倍(マンネンタケ添加)、または9.0倍(カワラタケ添加)と大幅に増加していることがわかる。この増加量は、本願組成物の製造工程において濾液に添加された子実体(わずか4.8質量%相当)に含まれていたタンパク質量をはるかに超えるものである。 よって、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加して熟成させることにより、子実体成分と濾液成分との間で種々の化学反応が起こってタンパク質が生成されて、タンパク質含有量が増加したと考えられる。 同様に、本願の液状組成物は、従来の液状組成物よりも、カリウム(4.7〜6.1倍増)、リン(15.2〜14.3倍増)、鉄(17.8〜21.8倍増)、カルシウム(10.5〜15.8倍増)等の有益なミネラルが大幅に増加していることがわかる(表2)。 また、アミノ酸の総量も6.5倍(マンネンタケ添加)または5.8倍(カワラタケ添加)と増加しており、中でも、アルギニン(33.2〜36.1倍増)やヒスチジン(11.6〜14.3倍増)に加えて、疲労回復に効果的とされる分岐鎖アミノ酸のロイシン(16.4〜32.8倍増)、イソロイシン(13.9〜11.4倍増)、バリン(15.4〜18.7倍増)の増加が顕著である(表3)。さらに、脳の血流改善や高血圧の改善に有効とされるγ−アミノ酪酸(GABAと略記)については、124.8倍増(マンネンタケ添加)と101.9倍増(カワラタケ添加)、肝機能障害の改善効果が知られるオルニチンについては、33.6倍増(マンネンタケ添加)と22.0倍増(カワラタケ添加)と飛躍的に増加していることがわかる(表3)。 従って、前記植物性の食材と糖類より特許製法(特許文献1)に従って作製した酵母発酵物に、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加して熟成させることで、カリウム、リン、鉄、カルシウムといったミネラル、アルギニン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、GABA、オルニチンといったアミノ酸、およびタンパク質等が顕著に生成され、これらの有益な成分に富んだ液状組成物が得られることが明らかとなった。 次に、本願の液状組成物の生理活性について評価した。試験例3〜6では、各試験物質について独立した3回の実験/測定を行い、従来の液状組成物(=暁酵素)について得られた値との有意性をStudent t−testを用いて検定した。なお、危険率5%未満を有意性あり(図1〜6ではアスタリスクで表示)とした。試験例3:血小板凝集抑制効果 前述したように、血小板凝集による血栓形成は、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症を発症させる直接的な要因である。そこで、本願の液状組成物の血小板凝集に対する効果について、以下の方法を用いて解析した。<試験方法>・ヒト多血小板血漿(PRP)および乏血小板血漿(PPP)の調整 ヒト血液を遠心(1100rpm、20分間、室温)し、上清を多血小板血漿(Platelet Rich Plasma、PRPと略記)として採取した。PRPの一部に対してさらに遠心(3000rpm、5分間、室温)を行い、当該上清を乏血小板血漿(Platelet Poor Plasma、PPPと略記)として採取した。・血小板凝集率の測定方法 前記方法で調整したPRP(各223μl)を37℃で予備加温した後、下記試験物質を2μl添加し、さらに37℃で3分間保温した。その後、ADPまたは血小板活性化因子(PAF)を終濃度がそれぞれ1μM、50nMとなるように添加し、血小板凝集を惹起した。血小板が凝集するとPRPの濁度が低下して透過率が上昇するため、アグリゴメーター(MCMヘマトレーサー MCMメディカル株式会社製)を用いて透過率を測定した。凝集物質添加前のPRPの透過率を0%、PPPの透過率を100%に設定して、凝集物質添加後のPRPの透過率の最大値を最大凝集率(%)、すなわち、血小板凝集率(%)とした。・試験物質1)従来の液状組成物(=暁酵素)2)暁酵素にマンネンタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)3)暁酵素にカワラタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)4)暁酵素にシイタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物5)暁酵素にブナシメジ子実体を添加し熟成させた液状組成物・血小板凝集抑制効果の評価 前記試験物質の血小板凝集抑制効果は、当該試験物質を添加したPRPにおいて得られた血小板凝集率を、試験物質非添加PRPにおいて得られた血小板凝集率(=100%とする)と比較することで評価した(図1)。<結果> 表4および図2より、本願の液状組成物は、従来の液状組成物よりも高い血小板凝集抑制効果を有することがわかる。特に、ADPによって惹起される血小板凝集に対しては、マンネンタケ子実体を用いて作製した液状組成物では91.5%(従来の液状組成物よりも18.9%増)、カワラタケ子実体を用いて作製した液状組成物では96.2%(従来の液状組成物よりも23.6%増)という非常に高い凝集抑制効果が得られており、血栓症に対する予防改善効果を大いに期待させる結果である。 マンネンタケ、カワラタケ子実体の抽出物には血小板凝集抑制効果があることが知られているが(特許文献2、3)、従来の液状組成物に対する本願液状組成物の当該効果の増加分は、これらの子実体の持ち込みによるものではない。なぜならば、マンネンタケ、カワラタケのような硬質菌の固い子実体から血小板凝集抑制効果を担う成分を抽出するにはミキサーを用いた粉砕(粉末化)が必須であり(特許文献2、3)、本願の細片化・浸漬ではほとんど抽出されず、濾液中には回収されないと考えられるからである。このことは、軟質菌(=子実体中の成分が浸出しやすい)で且つ血小板凝集抑制効果を有するシイタケおよびブナシメジを用いて作製した液状組成物では、従来の液状組成物に対して血小板凝集抑制効果がほとんど増加しないことからも明らかである。 従って、本願の原液にマンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加して熟成させることにより、血小板凝集抑制作用を有する物質が新たに生成されて、血小板凝集抑制効果が非常に高い液状組成物が得られることが明らかとなった。試験例4:ケモカイン遺伝子発現抑制効果 続いて、本願液状組成物のケモカイン遺伝子発現に及ぼす効果を解析した。 ケモカインは、白血球を自身の濃度勾配の方向に遊走させる活性を有するサイトカインの総称で、炎症の形成に重要な役割を果たしている。例えば、接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、炎症部位で炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor−α、TNF‐αと略記)等)が産生され、インターロイキン−8(Interleukin−8、IL−8と略記)等のケモカインの発現が誘導されるために、好中球やT細胞などが炎症部位に浸潤・集積して組織破壊が引き起こされる。よって、IL−8等のケモカインの発現を抑制することは、これらの炎症性疾患の症状改善や予防に有効と考えられている。 ケモカインは構造上の特徴から4群に分類されており、ほとんどのメンバーはこのうちの2群(CXCケモカイン、CCケモカイン)に属している。そこで、本願の液状組成物について、IL−8(CXCケモカイン)およびRANTES(Regulated on Activation Normal T Cell Expressed Aand Secreted、CCケモカイン)のTNF−αによる発現誘導に及ぼす効果を解析した。<試験方法> ヒト皮膚線維芽細胞(倉敷紡績株式会社より購入)を10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)を用いてコンフルエントになるまで培養した(培地量10ml/6cm培養皿)。下記試験物質を50μl添加した後、TNF‐α(終濃度1ng/ml)を添加して37℃で6時間培養した。 その後、常法に従って細胞からRNA抽出・cDNA合成を行った。得られたcDNAを用いて定量的PCR法(TaqMan PCR法)を行い、IL−8およびRANTES遺伝子の発現量を解析した。当該遺伝子の発現量は、GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)を内部標準遺伝子として発現量の補正を行った。・試験物質1)従来の液状組成物(=暁酵素)2)暁酵素にマンネンタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)3)暁酵素にカワラタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)4)暁酵素にシイタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物5)暁酵素にブナシメジ子実体を添加し熟成させた液状組成物6)ハイドロコルチゾン(=陽性コントロール)、終濃度は10−7M<結果> 表5および図3に示されるように、試験物質を添加しなかった場合の発現量(=a、すなわち、TNF−αによって誘導された発現量)に対し、従来の液状組成物を添加した場合には、IL−8およびRANTESがそれぞれ76.6%、46.7%も発現していた。これに対し、マンネンタケ子実体またはカワラタケ子実体を用いた本願の液状組成物を添加した場合には、IL−8の発現量がそれぞれ51.1%、46.8%、RANTESの発現量がそれぞれ32.8%、35.2%にまで低下していた。よって、本願の液状組成物は、従来の液状組成物よりも、TNF−α等によるケモカイン遺伝子の発現誘導に対して高い抑制効果を有することが示された。また、本願の液状組成物は、ハイドロコルチゾン(=臨床で用いられている強力な抗炎症剤だが副作用が強い)には及ばないものの、十分なケモカイン遺伝子発現抑制効果があることが明らかとなった。 なお、マンネンタケ、カワラタケ子実体の抽出物にはケモカイン遺伝子発現抑制効果があることが知られているが(特許文献2、3)、試験例3で説明したように、本願の液状組成物の製造工程において当該子実体からケモカイン遺伝子発現抑制効果を担う物質が十分量浸出するとは考えられない。よって、本願の原液にマンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加して熟成させることにより、ケモカイン遺伝子の発現を抑制し得る物質が新たに生成されて、当該抑制効果に優れる液状組成物が得られることが示された。試験例5:アンジオテンシン変換酵素阻害効果 アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin−converting enzyme、ACEと略記)は、不活性体であるアンジオテンシンIを、生理活性を有するアンジオテンシンIIに変換する反応を触媒する酵素(プロテアーゼ)である。アンジオテンシンIIには非常に強い血圧上昇活性があるため、ACEの阻害剤は高血圧症の治療薬として汎用されているが、種々の副作用が知られている。 そこで、本願の液状組成物について、ACE活性に及ぼす効果を解析した。<測定方法> 定法(非特許文献4)に従い、ACEの合成基質である“馬尿酸‐ヒスチジン‐ロイシン”、ACE、および下記試験物質の存在下で、当該合成基質から切り出される馬尿酸の量を測定することによりACE活性を評価した。・試験物質1)従来の液状組成物(=暁酵素)2)暁酵素にマンネンタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)3)暁酵素にカワラタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)4)暁酵素にシイタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物5)暁酵素にブナシメジ子実体を添加し熟成させた液状組成物<結果> 表6および図4より、本願の液状組成物は、従来の液状組成物よりも、ACE阻害活性が非常に高いことがわかる。 なお、マンネンタケ子実体の抽出物にはACE阻害活性があることが知られているが(特許文献2)、試験例3で説明したように、添加した子実体から当該活性物質が十分量浸出するとは考えられない。よって、本願の原液にマンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加して熟成させることにより、ACE活性を阻害し得る物質が新たに生成されて、当該阻害効果に優れる液状組成物が得られることが示された。試験例6:リパーゼ阻害効果 前述したように、食事由来の脂肪の体内吸収阻害を目的として、膵液中に含まれるリパーゼの阻害剤が肥満の治療薬として用いられている。しかしながら、このような治療薬には様々な副作用が知られており、副作用の少ないリパーゼ阻害剤を求める声が高まっている。 そこで、本願の液状組成物について、リパーゼ活性に及ぼす効果を解析した。<試験方法> トリオレイン(MP Biomedicals社製)80mg、レシチン(和光純薬工業株式会社製)10mg、胆汁酸(SIGMA社製)5mgを9mlの0.1M トリス緩衝液(pH7.0)に添加し、10分間撹拌を行って均一の懸濁液(=基質)を得た。当該懸濁液0.1mlに2%リパーゼ溶液(和光純薬工業株式会社製)0.05mlと下記試験物質を0.1ml加え、37℃で10分間反応させた。反応後、NEFA C−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて遊離脂肪酸量を測定し、試験物質非添加で得られた値(=リパーゼ活性100%)に対する相対値で表した。・試験物質1)従来の液状組成物(=暁酵素)2)暁酵素にマンネンタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)3)暁酵素にカワラタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物(試験例1)4)暁酵素にシイタケ子実体を添加し熟成させた液状組成物5)暁酵素にブナシメジ子実体を添加し熟成させた液状組成物<結果> 図5より、本願の液状組成物は、従来の液状組成物よりも、リパーゼ活性を阻害する効果が非常に高いことがわかる。よって、本願の液状組成物を摂取することにより、肥満症に対する改善および/または予防効果が期待されることが明らかとなった。 本発明にかかる製造方法により、副作用を生じる可能性が低く、且つ、血小板凝集抑制、ケモカイン遺伝子発現抑制、ACE阻害、およびリパーゼ阻害効果に非常に優れる液状組成物を作製できることが明らかとなった。 前述したように、本発明に用いたマンネンタケおよび/またはカワラタケの子実体には血小板凝集抑制、ケモカイン遺伝子発現抑制、ACE阻害活性があることが知られていたが(特許文献2、3)、子実体からの抽出物は苦味が非常に強く、当該効果が得られる量摂取するのは困難であった。これに対し、本発明の液状組成物は適度な甘みがあり風味に優れるので、十分量を長期に渡って摂取することが可能である。 よって、本願の液状組成物を継続摂取することにより、血栓症、炎症性疾患、高血圧症、および肥満症の予防改善効果が大いに期待される。 野菜、果物、海草、および/または穀物に糖類を添加し寄託番号FERM P−18540の酵母により発酵させた酵母発酵物に、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加し熟成させて得られることを特徴とする液状組成物。 請求項1に記載の液状組成物において、前記酵母発酵物1000mlに、前記子実体を乾燥重量にして45〜55g添加することを特徴とする液状組成物。 請求項1に記載の液状組成物からなる血小板凝集抑制剤。 請求項1に記載の液状組成物からなるケモカイン遺伝子発現抑制剤。 請求項1に記載の液状組成物からなるアンジオテンシン変換酵素阻害剤。 請求項1に記載の液状組成物からなるリパーゼ阻害剤。 下記(A)〜(D)工程を含むことを特徴とする液状組成物の製造方法。(A)野菜、果物、海草、および/または穀物に寄託番号FERM P−18540の酵母を添加する工程(B)前記(A)工程後、糖類を添加し、原液を抽出する工程(C)前記(B)工程後、糖類を添加し、原液を発酵・熟成させる工程(D)前記(C)工程後、濾過した濾液に、マンネンタケまたはカワラタケの乾燥子実体を添加して、室温で5日間熟成させる工程。 【課題】 副作用を生じる可能性が低く、且つ、血栓形成や炎症反応の抑制効果に優れる液状組成物、及びその製造方法を提供することである。さらに、高血圧症、肥満症の予防・改善効果についても、従来の液状組成物よりも優れた液状組成物を提供することを目的とする。【解決手段】 野菜、果物、海草、および/または穀物に糖類を添加し寄託番号FERM P−18540の酵母により発酵させた酵母発酵物に、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を添加し熟成させて得られることを特徴とする液状組成物。【選択図】 図120140213A16333全文3 野菜、果物、海草、および/または穀物に糖類を添加し寄託番号FERM P−18540の酵母により発酵させた酵母発酵物に、マンネンタケまたはカワラタケの子実体を、前記酵母発酵物1000mlに対し、乾燥重量にして45〜55gの割合で添加し熟成させて得られることを特徴とする液状組成物。 請求項1に記載の液状組成物からなる血小板凝集抑制剤。 請求項1に記載の液状組成物からなるケモカイン遺伝子発現抑制剤。 請求項1に記載の液状組成物からなるアンジオテンシン変換酵素阻害剤。 請求項1に記載の液状組成物からなるリパーゼ阻害剤。 下記(A)〜(D)工程を含むことを特徴とする液状組成物の製造方法。(A)野菜、果物、海草、および/または穀物に寄託番号FERM P−18540の酵母を添加する工程(B)前記(A)工程後、糖類を添加し、原液を抽出する工程(C)前記(B)工程後、糖類を添加し、原液を発酵・熟成させる工程(D)前記(C)工程後、濾過した濾液に、マンネンタケまたはカワラタケの乾燥子実体を、前記酵母発酵物1000mlに対し、乾燥重量にして45〜55gの割合で添加して、室温で5日間熟成させる工程。